(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ヒータ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20231128BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231128BHJP
C23C 16/46 20060101ALI20231128BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20231128BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/68 N
C23C16/46
H05B3/74
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2022539446
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2021048052
(87)【国際公開番号】W WO2023119601
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2022-07-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】島尾 大介
(72)【発明者】
【氏名】木村 功一
(72)【発明者】
【氏名】先田 成伸
(72)【発明者】
【氏名】阪口 浩平
(72)【発明者】
【氏名】板倉 克裕
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/055565(WO,A1)
【文献】特開2003-142564(JP,A)
【文献】特開2020-155519(JP,A)
【文献】特表2019-521526(JP,A)
【文献】特開平4-061220(JP,A)
【文献】特開2022-054764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/683
C23C 16/46
H05B 3/74
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の形状を有する基体と、
前記基体の内部に配置された高周波電極と、
前記基体の内部に配置された発熱体と、
筒状の形状を有する支持体と、を備え、
前記基体は、
加熱対象が載置される第一面と、
前記第一面に向かい合っている第二面と、
前記第一面及び前記第二面につながる流路と、を備え、
前記支持体は、
筒状をなす側壁部と、
前記側壁部に一体に設けられたフランジ状の第一端部と、を備え、
前記第一端部が前記第二面に取り付けられることで前記基体に固定されており、
前記流路は、
前記第一面
に開口するように設けられた吸気口を有する第一流路と、
前記第二面
において、前記側壁部の内周面で囲まれた内側
空間に開口するように設けられた排気口を有する第二流路と、
前記第一流路と前記第二流路とをつなぐ第三流路と、を備え、
前記内側空間には、前記排気口に接続された吸引管を備え、
前記高周波電極、前記発熱体、及び前記第三流路の各々は、
前記第一面と前記第二面とを含まない前記基体の内部であって、前記第一面に平行な面内に配置されており、
前記発熱体及び前記第三流路は、前記高周波電極よりも前記第二面側に配置されている、
ヒータ。
【請求項2】
前記第三流路は、前記発熱体よりも前記第二面側に配置されている、請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記第三流路は、前記高周波電極と前記発熱体との間の面内に配置されている、請求項1に記載のヒータ。
【請求項4】
前記高周波電極と前記第三流路との前記基体の厚さ方向の間隔が2mm以上である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項5】
前記基体の内部に配置されたシールド電極を更に備え、
前記シールド電極は、前記第一面に平行な面内であって、前記高周波電極と前記第三流路との間の面内に配置されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項6】
円板状の形状を有する基体と、
前記基体の内部に配置された高周波電極と、
前記基体の内部に配置された発熱体と、
前記基体の内部に配置されたシールド電極と、
筒状の形状を有する支持体と、を備え、
前記基体は、
加熱対象が載置される第一面と、
前記第一面に向かい合っている第二面と、
前記第一面及び前記第二面につながる流路と、を備え、
前記支持体は、
筒状をなす側壁部と、
前記側壁部に一体に設けられたフランジ状の第一端部と、を備え、
前記第一端部が前記第二面に取り付けられることで前記基体に固定されており、
前記流路は、
前記第一面
に開口するように設けられた吸気口を有する第一流路と、
前記第二面
において、前記側壁部の内周面で囲まれた内側
空間に開口するように設けられた排気口を有する第二流路と、
前記第一流路と前記第二流路とをつなぐ第三流路と、を備え、
前記内側空間には、前記排気口に接続された吸引管を備え、
前記高周波電極、前記発熱体、前記シールド電極、及び前記第三流路の各々は、
前記第一面と前記第二面とを含まない前記基体の内部であって、前記第一面に平行な面内に配置されており、
前記第一面側から前記第二面側に向かって順に、前記高周波電極、前記シールド電極、前記第三流路、及び前記発熱体が配置されている、
ヒータ。
【請求項7】
前記第一流路の数は複数であり、
前記吸気口が、前記第一面において前記基体の周方向に並んで配置されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項8】
前記第一流路の数は複数であり、
前記第二流路の数は一つであり、
前記第一面には、前記吸気口として複数の第一吸気口が設けられており、
前記複数の第一吸気口の各々から前記排気口までの前記第一流路、前記第二流路、及び前記第三流路に沿った長さが同じである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項9】
前記第一流路の数は複数であり、
前記第二流路の数は一つであり、
前記第一面には、前記吸気口として第二吸気口及び第三吸気口が設けられており、
前記第二吸気口及び前記第三吸気口の各々から前記排気口までの前記第一流路、前記第二流路、及び前記第三流路に沿った長さが異なる、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のヒータ。
【請求項10】
前記第一流路の数は複数であり、
前記第三流路は、前記基体の中心側から放射状に延びる複数の分岐路を備え、
一つ又は複数の前記第二流路は、前記第三流路における前記基体の中心側につながっており、
複数の前記第一流路の少なくとも一つは、前記分岐路の先端部につながっている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、RFプレートとヒータプレートとが空間を介在させた状態で接続されたセラミックス部材を開示する。RFプレートは、被加熱物であるウエハが載置される載置面を備える。RFプレートの内部には、ウエハにプラズマ処理を施す際に使用される高周波電極が配置されている。ヒータプレートの内部には、発熱抵抗体が配置されている。空間は、高周波電極と発熱抵抗体との間に流れるリーク電流の発生を抑制するために設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示のヒータは、
円板状の形状を有する基体と、
前記基体の内部に配置された高周波電極と、
前記基体の内部に配置された発熱体と、
筒状の形状を有する支持体と、を備え、
前記基体は、
加熱対象が載置される第一面と、
