(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】灰押出装置の清掃方法
(51)【国際特許分類】
F23J 1/02 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
F23J1/02 B
(21)【出願番号】P 2023130044
(22)【出願日】2023-08-09
【審査請求日】2023-08-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常泉 慎也
(72)【発明者】
【氏名】小泉 理
(72)【発明者】
【氏名】門間 真
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特許第6823753(JP,B1)
【文献】実開平2-69226(JP,U)
【文献】特開昭61-72914(JP,A)
【文献】特開2004-144321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/00-1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰が導入される筒状の壁面からなる導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、
前記冷却槽内に配置され、先端が前記冷却槽の底面の全幅に亘って接するとともに前記焼却灰を前記排出口側へ押し出すスクレーパと、
前記導入口に対し前記排出口と逆側に配置され、前記スクレーパを駆動する駆動装置とを有し、
前記冷却槽の前記底面は、前記導入口の直下から前記排出口が形成された開口端に向かって上り傾斜となる第一傾斜面と、前記第一傾斜面と同一幅であって前記導入口の直下から前記第一傾斜面の逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面とを備え、
前記貯留水は、前記冷却槽内に、前記壁面の下端よりも上方且つ前記排出口よりも下方である所定水位で貯えられ、
前記駆動装置は、前記第二傾斜面の上方に配置された駆動軸を備え、前記駆動軸が回動することで前記駆動軸と前記スクレーパとに接続されたアームによって前記スクレーパを前記底面に沿って前進及び後進の往復動作させる灰押出装置の清掃方法であって、
前記灰押出装置は、前記スクレーパの往復動作の方向で見て、前記排出口に近い前端と前記前端の反対側に位置する後端とを備えた点検口を、前記導入口の直下の第一側壁に有し、
前記冷却槽から前記貯留水を排出し、前記スクレーパを前記後端の近傍に後進させ、前記点検口を開放する第一工程と、
前記底面の全幅に亘って接する金属製清掃具を前記点検口から前記冷却槽内に挿入して設置し、前記冷却槽内で前記金属製清掃具よりも前記スクレーパに近い位置に、前記金属製清掃具よりも短い角材の一端を、前記第一側壁に対面する第二側壁に接して配置し、その後、前記スクレーパを前進させてから前記前端の近傍で停止させる第二工程と、
前記スクレーパの前進により前記前端の近傍まで押し出された最寄りの前記角材の他端と、前記第一側壁との間に携帯ジャッキを挿入し、前記携帯ジャッキを伸ばして前記角材を前記第一側壁と前記第二側壁との間に固定する第三工程と、
前記固定の後、前記スクレーパを前記後端の近傍に後進させ、前記固定した角材と前記スクレーパとの間に、追加の角材を前記第二側壁に接して敷き詰める第四工程と、
前記携帯ジャッキを縮めて前記固定を外し、前記携帯ジャッキを前記点検口から取り出した後、前記スクレーパを前進させてから前記前端の近傍で停止させる第五工程と
を有する灰押出装置の清掃方法。
【請求項2】
前記金属製清掃具が、前記排出口近傍に達するまで、前記第三工程、前記第四工程、前記第五工程を順次繰り返す請求項1に記載の灰押出装置の清掃方法。
【請求項3】
前記角材を上下方向に多段に積層させる場合、前記携帯ジャッキは、前記積層された角材のうち最上段の角材を前記固定する請求項2に記載の灰押出装置の清掃方法。
【請求項4】
前記点検口は、矩形である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の灰押出装置の清掃方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰を冷却して排出する灰押出装置の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
