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  • 特許-灰押出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】灰押出装置
(51)【国際特許分類】
   F23J 1/02 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
F23J1/02 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023148258
(22)【出願日】2023-09-13
【審査請求日】2023-09-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常泉 慎也
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特許第7022251(JP,B1)
【文献】特許第6906122(JP,B1)
【文献】特許第6718564(JP,B1)
【文献】特許第6718563(JP,B1)
【文献】特許第6417617(JP,B1)
【文献】特開2005-61743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 1/00-1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼却灰が導入される筒状の壁面からなる導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、
前記冷却槽内に配置され、先端が前記冷却槽の底板の全幅に亘って接するとともに前記焼却灰を前記排出口側へ押し出すスクレーパと、
前記導入口に対し前記排出口と逆側の駆動室内に配置され、前記スクレーパを駆動する駆動装置とを有し、
前記冷却槽の前記底板は、前記導入口の直下から前記排出口が形成された開口端に向かって上り傾斜となる第一傾斜面と、前記第一傾斜面と同一幅であって前記導入口の直下から前記第一傾斜面の逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面とを備え、
前記貯留水は、前記冷却槽内に、前記壁面の下端よりも上方且つ前記排出口よりも下方である所定水位で貯えられ、
前記駆動装置は、前記第二傾斜面の上方に配置された駆動軸を備え、前記駆動軸が回動することで前記駆動軸と前記スクレーパとに接続されたアームによって前記スクレーパを前記底板に沿って前進及び後進の往復動作させる灰押出装置であって、
前記駆動室において、前記スクレーパが最も後進した状態における前記スクレーパの後端の位置であるスクレーパ最後端位置よりも前記後進の方向に後方配置された注水管と、
前記駆動室において、少なくともその棒状のセンサ部の下端が、前記スクレーパ最後端位置よりも前記前進の方向に前方配置された水位計と
を有し、
前記注水管は、先端に広角ノズルを備え、
前記貯留水が前記所定水位よりも下方にあることを前記水位計が検知した場合、前記広角ノズルから水が広角に噴射されて前記冷却槽へ注水がなされ、
前記噴射される水の過半は前記スクレーパ最後端位置よりも前記後進の方向に落下し、前記噴射される水のうち、前記スクレーパ最後端位置よりも前記前進の方向に落下する水の少なくとも一部により前記水位計が洗浄される灰押出装置。
【請求項2】
前記注水管と前記水位計とは、前記第二傾斜面の上方且つ前記駆動装置の上方に配置された天井板を貫通して配置され、
前記水位計は、その上方が前記後方配置され、且つ、その下方が前記前方配置され、全体として傾斜配置された請求項1に記載の灰押出装置。
【請求項3】
前記注水管と前記水位計とは、前記第二傾斜面の上方且つ前記駆動装置の上方に配置された天井板を貫通して配置され、
前記水位計は、その全体が前記前方配置された請求項1に記載の灰押出装置。
【請求項4】
前記センサ部は、
棒状の共通電極と、
前記貯留水が前記所定水位にあることを検知する棒状の第一電極と、
前記貯留水が前記所定水位よりも下方にあることを検知する棒状の第二電極と、
前記貯留水が前記所定水位よりも上方にあることを検知する棒状の第三電極と、
