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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】消火栓装置点検システム
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/50 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
A62C37/50
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022134619
(22)【出願日】2022-08-26
(62)【分割の表示】P 2018181248の分割
【原出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2022165427
(43)【公開日】2022-10-31
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029968(JP,A)
【文献】特開2017-225476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火栓開閉レバーの操作により消火栓弁が開閉操作される消火栓装置の機能点検を行う消火栓装置点検システムであって、
前記消火栓開閉レバーと前記消火栓弁とを連結する遠隔操作機構
外部からの信号に基づき作動し、前記消火栓弁を開閉駆動するアクチュエータ機構と、
前記消火栓開閉レバー及び前記アクチュエータ機構からの駆動力伝達を断接するクラッチ機構と、
を備え、
前記遠隔操作機構、前記アクチュエータ機構及びクラッチ機構により、前記消火栓開閉レバーが動作することなく前記消火栓弁を開閉駆動するように制御されることを特徴とする消火栓装置点検システム。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置点検システムであって
前記アクチュエータ機構
前記消火栓弁が接続される配管からの水圧により作動する水圧アクチュエータと、
前記水圧アクチュエータの直線運動を回転運動に変換する運動変換機構と、
を備えたことを特徴とする消火栓装置点検システム。
【請求項3】
請求項1記載の消火栓装置点検システムであって、
前記クラッチ機構は、
前記アクチュエータ機構から前記消火栓弁への駆動力を伝達し、前記消火栓弁から前記アクチュエータへ機構の駆動力を伝達しない第1クラッチと、
前記消火栓開閉レバーから前記遠隔操作機構への駆動力を伝達し、前記遠隔操作機構から前記消火栓開閉レバーへの駆動力を伝達しない第2クラッチと、
を備えたことを特徴とする消火栓装置点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル付きのホースを引き出して消火するトンネル内に設置された消火栓装置を点検する消火栓装置点検システム及び三方切替弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道路などのトンネル内に設置するトンネル非常用設備として消火栓装置が設けられており、消火栓装置は開放自在な消火栓扉を備え、先端にノズルを装着したホースと消火栓弁を含むバルブ類を収納している。
【0003】
消火栓装置は、一般的に、トンネル側壁に沿って例えば50メートル間隔でトンネル壁面に埋込み設置され、火災時に通行中の道路利用者を主な操作者として想定し、トンネル内で発生する比較的小規模の火災や初期段階での火災を消火するために設置されている。
【0004】
トンネル消火栓装置は道路トンネルにおいては、初期消火手段として極めて重要な設備であり、道路管理者は定期的に点検を行い、保守維持管理に務めている。
【0005】
しかしながら、道路供用後は、自動車が通行している中で点検を実施するなど、あるいは他の施設と合わせて実施する道路規制または道路通行止めの際に点検を実施するなど、時間的制約、また安全上の規制など、維持管理には課題が多い。
【0006】
さらに、近年、都市型の長大トンネルが出現するにあたり、消火栓装置一台当りの点検時間と設置台数を掛け合わせた最低必要時間を考えると、連日の点検が必要となることもあり、点検の質の維持、向上を実現することは、さらに難しくなってきている。また、今後、社会的には少子高齢化が進むことが確実であり、技術の承継だけでなく、そもそも人員不足により、点検要員が確保できなくなるという問題の解決も喫緊の課題である。
【0007】
このような課題を解決する方法として、特許文献1に示すトンネル消火栓装置の点検システムが提案されている。この点検システムでは、消火栓弁に並列して電動弁を設けると共に、これに続く自動調圧弁装置の二次側に三方切替電動弁を設け、自動点検を行う場合には、遠隔操作により三方切替電動弁をホースへの給水側から排水側に切替えた後に消火栓弁に並列した電動弁を開放して消火用水を排水側に流し、ノズル付きホースから放水したと同等な放水試験を行い、自動調圧弁により正常な放水圧力が得られるか否か点検している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-120717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の消火栓装置点検システムにあっては、消火栓弁の開閉動作、消火栓弁開閉レバーにより消火栓弁を開閉させるリンクワイヤーを用いた実際の操作機構については点検ができておらず、自動調圧弁の設定値を中心とした点検となっているなど、またまだ点検者に依存する点検が残されているのが現状であり、より詳細に機能維持について点検ができ、省力化、高信頼性の確保をしたいという様々な要請に十分に応えられていない。
【0010】
更に、従来の消火栓装置点検システムにあっては、配管に電動弁と三方切替電動弁の二台を直接設けて点検する方式を採用しているため、確率的には故障率が上昇すること、設置スペースが大きくなること、二台分の電力用ケーブルや制御ケーブルの追加施設が必要となること、また順次電動弁を制御していくことから点検制御が複雑になること、配管に開閉駆動する電動弁を直接設けているので電動弁が大型化して消費電流が大きくなることなど、多くの課題が残されている。
【0011】
本発明は、消火栓弁及びその遠隔操作機構を含む消火栓装置の重要な機能の点検を遠隔且つ自動で行うことを可能とし、点検時の消費電力を低減し、点検対象機器の異常を確実に検知可能とする消火栓装置点検システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(消火栓装置点検システム)
本発明は、消火栓開閉レバーの操作により消火栓弁が開閉操作される消火栓装置の機能点検を行う消火栓装置点検システムであって、
消火栓開閉レバーと消火栓弁とを連結する遠隔操作機構
外部からの信号に基づき作動し、消火栓弁を開閉駆動するアクチュエータ機構と、
