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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】浴槽洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A47K3/00 Q
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019193529
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021065460
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】関 大輝
(72)【発明者】
【氏名】原島 立成
(72)【発明者】
【氏名】大江 俊春
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】中島 平裕
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-042481(JP,A)
【文献】特開2012-170614(JP,A)
【文献】特開2004-350783(JP,A)
【文献】実開平04-049049(JP,U)
【文献】特開2016-174904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
B05B 1/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽を洗剤水で自動的に洗浄する浴槽洗浄装置であって、
洗剤を貯留する洗剤タンクと、
この洗剤タンクから供給される洗剤と給水源から供給される湯又は水とを混合して洗剤水を生成する洗剤混合部と、
浴槽の底面に設けられ、洗剤水を浴槽の内側壁面に向けて噴射する噴射口を備えたノズル本体と、
このノズル本体を回転させる回転駆動部と、
上記噴射口からの洗剤水の噴射を制御する洗剤水噴射制御部と、
これらの回転駆動部及び洗剤水噴射制御部を制御する制御部と、を有し、
上記浴槽の内側壁面は、その上端から上記ノズル本体までの距離が最も短い点を含む第1領域と、その上端から上記ノズル本体までの距離が最も長い点を含む第2領域と、を備え、
上記制御部は、上記ノズル本体から上記第1領域に向けて噴射される洗剤水の流量が上記第2領域に向けて噴射される洗剤水の流量よりも大きくなるように、上記洗剤水噴射制御部を制御することを特徴とする浴槽洗浄装置。
【請求項2】
浴槽を洗剤水で自動的に洗浄する浴槽洗浄装置であって、
洗剤を貯留する洗剤タンクと、
この洗剤タンクから供給される洗剤と給水源から供給される湯又は水とを混合して洗剤水を生成する洗剤混合部と、
浴槽の底面に設けられ、洗剤水を浴槽の内側壁面に向けて噴射する噴射口を備えたノズル本体と、
このノズル本体を回転させる回転駆動部と、
上記噴射口からの洗剤水の噴射を制御する洗剤水噴射制御部と、
これらの回転駆動部及び洗剤水噴射制御部を制御する制御部と、を有し、
上記浴槽は、平面視で長辺と短辺を持つ長方形であり、この浴槽の内側壁面は、その両端部を含む長辺に沿った第1領域と、その両端部を除く短辺に沿った第2領域を備え、
上記制御部は、上記ノズル本体から上記第1領域に向けて噴射される洗剤水の流量が上記第2領域に向けて噴射される洗剤水の流量よりも大きくなるように、上記洗剤水噴射制御部を制御することを特徴とする浴槽洗浄装置。
【請求項3】
上記ノズル本体は、洗剤水を上記噴射口から水平方向よりも上下方向に広がるように噴射する、請求項1又は2に記載の浴槽洗浄装置。
【請求項4】
上記ノズル本体は、上記噴射口から噴射される洗剤水の上部側の密度が下部側の密度よりも高くなるように、洗剤水を噴射する、請求項3に記載の浴槽洗浄装置。
【請求項5】
上記ノズル本体は、上記噴射口の上部側の開口面積が上記噴射口の下部側の開口面積よりも広くなるように形成されている、請求項4に記載の浴槽洗浄装置。
【請求項6】
上記制御部は、上記ノズル本体から第2領域に向けて洗剤水を噴射するときの回転速度が上記第1領域に向けて洗剤水を噴射するときの回転速度よりも遅くなるように、上記回転駆動部を制御する、請求項1乃至5の何れか1項に記載の浴槽洗浄装置。
【請求項7】
上記制御部は、上記第2領域に複数回にわたり洗剤水を散布するように上記回転駆動部及び上記洗剤水噴射制御部を制御し、更に、上記第2領域に向けて1回目に洗剤水を散布するときのノズル本体の回転速度よりも2回目以降のいずれか1回に洗剤水を散布するときのノズル本体の回転速度の方が遅くなるように、上記回転駆動部を制御する、請求項1乃至6の何れか1項に記載の浴槽洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽洗浄装置に係り、特に、浴槽を洗剤水で自動的に洗浄する浴槽洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から洗剤水をノズルから噴射して浴槽を自動で洗浄する浴槽洗浄装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された浴槽洗浄装置においては、浴槽の底面に複数のノズルを設け、洗浄時にはこれらの洗浄ノズルを底面から突出させて回転させながら洗浄ノズルから浴槽の内側壁面に向けて洗剤水を噴射させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-49589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の浴槽洗浄装置においては、複数のノズルを回転させながら複数のノズルから一律に洗剤水を噴射しているので、ノズルと浴槽の内側壁面との距離は考慮されていない。
【0005】
ノズルから噴射される洗剤水は、ノズルから離れるほど広がり易く、また、上述した従来の浴槽洗浄装置では、ノズルから同じ流量で洗剤水を散布し、且つ、ノズルと浴槽の内側壁面との距離に応じてノズルの噴射口の上下方向に対する角度を変えるものではないので、浴槽の内側壁面のうちノズルからの距離が遠い内側壁面に向けて上部側から下部側まで全体的に洗剤水を散布しようとすると、ノズルからの距離が近い内側壁面の上部側には洗剤水が散布されず、ノズルからの距離が近い内側壁面の上部側が洗浄できないという問題がある。
