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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】ストラドルドビークル
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/00 20160101AFI20231127BHJP
   B60K 6/26 20071001ALI20231127BHJP
   B60K 6/28 20071001ALI20231127BHJP
   B60K 6/40 20071001ALI20231127BHJP
   B60K 6/485 20071001ALI20231127BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20231127BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20231127BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20231127BHJP
   B62M 23/02 20100101ALI20231127BHJP
   H02K 11/225 20160101ALI20231127BHJP
【FI】
B60W20/00
B60K6/26 ZHV
B60K6/28
B60K6/40
B60K6/485
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60W10/30 900
B62M23/02 110
H02K11/225
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021563981
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2020045724
(87)【国際公開番号】W WO2021117737
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/048899
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】日野 陽至
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-092097(JP,A)
【文献】特開2017-131042(JP,A)
【文献】特開昭61-094535(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180650(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-20/50
B60K 6/20- 6/547
B62M 23/02
H02K 11/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、
車輪と、
クランク軸を有し、燃焼動作によって生じた前記車輪を駆動するためのトルクを前記クランク軸から出力するエンジンと、
12Vの公称動作電圧を有し、電力の供給を受けて動作する12V系電動補機と、
前記クランク軸の一端部に設けられ、永久磁石を有し、前記クランク軸を回転させることにより前記エンジンを始動又はアシストするとともに、前記エンジンに駆動されることにより発電する永久磁石式発電機と、
電力を蓄える蓄電装置と、
前記永久磁石式発電機と蓄電装置とに電気的に接続され、前記永久磁石式発電機から出力される電流を制御する複数のスイッチング部を備えたインバータと、を備え、
前記インバータは、前記クランク軸の一端部に減速機を介さずに設けられた前記永久磁石式発電機によって生成され且つ15V以上19V未満の18V系統電圧を、前記18V系統電圧に対応する前記蓄電装置に印加して前記18V系統電圧に対応する前記蓄電装置を充電しながら、前記18V系統電圧を前記12V系電動補機に印加して前記12V系電動補機を動作させ
前記18V系統電圧に対応する前記蓄電装置は、
常時直列接続される公称動作電圧12Vのバッテリと公称電圧6Vのバッテリの組合せ、
常時直列接続される公称動作電圧10Vのバッテリと公称電圧8Vのバッテリの組合せ、
または
常時直列接続される公称動作電圧12Vのバッテリと最大電圧6Vキャパシタの組合せ
を備える
【請求項2】
請求項1記載の鞍乗型車両であって、
前記12V系電動補機は、前記エンジンに燃焼を行なわせるよう動作するエンジン用補機である。
【請求項3】
請求項2記載の鞍乗型車両であって、
前記エンジン用補機は、前記エンジンの内部に向けて若しくは当該内部において燃料を噴射する噴射装置及び前記エンジンの内部の燃料に点火する点火装置を含む。
【請求項4】
請求項1から3いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
永久磁石式発電機は、前記永久磁石で構成された複数の磁極部を有し、クランク軸の一端部に減速機を介さずに接続されたロータと、
複数のスロットが前記永久磁石式発電機の周方向に間隔を空けて形成された複数のティースを有するステータコア及び前記スロットを通るように設けられた巻線を有するステータと、を備え、
前記磁極部の数は前記複数のティースの数より多い。

【請求項5】
請求項1から3いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
永久磁石式発電機は、前記永久磁石で構成された複数の磁極部を有し、クランク軸の一端部に減速機を介さずに接続されたロータと、
複数のスロットが前記永久磁石式発電機の周方向に間隔を空けて形成されたステータコア及び前記スロットを通るように設けられたステータ巻線を有するステータと、
周方向に間隔を空けて前記ロータに設けられる複数の被検出部と、
複数の前記被検出部と対向する位置に設けられ、前記ステータ巻線とは別に設けられた検出用巻線を有するロータ位置検出装置と、
を備える。
【請求項6】
請求項1から5いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記エンジンは、オイルで内部が潤滑されるように構成されたクランクケースを更に備え、
前記永久磁石式発電機は、前記オイルと接触する位置に設けられる。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記インバータは、前記鞍乗型車両の走行中、前記永久磁石式発電機に前記蓄電装置からの電力を供給し、永久磁石式発電機にクランク軸の回転を補助させる。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の鞍乗型車両であって、
前記12V系電動補機が有する前記12Vの公称動作電圧は、当該12V系電動補機に関する表示、当該12V系電動補機の構造及び材質、並びに、当該12V系電動補機の動作及び/又は機能からなる群から選択される少なくとも1つの要素によって特定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、鞍乗型車両が示されている。特許文献1の鞍乗型車両は、エンジン始動制御装置を備えた自動二輪車である。特許文献1の鞍乗型車両は、エンジンと、ACGスタータ(alternating current generator starter)とを備える。ACGスタータは永久磁石式発電機である。ACGスタータは、エンジンのクランク軸の一端部に設けられている。つまり、ACGスタータのロータは、クランク軸に固定されている。エンジンは、ACGスタータの駆動により始動する。エンジンの始動時、ACGスタータには48Vの電圧が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/180650号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗型車両は、走行時に運転者の体重移動によって車両の姿勢が制御されるように構成されている。そのため、操作性及び走行性能の観点から、鞍乗型車両は、車体をコンパクトにすることが求められている。
例えば、特許文献1に示すように鞍乗型車両のACGスタータは、ギア又はベルトプーリといった減速装置を介することなくクランク軸に接続される。このため、エンジンとACGスタータを含むユニットの構造が簡潔であり、鞍乗型車両の車体のコンパクト化が図られている。
【0005】
減速機を介さずクランク軸に設けられたACGスタータは、減速装置を介してクランク軸に接続される場合と比べて、クランク軸を駆動する場合に大きなトルクの出力を求められる。
鞍乗型車両は、クランク軸に減速機を介さずに設けられた永久磁石式発電機が出力するトルクの増大を図りつつ車体をコンパクトにすることが求められている。
