(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】通信制御方法及びユーザ装置
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20231127BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20231127BHJP
【FI】
H04W48/16 130
H04W84/06
(21)【出願番号】P 2022500380
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2021004383
(87)【国際公開番号】W WO2021161926
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2020022522
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】藤代 真人
【審査官】長谷川 未貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/098135(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0083260(KR,A)
【文献】LG Electronics Inc.,Report on email discussion [106#74][NTN] Cell Selection & reselection,3GPP TSG RAN WG2 #107 R2- 1911297,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_107/Docs/R2-1911297.zip>,2019年08月16日
【文献】ZTE, Sanechips,Report of Email Discussion [106#70] [NR/NTN] RACH capacity/procedures,3GPP TSG RAN WG2 #107 R2-1909256,Internet<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_107/Docs/R2-1909256.zip>,2019年08月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルを無線品質に基づいてランク付けすることによりユーザ装置のサービングセルを選択するセル再選択のための通信制御方法であって、
前記ユーザ装置が、セルが衛星又は航空機の無線送受信機により形成される非地上セルであるか否かにさらに基づいて、前記セル再選択における前記セルのランクを決定することを含
み、
前記決定することは、前記ユーザ装置が所定状態である場合において、前記セルが前記非地上セルである場合、前記セルが前記非地上セルではない場合に比べて、前記セルのランクを高く決定することを含み、
前記所定状態は、前記ユーザ装置の移動速度を示す値が第1の閾値以上である状態である
通信制御方法。
【請求項2】
前記決定することは、前記セルに時間オフセットが適用されているか否かに応じて、前記セルが前記非地上セルであるか否かを判定することを含み、
前記時間オフセットは、前記ユーザ装置と前記セルとの通信を行う際に前記ユーザ装置によって使用されるタイマの起動タイミング又は満了タイミングを遅らせる時間である、
請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項3】
前記タイマは、前記セルへのランダムアクセス手順において前記セルからの応答メッセージの受信を待つべき待ち時間を定めるためのタイマである
請求項2に記載の通信制御方法。
【請求項4】
前記決定することは、前記時間オフセットの値が大きいほど、前記セルのランクを低く決定することを含む
請求項2又は請求項3に記載の通信制御方法。
【請求項5】
複数のセルを無線品質に基づいてランク付けすることによりサービングセルを選択するセル再選択を行うユーザ装置であって、
セルが衛星又は航空機の無線送受信機により形成される非地上セルであるか否かにさらに基づいて、前記セル再選択における前記セルのランクを決定する処理を実行するプロセッサを備え
、
前記プロセッサは、前記ユーザ装置が所定状態である場合において、前記セルが前記非地上セルである場合、前記セルが前記非地上セルではない場合に比べて、前記セルのランクを高く決定し、
前記所定状態は、前記ユーザ装置の移動速度を示す値が第1の閾値以上である状態である
ユーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御方法及びユーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、第5世代(5G)の無線アクセス技術に位置付けられるNR(New Radio)の標準化が3GPP(3rd Generation Partnership Project)において進められている。
【0003】
NR通信において、衛星又は航空機に搭載される無線送受信機がユーザ装置に無線アクセスを提供する非地上ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)を導入するための議論が3GPPにおいて開始されている(例えば、非特許文献1)。非地上ネットワークは、地上ネットワーク(Terrestrial Network)でカバーできないエリア(隔離されたエリア又は遠隔エリア、航空機又は船内など)及び整備不足地域(郊外又は農村地域)にとって有用である。
【0004】
衛星又は航空機に搭載される無線送受信機(以下、「非地上無線送受信機」と呼ぶ)によって形成されるセル(以下、「非地上セル」と呼ぶ。)とユーザ装置との通信において、ユーザ装置と無線送受信機との距離が非常に遠いため、遠い距離による通信の遅延が大きくなる。非地上セルを有するネットワーク環境においてこのような遅延を考慮したモビリティ制御が必要になると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】3GPP技術報告書 「TR38.321 V15.8.0」 2020年1月、インターネット<URL: http://www.3gpp.org/ftp//Specs/archive/38_series/38.321/38321-f80.zip>
【発明の概要】
【0006】