前記支持体の第一端部が取り付けられた第二面と、
前記第一面及び前記第二面につながる流路と、を備え、
前記流路は、
前記第一面側に設けられた吸気口を有する第一流路と、
前記第二面側における前記支持体の内側の領域に設けられた排気口を有する第二流路と、
前記第一流路と前記第二流路とをつなぐ第三流路と、を備え、
前記高周波電極、前記発熱体、及び前記第三流路の各々は、前記第一面に平行な面内に配置されており、
前記発熱体及び前記第三流路は、前記高周波電極よりも前記第二面側に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施形態1のヒータを備えた成膜装置を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すヒータの主に基体を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、変形例1における第三流路の断面図である。
【
図5】
図5は、変形例2における第三流路の断面図である。
【
図6】
図6は、変形例3における第三流路の断面図である。
【
図7】
図7は、変形例4における第三流路の断面図である。
【
図8】
図8は、変形例5における第三流路の断面図である。
【
図9】
図9は、変形例6における第三流路の断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態2のヒータの主に基体を拡大して示す断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態3のヒータの主に基体を拡大して示す断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態4のヒータの主に基体を拡大して示す断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態5のヒータの主に基体を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
加熱対象を全面にわたって均一に加熱することが望まれる。プラズマ処理による加熱対象への成膜のばらつきを抑制することが望まれる。特許文献1の技術では、加熱対象を均一に加熱すると共に、加熱対象に均一に成膜を施すという点で改善の余地がある。
【0007】
本開示は、加熱対象を全面にわたって均一に加熱でき、かつ加熱対象への成膜のばらつきを抑制できるヒータを提供することを目的の一つとする。
【0008】
[本開示の効果]
本開示のヒータは、加熱対象を全面にわたって均一に加熱でき、かつ加熱対象への成膜のばらつきを抑制できる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一態様に係るヒータは、
円板状の形状を有する基体と、
前記基体の内部に配置された高周波電極と、
前記基体の内部に配置された発熱体と、
筒状の形状を有する支持体と、を備え、
前記基体は、
加熱対象が載置される第一面と、
前記支持体の第一端部が取り付けられた第二面と、
前記第一面及び前記第二面につながる流路と、を備え、
前記流路は、
前記第一面側に設けられた吸気口を有する第一流路と、
前記第二面側における前記支持体の内側の領域に設けられた排気口を有する第二流路と、
前記第一流路と前記第二流路とをつなぐ第三流路と、を備え、
前記高周波電極、前記発熱体、及び前記第三流路の各々は、前記第一面に平行な面内に配置されており、
前記発熱体及び前記第三流路は、前記高周波電極よりも前記第二面側に配置されている。
【0011】
本開示のヒータでは、第一面に載置された加熱対象は、基体に設けられた流路によって第一面に真空吸着される。この真空吸着によって、加熱対象が第一面に載置される前に反りを有する板状体の場合であっても、その反りが矯正される。第一面に載置された加熱対象は、全面にわたって第一面に接触することができる。発熱体は、第一面に平行な面内に配置されている。よって、本開示のヒータでは、第一面に載置された加熱対象は、発熱体によって全面にわたって均一に加熱される。
【0012】
本開示のヒータでは、発熱体及び第三流路が高周波電極よりも第二面側に位置している。つまり、高周波電極と第一面との間には、発熱体及び第三流路が存在しない。高周波電極は、第一面に平行な面内に配置されている。高周波電極と第一面との間に発熱体及び第三流路が存在しないことで、第一面に載置された加熱対象と高周波電極との間にある基体の厚さが均一に確保され易い。高周波電極と第一面との間に第三流路が存在しないことで、加熱対象と高周波電極との間で放電が生じることを抑制でき、エネルギーロスの発生を抑制できる。
【0013】
一般的に、プラズマ処理で用いられる反応ガスを発生するシャワーヘッドは、上記高周波電極と対になる高周波電極を兼ねており、第一面に平行に配置されている。加熱対象が全面にわたって第一面に接触することで、第一面に載置された加熱対象とシャワーヘッドとの間隔が均一に確保され易い。
【0014】
本開示のヒータでは、第一面に載置された加熱対象と高周波電極との間にある基体の厚さが均一に確保され、かつ第一面に載置された加熱対象とシャワーヘッドとの間隔が均一に確保されることで、加熱対象の全面にわたって均一にエネルギーが付与される。よって、本開示のヒータでは、上記基体の厚さ又は上記間隔が不均一の場合に比較して、プラズマ処理による加熱対象への成膜のばらつきが抑制される。
【0015】
(2)本開示のヒータにおいて、前記第三流路は、前記発熱体よりも前記第二面側に配置されていてもよい。
【0016】
上記形態では、発熱体から第一面への伝熱が第三流路で阻害され難い。よって、上記形態では、第一面に載置された加熱対象は、発熱体によって全面にわたってより均一に加熱される。
【0017】
(3)本開示のヒータにおいて、前記高周波電極と前記第三流路との前記基体の厚さ方向の間隔が2mm以上であってもよい。
【0018】
上記形態では、上記間隔がある程度確保されることで、プラズマ処理による加熱対象への成膜時に、第三流路を構成する空間で放電が生じることが抑制され易い。
【0019】
(4)本開示のヒータにおいて、前記基体の内部に配置されたシールド電極を更に備え、前記シールド電極は、前記第一面に平行な面内であって、前記高周波電極と前記第三流路との間の面内に配置されていてもよい。
【0020】
上記形態では、シールド電極を備えることで、第三流路にエネルギーが付与されることが抑制される。上記形態では、第三流路にエネルギーが付与され難いことで、プラズマ処理による加熱対象への成膜時に、第三流路を構成する空間で放電が生じることが抑制され易い。
【0021】
(5)本開示のヒータにおいて、前記第一流路の数は複数であり、前記吸気口が、前記第一面において前記基体の周方向に並んで配置されていてもよい。
【0022】
上記形態では、第一面に載置された加熱対象は、全周にわたって第一面に真空吸着される。
【0023】
(6)本開示のヒータにおいて、前記第一流路の数は複数であり、前記第二流路の数は一つであり、前記第一面には、前記吸気口として複数の第一吸気口が設けられており、前記複数の第一吸気口の各々から前記排気口までの前記第一流路、前記第二流路、及び前記第三流路に沿った長さが同じであってもよい。
【0024】
上記形態では、第一面に載置された加熱対象は、吸引力が同じ複数の第一吸気口によって第一面に真空吸着される。例えば、上記形態では、第一面に載置された加熱対象は、全周にわたって均一に第一面に真空吸着される。
【0025】
(7)本開示のヒータにおいて、前記第一流路の数は複数であり、前記第二流路の数は一つであり、前記第一面には、前記吸気口として第二吸気口及び第三吸気口が設けられており、前記第二吸気口及び前記第三吸気口の各々から前記排気口までの前記第一流路、前記第二流路、及び前記第三流路に沿った長さが異なってもよい。
【0026】
