(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】灰押出装置
(51)【国際特許分類】
F23J 1/02 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
F23J1/02 B
(21)【出願番号】P 2023127691
(22)【出願日】2023-08-04
【審査請求日】2023-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常泉 慎也
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特許第6752988(JP,B1)
【文献】特許第6417617(JP,B1)
【文献】特開平6-193855(JP,A)
【文献】実開昭53-111679(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/00-1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰が導入される筒状の壁面からなる導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、
前記冷却槽内に配置され、先端が前記冷却槽の底板の全幅に亘って接するとともに前記焼却灰を前記排出口側へ押し出すスクレーパと、
前記導入口に対し前記排出口と逆側に配置され、前記スクレーパを駆動する駆動装置とを有し、
前記冷却槽の前記底板は、前記導入口の直下から前記排出口が形成された開口端に向かって上り傾斜となる第一傾斜面と、前記第一傾斜面と同一幅であって前記導入口の直下から前記第一傾斜面の逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面とを備え、
前記貯留水は、前記冷却槽内に、前記壁面の下端よりも上方且つ前記排出口よりも下方である所定水位で貯えられ、
前記駆動装置は、前記第二傾斜面の上方に配置された駆動軸を備え、前記駆動軸が回動することで前記駆動軸と前記スクレーパとに接続されたアームによって前記スクレーパを前記底板に沿って前進及び後進の往復動作させる灰押出装置であって、
前記第一傾斜面の両側壁における前記所定水位よりも上方の側壁部分に対し、前記焼却灰を回避して水を噴射する、それぞれの前記側壁に対応した少なくとも2つの水噴射ノズルを有し、
前記噴射により前記両側壁と前記焼却灰との間に水膜を形成して、前記焼却灰の前記排出口からの排出を円滑化する灰押出装置。
【請求項2】
前記水噴射ノズルは、直線状のスプレーパターンで前記噴射する扇型ノズルである請求項1に記載の灰押出装置。
【請求項3】
前記第一傾斜面と前記焼却灰との接触面に水を噴射する水噴射口をさらに有する請求項2に記載の灰押出装置。
【請求項4】
前記水噴射口には、前記接触面に沿った直線状のスプレーパターンで前記噴射する扇型ノズルが配置される請求項3に記載の灰押出装置。
【請求項5】
制御装置をさらに有し、
前記制御装置は、前記スクレーパの往復動作、前記2つの水噴射ノズルによる水の噴射、または、前記水噴射口からの水の噴射の少なくともいずれか一つを制御する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の灰押出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰を冷却して排出する灰押出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ等の被焼却物を焼却するプラントとして焼却炉プラントが知られている。このプラント内の焼却炉(例えば、ストーカ炉)では、被焼却物を燃焼することで生成された灰(焼却灰)が灰シュートから灰押出装置へ落とされ、灰押出装置内の貯留水で冷却された後に灰押出装置から搬送装置へ排出される。灰押出装置には、貯留水で冷却された焼却灰を排出口へ押し出すスクレーパ(「プッシャー」とも呼ばれる)が設けられる。スクレーパは、排出口側に向かう前進方向と、これとは逆の後進方向とに往復動作して貯留水内の焼却灰を排出口へ押し出す。
【0003】
ところで、一般的な灰押出装置では、排出口近傍において、当該装置内部の貯留水で冷却された焼却灰が所定水位より上方に押し上げられて水切りされるため、当該焼却灰が固化し、排出口からの排出が困難になる場合がありうる。