第1の態様に係る通信制御方法は、複数のセルを無線品質に基づいてランク付けすることによりユーザ装置のサービングセルを選択するセル再選択のための通信制御方法である。前記通信制御方法は、前記ユーザ装置が、セルが衛星又は航空機の無線送受信機により形成される非地上セルであるか否かにさらに基づいて、前記セル再選択における前記セルのランクを決定することを含む。
【0007】
第2の態様に係る通信制御方法は、ソースセルからターゲットセルに対してユーザ装置のハンドオーバを行うための通信制御方法である。前記通信制御方法は、前記ターゲットセルが衛星又は航空機の無線送受信機により形成される非地上セルである場合、前記ユーザ装置が、前記ソースセルから、前記非地上セルとの通信に適用する時間オフセットを受信することを含む。前記時間オフセットは、前記ターゲットセルと通信する際に使用されるタイマの起動タイミング又は満了タイミングを遅らせる時間である。
【0008】
第3の態様に係るユーザ装置は、複数のセルを無線品質に基づいてランク付けすることによりサービングセルを選択するセル再選択を行う。ユーザ装置は、セルが衛星又は航空機の無線送受信機により形成される非地上セルであるか否かにさらに基づいて、前記セル再選択における前記セルのランクを決定する処理を実行するプロセッサを備える。
【0009】
第4の態様に係るユーザ装置は、ソースセルからターゲットセルに対してハンドオーバを行う。前記ユーザ装置は、前記ターゲットセルが衛星又は航空機の無線送受信機により形成される非地上セルである場合、前記ユーザ装置が、前記ソースセルから、前記非地上セルとの通信に適用する時間オフセットを受信する処理を実行するプロセッサを備える。前記時間オフセットは、前記ターゲットセルと通信する際に使用されるタイマの起動タイミング又は満了タイミングを遅らせる時間である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るUE100(ユーザ装置)の構成を示す図である。
【
図3】一実施形態に係るgNB200(基地局)の構成を示す図である。
【
図4】一実施形態に係る通信システムの構成におけるプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る通信システムの構成におけるプロトコルスタックの構成を示す図である。
【
図6】一実施形態に係るネットワーク環境を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る動作フローを示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る動作のシーケンスを示す図である。
【
図9】第2実施形態の変更例1に係る動作のシーケンスを示す図である。
【
図10】第2実施形態の変更例2に係る動作のシーケンスを示す図である。
【
図11】第2実施形態の変更例3に係る動作のシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示は、非地上セルを有するネットワーク環境におけるモビリティ制御の改善を可能とすることを目的とする。
【0012】
図面を参照しながら、実施形態に係る移動通信システムについて説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0013】
(移動通信システム)
まず、一実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。一実施形態に係る移動通信システムは3GPPの5Gシステムであるが、移動通信システムには、LTEが少なくとも部分的に適用されてもよい。
【0014】
図1は、一実施形態に係る移動通信システムの構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、移動通信システムは、ユーザ装置(UE:User Equipment)100と、5Gの無線アクセスネットワーク(NG-RAN:Next Generation Radio Access Network)10と、5Gのコアネットワーク(5GC:5G Core Network)20とを有する。
【0016】
UE100は、移動可能な装置である。UE100は、ユーザにより利用される装置であればよい。例えば、UE100は、携帯電話端末(スマートフォンを含む)、タブレット端末、ノートPC、通信モジュール(通信カード又はチップセットを含む)、センサ若しくはセンサに設けられる装置、車両若しくは車両に設けられる装置(Vehicle UE)、及び/又は飛行体若しくは飛行体に設けられる装置(Aerial UE)である。
【0017】
NG-RAN10は、基地局(5Gシステムにおいて「gNB」と呼ばれる)200を含む。gNB200は、NG-RANノードと呼ばれることもある。各gNB200は、基地局間インターフェイスであるXnインターフェイスを介して相互に接続される。gNB200は、1又は複数のセルを管理する。gNB200は、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。gNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータ(以下、単に「データ」という)のルーティング機能、及び/又はモビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能等を有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。「セル」は、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語としても用いられる。1つのセルは1つのキャリア周波数に属する。
【0018】
gNB200が管理するセルは、非地上セルであってもよい。gNB200が非地上セルを管理することについて、以下の2つのアーキテクチャが想定される。
【0019】
第1のアーキテクチャにおいて、gNB200は地上に設置されている。当該gNB200によって管理される非地上セルは、当該gNB200が送信する無線信号を中継する非地上無線送受信機によって形成される。この場合、非地上無線送受信機は、無線リピータとして動作し、gNB200が備える無線送受信機とUE100が備える無線送受信機との間で送受信される無線信号を中継する。
【0020】
