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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】ドリル及び切削加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
B23B51/00 K
B23B51/00 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021564037
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2020046081
(87)【国際公開番号】W WO2021117822
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2019223406
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 雅彦
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-177891(JP,A)
【文献】特開2017-109274(JP,A)
【文献】特開2011-020254(JP,A)
【文献】特開2012-061586(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107243(WO,A1)
【文献】特開2017-007089(JP,A)
【文献】特開2014-087873(JP,A)
【文献】特開2011-020256(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179689(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00-51/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って第1端から第2端にかけて延び、前記回転軸の周りで回転可能な本体を有し、
前記本体は、
前記第1端の側に位置して、前記回転軸から外周に向かって延びた第1刃と、
前記第1刃から外周に向かって延びた第2刃と、
前記第1刃に沿って位置するシンニング面と、
前記第2刃及び前記シンニング面から前記第2端に向かって、前記回転軸の周りで螺旋状に延びた溝と、
外周面と、を有し、
前記外周面は、
前記回転軸の回転方向の後方において、前記溝に沿って位置する第1マージン面と、
前記回転方向の後方において、前記第1マージン面に沿って位置し、前記第1マージン面に沿って延びた複数の凸条部を有するクリアランス面と、
前記回転方向の後方において、前記クリアランス面に沿って位置する第2マージン面と、を有し、
前記第1端に向かって見た場合に、
前記回転軸及び前記第1刃における外周側の端部を結ぶ仮想直線が第1直線であり、
前記第1直線の中心を通り前記第1直線に直交する仮想直線が第2直線であり、
前記第2直線が、前記第2マージン面と交わる、ドリル。
【請求項2】
前記第1端に向かって見た場合に、前記第2マージン面の前記回転方向における幅が、前記第1刃の長さと同じである、請求項に記載のドリル。
【請求項3】
回転軸に沿って第1端から第2端にかけて延び、前記回転軸の周りで回転可能な本体を有し、
前記本体は、
前記第1端の側に位置して、前記回転軸から外周に向かって延びた第1刃と、
前記第1刃から外周に向かって延びた第2刃と、
前記第1刃に沿って位置するシンニング面と、
前記第2刃及び前記シンニング面から前記第2端に向かって、前記回転軸の周りで螺旋状に延びた溝と、
外周面と、を有し、
前記外周面は、
前記回転軸の回転方向の後方において、前記溝に沿って位置する第1マージン面と、
前記回転方向の後方において、前記第1マージン面に沿って位置するクリアランス面と、
前記回転方向の後方において、前記クリアランス面に沿って位置する第2マージン面と、を有し、
前記第1端に向かって見た場合に、
前記回転軸及び前記第1刃における外周側の端部を結ぶ仮想直線が第1直線であり、
前記第1直線の中心を通り前記第1直線に直交する仮想直線が第2直線であり、
前記第2直線が、前記第2マージン面と交わり、
前記第2マージン面の前記回転方向における幅が、前記第1刃の長さと同じである、ドリル。
【請求項4】
前記第2マージン面の前記回転方向における幅が、前記第1マージン面の前記回転方向における幅よりも広い、請求項1~3のいずれか1つに記載のドリル。
【請求項5】