そこで、灰押出装置において、排出口近傍に注水管を設け、この注水管から排出口近傍に水を噴霧し、固化した焼却灰を軟化させることで排出を容易にする技術が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術のように、排出口近傍の焼却灰全面に水を噴霧すると、焼却灰の排出には効果があるものの、噴霧した水は灰押出装置の貯留槽に、排出口側から駆動装置側に向かって流れ込むことになる。排出口近傍で固化した焼却灰を軟化させるため、固化した焼却灰の全面に水を噴霧しているので、当該噴霧の水量は多くならざるをえない。
しかし、当該水量があまり多いと、上記流れ込みの水流に混じった細かな焼却灰がスクレーパの裏側に入り込んで堆積し、スクレーパの駆動を阻害するおそれがある。なお、スクレーパの裏側に入り込んで堆積する焼却灰は、「戻り灰」といわれる。
また、そもそも、灰押出装置は、水切りをして焼却灰を排出する装置であるにも関わらず、含水率の高い焼却灰を排出することになり、排出する焼却灰の品質が若干とはいえ低下することになる。
本発明は、このような課題に鑑み案出されたものであって、排出口近傍で水を噴霧する構成でありながら、従来に比べ少ない水量で、焼却灰の排出を円滑に行うことができる灰押出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の灰押出装置は、焼却灰が導入される筒状の壁面からなる導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、前記冷却槽内に配置され、先端が前記冷却槽の底板の全幅に亘って接するとともに前記焼却灰を前記排出口側へ押し出すスクレーパと、前記導入口に対し前記排出口と逆側に配置され、前記スクレーパを駆動する駆動装置とを有し、前記冷却槽の前記底板は、前記導入口の直下から前記排出口が形成された開口端に向かって上り傾斜となる第一傾斜面と、前記第一傾斜面と同一幅であって前記導入口の直下から前記第一傾斜面の逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面とを備え、前記貯留水は、前記冷却槽内に、前記壁面の下端よりも上方且つ前記排出口よりも下方である所定水位で貯えられ、前記駆動装置は、前記第二傾斜面の上方に配置された駆動軸を備え、前記駆動軸が回動することで前記駆動軸と前記スクレーパとに接続されたアームによって前記スクレーパを前記底板に沿って前進及び後進の往復動作させる灰押出装置に、以下の構成を備える。
すなわち、前記第一傾斜面の両側壁における前記所定水位よりも上方の側壁部分に対し、前記焼却灰を回避して水を噴射する、それぞれの前記側壁に対応した少なくとも2つの水噴射ノズルを有する。そして、前記噴射により前記両側壁と前記焼却灰との間に水膜を形成して、前記焼却灰の前記排出口からの排出を円滑化する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の灰押出装置によれば、第一傾斜面の両側壁における所定水位よりも上方の側壁部分に対し、各側面に対応したそれぞれの水噴射ノズルから焼却灰を回避して水噴射する。この水噴射ノズルからの水の噴射により、第一傾斜面上の焼却灰と当該両側壁との間に水膜を形成することができるため、灰押出装置の排出口から円滑に焼却灰を排出することができる。
また、この水の噴射は、焼却灰を回避して第一傾斜面の両側壁に実施されるので、焼却灰の含水率の観点で、焼却灰の品質低下を回避できる。
さらに、この水の噴射は、排出口近傍の焼却灰全体ではなく、第一傾斜面の両側壁の一部分、すなわち当該側壁のうち所定水位よりも上方の一部分に対して行うため、従来に比べ水量を低減できる。このため、「戻り灰」に対する影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図1の灰押出装置の水噴射ノズルのスプレーパターンを示す図である。
【
図4】第一変形例に係る灰押出装置の断面図である。
【
図5】第二変形例に係る灰押出装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の灰押出装置の実施形態およびその変形例(第一変形例、第二変形例)を説明する。実施形態および変形例はあくまでも例示に過ぎず、明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明に必須の構成を除き、実施形態および変形例の各構成は、必要に応じて取捨選択したり、実施形態と変形例との間で一方の構成を他方に適宜組み合わせるなど、種々変形して実施することができる。
【0010】
[実施形態の灰押出装置]
まず、
