(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
B66B31/02 A
(21)【出願番号】P 2022551519
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036280
(87)【国際公開番号】W WO2022064636
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 直輝
(72)【発明者】
【氏名】金山 翔平
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0028228(US,A1)
【文献】特開2017-137185(JP,A)
【文献】特開2019-052021(JP,A)
【文献】特開2010-173747(JP,A)
【文献】特開2014-122119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環駆動される踏板と、前記踏板の側方に配置されて循環駆動される移動手すりと、紫外線を発光する紫外線発光部を有し前記移動手すりに紫外線を照射して前記移動手すりを除菌する除菌部と、前記除菌部による前記移動手すりに対する紫外線の照射を制御する制御部と、を備えた乗客コンベアにおいて、
前記紫外線発光部の異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部が検出する前記紫外線発光部の異常を報知する報知部と、を備え
、
前記制御部は、乗客負荷率が所定の値を超え、かつ前記紫外線発光部の異常が検出された場合に、前記報知部に対して、利用客に密集の回避を促す報知を指示することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベアにおいて、
前記異常検出部は、前記紫外線発光部の異常として、前記紫外線発光部の不点灯を検出することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項3】
請求項2に記載の乗客コンベアにおいて、
前記異常検出部は、前記紫外線発光部よりも電源側の電源線に設けられ、前記電源線の電源電圧または前記電源線に流れる電流を検出することで、前記紫外線発光部の異常を検出することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項4】
請求項3に記載の乗客コンベアにおいて、
前記紫外線発光部を駆動するLEDドライバを備え、
前記異常検出部は、前記LEDドライバの中に設けられることを特徴とする乗客コンベア。
【請求項5】
請求項2に記載の乗客コンベアにおいて、
前記異常検出部は、前記紫外線発光部の発光強度を検出する紫外線強度検出部を含み、
前記異常検出部は、紫外線強度検出部が検出する前記紫外線発光部の発光強度に基づいて、前記紫外線発光部の不点灯を検出することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項6】
請求項
1に記載の乗客コンベアにおいて、
前記制御部は、乗客負荷率が所定の値を超え、かつ前記紫外線発光部が正常である場合に、前記報知部に対して、前記移動手すりが除菌中であること、および利用客に密集の回避を促す報知を指示することを特徴とする乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターや動く歩道などの乗客コンベアに係り、特に移動手すりの除菌に関する。ここで、「除菌」はウィルスを対象外とする考え方もあるが、本明細書において、「除菌」はその対象からウィルスを排除するものではない。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2019-52021号公報(特許文献1)に記載された乗客コンベアおよびその手摺ベルト殺菌装置が知られている。特許文献1の手摺ベルト殺菌装置は、乗客コンベアのスカートガードの内部に設けられ、スカートガードの内部を走行する手摺ベルトの表面を殺菌する殺菌部と、殺菌部による殺菌に基づく情報を報知する報知部と、乗客コンベアの運行速度情報を取得し、運行速度ごとに殺菌部による殺菌および報知部による報知を制御する制御部と、殺菌部による殺菌に基づく時間を取得するタイマーと、を備えている(要約参照)。特許文献1の手摺ベルト殺菌装置では、低速運転をしているとき、タイマーに殺菌処理を開始するときの時刻を取得させ、通常運転に切り替えを行ったとき、殺菌処理を終了させると共にタイマーに殺菌処理を終了するときの時刻を取得させる(段落0038参照)。また特許文献1の乗客コンベアでは、報知部が殺菌処理を開始した時刻および殺菌処理をした時間を報知することで、利用者に殺菌処理を認識させ、手すりを掴むことを促す(段落0039,0040参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の乗客コンベアでは、殺菌処理を開始するときの時刻および殺菌処理を終了するときの時刻をタイマーに取得させ、殺菌処理を開始した時刻および殺菌処理をした時間を報知部で報知する。この場合、殺菌処理の開始時刻から終了時刻までの間、殺菌部は正常に動作していることが前提となっており、殺菌部が正常に動作していない可能性についての配慮が十分に成されていなかった。
【0005】
本発明の目的は、移動手すりの除菌部が正常に動作していない状態を検出可能にして、除菌部の信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の乗客コンベアは、