上記形態では、第一面に載置された加熱対象は、基体の径方向の異なる位置で第一面に真空吸着される。
【0027】
(8)本開示のヒータにおいて、前記第一流路の数は複数であり、前記第三流路は、前記基体の中心側から放射状に延びる複数の分岐路を備え、一つ又は複数の前記第二流路は、前記第三流路における前記基体の中心側につながっており、複数の前記第一流路の少なくとも一つは、前記分岐路の先端部につながっていてもよい。
【0028】
上記形態では、第一面に載置された加熱対象は、全周にわたって均一に第一面に真空吸着される。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のヒータの実施形態を、図面を参照して説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
<全体構成>
図1から
図3を参照して、実施形態のヒータ1を説明する。ヒータ1は、プラズマ処理によって加熱対象10の表面に薄膜を形成する成膜装置に利用される。ヒータ1は、
図1に示すように、雰囲気ガスの制御ができるチャンバー8内に配置されている。チャンバー8内において、ヒータ1に向かい合う上面には、シャワーヘッド81が配置されている。プラズマ処理で用いられる反応ガスは、シャワーヘッド81からヒータ1に向かって噴射される。シャワーヘッド81には、図示しない高周波発信器が接続されている。シャワーヘッド81は、高周波電極を兼ねている。
【0031】
ヒータ1は、
図1、
図2、及び
図10に示すように、基体2と、高周波電極3と、発熱体4と、支持体7と、を備える。ヒータ1は、
図11から
図13に示すように、更にシールド電極6を備えていてもよい。高周波電極3、発熱体4、及びシールド電極6は、基体2の内部に互いに平行となるように配置されている。
【0032】
実施形態のヒータ1の特徴の一つは、加熱対象10を基体2に真空吸着する構成として、基体2に流路5を備える点にある。実施形態のヒータ1の特徴の一つは、高周波電極3、発熱体4、及び流路5が特定の順序で基体2の内部に配置されている点にある。ヒータ1がシールド電極6を備える場合、シールド電極6も、特定の順序で基体2の内部に配置されている。
【0033】
図1から
図3は、実施形態1のヒータ1を図示している。
図4から
図9は、ヒータ1の基体2に設けられた第三流路53の異なるパターンを図示している。第三流路53は流路5の一部である。
図10は、実施形態2のヒータ1を図示している。
図10は、
図2に示す発熱体4と第三流路53との順序が入れ替わっている。
図11は、実施形態3のヒータ1を図示している。
図11は、
図2に示す基体2にシールド電極6を追加している。
図12は、実施形態4のヒータ1を図示している。
図12は、
図10に示す基体2にシールド電極6を追加している。
図13は、実施形態5のヒータ1を図示している。
図13は、
図10に示す基体2において、
図12とは別の位置にシールド電極6を追加している。各図では、分かり易いように、高周波電極3、発熱体4、流路5、及びシールド電極6を誇張して示している。各図において、基体2、高周波電極3、発熱体4、流路5、及びシールド電極6の大きさ等は模式的に示されたものであり、必ずしも実際の大きさに対応しているわけではない。以下、実施形態ごとに各構成を詳細に説明する。
【0034】
<実施形態1>
図1から
図3を参照して、実施形態1のヒータ1を説明する。実施形態1のヒータ1は、
図1及び
図2に示すように、基体2と、高周波電極3と、発熱体4と、支持体7と、を備える。実施形態1のヒータ1では、基体2の内部に第一面21側から第二面22側に向かって順に、高周波電極3、流路5の一部である第三流路53、及び発熱体4が配置されている。
【0035】
≪基体≫
基体2は、
図3に示すように、円板状の形状を有する。基体2は、
図2に示すように、第一面21と第二面22とを備える。第一面21と第二面22とは、互いに向かい合っている。第一面21には、加熱対象10が載置される。加熱対象10は、例えばシリコンや化合物半導体のウエハである。第二面22には、後述する支持体7の第一端部71が取り付けられている。第二面22側における支持体7の内側の領域には、後述する高周波電極3及び発熱体4の各々に接続された図示しない端子が嵌め込まれた複数の穴が設けられている。上記端子は第二面22から突出している。説明の便宜上、端子、及び端子が嵌め込まれた複数の穴は図示していない。
【0036】
基体2の内部には、後述する流路5が設けられている。流路5は、第一面21と第二面22とをつなぐように設けられている。
【0037】
基体2の材質は、例えば、公知のセラミックスである。セラミックスは、例えば、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、炭化珪素である。基体2の材質は、上記セラミックスと金属との複合材料で構成されていてもよい。金属は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金である。本例の基体2の材質は、窒化アルミニウムである。
【0038】
≪高周波電極≫
高周波電極3は、
図1に示すシャワーヘッド81との間でプラズマを発生させる電極である。高周波電極3は接地されている。または、高周波電極3は、シャワーヘッド81に接続された高周波発信器とは別の高周波発信器に接続されている。高周波電極3は、図示しない電力線につながっている。電力線には接地線が含まれる。電力線は、後述する支持体7の内側に配置されている。図示しない高周波発信器からの高周波電力がシャワーヘッド81と高周波電極3との間に与えられる。シャワーヘッド81から噴射された反応ガスが高周波エネルギーによってイオン化してプラズマ状態を発生する。反応ガスのプラズマ状態によって第一面21に載置された加熱対象10で化学反応が生じ、反応ガスに応じて加熱対象10に薄膜が形成される。
【0039】
高周波電極3は、円板状の形状を有する。高周波電極3は、好ましくは基体2と同心状に配置されている。高周波電極3は、例えば、加熱対象10と同等の大きさを有する。高周波電極3は、加熱対象10よりも一回り程度大きくてもよい。高周波電極3は、基体2の内部に埋め込まれている。高周波電極3は、第一面21に平行な面内に配置されている。高周波電極3は、基体2の厚さ方向で最も第一面21側に位置する。高周波電極3と第一面21との間には、後述する発熱体4及び第三流路53は存在しない。高周波電極3と第一面21との間隔D1は、例えば1mm程度である。
【0040】
高周波電極3の材質は、耐熱性に優れる金属である。金属は、例えば、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、ニッケル、及びニッケル合金からなる群より選択される1種である。
【0041】
高周波電極3の形態は特に問わない。例えば、高周波電極3は、上記金属からなる粉を含んだペーストをスクリーン印刷及び焼成することで形成される。高周波電極3は、板、メッシュ、又は繊維で構成されてもよい。
【0042】
≪発熱体≫
発熱体4は、第一面21に載置された加熱対象10を加熱する熱源である。発熱体4は、基体2を介して上記加熱対象10を加熱する。発熱体4は、図示しない端子及び電力線につながっている。電力線は、後述する支持体7の内側に配置されている。発熱体4には、電力線を介して図示しない電源から電力が供給される。
【0043】
発熱体4は、基体2の平面内に形成された回路パターンである。回路パターンは、帯状の細い線からなる帯状部で描かれている。発熱体4の形状は、特に限定されない。基体2を第一面21側から平面視したとき、発熱体4の外周輪郭線の形状は、一般的には円形である。発熱体4の外周輪郭線は、帯状部の配置によって構成される。発熱体4は、好ましくは基体2と同心状に配置されている。発熱体4は、高周波電極3とも同心状に配置されている。
【0044】