前記第1端に向かって見た場合に、前記第2直線が、前記第2マージン面の中心を通る、請求項1~4のいずれか1つに記載のドリル。
【請求項6】
前記第1端に向かって見た場合に、前記第2マージン面における前記第2直線よりも前記回転方向の後方に位置する部分の幅が、前記第2マージン面における前記第2直線よりも前記回転方向の前方に位置する部分の幅よりも大きい、請求項1~4のいずれか1つに記載のドリル。
【請求項7】
前記本体は、
前記第2刃に沿って位置する平らな二番逃げ面と、
前記回転方向の後方において前記二番逃げ面に沿って位置し、且つ、前記二番逃げ面に対して傾斜した三番逃げ面と、
前記回転方向の後方において前記三番逃げ面に沿って位置し、且つ、前記三番逃げ面に対して傾斜した四番逃げ面と、をさらに有し、
前記第2マージン面は、前記三番逃げ面に接続されるとともに、前記二番逃げ面及び前記四番逃げ面から離れた、請求項1~のいずれか1つに記載のドリル。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載のドリルを回転させる工程と、
回転している前記ドリルを被削材に接触させる工程と、
前記ドリルを前記被削材から離す工程と、を備えた切削加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年12月11日に出願された日本国特許出願2019-223406号の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般的には、被削材の穴あけ加工に用いられるドリル及び切削加工物の製造方法に関する。ドリルとしては、ソリッドドリル及び先端交換式ドリルなどが挙げられ得る。
【背景技術】
【0003】
金属などの被削材に穴あけ加工する際に用いられるドリルとして、例えば特開2011-020256号公報(特許文献1)に記載のドリルが知られている。特許文献1に記載のドリルは、外周面に第1~第3のマージン部を有する。このようにドリルが複数のマージン面を有する場合には、ドリルの直進性が高まる。
【0004】
近年、直進性がより高いドリルが求められている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の限定されない一例のドリルは、回転軸に沿って第1端から第2端にかけて延び、前記回転軸の周りで回転可能な本体を有する。前記本体は、前記第1端の側に位置して、前記回転軸から外周に向かって延びた第1刃と、前記第1刃から外周に向かって延びた第2刃と、前記第1刃に沿って位置するシンニング面と、前記第2刃及び前記シンニング面から前記第2端に向かって、前記回転軸の周りで螺旋状に延びた溝と、外周面と、を有する。前記外周面は、前記回転軸の回転方向の後方において、前記溝に沿って位置する第1マージン面と、前記回転方向の後方において、前記第1マージン面に沿って位置し、前記第1マージン面に沿って延びた複数の凸条部を有するクリアランス面と、前記回転方向の後方において、前記クリアランス面に沿って位置する第2マージン面と、を有する。そして、前記第1端に向かって見た場合に、前記回転軸及び前記第1刃における外周側の端部を結ぶ仮想直線が第1直線であり、前記第1直線の中心を通り前記第1直線に直交する仮想直線が第2直線であり、前記第2直線が、前記第2マージン面と交わる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の限定されない実施形態のドリルを示す斜視図である。
図2図1に示すドリルを第1端に向かって見た平面図である。
図3図1に示すドリルを第1端に向かって見た平面図である。
図4図2に示すドリルをB1方向から見た側面図である。
図5図2に示すドリルをB2方向から見た側面図である。
図6図2に示すドリルをB3方向から見た側面図である。
図7図1に示す領域A1を拡大した拡大図である。
図8図6に示すドリルにおけるVIII断面の断面図である。
図9】本開示の限定されない実施形態のドリルを第1端に向かって見た平面図であり、図3に相当する図である。
図10】本開示の限定されない実施形態の切削加工物の製造方法における一工程を示す概略図である。
図11】本開示の限定されない実施形態の切削加工物の製造方法における一工程を示す概略図である。
図12】本開示の限定されない実施形態の切削加工物の製造方法における一工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ドリル>
