(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】発音器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20231127BHJP
H05K 5/03 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H04R1/02 101E
H05K5/03 A
(21)【出願番号】P 2022204657
(22)【出願日】2022-12-21
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】202220220129.3
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517409583
【氏名又は名称】エーエーシー マイクロテック(チャンヂョウ)カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】No.3 changcao road, Hi-TECH Industrial Zone, Wujin District, Changzhou City, Jiangsu Province, P.R. China
(73)【特許権者】
【識別番号】511027518
【氏名又は名称】エーエーシーアコースティックテクノロジーズ(シンセン)カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Acoustic Technologies(Shenzhen)Co.,Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】胡 洪建
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲帥▼
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-51926(JP,A)
【文献】国際公開第2022/006954(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/101894(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発音器であって、収容空間を有するハウジングと、前記ハウジングに収容された発音単体と、充填チャンバと、前記充填チャンバ内に充填された吸音粒子とを含み、前記ハウジングには、前記充填チャンバに連通する充填孔が設置され、前記充填孔は、前記充填チャンバに前記吸音粒子を充填するために用いられ、前記発音器は、前記充填孔を覆う孔カバー及び前記充填孔内に充填された弾性部材をさらに含み、前記弾性部材は、前記充填孔の高さ方向に変形能力を有し、前記弾性部材は、圧縮状態で前記孔カバーと前記吸音粒子との間に挟設されていることを特徴とする発音器。
【請求項2】
前記弾性部材は、フォームであることを特徴とする請求項1に記載の発音器。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記孔カバーと接着固定されていることを特徴とする請求項1に記載の発音器。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記孔カバーと一体成形されていることを特徴とする請求項1に記載の発音器。
【請求項5】
前記ハウジングは、天井壁と、前記天井壁に対向する底壁と、前記天井壁と前記底壁とを接続して前記収容空間を囲む外側壁とを含み、前記発音単体は、前記底壁と間隔を隔てて前記充填チャンバを形成することを特徴とする請求項1に記載の発音器。
【請求項6】
前記充填孔は、前記底壁に設置されていることを特徴とする請求項5に記載の発音器。
【請求項7】
前記外側壁に音出し口が設置され、前記ハウジングは、前記底壁から前記天井壁に向かって傾斜して延在しかつ前記天井壁と間隔を隔てる第1止め壁と、前記天井壁から前記底壁に向かって延在しかつ前記底壁と間隔を隔てる第2止め壁、第3止め壁及び第4止め壁とをさらに含み、前記第1止め壁は、前記音出し口に対向しかつ前記音出し口から離れる方向へ傾斜し、前記第2止め壁は、前記第1止め壁の前記音出し口から離れる側に位置しかつ前記第1止め壁に対向し、前記第3止め壁は、前記第4止め壁と対向しかつ前記第1止め壁と前記第2止め壁とを接続し、前記第1止め壁の前記底壁から離れる端部と、前記第2止め壁、前記第3止め壁及び前記第4止め壁の前記天井壁から離れる端部とは、囲んで取付台を形成し、前記発音単体は、前記取付台の前記底壁に向かう側に取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載の発音器。
【請求項8】
前記発音単体は、フレームと、フレームに蓋設されたフロントカバーと、前記フレームと前記フロントカバーとの間に挟設された振動膜とを含み、前記フロントカバーには、音出し孔が設置され、前記フロントカバーは、前記取付台と接することを特徴とする請求項7に記載の発音器。
【請求項9】
前記底壁には、さらに前記充填チャンバと前記ハウジングの外部とを連通するリーク孔が設置されていることを特徴とする請求項5に記載の発音器。
【請求項10】