消火栓開閉レバー及びアクチュエータ機構からの駆動力伝達を断接するクラッチ機構と、
を備え、
遠隔操作機構アクチュエータ機構及びクラッチ機構により、消火栓開閉レバーが動作することなく消火栓弁を開閉駆動するように制御されることを特徴とする。
アクチュエータ機構
消火栓弁が接続される配管からの水圧により作動する水圧アクチュエータと、
水圧アクチュエータの直線運動を回転運動に変換する運動変換機構と、
を備える
クラッチ機構は、
アクチュエータ機構から消火栓弁への駆動力を伝達し、消火栓弁からアクチュエータ機構への駆動力を伝達しない第1クラッチと、
消火栓開閉レバーから遠隔操作機構への駆動力を伝達し、遠隔操作機構から消火栓開閉レバーへの駆動力を伝達しない第2クラッチと、
を備える。
【発明の効果】
【0013】
(基本的な効果)
本発明は、消火栓開閉レバーの操作により消火栓弁が開閉操作される消火栓装置の機能点検を行う消火栓装置点検システムであって、消火栓弁に続いて設けられ、シリンダ室にピストンが設けられた駆動機構の制御により、ピストンに連結された弁体を流入口と流出口を連通すると共に流入口と排水口を切り離す放水切替位置と、流入口と流出口を切り離す共に流入口と排水口を連通する排水切替位置とに切替え、排水切替位置に切り替えた場合に開いて外部に消火用水を供給する制御ポートがシリンダ室に設けられた点検用切替弁と、点検用切替弁のシリンダ室に消火用水を供給する配管に設けられたパイロット電動弁と、制御ポートからの消火用水の供給により前記消火栓弁を開駆動させる水圧アクチュエータと、点検開始でパイロット電動弁を開制御することにより、点検用切替弁の排水切替位置への切り替え、制御ポートからの消火用水の供給、及び水圧アクチュエータによる消火栓弁の開駆動を順次行わせて点検用切替弁から排水側に消火用水を流して点検させる点検制御部とが設けられ、消火栓開閉レバーは、遠隔操作機構を介して消火栓弁に連結され、遠隔操作機構は、外部からの信号に基づき、消火栓開閉レバーが動作することなく消火栓弁を開閉駆動するように制御されるため、従来点検されていなかった消火栓弁及びその遠隔操作機構を含む消火栓装置の重要な機能の高度な点検を、トンネル内に設置された多数の消火栓装置について自動で連続的に行うことができる。
【0014】
また、従来は消火ラインの配管に電動弁を2台設けていたが、本発明にあっては電動弁が一台で済み、しかも電動弁は口径の小さいパイロット配管に設けられる小型のパイロット電動弁であり、消費電力の低減、トンネル内に敷設するケーブルサイズの縮小、非常用電源の容量低減等ができ、これに伴いコストを低減することができる。
【0015】
また、点検時に制御部はパイロット電動弁を開制御するだけであり、パイロット電動弁が開制御されると、点検用切替弁の排水切替位置への切り替え、制御ポートからの消火用水の供給によるインライン逆止弁の開放、及び水圧アクチュエータによる消火栓弁の開駆動が水圧駆動により順次行われ、点検用切替弁から排水側に消火用水を流す点検放水による点検状態となり、点検制御部による制御はパイロット電動弁の制御のみで済むことから点検制御が簡単となり、更に、点検の時間も短縮することができる。
【0016】
また、点検時には、ホースからの誤放水を防止するために、最初に点検用切替弁を排水側に切り替えた後に消火栓弁を開放する必要があるが、パイロット電動弁の開制御により点検用切替弁がホース側を閉鎖して排水側を開放する排水切替位置に切り替えられると、このとき制御ポートから消火用水がインライン逆止弁に送られて所定のクラッキング設定圧を超えたときに開いて水圧アクチュエータを遅延駆動することで消火栓弁が開放され、点検用切替弁の排水側への切替えから所定の遅延時間が経過した後に消火栓弁が開放されることで、ホースからの誤放水を確実に防止することができる。
【0017】
(消火栓弁の遅延開放による効果)
また、制御ポートと水圧アクチュエータを接続する配管に、制御ポートからの消火用水の供給による影響を遅延させる遅延部が設けられ、遅延部は、点検用切替弁の制御ポートから供給された消火用水が所定の設定圧に達した場合に開放して消火用水の供給を遅延させるインライン逆止弁と、インライン逆止弁と水圧アクチュエータを接続する配管に設けられ、消火用水の供給量を制限して水圧アクチュエータにより消火栓弁を開駆動させるオリフィスとから構成されたため、インライン逆止弁による消火用水の遅延に加えオリフィスによる制限で水圧アクチュエータを開駆動するための遅延時間が決められ、点検用切替弁の放水切替位置への切替えた後に十分な遅延時間を経過してから消火栓弁を開放することで、点検開始時のホースからの誤放水をより確実に防止することができる。
【0018】
(点検終了による復旧の効果)
また、点検制御部は、点検終了で前記パイロット電動弁を閉制御することにより、インライン逆止弁の復旧、水圧アクチュエータの復旧による消火栓弁の閉鎖駆動、及び点検用切替弁の放水切替位置への切り替えによる復旧を順次行わせるようにしたため、点検終了時には、ホースからの誤放水を防止するために、最初に消火栓弁を閉鎖した後に点検用切替弁を放水側に切り替える必要があるが、パイロット電動弁を閉制御すると、まずインライン逆止弁が閉鎖状態に復旧することで水圧アクチュエータが消火栓弁を閉制御し、その後に、点検用切替弁の放水切替位置への切り替えが行われ、点検終了時にもホースからの誤放水を確実に防止することができる。
【0019】
(点検終了時の消火栓弁と点検用切替弁の順次復旧による効果)
また、点検用切替弁のシリンダ室は、第1のオリフィスを介して排水側に連通され、水圧アクチュエータは、第2のシリンダ室に第2のピストンが設けられた第2の駆動機構を備え、第2のシリンダ室は第2のオリフィスを介して排水側に連通されており、第2のオリフィスの排水量に対し第1のオリフィスの排水量が小さく設定され、点検終了によりパイロット電動弁を閉制御した場合に、第2のオリフィスによる第2のシリンダ室の排水により水圧アクチュエータが先に復旧して消火栓弁を閉鎖し、続いて、第1のオリフィスによるシリンダ室の排水により点検用切替弁が放水切替位置に復旧するようにしたため、パイロット電動弁の閉制御により、点検用切替弁の駆動機構および水圧アクチュエータの第2の駆動機構に対する消火用水の供給が断たれた場合に、水圧アクチュエータの第2のシリンダ室からの排水が第2のオリフィスにより早く行なわれて最初に消火栓弁が閉鎖位置に復旧し、一方、点検用切替弁のシリンダ室からの排水は第1のオリフィスによりゆっくり行われることで、次に点検用切替弁の放水切替位置への切り替えが行われて復旧し、点検終了時にもホースからの誤放水を確実に防止することができる。
【0020】
(切替位置検出器の効果)
また、点検用切替弁には、放水切替位置又は排水切替位置を検出する切替位置検出器が設けられ、切替位置検出器は、駆動機構による弁体の放水切替位置への移動を検出する放水切替位置検出器と、駆動機構による弁体の排水切替位置への移動を検出する排水切替位置検出器とを備えたため、点検時に点検用切替弁が正常に動作したか異常を起こしたかを確実に監視して対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】消火栓装置の正面図