以下、本開示の限定されない複数の実施形態のドリルについて、図面を用いてそれぞれ詳細に説明する。但し、以下で参照する各図は、説明の便宜上、各実施形態を説明する上で必要な主要部材のみが簡略化して示される。したがって、ドリルは、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各部材の寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0008】
図1図8においては、ドリル1の限定されない一例として、ソリッドドリルを示している。なお、ドリル1は、ソリッドドリルに限定されず、例えば、先端交換式ドリルなどであってもよい。
【0009】
ドリル1は、図1に示す限定されない一例のように、本体3を有してもよい。本体3は、回転軸O1に沿って第1端3aから第2端3bにかけて延びてもよい。より具体的には、本体3は、回転軸O1に沿って第1端3aから第2端3bにかけて延びた棒形状でもよい。一般的には、第1端3aが「先端」と呼ばれ、第2端3bが「後端」と呼ばれる。また、本体3は、回転軸O1の周りで回転可能でもよい。なお、図1などにおける矢印Y1は、回転軸O1の回転方向を示している。
【0010】
本体3は、シャンク部5及び切削部7を有してもよい。シャンク部5は、工作機械の回転するスピンドルに把持されることが可能な部位であってもよい。シャンク部5は、工作機械におけるスピンドルの形状に応じて設計されてもよい。
【0011】
切削部7は、シャンク部5に対して第1端3aの側に位置してもよい。切削部7は、被削材に接触することが可能であり、被削材の切削加工(例えば、穴あけ加工)において主要な役割を果たすことが可能な部位である。
【0012】
切削部7の外径Dは、特定の値に限定されない。例えば、外径Dの最大値は、4~50mmに設定されてもよい。また、回転軸O1に沿った方向における切削部7の長さLは、L=1.5D~12Dに設定されてもよい。
【0013】
図2に示す限定されない一例のように、本体3は、第1刃9、第2刃11、シンニング面13、溝15及び外周面17を有してもよい。第1刃9は、第1端3aの側に位置してもよい。また、第1刃9は、回転軸O1から外周に向かって延びてもよい。第2刃11は、第1刃9から外周に向かって延びてもよい。シンニング面13は、第1刃9に沿って位置してもよい。溝15は、第2刃11及びシンニング面13から第2端3bに向かって、回転軸O1の周りで螺旋状に延びてもよい。なお、第1刃9、第2刃11、シンニング面13、溝15及び外周面17は、切削部7に位置してもよい。
【0014】
第1刃9は、切削加工において被削材を切削するために用いることが可能である。第1刃9の数は、1つでもよく、また、複数でもよい。第1刃9の数が複数の場合には、その数は、2~5でもよい。これらの点は、第2刃11においても同様である。なお、図1に示す限定されない一例におけるドリル1は、いわゆる2枚刃型のドリルである。
【0015】
第1刃9の数が複数の場合には、第1端3aに向かって見た場合に、複数の第1刃9が回転軸O1に対して回転対称となるように位置してもよい。具体的には、図2に示す限定されない一例のように、第1刃9の数が2つの場合には、第1端3aに向かって見た場合に、2つの第1刃9が回転軸O1に対して180度の回転対称となるように位置してもよい。この場合には、被削材を切削する際のドリル1の直進性が高い。これらの点は、第2刃11においても同様である。
【0016】
第1刃9は、チゼルエッジ19を有してもよい。チゼルエッジ19は、第1刃9において回転軸O1の最も近くに位置してもよい。また、チゼルエッジ19は、回転軸O1と交差するように位置してもよい。チゼルエッジ19は、第1端3aに向かって見た場合に、直線形状でもよく、また、曲線形状でもよい。図2に示す限定されない一例におけるチゼルエッジ19は、第1端3aに向かって見た場合に、直線形状である。
【0017】
第1刃9は、シンニング刃21を有してもよい。シンニング刃21は、チゼルエッジ19よりも外周面17の近くに位置してもよい。また、シンニング刃21の長さは、チゼルエッジ19の長さよりも長くてもよい。なお、チゼルエッジ19及びシンニング刃21は、互いに接続されてもよく、また、両者の間に他の刃が位置してもよい。図2に示す限定されない一例においては、チゼルエッジ19及びシンニング刃21が互いに接続される。
【0018】
シンニング刃21は、第1端3aに向かって見た場合に、直線形状でもよく、また、曲線形状でもよい。図2に示す限定されない一例のように、シンニング刃21は、第1端3aに向かって見た場合に、直線形状と曲線形状とが組み合わされた形状であってもよい。
【0019】