各々の前記電極同士が接触するのを防止するセパレータと
を備える請求項2または請求項3のいずれか一項に記載の灰押出装置。
【請求項5】
前記第二傾斜面の上方であって、前記往復動作する前記スクレーパ及び前記アームに接触しない位置に一端から他端までが配置されたガス配管をさらに有し、
前記ガス配管は、前記一端が前記所定水位よりも下方に配置されるとともに、前記一端に、前記他端から導入されたガスを前記第二傾斜面と前記スクレーパとの間に向けて噴出するガス噴出口を備え、
前記ガス噴出口から噴出された前記ガスにより生じる前記貯留水の水流と前記ガスによる泡とによって、前記第二傾斜面側に堆積しようとする戻り灰を攪拌する請求項4に記載の灰押出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却灰を冷却して排出する灰押出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ごみ等の被焼却物を焼却するプラントとして焼却炉プラントが知られている。このプラント内の焼却炉(例えば、ストーカ炉)では、被焼却物を燃焼することで生成された灰(焼却灰)が焼却炉に接続された灰シュートから灰押出装置の導入口へ落とされ、灰押出装置の冷却槽内の貯留水で冷却された後に、灰押出装置から搬送装置へ排出される。灰押出装置には、貯留水で冷却された焼却灰を排出口へ押し出すスクレーパ(「プッシャー」とも呼ばれる)が設けられる。スクレーパは、駆動室内に配置された駆動装置により、排出口側に向かう前進方向と、これとは逆の後進方向とに、往復動作して貯留水内の焼却灰を排出口へ押し出す。
また、灰押出装置では、貯留水の水位を計測する水位計と、冷却槽に所定水位の水を貯留するために注水する注水管が、駆動室に配置される。
【0003】
灰押出装置に設置される水位計と注水管の位置関係は多種ありうる。例えば、駆動室において、スクレーパが最も後進した状態におけるスクレーパの後端の位置(以下、「スクレーパ最後端位置」という)よりもスクレーパの後進方向側に水位計と注水管が配置(以下、スクレーパ最後端位置よりも後進方向側に配置される場合を「後方配置」という)される灰押出装置がある(特許文献1参照)。また、駆動室において、スクレーパ最後端位置よりもスクレーパの前進方向側に水位計と注水管が配置(以下、スクレーパ最後端位置よりも前進方向側に配置される場合を「前方配置」という)される灰押出装置がある(特許文献2参照)。
【0004】
なお、特許文献1及び特許文献2は、本件発明者が取得した特許技術を開示している。導入口に導入された焼却灰の一部は、スクレーパの前進および後進の往復動作の際に導入口とスクレーパとの間に生じる隙間から、駆動室へ入り込み、スクレーパの裏面と駆動室の底板の間に焼却灰(以下、「戻り灰」という)が堆積する場合がある。当該特許技術は、戻り灰の堆積を抑制するために、当該底板とスクレーパの裏側の間に向けてガスを噴出する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6718563号公報
【文献】特許第6752988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件発明者は、特許文献1及び特許文献2に開示の特許技術をさらに発展すべく研究した結果、注水管は、前方配置される場合に比べ、後方配置される方が、「戻り灰」の減少に寄与することが判明した。
この理由は、次のとおりである。注水管が「前方配置」の場合は、駆動室に一旦入り込んだ焼却灰や、スクレーパの往復動作で巻き上げられた「戻り灰」を、注水管により注水された水が後進方向側に押し戻してしまうため、これらの焼却灰を駆動室から導入口に向かって排出しにくい。しかし、「後方配置」された場合は、注水管により注水された水は、駆動室に一旦入り込んだ焼却灰や当該巻き上げられた「戻り灰」を前進方向側に押し出すので、これらの焼却灰を駆動室から導入口に向かって排出しやすいと考えられる。
【0007】