【0006】
一方、ノズルからの距離が近い内側壁面において上部側から下部側まで全体的に洗剤水を散布するために流量を多くすると、流量が多くなるので流速も高まり、洗剤水が広がりやすく、洗剤水の噴射距離も長くなるが、その洗剤水が非常に小さな粒状の形態(ミスト状)になるので、同じ流量でノズルから洗剤水を散布しても、ノズルからの距離が遠い内側壁面に洗剤水が到達できないという問題がある。
【0007】
また、仮に必要な流量が多すぎない場合であっても、ノズルからの距離が近い内側壁面において上部側から下部側まで全体的に洗剤水を散布しようとすると、ノズルからの距離が遠い内側壁面において上部側から下部側まで全体的に洗剤水を散布することができるが、浴槽の上方(浴槽の蓋がある場合は、浴槽の蓋)にまで洗剤水が散布されてしまい、限られた量の洗剤水の一部を無駄に使ってしまうという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためなされたものであり、限られた洗剤水を効率よく浴槽の内側壁面全体に散布することができる浴槽洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、浴槽を洗剤水で自動的に洗浄する浴槽洗浄装置であって、洗剤を貯留する洗剤タンクと、この洗剤タンクから供給される洗剤と給水源から供給される湯又は水とを混合して洗剤水を生成する洗剤混合部と、浴槽の底面に設けられ、洗剤水を浴槽の内側壁面に向けて噴射する噴射口を備えたノズル本体と、このノズル本体を回転させる回転駆動部と、噴射口からの洗剤水の噴射を制御する洗剤水噴射制御部と、これらの回転駆動部及び洗剤水噴射制御部を制御する制御部と、を有し、浴槽の内側壁面は、その上端からノズル本体までの距離が最も短い点を含む第1領域と、その上端からノズル本体までの距離が最も長い点を含む第2領域と、を備え、制御部は、ノズル本体から第1領域に向けて噴射される洗剤水の流量が第2領域に向けて噴射される洗剤水の流量よりも大きくなるように、洗剤水噴射制御部を制御することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、制御部は、ノズル本体からノズル本体からの距離が比較的近い第1領域に向けて噴射される洗剤水の流量がノズル本体からの距離が比較的遠い第2領域に向けて噴射される洗剤水の流量よりも大きくなるように、洗剤水噴射制御部を制御するので、ノズル本体からの距離が異なる浴槽の内側壁面の両方の領域に洗剤水を確実に散布させることができる。この結果、本発明によれば、限られた洗剤水を効率良く浴槽の内側壁面全体に付着させて洗浄することができる。
【0010】
次に、本発明は、浴槽を洗剤水で自動的に洗浄する浴槽洗浄装置であって、洗剤を貯留する洗剤タンクと、この洗剤タンクから供給される洗剤と給水源から供給される湯又は水とを混合して洗剤水を生成する洗剤混合部と、浴槽の底面に設けられ、洗剤水を浴槽の内側壁面に向けて噴射する噴射口を備えたノズル本体と、このノズル本体を回転させる回転駆動部と、噴射口からの洗剤水の噴射を制御する洗剤水噴射制御部と、これらの回転駆動部及び洗剤水噴射制御部を制御する制御部と、を有し、浴槽は、平面視で長辺と短辺を持つ長方形であり、この浴槽の内側壁面は、その両端部を含む長辺に沿った第1領域と、その両端部を除く短辺に沿った第2領域を備え、制御部は、ノズル本体から第1領域に向けて噴射される洗剤水の流量が第2領域に向けて噴射される洗剤水の流量よりも大きくなるように、洗剤水噴射制御部を制御することを特徴としている。 このように構成された本発明によれば、限られた洗剤水を効率良く浴槽の内側壁面全体に付着させて洗浄することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、ノズル本体が、洗剤水を噴射口から水平方向よりも上下方向に広がるように噴射する。
このように構成された本発明においては、ノズル本体が洗剤水を噴射口から水平方向よりも上下方向に広がるように噴射するため、浴槽の内側壁面の広い範囲に洗剤水を散布することができ、それにより、内側壁面の広い範囲に確実に洗剤水を付着させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、ノズル本体が、噴射口から噴射される洗剤水の上部側の密度が下部側の密度よりも高くなるように、洗剤水を噴射する。
このように構成された本発明においては、ノズル本体が、噴射口から噴射される洗剤水の上部側の密度が下部側の密度よりも高くなるように、洗剤水を噴射するので、ノズル本体から噴射された洗剤水の多くが汚れやすい内側壁面の上部側に散布される(喫水面付近が最も汚れやすい)。そのため、散布する洗剤水の量を増やすことなく汚れやすい領域を効果的に洗浄することができる。また、本発明によれば、内側壁面の上部に散布された洗剤水が内側壁面の下部を通って浴槽外に排出されるので、結果的に内側壁面に接触する洗剤水の量を増やすことができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、ノズル本体は、噴射口の上部側の開口面積が噴射口の下部側の開口面積よりも広くなるように形成されている。
このように構成された本発明においては、ノズル本体の噴射口の上部側の開口面積が噴射口の下部側の開口面積よりも広くなるように形成されているので、ノズル本体の噴射口から噴射される上部側の洗剤水の密度が下部側の洗剤水の密度よりも高くすることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、制御部は、ノズル本体から第2領域に向けて洗剤水を噴射するときの回転速度が第1領域に向けて洗剤水を噴射するときの回転速度よりも遅くなるように、回転駆動部を制御する。
