(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】エレベーター用ガイドレールの施工方法及びその施工装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/02 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
B66B7/02 E
B66B7/02 H
(21)【出願番号】P 2022557227
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(86)【国際出願番号】 JP2020038439
(87)【国際公開番号】W WO2022079754
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金山 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】平野 薫
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018928(JP,A)
【文献】特開2019-142618(JP,A)
【文献】特開2011-058548(JP,A)
【文献】実開平07-006505(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの昇降路内の壁面に固定された壁側レールブラケットにレール側レールブラケットを介してガイドレールが固定され、前記壁側レールブラケットと前記レール側レールブラケットをドリルねじで締結するエレベーター用ガイドレールの施工方法であって、
前記ドリルねじと前記レール側レールブラケットの水平方向間に、前記ドリルねじのフランジ部より大きい径のガイド及びワッシャー又はスペーサーを設置し、前記ドリルねじの施工完了後に前記ガイドを抜き、前記レール側レールブラケットと前記ドリルねじの水平方向間に隙間を形成することを特徴とするエレベーター用ガイドレールの施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーター用ガイドレールの施工方法であって、
前記レール側レールブラケットの所定位置に下穴を形成しておき、前記下穴に、上部に鍔部を有する円筒状の前記ガイドを挿入し、前記ガイドの鍔部の筒部分にドーナツ状の前記ワッシャー又はスペーサーを設置し、その後に、前記ドリルねじを、ドーナツ状の前記ワッシャー又はスペーサーの中央の穴部分に挿入することを特徴とするエレベーター用ガイドレールの施工方法。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーター用ガイドレールの施工方法であって、
前記ドリルねじを、ドーナツ状の前記ワッシャー又はスペーサーの中央の穴部分に挿入した後、前記ドリルねじで前記壁側レールブラケットに穴を開け、その穴に前記ドリルねじを挿入して前記壁側レールブラケットと前記レール側レールブラケットを締結することを特徴とするエレベーター用ガイドレールの施工方法。
【請求項4】
請求項3に記載のエレベーター用ガイドレールの施工方法であって、
前記ドリルねじで、前記壁側レールブラケットと前記レール側レールブラケットを締結した後に、前記ガイドを所定の手段で抜くことを特徴とするエレベーター用ガイドレールの施工方法。
【請求項5】
エレベーターの昇降路内の壁面に固定された壁側レールブラケットにレール側レールブラケットを介してガイドレールを固定するドリルねじと、前記ドリルねじと前記レール側レールブラケットの水平方向間に配置され、前記ドリルねじのフランジ部より径が大きく、かつ、前記ドリルねじの施工完了後に抜かれ、前記レール側レールブラケットと前記ドリルねじの水平方向間に隙間を形成するガイドと、前記ドリルねじと前記レール側レールブラケットの水平方向間に配置され、前記ドリルねじのフランジ部より径が大きいワッシャー又はスペーサーとを備えていることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの施工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエレベーター用ガイドレールの施工装置であって、