灰押出装置は、焼却炉から排出された焼却灰を導入口から冷却槽内に導入し、冷却槽内で冷却したのち排出口から排出するための装置である。冷却槽の内部には焼却灰を排出口へ押し出すスクレーパが配置される。スクレーパは、その先端が冷却槽の底面の全幅に亘って接するように配置され、導入口に対し排出口と逆側に配置された駆動装置によって駆動される。焼却炉が休炉する場合、灰押出装置内で焼却灰が固着しないように、灰押出装置内の焼却灰を除去するための清掃作業が行われる。
【0003】
清掃作業の際には、例えば、特許文献1に開示された金属製の清掃具を使用することができる。この場合、金属製の清掃具を先頭に配置し、その後、角材(木材)を順次継ぎ足してゆくことで、スクレーパの駆動(前後の往復運動)を用いて、灰押出装置の貯留槽内の焼却灰を、灰押出装置の排出口から排出することができる。なお、特許文献2には、角材を上下二段積にして同様の操作を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6823753号公報
【文献】実開平2-69226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、灰押出装置においては、作業者が当該装置内部へ入ることができる点検口(いわゆるマンホール)から排出口まで登り傾斜であるので、これら特許文献に記載の清掃方法のように、配置した複数の角材をスクレーパで排出口側へ押し出した後、スクレーパを後進させると、これら角材が崩れるおそれがある。そして、一旦、崩れた角材は、位置修正し、崩れる前の状態に戻さざるを得ない。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑み案出されたものであって、角材が上記登り傾斜に沿って一列に1つずつ順次配置された一段積みの場合も、上下二段積など多段積みにされる場合も、清掃作業を効率良く安全に実施することができる灰押出装置の清掃方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の灰押出装置の清掃方法は、焼却灰が導入される筒状の壁面からなる導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、前記冷却槽内に配置され、先端が前記冷却槽の底面の全幅に亘って接するとともに前記焼却灰を前記排出口側へ押し出すスクレーパと、前記導入口に対し前記排出口と逆側に配置され、前記スクレーパを駆動する駆動装置とを有し、前記冷却槽の前記底面は、前記導入口の直下から前記排出口が形成された開口端に向かって上り傾斜となる第一傾斜面と、前記第一傾斜面と同一幅であって前記導入口の直下から前記第一傾斜面の逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面とを備え、前記貯留水は、前記冷却槽内に、前記壁面の下端よりも上方且つ前記排出口よりも下方である所定水位で貯えられ、前記駆動装置は、前記第二傾斜面の上方に配置された駆動軸を備え、前記駆動軸が回動することで前記駆動軸と前記スクレーパとに接続されたアームによって前記スクレーパを前記底面に沿って前進及び後進の往復動作させる灰押出装置の清掃方法に関するものであり、以下の工程を少なくとも有する。
すなわち、前記灰押出装置は、前記スクレーパの往復動作の方向で見て、前記排出口に近い前端と前記前端の反対側に位置する後端とを備えた点検口を、前記導入口の直下の第一側壁に有し、前記冷却槽から前記貯留水を排出し、前記スクレーパを前記後端の近傍に後進させ、前記点検口を開放する第一工程と、
前記底面の全幅に亘って接する金属製清掃具を前記点検口から前記冷却槽内に挿入して設置し、前記冷却槽内で前記金属製清掃具よりも前記スクレーパに近い位置に、前記金属製清掃具よりも短い角材の一端を、前記第一側壁に対面する第二側壁に接して配置し、その後、前記スクレーパを前進させてから前記前端の近傍で停止させる第二工程と、
前記スクレーパの前進により前記前端の近傍まで押し出された最寄りの前記角材の他端と、前記第一側壁との間に携帯ジャッキを挿入し、前記携帯ジャッキを伸ばして前記角材を前記第一側壁と前記第二側壁との間に固定する第三工程と、
前記固定の後、前記スクレーパを前記後端の近傍に後進させ、前記固定した角材と前記スクレーパとの間に、追加の角材を前記第二側壁に接して敷き詰める第四工程と、