【0006】
本発明の目的は、クランク軸に減速機を介さずに設けられた永久磁石式発電機が出力するトルクを増大しつつ車体をコンパクトにできる鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、特許文献1の鞍乗型車両では、ACGスタータが48V系の高電圧で駆動される。これによって、特許文献1のACGスタータは、例えば既存の鞍乗型車両に用いられてきた12V系の電圧で駆動される場合と比べて大きいトルクの出力が図られている。
鞍乗型車両には、ACGスタータに加え電動補機が搭載される。既存の鞍乗型車両に用いられ12V系の電圧が供給される電動補機は、一般的に、48V系の高電圧で駆動できない。
例えば、特許文献1の鞍乗型車両は、このような既存の電動補機を動作させるため、48V系の電源とは別に、電動補機のための12V系の電源を備えることが求められる。特許文献1の鞍乗型車両は、48V系のバッテリと12V系のバッテリの双方を搭載する。
この結果、特許文献1に示すような鞍乗型車両は、減速装置を介することなくクランク軸に接続されるACGスタータを備えるにも拘わらず、48V系のバッテリと12V系のバッテリの双方及び48V系と12V系の間の電圧コンバータを搭載することによって却って大型化する。つまり、車体をコンパクトにできない。
【0008】
本発明者は、クランク軸に減速機を介さずに設けられた永久磁石式発電機が出力するトルクの増大を図りつつ車体をコンパクトにするため、鞍乗型車両の電動補機が駆動可能な電圧のレベルに注目した。
鞍乗型車両に利用される電動補機の多くは、12Vの公称電圧を有する。しかし、本発明者が検討したところ、12Vの公称電圧を有する鞍乗型車両の電動補機のほとんどの最大動作電圧は、動作電圧に対し60%よりも大きな電圧余裕を有していることが分かった。即ち、12Vの公称電圧を有する電動補機のほとんどは、例えば48V又は24Vで動作することはできないが、15V以上19V未満で動作することができる。
【0009】
そこで、発明者は、次のことを考えた。
クランク軸の一端部に設けられた永久磁石式発電機が発電する場合、永久磁石式発電機と蓄電装置とに電気的に接続されたインバータが、蓄電装置に15V以上19V未満の18V系統電圧を印加して蓄電装置を充電しながら、18V系統電圧を電動補機に印加して前記電動補機を動作させる。
【0010】
蓄電装置を充電する電圧は、15V以上19V未満の18V系統電圧である。即ち、蓄電装置を充電する18V系統電圧は、12Vよりも大きい。
エンジンを始動又はアシストする場合、永久磁石式発電機は、12Vよりも大きい18V系統電圧の供給を蓄電装置から受けることができる。従って、永久磁石式発電機は、12Vの場合と比べて大きいトルクを出力できる。
【0011】
18V系統電圧で蓄電装置を充電しながら、18V系統電圧で電動補機を動作させることによって、12V系統電圧に対応する蓄電装置を省略できる。このため、鞍乗型車両の車体をコンパクトにすることができる。
従って、クランク軸に減速機を介さずに設けられた永久磁石式発電機が出力するトルクを増大しつつ車体をコンパクトにできる。
【0012】
以上の知見に基づいて完成した本発明の各観点による鞍乗型車両は、次の構成を備える。
【0013】
(1) 鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両は、
車輪と、
クランク軸を有し、燃焼動作によって生じた前記車輪を駆動するためのトルクを前記クランク軸から出力するエンジンと、
12Vの公称動作電圧を有し、電力の供給を受けて動作する12V系電動補機と、
前記クランク軸の一端部に設けられ、永久磁石を有し、前記クランク軸を回転させることにより前記エンジンを始動又はアシストするとともに、前記エンジンに駆動されることにより発電する永久磁石式発電機と、
電力を蓄える蓄電装置と、
前記永久磁石式発電機と蓄電装置とに電気的に接続され、前記永久磁石式発電機から出力される電流を制御する複数のスイッチング部を備えたインバータと、を備え、
前記インバータは、前記クランク軸の一端部に減速機を介さずに設けられた前記永久磁石式発電機によって生成され且つ15V以上19V未満の18V系統電圧を、前記蓄電装置に印加して前記蓄電装置を充電しながら、前記18V系統電圧を前記12V系電動補機に印加して前記電動補機を動作させる。
【0014】
上記構成における鞍乗型車両の永久磁石式発電機が発電する場合、永久磁石式発電機と蓄電装置とに電気的に接続されたインバータが、蓄電装置に15V以上19V未満の18V系統電圧を印加して蓄電装置を充電しながら、18V系統電圧を12V系電動補機に印加して12V系電動補機を動作させる。
蓄電装置を充電する電圧は、15V以上19V未満の18V系統電圧である。即ち、蓄電装置を充電する18V系統電圧は、12Vよりも大きい。この場合、18V系統電圧に対応する蓄電装置を採用することができる。
エンジンを始動又はアシストする場合に、永久磁石式発電機を12Vよりも大きい18V系統電圧で駆動することができる。このため、クランク軸の一端部に設けられた永久磁石式発電機は、12Vの供給の場合と比べて大きいトルクを出力できる。
蓄電装置が18V系統電圧で充電しながら、12V系電動補機が18V系統電圧で動作するので、12V系統電圧に対応する蓄電装置及び2つの系統間で電圧を変換するコンバータが省略できる。このため、クランク軸の一端部に設けられた永久磁石式発電機を有する鞍乗型車両の車体をコンパクトにすることができる。
このように、(1)の構成によれば、クランク軸に減速機を介さずに設けられた永久磁石式発電機が出力するトルクを増大しつつ車体をコンパクトにできる。
【0015】
(2) (1)の鞍乗型車両であって、
前記12V系電動補機は、前記エンジンに燃焼を行なわせるよう動作するエンジン用補機である。
【0016】
上記構成における鞍乗型車両によれば、エンジン用補機が、18V系統電圧で動作する。エンジン用補機は、供給される電圧に応じた能力を発揮する。従って、上記構成における鞍乗型車両によれば、例えば12Vで動作する場合と比べ、エンジンの燃焼動作の能力が向上する。
【0017】
(3) (2)の鞍乗型車両であって、
前記エンジン用補機は、前記エンジンの内部に向けて若しくは当該内部において燃料を噴射する噴射装置及び前記エンジンの内部の燃料に点火する点火装置を含む。
【0018】
上記構成における鞍乗型車両によれば、噴射装置及び点火装置が18V系統電圧で動作する。例えば、点火装置は、供給される電圧が高いほど、強い点火火花を生じやすい。また、噴射装置は、供給される電圧が高いほど、内蔵のソレノイドに作用する磁力が増大する。このため、噴射が制御しやすい。従って、上記構成における鞍乗型車両によれば、例えば12Vで動作する場合と比べ、燃料噴射及び点火の能力が向上する。
【0019】
(4) (1)から(3)いずれか1の鞍乗型車両であって、
永久磁石式発電機は、前記永久磁石で構成された複数の磁極部を有し、クランク軸の一端部に減速機を介さずに接続されたロータと、
複数のスロットが前記永久磁石式発電機の周方向に間隔を空けて形成されたステータコア及び前記スロットを通るように設けられた巻線を有するステータと、を備え、
前記磁極部の数は前記複数のティースの数より多い。
【0020】
上記構成における鞍乗型車両によれば、磁極部の数が複数のティースの数より少ない場合と比べてロータの回転速度に対する角速度が大きい。
角速度は、磁極の繰返し周期を基準とした電気角についての角速度である。角速度が大きいと、巻線のインダクタンスが大きい。また、角速度は、ロータの回転速度の増大に伴い更に増大する。巻線のインダクタンスは、巻線を流れる電流を妨げる。このため、誘導起電圧は、ロータの回転速度の増大に伴い増大するが、大きな巻線のインダクタンスによって、発電機から出力される過度の電流の増大が抑えられる。
このため、上記構成における鞍乗型車両によれば、磁極部の数が複数のティースの数より少ない場合と比べて、さらに高いクランク軸の回転速度まで蓄電装置を充電することができる。従って、電力の無駄な消費を抑えることができる。
【0021】
(5) (1)から(3)いずれか1の鞍乗型車両であって、
永久磁石式発電機は、前記永久磁石で構成された複数の磁極部を有し、クランク軸の一端部に減速機を介さずに接続されたロータと、
複数のスロットが前記永久磁石式発電機の周方向に間隔を空けて形成されたステータコア及び前記スロットを通るように設けられたステータ巻線を有するステータと、
周方向に間隔を空けて前記ロータに設けられる複数の被検出部と、
複数の前記被検出部と対向する位置に設けられ、前記ステータ巻線とは別に設けられた検出用巻線を有するロータ位置検出装置と、
を備える。
【0022】
ロータはクランク軸の一端部に減速機を介さずに接続されている。従って、ロータ位置検出装置によって、ロータの回転位置及びクランク軸の回転位置を精密に検出することができる。