第2のアーキテクチャにおいて、gNB200が衛星又は航空機に搭載されている。当該gNB200が備える無線送受信機は、非地上無線送受信機となり、非地上セルを形成する。gNB200は、1つ又は複数のDU(分散ユニット)と1つのCU(集中ユニット)で構成されてもよく、この場合、DUが非地上無線送受信機となり、非地上セルを形成する。CUは地上に設置されてもよい。DUとCUの間はF1インターフェイスで接続される。
【0021】
1つのgNB200は、複数の非地上セルを管理してもよい。第1のアーキテクチャにおいて、地上に設置されるgNB200は、複数の非地上無線送受信機のそれぞれと接続し、各非地上無線送受信機に対応する各非地上セルを管理してもよい。第2のアーキテクチャにおいて、gNB200(CU)は、当該gNB200に属する複数のDUのそれぞれに対応非地上セルを管理してもよい。
【0022】
5GC20は、AMF(Access and Mobility Management Function)及びUPF(User Plane Function)300を含む。AMFは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う。AMFは、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100が在圏するエリアの情報を管理する。UPFは、データの転送制御を行う。AMF及びUPFは、基地局-コアネットワーク間インターフェイスであるNGインターフェイスを介してgNB200と接続される。
【0023】
図2は、一実施形態に係るUE100(ユーザ装置)の構成を示す図である。
【0024】
図2に示すように、UE100は、受信部110、送信部120、及び制御部130を備える。
【0025】
受信部110は、制御部130の制御下で各種の受信を行う。受信部110は、アンテナ及び受信機を有する。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部130に出力する。
【0026】
送信部120は、制御部130の制御下で各種の送信を行う。送信部120は、アンテナ及び送信機を有する。送信機は、制御部130が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0027】
ここで、受信部110が有する受信機及び送信部120が有する送信機は、上述の「UE100が備える無線送受信機」と対応する。
【0028】
制御部130は、UE100における各種の制御を行う。制御部130は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサと電気的に接続された少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPU(Central Processing Unit)と、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0029】
UE100は、自UE100の高度を測定するための高度センサをさらに備えてもよい。
【0030】
なお、UE100は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機等の位置センサをさらに備えてもよい。制御部130は、位置センサを用いて、単位時間あたりの位置変化量を求めることによって、UE100の速度を測定する。但し、UE100が車両若しくは車両に設けられる装置(Vehicle UE)である場合、車両の速度計により得られる速度を取得してもよい。
【0031】
図3は、一実施形態に係るgNB200(基地局)の構成を示す図である。
【0032】
図3に示すように、gNB200は、送信部210、受信部220、制御部230、及びバックホール通信部240を備える。
【0033】
送信部210は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部210は、アンテナ及び送信機を有する。送信機は、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
【0034】
受信部220は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部220は、アンテナ及び受信機を有する。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部230に出力する。
【0035】
ここで、送信部210が有する送信機及び受信部220が有する受信機は、上述の「gNB200が備える無線送受信機」に対応する。
【0036】
制御部230は、gNB200における各種の制御を行う。制御部230は、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサと電気的に接続された少なくとも1つのメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUと、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。
【0037】
バックホール通信部240は、基地局間インターフェイスを介して隣接基地局と接続される。バックホール通信部240は、基地局-コアネットワーク間インターフェイスを介してAMF/UPF300と接続される。
【0038】
図4は、データを取り扱うユーザプレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0039】
図4に示すように、ユーザプレーンの無線インターフェイスプロトコルは、物理(PHY)レイヤと、MAC(Medium Access Control)レイヤと、RLC(Radio Link Control)レイヤと、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤと、SDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤとを有する。
【0040】
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100のPHYレイヤとgNB200のPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0041】
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。UE100のMACレイヤとgNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。gNB200のMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE100への割当リソースブロックを決定する。