一方、水位計は、正確な水位を検知するために「前方配置」されるのが望ましい。この理由は、スクレーパが最も後退した際、スクレーパの上板の一部は貯留水の水面よりも上方に出て当該一部よりも後進方向側の貯留水を一時的にせき止めてしまう可能性があり、「後方配置」された水位計の計測する水位は、当該一部よりも前進方向側、すなわち冷却槽2の大部分における水位と大きく相違するおそれがあるからである。
【0008】
ここで、一般的に注水管は鉛直方向に長い直管で形成され、注水管から注水される水は、注水管の直下に向かって放出される。従って、注水管の直下近傍に水位計を設置すると、注水管から注水される水が水位計にあたって自動的に水位計を洗浄(以下、水位計の「自動洗浄」という)することができる。
しかし、先述の各理由から、注水管を「後方配置」し、水位計を「前方配置」した灰押出装置を製造する場合、注水管の直下近傍に水位計を配置できないので、水位計の自動洗浄が難しい。
水位計の自動洗浄を可能とするために、注水管から分岐した分岐管を水位計の直上に配置すれば、注水管から注水される際に同時に分岐管からも注水されるので、水位計の自動洗浄が可能になる。しかし、灰押出装置の周辺に設置される装置や配管の配置の都合で必ずしも当該分岐管を水位計の直上に配置できるとは限らない。また、そもそも、新たに当該分岐管を設置することは、製造コストが増加するため望ましくない。
【0009】
そこで、本発明は、簡単な構成で、駆動室内の焼却灰の排出を促進し、水位計を自動洗浄して適切かつ正確な水位の計測を可能にする灰押出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の灰押出装置は、焼却灰が導入される筒状の壁面からなる導入口及び貯留水で冷却された前記焼却灰を排出する排出口を備えた冷却槽と、前記冷却槽内に配置され、先端が前記冷却槽の底板の全幅に亘って接するとともに前記焼却灰を前記排出口側へ押し出すスクレーパと、前記導入口に対し前記排出口と逆側の駆動室内に配置され、前記スクレーパを駆動する駆動装置とを有し、前記冷却槽の前記底板は、前記導入口の直下から前記排出口が形成された開口端に向かって上り傾斜となる第一傾斜面と、前記第一傾斜面と同一幅であって前記導入口の直下から前記第一傾斜面の逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面とを備え、前記貯留水は、前記冷却槽内に、前記壁面の下端よりも上方且つ前記排出口よりも下方である所定水位で貯えられ、前記駆動装置は、前記第二傾斜面の上方に配置された駆動軸を備え、前記駆動軸が回動することで前記駆動軸と前記スクレーパとに接続されたアームによって前記スクレーパを前記底板に沿って前進及び後進の往復動作させる灰押出装置である。
そして、本発明の灰押出装置は、前記駆動室において、前記スクレーパが最も後進した状態における前記スクレーパの後端の位置であるスクレーパ最後端位置よりも前記後進の方向に後方配置された注水管と、前記駆動室において、少なくともその棒状のセンサ部の下端が、前記スクレーパ最後端位置よりも前記前進の方向に前方配置された水位計とを有し、前記注水管は、先端に広角ノズルを備え、前記貯留水が前記所定水位よりも下方にあることを前記水位計が検知した場合、前記広角ノズルから水が広角に噴射されて前記冷却槽へ注水がなされ、前記噴射される水の過半は前記スクレーパ最後端位置よりも前記後進の方向に落下し、前記噴射される水のうち、前記スクレーパ最後端位置よりも前記前進の方向に落下する水の少なくとも一部により前記水位計が洗浄される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の灰押出装置によれば、注水管がスクレーパ最後端位置よりも後方配置であり、注水管の先端の広角ノズルからの噴射により注水される水の過半をスクレーパ最後端位置よりもスクレーパの後進方向に落下させるので、当該過半の水による水流で、駆動室に一旦入り込んだ焼却灰や戻り灰をスクレーパの前進方向に押し出して、これらの焼却灰を駆動室から導入口に向かって排出させることができる。また、水位計の棒状のセンサ部の少なくとも下端が前方配置であることから、適切に水位を検知することができる。
そして、注水管から冷却槽に注水される際、広角ノズルから噴射される水の少なくとも一部により水位計の自動洗浄を行うことができる。従って、水位計の誤動作を防止し、水位計による永続的に正確な水位の検知が可能となる。
