(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】精留カラムの制御方法
(51)【国際特許分類】
B01D 3/42 20060101AFI20231127BHJP
C07C 25/08 20060101ALI20231127BHJP
C07C 17/383 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
B01D3/42
C07C25/08
C07C17/383
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022092696
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2019505500の分割
【原出願日】2017-08-01
【審査請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マティアス、シュベイゲルト
(72)【発明者】
【氏名】アヒム、キュッパー
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第03906002(DE,A1)
【文献】特開昭62-277102(JP,A)
【文献】特開平05-264010(JP,A)
【文献】特開平03-109902(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101879378(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 3/42
B01D 3/14
C07B 63/00
C07C 17/383
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成分と第2成分との2成分混合物を温度測定に基づいて分離するために、精留カラムにおいて少なくとも1種の第1成分の濃度を制御する方法であって、
該カラムの縦方向に配置された温度センサー
T3(T3)、温度センサーT2(T2)及び温度センサーT6(T6)は、T3及びT2が精留域に、T6がストリッピング域に、それぞれ配置されており
、T3、T2及びT6によって規定された制御域が、温度プロファイルを推測することによって直線化され、
前記温度センサーにより決定される実質温度プロファイルT
*(h)が、カラム高さhの関数としての関数T(h)によって近似され、
前記カラムがカラム高さhにわたり前記精留域と前記ストリッピング域とに分割され、かつ、
前記関数T(h)が各区域における1つのロジスティック関数に基づいて区域で規定されている、
前記方法。
【請求項2】
前記ロジスティック関数のそれぞれが、以下の種類:
【数1】
のロジスティック関数に基づいて生成されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記関数T(h)が、以下:
【数2】
[式中、
T
ab(h)およびT
v(h)はそれぞれ1つのロジスティック関数に基づいて規定され、
h
供給は、一部が40体積%~60体積%の第1成分、対応する残りの部分が第2成分からなる溶液がカラムに仕込まれる該カラムの高さを規定する]
によって規定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
【数3】
[式中、
Tは、0%=T_1および100%=T_2で、対応する第1および第2成分の各沸騰温度T_1とT_2に正規化され、かつ、
hは絶対カラム高さHに正規化され、かつ、
0<x<100で、精留域vにおいてhε[x%、100%]についてT(h)=T
v(h)であり、ストリッピング域abにおいてhε[0%、x%]についてT(h)=T
ab(h)であり、かつ、
T
0,vおよびT
0,abはそれぞれ温度に対する補助ベクトルであり、
v
vおよびv
abはそれぞれ温度の範囲であり、
k
vおよびk
abはそれぞれカラム高さhの方向における圧縮であり、かつ、
h
0,vおよびh
0,abはそれぞれ高さhの補助ベクトルである]
であり、
圧縮k
vおよびk
abは、変曲点でのロジスティック関数f(x)の傾斜とその変曲点での測定された
実質温度プロファイルT
*(h)との比較から確認でき、ここでT
*(h)の変曲点が妨害試験から確認された温度進行の各変曲点でのそれぞれの傾斜の平均から計算されたものであり、かつk
vおよびk
abはロジスティック関数の傾斜と変曲点での温度プロファイルとの比較から見出される、方法。
【請求項5】