図2】消火栓装置の消火栓扉を開いた状態における平面図
図3】消火栓装置の消火栓扉を開いた状態における側面図
図4】消火栓点検システムの概略を示した説明図
図5】消火栓点検システムを構成する機器構造の実施形態を示した説明図
図6】火災時に消火栓弁開閉レバーを開操作した場合の動作を示した説明図
図7】自動点検を開始した場合の動作を示した説明図
図8】自動点検中の動作を示した説明図
図9】自動点検を終了する場合の動作を示した説明図
図10】消火栓装置点検システムの自動点検制御を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
[消火栓装置の概要]
図1は消火栓装置の正面図、図2は消火栓装置の消火栓扉を開いた状態における平面図、図3は消火栓装置の消火栓扉を開いた状態における側面図である。
【0023】
図1乃至図3に示すように、消火栓装置10は、装置本体(筐体)12の前面右側の扉開口に、消火栓扉14と保守扉15が設けられており、その内部がホース収納空間及びバルブ類収納空間となっている。
【0024】
消火栓扉14は前倒し式の開閉扉であり、扉下側のヒンジを中心に上側にある扉ハンドル16を手前に引き出して前方下側に開放することができる。消火栓扉14の上には、上側のヒンジを中心に上向きに開閉する保守扉15が設けられており、点検時に消火栓扉14を開いた後上方向に持ち上げることで開くことができる。
【0025】
装置本体12の左側扉開口に設けられた消火器扉26の右側には通報装置扉18が設けられ、ここに押釦通報装置(発信機)20、赤色表示灯22及びスピーカ24が設けられる。押釦通報装置20は、透明な保護板の背後に押釦スイッチが配置されており、保護板を押し込むことで押釦スイッチがオンし、監視センターの防災受信盤に火災通報信号を送信して火災警報を出力させる。
【0026】
赤色表示灯22は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、押釦通報装置20を押して火災通報信号が監視センターの防災受信盤に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が防災受信盤から送られて、赤色表示灯22が点滅される。
【0027】
通報装置扉18の左側には消火器扉26が設けられ、内部に2本の消火器28が収納されている。
【0028】
装置本体12の消火栓扉14の背後に形成されたホース収納空間にはホース38が内巻きして収納され、ホース38の先端には放水ノズル40が装着され、放水ノズル40は消火栓扉14の裏面に配置されたノズルホルダー42に着脱自在に保持されている。
【0029】
ホース収納空間の右側に配置したバルブ類収納空間には、ポンプ設備からの配管が接続される消火配管接続口30からホース接続口に至る配管系統に、給水弁32、消火栓弁を含む放水バルブ系統が設けられている。
【0030】
消火栓弁に対しては消火栓扉14の裏側に配置された消火栓弁開閉レバー36が設けられ、消火栓弁開閉レバー36を操作すると、平行リンクワイヤー機構を介して消火栓弁の開閉操作が行われる。
【0031】
[消火栓装置点検システムの概要]
図4は消火栓装置点検システムの概略を示した説明図である。図4に示すように、消火栓装置10に対しては、給水本管43から分岐された立上げ配管44が消火配管接続口30に接続され、消火配管接続口30からホース38の接続口に至る配管45に、給水弁32、消火栓弁46及び自動調圧弁48を含む放水バルブ系統が設けられている。
【0032】
これに加え本実施形態の消火栓装置点検システムにあっては、自動調圧弁48に続いて点検用切替弁50が設けられる。点検用切替弁50は、駆動機構として機能するピストン・シリンダ機構による弁体の移動により、自動調圧弁48側となる流入口に対しホース38が接続される放水ラインと排水ホース58が接続される排水ラインを選択的に切り替える。
【0033】
点検用切替弁50のシリンダ室には、流入ポートP1、制御ポートP2及び排水ポートP3が設けられる。流入ポートP1にはパイロット電動弁52により切替駆動するための消火用水が供給される。制御ポートP2は点検用切替弁を排水切替位置に切り替えた場合に、シリンダ室を介して外部に消火用水を供給する。
【0034】
排水ポートP3はオリフィス54及び逆止弁56を介して排水ラインに接続される。オリフィス54は、シリンダ室に対する消火用水の供給が断たれた場合にオリフィス54で制限された所定の水量で消火用水を排水側に抜いて水圧アクチュエータ62を初期位置に復旧させる。
【0035】
消火栓弁46は平行リンクワイヤー機構を備えた遠隔操作機構66を介して消火栓扉14の裏面に設置された消火栓弁開閉レバー36が連結されているが、本実施形態の消火栓装置点検システムにあっては、自動点検により遠隔操作機構66を介して消火栓弁46を開閉駆動するため、水圧アクチュエータ62がラック・ピニオン機構64を介して消火栓弁46に連結されている。
【0036】
水圧アクチュエータ62は第2の駆動機構として機能するピストン・シリンダ機構を備え、水圧駆動により消火栓弁46を開閉駆動する。水圧アクチュエータ62に対しては点検用切替弁50の制御ポートP2からの配管がインライン逆止弁60及びオリフィス61を介して連結される。制御ポートP2から供給された消火用水はインライン逆止弁60及びオリフィス61で遅延されて水圧アクチュエータ62に供給され、ラック・ピニオン機構64で直線運動を回転運動に変換することで消火栓弁46を開閉駆動させる。
【0037】
また、水圧アクチュエータ62のシリンダ室はオリフィス63を介して排水ラインに接続されており、点検終了で消火用水の供給が断たれた場合にオリフィス63で制限された所定の水量で消火用水を排水側に抜いて水圧アクチュエータ62を初期位置に復旧させる。
【0038】
消火栓装置10の機能点検における動作状態を検知するためのセンサーとして、点検用切替弁50のピストン・シリンダ機構のシリンダ室に放水切替位置検出器として機能する第1の歪センサー70と排水切替位置検出器として機能する第2の歪センサー72が設けられ、点検用切替弁50に接続された排水ホース58には排水圧力を検出する圧力センサー68が設けられ、遠隔操作機構66には消火栓弁46の開閉を検出する開閉検出器74が設けられている。
【0039】
また、消火栓装置10には消防隊が使用するポンプ起動スイッチ76が設けられており、本実施形態の消火栓装置点検システムに対応して手動点検スイッチ78が設けられる。
【0040】
点検制御部75は、コンピュータ回路を用いた制御部と有線通信を行う通信部を備える。通信部による通信は無線通信としても良い。点検制御部75には、第1の歪センサー70、第2の歪センサー72、圧力センサー68、開閉検出器74からの信号線が入力され、また、ポンプ起動スイッチ76、手動点検スイッチ78からの信号線が入力され、更に、パイロット電動弁52に対し信号線が出力される。また、点検制御部75に設けられた通信部からトンネルの監視室等に設置された防災受信盤に対し通信線が接続されている。
