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特許7391301磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/02 20060101AFI20231128BHJP
   H02J 50/27 20160101ALI20231128BHJP
【FI】
H01Q7/02
H02J50/27
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020563278
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 JP2019050477
(87)【国際公開番号】W WO2020138022
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018241880
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(73)【特許権者】
【識別番号】506087163
【氏名又は名称】タイヨー電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124718
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 建
(74)【代理人】
【識別番号】100136216
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 恵美
(72)【発明者】
【氏名】庄司 英一
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-186955(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0143192(US,A1)
【文献】実開昭55-150508(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第04431603(DE,A1)
【文献】特開平10-335922(JP,A)
【文献】特開2001-111325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/02
H02J 50/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝搬する電波の磁界成分から電磁誘導を介して電磁界エネルギーを収穫し、これを外部に供給し得る磁界型のエネルギーハーベスタにおいて、
始端と終端とを有する導電性の可撓性の線材をN回巻回させた巻数Nのフレキシブルコイルと、
前記フレキシブルコイルを所定の長さLのループに結束し、前記線材の始端と終端とを該ループから取り出し可能な結束手段と、
前記ループから取り出された前記線材の始端と終端とが接続される接続回路と、を備え、
前記電波の到来方向に対して、前記ループの張る面(以下「ループ面」という)が該電波の磁界成分を横切るように該ループを配置することにより、電磁誘導を介してエネルギーを収穫し、
前記接続回路に該エネルギーを供給可能な磁界型エネルギーハーベスタであって、
前記ループの形状を自在に変形可能な磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項2】
前記結束手段は、
前記線材をガイドする磁界に影響を与えないフレキシブルな素材であって、
ワイヤ、スリーブ状メッシュ、スリーブ状スパイラル線、チューブ状メッシュ、チューブ状スパイラル線、スリーブ又はチューブから選ばれるいずれか1つの形態である、請求項1に記載の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項3】
前記結束手段は、
前記フレキシブルコイルの1又は複数の位置において、これを束ねる結束手段であって、
磁界に影響を与えないフレキシブルな素材で形成された、バインダ、紐、紐状バンド、帯状バンド、輪状バンド、テープ、接着剤から選ばれるいずれか1つの形態である、
請求項1に記載の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項4】
一端と他端とを有する長さLのフレキシブルなスリーブ又はチューブに、該一端と他端とにその始端と終端とを配置させた長さLの前記線材が、N本絶縁されて並行に接合されたフラットケーブルにおいて、
前記フラットケーブルの前記一端と他端とが接続されて前記ループが形成されると共に、
該一端に配置させたN本の前記線材の始端が、該線材とは異なる任意の線材の他端と1対1に接続されて、長さN×Lの線材が形成されると共に、接続されなかった始端と終端とが前記接続回路に接続されており、
前記長さN×Lの線材が巻数Nのフレキシブルコイルとして長さLのループに結束された、請求項1に記載の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項5】
少なくとも同調コンデンサ回路及び整流回路を接続して請求項1に記載の接続回路を構成したフレキシブルエネルギーハーベスタであって、
該接続回路に出力機器を接続して、外部電源を用いずに該出力機器を作動させる発電機として機能する磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項6】
少なくとも前記同調コンデンサ回路及び前記整流回路及び蓄電回路を順に接続して請求項5に記載の接続回路を構成したフレキシブルエネルギーハーベスタであって、
電波からエネルギーを獲得して蓄電する蓄電機として機能する磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項7】
前記整流回路を昇圧回路のコッククロフト・ウォルトン回路とした、請求項6に記載の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項8】
少なくとも前記同調コンデンサ回路及び前記整流回路を順に接続して請求項5に記載の接続回路を構成したフレキシブルエネルギーハーベスタであって、
前記接続回路にイヤホン又はスピーカーを接続して、所望の周波数の電波のラジオ放送が聞こえる無電源ラジオとして機能する磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項9】
少なくとも同調コンデンサ回路を接続して請求項1に記載の接続回路を構成したフレキシブルエネルギーハーベスタであって、
前記接続回路に発光ダイオードを接続して、特定の周波数の電波からエネルギーを獲得してLEDライトとして機能する磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項10】
少なくとも同調コンデンサ回路を接続して請求項1に記載の接続回路を構成し、ラジオの近傍で無電源磁界アンテナとして用いるフレキシブルエネルギーハーベスタであって、
前記無電源磁界アンテナとして特定周波数のラジオ放送電波を受信するとともに、
外部ラジオの内蔵コイルと相互誘導により共振して、前記特定周波数のラジオ放送電波から得た電磁界エネルギーを該外部ラジオの内蔵コイルに伝搬し、
該外部ラジオの受信感度を高め得る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項11】
前記ループに、略180度の捻りをn回入れることにより形成されたn個のノードにおいて、n回の該捻りにより形成されたn+1個の小ループを夫々反転させ、重畳させた磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタであって、
前記フレキシブルコイルの巻数が(n+1)×Nで、前記ループの直径が1/(n+1)の前記小ループにサイズダウンされた、請求項1に記載の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項12】
請求項11に記載のサイズダウンされたフレキシブルエネルギーハーベスタにおいて、
n+1個の小ループ面の一部を、その一部を除いた残りの小ループ面に対して起立させ、
前記小ループ面の一部に結束されたフレキシブルコイルの巻回方向が、前記残りの小ループ面に結束されたフレキシブルコイルの巻回方向に対して垂直方向のベクトル成分を有する磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項13】
前記線材は、リッツ線、金属線、導電性繊維、炭素繊維、あるいはこれらが撚り線化された材料、又は、これらの材料が絶縁体により被覆された材料から選ばれるいずれか1つの材料から形成される、
請求項1に記載の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【請求項14】
前記結束手段は、
前記線材をガイドする磁界に影響を与えないフレキシブルな材料であって、
天然高分子、合成高分子、半合成高分子、又は金属から選ばれるいずれか1つの材料から形成される、請求項2又は請求項3に記載の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小型軽量で可搬性に優れ、電波の磁界成分変動からエネルギーを収穫する磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁界型アンテナは、基板上にパターンを構成したり、固定枠などの形状がしっかりしたものに線材を複数回数巻くなどして作られている。ループ状のアンテナとしてパイプなどの金属導体支持体を―回ループ状に巻回させたアンテナ部と、同調のための電子回路とを組み合わせて使用するループアンテナと称するものがあるが、これはラジオ受信機用のループアンテナと呼ばれてもいる。
【0003】
また、電源を使わないラジオ受信機は、ゲルマラジオとして知られる。ゲルマラジオは、原理上、電源や電池などのエネルギー源が不要なラジオ受信機であり、その原理から、磁界強度が大きく関わるAMラジオ放送を受信するのに用いられる。しかし、ゲルマラジオを十分に機能させるには、外部アンテナを接続する必要がある。
【0004】
すなわち、無電源ラジオとしてこのゲルマラジオを実用的に超高性能化するカギはアンテナの役割をするラジオコイルにある。もし大きな枠などに電線を巻いたループ状のアンテナをゲルマラジオに用いると、電磁誘導効果が大きくなるので、磁界型アンテナとしてラジオの受信感度が高まる。しかし、ループの径が大きくなると、携帯性や可搬性が損なわれ、室内での使用に支障が出る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来のゲルマラジオは電線を数十メートル程度張った外部アンテナを必要とし、電源が不要であるにもかかわらず、これらの非実用性から現在まで普及に至っていない。しかし、もし、フレキシブルで簡単に、しかも電線に負担をかけずに自在に小型化できるような磁界型アンテナが出来れば、使用時に展開して無電源のラジオ受信機として、すなわち超高性能ゲルマラジオとして具体化できる。そして、上述のような非現実的な外部アンテナを接続する必要がなく、可搬性や携行性優れる小型サイズのそのラジオ受信機単体として完結した系で、実用的に使える超高性能なゲルマラジオを創造するための技術を具体化出来れば、関連分野への応用も含めて大きな波及効果が期待できる。
【0006】
すなわち、上述のような自在に小型化できる磁界型アンテナを創製できれば超高性能ゲルマラジオを実現でき、電池や電源確保の心配が不要な防災ラジオとしても活用できる。さらに、小型化磁界型アンテナは、近年話題となっている電波のエネルギーハーベスティングに利用することができ、AMラジオ放送を利用した電波発電及び蓄電装置用の電磁波回収技術として用いることができる。そして、これを使って、例えば、低消費電力のIоT機器や無線ネツトワーク用の電源装置に応用することもできる。
【0007】
磁界型アンテナについては、従来より数多くの考案がなされており、特許文献1には、「導線の概形よりわずかに大きい程度の細幅をもった扁平状の中空孔を有する管体をループ状に曲げて両端を接近させ、中空孔の内部に導線を横方向に並べて巻回して成るループアンテナ」が開示されている。また、特許文献2には、「合成樹脂の額縁上の枠体に絶縁導線をループ状に巻回したアンテナコイルを収容し、外装に装飾用具を兼ねた構造としたループアンテナ」が開示されている。しかし、これらの考案は、導線を横方向に並べてQ値の高いアンテナを得ることや、装飾性を高めることを課題としており、エネルギーハーベスティングに利用して、更に多くの用途に用いるという技術的思想に至っていない。
【0008】
更に特許文献3には、「弾性を有する長尺状の金属補強体と、上記金属補強体を円弧状に湾曲させ、この金属補強体の両端を連結してループ状とする連結部材と、上記ループ状にされた上記金属補強体に沿って配置された可饒性を有する被覆線材からなるアンテナ素子と、上記ループ状にされた上記金属補強体と上記被覆線材を、ループ状に沿って包み込む包囲部材と、上記ループ状にされた上記金属補強体と上記被覆線材の、このループ状の形態を保持するように上記包囲部材に取り付けられ上記ループ内に張り巡らされて、上記ループ内の空間を覆う可撓性を有するシート状部材とから構成され、上記ループ状にされた上記金属補強体と上記被覆線材を複数の小径のループ状に重層して折り畳み可能とした」アンテナ装置が開示されている。しかし、このループアンテナ装置も、あくまでラジオの付属品としてのアンテナとして受信感度や携帯性の向上を目指したものであり、上記考案と同様に、エネルギーハーベスティングという技術的思想に至っていない。
【0009】
