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特許7391305砕石杭形成用アタッチメント及びそれを備える砕石杭形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】砕石杭形成用アタッチメント及びそれを備える砕石杭形成装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
E02D3/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020093640
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2021188340
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】507301486
【氏名又は名称】株式会社 尾鍋組
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 俊典
(72)【発明者】
【氏名】尾鍋 哲也
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-248885(JP,A)
【文献】特開2019-27206(JP,A)
【文献】特開2011-6880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に挿入されて空間を形成し、前記地中から上昇しつつ前記空間に砕石杭を形成する砕石杭形成用のアタッチメントであって、
その側面に軸方向に沿って砕石投入孔が形成される円筒部と、
前記円筒部に取付けられ、前記砕石投入孔を開閉する扉と、
前記円筒部内に回転可能に配置されており、正転方向と反転方向の回転駆動力を発生させる駆動装置に接続されており、前記正転方向に回転することで前記地中を掘削し、前記反転方向に回転することで砕石に圧力を印加する螺旋部と、を備え、
前記砕石投入孔は、
前記円筒部の軸方向に伸びる第1長辺と、
前記第1長辺と周方向に間隔を空けて配置され、前記円筒部の軸方向に伸びる第2長辺と、
前記円筒部の先端側で前記第1長辺の先端と前記第2長辺の先端とを接続する第1短辺と、
前記円筒部の後端側で前記第1長辺の後端と前記第2長辺の後端とを接続する第2短辺と、を備えており、
前記円筒部の外側から前記砕石投入孔を正面視したときに、前記第1長辺は前記円筒部の正転方向に位置する一方で、前記第2長辺は前記円筒部の反転方向に位置し、
前記扉は、
前記第1長辺に沿って伸びており、前記円筒部に固定されている第1長辺部と、
前記第2長辺に沿って伸びており、前記円筒部に固定されていない第2長辺部と、
前記第1短辺に沿って伸びており、前記第1長辺部の先端と前記第2長辺部の先端を接続し、前記円筒部に固定されていない第1短辺部と、
前記第2短辺に沿って伸びており、前記第1長辺部の後端と前記第2長辺部の後端を接続し、前記円筒部に固定されていない第2短辺部と、を備えており、
前記砕石投入孔が形成された位置において、前記円筒部及び前記扉を前記円筒部の軸線に直交する断面でみたときに、前記扉の少なくとも前記第2長辺部は、前記円筒部の外周面と、その外周面を延長した仮想円弧とで構成される仮想円の内側に位置し、
前記扉の前記第2長辺部に、前記円筒部の外周面からくぼんでいる凹所が形成され、前記円筒部が前記正転方向に回転するときに前記凹所に土砂が保持されることで、前記扉の表面の摩耗が抑制可能となっている、アタッチメント。
【請求項2】
前記砕石投入孔が形成された位置において、前記円筒部及び前記扉を前記円筒部の軸線に直交する断面でみたときに、前記第1長辺部も前記仮想円の内側に位置する、請求項1に記載のアタッチメント。
【請求項3】
前記砕石投入孔が形成された位置において、前記円筒部及び前記扉を前記円筒部の軸線に直交する断面でみたときに、前記第2長辺部は、前記第1長辺部よりも前記仮想円の内側に位置する、請求項2に記載のアタッチメント。
【請求項4】
前記円筒部は、
その側面に軸方向に沿って取付孔が形成される円筒部本体と、
前記仮想円の内側の位置で前記円筒部本体の取付孔に取付けられ、前記取付孔を塞ぐ取付板と、を備えており、
前記砕石投入孔は前記取付板に形成されており、前記扉は前記取付板に取付けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載のアタッチメント。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のアタッチメントと、