上述したように、第2領域に向けて噴射される洗剤水の流量が第1領域に向けて噴射される洗剤水の流量よりも小さい。一方、浴槽の内側壁面に散布された洗剤水は、内側壁面に沿って自重により下方に流れ、これにより、ノズル本体から噴射された洗剤水が直接かからない部分にも洗剤水が付着する。しかし、洗剤水は、内側壁面に散布された洗剤水の液滴をつなぐようなルートで下方に流れるため、散布させる洗剤水の流量が少ない第2領域では、第1領域に比べて洗剤水が下方に流れた後にも洗剤水が付着しない部分が生じ易い。そこで、本発明においては、制御部が、ノズル本体から第2領域に向けて洗剤水を噴射するときの回転速度が第1領域に向けて洗剤水を噴射するときの回転速度よりも遅くなるように、回転駆動部を制御するようにしたので、第2領域において洗剤水が付着しない領域を少なくすることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、制御部は、第2領域に複数回にわたり洗剤水を散布するように回転駆動部及び噴射制御手段を制御し、更に、第2領域に向けて1回目に洗剤水を散布するときのノズル本体の回転速度よりも2回目以降のいずれか1回に洗剤水を散布するときのノズル本体の回転速度の方が遅くなるように、回転駆動部を制御する。
上述したように、第2領域に向けて噴射される洗剤水の流量が第1領域に向けて噴射される洗剤水の流量よりも小さい。一方、浴槽の内側壁面に散布された洗剤水は、内側壁面に沿って自重により下方に流れ、これにより、ノズル本体から噴射された洗剤水が直接かからない部分にも洗剤水が付着する。しかし、洗剤水は、内側壁面に散布された洗剤水の液滴をつなぐようなルートで下方に流れるため、散布させる洗剤水の流量が少ない第2領域では、第1領域に比べて洗剤水が下方に流れた後にも洗剤水が付着しない部分が生じ易い。そこで、本発明においては、第2領域に向けて1回目に洗剤水を散布するときのノズル本体の回転速度よりも2回目以降のいずれか1回に洗剤水を散布するときのノズル本体の回転速度の方が遅くなるように、回転駆動部を制御するようにしたので、1回目に洗剤水が付着しない部分が生じたとしても、2回目以降のいずれか1回の洗剤水の散布により洗剤水が付着する部分を広くすることができ、その結果、洗剤水が付着しない領域を少なくすることができる。よって、本発明によれば、ノズル本体までの距離が比較的遠い第2領域に洗剤水を到達させることを可能にしながら、洗剤水の無駄な消費を抑えて第2領域に洗剤水を散布することを可能にしつつ、洗剤水の付着しない領域を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の浴槽洗浄装置によれば、限られた洗剤水を効率よく浴槽の内側壁面全体に散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態による浴槽洗浄装置及びこの浴槽洗浄装置が適用される浴槽を示す全体構成図である。
図2】本実施形態による浴槽洗浄装置のノズルユニットが浴槽の底面に取り付けられた状態を示す上方から見た平面図である。
図3図2のIII-III線に沿って見た浴槽洗浄装置のノズルユニットの断面図である。
図4図3の斜視図である。
図5】本実施形態の浴槽洗浄装置のノズルユニットのカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
図6】ノズル本体の噴射口から液体が噴射される様子を示す斜視図である。
図7】ノズル本体から洗剤水が水平方向より上下方向に広がるように噴射される洗剤水の噴射形状の第1例を示す断面図である。
図8】ノズル本体から洗剤水が水平方向より上下方向に広がるように噴射される洗剤水の噴射形状の第2例を示す断面図である。
図9】ノズル本体から洗剤水が水平方向より上下方向に広がるように噴射される洗剤水の噴射形状の第3例を示す断面図である。
図10】ノズル本体から洗剤水が水平方向より上下方向に広がるように噴射される洗剤水の噴射形状の第4例を示す断面図である。
図11】ノズル本体から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための第1例を示す噴射口の断面図である。
図12図11の第1例を示す噴射口の展開図である。
図13】ノズル本体から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための第2例を示す噴射口の断面図である。
図14図13の第2例を示す噴射口の展開図である。
図15】噴射口から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための第3例を示す概略図である。
図16】噴射口から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための第4例を示す概略図である。
図17】噴射口から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための第5例を示す概略図である。
図18】ノズル本体から浴槽の内側壁面までの距離を示す浴槽の平面図である。
図19】ノズル本体から近い内側壁面までの距離を示す浴槽の断面図である。
図20】ノズル本体から遠い内側壁面までの距離を示す浴槽の断面図である。
図21】ノズル本体から噴射される洗剤水の2種類の流量を示す浴槽の部分断面図である。
図22】本実施形態による浴槽洗浄装置が適用される浴槽の平面図である。
図23】本実施形態による浴槽洗浄装置の動作(制御内容)を説明するためのフローチャートである。
図24】本実施形態による浴槽洗浄装置の他の動作(他の制御内容)を説明するためのフローチャートである。
図25】本実施形態による浴槽洗浄装置の他の動作(他の制御内容)を説明するためのフローチャートである。
図26】本発明の他の実施形態による浴槽洗浄装置が適用される浴槽の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施形態による浴槽洗浄装置を説明する。最初に、図1により、本発明の実施形態による浴槽洗浄装置及びこの浴槽洗浄装置が適用される浴槽について説明する。図1は本発明の実施形態による浴槽洗浄装置及びこの浴槽洗浄装置が適用される浴槽を示す全体構成図である。
【0019】
図1に示すように、符号1は、浴槽を示し、この浴槽1は、底面2と内側壁面4を備え、これらの底面2と内側壁面4が後述するように洗剤水により洗浄がなされ、さらに、水によりすすぎがなされるようになっている。また、浴槽1の内側壁面4には、給水口6が設けられ、浴槽1内に湯が給水されるようになっている。浴槽1の底面2には、排水口8が設けられ、湯が外部に排水されるようになっている。