図1を用いて、実施形態の灰押出装置1について説明する。
灰押出装置1は、焼却炉(例えば、ストーカ炉)に設けられ、焼却炉で生成された焼却灰を冷却槽2で冷却したのち搬送装置3(例えば、コンベヤ)へと排出する。灰押出装置1は、焼却灰を冷却する貯留水が貯留された冷却槽2と、冷却槽2内に配置されたスクレーパ4及び駆動装置5とを有する。冷却槽2には、焼却灰が導入される導入口6及び冷却された焼却灰を排出する排出口7が設けられる。
なお、当該貯留水および後述の水噴射ノズル16における噴射に使用される液体は、主成分が水であればよく、水道水、工業用水、または再利用水(プラント内で使用されたのち処理された水)であってもよいし、塩酸等が混合されて中性化された混合水であってもよい。ここでは、以下、当該貯留水に使用されるこれらの液体を単に「水」として説明する。
【0011】
スクレーパ4は冷却された焼却灰を排出口7側へ押し出す装置である。スクレーパ4は、上方を向く上板4aと、排出口7側を向く押出板4bと、上板4aと押出板4bとに接続された図示しない両側面とを備える。上板4aに対応する下面は配置しないので、スクレーパ4は、冷却槽2の底板8側に開放した箱型の形状である。
スクレーパ4は、後述のアーム5bに接続されており、押出板4bの下端(すなわちスクレーパ4の先端4c)が冷却槽2の底板8の全幅に亘って接しながら底板8に沿って前進及び後進する。
なお、ここでは、スクレーパ4の「前進」とは、スクレーパ4が焼却灰を排出口7側へ押し出す方向(
図1中の左方向、前進方向Df)に動くことを意味する。また、スクレーパ4の「後進」とは、スクレーパ4が、「前進」の逆方向(スクレーパ4が戻る方向、
図1中の右方向、後進方向Dr)に動くことを意味する。さらに、冷却槽2の底板8の「全幅」とは、冷却槽2の内部の幅方向(
図1の紙面に直交する方向)の寸法を意味する。
【0012】
駆動装置5は、スクレーパ4を駆動する装置であり、導入口6に対し排出口7の逆側(
図1中の右側)に配置される。駆動装置5は、後述の第二傾斜面8bの上方に配置されて二方向に回動可能な駆動軸5aと、スクレーパ4と駆動軸5aとを接続するアーム5bとを備える。駆動装置5は、駆動軸5aを回動させることでアーム5bを駆動し、結果としてアーム5bに接続されたスクレーパ4に前進及び後進の往復動作をさせる。
【0013】
冷却槽2の導入口6は、筒状(例えば、矩形筒状)の壁面9で形成される。この筒状の壁面9は、図示しない灰シュートと直結される。なお、灰シュートの上端は、図示しない焼却炉(例えば、ストーカ炉の後燃焼段)に接続される。
いわゆる「水封」の構成とするために、壁面9の下端は、冷却槽2内の貯留水の所定水位(
図1中の破線)よりも下方に位置する。
【0014】
冷却槽2の底板8は、導入口6の直下から、排出口7(具体的には、排出口7における鉛直方向且つ下方の端部である開口端7a)に向かって上り傾斜となる第一傾斜面8aと、導入口6の直下から第一傾斜面8aの逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面8bとを備える。
すなわち、第一傾斜面8aは、前進方向Dfに向かうにしたがって漸次高くなるよう形成される。また、第二傾斜面8bは、後進方向Drに向かうにしたがって漸次高くなるよう形成される。
なお、冷却槽2では、導入口6の直下の底板の内面(以下、「最下面8c」という)が最も低く、底板8は、下に凸の曲面状となっている。冷却槽2の断面形状は幅方向に一様であり、第一傾斜面8a、最下面8c及び第二傾斜面8bの各幅寸法(
図1の紙面に直交する方向の寸法)は全て同一である。
【0015】
灰押出装置1は、冷却槽2内の貯留水の水位を検出する水位計10と、水位計10で検出された水位に基づいて、冷却槽2内の貯留水を増水する注水管11とを備える。
注水管11は、図示しない水源(第一水源)、例えば貯水タンクなどに接続される。
水位計10は、第二傾斜面8bの上方であって、スクレーパ4が最も後進した際のスクレーパ4の後端と、後壁9R(スクレーパ4の往復運動する方向に配置される2つの壁面9のうち、第二傾斜面8b側の壁面9)との間に配置される。
【0016】
注水管11は、第二傾斜面8bの上方であって、水位計10に近い位置に配置するのが望ましい。例えば、スクレーパ4が最も後進した際のスクレーパ4の後端よりも前進方向Df側に配置される。
注水管11をこのように配置すれば、注水管11からの注液で、水位計10を洗浄することができるので、水位計10の感度を向上させることができる。また、注水管11は、導入口6に近い位置から注水できるので、第一傾斜面8aにおける貯留水の水位を、必要に応じて迅速に増加させることができる。