以上のとおり、簡単な構成で、駆動室内の焼却灰の排出を促進し、水位計を自動洗浄して適切かつ正確な水位の検知を可能にする灰押出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る灰押出装置の断面図である。
図2図1の水位計および注水管の近傍を部分拡大した概略図である。
図3図2の水位計の設置状態の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態である灰押出装置を説明する。説明のため使用する各図においては、説明の簡便のため、適宜、X軸、Y軸、Z軸による直交座標系を用いて説明する。
実施形態の灰押出装置はあくまでも例示に過ぎず、明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明に必須の構成を除き、実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択したり、種々変形して実施することができる。
なお、以下の説明においては、本件発明者による特許文献1、2のガス配管を用いた灰押出装置を説明するが、本発明は、特許文献1、2の技術を使用しない灰押出装置にも適用できる。
【0014】
では、まず、図1を用いて、実施形態の灰押出装置1の全体構成について説明する。ただし、水位計10については、図2及び図3を用いて後ほど詳述する。
灰押出装置1は、焼却灰を冷却する貯留水が所定水位(図1の破線)に貯留された冷却槽2と、冷却槽2内に配置されたスクレーパ4及び駆動装置5とを有する。冷却槽2には、焼却灰が導入される導入口6及び冷却された焼却灰を排出する排出口7が設けられる。
なお、当該貯留水および後述の注水管11の広角ノズル11aによる噴射に使用される液体は、主成分が水であればよく、水道水、工業用水、または再利用水(プラント内で使用されたのち処理された水)であってもよいし、塩酸等が混合されて中性化された混合水であってもよい。ここでは、以下、当該貯留水に使用されるこれらの液体を単に「水」として説明する。
【0015】
冷却槽2の導入口6は、筒状(例えば、矩形筒状)の壁面9で形成される。この筒状の壁面9は、図示しない灰シュートと直結される。なお、灰シュートの上端は、図示しない焼却炉(例えば、ストーカ炉の後燃焼段)に接続される。
いわゆる「水封」の構成とするために、壁面9の下端は、冷却槽2内の貯留水の所定水位よりも下方に位置する。
【0016】
スクレーパ4は、冷却された焼却灰を排出口7側へ押し出す装置である。スクレーパ4は、上方を向く上板4aと排出口7側を向く押出板4bと、上板4aと押出板4bとに接続した両側板とを備える(図1には、当該両側板のうちの一方の側板4cを図示する)。上板4aに対応する下面は配置しないので、スクレーパ4は、冷却槽2の底板8側に開放した箱型の形状である。
スクレーパ4は、後述のアーム5bに接続されており、押出板4bの下端(すなわちスクレーパ4の先端4d)が冷却槽2の底板8の全幅に亘って接しながら底板8に沿って前進及び後進する。なお、スクレーパ4の後端4eは、上板4aの最も+X軸側の端部であり、「スクレーパ最後端位置」の指標になる部位である。ここでは、「スクレーパ最後端位置」(図1の鉛直方向の一点鎖線)は、スクレーパ4が最も後進した状態におけるスクレーパ4の上板4aの後端4eの位置としている。
なお、スクレーパ4の「前進」とは、スクレーパ4が焼却灰を排出口7側へ押し出す方向(図1の-X軸方向、前進方向Df)に動くことを意味する。また、スクレーパ4の「後進」とは、スクレーパ4が、「前進」の逆方向(図1の+X軸方向、後進方向Dr)に動くことを意味する。さらに、冷却槽2の底板8の「全幅」とは、冷却槽2の内部の幅方向(図1の紙面に直交する方向、すなわち、Y軸方向)の寸法を意味する。
【0017】
駆動装置5は、スクレーパ4を駆動する装置であり、導入口6に対し排出口7の逆側に位置する駆動室12に配置される。駆動室12は、導入口6の側壁のうち最も+X軸方向の壁面と、当該壁面よりも+X軸方向の第二傾斜面8bと、天井板12aとで、駆動室12の外部と区画される。