【0042】
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとgNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
【0043】
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
【0044】
SDAPレイヤは、コアネットワークがQoS制御を行う単位であるIPフローとAS(Access Stratum)がQoS制御を行う単位である無線ベアラとのマッピングを行う。なお、RANがEPCに接続される場合は、SDAPレイヤが無くてもよい。
【0045】
図5は、シグナリング(制御信号)を取り扱う制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。
【0046】
図5に示すように、制御プレーンの無線インターフェイスのプロトコルスタックは、
図4に示したSDAPレイヤに代えて、RRC(Radio Resource Control)レイヤ及びNAS(Non-Access Stratum)レイヤを有する。
【0047】
UE100のRRCレイヤとgNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRCコネクティッド状態にある。UE100のRRCとgNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がない場合、UE100はRRCアイドル状態にある。また、RRC接続が中断(suspend)されている場合、UE100はRRCインアクティブ状態にある。
【0048】
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。UE100のNASレイヤとAMF300のNASレイヤとの間では、NASシグナリングが伝送される。
【0049】
なお、UE100は、無線インターフェイスのプロトコル以外にアプリケーションレイヤ等を有する。
【0050】
(セル再選択動作の概要)
セル再選択動作の概要について説明する。RRCアイドル状態又はRRCインアクティブにあるUE100は、現在のサービングセルの無線品質が所定閾値を下回った場合に、隣接セルの無線品質を測定する。UE100は、測定した複数のセルに対して、ランキングベースのセル再選択を行う。すなわち、UE100は、複数のセルをランク付けして、ランクの高いセルをサービングセルとして再選択する。UE100は、現在のサービングセルのランクRs及び隣接セルのランクRnを算出する。UE100は、所定期間(TreselectionRAT)に亘ってRsよりも高いランクRnを有するセルを対象セルとして選択する。
【0051】
このようなケースにおいて、隣接セルが満たすべき基準を“R-criteria”と称することもある。Rsは、Rs=Qmeas,s+QHyst-Qoffsettempによって算出される。Rnは、Rn=Qmeas,n-Qoffset-Qoffsettempによって算出される。Qmeas,sは、現在のサービングセルの受信レベル(RSRP)である。Qmeas,nは、隣接セルの受信レベル(RSRP)である。QHystは、現在のサービングセルが対象セルとして再選択されやすくするためのヒステリシス値である。Qoffsettempは、現在のサービングセル及び隣接セルに一時的に適用されるオフセットである。対象セルの選択で用いる各種パラメータは、gNB200からブロードキャストされるSIBに含まれる。各種パラメータは、所定期間(TreselectionRAT)、各種オフセット(Qoffsettemp、QHyst、Qoffset)を含む。
【0052】
(UE100と非地上セルとの通信)
一実施形態に係るUE100と非地上セルとの通信について説明する。
【0053】
非地上無線送受信機を搭載する衛星又は航空機の高度(以下、「非地上無線送受信機の高度」と呼ぶ。)は数万Kmであり得るため、地上に居るUE100と非地上セルとの通信における伝搬遅延が大きい。
【0054】
既存の3GPP仕様には、UE100とセルとの通信について、UE100によって使用される各種タイマが規定されている。このような各種タイマの値は、gNB200からUE100に設定される。タイマとしては、例えば、ランダムアクセス(RA)手順におけるRAタイマ、RRC接続手順におけるタイマT300、及び/又はRRC回復手順におけるタイマT319がある。ここで、RA手順は、UE100がRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態からRRCコネクティッド状態に遷移する場合、及び/又はRRCコネクティッド状態のUE100がハンドオーバを行う場合に実行する手順である。
【0055】
RAタイマは、UE100からセルへのRA手順において、UE100がRAプリアンブル(Random Access Preamble)を送信した後、セルからのRA応答(Random Access Response)の受信を待つべき待ち時間を定めるためのタイマである。RAタイマは、ra-ResponseWindowと呼ばれることがある。RA手順において、UE100は、RAプリアンブルをセル(gNB200)に送信した際に、RAタイマを起動する。UE100は、RA応答を受信することなくRAタイマが満了すると、RA手順が失敗したと判断し、RA手順を再開する。
【0056】
タイマT300は、RRCアイドル状態にあるUE100からセルへのRA手順において、RAプリアンブル及びRA応答を送受信した後のRRC接続手順に用いるタイマである。具体的には、タイマT300は、RRCSetupRequestメッセージをセルに送信した後、RRCSetupRequestメッセージに対する応答メッセージの受信を待つべき待ち時間を定めるためのタイマである。RRC接続手順において、UE100は、RRCSetupRequestメッセージをgNB200に送信する際にT300を起動し、RRCSetupRequestメッセージに対する応答メッセージを受信することなくT300が満了すると、RRC接続手順が失敗したと判断する。
【0057】