【0017】
駆動装置5の駆動軸5aは、第二傾斜面8bの上方であって貯留水に浸からない位置(すなわち所定水位よりも上方)に配置される。水封のため、貯留水の所定水位は、壁面9の下端よりも上方且つ排出口7の開口端7aよりも下方に設定される。冷却槽2内の貯留水の水量は、この所定水位に保たれるよう、制御装置12と排水管13によって調整される。
具体的には、まず、冷却槽2には、貯留水の水位が所定水位を超えた場合に、貯留水を排水するための排水管13が設けられる。排水管13の上端の開口は所定水位よりも上方且つ近傍に配置される。これにより、バルブ制御をすることなく過剰な貯留水は自働的に越流して排水管13から排出される。
そして、制御装置12は、水位計10によって検出された水位(例えば、冷却槽2内に蓄えられた貯留水の実際の水位である実水位)に基づき、注水管11の中途に介装された電磁バルブ14を開閉制御する。つまり、制御装置12は、水位計10の計測結果を受信し、所定水位よりも貯留水の水位が低い場合には、電磁バルブ14を開弁して注水管11から冷却槽2の内部に注水する。そして、制御装置12は、当該計測結果が所定水位以上の場合には、電磁バルブ14を閉弁して冷却槽2への注水を停止する。
【0018】
灰押出装置1は、以上の構成に加え、
図1及び
図2に示すように、第一傾斜面8aの両側端からそれぞれ上方に延在する2つの側壁15a、15bの各々において、所定水位よりも上方の部分に対し、第一傾斜面8a上の焼却灰への水の直撃を回避しつつ、それら側壁15a、15bの壁面に対して水を噴射するための水噴射ノズル16(16a、16b)を有している。
水噴射ノズル16は、排出口7近傍の側壁15aに対して1つと、側壁15aと異なる排出口7近傍の側壁15bに対して1つ、
図2に示すように対称に合計2つ設けられている。
ここでは、2つの側壁15a、15bの各々に対して、それぞれ1つの水噴射ノズル16を配置したが、設計に応じて、各側壁に対してそれぞれ2つ以上の水噴射ノズル16を配置してもよい。
【0019】
上述のように、水噴射ノズル16が噴射した水が焼却灰に直撃するのをできるだけ回避させるため、水噴射ノズル16として、扇形ノズルを使用するのが望ましい。扇型ノズルから水を噴射した場合、
図3に示すように、当該噴射した水は直線状(三次元的に見れば略平面状)のスプレーパターンとなる。
そして、水噴射ノズル16は、対応する側壁に噴射された水のスプレーパターンが、
図3に示すように、焼却灰の進行方向の上流側から下流側(スクレーパ4側から排出口7側)に沿って直線状(略平面状)になるように設置される。このような直線状のスプレーパターンとすることで、水噴射ノズル16が噴射する水が焼却灰に直撃しないよう、水噴射ノズル16を設置することが容易になる。
また、
図2に示すように、排出口7側から冷却水槽2を見たとき、水噴射ノズル16(16a、16b)は、対応する側壁に対して、斜め下方に水を噴射するよう設置される。言い換えれば、側壁15aに対応する水噴射ノズル16aは、側壁15aの壁面に向かって斜め上方から斜め下方に、
図2では斜め左下に向かって、水を噴射するように設置される。また、側壁15bに対応する水噴射ノズル16bは、側壁15bの壁面に向かって斜め上方から斜め下方に、
図2では斜め右下に向かって、水を噴射するように設置される。
【0020】
注水管11のうち電磁バルブ14よりも下流の部位と各水噴射ノズル16(16a、16b)との間に、分岐管17が接続される。そして、所定水位よりも貯留水の水位が低い場合に、制御装置12が電磁バルブ14を開弁する制御を行うことで、分岐管17の内部を水が流通し、各水噴射ノズル16から、先述のスプレーパターンで水が噴射される。なお、この場合には、先述のように、電磁バルブ14が制御装置12によって開弁されると、注水管11から冷却槽2の内部へも同時に注水がなされる。このように、1つの電磁バルブ14の開弁だけで、当該注水と当該噴射を同時に行うことができるので、灰押出装置1の製造コストを低減することができる。
ここで、各水噴射ノズル16から噴射される水の総量は、注水管11から冷却槽2へ直接的に注水される水の総量よりも大幅に少なく、1:10程度の比率となるよう、注水管11と分岐管17の各々の配管径や水噴射ノズル16のサイズが適宜選定される。この程度の比率とすることで、第一傾斜面8aから第二傾斜面8bへ向かって冷却槽2内を流れ込む水による「戻り灰」生成への影響をほとんどなくすことができる。
【0021】