そこで、本発明者が創意工夫を繰り返した結果、フレキシブルで小型化できる磁界型アンテナ実現の試行錯誤から、磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの技術的思想に到達するに至った。すなわち、本発明は、フレキシブルで簡単に小型化でき、かつ指向性のない磁界型アンテナとして機能するため、無電源・無アンテナの超高性能ゲルマラジオ等として具体化でき、AMラジオ放送電波からエネルギーを収穫して様々な用途に使用可能な磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタを提供する。
【0010】
【文献】実開昭56-105906号公報
【文献】実開昭62-203503号公報
【文献】特許3911829号公報
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、伝搬する電波の磁界成分から電磁誘導を介して電磁界エネルギーを収穫し、これを外部に供給し得る磁界型のエネルギーハーベスタにおいて、
始端と終端とを有する導電性の可撓性の線材をN回巻回させた巻数Nのフレキシブルコイルと、前記フレキシブルコイルを所定の長さLのループに結束し、前記線材の始端と終端とを該ループから取り出し可能な結束手段と、前記ループから取り出された前記線材の始端と終端とが接続される接続回路と、を備え、前記電波の到来方向に対して、前記ループの張る面(以下、本明細書において「ループ面」という)が該電波の磁界成分を横切るように該ループを配置することにより、電磁誘導を介してエネルギーを収穫し、前記接続回路に該エネルギーを供給可能な磁界型エネルギーハーベスタであって、前記ループの形状を自在に変形可能である。
【0012】
なお、以下本明細書において、本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタを簡略化して「フレキシブルエネルギーハーベスタ」ないしは「エネルギーハーベスタ」とも記すこととする。また、電波上第2条第1号の定義によれば、電波とは300万MHz以下の周波数の電磁波であるが、本明細書において電磁波を電波と同義に用いることもある。また、「コイル」は電磁気的な意義において用い、その外形を「ループ」として用いることとし、このループが張る面が上記「ループ面」である。
【0013】
このような本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、そのループ面が電波の磁界成分を横切るように、ループ面を当該電波の到来方向に対して平行に配置することにより、電磁誘導によりエネルギーを収穫し、上記接続回路を介して外部に接続した機器に電磁界エネルギーを供給することができる。
【0014】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタにおいて、前記結束手段は、前記線材をガイドする磁界に影響を与えないフレキシブルな素材であって、ワイヤ、スリーブ状メッシュ、スリーブ状スパイラル線、チューブ状メッシュ、チューブ状スパイラル線、スリーブ又はチューブから選ばれるいずれか1つの形態であり得る。
【0015】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタにおいて、前記結束手段は、前記フレキシブルコイルの1又は複数の位置において、これを束ねる結束手段であって、磁界に影響を与えないフレキシブルな素材で形成された、バインダ、紐、紐状バンド、帯状バンド、輪状バンド、テープ、接着剤から選ばれるいずれか1つの形態であってもよい。
【0016】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタにおいて、前記結束手段は、前記線材をガイドする磁界に影響を与えないフレキシブルな材料であって、天然高分子、合成高分子、半合成高分子、又は金属から選ばれるいずれか1つの材料から形成され得る。
【0017】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタにおいて、前記線材は、リッツ線、金属線、導電性繊維、炭素繊維、あるいはこれらが撚り線化された材料、又は、これらの材料が絶縁体により被覆された材料から選ばれるいずれか1つの材料から形成され得る。
【0018】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、一端と他端とを有する長さLのフレキシブルなスリーブ又はチューブに、該一端と他端とにその始端と終端とを配置させた長さLの前記線材が、N本絶縁されて並行に接合されたフラットケーブルにおいて、
前記フラットケーブルの前記一端と他端とが接続されて前記ループが形成されると共に、該一端に配置させたN本の前記線材の始端が、該線材とは異なる任意の線材の他端と1対1に接続されて、長さN×Lの線材が形成されると共に、接続されなかった始端と終端とが前記接続回路に接続されており、前記長さN×Lの線材が巻数Nのフレキシブルコイルとして長さLのループに結束されてもよい。
【0019】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、少なくとも前記同調コンデンサ回路及び前記整流回路を接続して上記接続回路を構成したフレキシブルエネルギーハーベスタであって、
該接続回路に出力機器を接続して、外部電源を用いずに該出力機器を作動させる発電機として機能し得る。
【0020】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、少なくとも前記同調コンデンサ回路及び前記整流回路及び前記蓄電回路を順に接続して上記接続回路を構成したフレキシブルエネルギーハーベスタであって、電波からエネルギーを獲得して蓄電する蓄電機として機能し得る。
【0021】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、前記整流回路を昇圧回路のコッククロフト・ウォルトン回路としてもよい。
【0022】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、少なくとも前記同調コンデンサ回路及び整流回路を順に接続して上記接続回路を構成したフレキシブルエネルギーハーベスタであって、
前記接続回路にイヤホン又はスピーカーを接続して、所望の周波数の電波のラジオ放送が聞こえる無電源ラジオとして機能し得る。
【0023】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、少なくとも同調コンデンサ回路を接続して上記接続回路を構成したフレキシブルエネルギーハーベスタであって、
前記接続回路に発光ダイオードを接続して、特定の周波数の電波からエネルギーを獲得してLEDライトとして機能し得る。
【0024】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、少なくとも同調コンデンサ回路を接続して上記接続回路を構成し、ラジオの近傍で無電源磁界アンテナとして用いるフレキシブルエネルギーハーベスタであって、
前記無電源磁界アンテナとして特定周波数のラジオ放送電波を受信するとともに、外部ラジオの内蔵コイルと相互誘導により共振して、前記特定周波数のラジオ放送電波から得た電磁界エネルギーを該外部ラジオの内蔵コイルに伝搬し、該外部ラジオの受信感度を高め得る。
【0025】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、前記ループに、略180度の捻りをn回入れることにより形成されたn個のノードにおいて、n回の該捻りにより形成されたn+1個の小ループを夫々反転させ、重畳させた磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタであって、
前記フレキシブルコイルの巻数が(n+1)×Nで、前記ループの直径が1/(n+1)の前記小ループにサイズダウンされ得る。
【0026】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、上記サイズダウンされたフレキシブルエネルギーハーベスタにおいて、n+1個の小ループ面の一部を、その一部を除いた残りの小ループ面に対して起立させ、前記小ループ面の一部に結束されたフレキシブルコイルの巻回方向が、前記残りの小ループ面に結束されたフレキシブルコイルの巻回方向に対して垂直方向のベクトル成分を有するようにしてもよい。
【0027】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、前記ループ面の一部を、該ループ面の一部を除いた該ループ面の残りの他部に対して起立させた磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタであって、前記ループ面の一部に結束されたフレキシブルコイルの巻回方向が、前記他部に結束されたフレキシブルコイルの巻回方向に対して垂直方向のベクトル成分を有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、直径がRで長さがL=πRのフレキシブルなループを成すスリーブやチユーブなどの結束手段に、N回巻回させた線材(導電体)を挿入したフレキシブルコイルの構造を持ち、磁界変化に反応してエネルギーを誘発するフレキシブルなエネルギーハーベスタとして機能する。すなわち、フレキシブルコイルから取り出した線材の両端を様々な構成を取り得る接続回路に接続し、外部からこの接続回路に接続する器機に、電波(電磁波)の磁界成分から得た電磁界エネルギーを供給することができる。
【0029】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタにおいて、接続回路は、抵抗回路、整流回路、同調コンデンサ回路、マッチング回路、整流回路、蓄電回路などを含むことができ、これらの構成要素となる回路を適宜組み合わせることにより、様々な用途に応用することができる。例えば、フレキシブルコイルから取り出した線材の両端を、接続回路を同調コンデンサ回路として通称バリコンで接続すると、本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタはループアンテナのコイルとして機能し、一般のラジオ受信機に近づけるだけでラジオの感度を簡単に高めることや、その混信を調節することができる。また、接続回路に抵抗を接続することにより(抵抗回路)、外部に接続する器機が含むコンデンサとの間でインピーダンス整合を行うことができる。
【0030】
その他、接続回路を、同調コンデンサ回路と発光ダイオードを組み合わせて構成すればLEDライトとして機能させることができ、同調コンデンサ回路と整流回路を組み合わせてセラミック・イヤホンを出力回路として接続して構成すれば無電源ラジオを得ることができる。また、接続回路を、同調コンデンサ(同調コンデンサ回路)とダイオード(整流回路)及び電気2重層コンデンサ(蓄電回路)で構成すれば、本発明のエネルギーハーベスタをIoT機器に活用可能な無電源電池として機能させることができる。
【0031】
本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタにおいて、結束手段は、線材をガイドする磁界に影響を与えないフレキシブルな材料を用いればよく、天然高分子、合成高分子、半合成高分子、又は金属の何れの材料を選択してもよい。また、結束手段の素材又は形態も、上記線材をガイドする磁界に影響を与えないフレキシブルな形態であればよく、ワイヤ、スリーブ状メッシュ、スリーブ状スパイラル線、チューブ状メッシュ、チューブ状スパイラル線、スリーブ又はチューブなど幅広い素材又は形態から選択することができる。
【0032】
このような結束手段、すなわち、スリーブやチューブなどの素材に線材を挿入するタイプの結束手段は、従来のループアンテナなどにも使用されていたが、本発明の結束手段は、線材をN回巻回させて形成した周長Lのフレキシブルコイルを、1又は複数の位置で束ねてループが解けないようにするだけの構成であってもよい。このような結束手段は、磁界に影響を与えない紙、木材、高分子、樹脂、プラスチック、ゴムなどのフレキシブルな素材で、フレキシブルコイルをその1又は複数の位置で束ねる、紐状バンド、帯状バンド、輪状バンドなどを形成して用いればよい。ループを束ねる結束手段を脱着自在とし、ループの巻き数を変えて再度結束可能と構成することもできる。あるいは、フレキシブルコイルを液体状の接着剤に浸漬し、これを乾燥させてフレキシブルコイルを拘束する外装の可撓性接着材やゴム材などを結束手段としてもよい。
【0033】
また、本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタに用いる線材は、リッツ線、金属線、導電性繊維、炭素繊維、あるいはこれらが撚り線化された材料、又は、これらの材料が絶縁体により被覆された材料等から選ぶことができる。線材としてリッツ線やフラットケーブル、多芯ケーブルなどを選んだり、フレキシブルスリーブやチューブに入れる線材の状態を変えることで、線間容量を増減できる効果があるので、受信周波数範囲、受信感度、受信起電力を変化させることができる。
【0034】
また、本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタをなすループ(フレキシブルループ又はフレキシブルコイル)は、これに略180度の捻りをn回入れてn個のノードを形成することにより、直径1/(n+1)に小型化されたn+1個のループに分けることができる。このn+1個の小ループを夫々反転させて重畳させれば、フレキシブルコイルの巻数が(n+1)×Nで、その外形であるループの直径が1/(n+1)にサイズダウンされた携行性に優れる磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタを得ることができる。
【0035】