【0020】
次に、浴槽1に後述する洗剤水を供給して浴槽1を自動的に洗浄する浴槽洗浄装置10について説明する。浴槽洗浄装置10は、洗剤水を噴射するためのノズルユニット12を備え、このノズルユニット12は、浴槽1の底面2に取り付けられている。このノズルユニット12は、詳細は後述するが、ノズル本体14、このノズル本体14を支持するためのケーシング16、及び、ノズル本体14を回転させるための電気モータ(ステッピングモータ等)18を備えている。ここで、ノズル本体14は、浴槽1の底面2に対して垂直方向の延びる回転軸を中心にして回転するようになっている。また、図1に示すように、ノズル本体14の回転方向は時計回りである。また、ノズル本体14の噴射口62は、回転時において、噴射口62の上下方向(底面2に対する垂直方向)に対する角度は変わらない。
【0021】
浴槽洗浄装置10は、ノズルユニット12に洗剤水を供給するための3つ流路を備えている。先ず、第1の流路20は、給湯器(図示せず)から湯を供給するための流路であり、この第1の流路20には、上流からフィルター付きの止水栓22、定流量弁24、開閉動作により給水量を制御する給水電磁弁26、温度センサ28、及び、縁切りタンクであり洗剤と湯を混合し洗剤水を生成して貯留する洗剤混合部であるシスターン30が設けられている。このシスターン30内にはフロートスイッチ31が設けられており、このフロートスイッチ31により洗剤水の水位が測定できるようになっている。
【0022】
第2の流路32は、液状の洗剤を供給するための流路であり、この第2の流路32には、上流から洗剤タンク34、洗剤の供給を制御する洗剤電磁弁36、オリフィス38、及び、洗剤の供給量を制御するための洗剤ポンプ40が設けられ、上述したシスターン30に洗剤が供給されるようになっている。
【0023】
ここで、シスターン30には、上述したようにフロートスイッチ31が設けられており、このフロートスイッチ31からの信号により、給水電磁弁26、洗剤電磁弁36、洗剤ポンプ40等が制御され所望の供給量の洗剤水が生成されるようになっている。また、洗浄ポンプ40の回転数や駆動時間、及び、給水電磁弁26の開弁時間等を制御することにより、洗剤水の濃度を変化させ、所望の濃度の洗剤水を得ることができるようになっている。
【0024】
第3の流路42は、シスターン30に貯留された洗剤水を上述したノズルユニット12に供給(給水)するための流路である。この第3の流路42には、上流から洗浄ポンプ44及び逆止弁46が設けられている。この洗浄ポンプ44により、ノズルユニット12に供給される洗剤水の流量、即ち、後述するノズル本体14から噴射される洗剤水の流量が制御(調整)できるようになっている。
【0025】
また、浴槽洗浄装置10は、制御部48を備え、この制御部48により、上述した電気モータ18、洗剤ポンプ40、洗浄ポンプ44等が制御されるようになっている。
なお、上述した例では、第1の流路20に、給湯器から湯を供給しているが、給湯器を使用せず、水(冷水)を供給するようにしてもよい。
また、シスターン30を使用する代りに、ベンチュリ管を使用するようにしてもよい。ベンチュリ管を使用した場合には、洗剤水を生成するが貯留はしない。
なお、シスターン30を使用しない場合には、洗浄ポンプ44の代りに、電磁弁や「ポンプと電磁弁との組合せ」により、洗剤水の流量を制御するようにしてもよい。
【0026】
次に、図2乃至図5により、本実施形態の浴槽洗浄装置10のノズルユニット12の構造について説明する。図2は本実施形態による浴槽洗浄装置のノズルユニットが浴槽の底面に取り付けられた状態を示す上方から見た平面図であり、図3図2のIII-III線に沿って見た浴槽洗浄装置のノズルユニットの断面図であり、図4図3の斜視図であり、図5は本実施形態の浴槽洗浄装置のノズルユニットのカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【0027】
図2乃至図5に示すように、ノズルユニット12は、ノズル本体14と、このノズル本体14を回転可能に収納するケーシング16と、ノズル本体14を回転させるための電気モータ18を備えている。ケーシング16は、外筒50と、この外筒50の内側に取り付けられた中間筒52と、この中間筒52の内側に取り付けられた内筒54を備えている。また、この外筒50の上部にはフランジ50aが設けられている。この外筒50は、パッキン56を介して浴槽1の底面2に取り付けられ固定ナット58により底面2に固定されている。
【0028】
電気モータ18は、中間筒52の下方部分に取り付けられている。この電気モータ18には出力軸18aが取り付けられ、この出力軸18aの先端(上端)には、ノズル本体14が取り付けられている。また、内筒54の下方部分には、ノズル本体14を支持するための筒状の支持部材60が取り付けられている。
【0029】
さらに、中間筒52の下側部分には、電気モータ18の下方及び側方に沿って断面がL字状の流路部材61が取り付けられており、液体(洗剤水や水)が流れる流路61aを形成している。また、支持部材60と中間筒52との間に流路60aが形成され、さらに、ノズル本体14の内部にも流路14aが形成されている。上述した第3の流路42からノズルユニット12に供給された液体(洗剤水や水)は、流路部材61の流路61a、支持部材60と中間筒52との間の流路60a、ノズル本体14の内部の流路14aを通って、ノズル本体14の上部に形成された噴射口62に到達するようになっている。
【0030】
ケーシング16は、さらに、外筒50のフランジ50aの上面、中間筒52の上面、内筒54の上面を覆うカバー64を備えている。このように、ケーシング16は、これらの外筒50、中間筒52、内筒54及びカバー64を備えている。なお、ケーシング16は、好ましくはカバー64を備えているが、カバーは備えなくてもよい。
【0031】