前記携帯ジャッキを縮めて前記固定を外し、前記携帯ジャッキを前記点検口から取り出した後、前記スクレーパを前進させてから前記前端の近傍で停止させる第五工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の灰押出装置の清掃方法によれば、金属製清掃具とスクレーパとの間に配置した角材を、金属製清掃具とともにスクレーパで排出口側へ押し出した後、最寄りの当該角材を携帯ジャッキで第一側壁と第二側壁との間に固定するので、その後、スクレーパを後進させて当該角材に対するスクレーパの加圧がなくなっても、当該角材は固定されたままである。従って、灰押出装置の清掃作業を効率良く安全に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の清掃方法が適用される灰押出装置の基本構成および本発明の清掃方法の第一工程を説明するための当該灰押出装置の断面図である。
【
図2】
図1の灰押出装置に使用される金属製清掃具の一例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の清掃方法の第二工程の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図4】本発明の清掃方法の第二工程の他の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図5】本発明の清掃方法の第三工程の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図6】本発明の清掃方法の第四工程の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図7】本発明の清掃方法の第四工程の他の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図8】本発明の清掃方法の第五工程の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図9】第五工程の後、再び第三工程を繰り返す場合の当該第三工程の一部を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図10】清掃作業終了時の状態を説明する灰押出装置の断面図である。
【
図11】角材が多段積みの場合の本発明の清掃方法を説明する灰押出装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の清掃方法について、各工程に対応する灰押出装置の状態を示す複数の図を用いて説明する。これら各図においては、説明の簡便のため、適宜、X軸、Y軸、Z軸による直交座標系を用いて説明する。
以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態で示す清掃方法の各工程は、必須の工程を除き、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0011】
以下、
図1および
図2を用いて、まず、本発明の清掃方法が適用される灰押出装置の基本構成と、清掃作業に使用される金属製清掃具の一例を説明し、その後、
図3乃至
図10を用いて、実施形態の清掃方法の各工程を説明する。
【0012】
図1に示すように、一般的に、灰押出装置1は、焼却灰を冷却する水が二点鎖線で示す所定水位まで貯留された冷却槽2と、冷却槽2内に配置されたスクレーパ3及びスクレーパ3を駆動する駆動装置4と、焼却炉から焼却灰が導入される導入口5と、冷却槽2で冷却された焼却灰をスクレーパ3及び駆動装置4で排出する排出口6とを備える。
冷却槽2の導入口5は、筒状(例えば、矩形筒状)の壁面で形成される。この壁面は、図示しない灰シュートに接続される。なお、灰シュートの上端は、例えば、廃棄物の焼却炉であるストーカ炉の後燃焼段に接続される。
冷却槽2の底面7は、導入口5の直下の底面部分で最も低い位置にある最下面7cから、排出口6に向かって上り傾斜となる第一傾斜面7aと、最下面7cから第一傾斜面7aの逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面7bとを備える。すなわち、第一傾斜面7aは前進方向Df(ここでは、+X軸方向)に向かうにしたがって漸次高くなるように形成され、第二傾斜面7bは後進方向Dr(ここでは、-X軸方向)に向かうにしたがって漸次高くなるによう形成される。従って、底面7は、下に凸の曲面状となっている。
冷却槽2の断面形状は幅方向(
図1の紙面に直交する方向であり、ここではY軸方向)に一様であり、第一傾斜面7a、最下面7c及び第二傾斜面7bの各幅寸法は全て同一である。
【0013】
スクレーパ3は、上板3aと、上板3aに接続されて排出口6側を向く押出板3bと、上板3aと押出板3bとに接続した両側板(