【0041】
点検制御部75は、自動点検に伴い防災受信盤から点検指示信号を受信した場合に、パイロット電動弁52の開制御により点検切替弁50を排水切替位置に切り替える。パイロット電動弁52が開制御されて点検用切替弁50に消火用水が供給されると、点検用切替弁50の排水切替位置への切り替え動作、制御ポートP2からの消火用水の供給によるインライン逆止弁60の開放、及び水圧アクチュエータ62による消火栓弁46の開駆動が順次行われ、点検用切替弁50を介して消火用水を排水ホース58に流す点検放水が行われる。
【0042】
また、点検制御部75は、自動点検中に防災受信盤から点検終了信号を受信した場合に、パイロット電動弁52の閉制御により点検切替弁50に対する消火用水の供給を停止させる。パイロット電動弁52が閉制御されて点検用切替弁50に対する消火用水の供給が停止されると、インライン逆止弁60の復旧、水圧アクチュエータ62の復旧による消火栓弁46の閉駆動、点検用切替弁50を放水切替位置への切り替える復旧動作が順次行われ、自動点検が終了する。
【0043】
[消火栓装置点検システムを構成する機器構造]
図5は消火栓点検システムを構成する機器構造の実施形態を示した説明図である。
【0044】
(点検用切替弁)
図5に示すように、点検用切替弁50は、ホースに至る配管45に消火栓弁46及び自動調圧弁48に続いて設けられる。点検用切替弁50の弁ボディ51には流入口80、流出口82及び排水口84が形成され、流入口80には自動調圧弁48の2次側からの配管が接続され、流出口82にはホースに対する配管47が接続され、排水口84にはホース継手として例えば町野式継手85が設けられ、町野式継手85により排水ホース58が着脱自在に接続されている。
【0045】
弁ボディ51の内部は隔壁90により流入口80が形成された流入室と流出口82が形成された流出室とに区切られ、隔壁90に形成された弁穴88の流入室側にシートパッキンを備えた第1の弁座92が形成されると共に、弁穴88に相対したホディ外殻に同軸に排水口84が形成されると共に排水口84の流入室側に第1の弁座92に相対してシートパッキンを備えた第2の弁座94が形成されている。
【0046】
第1の弁座92と第2の弁座94の間には、駆動機構として機能するピストン・シリンダ機構のピストン96のピストンロッド95に連結された弁体86が軸方向に移動自在に配置されている。
【0047】
点検用切替弁50のピストン・シリンダ機構は、シリンダ室98に摺動自在に収納されたピストン96をスプリング100により弁体86を第2の弁座94に当接させて排水口84を閉鎖させる放水切替位置(初期位置)に保持している。
【0048】
シリンダ室98には流入ポートP1、制御ポートP2及び排水ポートP3が設けられる。流入ポートP1に対しては配管45から分岐されたパイロット配管53が接続され、パイロット配管53にはパイロット電動弁52が設けられ、通常状態でパイロット電動弁52は閉鎖されており、シリンダ室98に消火用水が供給されないことで、点検用切替弁50は図示の放水切替位置を保持している。
【0049】
ここで、消火栓弁46及び自動調圧弁48が設けられた配管45のサイズは例えば口径32~40mmであるのに対し、パイロット配管53のサイズは口径10~15mmであり、口径の大きな配管45に設けた電動弁の消費電力は数十ワットになるのに対し、口径の小さいパイロット配管53に設けるパイロット電動弁52は小型の電動弁とすることができ、消費電力の低減、トンネル内に敷設するケーブルサイズの縮小、非常用電源の容量低減等ができ、これに伴いコストを低減することができる。
【0050】
点検用切替弁50のシリンダ室98に設けられた流入ポートP1と排水ポートP3は、ピストン96の位置に関わらず常にシリンダ室98に連通している。これに対し制御ポートP2は、流入ポートP1からの消火用水の供給によりピストン50が図示の初期位置から所定間隔Xだけ移動した場合に開放して外部に消火用水を供給する。
【0051】
ここで、図示の放水切替位置で第2の弁座94に当接して排水口84を閉鎖している弁体86は、第1の弁座92との間隔Xだけ移動すると、第1の弁座92に当接して弁穴88を閉鎖して排水口84を開く排水切替位置となり、この弁体86の移動間隔Xに対応したピストン96の同じ間隔Xの移動で制御ポートP2が開くように構成している。
【0052】
点検用切替弁50のシリンダ室98に設けられた排水ポートP3はオリフィス54及び逆止弁56を介して排水側に接続されており、パイロット電動弁52が閉鎖された状態でシリンダ室98からオリフィスで54で決まる水量で消火用水を排水させ、スプリング100によるピストン96の押圧で放水切替位置の保持を可能とする。また、逆止弁56は排水側からのシリンダ室98に対する消火用水の逆流を阻止し、点検用切替弁50を確実に放水切替位置に保持することを可能とする。
【0053】
このような構造の点検用切替弁50は、通常時は、パイロット電動弁52が閉鎖されてシリンダ室98に消火用水の供給がないことから、スプリング100によるピストン96の押圧で弁体86を第2の弁座94に当接させることにより、流入口80と流出口82を弁穴88を介して連通させると共に排水口84を閉鎖して流入口80と切り離す放水切替位置に保持されている。
【0054】
このように点検用切替弁50は、通常時、スプリング100の力で弁体86を放水切替位置に保持して流入口80をホース側の流出口82に連通すると共に排水口84を全閉としており、電源の喪失とは無関係に放水切替位置を保持することで高いフェイルセーフ機能が得られる。
【0055】
点検用切替弁50のシリンダ室98には放水切替位置検出器として機能する第1の歪センサー70が配置され、また、スプリング100の収納側には排水切替位置検出器として機能する第2の歪センサー72が配置されている。
【0056】
第1の弁座92と第2の弁座94の間で弁体86が移動する軸方向の間隔はXであり、第1の歪センサー70は、スプリング100により弁体86が第2の弁座94に当接して排水口84を閉鎖している放水切替位置にあるときの押圧力による歪に応じた歪検出信号を放水切替位置検出信号として出力している。
【0057】
また、シリンダ室98に対する消火用水の供給でピストン96がスプリング100を圧縮して間隔Xだけ移動した場合に第2の歪センサー72が押圧され、このときの押圧力に
よる歪に応じた歪検出信号を排水切替位置検出信号として出力することになる。
【0058】
点検用切替弁50の排水口84には町野式継手85が設けられ、排水ホース58が着脱自在に接続されている。排水ホース58の途中には圧力計付きの圧力センサー68が設けられ、点検時に点検用切替弁50を介して排水ホース58に消火用水を排水して放水試験を行った場合の圧力を測定可能としている。なお、排水ホース58に流量センサーを設け、放水試験を行った場合の流量を測定しても良い。