次に、このノズルユニット12の浴槽1の底面2への取り付け方法を説明する。先ず、外筒50を、浴槽1の底面2に形成された取付用開口部68に浴槽1の上方方から挿入し、次に、浴槽1の下方から固定ナット58により浴槽1の底面2に固定する。次に、浴槽1の外部において、中間筒52に出力軸18aを上方から挿入し、電気モータ18及び流路部材61を下方から挿入し、これらの中間筒52、出力軸18a、電気モータ18、流路部材61が一体となるように組み付けておく。次に、浴槽1の外部において、内筒54、ノズル本体14、支持部材60を組み付け、この組付けて一体となった内筒54、ノズル本体14、支持部材60を、上方から上述した中間筒52の内部に挿入する。次に、これらの一体となった中間筒52、出力軸18a、電気モータ18、流路部材61、内筒54、ノズル本体14、支持部材60を、上方から外筒50の内部に底面2の上方から挿入する。この後、カバー64を、外筒50、中間筒52、内筒54のそれぞれの上面に上方から覆うようにして取り付ける。
【0032】
ここで、メンテナンス等のために、カバー64及び外筒50の内部に挿入された各部材(中間筒52、出力軸18a、電気モータ18、流路部材61、内筒54、ノズル本体14、支持部材60)は、浴槽1の底面2の上方から取り出し可能となっている。
【0033】
次に、図5に示すように、ノズル本体14の上面には、中心からずれた位置から中心を通って外周縁まで延びる凹部70が形成されている。この凹部70の一端側の中心からずれた位置には、洗剤水や水を噴射する噴射口62が形成されている。
【0034】
また、内筒54の上方の内周縁部にはドーナツ型の切欠空間74が形成され、ノズル本体14の外周側との間に空間が存在するようになっている。さらに、内筒54、中間筒52、外筒50のフランジ50aの上面側には半径方向に延びる4本の溝76が形成され、これらの溝76と上述した切欠空間74が連通するようになっている。
【0035】
ここで、図3に示すように、ノズル本体14と内筒54との間には、ノズル本体14が回転可能なように、隙間(摺動空間)Gが形成されている。この隙間Gからごみが侵入することを防止するためのごみ侵入防止部材として、この隙間Gを覆う環状パッキン78がノズル本体14の外周に取り付けられている。この環状パッキン78は、その一端が保持端としてノズル本体14により保持され、その他端が内筒54の上面に自由端として接触している。
【0036】
次に、図6乃至図17により、ノズル本体14の噴射口62の断面形状及び洗剤水の噴射形状について説明する。先ず、図6に示すように、ノズル本体14の噴射口62は、細長い形状であり、下方側から上方側に向かって延びるように形成されている。噴射口62から噴射する洗剤水は、水平方向よりも上下方向に広がり、ほぼ扇形形状となる。
【0037】
図7は、洗剤水を水平方向より上下方向に広がるように噴射される洗剤水の噴射形状63の第1例を示す断面図である。この第1例では、噴射口62から噴射された洗剤水が楕円状に広がるようになっている。
図8は、洗剤水を水平方向より上下方向に広がるように噴射される洗剤水の噴射形状63の第2例を示す断面図である。この第2例では、噴射口62から噴射される洗剤水が長方形に広がるようになっている。
【0038】
図9は、洗剤水を水平方向より上下方向に広がるように噴射される洗剤水の噴射形状63の第3例を示す断面図である。この第3例では、噴射口62から噴射される洗剤水がドーナツ状(中央部が空洞)に広がるようになっている。
図10は、洗剤液を水平方向より上下方向に広がるように噴射される洗剤水の噴射形状の第4例を示す断面図である。この第4例では、噴射口62から噴射される洗剤水が三角形(上下非対称で上方が広い)に広がるようになっている。
【0039】
次に、図11乃至図17により、ノズル本体14の噴射口から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための具体例を説明する。
ここで、一例として、ノズル本体14の噴射口から噴射される洗剤水の上部側とは、噴射された洗剤水の上半分をいい、下部側とは、噴射された洗剤水の下半分を言う。
【0040】
図11はノズル本体から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための第1例を示す噴射口の断面図であり、図12図11の第1例を示す噴射口の展開図である。
図11に示す80aは、ノズル本体14の噴射口80のすぐ上流側の中心軸を示している。また、図12に示す80bは、噴射口の展開方向から見た中心軸80aを通り噴射口の幅方向に延びる中央点を示している。 この第1例においては、噴射口80を展開して示すと、噴射口80の上下方向の中央点80aよりも上方側の開口面積S1が中央点80aよりも下方側の開口面積S2より大きくなるように形成されている。これにより、第1例においては、噴射口80から噴射される洗剤水の中央点80aよりも上方側の密度を、中央点80aよりも下方側の密度よりも高くすることができる。なお、この第1例では、最大開口幅80cは、中央点80aよりも上方側に位置する。
【0041】
図13はノズル本体から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための第2例を示す噴射口の断面図であり、図14図13の第2例を示す噴射口の展開図である。
図13に示す81aは、ノズル本体14の噴射口81のすぐ上流側の中心軸を示している。また、図14に示す81bは、噴射口の展開方向から見た中心軸81aを通り噴射口の幅方向に延びる中央点を示している。
この第2例においては、噴射口81を展開して示すと、最大開口幅81cは、中央点81bと同じ位置にあり、さらに、噴射口81の上下方向の中央点81aよりも上方側の開口面積S3が中央点81aよりも下方側の開口面積S4より大きくなるように形成されている。これにより、第2例においては、噴射口81から噴射される洗剤水の中央点81aよりも上方側の密度を、中央点81aよりも下方側の密度よりも高くすることができる。この第2例では、噴射口81の直ぐ上流側のノズル本体14の流路の断面形状が噴射口81に向かって幅方向においては左右対称に狭くし、一方、上下方向においては上下非対称に狭くすることにより、上述した形状の噴射口81を形成している。これにより、最大開口幅81cを中央点よりも上方側に位置させなくても、開口面積S3を開口面積S4よりも大きくすることができる。