機能上、捻り前後の形状は円形である必要はなく、楕円、不規則なループ状、多角形でも良い。この磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、磁界型アンテナとして良好に作動する特徴を活かして、特に中波放送帯の磁界成分が重要なAMラジオ放送の高感度な無電源ラジオ受信機や、AM放送電波のエネルギーハーベスティングによる電波発電蓄電装置の磁界型アンテナとして機能する。
【0036】
このAMラジオ放送帯を利用する無電源ラジオや電波発電装置でAMラジオ放送を感度良く受信し、電波発電蓄電装置の発電量を増大させるには、より大きな直径をもつ(より面積Sの大きな)コイルが有利である。この磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタをそうした磁界型アンテナのコイルとして応用すれば、1/(n+1)の直径に小型化して持ち運べるし、磁界強度が強い場所ではその小型化した状態でも使用でき、また、使用時に広げて(展開して)使えるので、可搬性の良い、高性能な電波受信装置として使用出来る。すなわち、フレキシブル性を活かして使用時に展開できることで、可搬性の大型磁界型ループアンテナとして使用でき、ラジオの受信感度や混信具合を調節することができる。本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、このような可搬性の大型磁界型ループアンテナを簡単に構成することができ、しかも無電源で作動させることができる。
【0037】
あるいは、本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、電波発電蓄電装置の発電量を増大させるため、大きな直径をもつフレキシブルコイルを壁に埋め込んだり、カートの枠内に通したりして、固定して用いてもよい。磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタのフレキシブルコイルを大きな直径として固定することにより、大きな発電量や蓄電量を得ることができる。
【0038】
エネルギーハーベスタは、フレキシブルループ面の一部を、当該ループ面の一部を除いた該ループ面の残りの他部に対して起立させて、無指向性アンテナとして用いることもできる。すなわち、フレキシブルループ面の一部を残りの他部のループ面に対して角度を付けることにより、指向性から無指向性に切り替えて使えることができる。捻る角度を変えることで、指向性と無指向性のバランスを変化させることができるので、ラジオ放送の混信の調整に役立てることができる。
【0039】
上述した本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタは、線材にフラットケーブルを使用してフレキシブルコイルを作製すると、線間容量を下げることができる。線材を密巻したものに比べて線間容量が下がるので、LC共振において、より電波受信周波数域を広げることができる利点がある。このようなフラットケーブルあるいは多芯ケーブルを用いたフレキシブルエネルギーハーベスタは、リッツ線などの電線を使って作成したフレキシブルエネルギーハーベスタと同様に、形状変形が自在で、線材に負荷を与えずに自然に捻ることが可能であり、小型化は勿論、指向性と無指向性のバランス切り替えもできる効果を有する。
【0040】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタにおいて、前記接続回路を、抵抗回路及び/又は整流回路及び/又は同調コンデンサ回路及び/又はマッチング回路及び/又は蓄電回路を適宜接続して構成することにより、この接続回路に外部から接続するLEDランプやセラミック・イヤホン、スピーカー、ダイナミック・イヤホン、IoT機器やモーターなどの様々な外部機器を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】(a)本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの平面模式図。(b)磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタに用いる線材の斜視図。
図2(a)】本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタのフレキシブルコイルを構成するフラットケーブルの平面模式図。
図2(b)】フラットケーブルにより構成したフレキシブルコイルの正面図。
図2(c)】フラットケーブルにより構成したフレキシブルコイルの平面図。
図2(d)】フラットケーブルにより構成した別の実施例に係るフレキシブルコイルの正面図。
図3】本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタにより構成した、(a)小ループに折り畳んだダウンサイズ型ラジオの斜視図、(b)フレキシブルコイルを無指向性アンテナとして用いるダウンサイズ型ラジオの斜視図。
図4】(a)フレキシブルコイルをスリーブ状メッシュ又はチューブ状メッシュ(結束手段)で結束した構成の本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの正面図。(b)フレキシブルコイルをスリーブ状スパイラル線又はチューブ状スパイラル線(結束手段)で結束した構成の本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの正面図。(c)フレキシブルコイルの数か所をバンド(結束手段)で束ねた構成の本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの正面図。(d)線材を経糸にし、緯糸を結束手段として織物状のフレキシブルコイルとした構成の本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの正面図。
図5】電磁波の磁界成分に対する磁界型ループアンテナの指向性を表す模式図。
図6(a)】フラットケーブルにより構成した本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視写真図。
図6(b)】フラットケーブルを3回巻きにして構成した本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視写真図。
図6(c)】線材を均等にスリーブに8回巻き挿入して構成した本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視写真図。
図6(d)】線材をN字型に配列してスリーブに8回巻き挿入して構成した本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視写真図 。
図7(a)】フラットケーブルからなるフレキシブルコイルを5角形に配置して構成した本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視写真図。
図7(b)】フラットケーブルからなるフレキシブルコイルを4角形に配置して構成した本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視写真図。
図7(c)】フラットケーブルからなるフレキシブルコイルに凹部を形成して配置して構成した本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視写真図。
図7(d)】フラットケーブルからなるフレキシブルコイルに捻れを入れて2重巻きにして構成した本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視写真図。
図8】本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの接続回路を構成する構成要素である抵抗回路の回路図。
図9】本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの接続回路を構成する構成要素である同調コンデンサ回路の回路図。
図10】本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの接続回路を構成する構成要素であるマッチング回路の回路図。
図11】本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの接続回路を構成する構成要素である整流回路の回路図。
図12】本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの接続回路を構成する構成要素である蓄電回路の回路図。
図13】本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの接続回路に接続する出力回路の回路図。
図14】本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの接続回路を構成する構成要素の組み合わせ例を表す回路図。
図15】(a)ループ面を電波到来方向に対して平行に配置した磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視図。(b)1つのループ面を電波到来方向に対して平行に、残りの2つのループ面を電波到来方向に対して45度に配置した磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視図。(c)1つのループ面を電波到来方向に対して平行に、残りの2つのループ面を電波到来方向に対して90度に配置した磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの斜視図。
図16】接続回路を整流回路とし、これにピックアップとしてフェライトバーコイルを接続して外部のラジオ受信機の同調型のループアンテナとして機能する、本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの模式図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの実施形態及び実施例、その使用方法について説明する。なお、以下各図面を通して同一の構成要素には同一の符号を使用するものとする。
【0043】
(1)磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの実施形態
[磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ]
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、図1(a)に示すように、始端3aと終端3bとを有する導電性の可撓性の線材3(図1(b)参照)をN回巻回させたフレキシブルコイル4と、このフレキシブルコイル4を所定の長さLのループ10に結束し、線材3の始端3aと終端3bとをループ10から取り出し可能な結束手段20と、ループ10から取り出された線材3の始端3aと終端3bとが接続される接続回路50と、を備える。このループ10から取り出された線材3の始端3aと終端3bとは連結部40に挿入され、この連結部40の内部で接続回路50に接続されてもよい。
【0044】
このような本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタにおいて、フレキシブルコイル4は電磁波の磁界成分と相互作用して電磁誘導により起電することができるため、下記するように様々な用途に用いることができる。起電力を大きくするには、ループ10の直径2Rや周長Lを大きくする必要があるが、フレキシブルエネルギーハーベスタ1を携帯可能とするのであれば、ループ10又はフレキシブルコイル4の直径2Rは60cm程度が好ましく、したがってその周長Lは2m程度が好適である。携帯性にこだわらなければ、本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタの直径2Rや周長Lは特に限定されず、大きな発電量や蓄電量を得るため、大きな直径をもつフレキシブルコイルを壁に埋め込んだり、カートの枠内に通したりして固定して用いてもよく、用途に応じて自由にその大きさを選択することができる。
【0045】
このような本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1において、フレキシブルコイル4は、例えばAMラジオ局から発信される電磁波と相互作用して起電することができる。理論的に、一般のコイルの共振周波数fmaxは、fmax=1/2π(LC)1/2で表されるので、フレキシブルコイル4を構成する線材3の材料やループ10の大きさ、巻き数などを選択することによってLCの大きさを調整し、共振する電磁波の周波数を選ぶことができる。ただし、現実に用いるフレキシブルコイル4には、ループ10の形状や配置される線材3同士の位置関係等に依存して、線材3間で浮遊容量が生じ、この浮遊容量が上記容量Cに含まれる。
【0046】
AMラジオ放送の周波数域は代表的には1MHzのオーダーなので、AMラジオ放送局から発信される電波の波長は100mのオーダーである。したがって、フレキシブルコイル4のループ10の大きさや巻き数などを適当に選択することによって、fmaxを1MHz程度に調整し、AMラジオ放送の電波からエネルギーを収穫することができる。本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、このように電波(電磁波)からエネルギーを収穫し、生じた誘導電流を接続回路50へ入力させ、接続回路50の構成に従って外界に出力することができる。なお、AMラジオ放送局の電波を例にとって説明したが、本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタがエネルギーを収穫する電波周波数域がAMラジオの1MHz付近の電波周波数域に限定されるわけではなく、電波の変調モードや周波数は特に限定されない。
【0047】
