IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧

特許7391272エスカレーターの移動手摺用案内レールの芯金保持治具
<>
  • 特許-エスカレーターの移動手摺用案内レールの芯金保持治具 図1
  • 特許-エスカレーターの移動手摺用案内レールの芯金保持治具 図2
  • 特許-エスカレーターの移動手摺用案内レールの芯金保持治具 図3
  • 特許-エスカレーターの移動手摺用案内レールの芯金保持治具 図4
  • 特許-エスカレーターの移動手摺用案内レールの芯金保持治具 図5
  • 特許-エスカレーターの移動手摺用案内レールの芯金保持治具 図6
  • 特許-エスカレーターの移動手摺用案内レールの芯金保持治具 図7
  • 特許-エスカレーターの移動手摺用案内レールの芯金保持治具 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】エスカレーターの移動手摺用案内レールの芯金保持治具
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/02 20060101AFI20231127BHJP
   B66B 23/14 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
B66B31/02 Z
B66B23/14 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023523900
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2021020373
(87)【国際公開番号】W WO2022249440
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河村 琢哉
(72)【発明者】
【氏名】中村 知至
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-117342(JP,A)
【文献】特開2010-120132(JP,A)
【文献】特開2017-222469(JP,A)
【文献】特開平07-252078(JP,A)
【文献】特開2019-055872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
B25B 7/00- 7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレーターの移動手摺の案内レールを取り替える際に、前記案内レールに形成された溝に挿入された芯金の前記案内レール内での位置決めを行う芯金保持治具であって、
先端側が閉じるように付勢されて前記案内レールを挟むことによって前記案内レールに固定される一対のレバーと、
一方の前記レバーの先端部に設けられ、前記溝に挿入され、前記芯金を前記溝内において保持する保持片と、
を備える、
芯金保持治具。
【請求項2】
請求項1記載の芯金保持治具であって、
前記案内レールの前記溝内で前記保持片を前記芯金に接触した位置で前記案内レールに挟み固定したときに、
前記保持片の前記レバーからの露出長さは、前記レバーが前記案内レールを基板トラスに固定するための取付アングルに接触しない長さを有する、
芯金保持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレーターの移動手摺の案内レールを取り替える際に、案内レールに沿って形成された溝に挿入された芯金の案内レール内での滑落を防ぐ芯金保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレーターは、上階と下階との間を循環する階段状の踏板と、踏板の両側に設けられる欄干と、欄干の上部に設けられると共に踏板と連動して移動する移動手摺とを有する。移動手摺は、案内レールによって案内される。帰路側の案内レールは、傾斜した状態でエスカレーターの基板トラスに固定されている。
【0003】
案内レールには、案内レールに沿って溝が形成され、溝には案内レールの延長方向に自由に位置を選択可能な複数の芯金が挿入され、芯金には取付アングルを介して案内レールを基板トラスにねじ締め固定するためのナットを形成している。
【0004】
基板トラスには、案内レールを固定するための取付アングルが設けられ、案内レールは、ボルトによって芯金が取付アングルに締結されることによって基板トラスに固定される(例えば、特許文献1)。
【0005】
案内レールが摩耗等により劣化した場合には、新しい案内レールと取り替える必要がある。案内レールを取り替える際には、芯金からボルトを取り外して取付アングルから案内レールを取り外す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-169058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した案内レールの取替作業において、案内レールを取り外す際に、芯金からボルトを取り外すと、芯金が溝に沿って下方に滑り落ちてしまう。また、案内レールを取り付ける際には、芯金を案内レールの中で取付アングルに対応する位置にしっかりと保持する必要がある。
【0008】
しかし、案内レールが傾斜しているため、芯金を案内レールの中で所定位置に保持することが困難である。このように案内レールの取替作業では、傾斜した案内レールの溝の中で芯金を保持するものがないために作業性が悪かった。
【0009】
本発明の目的は、移動手摺の案内レールを取り替える際に、傾斜した案内レールからの滑落を防ぎ、また案内レールの溝の所望の位置に芯金を保持することができる芯金保持治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る芯金保持治具は、エスカレーターの移動手摺の案内レールを取り替える際に、案内レールに形成された溝に挿入された芯金の案内レール内での位置決めを行う保持治具であって、先端側が閉じるように付勢されて前記案内レールに挟み固定される一対のレバーと、一方のレバーの先端部に設けられ、溝に挿入される保持片と、を備える。