【0042】
ここで、図11に示すように、上述した第1例においては、噴射口80の上方側の端部80dは、鉛直方向の最上部とはなっておらず、同様に、図13に示すように、上述した第2例においても、噴射口81の上方側の端部81dは、鉛直方向の最上部とはなっていない。
なお、第1例及び第2例のいずれの場合も、噴射口80,81の上方側の端部80d,81dが鉛直方向の最上部となるようにしてもよい。
【0043】
図15は、噴射口から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための第3例を示す概略図である。この第3例においては、2つの噴射口82a,82bが上下方向に配置され、上方の噴射口82aの噴射流量(噴射密度)が下方の噴射口82bの噴射流量(噴射密度)よりも大きくなるように形成されている。
【0044】
図16は、噴射口から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための第4例を示す概略図である。この第4例においては、2つの噴射口84a,84bが上下方向に配置され、下方の噴射口84bの噴射流量(噴射密度)が上方の噴射口84aの噴射流量(噴射密度)よりも大きく、且つ、下方の噴射口84bの噴射方向が上方の噴射口84aの噴射方向よりも上方に向くように形成されている。噴射口84aと噴射口84bから噴射されたそれぞれの洗剤水を衝突させることにより、噴射口84a,84bから噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くすることができる。
【0045】
図17は、噴射口から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くするための第5例を示す概略図である。この第5例においては、単一の噴射口86が形成され、この噴射口86の上流側の流路の形状により、噴射口86の上流側の流路の速度分布を変えることにより、噴射口86から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度よりも高くしている。この第5例においては、噴射口86の展開断面積を上部側の方が下部側よりも大きくしなくても、噴射口86の上流側の流路の流速分布を変えることにより、噴射口86から噴射される洗剤水の上部側の密度を下部側の密度より高くすることができる。なお、噴射口86の上流側の流路にメッシュや凸部、凹部等を設けることにより、流速分布を変えるようにしてもよい。
【0046】
次に、図18乃至図21により、本実施形態によるノズル本体14の噴射口62から噴射される洗剤水の流量について説明する。
図18はノズル本体14から浴槽1の内側壁面4a,4bまでの距離を示す浴槽1の平面図である。図19はノズル本体14から近い内側壁面4aまでの距離を示す浴槽1の断面図である。図20はノズル本体14から遠い内側壁面4bまでの距離を示す浴槽の断面図である。図21はノズル本体14から噴射される洗剤水の2種類の流量を示す浴槽1の部分断面図である。
【0047】
図18乃至図20に示すように、浴槽1は、平面視で、その開口部の上端が、四隅が比較的大きな円弧形状で形成された長方形であり、浴槽1の底面2のほぼ中心位置にノズルユニット12のノズル本体14が配置されている。浴槽1の内側壁面4は、ノズル本体14と近い内側壁面4aとノズル本体14と遠い内側壁面4bとを有する。ここで、内側壁面4aの上端からノズル本体14までの距離L1が最も短い点X1を含む領域を第1の領域A1とし、内側壁面4bの上端からノズル本体14までの距離L2が最も長い点X2を含む領域を第2の領域A2とする。
【0048】
本実施形態においては、ノズル本体14から第1領域A1に向けて洗剤水を噴射するときの流量が第2領域A2に向けて洗剤水を噴射するときの流量よりも大きくなるようにしている。なお、このノズル本体14からの洗剤水の噴射流量は、制御部48により制御される洗浄ポンプ44の吐出圧により調整されるようになっている。
【0049】
本実施形態においては、このように、ノズル本体14からの距離が比較的近い第1領域A1に向けて洗剤水を噴射するときの流量がノズル本体14からの距離が比較的遠い第2領域A2に向けて洗剤水を噴射するときの流量よりも大きくなるように調整しているので、図21に示すように、ノズル本体14からの距離が異なる浴槽1の内側壁面4a,4bの両方の領域A1,A2に洗剤水を確実に散布させることができる。
【0050】
次に、図22及び図23により、本実施形態による浴槽洗浄装置の動作を説明する。図22は本実施形態による浴槽洗浄装置が適用される浴槽の平面図であり、図23は本実施形態による浴槽洗浄装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0051】
図22に示されているように、浴槽1において、上述した「最も短い点X1」、「最も長い点X2」、「第1領域A1」及び「第2領域A2」が示されている。図23により、この浴槽1を洗剤水を用いて自動洗浄する場合の制御内容を説明する。図23において、Sは各ステップを表している。
【0052】
図23に示すように、先ず、S1において、ノズル本体14の回転を開始すると共に洗剤水の噴射を開始する。なお、ノズル本体14の回転と洗剤水の噴射の開始のタイミングは同時でもよく、また、異なってもよい。このときのノズル本体14の噴射口の位置(0度)は図22に示された第1領域A1と第2領域A2の間である。次に、S2に進み、比較的距離の遠い第2領域A2において、噴射口から洗剤水を流量小の噴射流量(350cc/min)で噴射する。次に、S3に進み、ノズル本体14の積算回転角度が90度以上か否かを判定する。90度以上の場合には、比較的距離の近い第1領域A1に到達しているので、S4に進み、噴射口から洗剤水を流量大の噴射流量(450cc/min)で噴射する。
【0053】
次に、S5に進み、ノズル本体14の積算回転角度が180度以上か否かを判定する。180度以上の場合には、比較的距離の遠い第2領域A2に到達しているので、S6に進み、噴射口から洗剤水を流量小の噴射流量(350cc/min)で噴射する。