前記xが24として選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ロジスティック関数の推移が、カラムへの供給時の温度(T5)によって決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ロジスティック関数の推移が、カラムへの供給時の温度(T5)によって決定され、かつ
前記T
v(h)の値の範囲が、前記第1成分の沸点と前記供給温度(T5)との間であり、それ故にT
0,v(h)=0およびv
v=T
供給である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記ロジスティック関数の推移が、カラムへの供給時の温度(T5)によって決定され、さらに、
前記T
v(h)の値の範囲が、前記第1成分の沸点と前記供給温度(T5)との間であり、それ故にT
0,v(h)=0およびv
v=T
供給であってもよく、かつ
前記T
ab(h)の値の範囲が、前記供給温度(T5)と前記第2成分の沸点との間であり、それ故にT
0,ab(h)=T
供給およびv
ab=1-T
供給であって、式中の1が第2成分の沸点に相当する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
それぞれの高さの方向におけるそれぞれの圧縮k
vまたはk
abが、ロジスティック関数f(x)の変曲点における傾斜と該変曲点で測定された
実質温度プロファイルT
*(h)との比較から確認でき、該T
*(h)の変曲点が、妨害試験から確認される温度プロファイルの各変曲点におけるそれぞれの傾斜の平均から計算されたものである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記h
0,vおよびh
0,abがパラメーターの推測によってそれぞれ決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記推測にガウス-ニュートン法が使用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1,2-ジクロロベンゼン(ODB)およびCOCl
2(ホスゲン)の分離のための精留カラムで使用される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実施可能なシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1成分と第2成分との2成分混合物を温度測定に基づいて分離するために、精留カラム内の少なくとも1種の第1成分の濃度を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精留カラムは化学産業で最も重要な製造ユニットのうちの1つであり、物質の混合物の分離に使用される。分離はエネルギー集約的である。経済上および環境上両方の理由で、エネルギー消費量は最小化されるべきである。同時に、仕様に準拠することが必要であり、これにはカラムの異なる態様が含まれ得る。代表例としては:
・頂部生成物の生成物純度
・底部生成物の生成物純度
・頂部生成物の回収率
・底部生成物の回収率
・供給流の供給速度
である。
【0003】
仕様は顧客によって課される要求、または環境条例から、いずれかによって発生するか、あるいは後の製造工程に起因することがある。
【0004】
精留は、蒸留のように、熱分離プロセスである。最も単純な場合では、2成分混合物はその純粋成分へ分離される。分離はある程度までしか実行することができない。精留の場合には、より低い蒸気圧を有する物質は低沸点分(low boiler)、より高い蒸気圧を有する物質は高沸点分(high boiler)と呼ばれる。精留では、低沸点分の濃度が液相中でよりも蒸気相中の方が高いという物理的原理を利用する。蒸留と対照的に、この方法は繰り返され、これはカラムの頂部で形成された復水の一部しか引き出されて回収されず、一方では頂部復水液の残りの部分がいわゆる還流としてカラムの頂部へ送り戻されることを意味する。これは、混合物の成分のより高い純度を達成することができる(即ち精留の生成物)。精留の概念は理想的な分離段階によって説明することができる。蒸留の場合において、各分離段階ではそれぞれの相平衡が確立される。
【0005】