ステータ巻線とは別に設けられた検出用巻線を有するロータ位置検出装置は、例えばホールICと比べて耐熱性に優れる。また、検出用巻線を有するロータ位置検出装置は、永久磁石とは異なる被検出部を電磁気的に検出するので、例えばホールICと比べて配置の自由度が高い。従って、エンジン及び永久磁石式発電機の精密な制御を可能としつつ、エンジンを小型化することができる。
【0023】
(6) (1)から(5)いずれか1の鞍乗型車両であって、
エンジンは、オイルで内部が潤滑されるように構成されたクランクケースを更に備え、
前記永久磁石式発電機は、前記オイルと接触する位置に設けられる。
【0024】
上記構成における鞍乗型車両によれば、例えば12V系統電圧による場合と比べて、高いクランク軸の回転速度までの範囲で、電力を無駄に消費することなく蓄電装置を充電することができる。従って、このような永久磁石式発電機では、ステータ巻線の温度がオイルの温度よりも高くならない又は高くなり難いため、永久磁石式発電機がオイルと接触するように配置されても、オイルの蒸発を抑制できる。
例えば、永久磁石式発電機がオイルと接触する環境下に配置される場合には、通常、オイルの冷却機構を大型化することが求められる。しかし、上記構成における鞍乗型車両によれば、冷却機構の大型化を抑制乃至回避できる。従って、車体をよりコンパクトにできる。
【0025】
(7) (1)から(6)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記インバータは、前記鞍乗型車両の走行中、前記永久磁石式発電機に前記蓄電装置からの電力を供給し、永久磁石式発電機にクランク軸の回転を補助させる。
【0026】
上記構成における鞍乗型車両によれば、鞍乗型車両の走行中、永久磁石式発電機が、12Vよりも大きい18V系統電圧で駆動することができる。このため、例えば12Vで駆動する場合と比べて、より高い回転速度までクランク軸を駆動することができる。従って、例えば12Vで駆動する場合と比べて、より高い回転速度までエンジンによる加速を補助することができる。さらに、例えば12Vの蓄電装置とは異なる蓄電装置を設ける場合と比べて、車体をよりコンパクトにできる。
【0027】
(8) (1)から(7)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記蓄電装置は、常時電気的に互いに直列接続され各々が電力を蓄える複数の蓄電部を有する。
【0028】
上記構成における鞍乗型車両によれば、18V系統電圧の供給を受けるための蓄電装置の構成を直列接続される蓄電部の数によって容易に調整することができる。18V系統電圧に対応しつつ、コンパクトにできる数の蓄電部で蓄電装置を構成することができる。
【0029】
(9) (1)から(8)いずれか1の鞍乗型車両であって、
前記12V系電動補機が有する前記12Vの公称動作電圧は、当該12V系電動補機に関する表示、当該12V系電動補機の構造及び材質、並びに、当該12V系電動補機の動作及び/又は機能からなる群から選択される少なくとも1つの要素によって特定される。
【0030】
上記構成によれば、12V系電動補機一般について、鞍乗型車両で18V系統電圧の供給を受ける対象か否かの判別が精密且つ容易に行える。
【0031】
永久磁石式発電機は、永久磁石を有する。例えばロータに永久磁石ではなくコイルを備えた構成は、本構成における永久磁石式発電機と異なる。永久磁石式発電機は、12V系電動補機に含まれない。
永久磁石式発電機は、例えばロータに界磁コイルを備えたオルタネータと比べて、界磁コイルが不要であり、またスリップリングも不要であるため、小型化できる。
【0032】
永久磁石式発電機は、例えば、エンジンを始動するとともに、エンジンに駆動されることにより発電する。ただし、永久磁石式発電機は、特に限定されず、例えば、エンジンの始動を行なわず、始動したエンジンのアシストを行なってもよい。永久磁石式発電機がエンジンを始動するとともに、エンジンに駆動されることにより発電する場合、エンジンの始動時に18V系統電圧によって大きなトルクでクランク軸を駆動することができる。
【0033】
永久磁石式発電機は、例えば、アウタロータ及びインナーロータを備える。アウタロータと備える場合、ロータの被検出部を長い円周上に配置しやすい。この場合、アウタロータ及びクランク軸の回転位置を高い精度で検出しやすい。また、ロータの慣性を保持しつつ小型化しやすい。ただし、永久磁石式発電機は、特に限定されず、例えばインナーロータ及びアウタロータを備えてもよい。また、永久磁石式発電機は、ステータのティースとロータの磁石が軸方向に対向するアキシャル型でもよい。
【0034】
12V系電動補機は、鞍乗型車両の動作に関する電動装置である。12V系電動補機は、例えば、噴射装置及び点火装置である。12V系電動補機は、これに限られず、例えば、燃料ポンプ、又は冷却ファンであってもよい。
エンジン用補機は、エンジンの燃焼動作に直接寄与する装置である。エンジン用補機は、例えば、噴射装置及び点火装置である。
【0035】
エンジンは、例えば単気筒エンジン、2気筒エンジン、不等間隔燃焼型3気筒エンジン、又は、不等間隔燃焼型4気筒エンジンである。エンジンは、例えば、3つより少ない気筒を有するエンジンである。2気筒エンジンは、2つの気筒を有する不等間隔燃焼エンジンであってもよい。2つの気筒を有する不等間隔燃焼エンジンとして、例えばV型エンジンが挙げられる。但し、エンジンは、特に限定されず、等間隔燃焼型多気筒エンジンでもよい。
【0036】
鞍乗型車両は、運転者がサドルに跨って着座する形式の車両をいう。鞍乗型車両は、サドル型のシートを備える車両である。鞍乗型車両は、運転者が騎乗スタイルで乗車する車両である。鞍乗型車両は、ビークルの一例である。鞍乗型車両は、例えば、リーン姿勢で旋回する車両であり、旋回時にカーブ中心方向にリーンするように構成されている。
鞍乗型車両は例えば自動二輪車である。自動二輪車としては、特に限定されず、例えば、スクータ型、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両としては、自動二輪車に限定されず、例えば三輪車であってもよい。また、鞍乗型車両としては、例えば、ATV(All-Terrain Vehicle)等であってもよい。
【0037】
鞍乗型車両は、エンジン、及び駆動輪としての車輪を有する。鞍乗型車両の車輪は、エンジンのクランク軸から出力され機械的に伝達されたトルクを受け、鞍乗型車両を駆動する。例えば、エンジンのトルクが車輪に機械的に伝達されないタイプの車両は、本発明の鞍乗型車両に含まれない。例えば、いわゆるピュア電動車両又はシリーズ電動車両のいずれも、本発明の鞍乗型車両に含まれない。
【0038】
12V系電動補機は、鞍乗型車両に搭載され、電力の供給を受けて動作する機器である。12V系電動補機は、例えば、燃料ポンプ、燃料インジェクタ、点火装置、エンジン始動モータ、又はランプ、並びにこれらの組合せである。
【0039】
点火装置は、例えばインジェクションコイルを有する。
【0040】
公称動作電圧(nominal operating voltage)は、「系統の標準電圧」である(日本工業規格(JIS)C4605)。つまり、公称動作電圧は、12V系電動補機の動作電圧を代表する電圧である。従って、公称動作電圧は、12V系電動補機が動作可能な電圧である。鞍乗型車両において12V系電動補機に供給される電圧は変動し得る。なお、公称動作電圧は、単に、公称電圧とも称する。
【0041】
12V系電動補機の公称動作電圧は、定格電圧よりも低い。定格電圧は、最大定格電圧と称される場合もある。
【0042】
公称動作電圧は、「設備を設計するための電圧」である(JIS C0366)。つまり、公称動作電圧は、12V系電動補機の特性を表現するために設定された代表値である。公称動作電圧は、「電装部品に適用する称呼の電圧」でもある(JIS D5005)。
【0043】
一般的に、エンジンの動力を車輪に機械的に伝達するタイプの鞍乗型車両に搭載される12V系電動補機の公称動作電圧は、6V、12V、及び24Vの何れかである(JIS D5005)。
これは、鞍乗型車両に搭載されるバッテリの公称動作電圧が、6V、12V、及び24Vの何れかであることに対応する。
【0044】
前記12V系電動補機が有する前記12Vの公称動作電圧は、当該12V系電動補機に関する表示、当該12V系電動補機の構造及び材質、並びに、当該12V系電動補機の動作及び/又は機能からなる群から選択される少なくとも1つの要素によって特定される。当該12V系電動補機に関する表示は、例えば、12V系電動補機自体、12V系電動補機の梱包容器、12V系電動補機の取扱説明書、又は、12V系電動補機の仕様書において行われる。当該12V系電動補機に関する表示として「12V」と記載されている場合、12V系電動補機は、12Vの公称動作電圧を有すると特定される。
【0045】