【0059】
(インライン逆止弁)
インライン逆止弁60は、流入口104として形成された弁座に対しボールジスク102が配置され、ボールジスク102はリテーナ105を介して配置したスプリング106により閉鎖位置に保持され、流入口104の反対側には流出口107が形成されている。
【0060】
インライン逆止弁60は、点検用切替弁50の制御ポートP2から供給された消火用水が所定のクラッキング設定圧に達した場合に、スプリング106に抗したボールジスク102の押し下げにより開放し、流入口104からの消火用水を流出口107からオリフィス61を介して水圧アクチュエータ62にする。
【0061】
インライン逆止弁60は点検用切替弁50の制御ポートP2から消火用水の供給が開始された場合、供給開始からクラッキング設定圧に達して開放するまでに時間遅れがあることから、これにより制御ポートP2からの消火用水を遅延して水圧アクチュエータ62に供給する機能をもつ。
【0062】
また、インライン逆止弁60と水圧アクチュエータ62の間に設けられたオリフィス61は、インライン逆止弁60から水圧アクチュエータ62に供給される消火用水の水量を所定の水量に制限し、これにより開放したインライン逆止弁60からの消火用水を遅延して水圧アクチュエータ62に供給する機能をもつ。
【0063】
このため点検用切替弁50の制御ポートP2からの消火用水は、インライン逆止弁60とオリフィス61で遅延されて水圧アクチュエータ62に供給され、点検用切替弁50が排水切替位置に切り替え駆動されてから所定の時間だけ遅れて水圧アクチュエータ62が動作される。
【0064】
(水圧アクチュエータと消火栓弁の遠隔操作機構)
水圧アクチュエータ62は、第2の駆動機構として機能するシリンダ・ピストン駆動機構を備え、ラック・ピニオン機構64を介して消火栓弁46を開閉駆動する。
【0065】
水圧アクチュエータ62のピストン・シリンダ機構は、シリンダ室108に摺動自在にピストン110が設けられ、ピストン110はスプリング112により初期位置に保持されている。シリンダ室108にはインライン逆止弁60からの配管がオリフィス61を介して接続され、また、シリンダ室108はオリフィス63を介して排水側に接続されている。オリフィス61の排水量がオリフィス63の排水量よりも多くなるよう、開口サイズは設定される。これにより、消火用水が制御ポートP2から供給されるときにピストン110が初期位置から動作する。
【0066】
水圧アクチュエータ62に設けられたピストン110のピストンロッド114はラックギア116に連結され、ラックギア116にはピニオンギア118が噛み合わされる。ラックギア116とピニオンギア118で構成されるラック・ピニオン機構64は、水圧アクチュエータ62のピストン110による直線運動を回転運動に変換する。
【0067】
ピニオンギア118の回転軸は双方向クラッチ120を介して消火栓弁46の弁軸に連結されている。双方向クラッチ120は、入力軸120aから出力軸120bに回転を伝達するが、逆に、出力軸120bから入力軸120aには回転を伝達しない。
【0068】
水圧アクチュエータ62により開閉駆動される消火栓弁46には、遠隔操作機構66を介して消火栓扉の裏側に設けられた消火栓弁開閉レバー36が連結されている。
【0069】
消火栓弁46の弁軸には遠隔操作機構66のプーリ122が連結され、消火栓弁開閉レバー36側にはプーリ126が配置され、プーリ122,126の間をリンクワイヤー124で連結することにより、平行リンクワイヤー機構が構成され、消火栓弁開閉レバー36の操作により消火栓弁46を開閉する遠隔操作が行われる。消火栓弁開閉レバー36の操作軸とプーリ126の駆動軸との間には第2の双方向クラッチ128が配置されている。
【0070】
水圧アクチュエータ62のラック・ピニオン機構64と消火栓弁46との間に設けられた双方向クラッチ120は、入力軸120aから出力軸120bへ回転を伝達するが、逆に、出力軸120bから入力軸120aへは回転を伝達せずに空回りとなる一方向にのみ回転を伝達するクラッチ機能を備える。
【0071】
この点は、消火栓弁開閉レバー36側に設けられた第2の双方向クラッチ128も同様であり、入力軸128aから出力軸128bへ回転を伝達するが、逆に、出力軸128bから入力軸128aへは回転を伝達せずに空回りとなる一方向にのみ回転を伝達するクラッチ機能を備える。
【0072】
水圧アクチュエータ62を駆動した場合、ラック・ピニオン機構64で変換された駆動軸の回転は双方向クラッチ120を介して消火栓弁46及びプーリ122を回転させ、水圧アクチュエータ62により消火栓弁36の開閉駆動ができる。
【0073】
このとき、プーリ122の回転はリンクワイヤー124を介してプーリ126に伝達されて回転するが、第2の双方向クラッチ128は出力軸128bからの回転入力となるために入力軸128aは回転せずに空回りとなり、消火栓弁開閉レバー36が動くことはない。
【0074】
消火栓装置10の自動点検は、図1に示したように、消火栓装置10の消火栓扉14を閉鎖した状態で行うこととなり、消火栓扉14が閉鎖していると扉裏側に配置されている消火栓弁開閉レバー36は周辺の部材に当たって動くことができない状態にある。
【0075】
しかしながら、本実施形態の点検システムにあっては、第2の双方向クラッチ128を設けたことで、自動点検時に水圧アクチュエータ62により消火栓弁46を開閉駆動しても消火栓弁開閉レバー36は動かず、問題なく自動点検ができる。
【0076】
一方、トンネル内での火災発生時には、道路利用者が消火栓扉14を開いてノズル付きホース38を引き出した後に消火栓弁開閉レバー36を開操作することになる。このとき消火栓弁開閉レバー36の開操作により第2の双方向クラッチ128を介してプーリ126が回転され、リンクワイヤー124を介してプーリ122が連動して回転され、消火栓弁46が開駆動される。
【0077】
しかしながら、プーリ122の回転は双方向クラッチ120の出力軸120bからの回転入力となるため、入力軸120aに回転が伝達されずに水圧アクチュエータ62のラック・ピニオン機構64に対し空回りとなり、ラック・ピニオン機構64及び水圧アクチュエータ62を設けていても消火栓弁開閉レバー36の操作には影響がなく、ラック・ピニオン機構64及び水圧アクチュエータ62を設けていない場合と同様に、消火栓開閉レバー36の操作により消火栓弁46の開閉操作を行うことができる。
【0078】
なお、消火栓装置10の点検を消火栓扉を開いて行うこととした場合には、水圧アクチュエータ62による開閉駆動で消火栓弁開閉レバー36が動いても良いことから、第2の双方向クラッチ128を設ける必要はない。
【0079】
消火栓弁46側のプーリ122の軸部には、消火栓弁46の開閉を検出する開閉検出器74が設けられている。開閉検出器74としては、例えば、消火栓弁46の開を検出するリミットスイッチと、消火栓弁46の閉を検出するリミットスイッチが設けられる。