各水噴射ノズル16から噴射される水は、焼却灰に直撃しないので、そのまま直接的に対応するそれぞれの側壁の壁面に当たり、当該壁面を伝って下方に流れ、当該壁面と焼却灰との間に水膜を形成する。
すなわち、水膜は、焼却灰と側壁15aとの間、および、焼却灰と側壁15bとの間の境界部分に進入し、焼却灰のうち水膜と接触する一部分のみを加湿する。この水膜により、焼却灰の排出口7からの排出が円滑化され、焼却灰の排出口7からの排出が促進される。
また、水噴射ノズル16は、焼却灰へ直接的に当たらないよう、所定水位よりも上方かつ対応する側壁に対して部分的に水を噴射する。従って、第一傾斜面8aに堆積した焼却灰のうち、所定水位より上方に押し上げられて水切りされている焼却灰は、水膜に接する一部分のみが加湿されるだけである。このため、排出される焼却灰全体で見たとき、排出口近傍の焼却灰全体に水を噴射して加湿した従来技術に比べ、実施形態の灰押出装置1では、排出口7から排出される焼却灰の含水率の増加は大幅に少なく、焼却灰の品質低下を回避できる。
【0022】
[第一変形例の灰押出装置]
では、次に、
図4を用いて第一変形例の灰押出装置1Aについて説明する。
第一変形例の灰押出装置1Aと実施形態の灰押出装置1との主な相違点は、第一変形例の灰押出装置1Aには、実施形態の灰押出装置1に配置された分岐管17がなく、このため、水噴射ノズル16には、分岐管17に代わって水供給管18が接続されている点と、水供給管18の中途に介装された電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)を制御装置12Aが開閉制御する点と、制御装置12Aは、電磁バルブ14(第一電磁バルブ)と電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)とを別個に独立して制御できる点である。
以下の説明において、実施形態の灰押出装置1と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
まず、水噴射ノズル16に水を供給するための水供給管18は、図示しない水源(第二水源)、例えば貯水タンクなどに接続される。この水源は、設計に応じて、注水管11に水を供給するための水源(第一水源)と同一であってもよいし、異なっていてもよい。第一水源と第二水源を異ならせる場合は、第一水源の水と第二水源の水の種類を相違させ、第二水源の水を例えば薬液とし、水膜の滑りを向上させて、排出口7からの焼却灰の排出を促進してもよい。
【0024】
制御装置12Aは、制御装置12における制御に加え、電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)の開閉制御を行う。
従って、制御装置12Aは、水位計10の計測結果を受信し、所定水位よりも貯留水の水位が低い場合には、電磁バルブ14を開弁して注水管11から冷却槽2の内部に注水する。そして、制御装置12Aは、当該計測結果が所定水位以上の場合には、電磁バルブ14を閉弁して冷却槽2への注水を停止する。
また、制御装置12Aは、所定の時間間隔で定期的かつ所定時間で間欠的に、電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)を開弁する。例えば、10分間隔で定期的に、1分間だけ電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)を開弁し、間欠的に、水噴射ノズル16(16a、16b)から水を噴射させる。
制御装置12Aは、貯留水の水位が所定水位より低いか否かに関わらず、電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)を定期的かつ間欠的に開弁して、水噴射ノズル16から水を噴射させるので、貯留水の水位が所定水位より低くなる頻度が少ない場合にも、確実に水膜を形成かつ維持し、焼却灰を円滑に排出口7から排出することができる。この点で、第一変形例の灰押出装置1Aは、実施形態の灰押出装置1より優れる。
【0025】
なお、第一変形例の灰押出装置1Aにおいても、各水噴射ノズル16(16a、16b)から噴射される水量の合計と注水管11から冷却槽2の内部に注水される水量との比率が、実施形態の灰押出装置1と同様、1:10程度となるように設定される。
実施形態の灰押出装置1では、例えば注水管11と分岐管17の各々の配管径または水噴射ノズル16のサイズを適宜選定することで当該比率を達成していたが、第一変形例の灰押出装置1Aでは、このような選定により当該比率を実現する必要は必ずしもない。例えば、各水噴射ノズル16から噴射される水量を、電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)の開弁時間を調整することで上記比率に設定できる。
