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特許7391229三次元プリント用途のためのワックス状造形材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】三次元プリント用途のためのワックス状造形材料
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/112 20170101AFI20231127BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20231127BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231127BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20231127BHJP
【FI】
B29C64/112
B29C64/40
B33Y10/00
B33Y70/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022541638
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-22
(86)【国際出願番号】 US2021014567
(87)【国際公開番号】W WO2021150863
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】62/965,341
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597013711
【氏名又は名称】スリーディー システムズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ボー
(72)【発明者】
【氏名】ブルックフィールド,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,ジュニア ジュール ダブリュー
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-527751(JP,A)
【文献】特表2012-526687(JP,A)
【文献】特表2005-508404(JP,A)
【文献】特開2008-106273(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109608892(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元プリントに使用される造形材料インクであって、
式(C2n+1)OH(式中、nは15~40の整数である)の1つまたは複数のワックスを含む40~65質量%のアルコールワックス成分;
20~40質量%のロジン成分;および
5~35質量%の非極性ワックス成分
を含む、造形材料インク。
【請求項2】
nが16~22の整数であことを特徴とする、請求項1に記載の造形材料インク。
【請求項3】
前記ロジン成分が、水素化ロジンのエステルを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の造形材料インク。
【請求項4】
前記非極性ワックス成分が、非極性ワックスの混合物を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の造形材料インク。
【請求項5】
前記非極性ワックス成分が、パラフィン系ワックスを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の造形材料インク。
【請求項6】
前記非極性ワックス成分が、ポリオレフィンワックスを含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の造形材料インク。
【請求項7】
前記ポリオレフィンワックスが、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、またはそれらの混合物を含むことを特徴とする、請求項6に記載の造形材料インク。
【請求項8】
65~71℃の溶融終点を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の造形材料インク。
【請求項9】
48~56℃の開始凝固点を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の造形材料インク。
【請求項10】
プリントされた後の曲げ強度が少なくとも3MPaであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の造形材料インク。
【請求項11】
前記プリントされた後の曲げ強度が、4~8MPaであることを特徴とする、請求項10に記載の造形材料インク。
【請求項12】
プリントされた後の曲げひずみが少なくとも2パーセントであることを特徴とする、請求項10に記載の造形材料インク。
【請求項13】
前記造形材料インクが、共晶組成物であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の造形材料インク。
【請求項14】