駆動装置5は、二方向に回動可能な駆動軸5aと、スクレーパ4と駆動軸5aとを接続するアーム5bとを備える。駆動装置5は、駆動軸5aを回動させることでアーム5bを駆動し、結果としてアーム5bに接続されたスクレーパ4に前進及び後進の往復動作をさせる。駆動装置5は、アーム5bを除き、後述の第二傾斜面8bの上方であって、貯留水に浸からない位置(「所定水位」よりも上方)に配置される。
【0018】
冷却槽2の底板8は、導入口6の直下から、排出口7(具体的には、排出口7における鉛直方向且つ下方の端部(開口端))に向かって上り傾斜となる第一傾斜面8aと、導入口6の直下から第一傾斜面8aの逆側に向かって上り傾斜となる第二傾斜面8bとを備える。
すなわち、第一傾斜面8aは、前進方向Dfに向かうにしたがって漸次高くなるよう形成される。また、第二傾斜面8bは、後進方向Drに向かうにしたがって漸次高くなるよう形成される。
なお、冷却槽2では、導入口6の直下の底板部分が最も低く、底板8は、下に凸の曲面状となっている。冷却槽2の断面形状は幅方向に一様であり、第一傾斜面8a及び第二傾斜面8bの各幅寸法(図1の紙面に直交する方向の寸法、すなわち、Y軸方向の寸法)は全て同一である。
【0019】
灰押出装置1は、後ほど図2または図3を用いて詳述する水位計10で検知された水位に基づいて、冷却槽2内の貯留水を増水する注水管11を、「後方配置」して備える。「後方配置」とは、「スクレーパ最後端位置」(図1の一点鎖線)よりも後進方向側、すなわち、「スクレーパ最後端位置」よりも+X軸方向側に配置されることをいう。なお、後述する水位計10の棒状のセンサ部の少なくとも一部、具体的には当該センサ部の下端は「前方配置」されるが、「前方配置」とは、「スクレーパ最後端位置」(図1の一点鎖線)よりも、前進方向側、すなわち、「スクレーパ最後端位置」よりも-X軸方向側に配置されることをいう。
注水管11は、第二傾斜面8bの上方且つ駆動装置5の上方に配置された天井板12aを貫通して後方配置され、天井板12aに固定される。
注水管11は、図示しない水源、例えば貯水タンクなどに接続されるとともに、先端に広角ノズル11aを備える。広角ノズル11aは、充円錐ノズル、空円錐ノズル、扇形ノズル、など、スプレーパターンが噴射口から離れるにつれて広範囲に広がるノズルである。
【0020】
冷却槽2内の貯留水の水量は、「所定水位」に保たれるよう、制御装置13と排水管14によって調整される。
排水管14は、貯留水の水位が所定水位を超えた場合に貯留水を排水する管である。排水管14の上端の開口は所定水位よりも上方且つ近傍に配置される。これにより、バルブ制御をすることなく過剰な貯留水は自働的に越流して排水管14から排出される。
【0021】
そして、制御装置13は、後述する水位計10から受信した水位(例えば、冷却槽2内に蓄えられた貯留水の実際の水位である実水位)に関する計測データ(検知結果)に基づき、注水管11の中途に介装された電磁バルブ15を開閉制御する。つまり、制御装置13は、水位計10から受信した計測データ(検知結果)が所定水位よりも貯留水の水位が低いことを示す場合、電磁バルブ15を開弁して注水管11の広角ノズル11aから水を噴射させて冷却槽2の内部に注水する。
このとき、噴射される水の過半、例えば当該水の総量の50%より多く80%以下の水は、スクレーパ最後端位置よりも後進の方向に落下するように設計し、残りの水の少なくとも一部が後述する水位計10の棒状のセンサ部に当たってからスクレーパ最後端位置よりも前進の方向に落下するように設計する。当該過半の水がスクレーパ最後端位置よりも後進の方向に落下した際の水流で、駆動室に一旦入り込んだ焼却灰や戻り灰をスクレーパ4の前進方向に押し出して、これらの焼却灰を駆動室12から導入口6に向かって排出させることができる。
そして、制御装置13は、当該計測データが所定水位以上の貯留水の水位を示す場合、電磁バルブ15を閉弁して冷却槽2への注水を停止する。
【0022】
なお、先述のように、図1の灰押出装置1は、本件発明者が取得した特許文献1(特許第6718563号公報)または特許文献2(特許第6752988号公報)の特許技術、すなわち、戻り灰の堆積を抑制するガス配管17を用いた灰押出装置1であるので、簡単にこの点についても説明する。本発明は特許文献1または特許文献2の技術を適用しない灰押出装置にも適用できるが、特許文献1または特許文献2の技術も用いると、さらに良好な効果が得られるため、例として説明するものである。