【0026】
[第二変形例の灰押出装置]
では、
図5を用いて、第二変形例の灰押出装置1Bについて説明する。
第二変形例の灰押出装置1Bと第一変形例の灰押出装置1Aとの主な相違点は、第二変形例の灰押出装置1Bは、第一変形例の灰押出装置1Aの構成に加え、第一傾斜面8aにも水噴射する水噴射口19を備える点と、水噴射口19に接続された水供給管18Aの中途に介装された電磁バルブ14B(第三電磁バルブ)を制御装置12Bが開閉制御する点と、制御装置12Bは、電磁バルブ14(第一電磁バルブ)と電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)と電磁バルブ14B(第三電磁バルブ)とを、別個に独立して制御できる点である。
【0027】
実施形態の灰押出装置1および第一変形例の灰押出装置1Aでは説明を省略したが、第二変形例の灰押出装置1Bを含め、これら灰押出装置の底板8には、鱗状もしくは鋸歯状の複数のライナープレート20が設置され一体化している。従って、第一傾斜面8aはライナープレート20の表面であり、当該表面に焼却灰が接触する。
図5に部分的に拡大して示すように、第一傾斜面8aは、鱗状もしくは鋸歯状の段差(凸部)のある面となっている。排出口7側に向かって斜め上方に傾いている底板8に複数のライナープレート20を設置するとき、1つのライナープレート20の排出口7側の端部(ライナープレート20の先端部20a)をその1つ前方(前進方向Df側または排出口7側)の別のライナープレート20のスクレーパ4側の端部(ライナープレート20の後端部20b)の上に重ねて固定するという方法を順次繰り返すことで、鱗状もしくは鋸歯状の面を形成する。
このように形成された第一傾斜面8aには、複数のライナープレート20のそれぞれの先端部20aによる複数の凸部が鋸歯のように形成される。これら凸部は、第一傾斜面8a上の焼却灰が排出口7側からスクレーパ4側へずり落ちないようにする機能がある。
【0028】
そして、これら複数の凸部のうち、設計により適宜選択した凸部の排出口7に向かう面(ライナープレート20の先端面20c)に、水噴射口19を形成する。
水噴射口19は、上記凸部に先述の水噴射ノズル16と同様の扇形ノズルを埋設したり、または、当該凸部に穴あけ加工を施して形成することができる。水噴射口19は、所定水位より上方の第一傾斜面8aに、幅方向(
図5の紙面に直交する方向)に均等に複数設置してよい。排出口7に向かって重ねて固定された複数のライナープレート20の先端面20cに、それぞれ水噴射口19を設置してもよい。水噴射口19は、所定水位より下方の第一傾斜面8aに設置してもよい。なお、水噴射口19は、ライナープレート20と焼却灰との接触面に沿って直線状のスプレーパターンで水を噴射するのが望ましい。
また、水噴射口19は斜め上方向に開口するため、焼却灰で開口が閉塞しないよう、水噴射口19から噴射される水の水圧は高めに設定し、これにより閉塞を防止する。
水噴射口19に水を供給するための水供給管18Aは、ライナープレート20および底板8が穴あけ加工されて、水噴射口19に接続される。水供給管18Aの中途には、電磁バルブ14B(第三電磁バルブ)が介装される。
【0029】
制御装置12Bは、制御装置12Aにおける制御に加え、電磁バルブ14B(第三電磁バルブ)の開閉制御を行う。
従って、制御装置12Bは、水位計10の計測結果を受信し、所定水位よりも貯留水の水位が低い場合には、電磁バルブ14を開弁して注水管11から冷却槽2の内部に注水する。そして、制御装置12Bは、当該計測結果が所定水位以上の場合には、電磁バルブ14を閉弁して冷却槽2への注水を停止する。
また、制御装置12Bは、所定の時間間隔で定期的かつ所定時間で間欠的に、電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)を開弁する。例えば、10分間隔で定期的に、1分間だけ電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)を開弁し、間欠的に、水噴射ノズル16から水を噴射させる。
さらに、制御装置12Bは、所定の時間間隔で定期的かつ所定時間で間欠的に、電磁バルブ14B(第三電磁バルブ)を開弁し、ライナープレート20の凸部の水噴射口19から水を噴射させる。例えば、15分間隔で定期的に、30秒間だけ電磁バルブ14B(第三電磁バルブ)を開弁し、間欠的に、水噴射口19から水を噴射させる。