循環駆動される踏板と、前記踏板の側方に配置されて循環駆動される移動手すりと、紫外線を発光する紫外線発光部を有し前記移動手すりに紫外線を照射して前記移動手すりを除菌する除菌部と、前記除菌部による前記移動手すりに対する紫外線の照射を制御する制御部と、を備えた乗客コンベアにおいて、
前記紫外線発光部の異常を検出する異常検出部と、前記異常検出部が検出する前記紫外線発光部の異常を報知する報知部と、を備え、
前記制御部は、乗客負荷率が所定の値を超え、かつ前記紫外線発光部の異常が検出された場合に、前記報知部に対して、利用客に密集の回避を促す報知を指示する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、移動手すりの除菌部を備えた乗客コンベアにおいて、除菌部が正常に動作していない状態を検出可能にして、除菌装置の信頼性を向上することができる。
【0008】
上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る乗客コンベアの一実施例の構造の概略を示す側面図である。
【
図2】本発明に係る乗客コンベアの踏板駆動装置及び移動手すり駆動装置の近傍を示す側面図である。
【
図3】本発明に係る乗客コンベアのシステム構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明に係る乗客コンベアの動作のフローチャートである。
【
図5】移動手すりの移動方向に垂直な断面(幅方向断面)を示す図である。
【
図6A】除菌装置を示す図であり、移動手すりの移動方向に垂直な断面(幅方向断面)を示す図である。
【
図6B】除菌装置を示す図であり、移動手すりの幅方向に垂直な断面(移動方向断面)を示す図である。
【
図7】除菌装置および異常検出装置を備えた乗客コンベアの構成を示す断面図である。
【
図9】除菌装置の異常検出装置を紫外線強度検出器で構成した乗客コンベアの構成を示す断面図である。
【
図10】紫外線強度検出器で構成した異常検出装置の回路構成を示す図である。
【
図11】除菌装置の異常検出に関連した乗客コンベアの制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る乗客コンベアの一実施例について説明する。
【0011】
本実施例の乗客コンベアには、異なる階床間に設置されるエスカレーターや、水平或いは緩やかな傾斜角度を有して設置される動く歩道が含まれる。エスカレーターと動く歩道とでは、構成部品の呼び方に若干の差異がある。例えば、エスカレーターの「踏段」は、動く歩道においては「パレット」と呼ばれる。本実施例では、エスカレーターの「踏段」と動く歩道の「パレット」とを含めて、「踏板」と呼んで説明する。
【0012】
以下では、乗客コンベアの一例としてエスカレーターについて説明する。踏板以外の構成部品において、エスカレーターと動く歩道との間で構成部品の呼称に差異がある場合は、エスカレーターにおける呼称を採用して説明する。
【0013】
図1及び
図2を参照して、本実施例に係る乗客コンベア100の構成について説明する。
図1は、本発明に係る乗客コンベア100の一実施例の構造の概略を示す側面図である。
図2は、本発明に係る乗客コンベア100の踏板駆動装置及び移動手すり駆動装置12の近傍を示す側面図である。
【0014】
図1において、乗客コンベア100には、無端状に連結され2つの乗降口140,150の間を循環駆動される複数の踏板101が設けられる。踏板101の側方(左右両側)に配置されて循環駆動される移動手すり102が設けられる。移動手すり102は踏板101の側方(左右両側)に配置された欄干103に支持される。すなわち移動手すり102は、踏板101の進行方向に向かって、踏板101の左側に配置される左側移動手すり102Lと、踏板101の右側に配置される右側移動手すり102Rと、を有する(
図3参照)。欄干103は踏板101の左右両側に配設されたスカートガード116に立設される。乗客が利用する際には、踏板101と移動手すり102とは同期して移動する。
【0015】
踏板101の移動方向(走行方向)において、乗客コンベア100の両端部には、乗降口140,150が設けられる。乗降口140,150の下方には、踏板101や移動手すり102を駆動するための装置が収容されており、その上方を乗降口床板104,105が覆っている。下降運転時には、踏板101及び移動手すり102は移動通路に露出した状態で乗降口140から乗降口150へ移動する。この場合、乗降口140は乗り口となり、乗降口50は降り口となる。上昇運転時には、踏板101及び移動手すり102は移動通路に露出した状態で乗降口150から乗降口140へ移動する。この場合、乗降口150は乗り口となり、乗降口140は降り口となる。
【0016】
なお、本実施例では、エスカレーターを例にとって乗客コンベア100を説明しているため、乗降口140は上部乗降口として構成され、乗降口150は下部乗降口として構成される。また移動手すり102においては、乗客の移動通路に露出した状態で移動する側を往き側移動手すり102Aと呼び、スカートガード116の内部に隠れて移動する側を返り側移動手すり102Bと呼ぶことにする。なお
図1では、返り側移動手すり102Bは破線で示されている。
【0017】
また、踏板101を無端状に連結するチェーン106は、スプロケット107,108に巻き掛けられている。さらに、乗降口床板104の下部には、踏板用モータ109及び減速機110を有してなる踏板駆動装置111が設けられている。踏板駆動装置111は、駆動チェーン112を介してスプロケット108を駆動し、チェーン106及び踏板101を駆動する。
【0018】
踏板101の速度は、踏板速度検出装置101a(