図1には2つの側板のうち一方の側板3cのみ図示あり)とを備える。上板3aに対面する底板は存在しないため、スクレーパ3は、冷却槽2の底面7側に開放した箱型の形状である。
スクレーパ3は、押出板3bの下端(スクレーパ3の先端3d)が冷却槽2の底面7の全幅に亘って接しながら、駆動装置4によって、底面7に沿って前進及び後進する。
なお、スクレーパ3の「前進」とは、スクレーパ3の押出板3bが焼却灰を加圧して排出口6側に向かって押し出す押出方向(前進方向Df、すなわち+X軸方向)に動くことを意味する。また、スクレーパ3の「後進」とは、前進の逆方向(後進方向Dr、すなわち-X軸方向)に動くことを意味する。また、底面7の「全幅」とは、冷却槽2の内部の幅方向(Y軸方向)の実質的な大きさを意味する。具体的には、後述する
図5に示すように、冷却槽2の両側壁9の間隔、つまり、側壁9a(第一側壁)と側壁9b(第二側壁)との間の寸法と同一または当該寸法よりやや小さい寸法を意味する。
【0014】
駆動装置4は、スクレーパ3を駆動する装置であり、第二傾斜面7bの上方に配置される。駆動装置4は、二方向に回動可能な駆動軸4aと、スクレーパ3と駆動軸4aとを接続するアーム4bとを備える。駆動装置4は、駆動軸4aを回動させることで、アーム4bに接続されたスクレーパ3を前進及び後進(前後方向、±X軸方向)の往復動作をさせることができる。
【0015】
冷却槽2の2つの側壁9のうち、第一側壁9aには、最下面7c近傍に、
図1に一点鎖線で示すように、矩形の点検口8(いわゆるマンホール)が設けられる。点検口8には、図示しない密閉扉が設けられ、作業者は開閉することができる。点検口8は、少なくとも、後述する金属製清掃具(以下、単に「清掃具」という)10を、余裕をもって搬入できる程度の大きさに形成される。
なお、X軸方向で見て、点検口8の排出口6に近い側の端部を、ここでは前端8aという。また、前端の反対側、すなわち、点検口8の駆動装置4に近い側の端部を、ここでは後端8bという。
【0016】
図2は、清掃具の一例として、金属製の清掃具10を示す前面斜視図である。清掃具10は、本発明の発明者による特許第6823753号公報(特許文献1)に記載の清掃具であるので、具体的な説明は省略する。
清掃具10は、例えば、2つのブロック10A、10Bに分割可能であるので、作業者は、分割した各ブロックをそれぞれ個別に点検口8から容易に灰押出装置1の内部へ搬入して、清掃具10に組み立てることができる。清掃具10の幅は、底面7の全幅の寸法である。清掃具10は、ブロック10Aとブロック10Bを合体させることで、当該全幅の矩形状の押出板を形成することができ、この押出板で焼却灰を排出口6に向かって押してゆくことができる。
ここでは、清掃具10は、2つのブロックを一体化させる構成として図示するが、特許第6823753号公報の趣旨に沿って3つ以上のブロックを一体化させる構成としてもよい。さらに、点検口8から灰押出装置1の内部へ搬入可能であれば、特許第6823753号公報(特許文献1)に記載の清掃具を必ずしも使用する必要はなく、状況に応じて、別の清掃具、例えば、特許文献1に記載の清掃具と類似の形状でありながら分割不能な一体形成の清掃具を使用してもよい。
【0017】
では、
図3乃至
図11を用いて、上述した灰押出装置1の内部の焼却灰を排出口6から排出する清掃方法の各工程を順次説明する。なお、
図3乃至
図11は、
図1と同一の灰押出装置1のある時点における状態を示す図であるので、全ての図において全ての符号を記載することはせず、理解の促進のため、適宜、符号の記載を省略する。
【0018】
[第一工程]
第一工程では、
図1のように、冷却槽2に水(貯留水)が貯留された状態で、まず、駆動装置4を駆動してスクレーパ3に前進及び後進の往復運動をさせ、できるだけ多くの焼却灰を排出口6に向かって押し出した後、駆動装置4を停止させる。このとき、点検口8の後端8bの近傍に、スクレーパ3の先端3dが停止するように、駆動装置4を停止させる。
そして、冷却槽2に貯留された水を全て排水する。当該排水の方法としては、様々な方法がありうる。例えば、冷却槽2の底面7に図示しない排水バルブを設置して排水してもよい。また、駆動装置4の上方から冷却槽2にホースを入れ、当該ホースに接続された排水ポンプを駆動することで排水してもよい。
その後、作業者は、点検口8の密閉扉を開ける。
なお、以降の工程において、点検口8と言う場合には、当該密閉扉が開いた点検口8を意味するものとする。
【0019】
[第二工程]