タイマT319は、RRCインアクティブ状態にあるUE100からセルへのRA手順において、RAプリアンブル及びRA応答を送受信した後のRRC回復手順に用いるタイマである。具体的には、タイマT319は、RRCResumeRequestメッセージをセルに送信した後、セルからの応答メッセージの受信を待つべき待ち時間を定めるためのタイマである。RRC回復手順において、UE100は、RRCResumeRequestメッセージをgNB200に送信する際にT319を起動し、RRCResumeRequestメッセージに対する応答メッセージを受信することなくT319が満了すると、RRC回復手順が失敗したと判断する。
【0058】
なお、タイマT300及びタイマT319は、RRCレイヤが用いるタイマであるが、同様なタイマとして、MACレイヤが用いるra-ContentionResolutionTimerがある。
【0059】
非地上セルとの通信における伝搬遅延は、地上セル(地上に設置される無線送受信機によって形成されるセル)との通信における伝搬遅延よりも遥かに大きい。このため、UE100が地上セルに適用するタイマ(例えば、RAタイマ)と同じタイマ値を非地上セルに適用すると、UE100は応答メッセージ(例えば、RA応答)をタイマ時間内に受信できない可能性がある。この場合、RA手順が成功せず、UE100は、非地上セルと通信できない。
【0060】
一実施形態では、非地上セルとの通信に対して、タイマの起動タイミング又は満了タイミングを遅らせる時間オフセットが適用される。時間オフセットの値は、非地上無線送受信機の高度の値に比例して設定されてもよい。非地上無線送受信機の高度の値が大きいほど、時間オフセットの値が大きく設定されてもよい。時間オフセットの値は、ミリ秒(ms)の数で表されてもよいし、サブフレームの数で表されてもよい。
【0061】
タイマの起動タイミングを遅らせる時間オフセットがRAタイマに適用される場合、UE100は、所定メッセージを送信後、時間オフセットによって表される時間を経てから、RAタイマを起動する。タイマの満了タイミングを遅らせる時間オフセットがRAタイマに適用される場合、UE100は、gNB200から設定されるRAタイマの値に時間オフセットを加えた値を当該RAタイマの値として、当該RAタイマを起動する。言い換えると、タイマの満了タイミングを遅らせる時間オフセットは、タイマの値を拡張するものである。
【0062】
gNB200は、非地上セルに適用する時間オフセットを、当該非地上セルによりブロードキャストされるシステム情報ブロック(SIB)に含めることによって、時間オフセットをUE100に通知してもよい。
【0063】
地上に設置されるgNB200が非地上無線送受信機を介して非地上セルを管理する場合(上述の第1のアーキテクチャ)、gNB200は、非地上無線送受信機の高度の変化に応じて時間オフセットを動的に設定してもよい。gNB200が複数の非地上セルを管理する場合、gNB200は、各非地上セルに対応する非地上無線送受信機の高度に応じて各非地上セルの時間オフセットを設定してもよい。
【0064】
UE100は、非地上セルのSIBから取得した時間オフセットをタイマに適用してから、非地上セルとの通信を行う。
【0065】
(ネットワーク環境)
図6は、一実施形態に係るネットワーク環境を示す図である。
【0066】
図6に示すように、UE100は、セル#1~セル#4のカバレッジが重複しているエリアに居る。セル#1~セル#4のうち、セル#3のカバレッジのサイズは一番大きく、セル#1、セル#2、及びセル#4のカバレッジはセル#3のカバレッジ内にある。セル#1のカバレッジ及びセル#2のカバレッジはセル#4のカバレッジ内にある。セル#1のカバレッジとセル#2のカバレッジとは一部が重複している。UE100は、その重複している部分に居る。
【0067】
セル#1は、地上に設置されるgNB200-1が備える無線送受信機によって形成される地上セルである。セル#2は、地上に設置されるgNB200-2が備える無線送受信機によって形成される地上セルである。セル#3は、衛星500-1に搭載される非地上無線送受信機によって形成される非地上セルである。セル#3は、上述の第1のアーキテクチャのように、地上に設置されるgNB200-3によって管理される。セル#4は、衛星500-2に搭載されるgNB200-4が備える無線送受信機によって形成される非地上セルである。セル#3及びセル#4は、SIBで自セルに適用する時間オフセットをブロードキャストする。セル#3に適用する時間オフセットの値は、セル#4に適用する時間オフセットの値よりも大きい。
【0068】
gNB200-1とgNB200-2とgNB200-3とは、Xnインターフェイスを介して相互に接続される。一方、gNB200-1とgNB200-2とgNB200-3とは、gNB200-4との間にXnインターフェイスを有しない。
【0069】
(第1実施形態)
図6に示すネットワーク環境において、現在のサービングセルがセル#1であるUE100は、RRCアイドル状態にある。UE100は、セル#1の無線品質よりもセル#2~セル#4の無線品質の方が良好であると判断した場合、セル#2~セル#4のいずれか1つをサービングセルとして再選択し得る。この場合、UE100がセル#3又はセル#4を選択すると、遅延の大きい通信を行う可能性がある。このため、RRCコネクティッド状態に遷移後にURLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications)等の低遅延の通信を希望するUE100にとってセル#3又はセル#4を選択することは好ましくない。
【0070】
第1実施形態は、このような問題を解決しようとする実施形態である。第1実施形態に係るUE100は、複数のセル(セル#1~セル#4)を無線品質に基づいてランク付けすることによりサービングセルを選択するセル再選択を行う。UE100は、セルが非地上セルであるか否かにさらに基づいて、セル再選択における前記セルのランクを決定する。UE100は、セルが非地上セルである場合、当該セルが非地上セルではない場合に比べて、当該セルのランクを低く決定してもよい。これにより、UE100は、非地上セルを選択しにくくなり、遅延の大きい通信を行うことを回避できる。
【0071】
第1実施形態において、UE100は、セルに時間オフセットが適用されているか否かに応じて、当該セルが非地上セルであるか否かを判定してもよい。UE100は、セルからブロードキャストされるSIBから、当該セルに適用される時間オフセットを取得してもよい。UE100は、SIBで時間オフセットをブロードキャストするセルを非地上セルとして判定してもよい。