第2刃11は、切削加工において被削材を切削するために用いることが可能である。第2刃11は、主切刃とも呼ばれる。第2刃11の長さは、第1刃9の長さよりも長くてもよい。第2刃11は、第1端3aに向かって見た場合に、直線形状でもよく、また、曲線形状でもよい。図2に示す限定されない一例のように、第2刃11は、第1端3aに向かって見た場合に、凹曲線形状であってもよい。
【0020】
なお、第1刃9及び第2刃11は、互いに接続されてもよく、また、両者の間に他の刃が位置してもよい。図2に示す限定されない一例においては、第1刃9及び第2刃11が互いに接続される。
【0021】
シンニング面13は、第1刃9で生じた切屑が流れる面として機能することが可能である。また、シンニング面13は、刃先の強度を高め、被削材への食い付き性を高めるために用いることが可能である。
【0022】
溝15は、主として第2刃11で生じた切屑を外部に排出するために用いることが可能である。溝15の数は、1つでもよく、また、複数でもよい。溝15の数は、第2刃11の数と同じでもよい。
【0023】
溝15は、第2刃11に接続されてもよい。この場合には、被削材に対する食い付き性が高い。また、溝15と第2刃11との間に両者を接続するすくい面が位置してもよい。この場合には、第2刃11で生じた切屑の排出方向が安定し易い。切屑を円滑に外部に排出するという観点から、回転軸O1に直交する断面において、溝15は凹曲線形状でもよい。
【0024】
溝15の深さは、特定の値に限定されない。例えば、本体3(切削部7)の外径に対し、溝15の深さは、10~40%に設定されてもよい。溝15の深さとは、回転軸O1に直交する断面において、溝15の底と回転軸O1との距離を本体3(切削部7)の半径から引いた値のことであってもよい。底とは、溝15における回転軸O1に最も近い部分のことであってもよい。
【0025】
外周面17は、第1マージン面23、クリアランス面25及び第2マージン面27を有してもよい。第1マージン面23は、回転軸O1の回転方向Y1の後方において、溝15に沿って位置してもよい。クリアランス面25は、回転方向Y1の後方において、第1マージン面23に沿って位置してもよい。第2マージン面27は、回転方向Y1の後方において、クリアランス面25に沿って位置してもよい。
【0026】
第1マージン面23及び第2マージン面27は、第1刃9及び第2刃11によって形成された穴の内壁面に摺接してドリル1の操作性を安定させるために用いることが可能である。図8に示す限定されない一例のように、回転軸O1に直交する断面において、第1マージン面23及び第2マージン面27は、本体3の外周に相当する円弧状の部位でもよい。
【0027】
クリアランス面25は、切削加工において被削材との摩擦を減らすために用いることが可能である。クリアランス面25は、第1マージン面23及び第2マージン面27に対して窪んでもよい。
【0028】
なお、第1マージン面23、クリアランス面25及び第2マージン面27は、互いに接続されてもよく、また、隣り合う面との間に他の面が位置してもよい。図2に示す限定されない一例においては、第1マージン面23、クリアランス面25及び第2マージン面27が互いに接続される。
【0029】
ここで、ドリル1は、第1端3aに向かって見た場合に次の構成を有してもよい。図3に示す限定されない一例のように、回転軸O1及び第1刃9における外周側の端部9aを結ぶ仮想直線が、第1直線L1でもよい。また、第1直線L1の中心(中点)L1aを通り、且つ、第1直線L1に直交する仮想直線が、第2直線L2でもよい。そして、第2直線L2が、第2マージン面27と交わってもよい。なお、直交するとは、概ね直交すればよく、厳密な意味での直交である必要はない。直交は、90度±2度の範囲を含んでもよい。
【0030】
上記の場合には、第1マージン面23及び第2マージン面27が加工壁面に接触するため、第1マージン面23及び第2マージン面27が、穴あけ加工時のガイドとなり易い。したがって、ドリル1の直進性が高い。
【0031】
第1マージン面23の回転方向Y1における幅W1と、第2マージン面27の回転方向Y1における幅W2は、同じでもよく、また、異なってもよい。第2マージン面27は、第1マージン面23と比較して、第2刃11の近くにおいて第2刃11に加わる切削負荷の主分力の加わる方向に位置し易い。そのため、図3に示す限定されない一例のように、幅W2が幅W1よりも広い場合には、第2マージン面27において第2刃11に加わる切削負荷が安定して受け止められ易い。
【0032】
クリアランス面25の回転方向Y1における幅W3は、幅W1及び幅W2と同じでもよく、また、異なってもよい。図3に示す限定されない一例のように、幅W3が、幅W1及び幅W2よりも広い場合には、加工穴の壁面に対する第1マージン面23及び第2マージン面27の接触面積が小さいため、切削抵抗が低減され易い。