図2参照)によって常に監視されている。踏板速度検出装置101aは、例えば、減速機110の軸に取り付けたロータリエンコーダによって構成することができる。踏板速度検出装置101aによって検出された踏板101の速度情報は、制御装置(制御部)113に送られる。
【0019】
図2に示すように、移動手すり用モータ114を含む移動手すり駆動装置115が設けられており、移動手すり用モータ114を駆動して移動手すり駆動装置115により移動手すり102を駆動する。本実施例では、移動手すり用モータ114は踏板用モータ109とは別に設けられている。
【0020】
移動手すり駆動装置115は、移動手すり用モータ114と、減速機115aと、移動手すり駆動チェーン115bと、移動手すり駆動ローラ115cと、圧着ロ-ラ115dとを備えている。移動手すり駆動ローラ15cと圧着ロ-ラ15dとは移動手すり102を挟んで対向配置されている。移動手すり用モータ114による駆動力は、減速機115aおよび移動手すり駆動チェーン115bを介して、移動手すり駆動ローラ115cに伝達される。移動手すり102は移動手すり駆動ローラ115cからの駆動力を受けて駆動される。
【0021】
移動手すり102の速度は移動手すり速度検出装置102aにより常に監視されている。移動手すり速度検出装置102aは、例えば、移動手すり駆動装置115と隣接した位置に設置され、移動手すり102と接触したローラとエンコーダで構成される。ローラの回転速度(回転数)を検出することにより、移動手すり102の速度を検出する。移動手すり速度検出装置102aにより検出された移動手すり102の速度情報は制御装置113(
図1参照)に送られる。
【0022】
乗降口140,150のスカートガード116部には、乗客コンベア100の運転状況を表示する表示装置118A,118Bが設けられている。表示装置118A,118Bは、後述する報知装置(報知部)25の一部を構成する。
【0023】
乗客コンベア100の制御装置113は、踏板速度検出装置101a及び移動手すり速度検出装置102aで検出される踏板速度及び移動手すり速度に基づいて、踏板駆動装置111及び移動手すり駆動装置115を用いて、踏板101及び移動手すり102の駆動を制御する。
【0024】
図1に示すように、本実施例の乗客コンベア100は、移動手すり102を除菌する除菌装置10を備える。除菌装置10は、移動手すり102の移動経路のうち、返り側(移動手すり102B)で行う。このために除菌装置10は、スカートガード116の内側に配置される。
【0025】
図2に示すように、返り側移動手すり102Bは、移動手すり駆動装置115や移動手すり速度検出装置102aの部分で、各装置により、除菌装置10の配置に制約を受ける。このため除菌装置10は、移動手すり駆動装置115や移動手すり速度検出装置102aとの干渉を避けて配置される。
【0026】
「除菌」はウィルスを対象外とする考え方もあるが、本明細書において、「除菌」はその対象からウィルスを排除するものではない。除菌装置10は、深紫外線(UV-C)を移動手すり102に照射する深紫外線LED11Aa,11Ba(
図4A参照)を備える。本実施例は、光源を、深紫外線を発光するものに限定する訳ではなく、除菌のために移動手すり102に光を照射する除菌装置において有効である。そして本実施例の除菌装置10においては、ウィルスに対して深紫外線の波長、強度および照射時間を適切に設定することにより、ウィルスの不活化を可能にすることが好ましい。
【0027】
次に、
図3を参照して、乗客コンベア100のシステム構成について説明する。
図3は、本発明に係る乗客コンベア100のシステム構成を示すブロック図である。
【0028】
本実施例における乗客コンベア100は、乗客検出装置117A,117Bと、制御装置113と、踏板駆動装置111と、移動手すり駆動装置115と、踏板速度検出装置101aと、移動手すり速度検出装置102aと、踏板101と、移動手すり102(左側移動手すり102L、右側移動手すり102R)とで、システムを構成している。乗客検出装置117A,117Bにおいて、117Aは上部乗降口40に設けられる乗客検出装置であり、117Bは下部乗降口50に設けられる乗客検出装置である。制御装置113は、乗客あり/なし判定部119と、運転制御部120と、踏板用インバータ121と、移動手すり用インバータ122と、を備え、踏板101と移動手すり102の駆動を制御する。
【0029】
乗客あり/なし判定部119には、上部乗降口40に設けられた乗客検出装置117Aからの検出信号と、下部乗降口50に設けられた乗客検出装置117Bからの検出信号とが入力され、乗客あり/なし判定部119は乗客検出装置117A,117Bからの検出信号に基づいて、乗客の有無を判定する。この判定結果は、運転制御部120に入力される。
【0030】
運転制御部120には、踏板速度検出装置101aからの検出信号と、移動手すり速度検出装置102aからの検出信号とが入力され、運転制御部120は踏板用インバータ121及び移動手すり用インバータ122に対して運転/停止指令および加速/減速指令を出力する。また、運転制御部120には乗客あり/なし判定部119の判定結果が入力されており、この判定結果に基づいて、運転制御部120は後述するように通常運転状態(通常運転モード)と待機運転状態(待機運転モード)とを切り替え、各運転状態に対応する指令を踏板用インバータ121及び移動手すり用インバータ122に対して出力する。
【0031】
踏板用インバータ121は、運転制御部120からの指令に基づいて、踏板用モータ109に駆動電力(運転出力)を供給する。移動手すり用インバータ122は、運転制御部120からの指令に基づいて、移動手すり用モータ114に駆動電力(運転出力)を供給する。
