(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】冷却回路と、冷却流体の圧力を低下させるように構成された減圧システムとを有する一体型モータ圧縮機ユニット
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
F04D29/58 P
F04D29/58 M
(21)【出願番号】P 2022518184
(86)(22)【出願日】2019-09-23
(86)【国際出願番号】 IB2019058026
(87)【国際公開番号】W WO2021058995
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】512157977
【氏名又は名称】サーモダイン
【氏名又は名称原語表記】THERMODYN
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】デフォイ、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ギルマン、シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、アルバン
(72)【発明者】
【氏名】ナウロッキ、ジル
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/017202(WO,A1)
【文献】特表2016-514241(JP,A)
【文献】特表2009-538398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0200438(US,A1)
【文献】特開2015-178790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 17/10-17/14
F04D 25/06-25/08
F04D 29/58
F04B 17/03
F04B 35/04
F04B 39/06
F04C 23/02
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(12)と、前記モータ(12)に結合された圧縮機(14)とを有する一体型モータ圧縮機ユニット(10)のための減圧システム(30)であって、
前記一体型モータ圧縮機ユニット(10)を冷却するための作動流体を循環させるように構成された冷却回路(27)と、
前記冷却回路(27)に接続された膨張デバイス(32)と、
前記冷却回路(27)に接続された補助圧縮機(34)と、を備え、
前記膨張デバイス(32)が、前記圧縮機(14)の主圧縮機吸引入口(24)を介して作動流体を受け取り、当該作動流体を膨張することで冷却して前記冷却回路(27)に送るように構成された冷却膨張弁又は膨張ホイールであり、
前記補助圧縮機(34)が、前記冷却回路(27)からの前記モータ(12)を冷却した後の前記作動流体を圧縮して前記主圧縮機吸引入口(24)に送るための吸引圧力を回復するように構成されることを特徴とする、減圧システム(30)。
【請求項2】
前記冷却回路(27)に接続された冷却器を更に備える、請求項1に記載の減圧システム(30)。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか1項記載の減圧システム(30)と、
モータ(12)と、
回転可能シャフト(16)を介して前記モータ(12)に結合された圧縮機(14)と、
前記モータ(12)と前記圧縮機(14)と前記回転可能シャフト(16)とを収容する単一の共通ハウジング(18)と、
を有し、
前記単一の共通ハウジング(18)を通るように配置された冷却回路(27)内で作動流体が循環する、
一体型モータ圧縮機ユニット(10)。
【請求項4】
前記膨張デバイス(32)が膨張ホイールであり、前記膨張ホイール(32)が前記回転可能シャフト(16)のモータシャフト端部に取り付けられ、前記補助圧縮機(34)が前記回転可能シャフト(16)の圧縮機シャフト端部に取り付けられる、請求項3に記載の一体型モータ圧縮機ユニット(10)。
【請求項5】
前記回転可能シャフト(16)の各端部が、少なくとも1つのベアリング(22)によって支持される、請求項3又は4に記載の一体型モータ圧縮機ユニット(10)。
【請求項6】
モータ(12)と、前記モータ(12)に結合された圧縮機(14)とを有する一体型モータ圧縮機ユニット(10)のためのシステム(30)であって、
前記一体型モータ圧縮機ユニット(10)を冷却するための作動流体を循環させるように構成された冷却回路(27)と、
前記冷却回路(27)に接続された補助圧縮機(34)と、を備え、