本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタが上記のように電波からエネルギーを収穫するためには、電波に対するフレキシブルコイル4の配置が重要になる。図5には、フレキシブルコイル4を含む一般的な磁界型ループアンテナの平面図が描かれており、ループアンテナのループが張る面、すなわちループ面(あるいはコイル面)が左右方向を向いている。図5において、8字状に描かれた線は、磁界型ループアンテナに対して360度の全方位から来る電磁波に対する感度の等高線を表している。すなわち、図5は磁界型ループアンテナの指向性を表す模式図である。図5より、ループアンテナのループ面を電波の到来方向と平行になるようにループアンテナを配置すれば、最大のエネルギーを収穫することができる。
【0048】
例えば、図15(a)は、下記するようにループ10を3重に重畳したダウンサイズ型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の応用例であるが、電波の到来方向が右手前から左奥方向(あるいはその逆方向)であるとき、ループ面をこの電波到来方向に対して平行に配置すれば、最も効率的にエネルギーを収穫することができる。すなわち、電波の磁界成分は電波の到来方向とは垂直方向に変動しているので、フレキシブルコイル4のループ面10を電波到来方向に射影した面積分だけ電磁誘導に寄与することができる。従って、フレキシブルコイル4のループ面10の電波到来方向に対して傾くほど出力は減少し、ループ面10が電波到来方向に対して垂直になると、電磁誘導は起こらず、エネルギー収穫はゼロとなる。
【0049】
したがって、本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、上記のように、ループ10から取り出された線材3の始端3aと終端3bとが接続回路50により接続されるので、フレキシブルコイル4のループ面を適切に配置して電波(電磁波)により電磁誘導を生じさせてエネルギーを収穫し、接続回路50からこれを取り出すことができる。そして、接続回路50の構成を適宜選択することにより、超高感度な無電源ラジオ受信機や電源式ラジオの高性能受信機のラジオコイル、電波のエナジーハーベスティングによる電波発電蓄電装置、無電源な防災ラジオなどのラジオコイルとして機能させることができる。
【0050】
(1-1)線材
本明細書において、上記導電性の可撓性の線材を単に「線材」ともいうが、この線材3は電子やホールなどが移動可能な導電性であり、形状を自在に変形できる可撓性のあるいはフレキシブルな線状導電体である。本明細書において、この「線材」は被覆されずにそのまま用いられることもあるが、塩化ビニールや絹糸のような絶縁体で被覆されて用いられることもあり、特に絶縁体で被覆する必要がある場合は、以下「被覆線材」3ともよぶこととする。
【0051】
[線材の材料]
このような線材3は、例えばリッツ線、金属線、導電性繊維、炭素繊維、あるいはこれらが撚り線化された材料、又は、これらの材料が絶縁体により被覆された材料により形成するのが好適であるが、これらの例に限定されるわけではない。本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、線材3をN回巻回させてフレキシブルコイル4を形成し、このフレキシブルコイル4を所定の長さLのループに結束させて構成するので、準備する線材3の長さは約N×L以上であり、線材3の始端3aと終端3bとは接続回路50に接続される。
【0052】
(1-2)結束手段
本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1において、線材3(又は被覆線材3)のガイドとなる結束手段20の素材は、フレキシブルで磁界に影響を与えないものならよく、紙、木材、高分子、樹脂、プラスチック、ゴムなどが好ましく用いられる。そしてこれらの結束手段20を形成するこれらの素材の形態は、磁界に影響を与えない形態であれば特に限定されず、織物状、メッシュ状、スパイラル状などにして用いてもよい。このような素材で製作された磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、自在に形を変形できる特徴を持つループ10を有する。図1(a)において磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1はループ状になっているが、図7(a)~(d)のように、結束手段20が楕円状、不規則なループ状、多角形状などに結束しても機能上は特に支障が無<使用できる。
【0053】
[結束手段の材料]
このような結束手段20は、線材3をガイドする磁界に影響を与えないフレキシブルな材料で形成される。結束手段20の材料は、天然高分子、合成高分子、半合成高分子、又は金属から選ばれるいずれか1つの材料から形成されるのが好適である。
【0054】
[結束手段の形態]
そして、上記のような材料から形成される結束手段20の形態は、ワイヤ、スリーブ状メッシュ、スリーブ状スパイラル線、チューブ状メッシュ、チューブ状スパイラル線、スリーブ又はチューブなどが好ましく用いられるが(図4(a)、(b)参照)、線材3をガイドする磁界に影響を与えないフレキシブルな素材であれば特に限定されない。
【0055】
上述のようなスリーブ又はチューブなどの結束手段20は、その素材に線材3を挿入して結束するが、本発明の結束手段20は、線材3をN回巻回させて形成した周長Lのフレキシブルコイル4を、1又は複数の位置で図4(c)のように束ねてループ10が解けないようにするだけの構成であってもよい。すなわち、結束手段20は、磁界に影響を与えないフレキシブルな素材で形成されて、フレキシブルコイル4をその1又は複数の位置で束ねる、紐状バンド、帯状バンド、輪状バンドなどであってよい。ループ10を束ねる結束手段20は、上記のように紙、木材、高分子、樹脂、プラスチック、ゴムなどを用いることができる。また、ループ10を束ねる結束手段20を脱着自在とし、フレキシブルループ10の巻き数を変えて再度結束可能なように構成してもよい。あるいは、フレキシブルコイル4を液体状の接着剤に浸漬し、これを乾燥させてフレキシブルコイル4を拘束する外装の可撓性接着材やゴム材などを結束手段20としてもよい。
【0056】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、このような線材3(又は被覆線材3)を結束手段20により所定の長さLのループ10に結束して用いるが、このループ形状を自在に変形可能であり、例えば折畳んで収納して携帯することもできる。以下、磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1のループ10を形成するために用いる結束手段20について、実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0057】
実施例1に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の結束手段20は、中空部を有し、中空部に、線材3をN回巻回させて挿入可能な長さLのフレキシブルな中空管である。例えば、図1(a)に示すような、枠管、スリーブ、又はチューブ管などが実施例1に係る結束手段20として用いられ、不織布、織物などで上記中空管を形成してもよい。図4(a)、(b)のように、スリーブ又はチューブ管等は、上記ワイヤ、スリーブ状メッシュ、スリーブ状スパイラル線、チューブ状メッシュ、チューブ状スパイラル線などであってもよい。
【0058】
具体的に、図1(b)のような線材3としてリッツ撚り線、ポリ塩化ビニルで被覆した撚り電線、被覆単線などを17m準備した(以下、「実施例1に係る線材3」ともいう)。そして、長さ2mで内径5mmのポリウレタンチューブを1回の輪形状(L=2mのループ10)にして結束手段20とし(以下、「実施例1に係る結束手段20」ともいう)、これに実施例1に係る線材3を8回通してフレキシブルコイル4を形成した(以下、「実施例1に係るフレキシブルコイル4」ともいう)。すなわち、実施例1に係るフレキシブルコイル4は、巻数N=8で周長L=2m、直径約 0.63m(2/π m)のフレキシブルコイル4であり、中空管の輪状ポリウレタンチューブの結束手段20により結束し、このフレキシブルコイル4を形成する線材3の始端3aと終端3b(図1(b)参照)に接続回路50を接続して、図1(a)のような磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1を得た(以下、「実施例1に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1」ともいう)。
【実施例2】
【0059】
実施例2に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の結束手段20は、図4(c)のように、フレキシブルコイル4の1又は複数の位置において、これを結束可能な結束具である。あるいは、それぞれの結束手段20が、夫々フレキシブルコイル4を構成するN本の線材3を全て束ねるのでなく、複数の結束手段20が数本ずつの線材3を束ねて全体でフレキシブルコイル4を結束していてもよい。例えば、絶縁体で線材3を被覆した被覆線材3を結束可能なバインダ、紐、紐状バンド、帯状バンド、輪状バンド、接着剤、テープなどが実施例2に係る結束手段20として用いられる。
【0060】
具体的に、長さ17mの実施例1に係る線材3を準備し、厚さ1mm程度の厚紙で、長さ2m、幅0.1m程度の矩形を切り出し、ループ状にして、準備した線材3をループ状の厚紙に巻いてテープで留めた。すなわち、このループ状の厚紙を線材3を巻くガイドとし(以下、「実施例2に係るループ状厚紙ガイド」ともいう)、このループ状厚紙ガイドの外側に、線材3がループ状厚紙ガイドから外れないように必要に応じてテープ(結束手段20)で仮止めしながら線材3を8回巻き付けた。このように、テープを結束手段20として、凡そ均等になるように6カ所程度テープを巻いて結束し、結束後に厚紙の実施例2に係るループ状厚紙ガイドを外して、実施例1に係るフレキシブルコイル4(巻数N=8、周長L=2m、直径約 0.63m)と同等のフレキシブルコイル4を得た(図4(c)参照)。
【実施例3】
【0061】
実施例3に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の結束手段20は、線材3を絶縁状態で埋め込んで結束可能な可撓性媒体である。例えば、半液体状の接着剤、ゴム材などに被覆線材3を埋め込み、これを乾燥させて接着剤等の外被を結束手段20とし、実施例3に係るフレキシブルエネルギーハーベスタ1を得ることができる。
【0062】
具体的に、長さ17mの実施例1に係る線材3と、厚さ約1mm、長さ2m、幅0.1mの厚紙の実施例2に係るループ状厚紙ガイドを準備し、線材3をループ状厚紙ガイドにテープで仮留めした。実施例2と同手順で、ループ状厚紙ガイドの外側に線材3を8回巻き付け、凡そ均等になるように6カ所程度、接着剤を結束手段20として線材3同士を接着して結束した。結束後に厚紙の実施例2に係るループ状厚紙ガイドを外して、実施例1に係るフレキシブルコイル4(巻数N=8、周長L=2m、直径約 0.63m)と同等のフレキシブルコイル4を得た(図4(c)参照)。
【実施例4】
【0063】
実施例4に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の結束手段20は、線材3を経糸にして織り込んだ織物である。ループ状に形成した織ネームのような形態のフレキシブルエネルギーハーベスタ1を得ることができる。
【0064】
具体的には、実施例1に係る線材3(17m)を準備し、長さ2m、幅3cm程度のポリエチレンテレフタレート製のフィルムをループ状にしてテープで留め、準備した線材3をループ状のポリエチレンテレフタレート製フィルムに巻いてテープで留めた。すなわち、このループ状フィルムを線材3を巻くガイドとし、このループ状フィルムガイドの外側に線材3を8回巻き付けた。そして、8本の線材3が経糸になるようにして緯糸を使って織り込んだ後、ループ状フィルムガイドを除去し、図4(d)の平織りのようなフレキシブルコイル4(巻数N=8、周長L=2m、直径約 0.63m)を得た。
【0065】
以上に説明した本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、直径がR=L/πのフレキシブルでループ状のスリーブやチユーブに、N回巻回させて線材3を挿入した構造を持ち、磁界変化に反応してエネルギーを誘発するエネルギーハーベスタとして機能する。以下、本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の別の実施形態等について説明する。

【0066】
(2)磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの使用態様
(2-1)ダウンサイズ型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ
電磁誘導の原理に基づくラジオ放送の電波受信装置において、大きな直径のコイルによる磁界型アンテナはその受信感度を高めることができる。形状変形自在なフレキシブルなコイルを、ループ状の磁界型アンテナに応用すれば、小型化したり、軽量化したりできるので、可搬性や携行性に優れるばかりか、ラジオ放送の高感度な電波受信装置などを様々な形態で創造することができる。
【0067】