【0023】
ガス配管17は、第二傾斜面8bの上方であって、スクレーパ最後端位置よりも+X軸方向、すなわち往復動作するスクレーパ4及びアーム5bに接触しない位置に配置される。そして、ガス配管17は、ガス配管17の一端17a(下端)から他端17b(上端)まで鉛直方向(Z軸方向)に直線状に配置される。
ガス配管17において、所定水位よりも下方に配置された一端17aの形状は、実質的に水平方向に屈曲形成された角部を備えたL字形状であり、この角部が第二傾斜面8bに接触して配置される。一端17aには、実質的に水平方向(-X軸方向)に開口するガス噴出口17cが設けられている。
天井板12aよりも上方に配置された他端17bには、コンプレッサ17dが設けられている。ガス配管17のガス噴出口17cから噴出されるガスは、例えば、このコンプレッサ17dにより圧縮された圧縮空気である。
ガス配管17には、ガス用電磁バルブ17eが設置されており、制御装置13がガス用電磁バルブ17eを所定のタイミングで開弁することで、ガス噴出口17cからガスが噴出される。
【0024】
第二傾斜面8bの近傍でガス噴出口17cから噴出されるガスにより生じる水流と泡は、第二傾斜面8bとスクレーパ4との間を前進方向Df(-X軸方向)に進み、やがてスクレーパ4の押出板4bの裏側または上板4aの裏側に速度を落として穏やかに当たることではね返り、または、当たることなく渦を巻く。このため、当該ガスによる泡で、冷却槽2のうち第二傾斜面8b上側の空間16(例えば、第二傾斜面8b上や、スクレーパ4の裏側の空間)に堆積した戻り灰が剥離され、当該水流によって、当該剥離した戻り灰のみならず空間16に堆積しようとする戻り灰を攪拌する。
そして、戻り灰は、上記泡の浮力によりスクレーパ4の裏側や第二傾斜面8bの近傍から水面に押し上げられて分散する。すなわち、スクレーパ4の裏側や第二傾斜面8bの近傍から水面に押し上げられる水流が発生する。
【0025】
従って、制御装置13が、注水管11の広角ノズル11aから注水する制御を実施する際、ガス噴出口17cからガスを噴出する制御を併せて実施すれば、当該ガス噴出をしない場合に比べ、当該注水により発生する導入口6側に向かう水流と、後方配置の領域において当該ガスにより発生する上昇し且つ導入口側に向かう水流とが合わさって、壁面9のうち最も+X軸方向の壁面とスクレーパ4との間に生じる先述の隙間から導入口6側へ、焼却灰の排出をより円滑に行うことができる。
【0026】
では、水位計10について、図2を用いて詳述する。図2は、図1で示した水位計10及び注水管11近傍を拡大した概略図である。図2は概略図であるので、図1に示した当該近傍の構成の全てが、図2に記載されているとは限らない。
水位計10は、基部10eと棒状センサ部とを少なくとも備える。基部10eには、上述の計測データ(検知結果)を生成するための回路などが格納される。
なお、ここでは、水位計10は、図2に示すように、棒状センサ部として複数本の棒状のセンサ、例えば、センサとして四本の棒状の電極10a~10d(複数の電極)が配置された例を示す。
【0027】
駆動室12の天井板12aには、フランジ付き傾斜管19が、スクレーパ最後端位置の近傍に後方配置されて、固定されている。フランジ付き傾斜管19は、Z軸(鉛直方向)から+X軸方向(後進方向Dr)に、約30°~約60°傾いている。
基部10eが備えるフランジと、フランジ付き傾斜管19の備えるフランジとが、ガスケットまたはオーリングを介して、ボルトおよびナットで固定される。水位計10の棒状センサである各電極10a~10dの上端は、天井板12aに開けられた貫通穴を挿通し、基部10eに取り付けられている。
フランジ付き傾斜管19は、上述のように傾斜しているので、基部10eは後方配置されていながら、棒状センサである各電極10a~10dの下端を前方配置することができる。すなわち、棒状の各電極10a~10dは、それらの上端を後方配置、それらの下端を前方配置して、斜めに傾けて配置される。
【0028】