流体状態の造形材料の層を基板上に選択的に堆積させる工程であって、前記造形材料インクが、請求項1~13いずれか一項に記載のインクを含む、工程
を含む、三次元物品をプリントする方法。
【請求項15】
支持材料インクの1つまたは複数の層を堆積させる工程、前記支持材料インクの堆積された層を硬化させる工程、および前記硬化された支持材料インク上に前記造形材料インクを堆積させる工程
を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記支持材料インクを水に溶解することによって、前記三次元物品の前記造形材料インクを前記支持材料インクから分離する工程
を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その全体がここに参照することによって本願に援用される、2020年1月24日出願の米国仮特許出願第62/965,341号に対する特許協力条約の第8条に従う優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、三次元プリント用途のための造形材料に関し、特に極性および非極性ワックス成分を含む造形材料に関する。
【背景技術】
【0003】
米国サウスカロライナ州ロックヒル所在の3D Systemsが製造するProJet(登録商標)3Dプリンタなどのいくつかの市販の3Dプリンタまたは付加製造システムは、ヘッドを通じて液体として噴射されて、さまざまな3D物体、物品、または部品を形成する造形材料および支持材料を含むインクを使用する。他の3Dプリントシステムもまた、プリントヘッドを通じて噴射される、あるいは、その他の方法で基材上に分配される、インクを使用する。いくつかの事例では、インクは周囲温度で固体であり、高い噴射温度で液体へと変化する。このような相変化材料としては、さまざまなワックス混合物を含む造形材料が挙げられる。現在のワックス造形材料は、高い堆積温度および高い凝固点を含む、プリントプロセスにおけるいくつかの欠点を提示する。高い堆積温度は、追加のエネルギーを必要とし、ワックス組成物を変色および/または不安定化させ、見た目の悪い完成品をもたらし得る。さらに、造形ワックスの凝固点の上昇は、プリントされる層間の適切な融合を抑制し、それによって完成品の機械的特性を損なう可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの欠点を考慮して、いくつかの実施形態では、三次元プリント用途のための望ましいプリント品質および関連する機械的特性を示すワックス状造形材料インクが本明細書に記載される。造形材料インクは、いくつかの実施形態では、20~40質量%のロジン成分、5~35質量%の非極性ワックス成分、および、式(C2n+1)OH(式中、nは15~40の整数である)の1つまたは複数のワックスを含む40~65質量%のアルコールワックス成分を含む。
【0005】
別の態様では、造形材料インクは、ロジン成分、非極性ワックス成分、および式(C2n+1)OH(式中、nは15~40の整数である)の1つまたは複数のワックスを含むアルコールワックス成分を含む、共晶混合物を含む。
【0006】
さらなる態様では、三次元物品をプリントする方法が本明細書に記載される。三次元物品をプリントする方法は、流体状態の造形材料インクの層を基板上に選択的に堆積させる工程を含む。いくつかの実施形態では、造形材料インクは、20~40質量%のロジン成分、5~35質量%の非極性ワックス成分、および式(C2n+1)OH(式中、nは15~40の整数である)の1つまたは複数のワックスを含む40~65質量%のアルコールワックス成分を含む。あるいは、造形材料インクは、ロジン成分、非極性ワックス成分、および式(C2n+1)OH(式中、nは15~40の整数である)の1つまたは複数のワックスを含むアルコールワックス成分を含む、共晶混合物を含む。
【0007】
これらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明においてさらに説明される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載される実施形態は、以下の詳細な説明および実施例を参照することによって、より容易に理解することができる。しかしながら、本明細書に記載される要素、装置および方法は、詳細な説明および実施例に提示される特定の実施形態に限定されない。これらの実施形態は本開示の原理の単なる例示であることが認識されるべきである。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、多くの修正および適合が、当業者に容易に明らかになるであろう。
【0009】
加えて、本開示の範囲はすべて、その中に含まれる任意および全ての部分的範囲を包含するものと理解されるべきである。例えば、「1.0~10.0」と記載される範囲は、例えば、1.0~5.3、または4.7~10.0、または3.6~7.9など、1.0以上の最小値から開始して10.0以下の最大値で終わる、任意かつ全ての部分的範囲を含むとみなされるべきである。同様に、「1~10」と記載される範囲は、1以上の最小値から開始して10以下の最大値で終わる、任意かつ全ての部分的範囲、例えば、1~5、または4~10、または3~7、または5~8を含むとみなされるべきである。
【0010】