本実施形態に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、図3(a)に示すようなダウンサイズ型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sである。このダウンサイズ型のフレキシブルエネルギーハーベスタ1Sは、ループ10に、略180度の捻りをn回入れることにより形成されたn個のノードにおいて(図3(b)参照)、上記n回の捻りにより形成されたn+1個の小ループ10Sを夫々反転させ、重畳させることにより得ることができる。このようなフレキシブルエネルギーハーベスタ1Sは、フレキシブルコイル4の巻数が(n+1)×Nで、上述のフレキシブルエネルギーハーベスタ1のループ10の直径が1/(n+1)の小ループ10Sにサイズダウンされている。
【0068】
すなわち、実施形態2に係るダウンサイズ型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sは、線材3をN回巻回させて作製した上記原形の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1を、ノード6を定めてノード6の周りに180度程度クルッとn回捻ると、線材3や結束手段20などの素材が捻れを戻そうとする力でノード6を中心に自然に上下方向に反転して得ることができる。このように、原形のフレキシブルエネルギーハーベスタ自身の巻き数をn+1回となるように、所定のノード6の周りに180度程度n回捻ると、直径が1/(n+1)のループがn+1個重畳したダウンサイズ型のフレキシブルエネルギーハーベスタ1Sを得ることができる。このときフレキシブルコイル4は、コイルとしては(n+1)×N回巻となっているので、共振周波数に影響を与えることなく、コイルをコンパクト化することが出来る。なお、このダウンサイズ型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sにおいて、捻り前後の形状は機能上円形である必要はなく、楕円、不規則なループ状、多角形でも良い(図7(a)~(d)参照)。
【0069】
このダウンサイズ型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sは、磁界型アンテナとして良好に作動する特徴を活かして、特に中波放送帯の磁界成分が重要なAMラジオ放送の高感度な無電源ラジオ受信機や、AM放送電波のエネルギーハーベスティングによる電波発電蓄電装置の磁界型アンテナとして用いることができる。特に、巻数が(n+1)×Nのフレキシブルコイル4が磁界型アンテナとして良好に作動する特徴を活かして、中波放送帯の磁界成分が重要なAMラジオ放送の高感度な無電源ラジオ受信機や、AM放送電波のエネルギーハーベスティングによる電波発電蓄電装置の磁界型アンテナとして好適に用いることができる。
【0070】
一般に、AMラジオ放送帯を利用する無電源ラジオや電波発電装置でAMラジオ放送を感度良<受信し、電波発電蓄電装置の発電量を増大させるには、より大きな直径をもつ、すなわち、より面積Sの大きなコイルが有利であるが、上記のように持ち運びが不便であった。しかし、このダウンサイズ型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sは1/(n+1)の直径に小型化して持ち運びに便利であり、磁界強度が強い場所ではそのまま1/(n+1)に小型化した状態でも使用できる。また、使用時に展開して使うこともできるので、可搬性の良い、高性能な電波受信装置として使用することができる。
【0071】
(2-2)無指向性の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ
本発明の実施形態3に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、図3(b)に示すような無指向性の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Tである。この無指向性の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Tは、実施形態2に係るダウンサイズ型のフレキシブルエネルギーハーベスタ1Sの複数(n+1個;nは捻り回数又はノード数)の小ループ10Sの一部を、その一部を除いた残りの小ループ面10Sに対して起立させて得ることができる。起立させた一部の小ループ面10Sに結束されたフレキシブルコイル4の巻回方向が、上記残りの小ループ面10Sに結束されたフレキシブルコイル4の巻回方向に対して垂直方向のベクトル成分を有するので、上記残りの小ループ10Sが捕捉できない磁界変化を、起立させた上記一部の小ループ面10Sが捕捉することができる。
【0072】
あるいは、無指向性の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Tは、図1(a)の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1を構成するループ面10の一部を、その一部を除いたループ面10の残りの他部に対して起立させても、無指向性を得ることができる。ループ面10の一部に結束されたフレキシブルコイル4の巻回方向が、上記残りの他部に結束されたフレキシブルコイル4の巻回方向に対して垂直方向のベクトル成分を有するため、上記ループ面10の残りの他部が捕捉できない磁界変化を、起立させたループ面10の一部が捕捉することができる。従って原理的に、図3(a)のダウンサイズ型のフレキシブルエネルギーハーベスタ1Sを構成する1又は複数の小ループ面10Sの一部を、その一部を除いた小ループ面10Sの残りの他部に対して起立させても、無指向性を得ることができる。
【0073】
すなわち、本実施形態3の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Tは、上記磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1、1Sのフレキシブルループ面10、10Sの一部を、残りの他部のループ面10、10Sに対して角度を付けることにより、例えば90度程度起立させることにより、指向性から無指向性に切り替えて使えることができる。起立角度を変えることで、指向性と無指向性のバランスを変化させることができるので、例えばラジオ放送の混信の調整に直接役立てることができる。無指向性の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Tにおいて、図3(b)に示す起立させた小ループ面10Sや、図1(a)に示すループ面10の起立させたループ面10の一部を起立姿勢に保つため、起立させた小ループ面10Sを支持するスタンドなどの支持具を用いると便利である。
【0074】
従来のいわゆるループアンテナは指向性があるが、本発明に係るフレキシブルエネルギーハーベスタ1Tを使えば、形状を簡単に変形できるので無指向性にでき、指向性と無指向性のバランスを変えることもできる。さらに、この形状変形により、電波受信における受信感度や混信具合、選択性の調節ができる。この無指向性のフレキシブルエネルギーハーベスタ1Tは、形状変形と線材の選択から、小型軽量で可搬性に富む、しかも超高感度な無電源で作動するラジオ受信機や、電波エネルギーハーベスティングによる電波発電蓄電装置を具体的に創造できる、アンテナとして機能するラジオコイルとして様々な特徴が見出される。
【実施例5】
【0075】
図15(a)~(c)に、2個のノード6において、2回の捻りにより形成された3個の小ループ10Sを夫々反転させて重畳させたダウンサイズ型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sを示す。このエネルギーハーベスタ1Sは、図15(a)ではループ面を電波到来方向に対して平行に配置し、図15(b)では1つのループ面を電波到来方向に対して平行に、残りの2つのループ面を電波到来方向に対して45度に配置しており、図15(c)では1つのループ面を電波到来方向に対して平行に、残りの2つのループ面を電波到来方向に対して90度に配置している。図15(a)のエネルギーハーベスタ1Sの出力(エネルギー収穫量)を1とすると、図15(b)のエネルギーハーベスタ1Sの出力は(1/3)×(1+√2)であり、図15(b)のエネルギーハーベスタ1Sの出力は1/3となる。
【0076】
具体的には、長さ2mで内径5mmのポリウレタンチューブ製の実施例1に係る結束手段20を用いた実施例1に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1を準備した(図1(a)参照)。フレキシブルコイル4には実施例1に係る線材3(17m)を用いているため、このフレキシブルエネルギーハーベスタ1のループ10は、上述のように巻数N=8、周長L=2mであり、直径約 0.63m(2/π m)である。
【0077】
そして、このレキシブルコイル4の2本の線材3の端部、つまり、図1(a)の3aと3bを図9の同調コンデンサ回路52の左側端子に接続し、その同調コンデンサ回路52の右側端子に、図11の整流回路54の541の左側端子を接続した。その整流回路54の541の右側端子に、図13の出力回路56のイヤホン561を接続することで、図6(a)に示す無電源ラジオを製作した。
【0078】
このフレキシブルコイル4によるラジオを使って、NHK福井ラジオ第一放送(927KHz, JOFG, 5KW)を送信している下馬送信所(福井市下馬3丁目)からのラジオ放送を受信する実験を行った。受信位置は、下馬送信所から直線距離で凡そ5Km離れた福井大学文京キャンパス(福井市文京3-9-1キャンパス内)である。なお、以下の実施例においてもラジオ放送を受信する実験を行うが、NHK福井ラジオ第一放送(927KHz, JOFG, 5KW)の送信所は上記下馬送信所(福井市下馬3丁目)を利用し、受信位置は上記福井大学文京キャンパス(福井市文京3-9-1キャンパス内)であるため、夫々「下馬送信所」、「福井大学文京キャンパス」と略記することとする。
【0079】
このラジオのポリウレタンチューブの輪っかを、くるっとひねって直径が1/3の3つの小ループ10Sを形成する。小ループ10Sになったと同時に、この状況では、ポリウレタンの結束手段20内部に線材3が8本通っているので、全体では、24回巻になっている。3つの小ループ10Sを立てて、図15(a)のようにして電波の到来方向(下馬送信所)に向けると図5に示すループコイルの指向性原理から、ラジオ放送の受信感度が最大になる。ここで、図15(b)のように、2つの小ループ10Sをねじって45度程度に向きを変えると、感度は下がるが、1つの小ループ10Sは下馬送信所の方向を向いているので、ラジオ放送は受信できる。
【0080】
さらに、2つの小ループ10Sのねじる角度を90度にして、図15(c)にした場合、この2つの小ループ10Sは、図5に示すループコイルの指向性原理からは節になるので感度がゼロになるが、依然として、1つの小ループ10Sは下馬送信所の方向を向いているので、ラジオ放送が受信できることを確認した。ラジオを受信している福井大学文京キャンパスから下馬送信所の方向を見た時、その左手90度方向にFBCラジオ(福井放送)(864KHz, JORP,5KW)の松岡送信所が位置する(以下、「松岡送信所」と略記する)。
【0081】
この位置関係において、先ず、図15(a)のように3つの小ループ10Sを下馬送信所の方向に向けると、NHKラジオ第一放送のみが感度よく受信できる。1つの小ループ10Sを下馬送信所の方向に向けたまま、2つの小ループ10Sをねじって左手45度にねじると、FBCラジオ放送(松岡送信所)が混信して受信できる。さらにそのまま、2つの小ループ10Sをねじって左手90度の方向に向けるとさらに、FBCラジオ放送(松岡送信所)が良く聞こえるようになった。この状態では、NHK第一放送(下馬送信所)とFBCラジオ(松岡送信所)が混信して同時に聞こえる。
【0082】
さらに、松岡送信所の方向を向いている2つの小ループ10Sの方向を保ったまま、下馬送信所の方向を向いている1つの小ループ10Sを左方向にねじっていく。松岡送信所の方向を向いている2つの小ループ10Sの部分の方向に合わせていくと、最終的に3つの小ループ10Sが同一方向として、松岡送信所に向く格好となる。この状態では、下馬送信所からのNHKの放送は図5に示すループコイルの指向性原理から節となるので、放送が全く聞こえず、FBCラジオ放送(松岡送信所)のみが受信できる。フレキシブルコイル4の方向を自在に変えることで、ラジオの混信具合の調整や、選局が出来ることを確認した。

【0083】
(3)フラットケーブル型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ
(3-1)フラットケーブル型のフレキシブルエネルギーハーベスタの製造方法
上述した本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、従来のように枠に線材3(電線)を巻かなくても、あるいは固いガイドに電線を巻かなくても、フレキシブルな素材の細いスリーブやチューブ状のものをコイル直径2R=L/πの外周長Lの長さで用意し、それに線材をN回巻回させて通せば、直径2Rのコイルとして製造できる。線長が一定なので共振周波数は一定である。しかし、こうした作り方ではなく、図2(a)のような必要巻回数(N回)に対応するN本の線材31~36(N=6の場合)からなるフラットケーブル5の1回巻分の長さを用意し、フレキシブルな素材の細いスリーブやチューブ状のものに通し、ループ状にして、線材31~36の両末端の端子同士を例えば1つずつずらして半田づけや圧着処理により接合しても、上記方法で作成した磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1と同様に、N回巻のコイルとして機能する。このようにして作製するフラットケーブル型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の側面図を、図2(b)に示す(N=6の場合)。
【0084】