先述のように、スクレーパ4が最も後退した際、スクレーパ4の上板4aの後端が貯留水の水面よりも上方に出て当該後端よりも後進方向側の貯留水を一時的にせき止めてしまう可能性がある。しかし、各電極10a~10dの下端は前方配置されるので、水位計10の計測する水位は、冷却槽2の大部分における水位と同様になる。すなわち、水位計10による適切な水位の計測が可能となる。
また、水位計10の基部10eと注水管11がいずれも後方配置されるので、これらが歩廊の近くに配置されることになる。従って、作業者にとってメンテナンスしやすいという点でも優れる。
【0029】
また、先述のように、注水管11の広角ノズル11aから水を噴射させる際、噴射される水の過半はスクレーパ最後端位置よりも後進の方向に落下し、残りの水の少なくとも一部がこれら斜めに配置された各電極10a~10dに当たるよう、広角ノズル11aが配置される。従って、広角ノズル11aは、注水管11から傾けて配置されるのが望ましい。
このように、水位計10の棒状センサ部である各電極10a~10dは、注水管11による注水の際、広角ノズル11aから噴射される水で自動洗浄される。従って、当該自動洗浄により、灰押出装置1の稼働中における水位計10の誤動作が防止され、また、水位計10による正確な水位の計測または検知が可能となる。
なお、図2においては、鉛直方向に配置された注水管11に対して、噴射方向が-X軸方向(前進方向Df)の斜め下方になるよう、広角ノズル11aが配置されている。各電極10a~10dに当たった水は、それぞれの電極を下方に伝って、それら電極の下端まで洗浄し、スクレーパ最後端位置よりも-X軸方向(前進方向Df)の貯留水に落下する。
【0030】
電気的に絶縁性のセパレータ18は、各電極10a~10dの太さやXZ平面上の位置に対応してそれぞれ設けられた開孔を備える。そして、絶縁性のセパレータ18の各開孔に、各電極10a~10dをそれぞれ挿通することで、各電極10a~10dが互いに接触することを防止する。セパレータ18は、注水管11の広角ノズル11aから噴射された水が当たらない程度、上方に配置される。
なお、セパレータ18によって互いに接触しないように固定される各電極10a~10dは、広角ノズル11aが噴射する水が当たりやすいように、それぞれのY軸方向の位置が重ならないように、それぞれやや異ならせて配置される。
また、図示しないが、斜めに傾けて配置された棒状の各電極10a~10dがたわまないように、例えば、天井板12aに一端が固定されたL字状の絶縁性支持部材により、セパレータ18の上方でこれら電極を支えるとよい。
【0031】
各電極10a~10dのうち、第一電極10a、第二電極10b、第三電極10cは、検知用電極である。第一電極10aは、その下端が所定水位の高さに配置されている。第二電極10bは、その下端が所定水位よりも下方の高さに配置されている。第三電極10cは、その下端が所定水位よりも上方の高さに配置されている。そして、共通電極10dは、その下端が第二電極10bの下端よりも下方に配置されている。
灰押出装置1の冷却槽2に貯留された水(貯留水)は、導電体である。従って、水位計10は、共通電極10dが、第一電極10a、第二電極10b、第三電極10cのいずれとも通電しない場合に、貯留水の水位は、第二電極10bの下端よりも下方であると判定し、計測データ(検知結果)を生成する。
水位計10は、共通電極10dが、第二電極10bのみと通電する場合、貯留水の水位は、第二電極10bの下端以上かつ第一電極10aの下端未満であると判定し、計測データを生成する。
水位計10は、共通電極10dが、第二電極10bと第一電極10aの2つのみと通電する場合、貯留水の水位は、第一電極10aの下端(所定水位)以上かつ第三電極10cの下端未満であると判定し、計測データを生成する。
水位計10は、共通電極10dが、第二電極10bと第一電極10aと第三電極10cの全てと通電する場合、貯留水の水位は、第三電極10cの下端以上であると判定し、計測データを生成する。
【0032】
なお、ここでは、複数本の棒状のセンサとして四本の電極を備える例を挙げたが、設計に応じて、センサの数は三本以下であっても五本以上であってもよい。