前記ガイドは上部に鍔部を有する円筒状に形成されていると共に、前記ワッシャー又はスペーサーはドーナツ状に形成され、前記ガイドの鍔部の筒部分にドーナツ状の前記ワッシャー又はスペーサーが設置されていることを特徴とするエレベーター用ガイドレールの施工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレベーター用ガイドレールの施工方法及びその施工装置に係り、特に、エレベーターの乗りかご及びつり合い重り等の昇降を案内するガイドレールを、昇降路内の所定位置にブラケットを介しドリルねじを用いて固定するものに好適なエレベーター用ガイドレールの施工方法及びその施工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの乗りかご及び釣り合い重り等の昇降を案内するガイドレールを、昇降路内の所定位置に、ブラケットを介してドリルねじを用いたガイドレール固定装置で固定するに当たり、ガイドレールの据え付け工事における作業者の負担を軽減でき、かつ、地震による水平荷重にも強いエレベーター用ガイドレールの固定装置が特許文献1及び2に記載されている。
【0003】
上記した特許文献1には、エレベーターの昇降路内の壁面に固定された壁側レールブラケットと、前記壁側レールブラケットに重畳し、かつ、ガイドレールに固定されたレール側レールブラケットとを備え、前記壁側レールブラケットと前記レール側レールブラケットとが重畳する部位には、前記壁側レールブラケットに前記レール側レールブラケットを固定する前記壁側レールブラケットに形成された第1長孔、前記レール側レールブラケットに形成された第2長孔を有し、前記第1長孔及び前記第2長孔に挿通されたボルト、このボルトに螺着されて前記壁側レールブラケット及び前記レール側レールブラケットを挟持するナットから構成される第1締結部と、この第1締結部よりも強固に前記壁側レールブラケットに前記レール側レールブラケットを固定する第2の締結部である一対のドリルねじとが設けられており、各々の前記ドリルねじは、前記ガイドレールの幅方向において、前記第1締結部よりも外側に設けられているエレベーター用ガイドレールの固定装置が記載されている。
【0004】
一方、上記した特許文献2には、エレベーターの昇降路の壁面に固定され、第1の長孔が形成された壁側レールブラケットと、前記壁側レールブラケットに重畳する重畳部に第2長孔が形成され、乗りかごを案内するための乗りかご用ガイドレールと釣合重を案内するための釣合重用ガイドレールとを固定するレール側レールブラケットと、前記第1長孔及び前記第2長孔内を移動可能に挿通されたボルト、及び前記ボルトに螺着され前記壁側レールブラケットと前記レール側レールブラケットとを前記ボルトを挟持するナットを有し、前記壁側レールブラケットと前記レール側レールブラケットとが重畳する部位に設けられ、前記ボルトと前記第1長孔及び前記第2長孔との相対移動を可能とする範囲の任意の位置にて前記レール側レールブラケットを前記壁側レールブラケットに保持する第1締結部と、前記レール側レールブラケットを前記壁側レールブラケットに対して、前記第1締結部が有する移動可能ないずれの位置に移動させても、前記第1長孔に干渉しない位置にて、前記第1締結部よりも強固な力で前記レール側レールブラケットを前記壁側レールブラケットに固定する第2の締結部であるドリルねじと、を備えたエレベーター用ガイドレールの固定装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-18928号公報
【文献】特開2019-142618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1及び2に記載された技術では、ドリルねじを適用することで施工性は向上するが、それはドリルねじが真っすぐに施工されることが前提条件である。
【0007】
ところが、ドリルねじは、繰り返し荷重が掛からないように、通常、ドリルねじとブラケットの間に隙間を設けているが、特に工夫することなく普通にドリルねじで施工した場合に、ドリルねじが偏った状態で施工されたり、或いはドリルねじが斜めに打設されたりして、ドリルねじとブラケットの間の隙間がなくなり、ドリルねじがブラケットに干渉してしまい、やがてはドリルねじ自体が破損に至る恐れがある。