発熱体4は、基体2の内部に埋め込まれている。発熱体4は、第一面21に平行な面内に配置されている。発熱体4は、高周波電極3よりも第二面22側に配置されている。
【0045】
発熱体4は、例えば帯状部を屈曲させて構成されている。帯状部の屈曲には、渦巻き状や蛇行状に屈曲することが含まれる。発熱体4は、帯状部よりも幅の広い所定形状の面状部を備えていてもよい。面状部の外周輪郭線の形状は、例えば扇状や半円状である。帯状部と面状部は一連につながっている。発熱体4の回路パターンは、特に限定されない。発熱体4の回路パターンは、加熱する温度や求められる温度分布に応じて適宜選択できる。
【0046】
発熱体4の材質は、加熱対象10を所望の温度に加熱できる材質であれば特に限定されない。発熱体4の材質は、抵抗加熱に好適な金属である。金属は、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル合金、銀、銀合金、タングステン、タングステン合金、モリブデン、モリブデン合金、クロム、及びクロム合金からなる群より選択される1種である。ニッケル合金は、例えば、ニクロムである。
【0047】
発熱体4の形態は特に問わない。例えば、発熱体4は、上記金属からなる粉を含んだペーストをスクリーン印刷及び焼成することで形成される。他に、発熱体4は、上記金属からなる箔をパターニング加工することで形成される。発熱体4は、帯状部による回路パターン以外に、タングステンコイルやモリブデンコイルであってもよい。
【0048】
≪流路≫
流路5は、基体2の内部に設けられた空間である。流路5は、
図2に示すように、第一面21及び第二面22につながるように設けられている。流路5は、第一流路51、第二流路52、及び第三流路53を備える。
図2では、第三流路53を包括する外形が二点鎖線で示されている。
図3は、
図2に示す第三流路53を第一面21に平行な面で切断した断面図である。
図3では、第一面21側に設けられた吸気口510が実線で示されている。
図3では、第二面22側に設けられた排気口520が仮想的に破線で示されている。
【0049】
〔第一流路〕
第一流路51は、
図2に示すように、第一面21側に設けられた吸気口510を備える。本例の吸気口510は、第一面21に設けられている。基体2に図示しないウエハポケットが設けられている場合、ウエハポケットの底面が第一面21であり、その第一面21に吸気口510が設けられている。第一面21に図示しない溝が設けられている場合、溝の底面に複数の吸気口510が設けられていてもよい。
【0050】
本例の流路5は、複数の第一流路51を備える。
図2に示す第一面21には、
図3に示すように、複数の吸気口510が配置されている。各吸気口510は、第一面21に載置された加熱対象10に覆われる。複数の吸気口510は、第一面21において基体2の周方向に並んで配置されていることが好ましい。特に、複数の吸気口510は、第一面21(
図2)において基体2の周方向に等間隔に並んで配置されていることが好ましい。複数の吸気口510は、第一面(
図2)において基体2の異なる径の各円周上に配置されていてもよい。本例では、基体2の異なる二つの径の各円周上に四つずつ吸気口510が配置されている。
【0051】
吸気口510の開口形状は特に問わない。本例の吸気口510の開口形状は円形である。
【0052】
第一流路51は、各吸気口510から基体2の内部に向かって延びている。第一流路51は、第一面21に交差する方向に延びている。本例の第一流路51は、第一面21に直交する方向に延びている。
【0053】
第一流路51の横断面の形状は特に問わない。本例の第一流路51の横断面の形状は、吸気口510の開口形状と同じ円形である。第一流路51の横断面は、第一流路51の延びる方向と直交する方向に切断した断面である。
【0054】
第一流路51の横断面の面積は、良好な気体の流通性を確保できる程度に適宜選択できる。気体は、例えば反応ガスである。第一流路51の横断面の総面積は、例えば、0.2mm2以上2500mm2以下、好ましくは15mm2以上500mm2以下である。第一流路51の横断面の総面積が下限値以上であることで、良好な気体の流通性が確保される。第一流路51の横断面の総面積が上限値以下であることで、発熱体4からの伝熱が第一流路51で阻害されることが抑制され易い。各第一流路51の横断面の面積は、複数の横断面の総面積が上記範囲を満たすように、適宜選択される。
【0055】
本例の第一流路51は、第一流路51の延びる方向に一様な横断面の形状及び大きさを備える。第一流路51の横断面の形状は、第一流路51の延びる方向の途中で変化してもよい。第一流路51の横断面の面積は、第一流路51の延びる方向の途中で変化してもよい。
【0056】
複数の第一流路51が設けられている場合、各第一流路51の横断面の形状及び大きさは同じでもよいし、異なっていてもよい。第一面21において基体2の異なる径の円周上に吸気口510が配置されるように第一流路51が設けられている場合、小径側に位置する第一流路51と大径側に位置する第一流路51とがある。小径側に位置する第一流路51と大径側に位置する第一流路51とで、第一流路51の横断面の形状及び大きさの少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0057】
〔第二流路〕
第二流路52は、
図2に示すように、第二面22における支持体7の内側の領域に設けられた排気口520を備える。本例の排気口520は、第二面22に設けられている。第二面22に支持体7の取付面から局所的に突出した凸部、又は局所的に窪んだ凹部が設けられている場合、凸部の端面又は凹部の底面に排気口520が設けられていてもよい。排気口520には、吸引管9が接続されている。吸引管9には、図示しない真空ポンプが接続されている。真空ポンプの吸引により、吸引管9を介して流路5内は減圧される。吸引管9は、後述する支持体7の内側に配置されている。
【0058】
本例の流路5は、一つの第二流路52を備える。
図2に示す第二面22には、
図3に示すように、一つの排気口520が配置されている。排気口520は、第二面22において基体2の中心側に配置されていることが好ましい。本例の排気口520は、基体2の中心と同心に設けられている。
【0059】
排気口520の開口形状は特に問わない。本例の排気口520の開口形状は円形である。
【0060】
第二流路52は、排気口520から基体2の内部に向かって延びている。第二流路52は、第二面22に交差する方向に延びている。本例の第二流路52は、第二面22に直交する方向に延びている。本例では、第一流路51の延びる方向及び第二流路52の延びる方向は、互いに平行であり、かつ基体2の軸方向と平行である。
【0061】
第二流路52の横断面の形状は特に問わない。本例の第二流路52の横断面の形状は、排気口520の開口形状と同じ円形である。第二流路52の横断面は、第二流路52の延びる方向と直交する方向に切断した断面である。
【0062】
第二流路52の横断面の面積は、良好な気体の流通性を確保できる程度に適宜選択できる。例えば、第二流路52の横断面の面積は、0.2mm2以上50mm2以下、好ましくは2mm2以上20mm2以下である。第二流路52の横断面の面積が下限値以上であることで、良好な気体の流通性が確保される。第二流路52の横断面の面積が上限値以下であることで、発熱体4が第三流路53よりも第二面22側に配置されていたとしても、発熱体4の配置、及び伝熱が阻害され難い。
【0063】
本例の第二流路52は、第二流路52の延びる方向に一様な横断面の形状及び大きさを備える。第二流路52の横断面の形状は、第二流路52の延びる方向の途中で変化してもよい。第二流路52の横断面の面積は、第二流路52の延びる方向の途中で変化してもよい。
【0064】
〔第三流路〕
第三流路53は、