本明細書に開示されるすべての範囲はまた、特に明記されない限り、その範囲の端点も含むとみなされるべきである。例えば、「5と10との間」、「5から10まで」、または「5~10」の範囲は、一般に、5および10の端点を含むとみなされるべきである。
【0011】
さらには、語句「最大で/最長で」が数量または分量と共に用いられる場合、その量は、少なくとも検出可能な数量または分量であることが理解されるべきである。例えば、「最大で」指定された量までの量で存在する材料は、検出可能な量から、その指定された量を含めて、最大でその指定された量まで、存在しうる。
【0012】
「三次元プリントシステム」、「三次元プリンタ」、「プリント」などの用語は、概して、光造形、選択的堆積、噴射、熱溶解積層法、マルチジェットモデリング、および、造形用の材料またはインクを使用して三次元物体を製作する、当技術分野で知られているまたは将来知られるであろう他の付加製造技術によって、三次元の物品または物体を製造するためのさまざまな固体自由形状製作技法について記載するものである。
【0013】
I.造形材料インク
一態様では、造形材料インクは、20~40質量%のロジン成分、5~35質量%の非極性ワックス成分、および式(C2n+1)OH(式中、nは15~40の整数である)の1つまたは複数のワックスを含む40~65質量%のアルコールワックス成分を含む。
【0014】
別の態様では、造形材料インクは、ロジン成分、非極性ワックス成分、および式(C2n+1)OH(式中、nは15~40の整数である)の1つまたは複数のワックスを含むアルコールワックス成分を含む、共晶混合物を含む。
【0015】
ここで特定の成分を参照すると、本明細書に記載の造形材料インクのアルコールワックス成分は、式(C2n+1)OH(式中、nは15~40の整数である)の1つまたは複数のワックスを含む。いくつかの実施形態において、nは16~22の整数である。前述の式を有するワックスは、直鎖状または分枝状であり得る。アルコールワックス成分は、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の脂肪アルコールを含む。本開示の目的と矛盾しない任意の脂肪アルコールを使用することができる。いくつかの実施形態では、例えば、脂肪アルコールは、ヘキサデカノール(C1633OH)、オクタデカノール(C1837OH)、エイコサノール(C2041OH)またはドコサノール(C2245OH)、あるいはこれらの混合物または組合せを含む。1つまたは複数の不飽和点を有する脂肪アルコールを含む他の脂肪アルコールも使用され得る。アルコールワックス成分に含まれる種は、造形材料インクの所望の溶融点および凝固点、ならびに三次元プリント用途で堆積される際の造形材料インクの所望の機械的特性を含むがこれらに限定されない、いくつかの考慮事項に従って選択することができる。
【0016】
本明細書に記載される造形材料インクはまた、ロジン成分を含む。本明細書に記載の技術的目的と矛盾しない任意のロジン成分を使用することができる。いくつかの実施形態では、ロジン成分は、ロジンエステル、ロジン酸、ロジンアルコール、またはこれらのさまざまな混合物を含む。いくつかの実施形態では、ロジン酸は、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パルストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、およびサンダラコピマル酸のうちの1つまたは複数を含む。ロジンエステルは、いくつかの場合において、アルコールと、上記のロジン酸を含むロジン酸との反応生成物を含む。アルコールは、いくつかの事例では、メタノール、グリセロール、トリエチレングリコールおよび/またはペンタエリスリトールを含むことができる。さらに、いくつかの場合において、ロジンエステルは、少なくとも部分的に水素化されている。好適なロジンエステルは、FORAL(商標)の商品名で米国テネシー州キングスポート所在のEastman Chemical社から市販されている。好適なロジンエステルはまた、KE-の商品名で米国イリノイ州シカゴ所在のArakawa Chemical社から市販されている。
【0017】
ロジンアルコールは、いくつかの実施形態では、上記ロジン酸を含む1つまたは複数のロジン酸の水素化の反応生成物を含む。さらに、いくつかの場合において、ロジンアルコールは、ヒドロアビエチルアルコールなどの第一級アルコールを含む。ロジン成分に含まれる種は、造形材料インクの所望の溶融点および凝固点、ならびに三次元プリント用途で堆積される際の造形材料インクの所望の機械的特性を含むがこれらに限定されない、いくつかの考慮事項に従って選択することができる。
【0018】
本明細書に記載される造形材料インクはまた、ロジン成分およびアルコールワックス成分に加えて、非極性ワックス成分を含む。非極性ワックス成分は、本明細書に記載の技術的目的と矛盾しない任意の非極性炭化水素ワックスを含むことができる。非極性ワックス成分に含まれる種は、造形材料インクの所望の溶融点および凝固点、ならびに三次元プリント用途で堆積される際の造形材料インクの所望の機械的特性を含むがこれらに限定されない、いくつかの考慮事項に従って選択することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、非極性ワックス成分は、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、またはそれらの混合物を含む。ポリオレフィンワックスは、いくつかの実施形態では、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、またはそれらの混合物を含むことができる。ポリオレフィンワックスは、直鎖状、分枝状、または直鎖状および分枝状種の混合物であり得る。好適な非極性ワックス組成物は、Visijet(登録商標)Icastの商品名で米国サウスカロライナ州ロックヒル所在の3D Systemsから市販されるProjet(登録商標)で市販されている。