【0032】
踏板用モータ109は踏板駆動装置111を駆動して踏板101を駆動する。移動手すり用モータ114は移動手すり駆動装置115を駆動して移動手すり102L,102Rを駆動する。踏板用モータ109と移動手すり用モータ114は、踏板用インバータ121と移動手すり用インバータ122とによるインバータ制御を用いて、踏板101および移動手すり102L,102Rの運転速度、加速度および減速度を制御する。乗客が利用中の通常運転状態では、移動手すり102L,102Rは、踏板101の速度と同じ速度で移動するように、制御装置113で駆動される。すなわち、移動手すり102L,102Rは踏板101と同期して駆動される。以下、乗客が利用中の踏板101及び移動手すり102L,102Rの速度のことを通常運転速度という。
【0033】
制御装置113の構成のうち、運転制御部120および乗客あり/なし判定部119は、CPU、メモリ、入出力回路及びタイマー回路などを集積回路に収めたマイコンにより、構成することができる。
【0034】
図3では、移動手すり用インバータ122及び移動手すり用モータ114は左側移動手すり102L及び右側移動手すり102Rを駆動するように構成されている。左側移動手すり102Lに対して独立した移動手すり用インバータ122及び移動手すり用モータ114を設け、右側移動手すり102Rに対して独立した移動手すり用インバータ122及び移動手すり用モータ114を設けてもよい。
【0035】
本実施例では、乗客コンベア100が通常運転状態、かつ、乗客検出装置117A,117Bにより所定時間、乗客が検出されない場合は、制御装置113は運転状態を通常運転状態から待機運転状態に切り替える。乗客コンベア100が待機運転状態、かつ、乗り口側の乗客検出装置117Aにより乗客が検出された場合は、制御装置113は待機運転状態から通常運転状態に運転状態を切り替える。降り口側の乗客検出装置117Bにより乗客が検出された場合、すなわち運転方向に対し逆方向からの乗客の進入が検出された場合は、制御装置113は警報を発生する指令を出す。
【0036】
以下、
図4を参照して、本実施例に係る乗客コンベアの動作について、詳細に説明する。
図4は本発明に係る乗客コンベア100の動作のフローチャートである。
【0037】
処理ステップS1において処理を開始する。処理ステップS2において、乗客コンベア100は待機運転状態(待機運転モード)にある。この待機運転状態では、乗り口側の乗客検出装置117Aの検出信号が制御装置113に入力され、乗客あり/なし判定部119により乗客の有無を判定する(処理ステップS3)。乗客あり/なし判定部119により乗客なしと判定した場合(NOの場合)は、処理ステップS2の待機運転状態が継続される。待機運転状態では、運転制御部120により踏板用インバータ121に停止指令を出力し、踏板101を停止状態とする。また、運転制御部120により移動手すり用インバータ122に減速指令を出力し、移動手すり102L,102Rを低速待機運転状態とする。低速待機運転状態では、移動手すり102L,102Rは通常運転状態(通常運転モード)における移動速度(通常運転速度)に対して遅い速度(減速した速度)で駆動される。この減速した速度を低速待機速度と呼ぶことにする。
【0038】
処理ステップS3において、乗客あり/なし判定部119により乗り口側からの乗客ありと判定した場合は、処理ステップS4において、運転制御部120から踏板用インバータ121に通常運転速度の運転指令を出力して、踏板101の運転を開始する。次に、処理ステップS4に進み、踏板101を通常運転速度の運転状態とする。また、運転制御部120から移動手すり用インバータ122に通常運転速度への加速指令を出力し、移動手すり102L,102Rを加速する。これにより、移動手すり102L,102Rを通常運転速度の運転状態とする。これにより踏板101および移動手すり102L,102Rを同期した運転状態とする。
【0039】
処理ステップS3において、乗客あり/なし判定部119により乗り口側からの乗客ありと判定した後に、踏板101および移動手すり102L,102Rを通常運転速度にて同期した運転状態とし、乗り口側の乗客検出装置117Aによって乗客が検出されないまま、最後の乗客検出から乗客利用時間が経過した場合は、処理ステップS6で乗客あり/なし判定部119により乗客なしと判定し、処理ステップS7に進む。ここで、「乗客利用時間」とは、乗客が乗り口側の乗客検出装置117Aにより検出された時点から、乗客コンベアに乗り込み、乗客コンベアから降りるまでに要する時間として設定された時間である。
【0040】
処理ステップS7では、運転制御部120により踏板用インバータ121に停止指令を出力し、踏板101を停止状態とする。また、運転制御部120により移動手すり用インバータ122に減速指令を出力し、移動手すり102L,102Rを低速待機運転状態とする。
【0041】
本実施例では、待機運転状態において、踏板101が停止状態となり、移動手すり102L,102Rが低速待機運転状態となる。これにより、踏板101の駆動分の電力を不要にし、移動手すり102L,102Rの駆動電力を削減することができる。
【0042】
また、低速待機運転状態では、移動手すり102L,102Rが低速待機運転状態で駆動されていることにより、乗客コンベア100の利用客は、乗客コンベアが利用可能か否かを、また乗客コンベアの運転方向を知ることができる。
【0043】
除菌装置10の説明を行う前に、
図5を参照して、移動手すり102について説明する。
図5は、移動手すり102の移動方向に垂直な断面(幅方向断面)を示す図である。
【0044】