精留カラムの目的は、物質の混合物を純粋物質または純粋成分へと分離することである。しかしながら、物質の混合物中の少量の成分は常に存在する。本明細書は、それぞれの場合において第2成分の濃度がどの程度高いかを規定する。第2成分の濃度がより低いことは高いエネルギー消費に常に関係している。したがって、少なくとも1種の純粋物質または成分の所望の濃度を維持することが制御方法の主要な目的である。同様に制御されるのは、高沸点分が回収される底部と呼ばれるカラムの下部領域におけるレベル、頂部と呼ばれるカラムの上部領域におけるレベル、即ち低沸点分を意図した復水容器におけるレベル、および圧力である。レベルはカラムが溢れたり、または枯渇することを防止するため、および物質収支を維持するために制御する。以下の操作される可変事項(variable)が、濃度、圧力、およびレベルの制御される可変事項にとって可能である。
・供給バルブ
・蒸気バルブ
・冷却液バルブ
・留出物バルブ
・底部生成物バルブ
・還流バルブ。
【0006】
操作される可変事項の制御される可変事項への割り当ては物理的/化学的に考慮した中で行われる。
【0007】
DE3906002A1には、精留カラムのためのモデルアシスト分析および制御装置であって、サンプリングと結果の表示との時間差を軽減するために、複数の入力パラメーター、すなわち、物質移動の比較的顕著な変化がある領域の温度、カラムの圧力、単位時間当たりの供給速度、供給濃度、供給温度、供給圧力、留出物受液器(distillate receiver)の充填レベル、底部での充填レベル、ならびに次の4つの流量からの2つのパラメーターの組み合わせ:還流速度、留出物速度、加熱蒸気速度、および底部生成物速度、が予め決定されていて、入力パラメーターが予め決定された方程式を用いてモデルで処理され、結果として生じる生成物組成および生成物割合などの出力パラメーターが制御要素の発動に直接用いられる、モデルアシスト分析および制御装置が記載されている。
【0008】
Achim Kienleによる「Low-order dynamic models for ideal multicomponent distillation processes using nonlinear wave propagation theory」という記事では、精留カラムの単純化モデルであって、単純化モデルが、低減された「ウェーブモデル(wave model)」が導き出される厳密モデル(rigorous model)に基づくものである単純化モデルが開示されているが、これには使用された物質および装置特性の広範な情報、例えばすべてのトレーでの理想的な分離段階、パッキング特性などを要する。
【0009】
濃度の測定については、例えば、質量分析計を使用することが可能である。しかしながら、対応する機器は非常に高価であるために、通常温度測定は濃度を制御するために用いられる。濃度を制御するためのそれぞれの温度センサーは(通常)カラムの頂部または底部に取り付けられず、その理由としてはこれらの部位の感度が低すぎるためである。代わりに、例えばPaul S. Fruehauf, PE, Donald P. Mahoney: DISTILLATION COLUMN CONTROL DESIGN USING STEADY STATE MODELS: USEFULNESS AND LIMITATIONS, 1993に記載されているように、定常状態モデルを用いて感度が濃度に最も関連する点を確認することが可能である。選択される点は温度偏差が両方向においてほぼ同一であって感度が十分な点である。
【0010】
蒸気(底部におけるフィード(feed))および冷却液(頂部におけるフィード)を用いた温度の制御を介した濃度の制御は、十分でない場合が多い。多くのカラムはそれぞれの物質移動域で高温勾配を有する温度プロファイルを有している。
【0011】
W.L.Luybenは、自身の記事「Profile Position Control of Distillation Columns with Sharp Temperature Profiles」で、多くの温度センサーを用いて温度プロファイルがどのように局地化されるかを記載し、温度プロファイルの位置がプロセス変量として使用されている。
【発明の概要】
【0012】
今や、急激な温度プロファイルを有する精留カラムにおける2成分混合物の成分の濃度を制御するためのさらに改善された手段を提供することが本発明の目的である。
【0013】
この目的を達成するために、本発明は方法、およびそれぞれの独立項の特徴を有するシステムを提供する。本発明の構成は対応する従属項および明細書の記載から明白である。
【発明の詳細な説明】
【0014】
本発明は、第1成分と第2成分との2成分混合物を温度測定に基づいて分離するために、精留カラムにおいて、少なくとも1種の第1成分の濃度を制御する方法に関する。この方法では、カラムの縦方向に配置した温度センサーによって規定された制御域が、温度プロファイルを推測することによって直線化され、温度センサーによって決定される実質温度進行T*(h)が、カラム高さhの関数としての関数T(h)によって近似され、カラムがカラム高さhにわたり2つの区域に分割され、関数T(h)が各区域における1つのロジスティック関数に基づく区域で規定されている。