正転方向と反転方向の回転駆動力を発生させて、前記アタッチメントを駆動する駆動装置と、を備える、砕石杭形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、砕石杭形成用アタッチメント及びそれを備える砕石杭形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状化対策等の地盤改良のために、地中に砕石杭を形成する方法が用いられている。地中に砕石杭を形成する方法としては、地中に挿入されて空間を形成し、地中から上昇しつつ空間に砕石杭を形成するアタッチメントを用いることがある。この種のアタッチメントは、その側面に軸方向に沿って砕石投入孔が形成される円筒部と、円筒部内に回転可能に配置され地中を掘削する螺旋部と、を備えている。螺旋部は、正転方向の回転によってアタッチメントを地中に挿入しながら地中を掘削する。そして、円筒部の側面に設けられる砕石投入孔から砕石が投入され、螺旋部は反転方向の回転によってアタッチメントを地中から引き抜きながら地中に砕石杭を形成する。例えば、特許文献1には、砕石杭形成用のアタッチメントの一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-248885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のアタッチメントでは、地中にアタッチメントを挿入するときは、駆動源の動力が螺旋部と円筒部に伝達され、円筒部は螺旋部と共に正転方向に回転する。円筒部には砕石投入孔を閉じる扉が取付けられており、扉も円筒部と共に正転方向に回転する。円筒部と扉は土砂と接触しながら回転するため、円筒部及び扉の表面が摩耗することになる。ここで、円筒部内に砕石を投入するには、砕石投入孔を閉じる扉のうち、地上に露出する部分を変形させて砕石投入孔を解放しなければならない。このため、扉は、円筒部と比較して容易に弾性変形する材料(例えば、ゴム等)で形成される。したがって、扉表面は摩耗し易く、使用による損傷が大きな問題となる。特に、扉の両端部のうち、正転方向の端部は円筒部によって土砂の圧力が直接作用することが抑制されるのに対して、反転方向の端部は土砂の圧力が直接作用する。このため、扉の表面のうち、反転方向の端部は摩耗による損傷が顕著に現れる。本明細書は、使用による扉の摩耗を抑制することができる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示するアタッチメントは、地中に挿入されて空間を形成し、地中から上昇しつつ前記空間に砕石杭を形成する砕石杭形成用のアタッチメントであって、その側面に軸方向に沿って砕石投入孔が形成される円筒部と、円筒部に取付けられ、砕石投入孔を開閉する扉と、円筒部内に回転可能に配置されており、正転方向と反転方向の回転駆動力を発生させる駆動装置に接続されており、正転方向に回転することで地中を掘削し、反転方向に回転することで砕石に圧力を印加する螺旋部を備えている。砕石投入孔は、円筒部の軸方向に伸びる第1長辺と、第1長辺と周方向に間隔を空けて配置され、円筒部の軸方向に伸びる第2長辺と、円筒部の先端側で第1長辺の先端と第2長辺の先端とを接続する第1短辺と、円筒部の後端側で第1長辺の後端と第2長辺の後端とを接続する第2短辺を備えている。円筒部の外側から砕石投入孔を正面視したときに、第1長辺は円筒部の正転方向に位置する一方で、第2長辺は円筒部の反転方向に位置している。扉は、第1長辺に沿って伸びており、円筒部に固定されている第1長辺部と、第2長辺に沿って伸びており、円筒部に固定されていない第2長辺部と、第1短辺に沿って伸びており、第1長辺部の先端と第2長辺部の先端を接続し、円筒部に固定されていない第1短辺部と、第2短辺に沿って伸びており、第1長辺部の後端と第2長辺部の後端を接続し、円筒部に固定されていない第2短辺部を備えている。砕石投入孔が形成された位置において、円筒部及び扉を円筒部の軸線に直交する断面でみたときに、扉の少なくとも第2長辺部は、円筒部の外周面と、その外周面を延長した仮想円弧とで構成される仮想円の内側に位置し、扉の第2長辺部に、円筒部の外周面からくぼんでいる凹所が形成される。円筒部が正転方向に回転するときに凹所に土砂が保持されることで、扉の表面の摩耗が抑制可能となっている。
【0006】
上記のアタッチメントでは、砕石投入孔が形成された位置において、円筒部及び扉を円筒部の軸線に直交する断面でみたときに、扉の第2長辺部(反転方向の端部)が仮想円の内側に位置する。すなわち、扉の第2長辺部は、円筒部の外周面からくぼんでいる凹所に配置されることになる。このため、地中にアタッチメントを挿入するためにアタッチメントが正転すると、第2長辺部が位置する凹所(円筒部の外周面からくぼんでいる凹所)に土砂が入り込んで保持され、凹所に入り込んだ土砂は円筒部と共に回転する。第2長辺部と土砂とが一体となって回転するため、両者の間に相対的な運動(滑り)が生じることが抑制され、扉の第2長辺部の摩耗を抑制することができる。