図5において、左右方向を「幅方向」、上下方向をそのまま「上下方向」、と定義する。なお上下方向においては、往き側(往き側移動手すり102A)と返り側(移動手すり102B)とで、上下が逆転する。
【0045】
移動手すり102は、
図5に示す状態を基準として、上面102T、下面102Ua,102Ubおよび側面102Sa,102Sbが定義される。上面102Tおよび下面102Ua,102Ubは、幅方向断面において、幅方向に沿い、且つ直線状を成す面である。側面102Sa,102Sbは、上面102Tと下面102Ua,102Ubとの間を接続する面であり、幅方向断面において円弧等の曲線を成す面である。ここで、上面102T、下面102Ua,102Ubおよび側面102Sa,102Sbは、移動手すり102の表側(外側または外周側)の面である。
【0046】
図3は、往き側(往き側移動手すり102A)の状態を示しており、返り側(移動手すり102B)では、上面102Tが下面102Ua,102Ubに対して下方に位置する状態となる。
【0047】
次に、
図6Aを参照して、本実施例の除菌装置10について説明する。
図6Aは、除菌装置10を示す図であり、移動手すり102の移動方向に垂直な断面(幅方向断面)を示す図である。
図6Bは、除菌装置10を示す図であり、移動手すり102の幅方向に垂直な断面(移動方向断面)を示す図である。なお、
図6Aは
図6BのVIA―VIA断面を示しており、
図6Bは
図6AのVIB―VIB断面を示している。
【0048】
除菌装置10は、返り側移動手すり102Bに対して配置されるため、
図6Aおよび
図6Bの図面上における上下方向は、除菌装置10の実装状態における上下方向とは、上下が逆になる。
【0049】
乗客は、乗客コンベア100に乗る際、移動手すり102の上面102Tに手を載せる。そして乗客は、移動手すり102を掴む場合、上面102Tのほか、側面102Sa,102Sbに触れる。このため、移動手すり102の除菌を行う場合、上面102Tだけでなく、側面102S1,102S2も除菌することが好ましい。
【0050】
このために本実施例の除菌装置10は、紫外線を発光する紫外線発光部11Aa,11Baと、紫外線を反射する反射面13Aと、を備える。紫外線発光部11Aa,11Baは、移動手すり102の上面102Tと対向する位置に配置される。反射面13Aは、移動手すり102の側方に配置され、移動手すり102の側面102Sa,102Sbと対向する。以下、詳細に説明する。
【0051】
除菌装置10は、光源となる複数の発光部(発光素子)11Aa,11Baを備える。本実施例では、発光部11Aa,11Baは紫外線を発光する紫外線発光部で構成される。この場合、紫外線発光部11Aa,11Baは、深紫外線を発光する深紫外線LEDで構成されるとよい。複数の紫外線発光部11Aa,11Baはそれぞれ光源格納部11A,11Bに格納される。光源格納部11A,11Bは光源モジュール(深紫外線LEDモジュール)を構成する。
【0052】
本実施例では、2つの紫外線発光部11Aa,11Baを有する例を示しており、2つの紫外線発光部11Aa,11Baは2つの光源格納部11A,11Bに別々に格納されている。紫外線発光部の個数は1つ又は3つ以上であってもよい。
【0053】
除菌装置10は、紫外線発光部11Aa,11Baを支持する支持体13を備える。紫外線発光部11Aa,11Baは、光源格納部11A,11Bに格納されて、支持体13に支持される。このために支持体13の一側面(第1側面部)には、光源格納部11A,11Bを支持する支持面13-1が設けられている。支持体13の支持面13-1には、紫外線発光部11Aa,11Baのドライバ(図示せず)も支持されている。
【0054】
支持体13には、紫外線発光部11Aa,11Baを駆動するドライバ(LEDドライバ)17も支持されている。本実施例では、2つの紫外線発光部11Aa,11Baは、移動手すり102の幅方向に沿って配置され、LEDドライバ17は2つの紫外線発光部11Aa,11Baに対して移動方向前側または移動方向後側に配置されている。なお、LEDドライバ17は、複数の紫外線発光部11Aa,11Ba毎に設けられ、各光源格納部11A,11Bに格納される構成であってもよい。
【0055】
支持体13は、支持面13-1から移動手すり102の側方に延設される第2側面部13-2aおよび第3側面部13-2bを備える。第2側面部13-2aおよび第3側面部13-2bは、紫外線発光部11Aa,11Baから照射される紫外線(深紫外線)を反射する反射部材を構成する。
【0056】
紫外線発光部11Aa,11Baから移動手すり102に照射される紫外線UVは、移動手すり102の上面102Tと側面102Sa,102Sbの一部とに直接照射される紫外線と、第2側面部13-2aおよび第3側面部13-2bで反射された後に移動手すり102の側面102Sa,102Sbに照射される紫外線と、を含む。
【0057】
第2側面部13-2aおよび第3側面部13-2bには、それぞれ紫外線強度検出器(紫外線強度検出部)15a,15bが配置される。紫外線発光部11Aa,11Baから照射される紫外線UVは、紫外線強度検出器15,15bに入射し、紫外線強度検出器15a,15bで紫外線(深紫外線)の強度が測定される。紫外線強度検出器15a,15bで検出された紫外線の強度情報は制御装置113に送られ、制御装置113はLEDドライバ17を制御して紫外線発光部11Aa,11Baから照射される紫外線の強度(照度)を調整または制御する。
【0058】
本実施例では、制御装置113がLEDドライバ17、すなわち除菌装置10の制御部を構成するが、除菌装置10の制御部は制御装置113とは別に設けられてもよい。
【0059】
次に、
図7および