図2に示すように、第一流路51と第二流路52とをつないでいる。第三流路53は、第一面21に平行な面内に配置されている。第三流路53は、第一面21に平行な面に沿って延びている。第三流路53は、高周波電極3よりも第二面22側に配置されている。高周波電極3と第三流路53との基体2の厚さ方向の間隔D2は、例えば2mm以上である。上記間隔D2が2mm以上であることで、プラズマ処理による加熱対象10への成膜時に、第三流路53を構成する空間で放電が生じることが抑制され易い。上記間隔D2は、例えば12mm以下である。上記間隔D2が12mm以下であることで、基体2の厚肉化が抑制され易い。上記間隔D2は、例えば2mm以上12mm以下、更に4mm以上8mm以下である。
【0065】
本例の第三流路53は、発熱体4よりも第一面21側に配置されている。つまり、本例の第三流路53は、高周波電極3と発熱体4との間の面内に配置されている。発熱体4と第三流路53との基体2の厚さ方向の間隔D3は、例えば2mm以上である。上記間隔D3が2mm以上であることで、発熱体4と第三流路53との間にある基体2の厚さをある程度確保でき、基体2を介した発熱体4からの伝熱性が確保され易い。上記間隔D3は、例えば12mm以下である。上記D3が12mm以下であることで、基体2の厚肉化が抑制され易い。上記間隔D3は、例えば2mm以上12mm以下、更に4mm以上8mm以下である。
【0066】
第三流路53は、
図3に示すように、中心部531、及び複数の分岐路532を備えることが好ましい。本例の第三流路53は、更に、各分岐路532の延びる方向の途中同士をつなぐ円形路533を備える。本例では、吸気口510として、第二吸気口512及び第三吸気口513が設けられている。
【0067】
中心部531は、基体2の略中心に配置されている。中心部531には、
図2に示す第二流路52がつながっている。つまり、基体2の略中心に排気口520が配置されている。
【0068】
各分岐路532は、中心部531から放射状に延びるように配置されている。各分岐路532の長さは同じである。各分岐路532の長さは、加熱対象10の周縁部に届く長さである。本例では、4本の分岐路532が配置されている。4本の分岐路532は、基体2の周方向に等間隔に並ぶように配置されている。各分岐路532の先端部には、
図2に示す第一流路51がつながっている。複数の分岐路532の各先端部に第一流路51がつながっていることで、
図2に示す第一面21には、吸気口510として
図3に示す複数の第二吸気口512が設けられている。複数の第二吸気口512は、第一面21において基体2の単一の径の円周上に並んで配置されている。各第二吸気口512から排気口520までの第一流路51、第二流路52、及び第三流路53に沿った長さは同じである。
【0069】
円形路533における隣り合う分岐路532間に、
図2に示す第一流路51がつながっている。各分岐路532の延びる方向の途中同士をつなぐ円形路533に第一流路51がつながっていることで、
図2に示す第一面21には、吸気口510として
図3に示す第三吸気口513が設けられている。複数の第三吸気口513は、第一面21において基体2の単一の径の円周上に並んで配置されている。各第三吸気口513から排気口520までの第一流路51、第二流路52、及び第三流路53に沿った長さは同じである。
【0070】
第二吸気口512と第三吸気口513とは、第一面21において基体2の異なる径の各円周上に配置されている。第二吸気口512及び第三吸気口513の各々から排気口520までの第一流路51、第二流路52、及び第三流路53に沿った長さは異なる。
【0071】
第三流路53の横断面の形状は特に問わない。本例の第三流路53の横断面の形状は、矩形である。第三流路53の横断面は、第三流路53の延びる方向と直交する方向に切断した断面である。
【0072】
第三流路53の横断面の面積は、良好な気体の流通性を確保できる程度に適宜選択できる。第三流路53の深さD5(
図2参照)は、例えば0.2mm以上8mm以下、好ましくは0.4mm以上3mm以下である。第三流路53の幅W5(
図2参照)は、例えば0.5mm以上20mm以下、好ましくは1mm以上6mm以下である。
【0073】
本例の第三流路53は、第三流路53の延びる方向に一様な横断面の形状及び大きさを備える。第三流路53の横断面の形状は、第三流路53の延びる方向の途中で変化してもよい。第三流路53の横断面の面積は、第三流路53の延びる方向の途中で変化してもよい。第三流路53の横断面の形状又は面積が第三流路53の延びる方向の途中で変化しても、上記面積、上記深さD5、及び上記幅W5を満たすことが好ましい。
【0074】
第三流路53を第一面21に平行な面に沿って切断した断面の合計面積は、例えば、500mm2以上30000mm2以下、好ましくは1500mm2以上10000mm2以下である。上記断面の合計面積が下限値以上であることで、良好な気体の流通性が確保される。上記断面の合計面積が上限値以下であることで、発熱体4が第三流路53よりも第二面22側に配置されていたとしても、発熱体4からの伝熱が第三流路53で阻害されることが抑制され易い。
【0075】
基体2を第一面21側から平面視したとき、第三流路53と発熱体4とがオーバーラップした面積は小さい方が好ましい。特に、本例のように第三流路53が発熱体4よりも第一面21側に配置されている場合、上記オーバーラップした面積はより小さい方が好ましい。上記オーバーラップした面積が小さいほど、発熱体4からの伝熱が第三流路53で阻害されることが抑制され易い。
【0076】
流路5は、例えば以下の手順で製造できる。まず、高周波電極3が内部に配置された第一プレート、発熱体4が内部に配置された第二プレート、及び流路5が設けられた第三プレートを個別に作製する。高周波電極3が内部に配置された第一プレートには、例えば、上述したようにタングステンの金属からなる粉を含んだペーストをスクリーン印刷及び焼成して形成したものを用いる。発熱体4が内部に配置された第二プレートには、例えば、上述したようにタングステンの金属からなる粉を含んだペーストをスクリーン印刷及び焼成して形成したものを用いる。図示していないが第一プレートと第三プレートとの境界は、
図2に示す高周波電極3と第三流路53との間に位置する。第二プレートと第三プレートとの境界は、
図2に示す発熱体4と第三流路53との間に位置する。第一プレートには、第三プレートの流路5の形状に合わせて、第一流路51を形成しておく。第二プレートには、第三プレートの流路5の形状に合わせて第二流路52を形成しておく。最後に、第一プレート、第三プレート、第二プレートの順に重ねて接合する。
【0077】
上記手順で製造された基体2は、高周波電極3が配置された第三面、発熱体4が配置された第四面、及び第三流路53が配置された第五面を備える。第三面、第四面、及び第五面は、第一面21に平行な面である。本例では、第一面21側から第二面22側に向かって順に、第三面、第五面、及び第四面が位置する。
【0078】
≪支持体≫
支持体7は、
図1及び
図2に示すように、基体2を第二面22側から支持している。支持体7は、筒状の形状を有する。支持体7の形状は特に問わない。本例の支持体7は円筒状部材である。支持体7は、基体2と同心状に配置されている。本例では、円筒状の支持体7の中心と、円板状の基体2の中心とが同軸となるように、基体2と支持体7とが接続されている。支持体7は、高周波電極3につながる電力線、発熱体4につながる電力線、流路5につながる吸引管9を囲むように基体2に接続されている。
【0079】