【0015】
温度進行の近似において、物質移動域の位置を決定または推定することも可能である。物質移動域の位置は、所望の生成物の濃度に接続した物質移動域の所望の位置を設定するために制御された可変量としての役割を果たす。生成物濃度と物質移動域との間には規定された関係があり、これは2成分混合物の成分として使用される物質を別々に考慮しなければならない。生成物濃度は第1成分(例えば頂部生成物)の濃度、第2成分(例えば底部生成物)の濃度または両方の成分の濃度を意味すると理解され得る。推定温度進行によって、例えば頂部の温度を推定し、これを低沸点分または頂部生成物の濃度を確認するための基礎として使用することが可能である。本発明上、ロジスティック関数を各区域において使用することによって、物質移動域と操作された可変量の各区域間の直線的関係が生じる。2成分混合物は、2つの物質移動域、即ち第1がカラムの下部領域(即ち、フィードの下またはストリッピング域中)、および第2がカラムの上部域(即ち、フィードの上または精留域)の結果となる。精留域に対する操作された可変量は冷却剤速度であり、ストリッピング域のための操作された可変量は蒸気速度である。使用したコントローラーは標準コントローラーであってもよい。
【0016】
可能な構成において、本発明の方法は、1,2-ジクロロベンゼン(ODB)およびCOCl2(ホスゲン)を分離するための精留カラムで使用される。
【0017】
本発明の利点は、第一に、先行技術から知られたモデリングのアプローチと比較してモデリングの煩雑性が遥かに低いことであって、その理由としては必要な物理的データ(沸騰温度)およびカラムデータ(充填物の種類等)がほとんどないためであり、第二に、結果として必要な計算能力がより低いことである。先行技術から知られた厳密プロセスモデルには容易に数百の微分方程式が含まれることがある一方、ここで提示された単純化プロセスモデルでは、インストールされた測定箇所または温度センサーの数に依存して、それより1~2桁小さい。これは、専用ハードウェアを使用することなく、生産的なシステムの使用を可能にする。厳密モデルは、正確な科学的方法論を用いた技術的メカニズムを表わす。それらは物理的、化学的、または化学工学的な関係に基づいて作成される。例えば、厳密モデルは、プラントまたはカラムにおける知られた方法および反応の全てが特徴的な線、微分方程式、およびバランス式によって物理的かつ動的に少しずつシミュレーションされるという点で、精留カラムまたはそこで進行するプロセスを再現およびシミュレーションする。しかしながら厳密モデルは実施するのには非常にコストがかかり、ほとんどの操作にコストがかかり過ぎる。
【0018】
この態様はこのような生産的なシステムのため、そしてそれに対する決定に大きな影響を与えることがあり、その理由としては50年間操作されたプラントにおいて追加のシステムの手入れをすることは追加の労働(操作システムの移行、メンテナンス、アップデート、新操作システムとの適合性の欠如)を生じさせて、これらはシステムの停止につながることがあるためである。
【0019】
特定の条件下では、カラムの頂部または底部での推定温度を濃度の計算に使用することができる。第2の成分の濃度が「低い」ことが前提条件である。しかし、決定される濃度は第2成分の濃度より低いことがある。ある構成において、温度プロファイルはプラントまたはカラムに割り当てられた制御パネルにおいて視覚化することができ、そうすることで例えば、カラムの中央の任意の温度上昇の摂動による頂部温度に対する影響がより良好に推定され得る。
【0020】
以下にホスゲンとODBとの混合物の分離のための精留カラムの例を使用した本発明の方法の説明が続き、ここでホスゲンが第1成分および混合物中の低沸点分であり、ODBが第2成分および混合物中の高沸点分である。したがって精留行う場合、ホスゲンはカラムの上部域(即ちカラムの頂部)において集まり、このため頂部生成物である。対照的に、高沸点分としてのODBはカラムの底部で富化し、このため底部生成物である。ホスゲンとODBとを分離するための精留カラムの例を使用した温度プロファイルの推定値は、シミュレーションを行ったシステムでの妨害試験(disturbance test)の間の観察に由来する。妨害試験は操作された可変量の急激な変化、例えば頂部での冷却速度、または底部での蒸気速度を意味すると理解される。