また、共通電極と検知用電極との通電による検知方式に替えて、例えば静電容量で検知する方式やパルス波の反射で検知する方式を採用した場合には、一本の棒状センサのみで異なる水位を計測可能な水位計10を構成することもできる。すなわち、水位計10の棒状センサは、複数の場合も単数の場合もありうる。
【0033】
ところで、先述のように、スクレーパ4が最も後退した際、スクレーパ4の上板4aの後端4eおよびその近傍の一部が貯留水の水面よりも上方に出る場合がありうる。図2で斜めに傾けて配置した水位計10の各電極10a~10dは、XZ平面で、スクレーパ最後端位置における鉛直方向(Z軸)を横切るため、当該上方に出た上板4aの一部に接触しないよう精密に設計する必要がある。
そこで、図3のように、水位計10の全体を、スクレーパ最後端位置の近傍、例えば、スクレーパ最後端位置から-X軸方向(前進方向Df)に約10cm~50cm程度の距離に前方配置して、費用が高くなりうる精密な設計を回避することもできる。
【0034】
図3は、図2の水位計10の設置状態の変形例である。図3は、図2に示した構成と比べ、フランジ付き傾斜管19がなく、水位計10の全体がスクレーパ最後端位置の近傍に前方配置され、鉛直方向に固定されている点のみ異なり、他は同一である。従って、当該同一である構成についての説明は省略する。
図3の水位計10では、基部10eが備えるフランジが、天井板12aに、ボルトおよびナットで固定される。このため、棒状センサ部である棒状の各電極10a~10dは、それぞれの長さ方向が鉛直方向になるよう配置される。
この構成であっても、注水管11の広角ノズル11aから水を噴射させる際、噴射される水の過半をスクレーパ最後端位置よりも後進の方向に落下させ、残りの水の少なくとも一部を、前方配置された各電極10a~10dに当てて、これら電極を自動洗浄することができる。
【0035】
以上のとおり、灰押出装置1は、図1乃至図3に示す簡単な構成で、駆動室12内の焼却灰の排出を促進し、水位計10を自動洗浄して適切かつ正確な水位の計測を可能にする。
灰押出装置1において、注水管11は可能な限り後方配置するのが望ましいが、本発明の本旨に反しない限り、広角ノズル11aの噴射の圧力や噴射の角度によって、適宜、X軸方向に調整可能である。また、水位計10の棒状センサ部の前方配置された下端は、可能な限りスクレーパ最後端位置の近傍に配置されるのが望ましいが、同様に、本発明の本旨に反しない限り、広角ノズル11aの噴射の圧力や噴射の角度によって、適宜、X軸方向に調整可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 灰押出装置
2 冷却槽
3 搬送装置
4 スクレーパ
4a 上板
4b 押出板
4c 側板
4d 先端
4e 後端
5 駆動装置
5a 駆動軸
5b アーム
6 導入口
7 排出口
8 底板
8a 第一傾斜面
8b 第二傾斜面
9 壁面
10 水位計
10a~10d 棒状センサ部(検知用電極、共通電極)
10e 基部
11 注水管
11a 広角ノズル
12 駆動室
12a 天井板
13 制御装置
14 排水管
15 電磁バルブ
16 空間
17 ガス配管
17a ガス配管の一端
17b ガス配管の他端
17c ガス噴出口
17d コンプレッサ
17e ガス用電磁バルブ
18 セパレータ
19 フランジ付き傾斜管
Df 前進方向
Dr 後進方向
【要約】
【課題】駆動室内の焼却灰の排出を促進し、水位計を自動洗浄して適切かつ正確な水位の計測を可能にする。
【解決手段】焼却灰の導入口6及び排出口7を備えた冷却槽2と、冷却槽2内の焼却灰を押し出すスクレーパ4と、スクレーパ4を駆動する駆動装置5とを有し、貯留水が所定水位で貯えられ、駆動装置5がスクレーパ4を底板8に沿って往復動作させる灰押出装置であって、スクレーパ最後端位置よりも後方へ配置された注水管11と、少なくとも一部がスクレーパ最後端位置よりも前方に配置された棒状の水位計10とを有し、注水管11は先端に広角ノズル11aを備え、水位計10が貯留水の低下を検知したら、広角ノズルから冷却槽2へ水が噴射され、当該噴射された水の過半はスクレーパ最後端位置の後方に落下し、スクレーパ最後端位置よりも前方に落下する水の少なくとも一部で水位計10が洗浄される。
【選択図】図1
図1
図2
図3