前記底壁は、底壁本体と、前記底壁本体に開設された取付孔と、前記取付孔を覆う下カバープレートとを含み、前記充填孔は、前記下カバープレートに開設され、前記天井壁は、天井壁本体と、前記天井壁本体に開設されたスルーホールと、前記スルーホールを覆う上カバープレートとを含み、前記上カバープレートは、前記フロントカバーに対向し、前記底壁本体、前記天井壁本体及び前記外側壁は、一体成形されていることを特徴とする請求項8に記載の発音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響電気変換の分野に関し、特に発音器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信技術の急速な発展に伴い、消費者は、ますます音声機能を有する移動体通信機器、例えば携帯電話、携帯ゲーム機、ポータブルコンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、マルチメディアプレーヤ及び公衆又は専用通信ネットワークを介して通信可能な他の装置をよく使用する。発音器は、音声の再生装置として、その設計の良否が移動体通信機器の性能に直接的に影響を与える。
【0003】
関連技術において、発音器は、発音単体と、発音単体を収容するハウジングとを含み、ハウジング内には、発音単体の後音響チャンバと連通して吸音粒子を充填するために用いられる充填チャンバが設置され、それにより発音器の低周波性能を改善する。
【0004】
しかしながら、関連技術において、吸音粒子を満たした発音器は、輸送等の過程を経てピッチングし、吸音粒子間の空隙が圧縮され、吸音粒子が占める充填体積が小さくなり、充填チャンバ内に余裕空間が出現し、この時、吸音粒子が移動して摩擦を生じやすく、吸音粒子を摩耗させ、さらに吸音粒子による効果に影響を与える。
【0005】
したがって、上記問題を解決するための改良された発音器を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
関連技術における吸音粒子の充填体積が経時的に変化するという問題に対して、本発明は、信頼性がより高い発音器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発音器であって、収容空間を有するハウジングと、前記ハウジングに収容された発音単体と、充填チャンバと、前記充填チャンバ内に充填された吸音粒子とを含み、前記ハウジングには、前記充填チャンバに連通する充填孔が設置され、前記充填孔は、前記充填チャンバに前記吸音粒子を充填するために用いられ、前記発音器は、前記充填孔を覆う孔カバー及び前記充填孔内に充填された弾性部材をさらに含み、前記弾性部材は、前記充填孔の高さ方向に変形能力を有し、前記弾性部材は、圧縮状態で前記孔カバーと前記吸音粒子との間に挟設されている。
【0008】
改良として、前記弾性部材は、フォームである。
【0009】
改良として、前記弾性部材は、前記孔カバーと接着固定されている。
【0010】
改良として、前記弾性部材は、前記孔カバーと一体成形されている。
【0011】
改良として、前記ハウジングは、天井壁と、前記天井壁に対向する底壁と、前記天井壁と前記底壁とを接続して前記収容空間を囲む外側壁とを含み、前記発音単体は、前記底壁と間隔を隔てて前記充填チャンバを形成する。
【0012】
改良として、前記充填孔は、前記底壁に設置されている。
【0013】
改良として、前記外側壁に音出し口が設置され、ハウジングは、前記底壁から前記天井壁に向かって傾斜して延在しかつ前記天井壁と間隔を隔てる第1止め壁と、前記天井壁から前記底壁に向かって延在しかつ前記底壁と間隔を隔てる第2止め壁、第3止め壁及び第4止め壁とをさらに含み、前記第1止め壁は、前記音出し口に対向しかつ前記音出し口から離れる方向へ傾斜し、前記第2止め壁は、前記第1止め壁の前記音出し口から離れる側に位置しかつ前記第1止め壁に対向し、前記第3止め壁は、前記第4止め壁と対向しかつ前記第1止め壁と前記第2止め壁とを接続し、前記第1止め壁の前記底壁から離れる端部と、前記第2止め壁、前記第3止め壁及び前記第4止め壁の前記天井壁から離れる端部とは、囲んで取付台を形成し、前記発音単体は、前記取付台の前記底壁に向かう側に取り付けられている。
【0014】
改良として、前記発音単体は、フレームと、フレームに蓋設されたフロントカバーと、前記フレームと前記フロントカバーとの間に挟設された振動膜とを含み、前記フロントカバーには、音出し孔が設置され、前記フロントカバーは、前記取付台と接する。
【0015】
改良として、前記底壁には、さらに前記充填チャンバと前記ハウジングの外部とを連通するリーク孔が設置されている。
【0016】
改良として、前記底壁は、底壁本体と、前記底壁本体に開設された取付孔と、前記取付孔を覆う下カバープレートとを含み、前記充填孔は、前記下カバープレートに開設され、前記天井壁は、天井壁本体、前記天井壁本体に開設されたスルーホールと、前記スルーホールを覆う上カバープレートとを含み、前記上カバープレートは、前記フロントカバーに対向し、前記底壁本体、前記天井壁本体及び前記外側壁は、一体成形されている。
【発明の効果】
【0017】
関連技術に比べて、本発明は、充填孔内に変形能力を有する弾性部材を設置することにより、吸音粒子の充填体積が小さくなった場合、弾性部材は、依然として変形によって吸音粒子を圧密することができ、それにより吸音粒子の移動摩耗を回避する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の実施例における技術案をより明確に説明するために、以下に実施例の説明に必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明する図面は本発明な実施例だけであり、当業者にとって、創造的労働をしない前提で、さらにこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【
図1】本発明の提供する発音器の構成を示す斜視模式図である。
【
図2】
図1に示す発音器の別の角度の構成を示す斜視模式図である。
【0019】