カラムから得られ、それに沿った温度プロファイル(例えばカラム高さに沿って)では、特に高温勾配(高さに基づいた)での特徴的域(または正面、即ち高温勾配の地点-「Jorg Raisch: MehrgroBenregelung im Frequenzbereich [Multiparameter Control in the Frequency Range], Oldenbourg Wissenschaftsverlag, Berlin, 1994.",第9.18章」が観察される。これらの地点では、顕著な物質移動があるためにこれらの地点も物質移動域と呼ばれる。いわゆるWienerモデル(即ち静的な非線形性が出力で生じる線形システム)が想定される場合、温度特性は、静的な非線形性の形態で表わすことができる。進行の特長は2つのS字形の温度進行である。1つ目は、カラムの頂部(カラム高さの100%)とフィード(カラム高さの約24%)との間の精留域をカバーし、もう一方のストリッピング域はフィードとカラム底部(0%)との間をカバーする。特徴的なS字形は妨害試験の間に維持され、単にカラム高さに沿って移動しただけであった。この結果は、静特性の変化による、妨害試験の間のカラムの挙動に接近するアプローチ、即ちより具体的にはカラム高さに沿った温度特性である。妨害試験についての観察には次が示されている:温度における恒常的増幅率(steady-state gain)の変異の幅、即ち特定のカラム高さでの温度の変異の幅、がカラム高さに沿った特徴におけるシフトにおける変異の幅より大きい。例えば、最後の妨害でしかカラム高さの40%での温度測定点に顕著な変化(即ち、約20%)がない。対照的に、妨害試験において特定の温度がカラム高さの関数としてモニタリングされ、ほぼ直線的な進行が明らかである。最初に求められているものは特定の温度が発生する高さ(レベル)である。形式的な感覚では、高さをモニタリングするための温度が第1成分の沸点と第2成分の沸点との間、即ち、純物質の沸点の間でなければならない。可能性のある1つの温度は正面の位置を説明する温度である。実質温度進行T*(h)は静的なシミュレーションから分かる。この進行は本発明に従い関数T(h)より接近する。
【0021】
本発明の構成では、ロジスティック関数の推移はカラムへの供給の温度によって決定される。
【0022】
本発明の方法の1つの実施態様では、選択されたそれぞれのロジスティック関数は以下の種類のロジスティック関数である。
【数1】
方程式(1)からのロジスティック関数は、x=0で変曲点を有し、[0、1]の値の範囲を有する。温度プロファイルにロジスティック関数を適合させるために、ロジスティック関数を縮小して変更させなければならない。これは次のパラメーターで以下の関数を生じさせる。
【数2】
h
0はロジスティック関数の変曲点を0からh
0点へ推移させる補助的ベクトルである。オンラインで確認したパラメーターh
0はカラムを制御するために使用することができ、その理由としては非直線的挙動の程度が低いことを示しているからである。kはカラムの高さの方向の
圧縮を表し、T
0は温度(T
最小)の補助的ベクトルを表し、vは温度の範囲(T
最大-T
最小)を表す。
【0023】
本発明の方法のさらなる実施態様では、関数T(h)は以下:
【数3】
[式中、
T
ab(h)およびT
v(h)はそれぞれロジスティック関数に基づいて規定され、 h
供給は、2成分混合物、特に同等分の第1成分と第2成分からなる溶液がカラムに仕込まれるカラムの高さを規定する。]
【0024】
本発明の方法のさらなる構成においては、
【数4】
[式中、
0%=T_1および100%=T_2で、温度が対応する第1成分と第2成分の各沸騰温度T_1とT_2に正規化され、
hは絶対カラム高さHに正規化され、
0<x<100で、カラムの精留域vにおいてhε[x%、100%]についてT(h)=Tv(h)であり、ストリッピング域abにおいてhε[0%、x%]についてT(h)=T
ab(h)であり、
T
0,vおよびT
0,abはそれぞれ温度に対する補助ベクトルであり、
v
vおよびv
abはそれぞれ温度の範囲であり、
k
vおよびk
abはそれぞれカラム高さhの方向における
圧縮であり、かつ、
h
0,vおよびh
0,abはそれぞれ高さhの補助ベクトルである]である。h
0,vおよびh
0,abはそれぞれカラムの精留域およびストリッピング域における物質移動域に相当する。
【0025】
本発明の方法の1つの構成では、xは24と選択する。これは、供給バルブが配置される相対的な高さに相当する。特定の供給高さは、それぞれのカラムの設計に依存し、カラム設計についての知識で正確に計算することができる。供給高さは「部分関数(part-functions)」Tab(h)およびTv(h)の推移を規定する。