【0072】
第1実施形態において、UE100は、時間オフセットの値が大きいほど、セルのランクを低く決定する。非地上無線送受信機の高度が高いほど時間オフセットの値が大きく設定されているため、UE100は、高度の値のより大きい非地上無線送受信機に対応する非地上セルを選択しにくくなり、遅延のより大きい通信を行うことを回避できる。
【0073】
第1実施形態において、UE100は、自UE100が所定状態である場合において、セルが非地上セルである場合、当該セルが非地上セルではない場合に比べて、当該セルのランクを高く決定する。所定状態は、UE100の移動速度を示す値が第1の閾値以上である状態、又は、UE100の高度を示す値が第2の閾値以上である状態である。UE100が高速移動の状態である場合、セルの切り替えが頻繁に発生しないために、カバレッジの大きい非地上セルを選択したほうが、より安定的な通信を行うことができる。UE100がAerial UEである又はUE100が飛行体内にある場合であって、高い高度で飛行する場合、非地上無線送受信機との距離が短くなり、逆に地上セルとの通信に遅延が発生してしまう。この場合、UE100は、非地上セルを選択したほうが、低遅延かつ安定的な通信を行うことができる。
【0074】
図7は、第1実施形態に係るUE100の動作フローを示す図である。
【0075】
ステップS11において、UE100は、現在のサービングセル(セル#1)の品質が所定閾値を下回ったことに応じて測定を開始し、セル#2~セル#4のそれぞれの無線品質を測定する。
【0076】
ステップS12において、UE100は、セル#2~セル4のそれぞれについて、当該セルが非地上セルであるか否かを判定する。UE100は、時間オフセットをブロードキャストするセル#3及びセル#4を非地上セルとして判定してもよい。UE100は、時間オフセット以外の所定情報に基づいてセルが非地上セルであるか否かを判定してもよい。かかる所定情報は、セルの高度(セルを形成する無線送受信機の高度)を示す情報、及び/又はセルが非地上セルであることを示すフラッグなどを含む。所定情報は、セルのSIBでブロードキャストされてもよい。
【0077】
UE100は、非地上セルに適用する時間オフセットを、当該非地上セル周辺のセルから取得してもよい。例えば、UE100は、セル#3に適用する時間オフセットを、セル#1がブロードキャストするSIBから取得してもよい。この場合、セル#1は、自セルの周辺にある複数のセルを示すセルリストをSIBに含めてブロードキャストし、当該セルリストには、セルのセル識別子と、当該セルに適用する時間オフセットとが含まれる。UE100は、セル#1のSIBを読むことによってセル#3に適用する時間オフセットを取得する。
【0078】
ステップS13において、UE100は、自UE100が上述の所定状態であるか否かを判定する。UE100は、自UE100が所定状態ではないと判断した場合(ステップS13:NO)、処理をステップS14に進める。一方、UE100は、自UE100が所定状態であると判断した場合(ステップS13:YES)、処理をステップS15に進める。但し、ステップS13は必須ではなく、省略してもよい。ステップS13が省略される場合、処理をステップS14に進める。
【0079】
ステップS14において、UE100は、第1方法(地上セルを優先的に選択する方法)で、セル#2~セル#4のそれぞれのランク(上述のRn)を決定する。第1方法において、UE100は、セルが非地上セルである場合、当該セルが非地上セルではない場合に比べて、前記セルのランクを低く決定する。
【0080】
例えば、UE100は、非地上セルのRnを決定する際に、上述の「Rn=Qmeas,n-Qoffset-Qoffsettemp」という式における「Qoffset」に時間オフセットの値を掛けることでRnを算出する。UE100は、地上セルのRnを算出する際に、「Qoffset」に時間オフセットの値を掛けない。すなわち、UE100は、セル#2のランクを「Rn=Qmeas,n-Qoffset-Qoffsettemp」で算出し、セル#3及びセル#4のランクを「Rn=Qmeas,n-Qoffset×時間オフセット-Qoffsettemp」で算出する。セル#3に適用する時間オフセットの値は、セル#4に適用する時間オフセットの値よりも大きいため、セル#2~セル#4についての無線品質(Qmeas,n)が略同様であり、かつ、セル#2~セル#4に対して同じ「Qoffset」及び「Qoffsettemp」を適用する場合は、セル#3のランクがセル#4のランクよりも低く決定され、セル#4のランクがセル#2のランクよりも低く決定される。
【0081】
Qoffsetの値は、時間オフセットの値(もしくはその値の範囲)毎に設定されていてもよい。この場合、UE100は非地上セルのRnを決定する際に、当該非地上セルに適用される時間オフセットの値を参照し、設定されたQoffset値を適用する。当該時間オフセット毎のQoffsetは、SIBにより通知・設定されてもよい。
【0082】
UE100は、RRCコネクティッド状態に遷移後に許容遅延が閾値未満である通信を行うことを希望する場合、非地上セルのランクを最下位に決定してもよいし、非地上セルをランク付けから除外してもよい。例えば、UE100は、非地上セルのランクを算出する際に、無限大の「Qoffset」を適用する。
【0083】
ステップS15において、UE100は、第2方法(非地上セルを優先的に選択する方法)でセル#2~セル#4のそれぞれのランク(上述のRn)を決定する。第2方法において、UE100は、セルが非地上セルである場合、当該セルが非地上セルではない場合に比べて、当該セルのランクを高く決定する。例えば、UE100は、非地上セルのランクを算出する際に、非地上セルに共通のQoffsetNTNを適用する。すなわち、UE100は、セル#3及びセル#4のランクを「Rn=Qmeas,n-Qoffset-Qoffsettemp+QoffsetNTN」で算出する。これにより、セル#3及びセル#4のランクは、セル#2よりも高く決定される。
【0084】
ステップS15において、UE100は、非地上セルのみを選択してもよい。この場合、UE100は、地上セルのランクを最下位に決定する。
【0085】
ステップS13において、自UE100の高度を示す値が第2の閾値以上である状態であると判定した場合、ステップS15において、UE100は、非地上セルの高度と自UE100の高度との差分にさらに基づいて当該非地上セルのランクを決定してもよい。UE100は、非地上セルの高度と自UE100の高度との差分が閾値以下である場合、そうでない場合と比べて、当該非地上セルのランクを高く決定する。UE100は、時間オフセットに応じて非地上セルの高度を決定してもよいし、非地上セルのSIBに含まれるセルの高度を示す情報に基づいて非地上セルの高度を特定してもよい。