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ドリルねじを用いて壁側レールブラケットとレール側レールブラケットを固定するものであっても、ドリルねじが偏ることなく打設でき、ドリルねじがブラケットに干渉する恐れが無くなり、ドリルねじ自体が破損に至ることのないエレベーター用ガイドレールの施工方法及びその施工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエレベーター用ガイドレールの施工方法は、上記目的を達成するために、エレベーターの昇降路内の壁面に固定された壁側レールブラケットにレール側レールブラケットを介してガイドレールが固定され、前記壁側レールブラケットと前記レール側レールブラケットをドリルねじで締結するエレベーター用ガイドレールの施工方法であって、前記ドリルねじと前記レール側レールブラケットの水平方向間に、前記ドリルねじのフランジ部より大きい径のガイド及びワッシャー又はスペーサーを設置し、前記ドリルねじの施工完了後に前記ガイドを抜き、前記レール側レールブラケットと前記ドリルねじの水平方向間に隙間を形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のエレベーター用ガイドレールの施工装置は、上記目的を達成するために、エレベーターの昇降路内の壁面に固定された壁側レールブラケットにレール側レールブラケットを介してガイドレールを固定するドリルねじと、前記ドリルねじと前記レール側レールブラケットの水平方向間に配置され、前記ドリルねじのフランジ部より径が大きく、かつ、前記ドリルねじの施工完了後に抜かれ、前記レール側レールブラケットと前記ドリルねじの水平方向間に隙間を形成するガイドと、前記ドリルねじと前記レール側レールブラケットの水平方向間に配置され、前記ドリルねじのフランジ部より径が大きいワッシャー又はスペーサーとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ドリルねじを用いて壁側レールブラケットとレール側レールブラケットを固定するものであっても、ドリルねじが偏ることなく打設でき、ドリルねじがブラケットに干渉する恐れが無くなり、ドリルねじ自体が破損に至ることはない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のエレベーター用ガイドレールの施工方法の実施例1が採用されるエレベーター装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の建屋をかご出入口を含む位置で水平断面し、乗りかごを上方から見た図である。
【
図3】
図1における釣り合い重り側ガイドレールの固定状態を示す平面図である。
【
図4】釣り合い重り側ガイドレールが固定されているレール側レールブラケットと壁側レールブラケットがドリルねじで固定されている状態を示す部分斜視図である。
【
図5】
図4の状態を釣り合い重り側ガイドレール側から見た状態を示す部分斜視図である。
【
図6】本発明のエレベーター用ガイドレールの施工方法におけるワッシャー又はスペーサーの穴の中にドリルねじを挿入する状態を示す部分斜視図である。
【
図7】
図6のA部を拡大して示し、レール側レールブラケットに形成された下穴に、ガイドとワッシャー又はスペーサーを設置する状態を示す分解斜視図である。
【
図8】本発明のエレベーター用ガイドレールの施工方法で施工された施工後の締結状態を示す部分斜視図である。
【
図9】
図8の矢印B方向から見た部分斜視図である。
【
図10】
図9のC面部分を断面して示す部分斜視図である。
【
図11】
図8の状態からガイドを抜いた状態を示す部分斜視図である。
【
図13】本発明のエレベーター用ガイドレールの施工方法の施工工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示した実施例に基づいて本発明のエレベーター用ガイドレールの施工方法及びその施工装置を説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0014】
図1に、本発明のエレベーター用ガイドレールの施工方法の実施例1が採用されるエレベーター装置100の概略構成を示す。
【0015】
図1に示すように、エレベーター装置100は、建屋2の各階床を連通させる昇降路1と、建屋2の各階床に設けられた複数の乗り場2Aと、昇降路1内を移動して各乗り場2Aに停止する乗りかご4とを備え、各乗り場2Aは、かご出入口4Aにより乗りかご4に通じている。
【0016】
乗りかご4は、主ロープ(図示せず)の一端に接続されて昇降路1内に吊り下げられ、主ロープの他端には、乗りかご4の重量とバランスさせた釣り合い重り5が接続されている。また、昇降路1の上方には、主ロープを巻き上げる巻上機3と、巻上機3の運転を制御する制御盤(図示せず)とが設置されている。
【0017】
巻上機3が主ロープを巻き上げ又は巻き戻すと、昇降路1に固定されたかご側ガイドレール6、7と釣り合い重り側ガイドレール8、9に沿って乗りかご4及び釣り合い重り5がつるべ式に移動する。