第一工程の後、点検口8から、作業者が、清掃具10を冷却槽2の内部に挿入または搬入する。そして、作業者は、スクレーパ3の押出板3bと焼却灰との間の空間に、底面7の全幅に亘って接するように清掃具10を設置する。
そして、作業者は、清掃具10の幅方向(Y軸方向)の長さよりも長さが短い角材11を、点検口8から冷却槽2の内部に挿入または搬入して、清掃具10よりもスクレーパ3の押出板3bに近い位置、言い換えれば、清掃具10から-X軸方向に設置する。
なお、このとき、
図5に示すように、角材11の一端11aが、点検口8が設置された第一側壁9aに対面する第二側壁9bに接するように、角材11を配置する。すなわち、角材11の他端11bは第一側壁9aに接しておらず、他端11bと第一側壁9aとの間には空間がある。
図3は、上述のように、冷却槽2の内部に清掃具10と角材11が設置された状態を示す図である。なお、
図3乃至
図11では、すでに完全に排水がなされた後の灰押出装置1を示す図であるので、
図1のように所定水位を示す二点鎖線の記載はない。
【0020】
その後、作業者は、点検口8から冷却槽2の内部を見ながら、駆動装置4を遠隔操作して、スクレーパ3を前進させ、
図4に示すように、スクレーパ3の先端3dが点検口8の前端8aの近傍に達したところで、スクレーパ3を停止させる。この位置でスクレーパ3を停止することで、スクレーパ3の押出板3bと点検口8の前端8aとの間には、
図4に示すように、少なくとも作業者の手や腕を入れることが可能な程度の隙間を設けることができる。また、角材11は、点検口8の前端8aよりもやや+X軸方向に位置することになる。
このとき、スクレーパ3と清掃具10とに挟み込まれて、角材11は固定された状態となる。
【0021】
なお、
図3および
図4では、スクレーパ3と清掃具10との間に角材11を1つのみ配置した図を一例として示しているが、複数の角材11をX軸方向に並べて設置した場合も、同様である。すなわち、複数の角材11は、スクレーパ3と清掃具10とに挟み込まれて固定される。また、複数の角材11を設置した場合も、
図4と同様に第二工程でスクレーパ3を前進及び停止させた状態では、複数の角材11のうち、スクレーパ3に最寄りの角材11、すなわちスクレーパ3が排出口6側に向けて移動する際に直接的に接する角材11(最も-X軸方向側に存在する角材11)は、点検口8の前端8aよりもやや+X軸方向に位置することになる。
以下、スクレーパ3と清掃具10との間に角材11を1つのみ配置した場合も、スクレーパ3と清掃具10との間に複数の角材11を配置した場合も、スクレーパ3が排出口6側に向けて移動する際に直接的に接する角材11、言い換えれば、最も-X軸方向側に存在する角材11を、単に、「最寄りの角材」という。
【0022】
[第三工程]
第二工程の後、最寄りの角材11は、先述のように、スクレーパ3と清掃具10とに挟み込まれて固定された状態である。複数の角材11が設置される場合は、最寄りの角材11に加え、他のすべての角材11も含め、スクレーパ3と清掃具10とに挟み込まれて固定された状態となる。このため、角材11が自然に移動する恐れがない。
そこで、第三工程では、第二工程で述べた隙間(スクレーパ3の押出板3bと点検口8の前端8aとの間の隙間)から、作業者が手や腕を入れて、携帯ジャッキ12を冷却槽2の内部の最寄りの角材11の他端11bと第一側壁9aとの間に挿入して
図5に示すように位置合わせ(
図5は、位置合わせの段階(固定前の段階)の図であるため、携帯ジャッキ12と、角材11の他端11b、第一側壁9aとの間には、それぞれ空間がある)し、その後、携帯ジャッキ12のシリンダーを伸ばす。これにより、最寄りの角材11は、第一側壁9aと第二側壁9bとの間にしっかりと固定される。
第三工程では、携帯ジャッキ12で固定される最寄りの角材11は、点検口8の前端8aよりやや+X軸方向に配置されているので、作業者は、自身の体全体ではなく手や腕だけ点検口8から入れて、携帯ジャッキ12の位置合わせや最寄りの角材11の固定の作業を安全に実施することができる。
【0023】
なお、携帯ジャッキ12は、スクレーパ3の押出板3bと点検口8の前端8aとの間の隙間から灰押出装置1の冷却槽2の内部に、一人の作業者が片手または両手で簡単かつ容易に設置できる程度の大きさのジャッキ、すなわち小型のジャッキである。携帯ジャッキ12は、耐荷重の見地から油圧シリンダー式のジャッキが望ましいが、角材11を十分に支えて固定することができるのであれば、エアーシリンダー式のジャッキでもよい。
本実施形態では、携帯ジャッキ12はシリンダーが伸縮するジャッキとして説明するが、携帯ジャッキ12は、しっかり角材11を固定できるのであれば、ハンドルを回転するとパンタグラフ等が伸縮する手動式のジャッキでもよい。