【0011】
本発明に係る芯金保持治具において、案内レールの溝内で保持片を芯金に接触した位置で案内レールに挟み固定したときに、保持片の露出長さは、レバーが案内レールを基板トラスに固定するための取付アングルに接触しない長さを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る芯金保持治具によれば、移動手摺の案内レールを取り替える際に、傾斜した案内レールの溝において芯金を固定位置に保持することができる。これにより、移動手摺の案内レールを取り替える際の芯金の滑落を防ぎ、また案内レールの溝の所望の位置に芯金を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るエスカレーターを示す模式図である。
図2】エスカレーターの帰路側の案内レールを示す模式図である。
図3】帰路側の個別案内レールの取付アングルとの固定構造を示す模式図である。
図4】帰路側の個別案内レールの連結構造を示す模式図である。
図5】実施形態の一例である保持治具を示す案内レールの伸張方向から見た正面図である。
図6】実施形態の一例である保持治具を示す側面図である。
図7】実施形態の一例である保持治具の使用例を説明する正面図である。
図8】実施形態の一例である保持治具の使用例を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0015】
図1及び図2を用いて、実施形態に係るエスカレーター80について説明する。
【0016】
エスカレーター80は、上階と下階との間を循環する複数の踏板81と、踏板81の両側に設けられる欄干82と、欄干82の上部に設けられると共に踏板81と連動して移動する移動手摺83とを備える。
【0017】
踏板81は、無端状の踏板チェーン85に取り付けられている。踏板チェーン85は、上下のスプロケット86、87に掛け渡されており、図示しない駆動装置によりスプロケット86が回転駆動される。これにより、踏板チェーン85は、各スプロケット86、87の間で動き、踏板チェーン85により連結された複数の踏板81が上階側の乗降口88と下階側の乗降口89との間を循環する。
【0018】
移動手摺83は、欄干82に設けられた後述する案内レール90に移動可能に案内されている。移動手摺83は、図示しない手摺駆動ユニットによって踏板81の移動と連動するように駆動される。以下では、図2を用いて、帰路側の案内レール90について詳細に説明する。
【0019】
図2に示すように、帰路側の案内レール90は、傾斜して配置されると共に互いに連結して構成される複数の個別案内レール91と、連結された個別案内レール91の両端部にそれぞれ接続される可撓性案内レール92とから構成される。
【0020】
個別案内レール91は、鋼製であって直線状に構成され、後述する芯金93によってエスカレーター80の基板トラスに設けられる取付アングル95に固定される。また、帰路側の案内レール90では、複数の個別案内レール91が後述する連結用芯金94(図4参照)によって連結されている。
【0021】
可撓性案内レール92は、樹脂製であって湾曲状に構成される。案内レール90は、可撓性案内レール92の取付位置を調整することによって全長が調整される。
【0022】
図3及び図4を用いて、帰路側の案内レール90の固定構造及び連結構造について説明する。図3は、個別案内レール91を芯金93を用いて取付アングル95に固定する構造を示す斜視図である。図4は、個別案内レール91と連結用芯金94との関係を示す斜視図である。
【0023】
個別案内レール91は、上述したように、芯金93によって取付アングル95に固定されると共に張り出しガイド97により移動手摺83を案内する。個別案内レール91は、芯金93が挿入される溝96と、移動手摺83が係合する張り出しガイド97とを有する。芯金93は、短尺矩型状に形成され、上部に溝96から覗くボルト穴93Aが設けられたナットである。L型の取付アングル95は、縦壁95Aがエスカレーター80の基板トラスに固定されている。
【0024】
個別案内レール91を取付アングル95に固定する際には、溝96に挿入された芯金93をボルト98によって取付アングル95の横壁95Bに締結する。
【0025】
案内レール90は、複数の個別案内レール91を連結して長尺構成とされている(図2参照)。以下では、図4を用いて、帰路側の案内レール90の連結構成について説明する。
【0026】
個別案内レール91は、上述したように、連結用芯金94によって長手方向に沿って連結される。連結用芯金94は、芯金93よりも長い長尺矩型状に形成され、上部に溝96から覗くボルト穴94Aが複数(本例では4つ)形成される。隣接配置された個別案内レール91を連結する際には、溝96に挿入された連結用芯金94の両端をボルト98によってそれぞれの個別案内レール91に締結する。
【0027】
ところで、個別案内レール91が摩耗等により劣化した場合には、新しい個別案内レール91と取り替える必要がある。個別案内レール91を取り替える際には、芯金93からボルト98を取り外し、取付アングル95から個別案内レール91を取り外す必要がある。同時に、連結用芯金94からボルト98を取り外し、個別案内レール91同士の連結を取り外す必要がある。このとき、後述する保持治具10によって、個別案内レール91から芯金93又は連結用芯金94が外れて落下しないように保持することができる。
【0028】
図5及び図6を用いて、保持治具10について説明する。
【0029】
保持治具10は、移動手摺83の帰路側の個別案内レール91を取り替える際に、個別案内レール91に沿って形成された溝96に挿入された芯金93又は連結用芯金94を個別案内レール91の溝96内に保持する治具である。保持治具10によれば、芯金93又は連結用芯金94を傾斜した個別案内レール91の溝96中に保持することによって個別案内レール91の取替作業性を向上させることができる。