前記冷却回路(27)が前記圧縮機(14)から漏出した膨張した作動流体を受け取って前記一体型モータ圧縮機ユニット(10)を冷却するように構成され、
前記補助圧縮機(34)が、前記冷却回路(27)からの前記モータ(12)を冷却した後の前記作動流体を圧縮して
前記圧縮機(14)の主圧縮機吸引入口(24)に送るための吸引圧力を回復するように構成される、システム(30)。
【請求項7】
前記冷却回路(27)に取り付けられた冷却器をさらに備える、請求項6に記載のシステム(30)。
【請求項8】
請求項6又は7のいずれか1項記載のシステム(30)と、
モータ(12)と、
回転可能シャフト(16)を介して前記モータ(12)に結合された圧縮機(14)と、
前記モータ(12)と前記圧縮機(14)と前記回転可能シャフト(16)とを収容する単一の共通ハウジング(18)と、
を有し、
前記単一の共通ハウジング(18)を通るように配置された冷却回路(27)内で作動流体が循環する、一体型モータ圧縮機ユニット(10)。
【請求項9】
補助圧縮機(34)が前記回転可能シャフト(16)のモータシャフト端部に取り付けられる、請求項8に記載の一体型モータ圧縮機ユニット(10)。
【請求項10】
前記回転可能シャフト(16)の各端部が、少なくとも1つのベアリング(22)によって支持される、請求項8又は9に記載の一体型モータ圧縮機ユニット(10)。
【請求項11】
モータ(12)と、前記モータ(12)に結合された圧縮機(14)とを有する一体型モータ圧縮機ユニット(10)のためのシステム(30)であって、
前記一体型モータ圧縮機ユニット(10)を冷却するための作動流体を循環させるように構成された閉ループ冷却回路(27)と、
前記閉ループ冷却回路(27)に接続され、前記圧縮機(14)の上流に取り付けられた送風デバイス(36)と、
前記閉ループ冷却回路(27)に接続された補助圧縮機(34)と、を備え、
前記補助圧縮機(34)が、前記閉ループ冷却回路(27)からの前記モータ(12)を冷却した後の前記作動流体を圧縮して
前記圧縮機(14)の主圧縮機吸引入口(24)に送るための吸引圧力を回復するように構成される、システム(30)。
【請求項12】
前記送風デバイス(36)の上流又は下流で前記閉ループ冷却回路(27)に取り付けられた冷却器(38)をさらに備える、請求項11に記載のシステム(30)。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のシステム(30)と、
モータ(12)と、
回転可能シャフト(16)を介して前記モータ(12)に結合された圧縮機(14)と、
前記モータ(12)と前記圧縮機(14)と前記回転可能シャフト(16)とを収容する単一の共通ハウジング(18)と、
を有し、
前記単一の共通ハウジング(18)を通るように配置された閉ループ冷却回路(27)内で作動流体が循環する、一体型モータ圧縮機ユニット(10)。
【請求項14】
送風デバイス(36)が前記回転可能シャフト(16)の圧縮機シャフト端部に取り付けられる、請求項13に記載の一体型モータ圧縮機ユニット(10)。
【請求項15】
前記回転可能シャフト(16)の各端部が、少なくとも1つのベアリング(22)によって支持される、請求項13又は14に記載の一体型モータ圧縮機ユニット(10)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明の分野は、作動流体を処理するための一体型モータ圧縮機ユニット、より具体的には、冷却システムを有する一体型モータ圧縮機に関する。
【0002】
一般に、モータ圧縮機ユニットは、遠心圧縮機と、共通ハウジングに一体化されたモータとを備える。
【0003】
複数の圧縮段階を備えた遠心圧縮機は、一般に、圧縮されたプロセスガスの流れを生成するために、モータ又はタービンによって駆動される回転子に結合された駆動シャフトによって支持された複数のインペラを備える。
【0004】
そのような遠心圧縮機を直接駆動するために使用されるシャフトは、比較的高速で回転する必要があり、それにより熱が発生する。更に、高速でモータ圧縮機を動作させることにより、加圧ガスで動作する構成要素に起因する風力摩擦損失が増加する。
【0005】
この熱が適切に散逸されない場合、モータの性能に悪影響を及ぼすこと、及び固定子の電気絶縁を損傷することがあり得る。温度の上昇はまた、圧縮機及びモータの両方の回転子ベアリングシステムに悪影響を及ぼし得るため、損傷及び/又は故障をもたらす。
【0006】
熱を調節し、そのような一体型モータ圧縮機ユニットを冷却するために、圧縮プロセスのある時点でガスがプロセスストリームから引き出される、開ループ冷却回路又は準閉ループ冷却回路であり得る冷却回路を使用することが知られている。その場合、モータ及びベアリングを通してプロセスガスを循環させて、熱を吸収する。