【0086】
(第2実施形態)
第1実施形態では、UE100はRRCアイドル状態又はRRCインアクティブ状態にあり、セル再選択を行うが、第2実施形態では、UE100はRRCコネクティッド状態にあり、ハンドオーバを行う。
【0087】
図6に示すネットワーク環境において、UE100は、セル#1(gNB200-1)とRRCコネクティッド状態である。UE100は、セル#1~セル#4のカバレッジが重複しているエリアに居る。UE100がソースセルであるセル#1からターゲットセルである非地上セル(例えば、セル#3)へのハンドオーバを行うケースにおいて、UE100は、ソースセルからハンドオーバの指示(RRCReconfiguration)を受信した後において、ターゲットセルに対して同期を確立するためにRA手順を行う。
【0088】
RRCReconfigurationには、RA手順用のRAタイマの情報が含まれる。UE100は、ターゲットセルの無線品質を既に測定したが、まだSIBを読み取っていない可能性がある。このため、UE100は、ターゲットセルが非地上セルであることを把握しておらず、時間オフセットを適用していないRAタイマを使用してしまい、RA手順に成功しない可能性がある。
【0089】
第2実施形態は、このような問題を解決しようとする実施形態である。第2実施形態に係るUE100は、ソースセルからターゲットセルへのハンドオーバを行う。ターゲットセルが非地上セルである場合、UE100は、ソースセルから、当該非地上セルとの通信に適用する時間オフセットを受信する。これによって、UE100は、時間オフセットを適用したRAタイマを使用することができる。
【0090】
図8は、第2実施形態に係る動作のシーケンスを示す図である。
【0091】
ステップS21において、UE100は、gNB200-1によって設定された測定構成に従って、セル#1~セル#4の無線品質を含む測定報告をgNB200-1に送信する。
【0092】
ステップS22において、gNB200-1は、測定報告に基づいて、ハンドオーバを実行するか否かを決定する。ここで、gNB200-1は、セル#3(gNB200-3)へのハンドオーバを実行することを決定したと仮定して説明を進める。
【0093】
ステップS23において、gNB200-1は、ハンドオーバ要求(Handover Request)メッセージをgNB200-3へ送る。Handover Requestメッセージは、ハンドオーバのためのリソースの準備を要求するメッセージである。
【0094】
gNB200-3は、Handover Requestメッセージを受信した後に、ハンドオーバ要求を承認するか否かを決定する。gNB200-3は、ハンドオーバ要求を承認すると決定したと仮定して説明を進める。
【0095】
ステップS24において、gNB200-3は、ハンドオーバ要求承認(Handover Request ACK)メッセージをgNB200-1へ送る。gNB200-1は、Handover Request ACKメッセージをeNB200-3から受け取る。Handover Request ACKメッセージは、UE100のハンドオーバ先であるセル#3(ターゲットセル)に適用する時間オフセットの情報を含む。
【0096】
ステップS25において、gNB200-1は、セル#1(gNB200-1)からセル#3(gNB200-3)へハンドオーバを開始するためのメッセージ(RRCReconfiguration)をUE100へ送信する。当該メッセージには、セル#3(ターゲットセル)に適用するRAタイマ及び時間オフセットの情報を含む。
【0097】
ステップS26において、UE100は、時間オフセットを適用したRAタイマを使用してgNB200-3へのRA手順を行う。
【0098】
(第2実施形態の変更例1)
変更例1では、UE100は、非地上セルであるソースセル(例えば、セル#3)から地上セルであるターゲットセル(例えば、セル#1)へのハンドオーバを行う。この場合、UE100は、時間オフセットを適用したまま、セル#1にRA手順を行うと、無駄な待ち時間が生じる可能性がある。この問題を解決するために、ソースセルは、ターゲットセルが地上セルである場合、時間オフセットの適用を解除することを示す情報をRRCReconfigurationに含めてUE100に送信する。
【0099】
図9は、変更例1に係る動作のシーケンスを示す図である。
【0100】
ステップS31において、UE100は、gNB200-3によって設定された測定構成に従って、セル#1、セル#2及びセル#4の無線品質を含む測定報告をgNB200-1に送信する。
【0101】
ステップS32において、gNB200-3は、測定報告に基づいて、ハンドオーバを実行するか否かを決定する。ここで、gNB200-3は、セル#1(gNB200-1)へのハンドオーバを実行することを決定したと仮定して説明を進める。
【0102】
ステップS33において、gNB200-3は、ハンドオーバ要求メッセージをgNB200-1へ送る。ハンドオーバ要求メッセージには、ソースセル(セル#3)が非地上セルであることを示す情報が含まれる。これによって、gNB200-1は、UE100が時間オフセットを適用していることを把握できる。
【0103】
ステップS34において、gNB200-1は、Handover Request ACKメッセージをgNB200-1へ送る。Handover Request ACKメッセージは、セル#1が地上セルである旨を示す情報を含んでもよい。Handover Request ACKメッセージは、セル#1に対して時間オフセットの適用は不要であることを示す情報を含んでもよい。
【0104】
ステップS35において、gNB200-3は、セル#3(gNB200-1)からセル#1(gNB200-1)へハンドオーバを開始するためのメッセージ(RRCReconfiguration)をUE100へ送信する。RRCReconfigurationメッセージは、時間オフセットの適用を解除することを示す情報を含む。当該時間オフセットの適用の解除は、明示的に時間オフセット値を解除する旨の情報要素で示されてもよく、暗示的に時間オフセット値を示す情報要素を通知・設定しないことにより通知されてもよい。例えば、UE100は、時間オフセット値を示す情報要素を含まないRRCReconfigurationメッセージを受信すると、時間オフセットの適用を解除する。