【0018】
釣り合い重り側ガイドレール9は、第1のレールブラケット10を介して昇降路1の壁面1Aにボルト、ナットから成る締結手段16aで固定され、釣り合い重り側ガイドレール8及びかご側ガイドレール7は、第2のレールブラケット11を介して昇降路1の壁面1Aに締結手段16bで固定され(
図2参照)、かご側ガイドレール6は、第3のレールブラケット12を介して昇降路1の壁面1Aに締結手段16cで固定されている(
図2参照)。
【0019】
かご側ガイドレール6、7と釣り合い重り側ガイドレール8、9が、昇降路1の壁面1Aに固定されている詳細を
図2に示す。
図2は、建屋2を、かご出入口4Aを含む位置で水平断面し、乗りかご4を上方から見た図である。
【0020】
図2に示すように、第1のレールブラケット10は、第1の壁側レールブラケット10Aと第1のレール側レールブラケット10Bから成り、釣り合い重り側ガイドレール9を第1のレール側レールブラケット10Bで保持し、この第1のレール側レールブラケット10Bを、第1の壁側レールブラケット10Aを介して締結手段16aにより昇降路1の壁面1Adに固定している。
【0021】
また、第2のレールブラケット11は、第2の壁側レールブラケット11Aと第2のレール側レールブラケット11Bから成り、釣り合い重り側ガイドレール8とかご側ガイドレール7を第2のレール側レールブラケット11Bで保持し、この第2のレール側レールブラケット11Bを、第2の壁側レールブラケット11Aを介して締結手段16bにより昇降路1の壁面1Abに固定している。
【0022】
更に、第3のレールブラケット12は、第3の壁側レールブラケット12Aと第3のレール側レールブラケット12Bから成り、かご側ガイドレール6を第3のレール側レールブラケット12Bで保持し、この第3のレール側レールブラケット12Bを、第3の壁側レールブラケット12Aを介して締結手段16cにより昇降路1の壁面1Acに固定している。
【0023】
また、釣り合い重り側ガイドレール9は、第1のレール側レールブラケット10Bに、
図3に示すように、レールクリップ用ボルト17a及び17bを挿入し、このレールクリップ用ボルト17a及び17bに通されたナット18a及び18bと、ナット18a及び18bとは反対方向から締め付けるレールクリップ19a及び19bで固定されている。
【0024】
第1の壁側レールブラケット10Aには、アンカーボルト固定穴(図示せず)が形成されており、このアンカーボルト固定穴に選択的に通されたアンカーボルト10H1及び10H2で、第1の壁側レールブラケット10Aが昇降路1の壁面1Aに固定されている(
図3参照)。
【0025】
上記のように構成されたエレベーター装置100に採用される本実施例のエレベーター用ガイドレールの施工方法及びその施工装置について、以下に説明する。
【0026】
なお、本実施例では、ガイドレールの説明は、4つあるガイドレールのうち代表して釣り合い重り側ガイドレール9について説明し、釣り合い重り側ガイドレール8とかご側ガイドレール6、7についての説明は省略する。
【0027】
通常、釣り合い重り側ガイドレール9は、上述した如く、第1のレールブラケット10を介して昇降路1の壁面1Aに締結手段16aで固定されているが、第1のレールブラケット10を構成する第1の壁側レールブラケット10Aと第1のレール側レールブラケット10Bは、後述するドリルねじ19A及び19Bと摩擦固定ボルト15A及び15Bで締結されている。
【0028】
図4及び
図5に示すように、本実施例の第1の壁側レールブラケット10Aと第1のレール側レールブラケット10Bは断面L字状に形成され、その断面L字状の第1の壁側レールブラケット10Aの短辺部10A´が、そこに形成された穴10A5、10A6、10A7にボルトを通すことで昇降路1内の壁面1Aに固定されていると共に、断面L字状の第1のレール側レールブラケット10Bの短辺部10B´に釣り合い重り側ガイドレール9が固定され、第1の壁側レールブラケット10Aの長辺部10A"と第1のレール側レールブラケット10Bの長辺部10B"が、ドリルねじ19A及び19Bと摩擦固定ボルト15A及び15Bで締結されている。
【0029】
即ち、本実施例では、乗りかご4が通常走行する場合には、摩擦固定ボルト15A及び15Bの摩擦力で第1の壁側レールブラケット10Aと第1のレール側レールブラケット10Bが締結され、地震時等の異常時に、仮に摩擦固定ボルト15A及び15Bが滑った場合には、ドリルねじ19A及び19Bで荷重を受けるようにしている。
【0030】