図8を参照して、除菌装置10の異常検出装置(異常検出部)21について説明する。
図7は、除菌装置10および異常検出装置21を備えた乗客コンベア100の構成を示す断面図である。
図8は、異常検出装置21の回路構成を示す図である。
【0060】
除菌装置10は、制御装置113に信号線および電源線(電源配線)113Aで接続されている。信号線および電源線は別々に配線されているが、
図7では両者をまとめて113Aとして図示している。
【0061】
21は、紫外線発光部11Aa,11Baよりも電源側の電源線113Aに設けられ、電源線113Aの電源電圧または電源線113Aに流れる電流を検出することにより、除菌装置10の異常を検出する異常検出装置である。この場合、異常検出装置21は、LEDドライバ17に設けることができる。すなわち、乗客コンベア100(除菌装置10)は、紫外線発光部11Aa,11Baを駆動するLEDドライバ17を備え、異常検出部21は、LEDドライバ17の中に設けられるとよい。電源電圧または電流の異常検知は、公知の技術および装置を用いることができる。
【0062】
本実施例では、除菌装置10は移動手すり102に紫外線を照射して移動手すり102の除菌を行う装置である。このため、異常検出装置21は除菌装置10の紫外線発光部11Aa,11Baが移動手すり102に紫外線を照射できていない状態を検出する。すなわち、異常検出部21は、紫外線発光部11Aa,11Baの異常として、紫外線発光部11Aa,11Baが点灯していない状態(不点灯)を検出する。
【0063】
図7および
図8では、異常検出装置21は、電源電圧または電流の異常により、紫外線発光部11Aa,11Baが点灯していない状態を検出する例を示している。この例では、異常検出部21は、紫外線発光部11Aa,11Baよりも電源側(制御部113側)の電源線113Aに設けられ、電源線113Aの電源電圧または電源線113Aに流れる電流を検出することで、紫外線発光部11Aa,11Baの異常を検出する。
【0064】
なお、紫外線発光部11Aa,11Baが移動手すり102に紫外線を十分に照射できない場合も、除菌装置10による所定の除菌効果が得られなくなり、除菌装置10が正常に動作しているとは言えない。例えば、電源電圧または電流が正常値または定格値から低下している状態で、紫外線発光部11Aa,11Baは発光(点灯)しているものの、発光強度(照度)が低下している場合である。本実施例では、発光強度が低下している場合と、紫外線発光部11Aa,11Baが点灯していない状態とを含めて、発光不全状態と呼ぶことにする。
【0065】
上述した様に、紫外線発光部11Aa,11Baの異常(発光不全状態)は、異常検出部21により検出されるが、異常改案化の判定または判断が必要になる場合は、その判定または判断を制御部113で行うものとする。この場合、制御部113は異常検出部21の機能の一部を含む。
【0066】
図8に示すように、制御装置113は100Vの交流電圧(AC100V)を出力する。100Vの交流電圧は、自動電圧調整器AVR22により、24Vの直流電圧に調整される。24Vの直流電圧は、電源線113Aa(DC24V,0V)により、右側移動手すり102R用の紫外線発光部11Aa,11Baと、左側移動手すり102Lの紫外線発光部11Aa,11Baと、に通電される。
【0067】
自動電圧調整器(AVR)22はLEDドライバ17に設けられるとよい。この場合、
図6Bでは、LEDドライバ17は各除菌装置10に個別に設ける例を示しているが、
図8で2つの除菌装置10に対する自動電圧調整器22を1つにまとめているように、複数のLEDドライバ17を1つにまとめてもよい。
【0068】
右側移動手すり102R用の紫外線発光部11Aa,11Baに接続される電源線113Aa(DC24V)には、異常検出装置21Rが設けられる。左側移動手すり102L用の紫外線発光部11Aa,11Baに接続される電源線113Aa(DC24V)には、異常検出装置21Lが設けられる。異常検出装置21Rおよび異常検出装置21Lは、それぞれ信号線113Abにより、制御装置113に接続される。
【0069】
異常検出装置21Rおよび/または異常検出装置21Lが紫外線発光部11Aa,11Baの発光不全状態を検出した場合、発光不全状態を通知する信号を制御装置113に伝達する。制御装置113は、発光不全状態を通知する信号を受信すると、報知装置(報知部)25に発光不全状態の報知を指示する。
【0070】
LEDドライバ17および異常検出装置21R,21Lは回路部品により構成される。このため異常検出装置21R,21Lは、LEDドライバ17の中に設けることが好ましい。これにより、LEDドライバ17および異常検出装置21R,21Lの電気部品を1つのケース内に配置することができ、防水及び防塵等の対策を行い易くなる。また異常検出装置21R,21LをLEDドライバ17の中に設けることで、除菌装置10の構成が簡素化される。
【0071】
次に、
図9および
図10を参照して、除菌装置10の異常検出装置21の変更例について説明する。
図9は、除菌装置10の異常検出装置を紫外線強度検出器15で構成した乗客コンベア100の構成を示す断面図である。
図10は、紫外線強度検出器15で構成した異常検出装置の回路構成を示す図である。
【0072】
紫外線発光部11Aa,11Baの発光不全状態は、紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度によっても検出することができる。このため、異常検出部21は、紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度を検出する紫外線強度検出部15a,15b含み、異常検出部21は、紫外線強度検出部15a,15bが検出する紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度に基づいて、紫外線発光部11Aa,11Baの発光不全状態または不点灯を検出するようにするとよい。