【0026】
供給温度は、ロジスティック関数との間の推移を決定する。
【0027】
さらなる構成において、Tv(h)の値の範囲は第1成分の沸点と供給温度との間であり、それ故にT0,v(h)=0およびvv=T供給である。
【0028】
したがってT
v(h)の値の範囲は第1成分(即ち低沸点分)の沸点と、供給温度(即ちフィードでの温度)との間の関数値しか含まない。これによって次の補助ベクトルと範囲が生じる。
【数5】
式中、T
供給は第2成分の沸騰温度に正規化され、第1成分の沸騰温度は「0」に設定される。
【0029】
加えて、さらなる構成において、Tab(h)の値の範囲は供給温度T
供給と第2成分の沸点との間であることが推測された。ストリッピング域T
ab(h)におけるロジスティック関数は供給温度T
供給と第2成分(即ち高沸点分)の沸点との間の値の範囲を有する。これによって、
【数6】
[式中、1は第2成分の実質沸騰温度に正規化した沸点または第2成分の正規化された沸点に相当し、T
供給は第2成分の沸騰温度に正規化されている]
が得られる。
【0030】
本発明のさらなる実施態様において、それぞれの高さの方向におけるそれぞれの圧縮kvまたはkabは、変曲点でのロジスティック関数f(x)の傾斜とその変曲点での測定された温度進行T*(h)との比較から確認でき、ここでT*(h)の変曲点が妨害試験から確認された温度進行の各変曲点でのそれぞれの傾斜の平均から計算されたものである。したがって高さkvまたはkabの方向における圧縮はロジスティック関数の傾斜と変曲点での温度プロファイルとの比較から見出される。
【0031】
したがって、h0,vおよびh0,ab以外の全てのパラメーターが設定された。h0,vおよびh0,abはカラムのそれぞれの領域または区域(即ち精留域またはストリッピング域)における点hでの任意の温度点Tを介して、上記それぞれの対応する方程式を解くことによって計算することができる。しかしながら、利用可能な測定点は複数あるために、これは多すぎる方程式システムである。言及される方法の欠点は、測定ノイズおよび測定ドリフトのなどの不正確な測定が、温度センサーがh0,vまたはh0,abから遠くに外された場合に増幅することである。解決のために1つの方程式を使用するのではなく、本発明はさらなる構成において言及された欠点を補うために推測パラメーターで上記方法を補完することを提案し、ここでh0,vおよびh0,abは推測パラメーターによってそれぞれ決定される。
【0032】
以下に、一般的意味における本発明に従い想定された、方程式(2)に基づくパラメーター推測の詳細が続く。h0,vおよびh0,abの決定について適用は同一である。
【0033】
これには第一にパラメーターh
0に関連する温度の最小平均平方を最小化することが含まれる。
【数7】
関数f(h)は方程式(2)、即ちf(h)=T(h)に相当する。連続パラメーターiは、精留域もしくは区域またはストリッピング域もしくは区域においてそれぞれ存在する温度測定点を示す。パラメーターh
0、即ち精留域についてはh
0,vおよびストリッピング域についてはh
0,abを推測する。パラメーターは指数にあるためにこれは非直線的な最小化問題である。
【0034】
本発明の方法の可能性のある1つの構成において、推測にはガウス=ニュートン法を使用する。
【0035】
残留ベクトル
【数8】
は測定温度から推測された電流偏差を記載し、以下のように生成される。
【数9】
【0036】
ガウス=ニュートン法はさらにh
0における
【数10】
の偏導関数を要する。
【数11】
【0037】
これはJacobiマトリックスを与える。
【数12】
【0038】
次に段階幅sは以下のように計算される。
【数13】
【0039】
決定を行うパラメーターの場合、Dはベクトルである。したがって、とりわけ方程式(15)からの(13)での反転を単純化して、
【数14】
を得る。
【0040】
【0041】
h0の推定値は、物質移動域として、精留域h0,v=H1=y1および物質移動域として、ストリッピング域h0,ab=H2=y2の両方の制御された可変量に使用される。使用される操作された可変量は、冷却剤速度および蒸気速度である。
【0042】
本発明のさらなる利点および構成は本明細書の記載および添付された図面より明白である。
【0043】
上で言及した特徴および以下に詳細に説明される予定の特徴がそれぞれの場合において規定された組み合わせにしか使用可能なだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせまたはそれ自体でも使用可能であることは明白であろう。
【0044】