【0007】
また、本明細書は、上記のアタッチメントを備えた砕石杭形成装置を開示する。すなわち、本明細書に開示する砕石杭形成装置は、上記のアタッチメントと、正転方向と反転方向の回転駆動力を発生させて、アタッチメントを駆動する駆動装置と、を備えている。この砕石杭形成装置によると、扉の摩耗が抑制されるため、メンテナンスによる扉の交換の頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係る砕石杭形成装置の概略構成を示す図。
図2】アタッチメントのみを別の角度から見た図。
図3図1のIII-III線における断面図(砕石投入孔にホッパーの先端が挿入されていない状態(地中を掘削するときの状態))。
図4図1のIII-III線における断面図(砕石投入孔にホッパーの先端が挿入された状態(地中からアタッチメントを引き抜くときの状態))。
図5】砕石投入孔と、その砕石投入孔を閉じる扉とを正面から見た図。
図6】無排土タイプのアタッチメントの断面図であって、図3に対応する位置における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(特徴1)本明細書が開示するアタッチメントでは、砕石投入孔が形成された位置において、円筒部及び扉を円筒部の軸線に直交する断面でみたときに、第1長辺部も仮想円の内側に位置してもよい。このような構成によると、扉の第1長辺部も円筒部の外周面からくぼんでいる凹所に配置されるため、扉の第1長辺部の摩耗を抑制することができる。
【0010】
(特徴2)本明細書が開示するアタッチメントでは、砕石投入孔が形成された位置において、円筒部及び扉を円筒部の軸線に直交する断面でみたときに、第2長辺部は、第1長辺部よりも仮想円の内側に位置していてもよい。このような構成によると、摩耗し易い第2長辺部を第1長辺部より好適に保護することができる。
【0011】
(特徴3)本明細書が開示するアタッチメントでは、円筒部は、その側面に軸方向に沿って取付孔が形成される円筒部本体と、仮想円の内側の位置で円筒部本体の取付孔に取付けられ、取付孔を塞ぐ取付板と、を備えていてもよい。この場合において、砕石投入孔は取付板に形成されていてもよく、扉は取付板に取付けられていてもよい。このような構成によると、円筒部本体に対する取付板の取付位置を調整することで、円筒部に対する扉の位置(例えば、第1長辺部及び/又は第2長辺部の位置)を容易に調整することができる。
【実施例
【0012】
以下、本実施例に係る砕石杭形成装置100について説明する。図1に示すように、砕石杭形成装置100は、建設機械としての地盤改良機40と、地盤改良機40に装着されたアタッチメント10を備えている。地盤改良機40は、図1に示されるように、地盤改良機本体構造1と、運転席としてのキャビン7と、低接地圧で不整地を移動可能な無限軌道であるクローラ6と、施工時において地盤改良機40の揺動を抑制するアウトリガー5と、を備える。
【0013】
地盤改良機40は、さらに、アタッチメント10を操作するための構成として、アタッチメント10にモーター出力軸27を介して回転駆動力を供給する駆動装置11と、昇降ガイドレール9を有するリーダー4と、駆動装置11及びアタッチメント10を昇降ガイドレール9に沿って昇降する昇降台17と、リーダー4を支持するためのリーダー取付ベース2と、リーダー4の傾きを操作する油圧シリンダー3と、リーダー4の下端部においてリーダー4と一体的に形成されている延長脚柱8と、を備えている。
【0014】
図1及び図2に示すように、アタッチメント10は、フィン13が設けられた円筒部12と、螺旋部14と、円筒部12の振れ止め用の包囲枠30と、昇降台17に取り付けられるハンガーステー18と、トップカバーケース16と、砕石投入装置32と、包囲枠30を支持する支持プレート37と、砕石投入装置32を支持する支持アーム39と、アタッチメント10による施工状態を管理する施工管理装置41と、を備えている。
【0015】