以下、本発明の実施形態における図面を参照して、本発明の実施形態における技術案を明確で、完全に説明し、説明された実施形態は本発明の実施形態の一部だけであり、全ての実施形態ではないことは明らかである。本発明の実施形態に基づいて、本発明が属する技術分野の当業者が創造的労働をしない前提で得られた全ての他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に属するものとする。
【0020】
図1~4に示すように、本発明は、発音器100を提供し、当該発音器100は、発音単体1及び発音単体1を収容するハウジング2を含む。
【0021】
発音単体1は、振動システム10と、磁気回路システム20と、振動システム10及び磁気回路システム20を収容するフレーム30と、フレーム30に蓋設されたフロントカバー40とを含み、フロントカバーには、音出し孔Sが設置される。振動システム10は、フレーム30とフロントカバー40との間に挟設され、磁気回路システム20は、振動システム10のフロントカバー40から離れる側に組み立てられる。具体的には、振動システム10は、振動発音に用いられる振動膜11を含み、振動膜11とフロントカバー40との間に前音響チャンバC1が形成され、振動膜11、磁気回路システム20及びフレーム30の間に後音響チャンバC2が形成される。
【0022】
ハウジング2は、天井壁21と、天井壁21に対向する底壁22と、天井壁21と底壁22とを接続する外側壁23とを含み、天井壁21、底壁22及び外側壁23は、収容空間Gを囲む。外側壁23には、音出し口231が開設される。ハウジング2は、底壁22から天井壁21に向かって傾斜して延在しかつ天井壁21と間隔を隔てる第1止め壁241をさらに含み、第1止め壁241は、音出し口231に対向しかつ音出し口231から離れる方向へ傾斜する。ハウジング2は、天井壁21から底壁22に向かって延在しかつ底壁22と間隔を隔てる第2止め壁242、第3止め壁243及び第4止め壁244とをさらに含み、第2止め壁242は、第1止め壁241の音出し口231から離れる側に位置しかつ第1止め壁241に対向し、第3止め壁243は、第4止め壁244に対向しかつ第1止め壁241と第2止め壁242とを接続する。第1止め壁241の底壁22から離れる端部と、第2止め壁242、第3止め壁243、第4止め壁244の天井壁21から離れる端部とは、囲んで取付台Tを形成し、発音単体1を取り付けるために用いられる。
【0023】
発音単体1は、取付台Tの底壁22に向かう側に取り付けられ、具体的には、発音単体1のフロントカバー40は、取付台Tに接し、それにより音出し孔Sが天井壁21に対向する。第1止め壁241、第2止め壁242、第3止め壁243、第4止め壁244及び発音単体1は、収容空間Gを第1収容空間G1及び第2収容空間G2に仕切し、第1収容空間G1は、音出し通路として形成されて前音響チャンバC1と音出し口231とを連通し、それにより振動膜11が振動して生成した音は、音出し通路をを介して音出し口231から発され、第2収容空間G2は、充填チャンバとして形成され、吸音粒子3を充填するために用いられる。フレーム30にリーク部(図示せず)が設置されて該充填チャンバと後音響チャンバC2とを連通する。
【0024】
発音器100は、底壁22に開設されかつ充填チャンバに連通する充填孔4と、充填孔4を覆う孔カバー5とをさらに含み、該充填孔4は、充填チャンバ内に吸音粒子3を充填するために用いられる。
【0025】
発音器100は、充填孔4内に設置された弾性部材6をさらに含み、弾性部材6は、充填孔4の高さ方向に変形能力を有し、すなわち弾性部材6は、充填孔4の高さ方向に伸長するか又は圧縮することができる。
【0026】
組み立て時、弾性部材6は、圧縮状態で孔カバー5と吸音粒子3との間に挟設される。輸送ピッチング等に起因して、吸音粒子3間の隙間が圧縮されて小さくなることによって、充填体積が小さくなり、該弾性部材6は、充填孔4の高さ方向に伸長し、さらに吸音粒子3を押圧して吸音粒子3間の緩み及び摩擦を回避する。
【0027】
本実施例において、弾性部材6は、フォームであるが、本発明は、弾性部材6の材料を限定せず、変形能力を実現することができればよい。
【0028】
本実施例において、弾性部材6は、孔カバー5と離れて設置され、孔カバー5と吸音粒子3の挟持力のみにより充填孔4内に保持され、他の実施例において、弾性部材6は、孔カバー5と接着固定されてもよく、孔カバー5と一体成形されてもよい。
【0029】
本実施例において、底壁22は、底壁本体221と、底壁本体221に開設された取付孔と、取付孔を覆う下カバープレート222とを含み、充填孔4は、下カバープレート222に開設され、天井壁21は、天井壁本体211と、天井壁本体211に開設されたスルーホールと、スルーホールを覆う上カバープレート212とを含み、上カバープレート212は、フロントカバー40に対向し、底壁本体221、天井壁本体211及び外側壁23は、一体成形されるが、本発明は、ハウジング2における底壁22、天井壁21及び外側壁23の具体的な構造及び成形方式を限定するものではない。
【0030】
本実施例において、底壁22には、さらに充填チャンバとハウジング2の外部とを連通するリーク孔7が設置され、それにより充填チャンバ内の音圧を平衡化するが、本発明は、該リーク孔7を設置することを限定するものではない。
【0031】
本発明において、充填孔内に変形能力を有する弾性部材を設置することにより、吸音粒子の充填体積が小さくなった場合、弾性部材は、依然として変形によって吸音粒子を圧密することができ、それにより吸音粒子の移動摩耗を回避する。
【0032】
上述したのは、本発明の実施形態だけであり、本発明が属する技術分野の当業者にとって、本発明の創造的構想から逸脱しない範囲において種々変更可能であるが、これらはいずれも本発明の保護範囲内に属するものと理解されるべきである。