すなわち、本発明において、携帯ジャッキを伸ばすという場合には、シリンダーやパンタグラフ等が伸びることを意味し、携帯ジャッキを縮めるという場合には、シリンダーやパンタグラフ等が縮むことを意味する。
【0024】
[第四工程]
第三工程にて最寄りの角材11を固定した後、第四工程では、作業者は、点検口8から内部を見ながら、駆動装置4を遠隔操作して、スクレーパ3を後進させ、
図6に示すように、スクレーパ3の先端3dが点検口8の後端8bの近傍に達したところで、スクレーパ3を停止させる。この位置でスクレーパ3を停止することで、冷却槽2の内部において、点検口8の前端8aから後端8bの間には、作業者が新たな角材11(追加の角材)を挿入することができる大きな空間が得られる。
そこで、その後、
図7に示すように、作業者は、携帯ジャッキ12で固定している最寄りの角材11とスクレーパ3との間に、最寄りの角材11と実質的に同じ寸法の新たな角材11(追加の角材)を点検口8から冷却槽2の内部に挿入し、順次、冷却槽2の底面7の上に大きな隙間がないように敷き詰めて配置する。
図7では、新たに3本の追加の角材11をX軸方向に並べて配置している。これら追加の角材11を配置する際は、各角材11の一端11aが第二側壁9bに接するように配置する。
第四工程では、
図6の状態において、最寄りの角材11は携帯ジャッキ12でしっかりと固定されており、冷却槽2の内部には上記大きな空間が得られるので、
図7に示すように新たに追加の角材11を配置する際、作業者は自身の体全体を点検口8から冷却槽2に入れてもよいし、自身の手や腕だけ点検口8から入れて、新たな角材11を配置してもよい。いずれにしても、追加の角材11の冷却槽2の内部への設置作業を安全に実施することができる。
【0025】
[第五工程]
第四工程にて携帯ジャッキ12で固定している最寄りの角材11とスクレーパ3との間に追加の角材11を敷き詰めた後、第五工程では、作業者は、携帯ジャッキ12のシリンダーを縮め、携帯ジャッキ12で固定していた角材11の当該固定を外し、携帯ジャッキ12を点検口8から取り出す。
このとき、清掃具10とスクレーパ3との間には、複数の角材11が冷却槽2の底面7の上に敷き詰めて配置された状態であるので、携帯ジャッキ12を取り外しても、これら複数の角材11が自然に移動することはない。
また、上述のように、角材11は、清掃具10の幅方向(Y軸方向)の長さよりも短く、各角材11の一端11aが第二側壁9bに接するように配置されているので、各角材11のそれぞれの他端11bと第一側壁9aとの間には、作業者の手や腕を通すことができる程度の隙間がある(
図5参照)。
このため、作業者は、自身の体全体ではなく手や腕だけ点検口8から入れて、携帯ジャッキ12を安全かつ容易に取り外し、灰押出装置1の冷却槽2の外部へ取り出すことができる。
【0026】
その後、作業者は、点検口8から冷却槽2の内部を見ながら、駆動装置4を遠隔操作して、スクレーパ3を前進させ、
図8に示すように、スクレーパ3の先端3dが点検口8の前端8aの近傍に達したところで、スクレーパ3を停止させる。
この位置でスクレーパ3を停止することで、スクレーパ3の押出板3bと点検口8の前端8aとの間には、
図8に示すように、少なくとも作業者の手や腕を入れることが可能な程度の隙間を設けることができる。
また、スクレーパ3に最寄りの角材11、すなわちスクレーパ3が排出口6側に向けて移動する際に直接的に接する角材11(最も-X軸方向側に存在する角材11)は、点検口8の前端8aよりもやや+X軸方向に位置することになる。
なお、第四工程において新たに追加した角材11のうち、最もスクレーパ3に近い角材11が、第五工程の
図8における最寄りの角材11となる。
【0027】
その後、第三工程、第四工程、および第五工程を順次、複数回、循環して繰り返す。すなわち、
図9に示すように、第三工程を再び実施して、最寄りの角材11を携帯ジャッキ12でしっかりと固定した後、第四工程を再び実施して、スクレーパ3を後進させ、スクレーパ3の先端3dが点検口8の後端8bの近傍に達したところでスクレーパ3を停止させ、新たな追加の角材11を冷却槽2の底面7の上に敷き詰める。そして、第五工程を再び実施して、携帯ジャッキ12を取り外し、スクレーパ3を前進させ、スクレーパ3の先端3dが点検口8の前端8aの近傍に達したところでスクレーパ3を停止させる。そして、このように、再び、第三工程から第五工程を複数回繰り返す。
【0028】