【0080】
開閉検出器74は、消火栓装置10の点検時における消火栓弁46の開閉検出を行うと共に、消火栓開閉レバー36を操作した場合の開検出信号はポンプ起動信号として用いられる。
【0081】
なお、開閉検出器74は、消火栓弁開閉レバー36側のプーリ126の軸部に設けても良く、この場合には、水圧アクチュエータ62による消火栓弁46の開閉検出に加えて、遠隔操作機構66による遠隔開閉機能を合わせて検出することができる。
【0082】
(点検開始により点検用切替弁と消火栓弁を順番に動作させる構成)
本実施形態の点検システムにあっては、自動点検によるホース38からの誤放水を防止するために、点検開始により最初に点検用切替弁50を排水切替位置に切り替え、次に消火栓弁46を開放させる順次動作が必要となる。
【0083】
このため、点検用切替弁の制御ポートP2からインライン逆止弁への水供給はピストン96が所定の位置Xまで移動し流水口82への流入がなされないよう弁体86が第1の便座92に着座してから開始されるようにしたこと、及び点検用切替弁50の制御ポートP2から水圧アクチュエータ62に至るパイロット配管55にインライン逆止弁60とオリフィス61を設け、制御ポートP2からの消火用水をインライン逆止弁60とオリフィス61で遅延して水圧アクチュエータ62に供給しており、点検用切替弁50が排水切替位置に切り替え駆動されてから所定の時間だけ遅れて水圧アクチュエータ62が動作されて消火栓弁46を開き、ホース38からの誤放水を確実に防止することができる。
【0084】
(点検終了により消火栓弁と点検用切替弁を順番に復旧させる構成)
また、本実施形態の点検システムにあっては、自動点検を終了した時の復旧によるホース38からの誤放水を防止するために、点検終了により最初に消火栓弁46を閉鎖して復旧し、次に点検用切替弁50を放水切替位置に切り替えて復旧する順次動作が必要となる。
【0085】
このため水圧アクチュエータ62のシリンダ室108から排水側に至る配管に設けたオリフィス63の排水量Qd2に対し、点検用切替弁50のシリンダ室98の排水ポートP3からの配管に設けたオリフィス54の排水量Qd1が小さくなるように、オリフィス63,54の開口サイズを設定する(Qd1<Qd2)。
【0086】
これにより点検制御部75が点検終了によりパイロット電動弁52を閉制御し、点検用切替弁50のシリンダ室98及び水圧アクチュエータ62のシリンダ室108に対する消火用水の供給が断たれた場合、水圧アクチュエータ62のシリンダ室108からのオリフィス63による排水が早く行われ、一方、点検用切替弁50のシリンダ室98からのオリフィス54による排水がゆっくり行われ、最初に水圧アクチュエータ62が復旧して消火栓弁46を閉鎖し、次に点検用切替弁50が放水切替位置に復旧し、点検終了時にもホース38からの誤放水を確実に防止する。
【0087】
[消火栓装置の放水操作]
図6は火災時に消火栓弁開閉レバーを開操作した場合の動作を示した説明図である。トンネル内で車両事故等により火災が発生した場合、道路利用者は、トンネル内に設置された図1に示した消火栓装置10の消火栓扉14を図2及び図3に示すように開き、消火栓扉14の内側に保持されている放水ノズル40を取り出してホース38を引き出し、続いて、消火栓弁開閉レバー36の手前側の開位置に操作する。
【0088】
図6に示すように、消火栓弁開閉レバー36を開位置に操作すると、第2の双方向クラッチ128を介してプーリ126が回転され、リンクワイヤー124を介してプーリ122が連動回転され、これにより消火栓弁46が開駆動される。このとき双方向クラッチ120は出力軸120b側からの回転入力となるため、入力軸120aに回転は伝達されず、ラック・ピニオン機構84を介して設けられた水圧アクチュエータ62に影響されることなく消火栓弁46を開操作することができる。
【0089】
また、プーリ122の回転により開閉検出器74で消火栓弁46の開検出が行われ、これに基づきポンプ起動信号が防災受信盤側に送信されて消火ポンプ設備の運転が開始され、加圧された消火用水の継続的な供給が開始される。
【0090】
消火栓弁46が開放されると、消火用水が自動調圧弁48を介して点検用切替弁50に供給され、このとき点検用切替弁50はピストン96のスプリング100による押圧で弁体86を第2の弁座94に当接して排水口84を閉鎖させた放水切替位置に保持されており、消火用水は開放状態にある弁穴88から流出口82に流れ、配管47からホース側に供給され、放水ノズル40から放水されることになる。
【0091】
火災が鎮火して放水を止める場合には、消火栓弁開閉レバー36を元の閉位置にもどすと、遠隔操作機構66を介して消火栓弁46が閉鎖位置に操作される。
【0092】
[消火栓装置の自動点検]
図7は自動点検を開始した場合の動作を示した説明図、図8は自動点検中の動作を示した説明図、図9は自動点検を終了する場合の動作を示した説明図である。
【0093】
(自動点検の開始)
消火栓装置10の自動点検は、防災受信盤側で点検開始操作が行われると、点検指示信号の送信により複数の消火栓装置10の点検が順番に行われる。
【0094】
図4に示した点検制御部75は、防災受信盤から点検指示信号を受信すると、図7に示すように、まずパイロット電動弁52を開制御し、パイロット配管53により点検用切替弁50のシリンダ室98に消火用水を供給する。
【0095】
シリンダ室98に消火用水が供給されるとピストン96がスプリング100を圧縮しながら移動し、第2の弁座94から弁体86を移動して離すことで排水口84を開き、間隔Xを移動すると第1の弁座92に当接して弁穴88を閉鎖することで、流入口80と流出口82を切り離し、放水切替位置から排水切替位置に切り替えられる。
【0096】
点検用切替弁50が排水切替位置に切り替えられると、ピストン96の間隔Xの移動により第2の歪センサー72が押圧され、排水切替位置を示す歪検出信号が図4の点検制御部75に出力され、点検制御部75は点検用切替弁50が正常に排水切替位置に切り替わったことを判別する。
【0097】
点検用切替弁50のシリンダ室98が放水切替位置に動作すると、このときピストン96が間隔Xを移動することで制御ポートP2が開き、制御ポートP2からパイロット配管55を介してインライン逆止弁60に消火用水が供給される。
【0098】
インライン逆止弁60は点検用切替弁50の制御ポートP2から供給された消火用水によりボールジスク102に加わる力が、スプリング106で設定された所定のクラッキング圧力を上回ると、図7に示すように、スプリング106に抗してボールジスク102を押し下げて流路を開放し、消火用水をオリフィス61により設定された流量に制限して水圧アクチュエータ62に供給する。
【0099】
水圧アクチュエータ62はシリンダ室108に対する消火用水の供給によりスプリング112に抗してピストン110を移動し、ピストンロッド114を介してラックギア116を直進移動してピニオンギア118を回転し、双方向クラッチ120を介して消火栓弁46を開駆動する。