また、鞍乗型車両の仕様書又は取扱説明書に、電圧変換装置を介さず12V系電動補機と接続される蓄電装置の公称動作電圧が表示されていれば、その値は12V系電動補機の公称動作電圧と言うことができる。例えば、12Vの公称動作電圧を有するバッテリで動作される12V系電動補機は、12Vの公称動作電圧を有する。これらの表示も、当該12V系電動補機に関する表示の一例である。
【0046】
またさらに、電圧変換装置を介さず12V系電動補機と接続される蓄電装置の仕様書又は取扱説明書に公称動作電圧が示されていれば、その値は12V系電動補機の公称動作電圧ということができる。この表示も、当該12V系電動補機に関する表示の一例である。ここで、蓄電装置の公称動作電圧は、「電池を通常の状態で使用した場合に得られる端子間の電圧の目安として定められている値である。」(Wikipedia(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E7%A7%B0%E9%9B%BB%E5%9C%A7))
【0047】
また、前記12V系電動補機が有する12Vの公称動作電圧は、当該12V系電動補機の構造及び材質によっても特定され得る。例えば、12V系電動補機Aが、12Vの公称動作電圧を有する12V系電動補機Bと同じ材料及び構造を有する場合、12V系電動補機Aに関する表示に関わらず、12V系電動補機Aが12Vの公称動作電圧を有すると特定され得る。この場合、12V系電動補機Aは、例えば、「12V系電動補機に関する表示」を除いて、12V系電動補機Bと同じ外観を有する。また、前記12V系電動補機が有する12Vの公称動作電圧は、当該12V系電動補機の動作及び/又は機能によっても特定され得る。例えば、12V系電動補機Aが、12Vの公称動作電圧を有する12V系電動補機Bと同条件下において同様の動作及び/又は機能を実現する場合、12V系電動補機Aに関する表示、又は、構造及び材質に関わらず、12V系電動補機Aが12Vの公称動作電圧を有すると特定され得る。ここでいう、動作及び機能の同一性は、定性的な評価だけではなく、定量的にも評価される。定量的な同一性は、同一に限定されず、実質的に同一であってもよい。ここでいう実質的は、設計時の公差、及び/又は、製造時の誤差を許容する概念である。また、実質的は、例えば、12V系電動補機の動作及び機能に関するパラメータの±10%の相違を許容する概念であり、より好ましくは±8%であり、更に好ましくは±5%であり、特に好ましくは±3%である。なお、動作と機能とは厳密に区別される必要は無い。例えば、燃料ポンプの動作及び/又は機能の同一性は、燃料ポンプ内の可動部の動作によって特定されてもよく、送液量(即ち機能)によって特定されてもよい。
【0048】
蓄電装置は、例えば、バッテリと、このバッテリに直列接続されたキャパシタとを有する。バッテリは、例えば鉛バッテリである。キャパシタは、例えば電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor, EDLC)である。また、例えば、蓄電装置は、キャパシタの電圧がキャパシタに設定された上限電圧を超えると、キャパシタを電気的に切断することなくキャパシタに入力される電流を抑えつつ、蓄電装置に入力される電流をバッテリに供給する回路を有してもよい。
但し、蓄電装置は、特に限定されない。例えば、蓄電装置は、電流をキャパシタではなくバッテリに供給する回路を有さなくともよい。また、キャパシタは、例えばリチウムイオンキャパシタ、電解キャパシタ、又はタンタルキャパシタでもよい。また、バッテリは、例えばリチウムイオンバッテリ又はニッケル水素バッテリであってもよい。また、蓄電装置は、キャパシタ無しのバッテリで構成されてもよい。
【0049】
キャパシタの端子電圧は、キャパシタに蓄電される電力に応じて変化する。例えば、18V系統電圧に接続されるキャパシタの電力が減少した結果、キャパシタの端子電圧が18Vよりも極端に低下する場合でも、キャパシタは18V系統電圧に接続されている。
【0050】
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。
本明細書にて使用される用語「および/または」はひとつの、または複数の関連した列挙された構成物のあらゆるまたはすべての組み合わせを含む。
本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」およびその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分および/またはそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、および/またはそれらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
本明細書中で使用される場合、用語「取り付けられた」、「結合された」および/またはそれらの等価物は広く使用され、特に指定しない限り直接的および間接的な取り付け、および結合の両方を包含する。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術および本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的または過度に形式的な意味で解釈されることはない。
本発明の説明においては、技術および多くの工程が開示されていると理解される。
これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、または、場合によっては全てと共に使用することもできる。
したがって、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせをすべて繰り返すことを控える。
それにもかかわらず、明細書および特許請求の範囲は、そのような組み合わせがすべて本発明および請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
本明細書では、新しい鞍乗型車両について説明する。
以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。
しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。
本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、エンジン始動性能の低下を抑えつつ車体をコンパクトにできる鞍乗型車両を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両を模式的に示す図である。
図2図1に示すインバータ21の入出力電圧を示すグラフである。
図3図1に示す実施形態の適用例である鞍乗型車両及び電気系統を模式的に示す図である。
図4図3に示すエンジンユニットの概略構成を模式的に示す部分断面図である。
図5図4に示す永久磁石式発電機の回転軸線に垂直な断面を示す断面図である。
図6図1に示す蓄電装置のバリエーションの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明を、実施形態に基づいて図面を参照しつつ説明する。
【0054】
図1は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両を模式的に示す図である。図1のパート(a)は、鞍乗型車両の側面図である。図1のパート(b)は、パート(a)に示す鞍乗型車両の概略的な電気構成を示すブロック図である。
【0055】
図1に示す鞍乗型車両1は、車輪3a,3bと、エンジン10と、12V系電動補機Lと、蓄電装置4と、永久磁石式発電機20と、インバータ21とを備える。
また、鞍乗型車両1は、車体2を備えている。図1には、鞍乗型車両1の例として、リーン車両が示されている。リーン車両は、左旋回中に車両左方向に傾斜し右旋回中に車両右方向に傾斜する。
【0056】
鞍乗型車両1に備えられた車輪3a,3bは、前の車輪3aと後ろの車輪3bを含む。後ろの車輪3bは駆動輪である。
【0057】
エンジン10は、クランク軸15を備えている。
エンジン10は、クランク軸15を介して動力を出力する。エンジン10は、車輪3bを駆動するためのトルクをクランク軸15から出力する。車輪3bは、クランク軸15からの動力を受け、鞍乗型車両1を走行させる。
エンジン10から出力される動力は、例えば、変速機及びクラッチを介して車輪3bに伝達されることができる。
【0058】
12V系電動補機Lは、鞍乗型車両1に搭載される電動装置である。12V系電動補機Lは、電力の供給を受けて動作する。
12V系電動補機Lは、例えば、エンジン10に燃焼を行なわせるよう動作するエンジン用補機である。エンジン用補機は、例えば、燃料噴射装置18及び点火装置19(図4参照)を含む。燃料噴射装置18は、エンジン10の内部に向けて若しくは当該内部において燃料を噴射する。点火装置19は、エンジン10の内部の燃料に点火する。