図2(b)のフラットケーブル型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、線材31~36の両末端の端子同士を例えば1つずつずらして接合したが、端子同士の接合は任意でよく、図2(d)のように、接続されない何れかの線材3の始端3aと終端3bを残して、他の線材3の始端3aと終端3bをランダムに選んで接合すればよい。すなわち、フラットケーブル5の一端12aに配置させたN本の線材3の内の(N-1)個の始端3aを、フラットケーブル5の他端12bに配置させた線材3の(N-1)個の他端3bとランダムに接続させて、長さN×Lの線材3を形成する。そして、接続されなかった始端3aと終端3bとを接続回路50に接続し、長さN×Lの線材3をN回巻回させたフレキシブルコイル4が長さLのループ10に結束される。このように、図2(a)のようなフラットケーブル5を利用することにより、フラットケーブル5の一端12aと他端12bとが接続されて図2(c)のようなループ10が形成されて、高感度のフレキシブルエネルギーハーベスタ1を得ることができる。なお、このフレキシブルエネルギーハーベスタ1の結束手段20は、フラットケーブル5の線材3を被覆する外被である。
【実施例6】
【0085】
図2(b)は、線材3が6本絶縁されて並行に接合された図2(a)に示すフラットケーブル5の一端12aと他端12bとを接続してループ10を形成したフレキシブルコイル4の側面図である。本実施例のフレキシブルコイル4では、線材31~35の終端3bが、夫々隣接する線材32~36の始端3aに接続され、接続されない線材31の始端3aと線材36の終端3bが、そのままフラットケーブル5の始端3aと終端3bとなっている。
【0086】
一方、図2(d)は、フラットケーブル5を構成する線材31~36の始端3aと終端3bをランダムに接続して形成するフレキシブルコイル4の一例を示す側面図である。図2(b)のフレキシブルコイル4と同様に、図2(d)のフレキシブルコイル4も図2(a)に示すフラットケーブル5の一端12aと他端12bとを接続してループ10を形成するが、始端3aと終端3bの接続方法はでたらめであってよい。図2(d)に示すフレキシブルコイル4では、線材31の終端3bを線材33の始端3aに、線材32の終端3bを線材36の始端3aに、線材33の終端3bを線材34の始端3aに、線材34の終端3bを線材35の始端3aに、線材35の終端3bを線材32の始端3aに、それぞれ接続し、接続されない線材31の始端3aと線材36の終端3bをフラットケーブル5の始端3aと終端3bとしている。フラットケーブル5の始端3aと終端3bについても、どの線材3の始端3aと終端3bを選択してもよい。
【0087】
具体的には、図2(a)のように、ポリ塩化ビニルで被覆された、幅が20mmの線材31、32、33、・・・が16本結合されたフラット状のケーブル(以下、「16芯フラットケーブル」ともいう)を2m準備した。これを一周の輪形状(ループ10(周長L=2m))にして、両端の15個の線材3において、図2(b)のように末端の導体を一つずつずらして半田付けした。この半田付けしたそれぞれの部分を被覆し、16回巻(N=16)の直径約 0.63m(2/π m)程度のフレキシブルコイル4(フレキシブルエネルギーハーベスタ1)を得た。
【0088】
あるいは、上記ポリ塩化ビニルで被覆された、16芯フラットケーブルを2m準備し、これを長さ2mの難燃性ポリプロピレン製の内径10mmのコルゲートチューブに通してもよい。これを一周の輪形状(ループ10(周長L=2m))にして、両端の15本の線材3において、図2(b)のように末端の導体を一つずつずらして半田付けした。この半田付けしたそれぞれの部分を被覆した後、この16芯フラットケーブルをコルゲートチューブの中に入れて配線を整頓し、16回巻(N=16)の直径約 0.63m(2/π m)程度のフレキシブルコイル4(フレキシブルエネルギーハーベスタ1)を得た。
【0089】
(3-2)フラットケーブル型のフレキシブルエネルギーハーベスタの機能
電磁波の受信感度は磁束Φ=BS(Bは磁束密度)のS、つまりループ形状の内面積が関係するので、フラットケーブル型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の輪形状(ループ10)は、円形である必要が無く、楕円形、不規則なループ状、多角形でも機能することを実験で確認している(形状無依存性)。理論上は面積Sが最大となる円形が最も出力が大きいが、例えば円形を楕円形にしても、その他の形状に変化させても、実用上、受信感度にほとんど影響しないことを確認した。
【0090】
また、本発明のフラットケーブル型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、線材にフラットケーブルを使用してフレキシブルコイル4を作製するので線間容量を下げることができる(線間容量の低下)。線材を密巻したものに比べて線間容量が下がるので、LC共振において、より電波受信周波数域を広げることができる利点がある。このようなフラットケーブルを用いたフレキシブルエネルギーハーベスタ1は、リッツ線などの撚り電線を使って作成したフレキシブルエネルギーハーベスタと同様に形状変形が自在で、線材に負荷を与えずに自然に捻ることが可能であり、小型化は勿論、指向性と無指向性のバランス切り替えもできる効果を有する。なお、多芯ケーブルを用いても、上記フラットケーブル型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1と同じような、小型化、指向性と無指向性のバランス切り替え可能なフレキシブルエネルギーハーベスタ1を得られる。
【実施例7】
【0091】
(形状無依存性)
図7(a)は略5角形の、図7(b)は略4角形のフラットケーブル型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1であるが、その受信感度は殆ど等しいことが確認された。しかし、図7(c)のようにノード6を形成しない半開状のループを形成すると、受信感度は低下した。これは、閉じたループと半開状のループを貫く磁界の変化を打ち消す方向に流れる誘導電流が、閉じたループと半開状のループでは反対方向になるため、電磁誘導で得られるエネルギーが小さくなるためである。
【0092】
また、上記実施形態2のダウンサイズ型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sと同様に、フラットケーブル型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、面を貫く磁束の方向を考えて、輪形状(ループ10)をノード6で180度程度捻って2つの小ループ10Sを形成し、一方の小ループ10Sをノード6で他方の小ループ10S側に反転して、ダウンサイズ型とすることができる。つまり磁界を打ち消し合わないように捻って重畳することで、磁界型アンテナのコイルとして小型化することが出来る。図7(d)のようにフラットケーブル5に捻れを入れてダウンサイズ型としても、フラットケーブル型磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の受信感度はほとんど変わらないことを確認した。
【0093】
また、上記実施形態3と同様に、ループ面10の一部を90度程度に起立させることで、無指向性のアンテナとして電波を受信できる機能も発現する。これはループアンテナは指向性アンテナであるという固定概念が破綻し、無指向性に出来るという画期的な機能である。このように、フレキシブルなコイルを磁界型アンテナとして機能させることで様々な機能や効果が発現する。
【0094】
具体的には、実施例6で得た16芯フラットケーブル型のフレキシブルコイル4(フレキシブルエネルギーハーベスタ1)を準備する。このコイルの2本の線材3、つまり、図2(b)の3aと3bを図9の同調コンデンサ回路52の左側端子に接続し、その同調コンデンサ回路52の右側端子に、図11の整流回路54の541の左側端子を接続した。そして、その整流回路54の541の右側端子に、図13の出力回路56のイヤホン561を接続することで、図7(a)に示す無電源ラジオを製作した。
【0095】
フレキシブルなコイルなのでコイルの形状が自在に変えられることを利用して、コイル形状とラジオ放送の受信性について調べた。ラジオ放送として、上記下馬送信所からのNHK福井ラジオ第一放送(927KHz, JOFG, 5KW)を利用し、受信位置は、下馬送信所から約5Kmの上記福井大学文京キャンパスとした。図7(a)のラジオのフレキシブルコイル4を立て、下馬送信所の方向に向ける。
【0096】
先ず、ほぼ円形になるように両手で支え持つとラジオ放送が良好に受信できた。次に、フレキシブルコイル4を立てたまま、両手で持ちながら、図7(b)のように矩形になるように変形させて受信すると、円形と同様に良好に受信できた。さらに、フレキシブルコイル4を立てた状態で円周の一部を図7(c)のように内側にUターンするように持つと、少し受信感度が下がることを確認した。Uターンして平行になっている線材3の部分が長くなればなるほど音量が下がることが分かった。さらに、立った状態で、そのまま極端に細くなるように変形させるとラジオ放送がまったく聞こえなくなった。再度、ほぼ円形になるように両手で支え持つとラジオ放送が良好に聞こえるようになることを確認し、そのまま、縦長の楕円になるように変形させていくと、ラジオの受信感度が低下していくことを確認した。
【実施例8】
【0097】
(線間容量の低下)
上記のように、フラットケーブル型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、線材にフラットケーブル5を使用してフレキシブルコイル4を作製するので線間容量(浮遊容量)を下げることができる。フレキシブルコイル4の巻き数Nを同一とすると、線材を密巻したものに比べて線間容量が下がるので、共振周波数fmax=1/2π(LC)1/2であるループアンテナのLC共振においてCの増加を阻止して、より高周波側に電波受信周波数域を広げることができる。
【0098】
すなわち、本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタ1の接続回路50に、通称バリコンとも呼ばれる同調コンデンサ(同調コンデンサ回路52)やバリキャップをフレキシブルコイル4に並列に接続すると、同調回路を得ることができる。そして、バリコンの容量Cを調節することにより、所望の周波数fmax=1/2π(LC)1/2の電波と共振する同調回路を得ることができる。しかし、フレキシブルコイル4の線間容量(浮遊容量)Cが無視できないほど大きいと、上式のCはC=C(浮遊容量)+C(バリコン)となり、C(バリコン)を調節しても1/2π(LC1/2以上の周波数は受信できなくなる。したがって、線間容量(浮遊容量)が小さいフラットケーブル型の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、より高周波側の電波まで受信することができる。
【0099】
[8芯フラットケーブルの例]
図6は、それぞれ図6(a)が8本の線材3を平行に配列したフラットケーブル型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の斜視写真図、図6(b)が図6(a)のフラットケーブル5を2回巻きにして構成したダウンサイズ型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sの斜視写真図、図6(c)が線材3を均等にスリーブに8回巻き挿入して2重に重畳したダウンサイズ型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sの斜視写真図、図6(d)が線材3をN字型に配列してスリーブに8回巻き挿入して2重に重畳したダウンサイズ型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sの斜視写真図である 。図6(c)のダウンサイズ型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sは、図6(a)のフラットケーブル型フレキシブルエネルギーハーベスタ1で用いたフラットケーブル5を線材3ごとに8分割して略均等に配置し、ゴム管の結束手段20に挿入したものであり、図6(d)のダウンサイズ型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sは、図6(a)のフラットケーブル5をN字型に折って、図6(c)と同じゴム管の結束手段20に挿入したものである。
【0100】
図6(a)のフレキシブルエネルギーハーベスタ1と図6(b)のダウンサイズ型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sの受信周波数域は略同じであった。また、図6(c)のダウンサイズ型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sの受信周波数域は、図6(d)のダウンサイズ型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sの受信周波数域より低周波側にズレた。そして、図6(a)のフレキシブルエネルギーハーベスタ1と図6(b)のダウンサイズ型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sは、図6(c)、図6(d)のダウンサイズ型フレキシブルエネルギーハーベスタ1Sの受信周波数域より高周波側まで受信可能であることが確認された。
【0101】
[16芯フラットケーブルの例]
更に、実施例6で得た16回巻(N=16)の直径約 0.63m(2/π m)程度の16芯フラットケーブル型のフレキシブルコイル4(フレキシブルエネルギーハーベスタ1)を準備し(図2(c)参照)、これより実施例7で得た無電源ラジオを3台製作した(図6(a)、図6(b)等参照)。
【0102】