【0100】
ここで、点検用切替弁50の制御ポートP2からの消火用水は、インライン逆止弁60の開放及びオリフィス61により流量制限による遅延を受けて水圧アクチュエータ62に供給されており、このため点検用切替弁50が先に排水切替位置に切り替えられ、その後に、消火栓弁46が開駆動される手順となることで、点検開始によるホースからの誤放水が確実に防止される。
【0101】
このように点検用切替弁50が排水切替位置に切り替えられ、続いて、消火栓弁46が開放されると、1次側からの消火用水は消火栓弁46及び自動調圧弁48を通って点検用切替弁50に供給され、このとき点検用切替弁50は排水切替位置に切り替えられていることから、流入口80から供給された消火用水は排水口84から排水ホース58に流れ、ホース38の放水ノズル40からの実放水に相当する水量を排水する点検放水を行う。
【0102】
点検用切替弁50に接続した排水ホース58の圧力は圧力センサー68で検出されて図4の点検制御部75に出力されており、点検制御部75は自動調圧弁48に設定されている所定の設定圧力0.29MPaと比較し、設定圧力に対する所定の誤差範囲にあれば正常と判定し、誤差範囲を外れた場合は、設定ずれを判定して防災受信盤に障害信号を送信して設定圧力ずれを示す障害警報を出力させ、点検終了後に自動調圧弁48の設定圧力の再調整作業を行わせることになる。また、設定圧力を大きく下回ったり、逆に大きく上回った場合には、自動調圧弁48の故障と判定して故障警報を防災受信盤から出力させ、点検終了後に自動調圧弁48の修理交換を行わせることになる。
【0103】
また、自動調圧弁48の圧力調整部に電動弁を付加することで、仮に点検中の圧力が所定の圧力(0.29MPa)からずれていたときは電動弁を起動して圧力調整を遠隔で行うようにすることもでき、このような機能を付加すれば自動点検の機能は更に高まる。
【0104】
(点検終了)
圧力センサー68による圧力判定が済むと、点検終了として点検復旧制御が行われる。点検復旧制御は防災受信盤からの指示で行っても良いし、点検制御部75の制御手順として自動的に行っても良い。
【0105】
点検復旧制御では、図4に示した点検制御部75は、パイロット電動弁52を閉制御する。パイロット電動弁52が閉制御されると、シリンダ室98及び制御ポートP2からのインライン逆止弁60に対する消火用水の供給が断たれ、シリンダ室98の消火用水はオ
リフィス54を介して排水されることで圧力の低下が始まる。
【0106】
このためインライン逆止弁60に加わっている消火用水の圧力が所定のクラッキング圧力を下回るとスプリング106の押圧によりボールジスク102が流入口104を閉じて閉鎖状態となり、これにより水圧アクチュエータ62に対する消火用水の供給も停止される。
【0107】
消火用水の供給が断たれた水圧アクチュエータ62のシリンダ室108の消火用水はオリフィス63を介して排水されることで圧力が低下し、スプリング112の押圧によりピストン110が押し戻され、ラック・ピニオン機構64を介して消火栓弁46の閉駆動が開始される。
【0108】
ここで、水圧アクチュエータ62のシリンダ室108から排水するオリフィス63の排水量Qd2は、点検用切替弁50のシリンダ室98から排水するオリフィス54の排水量Qd1より大きくなるように設定しているため、水圧アクチュエータ62のシリンダ室108からの排水が早く行われ、点検用切替弁50のシリンダ室98からの排水はゆっくり行われ、先に、水圧アクチュエータ62が初期位置に復旧して消火栓弁46を閉鎖し、その後、点検用切替弁50のシリンダ室98の圧力が所定圧を下回ると、スプリング100によるピストン96の押し下げによる移動が開始される。
【0109】
点検用切替弁50のピストン96の押し下げ移動が開始されると、これに連動して弁体86が第1の弁座92から離れ、弁穴88が開いて流入口80とホース側となる放水口82が連通するが、このとき消火栓弁46は閉鎖位置に復旧しているため、点検用切替弁50の1次側に対する消火用水の供給は断たれており、消火用水が放水口からホースに供給される誤放水は確実に防止される。
【0110】
また、点検用切替弁50の弁体86が第2の弁座94に当接して排水口84を閉鎖する放水切替位置に切り替わるまでの間、ホースを介して大気に開放された放水口82に対し排水口84が弁穴88を介して連通しているため、弁ボディ51の流入室から閉鎖した消火栓弁46までの1次側の配管に滞留している消火用水は排水口84から排水ホース58を介して排水され、配管内に残ることはない。
【0111】
点検用切替弁50が放水切替位置に切り替わると、ピストン96の押圧を受けた第1の歪センサー70から放水切替位置の検出を示す歪検出信号が出力され、これにより点検制御部75は点検用切替弁50の復旧を知って点検終了を判定し、点検終了を防災受信盤に通知して次の消火栓装置の点検を行わせる。
【0112】
また、消火栓装置10の点検は、図4に示した手動点検スイッチ78を操作することで、パイロット電動弁52の制御により、前述した自動点検の場合と同様にして、消火栓装置10の設置場所で点検を行うこともできる。
【0113】
[消火栓装置の点検制御]
図10は消火栓装置点検システムの点検制御を示したフローチャートであり、図4に示した点検制御部75による制御動作となる。
【0114】
図10に示すように、点検制御部75はステップS1で防災受信盤からの点検指示信号の受信を判別するとステップS2に進み、パイロット電動弁52を開制御し、点検用切替弁50のピストン・シリンダ機構に消火用水を供給し、図6及び図7に示したように、制御ポートP2からの消火用水の供給によるインライン逆止弁60の開放、及び水圧アクチュエータ62による消火栓弁46の開駆動を順次行わせて点検用切替弁50から排水ホース58に消火用水を流す点検放水を行わせる。
【0115】
続いて、点検制御部75はステップS3で開閉検出器74による消火栓弁46の開検出を判別するとステップS4に進み、排水ホース58に設けられた圧力センサー68により排水圧力を測定し、ステップS5で正常を判定するとステップS6で排水圧力正常信号を防災受信盤に送信し、一方、ステップS5で排水圧力の異常を判定した場合はステップS7で排水圧力異常信号を防災受信盤に送信する。
【0116】
続いて、点検制御部75はステップS8で防災受信盤から点検終了信号の受信を判別するとステップS9に進み、パイロット電動弁52を閉制御して点検用切替弁50及びインライン逆止弁60に対する消火用水の供給を停止させ、図8に示したように、インライン逆止弁60の復旧、水圧アクチュエータ62の復旧による消火栓弁46の閉鎖駆動、及び点検用切替弁50の放水切替位置への切り替えによる復旧を順次行わせ、ステップS10で第1の歪センサー70の歪検出信号により放水切替位置の検出を判別するとステップS11に進み、防災受信盤に点検終了信号を送信して一連の点検制御を終了する。
【0117】
[三方切替弁]