【0105】
ステップS36において、UE100は、時間オフセットを適用せずにRAタイマを使用してgNB200-1へのRA手順を行う。
【0106】
(第2実施形態の変更例2)
変更例2では、UE100は、Xnインターフェイスを有しないgNB200間のハンドオーバを行う。
図6に示すネットワーク環境を例にすると、UE100は、セル#1(gNB200-1)からセル#4(gNB200-4)へのハンドオーバを行う。この場合、第2実施形態においてgNB200間で送受信される情報(例えば、時間オフセットを示す情報)は、AMF300(コアネットワーク装置)を介して送受信される。
【0107】
gNB200-1とgNB200-4とは、それぞれAMF300-1との間にNGインターフェイスを有すると仮定して説明を進める。
【0108】
図10は、変更例2に係る動作のシーケンスを示す図である。
【0109】
ステップS41において、gNB200-1は、AMF300-1に対してHandover Requiredメッセージを送信する。
【0110】
ステップS42において、AMF300-1は、gNB200-4に対してHandover Requestメッセージを送信する。
【0111】
ステップS43において、gNB200-4は、AMF300-1に対してHandover Request ACKメッセージを送信する。Handover Request ACKメッセージには、セル#4に適用する時間オフセットを示す情報が含まれる。
【0112】
ステップS44において、AMF300-1は、Handover CommandメッセージをgNB200-1に送信する。Handover Commandメッセージには、セル#4に適用する時間オフセットを示す情報が含まれる。
【0113】
ステップS45において、gNB200-1は、ハンドオーバを開始するためのRRCReconfigurationメッセージをUE100へ送信する。RRCReconfigurationメッセージには、セル#4に適用する時間オフセットを示す情報が含まれる。
【0114】
ステップS46において、UE100は、時間オフセットを適用したRAタイマを使用してgNB200-4へのRA手順を行う。
【0115】
(第2実施形態の変更例3)
変更例3では、UE100は、Xnインターフェイスを有しないgNB200間のハンドオーバを行う。
図6に示すネットワーク環境を例にすると、UE100は、セル#4(gNB200-4)からセル#1(gNB200-1)へのハンドオーバを行う。この場合、変更例1においてgNB200間で送受信される情報(例えば、ソースセルが非地上セルであることを示す情報)は、AMF300を介して送受信される。
【0116】
図11は、変更例3に係る動作のシーケンスを示す図である。
【0117】
ステップS51において、gNB200-1は、AMF300-1に対してHandover Requiredメッセージを送信する。Handover Requiredメッセージには、ソースセル(セル#4)が非地上セルであることを示す情報が含まれる。
【0118】
ステップS52において、AMF300-1は、gNB200-4に対してHandover Requestメッセージを送信する。Handover Requestメッセージには、ソースセル(セル#4)が非地上セルであることを示す情報が含まれる。
【0119】
ステップS53において、gNB200-4は、AMF300-1に対してHandover Request ACKメッセージを送信する。Handover Request ACKメッセージは、セル#1が地上セルである旨を示す情報を含んでもよい。Handover Request ACKメッセージは、セル#1に対して時間オフセットの適用は不要であることを示す情報を含んでもよい。
【0120】
ステップS54において、AMF300-1は、Handover CommandメッセージをgNB200-1に送信する。Handover Commandメッセージは、セル#1が地上セルである旨を示す情報を含んでもよい。Handover Commandメッセージは、セル#1に対して時間オフセットの適用は不要であることを示す情報を含んでもよい。
【0121】
ステップS55において、gNB200-4は、ハンドオーバを開始するためのRRCReconfigurationメッセージをUE100へ送信する。RRCReconfigurationメッセージは、時間オフセットの適用を解除することを示す情報を含む。当該時間オフセットの適用の解除は、明示的に時間オフセット値を解除する旨の情報要素で示されてもよく、暗示的に時間オフセット値を示す情報要素を通知・設定しないことにより通知されてもよい。
【0122】
ステップS56において、UE100は、時間オフセットを適用せずにRAタイマを使用してgNB200-1へのRA手順を行う。
【0123】
(その他実施形態)
上述した実施形態において、時間オフセットはgNB200からUE100に設定されるが、時間オフセットは、UE100自身によって決定されてもよい。この場合、UE100は、非地上セルのSIBに含まれるセルの高度を示す情報に基づいて非地上セルの高度を特定し、非地上セルの高度と自UE100の高度との差によって、当該非地上セルに適用する時間オフセットを算出する。
【0124】
また、UE100は、自UE100の高度により、時間オフセットに調整値を適用してもよい。これによりUE100と非地上セルの間の時間オフセット値が適切に調整可能となる。当該調整値は、UE100が自らの高度情報を基に伝搬遅延を算出して適用してもよいし、gNB200から高度毎の調整値が設定されてもよい。gNB200から調整値が設定される場合、SIBを用いて通知・設定が行われてもよい。
【0125】
UE100、gNB200、及びAMF300が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。UE100及びeNB200が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップセットが提供されてもよい。
【0126】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0127】
本願は、日本国特許出願第2020-022522号(2020年2月13日出願)の優先権を主張し、その内容の全てが本願明細書に組み込まれている。