【0059】
永久磁石式発電機20は、クランク軸15の一端部に設けられる。永久磁石式発電機20は、クランク軸15の一端部に減速機を介さずに設けられる。
永久磁石式発電機20は、永久磁石を有する。より詳細には、永久磁石式発電機20は、永久磁石で構成された永久磁石部37を備えている。
永久磁石式発電機20は、エンジン10を始動するスタータを兼ねる。永久磁石式発電機20は、永久磁石式始動発電機である。永久磁石式発電機20は、クランク軸15を回転させることによりエンジン10を始動する。永久磁石式発電機20はまた、エンジン10に駆動されることにより発電する。
【0060】
蓄電装置4は、電気を充電及び放電することができる装置である。蓄電装置4は、電力を蓄える。
蓄電装置4は、充電された電力を外部に出力する。蓄電装置4は、電力を永久磁石式発電機20に供給する。蓄電装置4は、エンジン10の始動時に永久磁石式発電機20に電力を供給する。また、例えばエンジン10の始動後、蓄電装置4は、永久磁石式発電機20で発電された電力によって充電される。蓄電装置4は、エンジン10を少なくとも1回始動する量の電力を充電可能な静電容量を有する。
【0061】
蓄電装置4は、18V系統電圧で動作する。蓄電装置4は、18V系統電圧で充電することができる。また、充電された状態の蓄電装置4は、18V系統電圧を出力することができる。
蓄電装置4は、例えば、バッテリを有する。蓄電装置4は、例えば、常時電気的に直列接続され各々が電力を蓄える複数の蓄電部を有する。蓄電装置4は、例えば、複数のバッテリの組合わせである。蓄電装置4の構成として、例えば、バッテリとキャパシタの組合わせも採用可能である。即ち、蓄電部としては、例えば、バッテリやキャパシタが挙げられる。
【0062】
インバータ21は、例えばエンジン10が燃焼動作している場合に、永久磁石式発電機20で発電された電力を、蓄電装置4に供給する。この場合、インバータ21は、永久磁石式発電機20で発電された電流を整流する。
また、インバータ21は、永久磁石式発電機20に電力を供給することによって、永久磁石式発電機20を回転させる。インバータ21は、永久磁石式発電機20のステータ巻線Wに流れる電流のオン・オフを制御することによって、電流を制御する。
【0063】
インバータ21は、スイッチング部211と、制御装置60を含んでいる。制御装置60は、インバータ21と物理的に一体に設けられている。制御装置60は、インバータ21のスイッチング部211の動作を制御することによって、インバータ21から出力される電圧を制御する。制御装置60は、インバータ21のスイッチング部211の動作を制御することによって、永久磁石式発電機20と蓄電装置4との間で流れる電流を制御する。また、制御装置60は、永久磁石式発電機20の動作を制御する。制御装置60は、例えば位相制御方式又はベクトル制御によって、インバータ21から出力される電圧を制御する。
例えば、制御装置60は、スタータスイッチ6からの信号に応じて、インバータ21に、蓄電装置4から永久磁石式発電機20に電流を供給させる。これによって、蓄電装置4から永久磁石式発電機20に電力が供給され、エンジン10が始動する。エンジン10の始動後、即ち燃焼動作開始後、制御装置60は、永久磁石式発電機20からの電流を蓄電装置4に流すようインバータ21を制御する。これによって、蓄電装置4が永久磁石式発電機20の発電電力によって充電される。
また、制御装置60は、エンジン10の始動後、即ち燃焼動作開始後も、加速指示部8(図3のパート(b)参照)の操作に応じてインバータ21に、蓄電装置4の電力を永久磁石式発電機20に供給させることができる。より詳細には、制御装置60は、鞍乗型車両1の走行中、永久磁石式発電機20に蓄電装置4からの電力を供給し、永久磁石式発電機20にクランク軸15の回転を補助させる。これによって、エンジン10による鞍乗型車両1の加速が永久磁石式発電機20でアシストされる。
【0064】
制御装置60は、エンジン10への燃料の供給及び燃焼を制御するエンジン制御部の機能も有する。制御装置60は、エンジン用補機として機能する12V系電動補機Lの動作を制御することによって、エンジン10の燃焼を制御する。
制御装置60は、図示しない中央処理装置及びメモリを備えている。制御装置60は、メモリに記憶されたプログラムを実行することによって、エンジン10の燃焼を制御する。
制御装置60は、蓄電装置4の電力で動作する。より詳細には、制御装置60は、蓄電装置4の電圧から、制御装置60に適用できるようにダウンコンバートされた動作電圧で動作する。ダウンコンバータは、例えばインバータ21に設けられている。例えば蓄電装置4がバッテリとキャパシタを有する場合、制御装置60は、バッテリの電圧からダウンコンバートされた動作電圧で動作してもよい。
【0065】
図2は、図1に示すインバータ21の入出力電圧を示すグラフである。
図2に示すグラフの横軸は、クランク軸15の回転速度を示す。グラフの横軸は、インバータ21が蓄電装置4及び12V系電動補機Lに出力する電圧、及び、永久磁石式発電機20がインバータ21に供給する電圧を示す。図2のグラフには、従来の12Vの電圧のレベルも示されている。
永久磁石式発電機20が発電する場合、インバータ21は、図2の「発電領域」に示すように、蓄電装置4に18V系統電圧を印加して蓄電装置4を充電しながら、18V系統電圧を12V系電動補機Lに印加して12V系電動補機を動作させる。
18V系統電圧は、18Vを含む範囲の電圧である。18V系統電圧は、15V以上19V未満の電圧である。従って、18V系統電圧は、従来の鞍乗型車両で用いられる6V系統電圧又は12V系統電圧のいずれとも異なる。18V系統電圧は、一部の鞍乗型車両で用いられる24V系統電圧とも異なる。インバータ21が15V以上19V未満の電圧を出力するか否かは、インバータ21の出力端子で測定される。
【0066】
また、インバータ21は、エンジン10の始動の場合に、図2の「始動領域」に示すように、蓄電装置4から18V系統電圧の供給を受ける。永久磁石式発電機20は、18V系統電圧によって駆動される。より詳細には、インバータ21は、永久磁石式発電機20に、18V系統電圧に基づく電圧波形を供給する。例えば、永久磁石式発電機20は、インバータ21のスイッチング部211でPWM変調された18Vの振幅を有する電圧波形を受ける。
【0067】
蓄電装置4を充電する18V系統電圧は、12Vよりも高い。このため、蓄電装置4として、18V系統電圧に対応する蓄電装置4を採用することができる。
例えば鞍乗型車両1の加速中のようにクランク軸15の回転速度が増大する場合、インバータ21が出力電圧を目標範囲に制御できなくなる上限回転速度を超えると、インバータ21は、スイッチング部211の動作を停止する。例えば、インバータ21は、蓄電装置4及びスイッチング部211自体に掛かる電圧が過剰に上昇しないように、スイッチング部211を制御する。例えば、インバータ21は、永久磁石式発電機20のステータ巻線Wを短絡するようにスイッチング部211を制御する。これによって、永久磁石式発電機20で発電された電力がステータ巻線Wで熱として消費される。
【0068】
本実施形態の蓄電装置4は18V系統電圧に対応するので、従来の12V系統電圧の場合と比べてより高い回転速度N1まで蓄電装置4が充電され得る。即ち、蓄電装置4を充電することができるクランク軸15の上限回転速度を、従来一般に採用されている12V系統電圧の場合と比べて高い値に設定することができる。つまり、充電をせずに無駄に消費される電力量を抑えることができる。
【0069】
また、エンジン10の始動の場合に、永久磁石式発電機20が、従来一般に採用されている12Vよりも大きい18V系統電圧で駆動されることができる。従って、永久磁石式発電機20は、12Vの場合と比べて大きいトルクを出力できる。従って、永久磁石式発電機20の性能の低下が抑えられる。
【0070】
また、12V系電動補機Lが18V系統電圧で動作するので、12V系電動補機Lの能力低下が抑えられる。12V系電動補機Lの一例である燃料噴射装置18(図4参照)は、内蔵されたソレノイドの動作によって噴射又は噴射停止が制御される。供給される電圧が高いほど、内蔵のソレノイドに作用する磁力が増大する。このため、噴射が制御しやすい。
また、12V系電動補機Lの一例である点火装置19(図4参照)は、供給される電圧を所定の比で昇圧することにより電気火花を発生する。供給される電圧が高いほど、電気火花を発生させやすい。
12Vの公称動作電圧を有する12V系電動補機Lの多くは、絶縁性能に起因して24V及びその変動余裕を加えた電圧で動作することが困難である。しかし、12Vの公称動作電圧を有する12V系電動補機Lの多くは、18V系統電圧で動作可能である。
【0071】