【0007】
例えば、少量のプロセスガスのみがプロセスストリームから冷却回路に供給される。冷却ガスは、冷却ガス源とガスが流れることができる地点との間の圧力差によって駆動され得る。
【0008】
あるいは、冷却ループの前に配置された送風機を使用して、当該冷却回路内の冷却ガスを循環させ、したがってファン圧縮効率を改善することが知られている。しかしながら、そのような解決策は、機械が高圧で作動する場合、風損を大幅に増加させる。
【0009】
閉ループ冷却回路でモータ圧縮を冷却するためのシステムを記載した米国特許第9200643(B2)号を参照することができる。しかしながら、モータは、汚染を回避するために、乾燥ガスシール又はカーボンリングによって圧縮機処理ガスからシールされ、これはシールの保守点検を増加させる。
発明の簡単な説明
【0010】
本明細書に記載の一体型モータ圧縮機ユニットの実施形態によってもたらされる1つの利点は、風損を低減することである。
【0011】
実際、高速モータ、カップリング、及びベアリングがプロセスガスに浸漬されている場合、特に高い吸引圧力を有する圧縮機では、風損が高くなり得る。
【0012】
したがって、モータ及びモータに結合された圧縮機を有する一体型モータ圧縮機ユニットの減圧システムが提案されている。減圧システムは、モータの圧力を減圧するように構成されている。
【0013】
更に、例えばガスなどの作動流体を処理するように構成され、モータと、回転可能シャフトを介して当該モータに結合され、かつ単一の共通ハウジングに取り付けられた圧縮機とを備えた、一体型モータ圧縮機ユニットが提案され、冷却流体が、冷却回路内の当該ハウジング全体を通して循環される。
【発明の概要】
【0014】
一体型モータ圧縮機ユニットは、モータの圧力を減圧するように構成された減圧システムを備える。
【0015】
したがって、減圧システムは、冷却回路内を循環する冷却流体の圧力を低減するように構成されている。
【0016】
そのような減圧システムは、少なくとも10バールの著しい圧力降下を生成する。したがって、モータの効率は著しく増加する。
【0017】
一実施形態によれば、減圧システムは、例えば冷却回路の前の膨張デバイスと、例えば冷却回路の後の、吸引圧力を回復するように構成された補助圧縮機とを備える。
【0018】
膨張デバイスは、例えば、圧縮機の主圧縮機吸入口を介して作動流体を受け取り、膨張した冷却流体を冷却回路に送るように構成された冷却膨張弁であってもよく、補助圧縮機は、特にモータ及び/又はベアリングを冷却した後に冷却流体を受け取り、冷却流体を圧縮するように構成されてもよい。
【0019】
別の実施形態によれば、膨張デバイスは、膨張ホイールである。
【0020】
膨張ホイールは、本明細書で更に説明及び特許請求される様々な好適な場所に取り付けられ得る。
【0021】
一体型モータ圧縮機ユニットの動作の一実施形態では、モータはシャフトを回転させ、それによって圧縮機を駆動する。圧縮されるプロセスガスは、ハウジング内に設けられた主圧縮機吸引入口を介して導入される。次いで、圧縮機は、プロセスガスをインペラの連続する段階を通して圧縮し、それによって圧縮されたプロセスガスを生成する。次いで、圧縮されたプロセスガスは、ハウジング内に設けられたプロセス排出口を介して圧縮機から出る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の実施形態の他の目的、特徴、及び利点は、単に非限定的な例として、添付の図面を参照して、以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【
図1】本発明の第1の実施形態による一体型モータ圧縮機ユニットを非常に概略的に表す図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態による一体型モータ圧縮機ユニットを非常に概略的に表す図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態による一体型モータ圧縮機ユニットを非常に概略的に表す図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態による一体型モータ圧縮機ユニットを非常に概略的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図は、ガスなどの作動流体を処理するように構成された一体型モータ圧縮機ユニット10を非常に概略的に示す。一体型モータ圧縮機ユニット10は、モータ12と、回転可能シャフト16を介して当該モータ12に結合され、冷却回路27内の冷却流体を循環させるように構成された単一の共通ハウジング18に取り付けられた圧縮機14と、を備える。