【0020】
本明細書に記載されるように、アルコールワックス成分、ロジン成分、および非極性ワックス成分を含む造形材料インクは、三次元プリント用途のためのさまざまな望ましい特性を示すことができる。いくつかの実施形態では、例えば、本明細書に記載の造形材料インクは、65~71℃の溶融終点(end melting point)を有する。この範囲の溶融終点は、いくつかの現在入手可能なワックス造形材料インクより低く、インク堆積温度を低下させることによって三次元プリント作業を容易にすることができる。より低い堆積温度は、造形材料の安定性を促進し、インクの酸化および粘度の不安定性を含む分解経路を低減することができる。より低い堆積温度はまた、エネルギーコストを低減することができる。
【0021】
さらに、造形材料は、48~56℃の開始凝固点(onset freezing point)を示しうる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、より低い開始凝固温度は、造形材料の噴射されたドットがプリントプロセス中に液体または半液体状態のままであるため、より良好な層間およびラスター間接着をもたらすと考えられる。接着および/または融合は、固体-固体のドットと比較して、液体-液体のドットの間で理論的には増強され、プリント物品の望ましい機械的特性をもたらす。全ての実施形態において必要とされるわけではないが、溶融終点および開始凝固点温度の低下は、本明細書に記載の造形材料インクの共晶性に起因し得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の造形材料インクは、1つまたは複数の安定剤をさらに含む。安定剤は、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の抗酸化剤を含む。安定剤は、本開示の目的と矛盾しない任意の抗酸化剤を含みうる。いくつかの事例では、適切な抗酸化剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含めた、さまざまなアリール化合物が挙げられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の造形材料インクは、プリントされると、少なくとも3MPaの曲げ強度を示す。プリントされた造形材料インクは、例えば、4~8MPaの曲げ強度を有する。さらに、本明細書に記載の造形材料インクは、プリントされると、少なくとも2パーセントまたは少なくとも3パーセントの曲げひずみを示すことができる。いくつかの実施形態では、プリントされた造形材料インクは、2~5パーセントの曲げひずみを示す。特に、前述の曲げ特性は、インベストキャスティング用途のための射出成形によって得られる造形ワックス試験片と一致し、本明細書に記載される造形材料によって達成されるプリント物品の個々の層間の強化された結合を示す。
【0024】
造形材料インクはまた、プリントまたは堆積温度で望ましい粘度および粘度安定性を示すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の造形材料インクは、85℃で10~14センチポアズ(cp)または11~13cpの粘度を有する。さらに、造形材料インクは、85℃で少なくとも10または20日間、これらの範囲内の粘度を維持することができる。
【0025】
II.三次元物品をプリントする方法
別の態様では、三次元物品をプリントする方法が本明細書に記載される。三次元物品をプリントする方法は、流体状態の造形材料インクの層を基板上に選択的に堆積させる工程を含む。造形材料インクは、上記のセクションIに記載の任意の組成および/または特性を有することができる。いくつかの実施形態では、例えば、造形材料インクは、20~40質量%のロジン成分、5~35質量%の非極性ワックス成分、および式(C2n+1)OH(式中、nは15~40の整数である)の1つまたは複数のワックスを含む40~65質量%のアルコールワックス成分を含む。あるいは、造形材料インクは、ロジン成分、非極性ワックス成分、および式(C2n+1)OH(式中、nは15~40の整数である)の1つまたは複数のワックスを含むアルコールワックス成分を含む、共晶混合物を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法はさらに、方法は、支持材料インクの1つまたは複数の層を堆積させる工程、支持材料インクの堆積された層を硬化させる工程、および硬化された支持材料インク上に造形材料インクを堆積させる工程を含む。そのような実施形態では、この方法はまた、支持材料を水に溶解することによって、プリント物品の造形材料を支持材料から分離する工程を含んでもよい。
【0027】