本発明は、実施例による図面で図の形態で示され、図を参照することによって以下に図式的および詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は、本発明の方法の1つの実施態様において制御することができる精留カラムの概略図を示した図である。
【
図2】
図2は、妨害試験を行った後の精留カラムの実例となる温度プロファイルを示す図であって、それぞれの場合に変更された操作された可変量としての各場合での冷却剤速度の変質作用による。
【0046】
図1に示される精留カラムは、例えばトルエンジイソシアネート(TDI)を調製するためのプラントに取り込まれる。示されたカラムは、TDI反応ラインに気体のホスゲンを仕込む役割を有している。カラムには上部域(即ち頂部域または頂部)があり、かつ下部域(即ち底部域または底部)がある。精留を行うにあたり、頂部生成物としてのホスゲンは頂部で富化し、底部生成物としてのODBは底部に蓄積する。標準カラムとは異なり、形成された頂部生成物は完全に凝縮されているのではなく、気体の形態で引き出される。したがって、
図1に示されるカラムには凝縮液容器がない。代わりに、挿入凝縮器が使用される。その結果、還流速度および還流比は、冷却剤速度によってしか間接的に制御することができない。第一にホスゲンは、供給弁Y3を有する供給F2によってホスゲン溶液の形態で導入される。第二に、それはカラムの頂部F1で液体のホスゲンとして純粋な形態で適用される。ホスゲン溶液は大体等分のホスゲンおよびODB溶媒からなる。頂部でのバルブY1によって、冷却液または冷却剤は冷却剤供給F3によって仕込まれる。冷却液は、出口G3によってカラムから再び除去することができる。マノメーターP1は圧力を測定し、それは本質的に一定に維持するべきである。カラムには温度センサーT1~T7がそれぞれ配置されている複数の地点または段階がある。バルブY2および供給F4を介して、熱媒体または蒸気はカラムの底部に供給される。カラムの分離分(separation)において形成された対応する底部生成物は、バルブY4によって除去される。供給F2は2つの区域、即ち、供給F2とカラムの頂部との間の上部精留域(ここで示される場合においてカラム高さ24%~100%の範囲内)およびカラム底部で供給F2との間のより低いストリッピング域(即ち、ここに示される場合において0%~24%の間)にカラムを分ける。精留域では、ホスゲンは低沸点分として富化する。ストリッピング域では、ホスゲンはODB溶媒から分離される。濃度の制御については、特に温度センサーの位置が重要である。標準法としては一般的に、頂部温度も底部温度も直接に制御に使用せず、むしろ供給F2とそれぞれの製品出口との間の温度を使用する。精留域での有用な温度は、頂部生成物の濃度の制御に対しては、温度センサーT2~T4の温度であり、底部生成物の濃度の制御に対しては、温度センサーT6からの温度である。
【0047】
図2は、妨害試験を行う前後の
図1からの精留カラムの温度プロファイルT
*(h)を示し、それぞれの場合において操作された可変量として冷却剤速度を急激に変更させたことによる。
横座標10は%で示すカラム高さhである(即ち、絶対値のカラム高さHに正規化されている);ここで100%はカラムの頂部に相当する;0%はカラム底部に相当する。 縦座標20は%で示すプロットされた温度であって、この温度はホスゲンとODBのそれぞれの沸騰温度を標準化したものである。ここで0%は、ホスゲンの沸騰温度に相当し、100%はODBの沸騰温度に相当する。
【0048】
示されたそれぞれの進行の特長は、1つの温度プロファイル当たりの各妨害試験に対する2つのS字形温度進行である。1つ目は、カラムの頂部(100%)と供給F2(24%)との間の精留域をカバーし、他は供給F2とカラムの底部(0%)との間のストリッピング域をカバーする。特有のS字形は妨害試験の間に維持され、カラム高さ(即ち横座標)に沿ってほとんどシフトしていない。これは、静的特徴の変化による妨害試験でのカラムの挙動に接近するアプローチを生じさせる。以下のことが妨害試験の観察から明らかとなる:温度における恒常的増幅率(縦座標20に沿った)の変異の範囲が、特性(横座標10に沿った)の変化の変異の範囲より大きい。カラム高さの40%での温度測定点は、最後の妨害でしか約20%と著しく変化しない。対照的に、温度をモニタリングした場合(例えば横座標10上で40%)、およそ線形の進行が明白となる。第一に求めるものとしては特定の温度が生じる高さ(段階)である。形式上の意味では、モニタリングを行う高さに対する温度は、純粋材料(即ちホスゲンおよびODB)の沸点の間になければならない。1つの選択肢は、
図2中の正面の位置を記載する温度である。