【0024】
一体型モータ圧縮機ユニット10は、モータ12の圧力を減圧するように構成され、したがって冷却回路内を循環する冷却の圧力を低下させるように構成された減圧システム30を更に備える。
【0025】
そのような減圧システム30は、少なくとも10バールの著しい圧力降下を生成する。したがって、モータ12の効率は、そのような圧力降下によって著しく増加する。
【0026】
シャフトは、ハウジング18の全長に実質的に延在し、モータ12に結合されたモータセクション17と、圧縮機14に結合された従動セクション19とを備える。回転可能シャフト16のモータセクション17及び従動セクション19は、例えば、可撓性又は剛性のカップリングなどのカップリング20を介して接続されている。
【0027】
図示されるように、モータセクション17及び従動セクション19は、1つ以上の半径方向ベアリング22によってそれぞれ、各端部に支持されている。非限定的な例として、半径方向ベアリング22の4つのセットが示されている。ベアリング22は、ハウジング18によって直接的又は間接的に支持され得る。
【0028】
モータ12は、回転子(図示せず)及び固定子(図示せず)に装着された永久磁石を有する永久磁石モータなどの、電気モータであり得る。代替として、例えば同期モータ、誘導モータ、ブラシ付きDCモータなどの、他のタイプの電気モータが使用され得る。
【0029】
圧縮機14は、1つ又は複数の圧縮機ステージインペラ(図示せず)を備えた多段遠心圧縮機であり得る。
【0030】
モータ12及びベアリング22の温度を冷却又は他の方法で調節するために、冷却ダクト28及び高温ダクト29を有する冷却回路27内のハウジング18全体を通して冷却ガスを循環させる。
【0031】
減圧システム30は、冷却回路27の前の膨張デバイス32と、吸引圧力を回復するように構成された冷却回路27の後の補助圧縮機34と、を備える。
【0032】
減圧システム30の第1の実施形態を
図1に示す。この実施形態では、膨張デバイス32は、主圧縮機吸引入口24を介してプロセスガスを受け取り、膨張した冷却されたプロセスガスを冷却回路27に送る冷却膨張弁である。補助圧縮機34は、ベアリング22及びモータ12を冷却した後の冷却流体を受け取り、主圧縮機吸引入口24に送る前にそれを圧縮する。
【0033】
図2の実施形態は、同じ要素が同じ参照符号を有するが、膨張デバイス32の構造によって
図1の実施形態とは異なる。この実施形態では、膨張デバイス32は、モータシャフト端部に取り付けられた膨張ホイールである。あるいは、膨張ホイールは、圧縮機シャフト端部、ベアリング間、又は専用のターボエキスパンダ上に取り付けられ得る。この実施形態では、補助圧縮機34は、圧縮機シャフト端部に取り付けられている。あるいは、補助圧縮機34は、モータシャフト端部、ベアリング間、専用のターボエキスパンダ上、又は専用の圧縮機上に取り付けられてもよい。
【0034】
図3の実施形態は、同じ要素が同じ参照符号を有するが、膨張デバイス32の構造によって
図1の実施形態とは異なる。この実施形態では、膨張は、補助圧縮機34によって圧縮される自発的な圧縮機14の漏れによって作り出される。言い換えれば、圧縮機端14上の較正されたガス漏れを使用して、冷却流を生成する。この実施形態では、非限定的な例として、補助圧縮機34は、モータシャフト端部に取り付けられている。
【0035】
図4の実施形態は、同じ要素が同じ参照符号を有するが、減圧システム30の構造によって
図1の実施形態とは異なる。この実施形態では、減圧システム30は、圧縮機14の上流に取り付けられ、閉ループ冷却回路27内の冷却流体を循環させるように構成された送風デバイス36を備える。減圧システム30は、主圧縮機ガス漏れを補償するように構成された減圧補助圧縮機34を更に備える。減圧システム30はまた、送風デバイス36の後で冷却回路27に取り付けられた冷却器38を備える。
【0036】
減圧補助圧縮機34は、低圧圧縮機又は専用装置であり得る。
【0037】
一体型モータ-圧縮機ユニット10の動作の一実施形態では、モータ12はシャフト16を回転させ、それによって圧縮機14を駆動する。圧縮されるプロセスガスは、ハウジング18に設けられた主圧縮機吸入口24を介して導入される。次いで、圧縮機14は、インペラの連続する段階を通してプロセスガスを圧縮し、それによって圧縮されたプロセスガスを生成する。次いで、圧縮されたプロセスガスは、ハウジング18に設けられたプロセス排出口26を介して圧縮機14を出る。
【0038】
本発明の減圧システムによれば、特に高い吸引圧力を有する圧縮機において、一体型モータ圧縮機ユニット内で風損が低減される。