支持体7は、第一端部71及び第二端部72を備える。第一端部71及び第二端部72の各々は、外側に屈曲したフランジ状の形状を有する。第一端部71は、第二面22に取り付けられている。第一端部71と第二面22との間には、図示しないシール部材が配置されている。第二端部72は、チャンバー8の底面に取り付けられている。第二端部72とチャンバー8の底面との間には、図示しないシール部材が配置されている。これらのシール部材によって、支持体7の内部の気密が保たれている。気密を保つことができれば、第一端部71と第二面22との間、及び第二端部72とチャンバー8の底面との間の少なくとも一方は、シール部材が配置されずに直接的に接合されていてもよい。ヒータ1が配置されたチャンバー8内には、代表的には、腐食性ガスが充満される。支持体7の内部の気密が保たれることで、支持体7の内側に配置された図示しない電力線、及び吸引管9を腐食性ガスから隔離することができる。チャンバー8の底面における支持体7の内側の領域には貫通孔80が設けられている。図示しない電力線、及び吸引管9は、貫通孔80を通ってチャンバー8の外部に引き出されている。
【0080】
支持体7の材質は、例えば、基体2の材質と同様のセラミックスである。支持体7の材質と基体2の材質とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0081】
実施形態1のヒータ1では、第一面21に載置された加熱対象10は、基体2に設けられた流路5によって第一面21に真空吸着される。特に、複数の吸気口510が基体2の異なる径の各円周上に等間隔に並んで配置されていることで、加熱対象10は全面にわたって第一面21に均一に真空吸着される。この真空吸着によって、加熱対象10が第一面21に載置される前に反りを有していたとしても、その反りが矯正される。また、加熱対象10の成膜時に、熱又は化学反応によって反りが生じそうになっても、その反りが矯正される。反りが矯正されることで、第一面21に載置された加熱対象10は、全面にわたって第一面21に接触することができる。
【0082】
発熱体4が基体2内の第一面21に平行な面内に配置されていることで、加熱対象10は発熱体4によって全面にわたって均一に加熱される。
【0083】
高周波電極3が基体2内の厚さ方向の最も第一面21側に位置すると共に、第一面21に平行な面内に配置されていることで、加熱対象10と高周波電極3との間にある基体2の厚さが均一に確保される。また、シャワーヘッド81が第一面21に平行に配置されていることで、加熱対象10とシャワーヘッド81との間隔が均一に確保される。よって、加熱対象10の全面にわたって均一にエネルギーが付与され、プラズマ処理による加熱対象10への成膜のばらつきが抑制される。
【0084】
<変形例>
流路5の形態は、第一面21及び第二面22につながり、第一面21に載置された加熱対象10を第一面21に真空吸着できる範囲において適宜変更できる。例えば、以下に説明する変形例1から変形例6のように、主に第三流路53の形態を変更できる。第一流路51及び第二流路52は、第三流路53に対応して配置される。
図4から
図9は、
図3と同様に、第三流路53を第一面21に平行な面で切断した断面図である。
図4から
図9では、
図2に示す第一面21側に設けられた吸気口510が実線で示されている。
図4から
図9では、
図2に示す第二面22側に設けられた排気口520が仮想的に破線で示されている。変形例1の説明では、必要に応じて
図2も参照する。
【0085】
〔変形例1〕
変形例1の第三流路53は、
図4に示すように、実施形態1の第三流路53と同様に、複数の分岐路532と円形路533とを備える。変形例1の第三流路53は、円形路533が
図2に示す第一流路51につながっていない点が、実施形態1の第三流路53と異なる。各分岐路532の先端部には、
図2に示す第一流路51がつながっている。本例では、吸気口510として、複数の第一吸気口511が設けられている。
【0086】
変形例1の流路5では、第一吸気口511から排気口520までの第一流路51、第二流路52、及び第三流路53に沿った長さが全て同じである。変形例1の流路5は、円形路533が
図2に示す第一流路51がつながっていないことから、シンプルである。
【0087】
〔変形例2〕
変形例2の第三流路53は、
図5に示すように、中心部531から放射状に延びる直線状の複数の分岐路532を備える。本例では、8本の分岐路532が配置されている。8本の分岐路532は、基体2の周方向に等間隔に並ぶように配置されている。各分岐路532の長さは同じである。各分岐路532の長さは、
図2に示す加熱対象10の周縁部に届く長さである。中心部531には、
図2に示す第二流路52がつながっている。各分岐路532の先端部には、
図2に示す第一流路51がつながっている。本例では、吸気口510として、複数の第一吸気口511が設けられている。
【0088】
変形例2の第三流路53は、実施形態1の第三流路53と比較して、分岐路532の数が多く、
図3に示す円形路533を備えない。
【0089】
変形例2の流路5では、加熱対象10の周縁部により多くの第一吸気口511が配置される。変形例2の流路5では、第一吸気口511から排気口520までの第一流路51、第二流路52、及び第三流路53に沿った長さが全て同じである。よって、変形例2の流路5では、加熱対象10の周縁部を第一面21の周方向に均一に真空吸着し易い。変形例2の流路5は、直線状の分岐路532で構成されているためシンプルである。
【0090】
〔変形例3〕
変形例3の第三流路53は、
図6に示すように、円形路533と連結路534とを備える。円形路533は、
図2に示す加熱対象10の周縁部に向かい合うように設けられた円形状の流路である。連結路534は、中心部531と円形路533とをつなぐ。連結路534の数は一つである。
【0091】
変形例3の流路5では、吸気口510として、複数の第一吸気口511が円形路533に沿って等間隔に配置されている。変形例3の流路5では、実施形態1等に比較して、基体2の中心領域に配置される第三流路53が少ない。よって、変形例3の流路5では、発熱体4からの伝熱が第三流路53で阻害され難い。
【0092】
〔変形例4〕
変形例4の第三流路53は、
図7に示すように、径の異なる二つの円形路533と複数の連結路534とを備える。二つの円形路533のうち大径の円形路533は、
図2に示す加熱対象10の周縁部に向かい合うように設けられた円形状の流路である。二つの円形路533のうち小径の円形路533は、
図2に示す加熱対象10の中心部と周縁部との間の環状部分に向かい合うように設けられた円形状の流路である。複数の連結路534のうちの一つは、中心部531と小径の円形路533とをつなぐ。複数の連結路534のうちの残りの四つは、小径の円形路533と大径の円形路533とをつなぐ。
【0093】
変形例4の流路5では、吸気口510として、複数の第一吸気口511が大径の円形路533に沿って等間隔に配置されている。変形例4の流路5では、変形例3に比較して、第三流路53による気体の流通性が確保され易い。
【0094】
〔変形例5〕
変形例5の第三流路53は、
図8に示すように、
図5に示す変形例2の第三流路53に更に円形路533を備える。円形路533は、複数の分岐路532の先端部をつなぐように設けられている。変形例5の流路5では、変形例2に比較して、第三流路53による気体の流通性が確保され易い。
【0095】
〔変形例6〕
変形例6の第三流路53は、
図9に示すように、中心部531から放射状に延びる曲線状の複数の分岐路532を備える。変形例6の第三流路53は、変形例2の第三流路53と比較して、分岐路532が曲線状である点が異なり、その他の点は同じである。変形例6の流路5では、変形例2の流路5と同様に、加熱対象10の周縁部を第一面21の周方向に均一に真空吸着し易い。変形例6の流路5では、変形例2に比較して、曲線の曲がり具合で流通抵抗を調整し易い。
【0096】
<実施形態2>
図10を参照して、実施形態2のヒータ1を説明する。実施形態2のヒータ1は、実施形態1のヒータ1と比較して、発熱体4と第三流路53との順序が入れ替わっている。実施形態1のヒータ1では、第三流路53は、発熱体4よりも第二面22側に配置されている。実施形態2のヒータ1では、基体2の内部に第一面21側から第二面22側に向かって順に、高周波電極3、発熱体4、及び第三流路53が配置されている。実施形態2のヒータ1において、実施形態1のヒータ1に対して、発熱体4と第三流路53との順序が入れ替わっている点以外の構成は同じである。