円筒部12は円筒状の部材であり、その側面には砕石投入孔15が形成されている。砕石投入孔15は、円筒部12の軸方向に伸びており、弾性変形可能なゴム製又は樹脂製の開閉扉20によって塞がれている。詳細には、図3及び図4に示すように、砕石投入孔15は、取付プレート28(請求項でいう取付板の一例)に形成されており、開閉扉20は取付プレート28に固定されている。取付プレート28は、砕石投入孔15の一方の縁部(z方向に伸びる縁部)に設けられた取付部28aと、砕石投入孔15の他方の縁部(z方向に伸びる縁部)に設けられた受け止め部28bと、を備えている。開閉扉20は、取付部28aと受け止め部28bに当接することによって砕石投入孔15を塞いでいる。取付部28aは、図3において-X方向側に位置しており、受け止め部28bは、図3において+X方向側に位置している。砕石投入装置32が砕石投入孔15と対向する位置に配置されると、砕石投入装置32に対して取付部28aは時計回り側(後述する正転方向側)に位置し、受け止め部28bは反時計回り側(後述の反転方向側)に位置している。砕石投入孔15と開閉扉20の構成については、後で詳述する。
【0016】
砕石投入装置32は、ホッパー部33と、ホッパー部33の下部に配置されるシュート部34を備えている。砕石投入孔15は、アタッチメント10が地中を掘削する際には、開閉扉20によって閉じられている。これによって、砕石投入孔15から円筒部12内に土砂が侵入することを防止できる。また、円筒部12内に砕石を投入する際には、開閉扉20が開けられる(図4参照)。これによって、砕石投入装置32に投入した砕石を砕石投入孔15から円筒部12内に投入することができる。また、砕石投入孔15が軸方向に沿って長孔として設けられていることによって、円筒部12が上昇しても砕石投入位置を変更することなく、砕石を円筒部12内に投入することができる。
【0017】
図1及び図2に示すように、螺旋部14は、円筒部12の先端に位置しており、コアロッド22(図3、4に図示)及び回転入力軸31と一体的に構成されている。回転入力軸31は、駆動装置11のモーター出力軸27に接続されている。回転入力軸31は、モーター出力軸27の回転駆動力に応じて回転し、その回転駆動力を一体的に結合されたコアロッド22を介して螺旋部14に伝達する。螺旋部14の先端には掘削翼が設けられている。掘削翼は、螺旋部14の先端に向かうにしたがって径が大きくなる螺旋状に形成されている。掘削翼の略全体は円筒部12内に配置されており、掘削翼の先端の一部のみが円筒部12の先端から突出している。
【0018】
コアロッド22(図3に図示)は、図示しない位置で円筒部12に回転可能に結合され、円筒部12と回転軸を共通にしている。円筒部12は、その周囲に螺旋状のフィン13を有している。フィン13は、螺旋部14の螺旋(すなわち、掘削翼)と同一方向の螺旋形状を有している。すなわち、掘削する際には、円筒部12と螺旋部14は、同一方向に回転することになる。これにより、螺旋部14の掘削によって生じた掘削土砂がフィン13によって地表に運搬されることになる。
【0019】
トップカバーケース16は、円筒部12の後端部に取付けられており、円筒部12と一体化されている。コアロッド22は、トップカバーケース16の上面を貫通しており、トップカバーケース16に回転可能に支持されている。このため、コアロッド22が回転駆動されても、円筒部12はコアロッド22と共に回転することなく、フリーな状態が保たれる。
【0020】
アタッチメント10は、さらに、図示しない回転駆動力伝達部と反転防止部を備えている。回転駆動力伝達部は、ワンウエイクラッチ機構であり、掘削時の回転方向に螺旋部14を駆動する際は、自動的に螺旋部14と円筒部12を一体として回転させる。これにより、上述のように螺旋部14で掘削した土砂を円筒部12が有するフィン13で地上に排出することができる。一方、回転駆動力伝達部は、掘削時の回転方向と逆方向に螺旋部14を駆動する際は、螺旋部14を反転方向に回転させることで砕石に圧力を印加すると共に、螺旋部14から円筒部12への動力伝達を遮断して円筒部12の回転を停止させる。反転防止部は、掘削時の回転方向と逆方向に螺旋部14を駆動する際は、回転を停止された円筒部12が、掘削時の回転方向にもその逆方向にも回転しないように、円筒部12の回転を規制する。以下、円筒部12と螺旋部14が同一方向に回転する方向、すなわち、掘削時の回転方向を「正転方向」といい、掘削時の回転方向と逆方向に回転する方向、すなわち、螺旋部14で砕石に圧力を印加する回転方向を「反転方向」ということがある。また、正転方向の回転を右回転(時計回り)とし、反転方向の回転を左回転(反時計回り)として説明する。
【0021】
ここで、砕石投入孔15と開閉扉20について詳細に説明する。図5に示すように、砕石投入孔15を正面視すると、砕石投入孔15は、円筒部12の軸方向に伸びる第1長辺15aと、第1長辺15aと周方向に間隔を空けて配置された第2長辺15bを有する。第2長辺15bは、第1長辺15aと平行であり、円筒部12の軸方向に伸びている。また、砕石投入孔15は、第1長辺15aと直交する第1短辺11c及び第2短辺15dを有する。第1短辺15cは、円筒部12の先端側で第1長辺15aの先端と第2長辺15bの先端とを接続する。第2短辺15dは、円筒部12の後端側で第1長辺15aの後端と第2長辺15bの後端とを接続する。長辺15a,15bと短辺15c,15dが直交することから、砕石投入孔15は、正面視すると長方形状となっている。円筒部12は、掘削時に正転方向(図3の矢印Aの方向)に回転するため、第1長辺15a側が正転方向に位置し、第2長辺15b側が反転方向に位置している。