【0073】
本実施例では、除菌装置10に紫外線強度検出器15a,15bが設けられており、紫外線強度検出器15a,15bを異常検出装置21として利用することができる。すなわち紫外線強度検出器15a,15bを利用して異常検出装置を構成することができる。本実施例では、紫外線強度検出器15a,15bは、除菌に必要な光の発光強度を検出することが好ましい。このために紫外線強度検出器15a,15bは、検出する光の波長の範囲を特定して、検出を行うことが好ましい。本実施例では、深紫外線が有する特定の波長を検出するようにする。
【0074】
図10に示す回路構成では、
図9の異常検出装置21がなく、異常検出装置21の代りに紫外線強度検出器15が、右側移動手すり102R用の除菌装置10の紫外線発光部11Aa,11Baと、左側移動手すり102L用の除菌装置10の紫外線発光部11Aa,11Baとに、それぞれ設けられている。
【0075】
紫外線強度検出器15が検出する紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度は制御装置113に伝達される。制御装置113は、紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度に基づいて、紫外線発光部11Aa,11Baが発光不全状態にあるか否かを判定する。すなわち紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度が所定の値(発光強度)以上の場合、紫外線発光部11Aa,11Baは正常であると判定し、所定の値(発光強度)よりも小さい場合、紫外線発光部11Aa,11Baは発光不全状態にあると判定する。
【0076】
紫外線発光部11Aa,11Baの不全状態を検出する場合、紫外線発光部11Aa,11BaのON/OFFを検出するようにすることもできる。この場合、紫外線強度検出器15は、紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度がゼロ(不点灯)であるか否かを検出するものであってもよい。
【0077】
制御装置113は、発光不全状態であると判定した場合、報知装置25に発光不全状態を報知させる。報知装置25は、音声により利用客に報知を行う機能(放送機能)を有するほか、表示装置118A,118Bに表示を行う機能を有する。
【0078】
図9および
図10に示す構成の場合、紫外線強度検出器15が検出する紫外線発光部11Aa,11Baの発光強度に基づいて、制御装置113が紫外線発光部11Aa,11Baの発光不全状態を判定するため、紫外線強度検出器15および制御装置113が除菌装置10の異常検出装置を構成する。
【0079】
以上説明したように、本実施例の乗客コンベア100は、下記構成を備える。
循環駆動される踏板101と、踏板101の側方に配置されて循環駆動される移動手すり102と、紫外線を発光する紫外線発光部11Aa,11Baを有し移動手すり102に紫外線を照射して移動手すり102を除菌する除菌部10と、除菌部10による移動手すり102に対する紫外線の照射を制御する制御部113と、を備えた乗客コンベア100において、
紫外線発光部11Aa,11Baの異常を検出する異常検出部21と、異常検出部21が検出する紫外線発光部11Aa,11Baの異常を報知する報知部25,118A,118Bと、を備える。
【0080】
この場合、制御部113は、異常検出部21が紫外線発光部11Aa,11Baの異常を検出した場合に、報知部25,118A,118Bに、紫外線発光部11Aa,11Baの異常の報知を指示するようにするとよい。
【0081】
図11を参照して、除菌装置10の異常検出に関連した乗客コンベア100の動作について、説明する。
図11は、除菌装置10の異常検出に関連した乗客コンベア100の制御の流れを示すフローチャートである。なお、除菌装置10の異常検出は、紫外線発光部11Aa,11Baの発光不全状態が異常検出装置により検出されることを意味するものとする。
【0082】
ステップS1で乗客コンベア100が運転中であるか否かのチェックを行う。乗客コンベア100が運転中である場合、乗客コンベア100は通常運転状態にあるか、待機運転状態において移動手すり102の低速待機運転状態にあるものとする。すなわち移動手すり102が通常速度または低速待機速度で運転中に、制御装置113は乗客コンベア100が運転中であると判定する。
【0083】
ステップS1の判定結果がYES(Y)の場合、ステップS2に進む。ステップS2では、乗客負荷率が所定値(本実施例では、10%)よりも大きいか否かが判定され、判定結果がYES(Y)の場合、ステップS3に進み、判定結果がNO(N)の場合、ステップS9に進む。乗客負荷率は、乗客検出装置117A,117Bによって検出される乗客(利用客)をカウントするようにしてもよいし、踏板駆動装置111に掛かる負荷(例えば、踏板用モータ109の駆動電流)を検出するようにしてもよい。また、乗客負荷率が所定値よりも大きいか否かを判定する判定部は、制御部113により構成することができる。
【0084】
ステップS2の判定結果がYES(Y)の場合、ステップS3では、乗客コンベア100に除菌装置10が搭載されているか否かが判定され、判定結果がYES(Y)の場合、ステップS4に進み、判定結果がNO(N)の場合、ステップS8に進む。
【0085】