いくつかの例では、本明細書に記載の支持材料インクおよび造形材料インクは、流体状態で、3Dプリントシステムの造形パッドなどの基板上に選択的に堆積される。選択的堆積は、例えば、事前に選択されたCADパラメータに従ってインクを堆積させることを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、プリントされる所望の3D物品に対応するCADファイル図面が生成され、充分な数の水平スライスにスライスされる。次いで、所望の3D物品をプリントするために、CADファイル図面の水平スライスに従って、支持インクおよび/または造形インクが層ごとに選択的に堆積される。水平スライスの「充分な」数は、例えば所望の3D物品を正確かつ精密に製造するための、所望の3D物品のプリントの成功に必要な数である。
【0028】
さらには、いくつかの実施形態では、予め選択された量の本明細書に記載される支持材料インクおよび/または造形材料インクは、適切な温度へと加熱され、適切なインクジェットプリンタの1つまたは複数のプリントヘッドを通じて噴射されて、プリントチャンバ内のプリントパッド上に層を形成する。いくつかの事例では、インクの各層は、予め選択されたCADパラメータに従って堆積される。インクの堆積に適したプリントヘッドは、いくつかの実施形態では、圧電式プリントヘッドである。本明細書に記載されるインクおよび支持材の堆積に適したさらなるプリントヘッドは、さまざまなインクジェットプリンティング装置製造業者から市販されている。例えば、いくつかの事例では、Xerox、Hewlett Packard、またはRicohのプリントヘッドを使用することができる。
【0029】
本明細書に記載の方法で使用される支持材料は、上記のセクションIに記載の造形材料インクとの適合性を示す任意の支持材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、好適な支持材料は、プリントされた造形材料インクから分離しない。好適な支持材料は、いくつかの実施形態では、水溶性であってもよい。水溶性支持材料は、支持材料が水への曝露によって除去されるプリント後処理操作を容易にすることができる。本明細書に記載の造形材料インクは水溶性ではないので、支持材料を除去するための水への曝露は、プリント物品の完全性および/または機械的特性を弱めたり損なったりしない。これは、イソプロピルアルコールまたは他の溶媒を使用して支持材料を除去する従来のプリント後処理に対する顕著な改良である。そのような溶媒は、プリント物品の機械的特性を損なう可能性がある。
【0030】
支持材料インクは、例えば、単官能性ポリエチレンオキシドとポリイソシアネートとの間の反応生成物を含むウレタンワックスを含むことができる。支持材料インクは、いくつかの実施形態では、モノマー硬化性材料、オリゴマー硬化性材料、またはそれらの混合物をさらに含む。いくつかの実施形態では、例えば、モノマー硬化性材料および/またはオリゴマー硬化性材料は、硬化した支持材料インクの所望の水溶性特性を達成するために、1つまたは複数の極性部分または親水性部分を含む種を含んでもよい。硬化した支持材料インクは、いくつかの実施形態では、概して、35℃で100gの水に少なくとも5gの水溶性を示すことができる。
【0031】
これらおよび他の実施形態は、以下の非限定的な実施例においてさらに例証される。
【実施例
【0032】
実施例1-ビルド材料インク
表Iの組成パラメータを有する造形材料インクを調製した。
【表1】
【0033】
表1の造形材料インクに使用したアルコールワックスはステアリルアルコールであり、ロジンエステルはEastman ChemicalからのFORAL(登録商標)85であった。非極性ワックス成分は、3D SystemsからのVISIJET(登録商標)M2 ICastプリント材料であった。
【0034】
本開示の造形材料インク(A~D)のそれぞれは、共晶挙動を示し、表2に提供される溶融終点および開始凝固点温度を示した。
【表2】
【0035】
表2に示されるように、本明細書に記載される造形材料インクは、比較例の造形材料インクに対して、低下した終点融点および低下した開始凝固点温度を有する。そのような温度低下は、プリント物品の層間の結合を強化し、それによってプリント物品の機械的特性を強化することができる。表3は、例えば、造形材料インクでプリントされた試験片の曲げ特性を提供する。試験片を複数の向きでプリントした。表3に提供される曲げデータは、最も弱いプリント配向に対応し、したがって、造形材料インク組成物の最小曲げ応力およびひずみ値に対応する。
【表3】
【0036】
表3に示されるように、本開示のプリントされた造形材料インクは、比較例の造形材料インクに対して曲げ特性の著しい増加を示す。インクAおよびBの曲げ特性は、インベストキャスティング用途のための射出成形によって得られる造形ワックスバーの範囲内であり、本明細書に記載される造形材料インクによって提供される有利な機械的特性をさらに実証する。
【0037】
本発明のさまざまな実施形態が、本発明のさまざまな目的の達成に関して説明されている。これらの実施形態は本発明の原理を単に例証していることが認識されるべきである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それらの数多くの修正および適合は、当業者にとって容易に明らかになるであろう。