同様に、S7に進み、ノズル本体14の積算回転角度が270度以上か否かを判定する。270度以上の場合には、比較的距離の近い第1領域A1に到達しているので、S8に進み、噴射口から洗剤水を流量大の噴射流量(450cc/min)で噴射する。
【0054】
次に、S9に進み、ノズル本体14の積算回転角度が375度か否かを判定する。375度であれば、S10に進み、ノズル本体14の回転を停止すると共に洗剤水の噴射も停止する。
【0055】
この図23に示された制御内容においては、ノズル本体から比較的距離が近い第1領域A1においては、噴射流量を多くし、ノズル本体から比較的距離が遠い第2領域A2においては、噴射流量を少なくすることにより、ノズル本体からの距離が異なる浴槽の内側壁面の両方の領域に洗剤水を確実に散布させることができる。
【0056】
次に、図24及び図25により、本実施形態の浴槽洗浄装置の他の制御内容について説明する。図24及び図25は、本実施形態による浴槽洗浄装置の他の動作(他の制御内容)を説明するためのフローチャートである。図24及び図25において、Sは各ステップを示す。
【0057】
図24はノズル本体14の洗剤水の噴射の1回目における回転速度に関する制御内容を示し、図25はノズル本体14の洗剤水の噴射の2回目以降の何れか1回における回転速度に関する制御内容を示している。これらの図24及び図25に示された制御を実行するとき、ノズル本体14から噴射される洗剤水の噴射流量は、上述した図23に示された通り、ノズル本体から比較的距離が近い第1領域A1においては、噴射流量を多くし、ノズル本体から比較的距離が遠い第2領域A2においては、噴射流量を少なくしている。
【0058】
先ず、図24に示す制御内容を説明する。即ち、ノズル本体14の洗剤水の噴射の1回目(1周目)においては、先ず、S11において、ノズル本体14の回転を開始すると共に洗剤水の噴射を開始する。このときのノズル本体14の噴射口の位置(0度)は図22に示された第1領域A1と第2領域A2の間である。次に、S12に進み、比較的距離の遠い第2領域A2において、洗剤水を噴射するノズル本体14を遅い回転速度(30s/周)で回転させる。次に、S13に進み、ノズル本体14の積算回転角度が90度以上か否かを判定する。90度以上の場合には、比較的距離の近い第1領域A1に到達しているので、S14に進み、洗剤水を噴射するノズル本体14を速い回転速度(24s/周)で回転させる。
【0059】
次に、S15に進み、ノズル本体14の積算回転角度が180度以上か否かを判定する。180度以上の場合には、比較的距離の遠い第2領域A2に到達しているので、S16に進み、洗剤水を噴射するノズル本体14を遅い回転速度(30s/周)で回転させる。
同様に、S17に進み、ノズル本体14の積算回転角度が270度以上か否かを判定する。270度以上の場合には、比較的距離の近い第1領域A1に到達しているので、S18に進み、洗剤水を噴射するノズル本体14を速い回転速度(24s/周)で回転させる。
【0060】
次に、S19に進み、ノズル本体14の積算回転角度が375度か否かを判定する。375度であれば、S20に進み、ノズル本体14の回転を停止すると共に洗剤水の噴射も停止する。
【0061】
本実施形態においては、前提として、上述したように、ノズル本体14からの距離が比較的遠い第2領域A2に向けて噴射される洗剤水の流量がノズル本体14からの距離が比較的近い第1領域A1に向けて噴射される洗剤水の流量よりも小さいので、第2領域A2の方が内側壁面において洗剤水が付着しない領域が出来やすい。そこで、図24に示された制御においては、第2領域A2に向けて噴射するときのノズル本体14の回転速度(30s/周)を第1領域A1に向けて噴射するときのノズル本体14の回転速度(24s/周)よりも遅くしているので、洗剤水が付着しない領域を少なくすることができる。
【0062】
次に、図25に示す制御内容を説明する。即ち、ノズル本体14の洗剤水の噴射の2回目(2周目)以降のいずれか1回(1周)においては、先ず、S21において、ノズル本体14の回転を開始すると共に洗剤水の噴射を開始する。このときのノズル本体14の噴射口の位置(0度)は図22に示された第1領域A1と第2領域A2の間である。次に、S22に進み、比較的距離の遠い第2領域A2において、洗剤水を噴射するノズル本体14を図24のS12における回転速度(30s/周)よりも遅い回転速度(43s/周)で回転させる。次に、S23に進み、ノズル本体14の積算回転角度が90度以上か否かを判定する。90度以上の場合には、比較的距離の近い第1領域A1に到達しているので、S24に進み、洗剤水を噴射するノズル本体14を図24のS14における回転速度(24s/周)よりも遅い回転速度(33s/周)で回転させる。
【0063】
次に、S25に進み、ノズル本体14の積算回転角度が180度以上か否かを判定する。180度以上の場合には、比較的距離の遠い第2領域A2に到達しているので、S26に進み、洗剤水を噴射するノズル本体14を図24のS16における回転速度(30s/周)よりも遅い回転速度(43s/周)で回転させる。
同様に、S27に進み、ノズル本体14の積算回転角度が270度以上か否かを判定する。270度以上の場合には、比較的距離の近い第1領域A1に到達しているので、S28に進み、洗剤水を噴射するノズル本体14を図24のS18における回転速度(24s/周)よりも遅い回転速度(33s/周)で回転させる。
【0064】
次に、S29に進み、ノズル本体14の積算回転角度が375度か否かを判定する。375度であれば、S20に進み、ノズル本体14の回転を停止すると共に洗剤水の噴射も停止する。
【0065】
本実施形態においては、ノズル本体から洗剤水を噴射する際、2回目(2周目)以降の何れか1回(1周)において、ノズル本体14からの距離が比較的近い第1領域A1及びノズル本体14からの距離が比較的遠い第2領域A2の両方の領域において、ノズル本体14の回転速度を、1回目(1周目)の回転速度よりも遅くしたので、1回目(1周目)において、内側壁面において、洗剤水が付着しない領域が生じていても、2回目(2周目)以降において、この洗剤水が付着しない領域をより少なくすることができる。
【0066】
次に、上述した本実施形態による浴槽洗浄装置の作用効果を説明する。