ステップS3の判定結果がNO(N)の場合、乗客負荷率が10%よりも大きく、かつ除菌装置10による移動手すり102の除菌が不可能な条件(条件B)となる。このためステップS8では、利用客に密集を回避するよう促す密集回避用放送を実施する。
【0086】
ステップS3の判定結果がYES(Y)の場合、ステップS4では、除菌装置10が正常か否かが判定され、判定結果がYES(Y)の場合、ステップS5,S6に進み、判定結果がNO(N)の場合、ステップS7を経由してステップS8に進む。
【0087】
ステップS4の判定結果がYES(Y)の場合、除菌装置10が正常であることから、ステップS5で除菌装置10を動作させる。この場合、乗客負荷率が10%よりも大きく、かつ除菌装置10による移動手すり102の除菌が可能な条件(条件A)となる。そこでステップS6では、移動手すり102を除菌中であることの報知(例えば、除菌効果放送)を行うと共に、利用客に密集を回避するよう促す密集回避用放送を放置装置25により実施する。すなわち、制御部113は、乗客負荷率が所定の値を超え、かつ紫外線発光部11Aa,11Baが正常である場合に、報知部25に対して、移動手すり102が除菌中であること、および利用客に密集の回避を促す報知を指示する。
【0088】
ステップS4の判定結果がNO(N)の場合、上述した条件Bに該当するため、まずステップS7で除菌装置10が故障したことを発報し、ステップS8で密集回避用放送を実施する。すなわち、制御部113は、乗客負荷率が所定の値を超え、かつ紫外線発光部11Aa,11Baの異常が検出された場合に、報知部25に対して、利用客に密集の回避を促す報知を指示する。この発報は、表示装置118A,118Bに、除菌装置10の故障に対応するコードを表示することや、保守・保全員に除菌装置10の故障を通知することなどが含まれる。
【0089】
ステップS2の判定結果がNO(N)の場合、ステップS9で乗客コンベア100に除菌装置10が搭載されているか否かが判定され、判定結果がYES(Y)の場合、ステップS10に進み、判定結果がNO(N)の場合、処理を終了する。ステップS9の判定結果がNO(N)の場合、ステップS2で乗客負荷率が10%以下であることが分かっており、利用客の密集が生じていない状態であることから、そのまま乗客コンベア100の運転を継続する。
【0090】
ステップS9の判定結果がYES(Y)の場合、ステップS10では、除菌装置10が正常か否かが判定され、判定結果がYES(Y)の場合、ステップS11,S12に進み、判定結果がNO(N)の場合、ステップS13を経由して処理を終了する。ステップS10の判定結果がNO(N)の場合、除菌装置10は異常で使用できないものの、ステップS2で乗客負荷率が10%以下であることが分かっている。このため、ステップS13で除菌装置10が故障したことを発報し、そのまま乗客コンベア100の運転を継続する。この発報は、表示装置118A,118Bに、除菌装置10の故障に対応するコードを表示することや、保守・保全員に除菌装置10の故障を通知することなどが含まれる。
【0091】
ステップS10の判定結果がYES(Y)の場合、除菌装置10が正常であることから、ステップS11で除菌装置10を動作させる。この場合、乗客負荷率が10%以下で、かつ除菌装置10による移動手すり102の除菌が可能な条件(条件C)となる。そこでステップS12では、移動手すり102を除菌中であることの報知(例えば、除菌効果放送)を行う。この場合、条件Aとは異なり、利用客の密集が生じていないことから密集回避用放送は行わない。
【0092】
図11に示すフローでは、移動手すり102の除菌効果を利用客に知らせることで、利用客に乗客コンベア100の利用を促し、移動手すり102の除菌中であっても利用客が密集してきた場合には、利用客に密集の回避を促すことができる。利用客が安心して利用できる乗客コンベア100を提供することができる。
【0093】
除菌装置10の紫外線発光部11Aa,11Baは、直接目視することが無いように配置されることが好ましい。このため除菌装置10は、スカートガード116の内部に配置することが好ましい。この場合、除菌装置10の点検を行うにあたって、除菌装置10へのアクセスが問題になる。
【0094】
本実施例では、除菌装置10の紫外線発光部11Aa,11Baの発光不全状態を異常検出装置により常時監視することができる。異常検出装置により紫外線発光部11Aa,11Baの発光不全状態を検出した場合に、紫外線発光部11Aa,11Baが発光不全状態にあることや、除菌装置10の除菌効果が低下していることを、表示・放送により保守・保全員や利用客に報知することができる。
【0095】
保守・保全員は紫外線発光部11Aa,11Baを目視する必要がなく、保守・保全員の安全を確保することができる。また除菌装置10が紫外線発光部11Aa,11Baの発光不全状態を検出して乗客コンベア100に自動でフィードバックし、乗客コンベア100から除菌装置10の故障状態を発報または表示することにより、除菌装置10の故障している時間、すなわち移動手すり102が除菌されていない、または除菌効果が低下している時間を最小限にすることができる。
【0096】
本発明に係る実施例では、除菌装置10の信頼性を向上できることにより、利用客にとって利用し易い乗客コンベア100を提供することができる。
【0097】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0098】
10…除菌部、11Aa,11Ba…紫外線発光部、15a,15b…紫外線強度検出部、17…LEDドライバ、21…異常検出部、25,118A,118B…報知部、100…乗客コンベア、101…踏板、102…移動手すり、113…制御部、113A…電源線。