また、本実施例の第1の壁側レールブラケット10Aの長辺部10A"と第1のレール側レールブラケット10Bの長辺部10B"には、所定の間隔をもって一対の貫通孔が形成され、それぞれの貫通孔に、ドリルねじ19A及び19Bをワッシャーを介して挿入することで、第1の壁側レールブラケット10Aと第1のレール側レールブラケット10Bが締結される。
【0031】
更に、本実施例では、
図4及び
図5に示すように、第1の壁側レールブラケット10Aの長辺部10A"と第1のレール側レールブラケット10Bの長辺部10B"のそれぞれには、上述した貫通孔の間に複数の長円穴(第1の壁側レールブラケット10Aの長辺部10A"には4個の長円穴10A1、10A2、10A3、10A4(長円穴10A3及び10A4は、
図4、
図5には表れない)、第1のレール側レールブラケット10Bの長辺部10B"には2個の長円穴10B1、10B2)が形成されており、本実施例では、第1の壁側レールブラケット10Aの長辺部10A"に形成された長円穴10A3及び10A4と第1のレール側レールブラケット10Bの長辺部10B"に形成された長円穴10B1及び10B2に、摩擦固定ボルト15A及び15Bをワッシャー17A及び17Bを介して挿入し、第1の壁側レールブラケット10Aと第1のレール側レールブラケット10Bを締結すると共に、摩擦固定ボルト15A及び15Bを長円穴10B1及び10B2内を移動させることで、第1の壁側レールブラケット10Aと第1のレール側レールブラケット10Bの締結位置を調整するようにしている。
【0032】
ところで、上述したように、ドリルねじ19A及び19Bは、通常、繰り返し荷重が掛からないように、ドリルねじ19A及び19Bと第1のレール側レールブラケット10Bの水平方向間に隙間を設けているが、特に工夫することなく普通にドリルねじ19A及び19Bを施工した場合には、ドリルねじ19A及び19Bが偏って施工されたり、或いはドリルねじ19A及び19Bが斜めに打設されたりして、ドリルねじ19A及び19Bと第1のレール側レールブラケット10Bの水平方向間の隙間がなくなり、ドリルねじ19A及び19Bが第1のレール側レールブラケット10Bに干渉する恐れがあり、やがては、ドリルねじ19A及び19B自体が破損に至る恐れがある。
【0033】
そこで、本実施例では、
図6乃至
図13に示すように、第1の壁側レールブラケット10Aに第1のレール側レールブラケット10Bを介して釣り合い重り側ガイドレール9が固定され、第1の壁側レールブラケット10Aと第1のレール側レールブラケット10Bをドリルねじ19A及び19Bで締結施工する際に、ドリルねじ19A及び19Bと第1のレール側レールブラケット10Bの水平方向間に、ドリルねじ19A及び19Bのフランジ部19A1及び19B1(
図10参照)より大きい径のガイド20A及び20Bとワッシャー又はスペーサー21A及び21Bを設置し、ドリルねじ19A及び19Bの施工完了後にガイド20A及び20Bを抜き、第1のレール側レールブラケット10Bとドリルねじ19A及び19Bの水平方向間に隙間G(
図13の(d)参照)を形成するようにしたものである。
【0034】
以下、上記したエレベーター用ガイドレールの施工方法について、詳細に説明する。
【0035】
本実施例では、エレベーター用ガイドレールの施工方法を実施するに当たり、第1の壁側レールブラケット10Aに第1のレール側レールブラケット10Bを介して釣り合い重り側ガイドレール9を固定するドリルねじ19A及び19Bと、ドリルねじ19A及び19Bと第1のレール側レールブラケット10Bの水平方向間に配置され、ドリルねじ19A及び19Bのフランジ部19A1及び19B1(
図10参照)より径が大きく、かつ、ドリルねじ19A及び19Bの施工完了後に抜かれ、第1のレール側レールブラケット10Bとドリルねじ19A及び19Bの水平方向間に隙間Gを形成するガイド20A及び20Bと、ドリルねじ19A及び19Bと第1のレール側レールブラケット10Bの水平方向間に配置され、ドリルねじ19A及び19Bのフランジ部19A1及び19B1より径が大きいワッシャー又はスペーサー21A及び21Bとを備え、ガイド20A及び20Bは上部に鍔部20A1及び20B1を有する円筒状に形成されていると共に、ワッシャー又はスペーサー21A及び21Bはドーナツ状に形成され、ガイド20A及び20Bの鍔部20A1及び20B1の筒部分にドーナツ状のワッシャー又はスペーサー21A及び21Bが設置されているエレベーター用ガイドレールの施工装置を用いる。
【0036】
上記したエレベーター用ガイドレールの施工装置を用い、ドリルねじ19A及び19Bと第1のレール側レールブラケット10Bの水平方向間に、ドリルねじ19A及び19Bのフランジ部19A1及び19B1(