【0033】
なお、幅W1、幅W2及び幅W3は、特定の値に限定されない。例えば、回転軸O1に直交する断面において、本体3(切削部7)の外周の全長に対し、幅W1は、0.15~4%に設定されてもよい。また、幅W2は、14~23%に設定されてもよい。幅W3は、0.3~12%に設定されてもよい。
【0034】
図3に示す限定されない一例のように、第1端3aに向かって見た場合に、第2直線L2が、第2マージン面27の中心(中央)27aを通ってもよい。この場合には、第1刃9に加わる切削負荷が、第2マージン面27において安定して受け止められ易い。そのため、第1刃9が被削材に食い付くことに起因するドリル1の振れが発生しにくい。
【0035】
図2に示す限定されない一例のように、本体3は、二番逃げ面29、三番逃げ面31及び四番逃げ面33をさらに有してもよい。二番逃げ面29は、第2刃11に沿って位置してもよい。また、二番逃げ面29は、平らでもよい。三番逃げ面31は、回転方向Y1の後方において二番逃げ面29に沿って位置し、且つ、二番逃げ面29に対して傾斜してもよい。また、三番逃げ面31は、平らでもよい。四番逃げ面33は、回転方向Y1の後方において三番逃げ面31に沿って位置し、且つ、三番逃げ面31に対して傾斜してもよい。また、四番逃げ面33は、平らでもよい。
【0036】
第2マージン面27は、三番逃げ面31に接続されるとともに、二番逃げ面29及び四番逃げ面33から離れてもよい。第2マージン面27が二番逃げ面29から離れる場合には、第1刃9及び第2刃11に加わる切削負荷の主分力が第2マージン面27で受け止められ易い。また、第2マージン面27が四番逃げ面33から離れる場合には、第2マージン面27が三番逃げ面31に接続される場合と比較して、第2マージン面27が第1端3aの近くに位置し得る。そのため、穴あけ加工時に第1端3aの近くで第2マージン面27が被削材に接触可能となり、ドリル1の直進安定性が向上し易い。
【0037】
なお、三番逃げ面31及び四番逃げ面33のそれぞれの傾斜角度は、特定の値に限定されない。例えば、三番逃げ面31の傾斜角度は、15°~35°に設定されてもよい。また、四番逃げ面33の傾斜角度は、30°~55°に設定されてもよい。
【0038】
二番逃げ面29、三番逃げ面31及び四番逃げ面33は、互いに接続されてもよく、また、隣り合う逃げ面との間に他の面が位置してもよい。図2に示す限定されない一例においては、二番逃げ面29、三番逃げ面31及び四番逃げ面33が互いに接続される。
【0039】
図7に示す限定されない一例のように、クリアランス面25は、第1マージン面23に沿って延びた複数の凸条部(凸部)35を有してもよい。この場合には、クリアランス面25の表面積が大きく、放熱性が高くなり易い。そのため、切削加工時に生じる熱が外部に逃げ易く、ドリル1が過度に高温になることが避けられ易い。
【0040】
第1端3aに向かって見た場合に、第2マージン面27の回転方向Y1における幅W2は、第1刃9の長さと同じでもよく、また、異なってもよい。幅W2が第1刃9の長さと同じである場合には、第1刃9で生じる切削負荷が第2マージン面27で安定して受け止められ易い。そのため、ドリル1の振れが発生しにくい。なお、幅W2が第1刃9の長さと同じとは、両者の値が厳密に同じであることに限定されない。例えば、両者の値に10%程度の差があってもよい。
【0041】
本体3の材質としては、例えば、超硬合金及びサーメットなどが挙げられ得る。超硬合金の組成としては、例えば、WC-Co、WC-TiC-Co及びWC-TiC-TaC-Coが挙げられ得る。ここで、WC、TiC及びTaCは硬質粒子であってもよく、また、Coは結合相であってもよい。
【0042】
また、サーメットは、セラミック成分に金属を複合させた焼結複合材料であってもよい。具体的には、サーメットとして、炭化チタン(TiC)又は窒化チタン(TiN)を主成分としたチタン化合物が挙げられ得る。但し、上記の材質は限定されない一例であって、本体3は、これらの材質に限定されない。
【0043】
本体3の表面は、化学蒸着(CVD)法、又は、物理蒸着(PVD)法を用いて被膜でコーティングされてもよい。被膜の組成としては、例えば、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭窒化チタン(TiCN)及びアルミナ(Al23)などが挙げられ得る。
【0044】