鞍乗型車両1では、12V系統電圧に対応する蓄電装置の設置を省略できる。即ち、永久磁石式発電機20の性能、及び12V系電動補機Lの性能に合わせて異なる電圧に対応する複数の蓄電装置を搭載する必要がない。このため、鞍乗型車両1の車体をコンパクトにすることができる。
【0072】
このように、鞍乗型車両1によれば、クランク軸15に減速機を介さずに設けられた永久磁石式発電機20が出力するトルクを増大しつつ車体をコンパクトにできる。
【0073】
[適用例]
続いて、図3を参照して、実施形態の適用例を説明する。
【0074】
図3は、図1に示す実施形態の適用例である鞍乗型車両1及び電気系統を模式的に示す図である。図3のパート(a)は、鞍乗型車両1の平面図である。図3のパート(b)は、鞍乗型車両1の側面図である。図3のパート(c)は、鞍乗型車両1の電気系統の接続を模式的に示す実体配線図である。
図3以降に示す適用例において、図1に示す実施形態に対応する要素は、図1と同じ符号を付して説明を行う。
【0075】
図3に示す鞍乗型車両1は、車体2を備えている。車体2には、運転者が着座するためのシート2aが備えられている。運転者は、シート2aに跨がるようにして着座する。図3には、鞍乗型車両1の一例として自動二輪車が示されている。
【0076】
鞍乗型車両1は、前の車輪3aと後ろの車輪3bを備えている。鞍乗型車両1の車輪3a,3bのトレッド面は、路面と接触しない状態で円弧状の断面形状を有する。
【0077】
エンジン10は、エンジンユニットEUを構成する。即ち、鞍乗型車両1は、エンジンユニットEUを備えている。
エンジンユニットEUは、エンジン10と、永久磁石式発電機20とを含む。
エンジン10は、クランク軸15を介して動力を出力する。エンジン10は、車輪3bを駆動するためのトルクをクランク軸15から出力する。車輪3bは、クランク軸15からの動力を受け、鞍乗型車両1を走行させる。エンジン10は、例えば100mL以上の排気量を有する。エンジン10は、例えば、400mL未満の排気量を有する。
また、鞍乗型車両1は、変速機CVT及びクラッチCLを備えている。エンジン10から出力される動力は、変速機CVT及びクラッチCLを介して車輪3bに伝達される。
【0078】
永久磁石式発電機20は、エンジン10に駆動されて発電する。図3に示す永久磁石式発電機20は、磁石式始動発電機である。
永久磁石式発電機20は、ロータ30及びステータ40(図4参照)を有する。ロータ30は、永久磁石で構成された永久磁石部37を備えている。ロータ30は、クランク軸15から出力される動力で回転する。ステータ40は、ロータ30と対向するように配置されている。
【0079】
蓄電装置4は、充電及び放電することができる装置である。蓄電装置4は、充電された電力を外部に出力する。蓄電装置4は、電力を永久磁石式発電機20及び12V系電動補機Lに供給する。蓄電装置4は、エンジン10の始動時に永久磁石式発電機20に電力を供給する。また、蓄電装置4は、永久磁石式発電機20で発電された電力によって充電される。
【0080】
鞍乗型車両1は、インバータ21を備えている。インバータ21は、永久磁石式発電機20と蓄電装置4との間を流れる電流を制御する複数のスイッチング部211を備えている。
【0081】
永久磁石式発電機20は、蓄電装置4の電力によってクランク軸15を回転させる。これによって永久磁石式発電機20はエンジン10を始動する。
【0082】
鞍乗型車両1は、メインスイッチ5を備えている。メインスイッチ5は、操作に応じて鞍乗型車両1に備えられた12V系電動補機L(図3のパート(c)参照)に電力を供給するためのスイッチである。12V系電動補機Lは、永久磁石式発電機20を除いて、電力を消費しながら動作する装置を包括的に表したものである。12V系電動補機Lは、例えば、前照灯9、燃料噴射装置18、及び点火装置19を含む。
鞍乗型車両1は、スタータスイッチ6を備えている。スタータスイッチ6は、操作に応じてエンジン10を始動するためのスイッチである。鞍乗型車両1は、メインリレー75を備えている。メインリレー75は、メインスイッチ5からの信号に応じて、12V系電動補機Lを含む回路を開閉する。
鞍乗型車両1は、加速指示部8を備えている。加速指示部8は、操作に応じて鞍乗型車両1の加速を指示するための操作子である。加速指示部8は、詳細には、アクセルグリップである。
【0083】
蓄電装置4は、例えば、12Vで動作するバッテリと、このバッテリに直列接続されたキャパシタとを有する。バッテリは、例えば鉛バッテリである。キャパシタは、例えば電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor, EDLC)である。
また、蓄電装置4は、キャパシタの電圧が6Vを超えると蓄電装置4に入力される電流を、キャパシタではなくバッテリに供給する回路を有する。
【0084】
図3に示す構成で、蓄電装置4は、エンジン10の始動時に永久磁石式発電機20に電力を供給する。永久磁石式発電機20が、18V系統電圧で駆動されることができる。従って、永久磁石式発電機20は、例えば12Vの場合と比べて大きいトルクを出力できる。
【0085】
図3のパート(c)に示すように、永久磁石式発電機20、蓄電装置4、メインリレー75、インバータ21、及び12V系電動補機Lは、配線Jで電気的に接続されている。符号の見やすさのため、配線の符号(J)は、図3のパート(c)に示す配線の一部に付している。
配線Jは、例えばリード線で構成される。配線Jは、繋ぎ合わされた複数のリード線で構成される場合もある。また、配線Jは、リード線を中継するコネクタ、ヒューズ、及び接続端子を含む場合もある。コネクタ、ヒューズ、及び接続端子の図示は省略する。また、図3のパート(c)の実体配線図では、正極領域の接続が示されている。負極領域即ちグランド領域は、車体2を介して電気的に接続されている。より詳細には、負極領域は、車体2の図示しない金属製フレームを介して電気的に接続されている。車体2を介した各装置の電気的な接続の距離は、通常、リード線等による正極領域の接続と同等であるか、より短い。そこで、図3のパート(c)において、車体2による負極領域の接続の図示を省略し、主として、正極領域の配線について説明する。
図3に示す配線Jは、車両に設けられた他の配線と組み合わされて図示しないワイヤハーネスを構成する。図3のパート(c)では、図に示された装置を電気的に接続する配線Jのみを示す。
図3のパート(c)には、各装置間の配線Jの接続関係、及び配線Jの距離が概略的に示されている。
【0086】
[エンジンユニット]
図4は、図3に示すエンジンユニットEUの概略構成を模式的に示す部分断面図である。
【0087】
エンジンユニットEUは、エンジン10を備えている。エンジン10は、クランクケース11と、シリンダ12と、ピストン13と、コネクティングロッド14と、クランク軸15とを備えている。ピストン13は、シリンダ12内に往復動可能に設けられている。
クランク軸15は、クランクケース11内に回転可能に設けられている。クランク軸15は、コネクティングロッド14を介して、ピストン13と連結されている。シリンダ12の上部には、シリンダヘッド16が取り付けられている。シリンダ12とシリンダヘッド16とピストン13とによって、燃焼室が形成される。クランク軸15は、クランクケース11に、回転自在な態様で支持されている。クランク軸15の一端部15aには、永久磁石式発電機20が取り付けられている。クランク軸15の他端部15bには、変速機CVTが取り付けられている。変速機CVTは、入力の回転速度に対する出力の回転速度の比である変速比を変更することができる。変速機CVTは、クランク軸15の回転速度に対する、車輪の回転速度に対応する変速比を変更することができる。
【0088】
エンジンユニットEUには、燃料噴射装置18が備えられている。燃料噴射装置18は、燃料を噴射することによって、燃焼室に燃料を供給する。吸気通路Ipを通って流れる空気に対し、燃料噴射装置18が燃料を噴射する。空気と燃料の混合気が、エンジン10の燃焼室に供給される。
また、エンジンユニットEUには、点火装置19が設けられている。点火装置19は、点火プラグ19a及び点火電圧生成回路19bを有する。点火プラグ19aは、エンジン10に設けられている。点火プラグ19aは、点火電圧生成回路19bと電気的に接続される。
燃料噴射装置18及び点火装置19は、図1に示す12V系電動補機Lの一例である。燃料噴射装置18及び点火装置19は、エンジン用補機の一例である。燃料噴射装置18及び点火装置19は、18V系統電圧で動作する。
燃料噴射装置18及び点火装置19は、従来知られたエンジンに取付けられている部品である。燃料噴射装置18及び点火装置19は、12Vで動作する。燃料噴射装置18及び点火装置19の最大動作電圧即ち最大定格電圧は、公称動作電圧である12Vに対し60%よりも大きな電圧余裕を有している。即ち、12Vの基本動作電圧で動作する燃料噴射装置18及び点火装置19は、15V以上19V未満で動作することができる。燃料噴射装置18及び点火装置19は、24Vで動作することはできない。即ち、燃料噴射装置18及び点火装置19の公称動作電圧に対する最大動作電圧までの余裕は、12Vに対し、100%未満である。