最初に、本実施形態による浴槽洗浄装置10においては、制御部48が、ノズル本体14からノズル本体14からの距離が比較的近い第1領域A1に向けて噴射される洗剤水の流量がノズル本体14からの距離が比較的遠い第2領域A2に向けて噴射される洗剤水の流量よりも大きくなるように、洗浄ポンプ44を制御するので、ノズル本体14からの距離が異なる浴槽1の内側壁面4の両方の領域に洗剤水を確実に散布させることができる。この結果、本実施形態によれば、限られた洗剤水を効率良く浴槽1の内側壁面4全体に付着させて洗浄することができる。
【0067】
また、本実施形態による浴槽洗浄装置10においては、ノズル本体14が洗剤水を噴射口62から水平方向よりも上下方向に広がるように噴射するため、浴槽1の内側壁面4の広い範囲に洗剤水を散布することができ、それにより、内側壁面4の広い範囲に確実に洗剤水を付着させることができる。
【0068】
また、本実施形態による浴槽洗浄装置10においては、ノズル本体14が、噴射口62から噴射される洗剤水の上部側の密度が下部側の密度よりも高くなるように、洗剤水を噴射するので、ノズル本体14から噴射された洗剤水の多くが汚れやすい内側壁面4の上部側に散布される(喫水面付近が最も汚れやすい)。そのため、散布する洗剤水の量を増やすことなく汚れやすい領域を効果的に洗浄することができる。また、本実施形態によれば、内側壁面4の上部に散布された洗剤水が内側壁面4の下部を通って浴槽1外に排出されるので、結果的に内側壁面4に接触する洗剤水の量を増やすことができる。
【0069】
また、本実施形態による浴槽洗浄装置10においては、ノズル本体14の噴射口80の上部側の開口面積が噴射口の下部側の開口面積よりも広くなるように形成されているので、ノズル本体14の噴射口80から噴射される上部側の洗剤水の密度が下部側の洗剤水の密度よりも高くすることができる。
【0070】
また、本実施形態による浴槽洗浄装置10においては、第2領域A2に向けて噴射される洗剤水の流量が第1領域A1に向けて噴射される洗剤水の流量よりも小さい。一方、浴槽1の内側壁面4に散布された洗剤水は、内側壁面4に沿って自重により下方に流れ、これにより、ノズル本体14から噴射された洗剤水が直接かからない部分にも洗剤水が付着する。しかし、洗剤水は、内側壁面4に散布された洗剤水の液滴をつなぐようなルートで下方に流れるため、散布させる洗剤水の流量が少ない第2領域A2では、第1領域A1に比べて洗剤水が下方に流れた後にも洗剤水が付着しない部分が生じ易い。そこで、本実施形態においては、制御部48が、ノズル本体14から第2領域A2に向けて洗剤水を噴射するときの回転速度が第1領域A1に向けて洗剤水を噴射するときの回転速度よりも遅くなるように、電気モータ18を制御するようにしたので、第2領域A2において洗剤水が付着しない領域を少なくすることができる。
【0071】
さらに、本実施形態による浴槽洗浄装置10においては、第2領域A2に向けて噴射される洗剤水の流量が第1領域A1に向けて噴射される洗剤水の流量よりも小さい。一方、浴槽1の内側壁面4に散布された洗剤水は、内側壁面4に沿って自重により下方に流れ、これにより、ノズル本体14から噴射された洗剤水が直接かからない部分にも洗剤水が付着する。しかし、洗剤水は、内側壁面4に散布された洗剤水の液滴をつなぐようなルートで下方に流れるため、散布させる洗剤水の流量が少ない第2領域A2では、第1領域A1に比べて洗剤水が下方に流れた後にも洗剤水が付着しない部分が生じ易い。そこで、本実施形態においては、第2領域A2に向けて1回目に洗剤水を散布するときのノズル本体14の回転速度よりも2回目以降のいずれか1回に洗剤水を散布するときのノズル本体14の回転速度の方が遅くなるように、電気モータ18を制御するようにしたので、1回目に洗剤水が付着しない部分が生じたとしても、2回目以降の1回目の洗剤水の散布により洗剤水が付着する部分を広くすることができ、その結果、洗剤水が付着しない領域を少なくすることができる。よって、本実施形態によれば、ノズル本体までの距離が比較的遠い第2領域に洗剤水を到達させることを可能にしながら、洗剤水の無駄な消費を抑えて第2領域に洗剤水を散布することを可能にしつつ、洗剤水が付着しない領域を少なくすることができる。
【0072】
次に、図26により、本発明の他の実施形態による浴槽洗浄装置について説明する。図26は本発明の他の実施形態による浴槽洗浄装置が適用される浴槽の平面図である。
図26には、浴槽90が示されており、この浴槽90は、図22に示された浴槽1と形状が同じである。浴槽90は、その開口部が平面視で、長辺92と短辺94を持つ長方形である。長辺92は、両端部92a,92bを有し、短辺94は、両端部94a,94bを有する。
【0073】
この実施形態においては、浴槽90の内側壁面96の上端が、その両端部92a,92bを含む長辺92に沿った「第1領域B1」と、その両端部94a,94bを除く短辺94に沿った「第2領域B2」を有する。
この他の実施形態においては、「第1領域B1」及び「第2領域B2」が、上述した実施形態における「第1領域A1」及び「第2領域A2」と異なっているのみであり、これらの領域外の構成は、上述した実施形態と同じである。
【0074】
即ち、この他の実施形態においても、上述した実施形態と同様に、ノズル本体から第1領域B1に向けて噴射される洗剤水の流量が第2領域B2に向けて噴射される洗剤水の流量よりも大きくなるように、制御部48が、洗浄ポンプ44を制御するようにしている。
【0075】
この他の実施形態による浴槽洗浄装置90によれば、限られた洗剤水を効率良く浴槽の内側壁面全体に付着させて洗浄することができる。
【符号の説明】
【0076】
1、90 浴槽
2 底面
4、96 内側壁面
10 浴槽洗浄装置
12 ノズルユニット
14 ノズル本体
16 ケーシング
18 電気モータ
20 第1の流路
32 第2の流路
34 洗剤タンク
40 洗剤ポンプ
42 第3の流路
44 洗浄ポンプ
48 制御部
50 外筒
52 中間筒
54 内筒
62,80,82a,82b,84a,84b,86 噴射口
64 カバー
92 長辺
94 短辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26