上記の実施形態は、消火栓装置点検システムに用いる点検用切替弁50を示しているが、点検用切替弁50は、一般的には、三方切替弁として使用することができる。
【0118】
点検用切替弁50を一般的な三方切替弁とした場合には、図5に示すように、弁ボディ51に流入口80、第1の流出口82及び第2の流出口84(ここでは排水口84を第2の流出口84とする)を備え、駆動機構として機能するピストン・シリンダ機構による弁体86の移動により、流入口80と第1の流出口82を連通すると共に流入口80と第2の流出口84を切り離す第1の切替位置と、流入口80と第1の流出口82を切り離す共に流入口80と第2の流出口84を連通する第2の切替位置とに切替える構造を備える。
【0119】
また、弁ボディ51の内部が隔壁90により流入口80が形成された流入室と第1の流出口82が形成された流出室とに区切られ、隔壁90に形成された弁穴88の流入室側に第1の弁座92が形成されると共に、弁穴88に相対したボディ外殻に同軸に第2の流出口94が形成されると共に第2の流出口84の流入室側に第1の弁座92に相対して第2の弁座94が形成され、第1の弁座92と第2の弁座94の間にピストン・シリンダ機構により軸方向に移動される弁体86が配置され、ピストン・シリンダ機構は、シリンダ室98に収納されたピストン96をスプリング100により弁体86を第2の弁座94に当接させる第1の切替位置に保持しており、シリンダ室98に対する消火用水の供給によりピストン96を第1の弁座92に当接させる第2の切替位置に移動させるように構成している。
【0120】
更に、三方切替弁として機能する点検用切替弁50のシリンダ室98には、ピストン96による弁体86の第2の切替位置への切替えにより外部に消火用水を供給する制御ポートP2が設けられる。このため、制御ポートP2からの消火用水の供給により点検用切替弁50の第2の切替位置への切り替えに連動して他の機器を水圧駆動させることができる。
【0121】
このような構成により、ピストン・シリンダ機構の水圧駆動による弁体86の直進移動で流入口80に対し第1又は第2の流出口82,84を選択的に切り替える三方切替弁としての機能が実現でき、三方切替弁の切替動作は、小さい口径のパイロット配管に設けられた小型のパイロット電動弁により消火用水の供給で良いことから、消費電力の低減、ケーブルサイズの縮小、電源容量の低減等ができ、これに伴いコストを低減することができる。
【0122】
また、弁体を回転させる従来の三方電動切替弁に比べ、弁体86を第1又は第2の弁座92,94に当接させることから、弁体を回転させる従来の三方電動切替弁のような水漏れがなく、確実に流入口80を第1の流出口82又は第2の流出口84に選択的に切替えすることができる。
【0123】
また、三方切替弁として機能する点検用切替弁50は、通常は、スプリング100の力で弁体86を第1の切替位置に保持して第1の流出口82側に連通すると共に第2の流出口84側を全閉としており、電源の喪失とは無関係に第1の切替位置を保持することで高いフェイルセーフ機能が得られる。
【0124】
更に、三方切替弁として機能する点検用切替弁50のシリンダ室98には、第2の切替位置への切替えにより外部に消火用水を供給する制御ポートP2が設けられたため、制御ポートP2からの消火用水の供給により第2の切替位置への切り替えに連動して他の機器を水圧駆動させることができる。
【0125】
[本発明の変形例]
(弁体及び弁座の監視)
上記の実施形態にあっては、各種のセンサーにより弁の開閉を検出しているが、更に、弁体や弁座のシールに歪センサーや接触センサーを埋め込み、弁体の着座状態を監視できるようにしても良い。これにより弁体に対するゴミ詰まりの発見、弁体動作の異常等をいち早く検知して、障害の未然防止や予防保全が可能となる。
【0126】
(センサー電源)
上記の実施形態にあっては、各種センサーは外部からの電源供給により動作させているが、水流により振動が発生する位置に圧電式発電素子や磁歪式発電素子を配置して、センサー電源として利用しても良い。これにより外部からのセンサー電源の供給が不要となり、コストダウンとシステムの簡素化ができる。
【0127】
例えば、点検用切替弁50に設けられたスプリング100に圧電式発電素子をコーティングして、センサー電源とする。具体的には、スプリング100の表面に、下側電極層、圧電層及び上側電極層を積層形成し、下側電極層と上側電極層から一対のリード線を外部に取り出す構造とする。
【0128】
その製造方法は、金属製のスプリング100の表面上に銀ペーストを塗布して下部電極層を形成し、その表面に圧電性溶剤をスプレーコートした後、熱風乾燥して膜を生成し、次に、膜の表面より所定距離だけ離間したコロナ電極から所定の高電圧を所定時間印加して分極して圧電層を生成し、圧電層の上面に銀ペースを塗布して上部電極層を形成し、最後に上部電極層と下部電極層に導電接着剤を用いてリード線を接着する。これによりスプリング100に圧電式発電素子を簡単且つ容易に設けることができ、圧電式発電素子を設けてもスプリング100としての機能を損なうことはない。
【0129】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0130】
10:消火栓装置
12:装置本体
14:消火栓扉
15:保守扉
16:扉ハンドル
18:通報装置扉
20:押釦通報装置
22:赤色表示灯
24:スピーカ
26:消火器扉
28:消火器
30:消火配管接続口
32:給水弁
36:消火栓弁開閉レバー
38:ホース
40:放水ノズル
42:ノズルホルダー
43:給水本管
44:立上げ配管
45:配管
46:消火栓弁
48:自動調圧弁
50:点検用切替弁
51:弁ボディ
52:パイロット電動弁
53,55:パイロット配管
54:オリフィス(第1のオリフィス)
56:逆止弁
58:排水ホース
60:インライン逆止弁
61:オリフィス
62:水圧アクチュエータ
63:オリフィス(第2のオリフィス)
64:ラック・ピニオン機構
66:遠隔操作機構
68:圧力センサー
70:第1の歪センサー
72:第2の歪センサー
74:開閉検出器
75:点検制御部
76:ポンプ起動スイッチ
78:手動点検スイッチ
80:流入口
82:流出口
84:排水口
85:町野式継手
86:弁体
88:弁穴
90:隔壁
92:第1の弁座
94:第2の弁座
95:ピストンロッド
96:ピストン
98:シリンダ室
100:スプリング
102:ボールジスク
104:流入口
105:リテーナ
106:スプリング
108:シリンダ室(第2のシリンダ室)
110:ピストン(第2のピストン室)
112:スプリング
114:ピストンロッド
116:ラックギア
118:ピニオンギア
120,128:双方向クラッチ
120a,128a:入力軸
120b,128b:出力軸
122,126:プーリ
P1:流入ポート
P2:制御ポート
P3:排水ポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10