【0089】
エンジン10は、内燃機関である。エンジン10は、燃料の供給を受ける。エンジン10は、混合気を燃焼する燃焼動作によって動力を出力する。即ち、ピストン13が、燃焼室に供給された燃料を含む混合気の燃焼によって往復動する。ピストン13の往復動に連動してクランク軸15が回転する。動力は、クランク軸15を介してエンジン10の外部に出力される。
燃料噴射装置18は、供給燃料の量を調整することによって、エンジン10から出力される動力を調節する。燃料噴射装置18は、制御装置60によって制御される。燃料噴射装置18は、エンジン10に供給される空気の量に基づいた量の燃料を供給するよう制御される。点火装置19は、燃料と空気が混合された混合気に点火する。燃料噴射装置18及び点火装置19は、エンジン10に燃焼を行なわせるよう動作するエンジン用補機である。
エンジン10は、クランク軸15を介して動力を出力する。クランク軸15の動力は、変速機CVT及びクラッチCL(図3のパート(b)参照)を介して、車輪3bに伝達される。
【0090】
クランクケース11は、潤滑オイル(oil図3パート(b)参照)で内部が潤滑されるように構成されている。永久磁石式発電機20は、潤滑オイルoilと接触する位置に設けられている。
【0091】
エンジン10は、4ストロークの間に、クランク軸15を回転させる負荷が大きい高負荷領域と、クランク軸15を回転させる負荷が高負荷領域の負荷より小さい低負荷領域とを有する。高負荷領域とは、エンジン10の1燃焼サイクルにおいて、負荷トルクが1燃焼サイクルにおける負荷トルクの平均値よりも高い領域をいう。また、低負荷領域とは、エンジン10の1燃焼サイクルにおいて、負荷トルクが1燃焼サイクルにおける負荷トルクの平均値よりも低い領域をいう。クランク軸15の回転角度を基準として見ると、低負荷領域は高負荷領域よりも広い。より詳細には、エンジン10は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、及び排気行程の4行程を繰返しながら正回転する。圧縮行程は、高負荷領域との重なりを有する。エンジン10は、単気筒エンジンである。
【0092】
図5は、図4に示す永久磁石式発電機20の回転軸線に垂直な断面を示す断面図である。
図4及び図5を参照して永久磁石式発電機20を説明する。
【0093】
永久磁石式発電機20は、ロータ30と、ステータ40とを有する。本適用例の永久磁石式発電機20は、ラジアルギャップ型である。永久磁石式発電機20は、アウタロータ型である。即ち、ロータ30はアウタロータである。ステータ40はインナーステータである。ロータ30は、クランク軸15の一端部に減速機を介さずに接続されている。ロータ30は、クランク軸15の一端部に固定されている。ロータ30は、常にクランク軸15の回転と連動して回転する。
ロータ30は、ロータ本体部31を有する。ロータ本体部31は、例えば強磁性材料からなる。ロータ本体部31は、有底筒状を有する。ロータ本体部31は、筒状ボス部32と、円板状の底壁部33と、筒状のバックヨーク部34とを有する。底壁部33及びバックヨーク部34は一体的に形成されている。なお、底壁部33とバックヨーク部34とは別体に構成されていてもよい。底壁部33及びバックヨーク部34は筒状ボス部32を介してクランク軸15に固定されている。ロータ30には、電流が供給される巻線が設けられていない。
【0094】
ロータ30は、永久磁石部37を有する。ロータ30は、複数の磁極部37aを有する。複数の磁極部37aは永久磁石部37により形成されている。複数の磁極部37aは、バックヨーク部34の内周面に、設けられている。本適用例において、永久磁石部37は、複数の永久磁石を有する。即ち、ロータ30は、複数の永久磁石を有する。複数の磁極部37aは、複数の永久磁石のそれぞれに設けられている。
なお、永久磁石部37は、1つの環状の永久磁石によって形成されることも可能である。この場合、1つの永久磁石は、複数の磁極部37aが内周面に並ぶように着磁される。
【0095】
複数の磁極部37aは、永久磁石式発電機20の周方向にN極とS極とが交互に配置されるように設けられている。本適用例では、ステータ40と対向するロータ30の磁極数が24個である。ロータ30の磁極数とは、ステータ40と対向する磁極数をいう。磁極部37aとステータ40との間には磁性体が設けられていない。
磁極部37aは、永久磁石式発電機20の径方向におけるステータ40よりも外方に設けられている。バックヨーク部34は、径方向における磁極部37aよりも外方に設けられている。永久磁石式発電機20は、歯部45の数よりも多い磁極部37aを有している。
なお、ロータ30は、磁極部37aが磁性材料に埋め込まれた埋込磁石型(IPM型)であってもよいが、本適用例のように、磁極部37aが磁性材料から露出した表面磁石型(SPM型)であることが好ましい。
【0096】
ステータ40は、ステータコアSTと複数のステータ巻線Wとを有する。ステータコアSTは、周方向に間隔を空けて設けられた複数の歯部(ティース)45を有する。複数の歯部45は、ステータコアSTから径方向外方に向かって一体的に延びている。本適用例においては、合計18個の歯部45が周方向に間隔を空けて設けられている。換言すると、ステータコアSTは、周方向に間隔を空けて形成された合計18個のスロットSLを有する。歯部45は周方向に等間隔で配置されている。
【0097】
ロータ30は、歯部45の数より多い数の磁極部37aを有する。磁極部の数は、スロット数の4/3である。
【0098】
各歯部45の周囲には、ステータ巻線Wが巻回している。つまり、複数相のステータ巻線Wは、スロットSLを通るように設けられている。図5には、ステータ巻線Wが、スロットSLの中にある状態が示されている。
【0099】
永久磁石式発電機20は、三相発電機である。ステータ巻線Wのそれぞれは、U相、V相、W相の何れかに属する。ステータ巻線Wは、例えば、U相、V相、W相の順に並ぶように配置される。
【0100】
鞍乗型車両1が走行中にエンジン10が動作状態している場合、永久磁石式発電機20で発電される電力によって、蓄電装置4が充電される。蓄電装置4が満充電になると、永久磁石式発電機20で発電される電力は、充電に用いられることなく例えば巻線の短絡によって熱として消費される。また、インバータ21から蓄電装置4に出力される電圧が18V系統電圧の上限である19V以下に抑えられない程度にクランク軸15の回転速度が大きくなる場合、インバータ21は、永久磁石式発電機20のステータ巻線Wを短絡するようにスイッチング部211を制御する。蓄電装置4を充電することができるクランク軸15の上限回転速度は、例えば12V系統電圧の場合と比べて高い値に設定することができる。
発電機が発電する場合、ステータ巻線Wを流れる電流は、ステータ巻線W自体に生じるインピーダンスの影響を受ける。インピーダンスはステータ巻線Wを流れる電流を妨げる要素である。インピーダンスは、回転速度ωとインダクタンスの積を含む。ここで、回転速度ωは、実際には、単位時間に歯部近傍を通過する磁極部の数に相当する。即ち、回転速度ωは、発電機に おける歯部の数に対する磁極部の数の比と、ロータの回転速度とに比例する。
【0101】
図5に示す永久磁石式発電機20は、歯部45の数より多い数の磁極部37aを有する。即ち、永久磁石式発電機20は、スロットSLの数より多い数の磁極部37aを有する。このため、ステータ巻線Wが大きなインピーダンスを有する。従って、蓄電装置4に掛かる電圧が、例えば歯部の数より少ない数の磁極部を有する場合と比べ、減少する。このため、クランク軸15の上限回転速度は、例えば12V系統電圧の場合と比べて高い値に設定することができる。このため、永久磁石式発電機20において始動時のトルクを増大するため、電気抵抗の小さい太い巻線を採用することができる。
【0102】
また、永久磁石式発電機20では、ステータ巻線Wの温度が潤滑オイルの温度よりも高くならない又は高くなり難いため、永久磁石式発電機20が潤滑オイルと接触するように配置されても、潤滑オイルの蒸発を抑制できる。従って、潤滑オイルの冷却機構の大型化を抑制乃至回避できる。
【0103】
ロータ30には、周方向に間隔を空けて前記ロータに設けられる複数の被検出部38が設けられている。複数の被検出部38は、ロータ30の回転位置を検出させるため設けられている。被検出部38によって、ロータ30及びクランク軸15の回転位置を精密に検出することができる。
被検出部38は、ロータ30の外面に設けられている。複数の被検出部38は、磁気作用によって検出される。複数の被検出部38は、周方向に間隔を空けてロータ30の外面に設けられている。本実施形態において、複数の被検出部38は、周方向に間隔を空けてロータ30の外周面に設けられている。