その内1台はそのままの構造とする。線材3にフラットケーブルを用いているので、このフレキシブルコイル4の断面は図6(b)の白丸に示すように、線材3の断面はフラットな横並びである(フラット並びコイル)。
【0103】
次に、2台目について、フレキシブルコイル4のフラットケーブルを構成している16芯の各線材3の結束をバラバラに割き、外形が10mmのコルゲートチューブに封入した。この状態でのフレキシブルコイル4は各線材3がランダムな位置にあるので、断面は図6(c)のようになる(ランダム並びコイル)。
【0104】
さらに、3台目について、フレキシブルコイル4のフラットケーブルの部分について、それぞれの16芯の線材3はバラさずに、フラットケーブルを上手く折り曲げて、外形が10mmのコルゲートチューブに入れた。この状態でのフレキシブルコイル4の断面は、16芯の線材3は互いに平行に保たれているが、形状がフラットではないので、断面は図6(d)のようになる(ノンフラット並びコイル)。
【0105】
この3台についてラジオの受信性について調べた。ラジオ放送として、上記下馬送信所からのNHK福井ラジオ第一放送(927KHz, JOFG, 5KW)を利用し、受信位置は、下馬送信所から約5Kmの上記福井大学文京キャンパスとした。
【0106】
図6(b)のようなフラット並びコイルのラジオの場合、同調周波数範囲は550-1380KHzとなった。図6(c)のようなランダム並びコイルのラジオの場合、同調周波数範囲は440-840KHzとなった。そして図6(d)のようなノンフラット並びコイルのラジオの場合、同調周波数範囲は420-750KHzとなった。図6(b) 、図6(c)、図6(d)の順番に線間容量が増加する結果となり、受信できる周波数範囲はそれを反映することが分かった。線材3を横に並べることで、線間容量を低下でき、受信周波数範囲を広げることができることが分かった。
【実施例9】
【0107】
袋状の平織りの越前織物に、その長さのフラットケーブル5の1帯を通し、上記のように末端をずらして処理することで、袋状にN回線材3を通したフレキシブルコイル4を簡単に作ることができる。したがって、大型電磁誘導コイルを内蔵した例えば防災用の織物の無電源ラジオ受信機を製造することができる。またフラットケーブル5を用いたこの磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の上記製造方法によれば、そのフレキシブルコイル4の線間容量を、リッツ線などを巻線で巻回させた上記実施形態1のフレキシブルコイル4に比べて下げることができるので、LC共振周波数の領域を広げられることを確認した。
【0108】
このフラットケーブル5を用いる製造方法は、例えば、製造過程で後戻り出来ない方法で製造される織物(ジヤガード織りなど)にループ状のフレキシブルコイル4を埋め込む決定的な方法となる。上述のように、このフラットケーブル5を使ったフレキシブルコイル4は、コイル故の線間容量を下げることができる機能発現がある。
【0109】
具体的には、図2(a)のように、ポリ塩化ビニルで被覆された、幅が10mmの線材31、32、33、・・・が10本結合されたフラット状のケーブル(以下、「10芯フラットケーブル」ともいう)を2m、幅が12mmの袋織の紐として真田紐を2m準備した。10芯フラットケーブルを袋織の紐に通した後、紐全体を平坦に整えた。これを一周の輪形状(ループ10)にして、10本の線材3の両端において、図2(b)のように末端の導体を一つずつずらして半田付けし、半田付けしたそれぞれの部分を被覆してそれぞれの導体部分を絶縁して、10回巻の直径約 0.63m(2/π m)程度のフレキシブルコイル4を得た。このコイルの2本の線材3、つまり、図2(b)の3aと3bを図9の同調コンデンサ回路52の左側端子に接続し、その同調コンデンサ回路52の右側端子に、図11の整流回路54の541の左側端子を接続した。その整流回路54の541の右側端子に、図13の出力回路56のイヤホン561を接続することで、図6(a)に示す無電源ラジオを製作した。
【0110】
(4)磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの接続回路の実施例
接続回路50の構成要素として、抵抗回路(接続線回路)51(図8)、同調コンデンサ回路52(図9)、マッチング回路53(図10)、整流回路54(図11)、蓄電回路55(図12)などが考えられる。そして、これらの構成要素となる回路51~55を適宜組み合わせて接続回路50を構成し、あるいはこのように構成した接続回路50を、出力回路56(図13)に接続することにより、磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1を様々な用途に応用することができる。以下、接続回路50の構成要素となる回路51~55及び接続回路50に外部から接続する出力回路56について説明する。
【実施例10】
【0111】
(4-1)抵抗回路
図8に、接続回路50を抵抗回路51とした回路図を示す。抵抗回路51を単独で接続回路50とすれば、本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、フレキシブルな磁界アンテナを構成し得る。抵抗回路51は、ループ10から取り出した線材3の始端3aと終端3bを導線又は抵抗で接続するだけの回路である。
【0112】
このようなフレキシブル磁界アンテナとして用いる本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタ1は、ラジオ放送電波を受信するとともに、ラジオの内蔵コイルと相互誘導により共振して、アンテナとして特定周波数の電波から得た電磁界エネルギーをラジオの内蔵コイルに伝搬し、ラジオの受信感度を高めることができる。本発明のフレキシブルなコイル技術を使うことでインピーダンス整合を行うことができ、高性能なラジオ受信機、電波発電装置などを実際的に具体化できる。
【0113】
例えば、本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタ1を、ループアンテナのコイルとして機能させ、上述のように一般のラジオ受信機に近づけるだけで感度を簡単に高めたり、混信を調節したりすることができる。これはフレキシブルエネルギーハーベスタとラジオ受信機側のコイルとの相互誘導による。フレキシブル性を活かして、図3(a)に示すようなダウンサイズ型のエネルギーハーベスタ1Sとして収容あるいは携帯し、使用時に展開して大型磁界型ループアンテナとし、ラジオの受信感度や混信具合を調節できる。このように、本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、ループ10から取り出した線材3の始端3aと終端3bを接続するだけで(抵抗回路51)、無電源で作動する磁界型ループアンテナを得ることができる。
【実施例11】
【0114】
(4-2)同調コンデンサ回路
接続回路50を、図9に示す同調コンデンサ回路52とした本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタ1は、フレキシブルコイル4を結束手段20がループ状に結束しており、当然にあるインダクタンスL(H)を有している。フレキシブル磁界アンテナについて(4-1)で上述したが、一般にループアンテナの共振周波数fmax=1/2π(LC)1/2であるため、(4-1)のフレキシブル磁界アンテナに所定の共振周波数を持たせるのであれば、図9のように、接続回路50に同調コンデンサ回路52を含ませるのが好適である。
【0115】
すなわち、本実施例のフレキシブルエネルギーハーベスタ1は、フレキシブルコイル4に同調コンデンサ回路52を並列に接続して同調回路を構成する。この同調コンデンサ回路52を構成するコンデンサを同調コンデンサ(バリコン)とすれば、所望の周波数と共振する同調回路を得ることができる。同調コンデンサは可変コンデンサとも通称バリコンとも呼ばれ、市販されているバリコンの代表的な容量は10~290pF程度である。なお、フレキシブルコイル4は、その構造上浮遊容量Cを有するが、例えば重畳してコンパクトなダウンサイズ型のエネルギーハーベスタ1Sとすると浮遊容量は増加し、これらの浮遊容量も上記fmax=1/2π(LC)1/2の容量Cに含まれることとなる。
【0116】
本実施例では、実施例1に係る線材3(図1(b)参照)を、ポリウレタンチューブの実施例1に係る結束手段20に通して、周長L=2m、巻数N=8の実施例1に係るフレキシブルコイル4(直径約 0.63m)を準備した(図1(a)参照)。
【0117】
このフレキシブルコイル4を形成する線材3の始端3aと終端3b(図1(b)参照)に、図9の同調コンデンサ回路52の左側端子を接続し、本実施例のフレキシブルエネルギーハーベスタ1を得た。そして、ディップメータを使って、所望の周波数と共振する同調回路を得ることができることを確認した。
【0118】
次に、同調コンデンサ回路52の右側端子に、図11の整流回路54の541の左側端子を接続し、さらに、その整流回路54の541の右側端子に、図13の出力回路56のイヤホン561や、ピックアップとしてコイル564、抵抗負荷565を接続した。このような本実施例の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、(1)フレキシブルコイル10の本体、あるいは(2)ピックアップ部分(コイル564、抵抗負荷565など)をラジオの近傍に配置させることで、外部のラジオ受信機の同調型のループアンテナとして機能する。ここで、図11の整流回路54を省いても良い。なお、外部ラジオとの共振周波数のマッチング調整のため、564のコイルの部分には、コンデンサやダイオード、抵抗器、などを並列あるいは直列接続してもよい。上記(1)、(2)の両方の場合において、このフレキシブルエネルギーハーベスタ1の近傍に外部のラジオ受信機を置き、そのラジオの受信感度が変化するかを実験した。
【0119】
この実験において、外部のラジオ受信機内部のバーアンテナの向きに注意して、フレキシブルコイル4と磁気的にカップリングするように置く。上記(2)の場合としては、図16のように、ピックアップとしてコイル564(フェライトバーコイル)を整流回路54の541の右側端子に接続し、コイル564(フェライトバーコイル)を外部のラジオ受信機に近づけた。この状態で、フレキシブルコイル4に接続している同調コンデンサ52の容量を変化させ、つまり、共振周波数を変化させると、その周波数と外部のラジオ受信機が受信しようとしている目的の周波数に一致させることができる。この時、フレキシブルコイル4で受けた電波を、磁気カップリングにより、外部のラジオ受信機が内蔵するバーアンテナに誘導することができる。これにより外部のラジオ受信機が受信しようとしていたラジオ放送の受信感度が高まること、また、混信の程度を調整出来ることがわかった。
【実施例12】
【0120】
(4-3)マッチング回路
接続回路50はマッチング回路53を含んでもよい。図10に、接続回路50としてトランスを接続したマッチング回路53を示す。マッチング回路53は、接続回路50に接続する出力回路56を、接続回路50に入力するフレキシブルコイル4側の入力回路と分離し、交流電圧を増減する目的や、インピーダンスマッチング(インピーダンス整合)に用いることができる。
【0121】
本実施例においても、上記実施例11と同様、周長L=2m、巻数N=8の実施例1に係るフレキシブルコイル4(直径約 0.63m)を準備した(図1(a)参照)。このフレキシブルコイル4を形成する線材3の始端3aと終端3b(図1(b)参照)に、図9の同調コンデンサ回路52の左側端子を接続した。そして、その同調コンデンサ回路52の右側端子に、図11の整流回路54の541の左側端子を接続し、さらに、その整流回路541の右側端子に、図10のマッチング回路53の左側端子を接続した。このマッチング回路53の右側端子にはスピーカー563として、インピーダンスの高いマグネチックスピーカーを接続した。ここでマッチング回路53は1次側と2次側の巻き線比を変えたトランスとして用い、スピーカー563のインピーダンスに合わせてトランスを選定した。
【0122】
同調コンデンサ52を変化させて同調周波数を調整し、目的の周波数のラジオ放送をスピーカー563で聴くことができた。ラジオ放送として、上記下馬送信所からのNHK福井ラジオ第一放送(927KHz, JOFG, 5KW)を利用し、受信位置は、下馬送信所から約5Kmの上記福井大学文京キャンパスとした。
【実施例13】
【0123】
(4-4)整流回路
接続回路50は、整流回路54を含んでもよい。図11に、整流回路54の代表例541~549の回路図を示す。整流回路54は、フレキシブルコイル4側から入力される交流電圧の負電圧を除去あるいは正電圧に変換し、更に正電圧に変換された波状電圧を平滑化する役割を果たす。
【0124】
整流回路541はダイオードを含む回路で、入力した交流電圧は正電圧サイクルのみ取り出される(半波整流)。また、整流回路542のブリッジ回路を用いれば、半波整流で利用しなかった残りの半サイクルも整流することができる(両波整流)。
【0125】
整流回路543は両波倍電圧整流回路で、半波整流回路を2組直列にしており、小電流負荷で高い電圧が必要な場合に使用される。ここで、整流回路543~549に含まれるコンデンサは、交流波形の平滑や昇圧のためのコンデンサである。
【0126】
また、整流回路544、545、546は、多段の倍電圧整流回路であり、夫々半波2倍圧、半波3倍圧、半波4倍圧の整流回路である。出力リップルは電源周波数と同じになり、何段でも積み重ねができるので5倍圧以上の整流回路は省略するが、倍圧が高くなるほど出力電流は少なくなる。
【0127】
そして、整流回路547は、半波2倍圧+半波で構成した3倍圧の整流回路であり、整流回路548は、全波4倍圧の整流回路である。整流回路549は、コッククロフト・ウォルトン回路で、出力電圧は、(2n+2)倍となる(n=0、1、2、・・・)。