【0097】
高周波電極3と発熱体4との基体2の厚さ方向の間隔は、例えば2mm以上12mm以下、更に4mm以上8mm以下である。発熱体4と第三流路53との基体2の厚さ方向の間隔は、例えば2mm以上12mm以下、更に4mm以上8mm以下である。
【0098】
実施形態2のヒータ1は、実施形態1のヒータ1と同様の効果を奏する。実施形態2のヒータ1では、第三流路53が発熱体4よりも第二面22側に配置されていることで、発熱体4と第一面21との間に第三流路53が存在しない。つまり、第一面21に載置された加熱対象10と発熱体4との間にある基体2の厚さが均一に確保され易い。そのため、実施形態2のヒータ1では、実施形態1のヒータ1に比較して、発熱体4からの伝熱は第三流路53で阻害されることがより抑制され易い。言い換えると、実施形態2のヒータ1では、実施形態1のヒータ1に比較して、基体2を介した加熱対象10への伝熱が基体2の径方向及び周方向に均一に行われ易い。
【0099】
<実施形態3>
図11を参照して、実施形態3のヒータ1を説明する。実施形態3のヒータ1は、実施形態1のヒータ1に対して、基体2の内部に配置されたシールド電極6を更に備える。実施形態3のヒータ1において、実施形態1のヒータ1に対して、シールド電極6を更に備える点以外の構成は同じである。
【0100】
≪シールド電極≫
シールド電極6は、第一面21に平行な面内であって、高周波電極3と第三流路53との間の面内に配置されている。本例では、基体2の内部に第一面21側から第二面22側に向かって順に、高周波電極3、シールド電極6、第三流路53、及び発熱体4が配置されている。基体2では、基体2の構成材料によっては発熱体4による加熱で基体2の体積抵抗率が低下し得ること、及び流路5内が減圧されることによって、第三流路53で放電が生じ易い。シールド電極6は、第三流路53内で放電が生じることを抑制する機能を備える。シールド電極6は、更に発熱体4への高周波ノイズの影響を抑制する機能も備える。シールド電極6は接地されている。シールド電極6は、図示しない電力線につながっている。電力線は、支持体7の内側を通ってチャンバー8の外部に引き出されている。
【0101】
シールド電極6は、円板状の形状を有する。シールド電極6は、高周波電極3よりも大きい直径を有する。シールド電極6は、基体2の内部に埋め込まれている。シールド電極6と高周波電極3との基体2の厚さ方向の間隔は、例えば1mm以上12mm以下、更に2mm以上8mm以下である。シールド電極6と第三流路53との基体2の厚さ方向の間隔は、例えば1mm以上12mm以下、更に2mm以上8mm以下である。
【0102】
シールド電極6は、更に第三流路53の側部に向かい合うように基体2の厚さ方向にも配置されていてもよい。
【0103】
シールド電極6の材質は、例えば、高周波電極3と同様の金属である。シールド電極6の材質と高周波電極3の材質とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0104】
実施形態3のヒータ1は、実施形態1のヒータ1と同様の効果を奏する。実施形態3のヒータ1では、シールド電極6を更に備えることで、第三流路53を構成する空間で放電が生じることが抑制される。第三流路53を構成する空間で放電が生じると、エネルギーロスによって成膜性が悪化する。他に、第三流路53を構成する空間で放電が生じると、基体2にダメージが生じ、ヒータ1の寿命が短くなる。実施形態3のヒータ1では、実施形態1のヒータ1に比較して、上記放電を抑制することで、成膜性が向上され、更にヒータ1の寿命の低下が抑制される。
【0105】
<実施形態4>
図12を参照して、実施形態4のヒータ1を説明する。実施形態4のヒータ1は、実施形態2のヒータ1に対して、基体2の内部に配置されたシールド電極6を更に備える。実施形態4のヒータ1において、実施形態2のヒータ1に対して、シールド電極6を更に備える点以外の構成は同じである。シールド電極6の構成は、実施形態3のヒータ1におけるシールド電極6と同じである。
【0106】
本例では、基体2の内部に第一面21側から第二面22側に向かって順に、高周波電極3、発熱体4、シールド電極6、及び第三流路53が配置されている。シールド電極6と発熱体4との基体2の厚さ方向の間隔は、例えば1mm以上12mm以下、更に2mm以上8mm以下である。
【0107】
実施形態4のヒータ1では、実施形態3のヒータ1と同様に、第三流路53を構成する空間で放電が生じることが抑制されることで、成膜性が向上され、更にヒータ1の寿命の低下が抑制される。
【0108】
<実施形態5>
図13を参照して、実施形態5のヒータ1を説明する。実施形態5のヒータ1は、実施形態4のヒータ1に対して、シールド電極6の位置が異なる。実施形態5のヒータ1は、シールド電極6の位置を除いて実施形態4のヒータ1と同じ構成を備える。
【0109】
本例では、基体2の内部に第一面21側から第二面22側に向かって順に、高周波電極3、シールド電極6、発熱体4、及び第三流路53が配置されている。高周波電極3とシールド電極6との基体2の厚さ方向の間隔は、例えば1mm以上12mm以下、更に2mm以上8mm以下である。シールド電極6と発熱体4との基体2の厚さ方向の間隔は、例えば1mm以上12mm以下、更に2mm以上8mm以下である。
【0110】
実施形態5のヒータ1では、実施形態4のヒータ1と同様に、第三流路53を構成する空間で放電が生じることが抑制される。この放電の抑制により、成膜性が向上され、更にヒータ1の寿命の低下が抑制される。
【0111】
[試験例1]
試験例1では、基体に流路を設け、その流路の配置が加熱対象への均熱性及び加熱対象への成膜性におよぼす影響を調べた。
【0112】
≪試験体≫
以下の試験体1-1、1-2、1-3、及び1-4を準備した。いずれの試験体も、基体の内部に高周波電極及び発熱体を備える。試験体1-1、1-2、及び1-3は、基体の内部に更に流路を備える。試験体1-4は、基体の内部に流路を備えない。試験体1-1、1-2、及び1-3は、高周波電極、発熱体、及び流路の一部である第三流路の配置順序が異なる。いずれの試験体も、基体の材質、形状、及びサイズは同じである。いずれの試験体も、高周波電極の材質、形状、及びサイズは同じである。いずれの試験体も、発熱体の材質、形状、及びサイズは同じである。試験体1-1、1-2、及び1-3において、第三流路の形状及びサイズは同じである。各試験体における高周波電極、発熱体、及び第三流路の配置順序は、以下の通りである。
【0113】
試験体1-1では、基体の第一面側から第二面側に向かって順に、高周波電極、第三流路、及び発熱体が配置されている。試験体1-1は、
図2に示すヒータ1と同じである。
試験体1-2では、基体の第一面側から第二面側に向かって順に、高周波電極、発熱体、及び第三流路が配置されている。試験体1-2は、
図10に示すヒータ1と同じである。
試験体1-3では、基体の第一面側から第二面側に向かって順に、第三流路、高周波電極、及び発熱体が配置されている。
試験体1-4では、基体の第一面側から第二面側に向かって順に、高周波電極、及び発熱体が配置されている。
表1に示す配置順序では、左側が第一面側、右側が第二面側として記載している。
【0114】
各試験体において、基体の第一面に加熱対象を載置した状態の温度分布をシミュレーションにて求めた。
【0115】
≪均熱性≫