なお、最後に第五工程を実施した際、第一傾斜面7a上の清掃具10の位置は、排出口6まで、残りわずかの距離となっている。このとき、すでに、冷却槽2内の焼却灰の大部分は、排出口6から排出されている。
そこで、作業者は、灰押出装置1の外側から排出口6を見つつ、
図10に示すように、駆動装置4を遠隔操作して清掃具10が排出口6から落下することがない程度にスクレーパ3を前進させ、清掃具10が排出口6から見える程度の位置でスクレーパ3を停止させる。これにより、冷却槽2内のほぼ全ての焼却灰を排出口6から排出し、灰押出装置1内部の焼却灰を排出口6から排出する清掃作業を完了することができる。
以上の清掃方法によれば、灰押出装置1の清掃作業を効率良く安全に実施することができる。
ところで、上記清掃作業を完了後、作業者は、排出口6から灰押出装置1の外部へ清掃具10や角材11を順次取り出す、または、点検口8から角材11や清掃具10を順次取り出す。ここで、例えば、作業者が点検口8から角材11や清掃具10を取り出す場合であっても、すでに焼却灰は全て排出されており、焼却灰の重みが角材11や清掃具10に加わることがないため、これらが点検口8に向かって自然に移動することはない。従って、作業者は、灰押出装置1の外部へ、角材11や清掃具10を安全に取り出すことができる。
【0029】
なお、以上の説明においては、複数の角材11が、X軸方向に1つずつ順次配置された一段積みの例を示した。しかし、角材11の上に角材11を積んで積層された多段積み、言い換えれば、
図11に示すように、複数の角材11がX軸方向に上下二列で順次配置された二段積みなど、上下方向に多段に積層された多段積み(二段積み、三段積み、など)の場合も、同様に、第一工程、第二工程の後に、第三工程から第五工程を順次、複数回、循環して実施することで、灰押出装置1内部の焼却灰を排出口6から排出する清掃作業を効率良く安全に実施することができる。
ただし、多段積みの場合は、(1)第二工程において、複数の角材11を上下方向(Z軸方向)に多段に積んで配置する点と、(2)第三工程において、スクレーパ3が排出口6側に向けて移動する際に直接的に接する角材11であって且つその上下方向に積層された角材11のうち最上段の角材11を、「最寄りの角材」として取り扱い、
図11に示すように、当該最上段の角材11である「最寄りの角材」を携帯ジャッキ12で固定する点と、(3)第四工程において、複数の追加の角材11も上下方向(Z軸方向)に多段に積んで敷き詰める点が、上記一段積みの場合と大きく異なる点である。
なお、上記最上段の角材11である「最寄りの角材」を一段積みの場合と同様に携帯ジャッキ12でしっかり固定することで、第四工程でスクレーパ3を後進させても、すべての角材11について、自然に移動することを防止することができる。
すなわち、角材11の一段積みと多段積みではこのような若干の相違点はあるものの、本発明によれば、いずれの場合も、灰押出装置1から焼却灰を排出する清掃作業を効率良く安全に実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 灰押出装置
2 冷却槽
3 スクレーパ(3a 上板、3b 押出板、3c 側板、3d 先端)
4 駆動装置(4a 駆動軸、4b アーム)
5 導入口
6 排出口
7 底面(7a 第一傾斜面、7b 第二傾斜面、7c 最下面)
8 点検口(8a 点検口の前端、8b 点検口の後端)
9 側壁(9a 第一側壁、9b 第二側壁)
10 清掃具(10A 第一ブロック、10B 第二ブロック)
11 角材(11a 角材の一端、11b 角材の他端)
12 携帯ジャッキ
Df 前進方向
Dr 後進方向
【要約】
【課題】清掃作業を効率良く安全に実施できる灰押出装置の清掃方法を提供する。
【解決手段】貯留水で冷却された焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、焼却灰を排出口へ押し出すスクレーパとを備え、冷却槽の底面は排出口に上り傾斜となる傾斜面を備え、スクレーパを前後進の往復動作させる灰押出装置の清掃方法であって、冷却槽から貯留水を排出しスクレーパを点検口の後端の近傍に後進させる工程と、底面の全幅に亘って接する清掃具を第一側壁の点検口から挿入設置し、清掃具とスクレーパの間に幅方向に清掃具より短い角材を配置し、スクレーパを前進させ点検口の前端近傍で停止させる工程と、最寄りの角材の端部と第一側壁の間にジャッキを挿入し当該角材を固定する工程と、その後スクレーパを点検口の後端近傍に後進させ、固定した角材とスクレーパとの間に追加の角材を敷き詰める工程と、ジャッキを外し、スクレーパを前進させる工程とを有する。
【選択図】
図7