【0128】
本実施例においても、上記実施例11と同様、周長L=2m、巻数N=8の実施例1に係るフレキシブルコイル4(直径約 0.63m)を準備した(図1(a)参照)。このフレキシブルコイル4を形成する線材3の始端3aと終端3b(図1(b)参照)に、図9の同調コンデンサ回路52の左側端子を接続した。その同調コンデンサ回路52の右側端子に、図11(b)の整流回路54の両波倍電圧整流回路543の左側端子を接続した。
【0129】
この整流回路54の右側端子の電位を図ると、直流で約2.4V観測されたので、図13の出力回路562の発光ダイオード(赤色)を接続すると発光ダイオードが点灯した。すなわち、本実施例では、同調コンデンサ52を変化させて同調周波数を調整し、目的の周波数のラジオ放送を受信することでLEDを発光させることが確認できた。なお、ラジオ放送として、上記下馬送信所からのNHK福井ラジオ第一放送(927KHz, JOFG, 5KW)を利用し、受信位置は、下馬送信所から約5Kmの上記福井大学文京キャンパスとした。
【0130】
さらに、上記実施例と同様、周長L=2m、巻数N=8の実施例1に係るフレキシブルコイル4(直径約 0.63m)を準備し(図1(a)参照)、その線材3の始端3aと終端3b(図1(b)参照)に、図9の同調コンデンサ回路52の左側端子を接続した。その同調コンデンサ回路52の右側端子に、図11の整流回路54のコッククロフト・ウォルトン回路549(n=1)の左側端子を接続した。コッククロフト・ウォルトン回路549は4倍昇圧回路(n=1)とした。この整流回路の右側端子の電位を計ると直流で約4.8V観測されたので、図13の出力回路562の発光ダイオード(白色)を接続したところ発光ダイオードが点灯した。
【0131】
以上のように、本実施例では、同調コンデンサ52を変化させて同調周波数を調整し、目的の周波数のラジオ放送を受信することでLEDを発光させることが確認できた。
【実施例14】
【0132】
(4-5)蓄電回路
接続回路50は蓄電回路55を含んでもよい。図12に、蓄電回路55の代表例551、552の回路図を示す。この回路図551、552に含まれるコンデンサは、バリコンと呼ばれる(4-2)の同調コンデンサ回路に用いられるコンデンサに比べて容量が大きく、代表的には容量が1Fのオーダーのコンデンサであり、本明細書で蓄電コンデンサともいう。蓄電コンデンサは、例えば電気二重層コンデンサであり、電気を大量に蓄えることができる。蓄電回路55として、電界コンデンサやニッケル水素電池、鉛蓄電池などの二次電池を用いてもよい。また、回路図552はコイルも含み、入力された交流電圧を平滑化してノイズを除去することができる。
【0133】
本実施例においても上記実施例と同様、周長L=2m、巻数N=8の実施例1に係るフレキシブルコイル4(直径約 0.63m)を準備し(図1(a)参照)、その線材3の始端3aと終端3b(図1(b)参照)に、図9の同調コンデンサ回路52の左側端子を接続した。その同調コンデンサ回路52の右側端子に、図11の整流回路54のコッククロフト・ウォルトン回路549(n=1)の左側端子を接続した。コッククロフト・ウォルトン回路549(n=1)は4倍昇圧回路である。この整流回路の右側端子に、図12の蓄電回路551を接続した。コンデンサの容量は1000μFとし、電荷が少しずつ溜まることを確認した。
【0134】
10分程度の接続で、3V程度になったので、整流回路を切り離した後、図12の蓄電回路のコンデンサの両端に、図13で示す出力回路56の562の発光ダイオード(白色)を接続した。発光ダイオードが蓄電した電荷により点灯したので、蓄電できることが確認された。
【実施例15】
【0135】
(4-6)出力回路
図13に、接続回路50に外部から接続する出力回路56を示す。出力回路56は、接続回路50に外部から接続して用いる。回路図561はセラミック・イヤホンを含む回路で、フレキシブルコイル4側から入力される電波を変換してAMラジオを聞くのに用いられる。回路図562は発光ダイオードを含む回路で、フレキシブルコイル4側から入力される交流電圧を整流してLEDが発光する。同様に、回路図563はスピーカーを含む回路で、回路図564はコイルを含む回路である。また、回路図565が含む抵抗負荷は、出力回路56に接続する上記コイルやセラミック・イヤホン、発光ダイオード、スピーカー以外のあらゆる出力機器、例えばIoT機器やモーターなどの負荷を表象するものとする。

【0136】
(5)磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタの応用例
上述のような接続回路50の構成要素となる回路、すなわち、抵抗(接続線)回路51(図8)、同調コンデンサ回路52(図9)、マッチング回路53(図10)、整流回路54(図11)、蓄電回路55(図12)などを適宜組み合わせて、例えば図14のような接続回路50を構成し、これに出力回路56(図13)を接続して、本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は種々の用途に応用することができる。以下、図14に示す回路の番号を用いて接続回路50と出力回路56の回路要素を引用し、磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1の応用例について説明する。
【実施例16】
【0137】
(5-1)ループアンテナ
上述のように、接続回路50を抵抗回路51とすれば、本発明の磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1をフレキシブルな磁界アンテナとして利用することができる(図8)。あるいは、図9のように、接続回路50を同調コンデンサ回路52として同調コンデンサ(バリコン)を挿入してもよい。コイルの共振周波数は、fmax=1/2π(LC)1/2なので、バリコンの容量Cを調節して、共振する電磁波の周波数を選ぶことができる。接続回路50が抵抗回路51の場合は、フレキシブルコイル4の浮遊容量が上記容量Cとなる。このようなループアンテナ(フレキシブルな磁界アンテナ)は、上述のように、図3(a)に示すようなダウンサイズ型のエネルギーハーベスタ1Sとして収容あるいは携帯し、使用時に展開して大型磁界型ループアンテナとし、ラジオの受信感度や混信具合を調節することができる。
【実施例17】
【0138】
(5-2)LEDライト
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1をLEDライトとして機能させる場合、接続回路50は、(1)51+562、(2)52+562、(3)52+541+562、(4)52+542+562、(5)52+541+551+562、(6)52+542+551+562、などの回路の組み合わせにより実現することができる。
【0139】
(2)のように同調コンデンサ回路52と発光ダイオード562を組み合わせると、(1)の接続回路50と異なり、フレキシブルコイル4とバリコンにより上記同調回路が構成され、特定の周波数の電波からエネルギーを獲得してLEDライトを発光させることができる。更に、(3)、(4)のように整流回路541、542を挿入して、直流電流によりLEDライトを発光させることができ、(5)、(6)のように蓄電回路55のコンデンサを挿入することにより、発光を安定させることができる。
【実施例18】
【0140】
(5-3)無電源ラジオ
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1をゲルマラジオとして機能させる場合、接続回路50は、(1)52+541+561、(2)53+52+541+561、(3)52+541+53’+561、(4)53+52+541+53’+561(53は52の前でもよい)などの回路の組み合わせにより実現することができる。
【0141】
フレキシブルコイル4は、電磁誘導コイルあるいは磁界型アンテナとして機能する。フレキシブルコイル4は直径が非常に大きな巻線コイルであり、磁界成分が重要なAMラジオ放送から大きな電磁誘導が得られるため、出力回路56としてイヤホン561(セラミック・イヤホン、ダイナミック・イヤホンなど)やスピーカー563などを接続すれば、磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1は、電波のエネルギーでラジオ放送が聞こえる無電源ラジオとして機能する。
【0142】
フレキシブルコイル4に同調コンデンサ回路52(バリコンやバリキャップ)を接続した上記(1)、(2)の接続回路50では、上記同調回路により特定周波数の電波を検波(同調)して整流回路541で整流し、接続回路50に外部から接続したセラミック・イヤホン(イヤホン561)により無電源ラジオを構成することができる。(1)の接続回路50にマッチング回路53を追加した(2)の接続回路50では、フレキシブルコイル4から受信した電波を増幅してから同調コンデンサ回路52(バリコン)により検波を行う。
【0143】
また、(3)、(4)の接続回路50では、(1)、(2)の接続回路50にマッチング回路53’を挿入して、接続回路50に外部から接続する出力機器(抵抗負荷565)とインピーダンス整合を行う。出力機器(抵抗負荷565)は、例えばインピーダンスが極端に異なるスピーカー563やダイナミック・イヤホンなどであり、数百Ωの抵抗がある上記セラミック・イヤホンに対してスピーカー563の代表的な抵抗値は4Ωや8Ωである。
【実施例19】
【0144】
(5-4)発電機
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1を発電器として機能させる場合、接続回路50は、(1)52+541+565、(2)52+542+565、(3)541+565、(4)542+565などの回路の組み合わせにより実現することができる。なお、駆動する抵抗負荷は565として表記している。541や542は昇圧するためにコッククロフト・ウォルトン回路549であってもよい。
【0145】
すなわち、出力機器564を、(3)、(4)のように整流回路541、542と接続すれば、本発明のフレキシブルエネルギーハーベスタ1を発電器として用いることができる。バリコン(同調コンデンサ回路)52を挿入して同調回路を構成し、所望の周波数域からエネルギーを収穫して発電機として機能させてもよい。
【実施例20】
【0146】
(5-5)蓄電機
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ1を蓄電器として機能させる場合、接続回路50は、(1)52+541+551+565、(2)52+541+552+565、(3)541+551+565、(4)542+551+565、(5)541+552+565、(6)542+552+565などの回路の組み合わせにより実現することができる。541や542は昇圧するためにコッククロフト・ウォルトン回路549であってもよい。
【0147】
(3)~(6)のように整流回路541、542と蓄電回路551、552(電気二重層コンデンサ等)とを接続すれば、電気二重層コンデンサ等に電気を蓄電することができ、これに外部から出力機器(抵抗負荷565)を接続することでこれを作動させることができる。(1)、(2)のようにバリコン(同調コンデンサ回路)52を挿入して同調回路を構成し、所望の周波数域の電波から蓄電してもよい。
【0148】
以上、本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタについて説明したが、本発明は上記実施形態や実施例に限定されるものではない。本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタを構成する材料、材質、種類等は特に限定されず、その寸法、厚さも適宜変更可能である。
【0149】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタは、高感度な無電源ラジオ受信機や発電機、蓄電池用のコイル、一般的なラジオ受信機の受信感度や混信を調節するための形状変形可能な磁界型アンテナ等に応用可能であり、例えば、電池や電源確保の心配が不要な防災ラジオや、低消費電力のIоT機器や無線ネツトワーク用の電源装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0151】
1:本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ
1S:ダウンサイズ型の本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ
1T:無指向性の本発明に係る磁界型フレキシブルエネルギーハーベスタ
3: 線材
3a:始端
3b:終端
31~36:フラットケーブルを構成する線材
4:フレキシブルコイル
5:フラットケーブル
6:ノード
10:(フレキシブル)ループ又は(フレキシブル)ループ面
10S:(ダウンサイズ型)小ループ又は小ループ面
10T:無指向性ループ又はそのループ面
12: 端部
12a:一端
12b:他端
20:結束手段
40:連結部
50:接続回路
51:抵抗(接続線)回路
52:同調コンデンサ回路
53:マッチング回路
54:整流回路
549:コッククロフト・ウォルトン回路
55:蓄電回路(蓄電同調コンデンサ回路および2次電池)
56:出力回路
561:イヤホン
562:発光ダイオード
563:スピーカー
564:コイル
565:抵抗負荷(出力機器又は外部回路一般)

図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図3
図4
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図6(d)】
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16