図10参照)より大きい径のガイド20A及び20Bとワッシャー又はスペーサー21A及び21Bを設置し(
図13の(a)参照)、ドリルねじ19A及び19Bの施工完了後にガイド20A及び20Bを抜き(
図13の(d)参照)、第1のレール側レールブラケット10Bとドリルねじ19A及び19Bの水平方向間に隙間G(
図13の(d)参照)を形成する。
【0037】
その際に、
図7に示すように、第1のレール側レールブラケット10Bの所定位置に下穴10B3を形成しておき、この下穴10B3に、上部に鍔部20A1及び20B1を有する円筒状のガイド20A及び20Bを挿入し、このガイド20A及び20Bの鍔部20A1及び20B1の筒部分にドーナツ状のワッシャー又はスペーサー21A及び21Bを設置し、その後に、ドリルねじ19A及び19Bを、ドーナツ状のワッシャー又はスペーサー21A及び21Bの中央の穴部分に挿入する(
図13の(a)参照)。
【0038】
ドリルねじ19A及び19Bを、ドーナツ状のワッシャー又はスペーサー21A及び21Bの中央の穴部分に挿入した後、ドリルねじ19A及び19Bで第1の壁側レールブラケット10Aに穴を開け、その穴にドリルねじ19A及び19Bを挿入して第1の壁側レールブラケット10Aと第1のレール側レールブラケット10Bを締結する(
図13の(b)及び(c)参照)。ドリルねじ19A及び19Bで、第1の壁側レールブラケット10Aと第1のレール側レールブラケット10Bを締結した後に、ガイド20A及び20Bを所定の手段(工具等)で抜き、第1のレール側レールブラケット10Bとドリルねじ19A及び19Bの水平方向間に隙間G(
図13の(d)参照)を形成する。
【0039】
このような本実施例によれば、ドリルねじ19A及び19Bと第1のレール側レールブラケット10Bの間に必ず隙間Gを開けることができ、更に、ガイド20A及び20Bとワッシャー又はスペーサー21A及び21Bにより、ドリルねじ19A及び19Bが真っすぐ打設できる構造となっているので、ドリルねじ19A及び19Bが偏った打設を行った場合でも、ガイド20A及び20Bを抜くことで隙間Gを設けることができ、エレベーター装置100の通常走行時などの長期荷重がドリルねじ19A及び19Bに作用しなくなり、ドリルねじ19A及び19B自体が破損に至る恐れがなくなる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換える事が可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加える事も可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をする事が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1…昇降路、1A、1Ab、1Ac、1Ad…昇降路の壁面、2…建屋、2A…乗り場、3…巻上機、4…乗りかご、4A…かご出入口、5…釣り合い重り、6、7…かご側ガイドレール、8、9…釣り合い重り側ガイドレール、10…第1のレールブラケット、10A…第1の壁側レールブラケット、10A1、10A2、10A3、10A4…第1の壁側レールブラケットの長辺部に形成された長円穴、10A5、10A6、10A7…第1の壁側レールブラケットの短辺部に形成された穴、10A´…第1の壁側レールブラケットの短辺部、10A"…第1の壁側レールブラケットの長辺部、10B…第1のレール側レールブラケット、10B1、10B2…第1のレール側レールブラケットの長辺部に形成され長円穴、10B3…第1のレール側レールブラケットに形成された下穴、10B´…第1のレール側レールブラケットの短辺部、10B"…第1のレール側レールブラケットの長辺部、10H1、10H2…アンカーボルト、11…第2のレールブラケット、11A…第2の壁側レールブラケット、11B…第2のレール側レールブラケット、12…第3のレールブラケット、12A…第3の壁側レールブラケット、12B…第3のレール側レールブラケット、15A、15B…摩擦固定ボルト、16a、16b、16c…締結手段、17A、17B…ワッシャー、17a、17b…レールクリップ用ボルト、18a、18b…レールクリップ用ボルトのナット、19A、19B…ドリルねじ、19A1、19B1…ドリルねじのフランジ部、19a、19b…レールクリップ、20A、20B…ガイド、20A1、20B1…ガイドの鍔部、21A、21B…ワッシャー又はスペーサー、100…エレベーター装置。