発熱体に給電する条件は、常温から500℃まで昇温させ、5時間保持とした。その後、加熱対象に複数の測定点を設定し、各測定点の温度を求めた。上記複数の測定点は、加熱対象の中心点、及び加熱対象の周縁部を周方向に等間隔に設けた。複数の測定点における最も高い温度と最も低い温度との差を求めた。上記差が小さいほど、均熱性に優れる。表1に示す均熱性の評価は次の通りである。「AA」は、上記差が実質的にゼロであり、均熱性に非常に優れる。「A」は、上記差があるものの小さく、均熱性に優れる。「B」は、上記差が大きく、均熱性に劣る。「C」は、上記差が非常に大きく、均熱性に非常に劣る。均熱性の評価は、既知のウエハ温度計を用いて、例えば17点の測定点での測温値に基づいて評価できる。
【0116】
≪成膜性≫
プラズマ処理により加熱対象に薄膜を形成し、加熱対象の中心点、及び加熱対象の周縁部を周方向に等間隔に設けた複数の測定点における薄膜の最も厚い厚さと最も薄い厚さとの差を求める。上記差が小さいほど、成膜性に優れる。表1に示す成膜性の評価は次の通りである。「A」は、上記差が小さく、成膜性に優れる。「C」は、上記差が非常に大きく、成膜性に非常に劣る。成膜性の評価は、例えば49点の測定点について既知の膜厚計を用いて測定することができる。
【0117】
【0118】
≪均熱性に関して≫
表1に示すように、高周波電極が基体内の厚さ方向の最も第一面側に位置し、かつ流路を備える試験体1-1及び1-2は、均熱性に優れる。試験体1-1及び1-2では、流路によって加熱対象が基体の第一面に真空吸着されることで、加熱対象が全面にわたって第一面に接触することができたと考えられる。よって、試験体1-1及び1-2では、加熱対象を全面にわたって均一に加熱できたと考えられる。特に、試験体1-2では、第三流路が発熱体よりも第二面側に位置することで、均熱性に非常に優れる。試験体1-2では、発熱体と第一面との間に第三流路が存在しないので、第一面に載置された加熱対象と発熱体との間にある基体の厚さが均一に確保され、発熱体からの伝熱が第三流路で阻害され難いと考えられる。
【0119】
第三流路が基体内の厚さ方向の最も第一面側に位置する試験体1-3は、均熱性に劣る。試験体1-3では、第三流路が第一面に近過ぎることで、第三流路による伝熱の阻害の影響を大きく受けたと考えられる。流路を備えない試験体1-4は、均熱性に非常に劣る。試験体1-4では、流路を備えないことで加熱対象の反りが矯正されず、加熱対象が全面にわたって第一面に接触できていないと考えられる。
【0120】
≪成膜性に関して≫
表1に示すように、高周波電極が基体内の厚さ方向の最も第一面側に位置し、かつ流路を備える試験体1-1及び1-2は、成膜性に優れる。試験体1-1及び1-2では、流路によって加熱対象が基体の第一面に真空吸着されることで、加熱対象が全面にわたって第一面に接触することができると考えられる。高周波電極が第一面に平行な面内に配置されていることで、加熱対象と高周波電極との間にある基体の厚さが均一に確保される。シャワーヘッドは第一面に平行に配置されているため、加熱対象とシャワーヘッドとの間隔が均一に確保される。よって、試験体1-1及び1-2では、プラズマ処理による加熱対象への成膜のばらつきが抑制されると考えられる。
【0121】
第三流路が基体内の厚さ方向の最も第一面側に位置する試験体1-3は、成膜性に非常に劣る。試験体1-3では、第一面と高周波電極との間に第三流路が存在し、加熱対象と高周波電極との間にある基体の厚さが不均一になることで、成膜のばらつきが生じると考えられる。流路を備えない試験体1-4は、成膜性に非常に劣る。試験体1-4では、流路を備えないことで加熱対象の反りが矯正されず、加熱対象が全面にわたって第一面に接触できないと考えられる。
【0122】
[試験例2]
試験例2では、試験例1における試験体1-1及び1-2の各々に更にシールド電極を設け、シールド電極が加熱対象への成膜性及びヒータ寿命におよぼす影響を調べた。
【0123】
≪試験体≫
以下の試験体2-1、2-2、2-3、2-4、及び2-5を準備した。試験体2-1は、試験体1-1と同じである。試験体2-2は、試験体1-2と同じである。試験体2-3は、試験体2-1に更にシールド電極を配置した。試験体2-4及び試験体2-5は、試験体2-2に更にシールド電極を配置した。試験体2-4と2-5は、シールド電極6の位置が異なる。試験体2-3、2-4、及び2-5において、シールド電極の材質、形状、及びサイズは同じである。試験体2-3、2-4、及び2-5は、高周波電極、発熱体、第三流路、及びシールド電極の配置順序が異なる。各試験体における高周波電極、発熱体、第三流路、及びシールド電極の配置順序は、以下の通りである。
【0124】
試験体2-3では、基体の第一面側から第二面側に向かって順に、高周波電極、シールド電極、第三流路、及び発熱体が配置されている。試験体2-3は、
図11に示すヒータ1と同じである。
試験体2-4では、基体の第一面側から第二面側に向かって順に、高周波電極、発熱体、シールド電極、及び第三流路が配置されている。試験体2-4は、
図12に示すヒータ1と同じである。
試験体2-5では、基体の第一面側から第二面側に向かって順に、高周波電極、シールド電極、発熱体、及び第三流路が配置されている。試験体2-5は、
図13に示すヒータ1と同じである。
表2に示す配置順序では、左側が第一面側、右側が第二面側として記載している。
【0125】
各試験体において、基体の第一面に加熱対象を載置する。各試験体においては、流路の一部である第二流路の排気口に吸引管を接続し、流路を介して加熱対象を基体の第一面に真空吸着する。
【0126】
≪成膜性≫
プラズマ処理により加熱対象に薄膜を形成する。加熱対象に複数の測定点を設定し、各測定点における薄膜の厚さを評価する。上記複数の測定点は、加熱対象の中心点、及び加熱対象の周縁部を周方向に等間隔に設ける。所定時間でのプラズマ処理で各測定点における薄膜の厚さが所定の厚さになっているか否かを調べる。表2に示す成膜性の評価は次の通りである。「A」は、所定時間で所定の厚さの薄膜が得られており、成膜性に優れる。「B」は、所定時間で所定の厚さまで成膜できておらず、成膜性に劣る。
【0127】
≪ヒータ寿命≫
プラズマ処理により加熱対象に薄膜を形成する作業を10000回行い、基体に損傷が生じるか否かを確認する。表2に示すヒータ寿命の評価は次の通りである。「A」は、基体に損傷が見受けられない。「B」は、基体に若干の損傷が見受けられる。
【0128】
【0129】
≪成膜性に関して≫
表2に示すように、高周波電極と第三流路との間にシールド電極を備える試験体2-3、2-4、及び2-5は、成膜性に優れる。試験体2-3、2-4、及び2-5では、シールド電極によって第三流路を構成する空間で放電が生じることが抑制されると考えられる。よって、エネルギーロスが生じることなく、成膜が良好に行われると考えられる。一方、シールド電極を備えない試験体2-1及び2-2は、成膜性に劣る。試験体2-1及び2-2では、第三流路を構成する空間で放電が生じ、エネルギーロスによって成膜に悪影響がおよぶと考えられる。
【0130】
≪ヒータ寿命に関して≫
表2に示すように、高周波電極と第三流路との間にシールド電極を備える試験体2-3、2-4、及び2-5は、基体に損傷が生じ難い。試験体2-3、2-4、及び2-5では、シールド電極によって第三流路を構成する空間で放電が生じることが抑制されると考えられる。よって、基体が損傷するような悪影響はないと考えられる。一方、シールド電極を備えない試験体2-1及び2-2は、基体に損傷が生じる。試験体2-1及び2-2では、第三流路を構成する空間で放電が生じ、放電によって基体が損傷するような悪影響がおよぶと考えられる。
【符号の説明】
【0131】
1 ヒータ
2 基体、21 第一面、22 第二面
3 高周波電極
4 発熱体
5 流路
51 第一流路
510 吸気口、511 第一吸気口、512 第二吸気口、513 第三吸気口
52 第二流路、520 排気口
53 第三流路、
531 中心部、532 分岐路、533 円形路、534 連結路
6 シールド電極
7 支持体、71 第一端部、72 第二端部
8 チャンバー、80 貫通孔
81 シャワーヘッド
9 吸引管
10 加熱対象
D1,D2,D3 間隔
D5 深さ、W5 幅