【0030】
保持治具10は、先端側が閉じるように付勢された一対のレバー11(一方のレバー11A、及び他方のレバー11B)と、一方のレバー11Aの先端部に設けられると共に個別案内レール91の溝96に挿入される保持片12と、一対のレバー11の基端部に設けられるつまみ部13と、一対のレバー11の間に設けられると共に一対のレバー11の先端側が閉じるように付勢するバネ14とを備える。
【0031】
図7に示されるように、一対のレバー11は、個別案内レール91の一方の側壁部91Aを挟持して、個別案内レール91に固定される。これにより、保持治具10が個別案内レール91の任意位置で固定保持される。一対のレバー11は、長尺状の一方のレバー11Aと他方のレバー11Bが略平行に設けられ、中央部の回動軸11Cにおいて互いに回動自在に支持されている。
【0032】
一方のレバー11Aの先端側は、外側に拡がるように屈折して形成されている。これにより、一対のレバー11の先端側が閉じた状態であっても、保持片12を一対のレバー11の間に配置できるように、一対のレバー11の先端側が所定幅だけ開口した状態となる。
【0033】
保持片12は、個別案内レール91の溝96に挿入され、芯金93又は連結用芯金94を溝96内に保持して芯金93又は連結用芯金94の落下を防止する。保持片12は、一方のレバー11Aの先端部の内側に固定され、個別案内レール91の溝96の傾斜下側で個別案内レール91の長手方向に延出して位置決めされる。
【0034】
図6に示すように、保持片12のレバー11Aから露出する長手方向の長さL1は、長さl1に芯金93の全長の半分L2を加えた長さが上述した取付アングル95の長手方向の長さの1/2(L3)以上であることが好ましい。これにより、保持治具10によって芯金93を保持する際に保持治具10が取付アングル95に干渉することはない。
【0035】
換言すれば、保持治具10は、個別案内レール91の溝96内で保持片12を芯金93に接触した位置で保持治具10を個別案内レール91に挟み固定したときに、保持片12の露出長さは、一対のレバー11が個別案内レール91を基板トラスに固定するための取付アングル95に接触しない長さを有する。
【0036】
保持片12は、緩衝ゴムで構成されることが好ましい。これにより、個別案内レール91の溝96において保持片12に芯金93又は連結用芯金94が落下した場合でも、芯金93又は連結用芯金94を落下の衝撃から保護することができる。
【0037】
つまみ部13は、保持治具10の先端側を開く際に作業者が指でつまむ部分であって、樹脂製であることが好ましい。バネ14は、上述したように、一対のレバー11の基端側において一対のレバー11の間に設けられ、一対のレバー11の先端側が閉じるように付勢する。本例では、バネ14は、ねじりバネが好適に用いられ、一対のレバー11の基端側が開かれるように付勢する。
【0038】
図7及び図8を用いて、保持治具10を用いた個別案内レール91の取替作業について説明する。図7は、保持治具10によって芯金93を個別案内レール91の溝96内に保持した状態を示す正面図である。図8は、保持治具10によって芯金93を保持した状態を示す側面図である。
【0039】
上述したように、個別案内レール91を取り外す際には、芯金93からボルト98を取り外し、取付アングル95から個別案内レール91を取り外す。まず、芯金93からボルト98を取り外す前に、保持治具10によってそれぞれの芯金93を現在の取付位置で保持する。
【0040】
このとき、個別案内レール91の溝96に保持治具10の保持片12を芯金93の傾斜方向下側から差し込み、保持片12の先端部を芯金93の傾斜方向下端側に当接させて、一対のレバー11によって個別案内レール91の一方の側壁部91Aを挟持する。
【0041】
そして、保持治具10によって芯金93を保持した状態で、芯金93からボルト98を取り外し、取付アングル95から個別案内レール91を取り外す。
【0042】
なお、保持片12を芯金93に当接させることなく、芯金93の傾斜方向下端の任意位置において、保持治具10を個別案内レール91に挟持固定してもよい。これにより、芯金93からボルト98を取り外したときに、芯金93が溝96を落下して保持治具10の保持片12の先端部に受け止められる。
【0043】
一方、新しい個別案内レール91を取り付ける際には、芯金93にボルト98を締結し、取付アングル95に個別案内レール91を取り付ける。まず、個別案内レール91の取付アングル95に対応するそれぞれの位置に保持治具10によってそれぞれの芯金93を保持する。
【0044】
このとき、個別案内レール91の溝96に保持治具10の保持片12を差し込み、保持片12の先端部を芯金93に当接させて、芯金93が取付アングル95と正確に位置決めされた位置で一対のレバー11によって個別案内レール91の一方の側壁部91Aを挟持する。
【0045】
そして、保持治具10によって芯金93を保持した状態で、芯金93にボルト98を締結し、保持治具10を個別案内レール91から取り外し、取付アングル95に個別案内レール91を取り付ける。
【0046】
上述した個別案内レール91の取替作業では、保持治具10によって芯金93を保持する例について説明したが、保持治具10によって連結用芯金94を保持する場合も同様である。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 保持治具、11 一対のレバー、11A 一方のレバー、11B 他方のレバー、11C 回動軸、12 保持片、13 つまみ部、14 バネ、80 エスカレーター、81 踏板、82 欄干、83 移動手摺、85 踏板チェーン、86 スプロケット、87 スプロケット、88 乗降口、89 乗降口、90 案内レール、91 個別案内レール、92 可撓性案内レール、93 芯金、94 連結用芯金、95 取付アングル、96 溝、97 張り出しガイド、98 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8