【0030】
すなわち、制御装置12Bは、貯留水の水位が所定水位より低いか否かに関わらず、電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)を定期的かつ間欠的に開弁して、水噴射ノズル16から水を噴射させ、また、電磁バルブ14B(第三電磁バルブ)を定期的かつ間欠的に開弁して、水噴射口19から水を噴射させる。
このため、制御装置12Bは、貯留水の水位が所定水位より低くなる頻度が少ない場合にも、第一傾斜面8a上の側壁15a、15bと焼却灰との間に水膜を形成し、かつ、第一傾斜面8aと焼却灰との間にも水膜を形成する。言い換えれば、第一傾斜面8a上で焼却灰を取り囲む3つの壁面の全てに水膜を形成することができる。従って、第一変形例の灰押出装置1Aよりも、確実かつ円滑に、焼却灰を円滑に排出口7から排出することができる。この点で、第二変形例の灰押出装置1Bは、第一変形例の灰押出装置1Aより優れる。
【0031】
なお、第二変形例の灰押出装置1Bにおいても、各水噴射ノズル16および水噴射口19から噴射される水量の合計と、注水管11から冷却槽2の内部に注水される水量との比率が、実施形態の灰押出装置1や第一変形例の灰押出装置1Aと同程度の比率になるよう設定される。例えば、1.5:10乃至2:10程度となるように設定される。
この比率は、第一変形例の灰押出装置1Aと同様、各水噴射ノズル16から噴射される水量を電磁バルブ14A(第二電磁バルブ)の開弁時間で調整し、水噴射口19から噴射される水量を電磁バルブ14B(第三電磁バルブ)の開弁時間で調整することで設定することができる。
【0032】
なお、第二変形例の灰押出装置1Bでは、第一変形例の灰押出装置1Aに対して、第一傾斜面8aの底壁と焼却灰との接触面に水噴射する水噴射口19に関連する構成が追加されている。当該関連する構成、すなわち、水噴射口19、水供給管18A、電磁バルブ14B(第三電磁バルブ)は実施形態の灰押出装置1に対して追加してもよく、この場合、灰押出装置1の制御装置12に、灰押出装置1Bの制御装置12Bの機能を適宜追加してよい。
【0033】
以上のとおり、本発明の実施形態、第一変形例、および第二変形例の灰押出装置によれば、水噴射ノズル16からの水の噴射により、第一傾斜面上の焼却灰とその両側壁との間に水膜を形成することができるため、灰押出装置の排出口7から円滑に焼却灰を排出することができる。また、焼却灰への直撃を回避して当該両側壁に水が噴射されるので、焼却灰の含水率の観点で、焼却灰の品質低下を回避できる。さらに、排出口近傍の焼却灰全体に対して水を噴射しないため、当該水の噴射による水量は、注水管11からの注水量に比べ大幅に少ないため、「戻り灰」に対する影響を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1、1A、1B 灰押出装置
2 冷却槽
3 搬送装置
4 スクレーパ(4a 上板、4b 押出板、4c 先端)
5 駆動装置(5a 駆動軸、5b アーム)
6 導入口
7 排出口(7a 開口端)
8 底板(8a 第一傾斜面、8b 第二傾斜面、8c 最下面)
9 壁面(9R 後壁)
10 水位計
11 注水管
12、12A、12B 制御装置
13 排水管
14、14A、14B 電磁バルブ
15 側壁(15a
図2で左側の側壁、15b
図2で右側の側壁)
16(16a、16b) 水噴射ノズル(扇形ノズル)
17 分岐管
18、18A 水供給管
19 水噴射口(扇形ノズル)
20 ライナープレート(20a 先端部、20b 後端部、20c 先端面)
Df 前進方向
Dr 後進方向
【要約】
【課題】排出口近傍で噴霧する水の量を抑えつつ焼却灰の排出を円滑に行うことができる灰押出装置を提供する。
【解決手段】焼却灰の導入口6及び焼却灰の排出口7を備えた冷却槽2と、冷却槽2内に配置され、焼却灰を排出口7側へ押し出すスクレーパ4と、導スクレーパ4を底板に沿って前後進駆動する駆動装置5とを有し、冷却槽2の底板8は、導入口6の直下から排出口7に向かって上り傾斜となる第一傾斜面8aと、導入口6の直下から第一傾斜面8aの逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面8bとを備え、貯留水は、冷却槽2内に、導入口6の下端よりも上方且つ排出口よりも下方の所定水位で貯えられ、第一傾斜面8aの両側壁に設けられ、所定水位よりも上方の当該側壁に対し水噴射する水噴射ノズル16を有し、水噴射により両側壁と焼却灰との接触面に水膜を形成する。
【選択図】
図1