【0104】
ロータ位置検出装置50は、ロータ30の位置を検出する。ロータ位置検出装置50は、複数の被検出部38と対向する位置に設けられている。つまり、ロータ位置検出装置50は、複数の被検出部38がロータ位置検出装置50と順次対向するような位置に配置されている。ロータ位置検出装置50は、ロータ30の回転に伴い被検出部38が通過する経路に対向している。ロータ位置検出装置50は、ステータ40とは離れた位置に配置されている。本実施形態において、ロータ位置検出装置50は、クランクシャフト15の径方向においてロータ位置検出装置50とステータ40及びステータ巻線Wとの間にロータ30のバックヨーク部34及び永久磁石部37が位置するように配置されている。ロータ位置検出装置50は、スタータモータSGの径方向における、ロータ30よりも外側に配置されており、ロータ30の外周面に向いている。
【0105】
ロータ位置検出装置50は、検出用巻線を有している。検出用巻線51は、ステータ40が有するステータ巻線Wとは別に設けられた巻線である。ステータ巻線Wには、スタータモータSGのロータ30を電磁力によって駆動する電流が供給されるのに対し、検出用巻線51には、スタータモータSGのロータ30を駆動する電流が供給されない。
ロータ位置検出装置50は、被検出部38を電磁気的に検出するので、例えばホールICと比べて配置の自由度が高い。エンジンユニットEUを小型化することができる。
【0106】
蓄電装置4は、例えば1つのバッテリで構成されていてもよい。例えば、蓄電装置4は、例えば18Vの公称動作電圧を有する1つのバッテリで構成されてもよい。但し、蓄電装置4は、複数の蓄電部によって構成されてもよい。
【0107】
図6は、図1に示す蓄電装置4のバリエーションの例を示す図である。
【0108】
図6の(A)に示す例の蓄電装置4は、第1蓄電部41としてのバッテリと、第2蓄電部42としてのバッテリとを備える。蓄電装置4には、電流維持回路43が設けられている。
第1蓄電部41は、電力を蓄えるバッテリである。第1蓄電部41は、12V以上の最大定格電圧を有する。例えば、第1蓄電部41は、12Vの公称動作電圧を有するバッテリである。例えば、第1蓄電部41は、鉛バッテリである。第1蓄電部41は、エンジン10を少なくとも1回始動する量の電力を充電可能な容量を有する。
第2蓄電部42は、第1蓄電部41と常時直列接続される。第2蓄電部42は、第1蓄電部41の最大充電レートの2倍よりも大きい最大充電レートを有する。例えば、第2蓄電部42は、電力を蓄えるバッテリである。第2蓄電部42は、エンジン10を少なくとも1回始動する量の電力を充電可能な容量を有する。
電流維持回路43は、蓄電装置4が充電される間、第2蓄電部42に掛かる電圧が第2蓄電部42に設定された上限電圧を超えないように第1蓄電部41へ充電電流が流れる状態を維持する。ここでいう「蓄電装置4が充電される間」とは、少なくとも第1蓄電部41が充電される間を指す。電流維持回路43は、第2蓄電部42を電気的に切断することなく、第1蓄電部へ充電電流が流れる状態を維持する。
例えば、第2蓄電部42としてのバッテリの最大充電レートは、第1蓄電部41としてのバッテリの最大充電レートの2倍よりも大きい。第2蓄電部42としてのバッテリの最大定格電圧は、第1蓄電部41としてのバッテリの最大定格電圧よりも小さい。第2蓄電部42としてのバッテリの公称動作電圧は、第1蓄電部41としてのバッテリの公称動作電圧よりも小さい。
蓄電装置4として、電流維持回路43を備えない構成も採用可能である。例えば、蓄電装置4が1つのバッテリで構成されている場合、電流維持回路43は不要である。
【0109】
第1蓄電部41としてのバッテリの公称動作電圧は、例えば12Vである。第2蓄電部42としてのバッテリの公称動作電圧は、例えば6Vである。但し、具体的な電圧の組合せは特に限られず、例えば8Vと6Vの組合せ、例えば10Vと8Vの組合せ、11Vと8Vの組合せ、又は、12Vと3Vの組合わせでもよい。また、12Vのバッテリが12.5Vで動作することを見越し、12.5Vと2.5Vの組合わせでもよい。
【0110】
図6の(B)に示す例の蓄電装置4は、第1蓄電部41としてのバッテリと、第2蓄電部42としての1個のキャパシタとを備える。蓄電装置4には、電流維持回路43が設けられている。第2蓄電部42としての1個のキャパシタに掛かる最大電圧は、電流維持回路43に設定される上限電圧である。電流維持回路43の上限電圧は、キャパシタの耐圧及び蓄電装置4の最大定格電圧に応じて設定される。電流維持回路43に設定される上限電圧は、例えば6Vである。但し、上限電圧は、特に限られず2.5V、3V、8V、又は10Vでもよい。
【0111】
図6の(C)に示す例の蓄電装置4は、第1蓄電部41としてのバッテリと、第2蓄電部42としての2個のキャパシタとを備える。これによって、電流維持回路43の上限電圧として、1つのキャパシタの耐圧よりも大きな電圧を設定することができる。また、第2蓄電部42が1つのキャパシタの耐圧よりも大きな電圧を入力及び出力することができる。
【0112】
図6の(D)に示す例の蓄電装置4は、第1蓄電部41としてのバッテリと、第2蓄電部42としての3個のキャパシタを備える。これによって、電流維持回路43の上限電圧として、1つのキャパシタの耐圧の2倍よりも大きな電圧を設定することができる。また、第2蓄電部42が1つのキャパシタの耐圧の2倍よりも大きな電圧を入力及び出力することができる。
【0113】
図6の(E)に示す例の蓄電装置4は、図6の(B)に示す例に対し、さらに並列キャパシタ部44を備える。並列キャパシタ部44は、第1蓄電部41と並列に接続されている。並列キャパシタ部44は、1個のキャパシタを備える。この構成は、1個のキャパシタの耐圧が第1蓄電部41としてのバッテリよりも大きい場合に好適である。
キャパシタは、一般的に、同じ電力を放電するバッテリよりも短い期間で電力を供給することができる。キャパシタの内部抵抗は、一般的にバッテリの内部抵抗よりも小さい。また、キャパシタは、電圧に実質的に比例した電力(電荷)を蓄電する。キャパシタは、一般的に電圧に比例する電力を放電することができる。
従って、例えばエンジン始動によって第1蓄電部41と並列キャパシタ部44の電力が消費された後、第1蓄電部41から並列キャパシタ部44に電圧が供給され得る。即ち並列キャパシタ部44が、第1蓄電部41の電力で充電できる。次のエンジン始動で、第1蓄電部41が、始動に求められる電力を単独で供給できない状況でも、並列キャパシタ部44が、始動に求められる電力を供給できる可能性が高い。
【0114】
図6の(F)に示す例の蓄電装置4では、図6の(C)に示す例に対し、並列キャパシタ部44が付加されている。
図6の(F)に示す例のように、第1蓄電部41が有するキャパシタの数と、並列キャパシタ部44が有するキャパシタの数とは異なってもよい。第1蓄電部41が有するキャパシタの数と、並列キャパシタ部44が有するキャパシタの数とは、電流維持回路43の上限電圧及び第1蓄電部41としてのバッテリの最大定格電圧に応じて選択することが可能である。図6の(F)に示す例の蓄電装置4では、並列キャパシタ部44が4個のキャパシタを備えている。
【0115】
図6の(G)に示す例の蓄電装置4では、図6の(D)に示す例に対し、並列キャパシタ部44が付加されている。図6の(G)に示す例の蓄電装置4では、並列キャパシタ部44が3個のキャパシタを備えている。
【0116】
バッテリの数及びキャパシタの数は、図6の(A)から(G)に示す数に限られない。
例えば、図6の(G)に示す例の蓄電装置4に対し、並列キャパシタ部44が6個のキャパシタを備えていてもよい。第1蓄電部41を構成するキャパシタと、並列キャパシタ部44を構成するキャパシタの最大定格電圧のバランスが保ちやすい。
また更に、蓄電装置4に対し、第1蓄電部41は、例えば、互いに並列接続された2組のキャパシタの組を備えてもよい。キャパシタの組は、例えば、直列接続された3個のキャパシタで構成される。この場合、第1蓄電部41の容量が増大する。また例えば、更に、並列キャパシタ部44が6個のキャパシタを備えていてもよい。
並列キャパシタ部44が有するキャパシタと第2蓄電部42が有するキャパシタは同種類である。例えば最大定格電圧及び静電容量が等しいキャパシタは同種類のキャパシタである。
但し、並列キャパシタ部44が有するキャパシタと第2蓄電部42が有するキャパシタとは互いに異なる種類でもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 鞍乗型車両
3a,3b 車輪
4 蓄電装置
10 エンジン
15 クランク軸
20 永久磁石式発電機
21 インバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6