次に、限定されない実施形態の1つのドリル1aについて、図9を用いて説明する。以下では、ドリル1aにおけるドリル1との相違点について主に説明し、ドリル1と同様の構成を有する点については詳細な説明を省略する場合がある。
【0045】
ドリル1aでは、図9に示す限定されない一例のように、第1端3aに向かって見た場合に、第2マージン面27における第2直線L2よりも回転方向Y1の後方に位置する部分の幅W21が、第2マージン面27における第2直線L2よりも回転方向Y1の前方に位置する部分の幅W22よりも大きくてもよい。この場合には、ドリル1aを第1端3aに向かって見た際に、第2マージン面27における第2刃11となす角が小さい部分が設けられ易い。そのため、第1刃9に加わる切削負荷だけでなく第2刃11に加わる切削負荷も第2マージン面27において安定して受け止められ易い。したがって、加工時の直進安定性が向上し易い。
【0046】
<切削加工物の製造方法>
次に、限定されない実施形態の切削加工物101の製造方法について、図10図12を参照して詳細に説明する。なお、図10図12に示す限定されない一例においては、ドリル1が用いられるが、このような形態に限定されない。例えば、ドリル1aが用いられてもよい。
【0047】
切削加工物101は、被削材103を切削加工することによって作製されてもよい。切削加工物101の製造方法は、以下の(1)~(4)の工程を備えてもよい。
【0048】
(1)準備された被削材103に対して上方にドリル1を配置する工程(図10参照)。
(2)回転軸O1を中心に矢印Y1の方向にドリル1を回転させ、被削材103に向かってY2方向にドリル1を近づける工程(図10参照)。
【0049】
(1)及び(2)の工程は、例えば、ドリル1が取り付けられた工作機械のテーブルの上に被削材103を固定し、ドリル1を回転させた状態で被削材103に近づけることにより行ってもよい。なお、(2)の工程では、被削材103とドリル1とは相対的に近づけばよく、例えば、被削材103をドリル1に近づけてもよい。
【0050】
(3)ドリル1をさらに被削材103に近づけることによって、回転しているドリル1を、被削材103の表面の所望の位置に接触させて、被削材103に加工穴105を形成する工程(図11参照)。
【0051】
(3)の工程では、本体3における切削部7の少なくとも一部が加工穴105の中に位置するように切削加工が行われてもよい。本体3におけるシャンク部5が、加工穴105の外側に位置するように設定してもよい。また、良好な仕上げ面を得る観点から、切削部7のうち第2端3bの側の一部が加工穴105の外側に位置するように設定してもよい。上記の一部を切屑排出のためのマージン領域として機能させることが可能であり、当該領域を介して優れた切屑排出性を奏することが可能である。
【0052】
(4)ドリル1を被削材103からY3方向に離す工程(図12参照)。
(4)の工程においても、上記の(2)の工程と同様に、被削材103とドリル1とは相対的に離せばよく、例えば、被削材103をドリル1から離してもよい。
【0053】
以上のような工程を経る場合には、優れた加工性を発揮することが可能となる。具体的には、限定されない実施形態の切削加工物101の製造方法において、ドリル1を用いる場合には、ドリル1の直進性が高いことから、精度が高い加工穴105を有する切削加工物101を得ることが可能となる。
【0054】
なお、以上に示したような被削材103の切削加工を複数回行う場合であって、例えば、1つの被削材103に対して複数の加工穴105を形成する場合には、ドリル1を回転させた状態を保持しつつ、被削材103の異なる箇所にドリル1の第1刃9及び第2刃11を接触させる工程を繰り返してもよい。
【0055】
被削材103の材質としては、例えば、アルミニウム、炭素鋼、合金鋼、ステンレス、鋳鉄及び非鉄金属などが挙げられ得る。
【符号の説明】
【0056】
1、1a・・・ドリル
3・・・本体
3a・・第1端(先端)
3b・・第2端(後端)
5・・・シャンク部
7・・・切削部
9・・・第1刃
9a・・端部
11・・・第2刃
13・・・シンニング面
15・・・溝
17・・・外周面
19・・・チゼルエッジ
21・・・シンニング刃
23・・・第1マージン面
25・・・クリアランス面
27・・・第2マージン面
27a・・中心(中央)
29・・・二番逃げ面
31・・・三番逃げ面
33・・・四番逃げ面
35・・・凸条部(凸部)
101・・・切削加工物
103・・・被削材
105・・・加工穴
O1・・・回転軸
Y1・・・回転方向
L1・・・第1直線
L1a・・中心(中点)
L2・・・第2直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12