【0022】
既述したように、砕石投入孔15は取付プレート28に形成されており、取付プレート28も正面視すると長方形状となっている。図3に示すように、取付プレート28は、円筒部12(請求項でいう円筒部本体の一例)に形成されたスリット12a(請求項でいう取付孔の一例)の開口部より内側の位置で、円筒部12の内壁面に固定されている。したがって、取付プレート28は、円筒部12の外周面12bと、その外周面12bを延長してスリット12aの開口を閉じる仮想円弧50とで構成される仮想円(12b,50)の内側に位置している。
【0023】
図5に示すように、開閉扉20を正面視すると、開閉扉20は、砕石投入孔15の第1長辺15aに沿って平行に伸びる第1長辺部21aと、砕石投入孔15の第2長辺15bに沿って平行に伸びる第2長辺部21bと、砕石投入孔15の第1短辺15cに沿って平行に伸びる第1短辺部21cと、砕石投入孔15の第2短辺部15dに沿って平行に伸びる第2短辺部21dとを有する。第1短辺部21cは、第1長辺部21aの先端と第2長辺部21bの先端とを接続している。第2短辺部21dは、第1長辺部21aの後端と第2長辺部21bの後端とを接続している。砕石投入孔15が長方形状を有するため、開閉扉20も長方形状を有している。
【0024】
図3,4に示すように、開閉扉20の第1長辺部21aは、取付プレート28の取付部28aに取付ボルト24によって固定されている。一方、開閉扉20の第2長辺部21bは、取付プレート28の受け止め部28bに当接するが、受け止め部28bには固定されていない。同様に、開閉扉20の第1短辺部21c及び第2短辺部21dは、取付プレート28の受け止め部28c、28d(図5参照)に当接するが、受け止め部28c、28dには固定されていない。したがって、開閉扉20は、第1長辺部21a側に設けられた軸29を支軸として開閉可能となっている。すなわち、開閉扉20は、開閉扉20によって砕石投入孔15を閉じた状態(図3に示す状態)と、開閉扉20によって砕石投入孔15を開放した状態(図4に示す状態)とに切り替えられる。図4に示すように、開閉扉20が砕石投入孔15を開放すると、砕石投入装置32のシュート部34から砕石投入孔15を介して円筒部12内に砕石が投入可能となる。
【0025】
図3,4から明らかなように、開閉扉20の全体(すなわち、第1長辺部21a、第2長辺部21b、第1短辺部21c、第2短辺部21dのそれぞれ)は、取付プレート28と同様、円筒部12の外周面12bと、その外周面12bを延長した仮想円弧50とで構成される仮想円(12b,50)の内側に位置している。したがって、開閉扉20の全体は、円筒部12の外周面12bより内側にくぼんだ凹所25内(図3に図示)に位置する。なお、取付プレート28の受け止め部28bには当接部材26が設けられている。開閉扉20が砕石投入孔15を閉じた状態では、当接部材26が開閉扉20の側端面に当接し、開閉扉2の側端面を保護するようになっている。本実施例では、取付プレート28に当接部材26を設けることで、開閉扉20の第2長辺部21bが円筒部12の外周面12bの端部(反転方向の端部)から正転方向に離間する。これによって、凹所25は、第2長辺部21b側に土砂を保持可能な空間を確保している。また、本実施例では、開閉扉20は、樹脂部21と、樹脂部21内にインサートされた補強プレート23によって構成されている。樹脂部21内に鉄製の補強プレート23をインサートすることで、開閉扉20の機械的強度と耐久性の向上が図られている。なお、樹脂部21の材料は特に限定されず、例えば、ポリウレタン(ウレタンゴム)、ブタジエンスチレンゴム,ブチルゴム,ネオプレン等の合成ゴムを用いてもよいし、天然ゴムやシリコン等を用いてもよい。
【0026】
次に、砕石杭形成装置100が砕石杭を形成する際の砕石杭形成装置100の動作について説明する。
【0027】
まず、アタッチメント10の位置合わせを行う。アタッチメント10の位置合わせは、クローラ6の駆動によって地盤改良機40の位置と方向とを調整することによって行われる。なお、地盤改良機40の位置と方向を調整した後、地盤改良機40は、アウトリガー5によって地面に固定されてもよい。これにより、施工時における地盤改良機40の揺動や位置ずれを抑制することができる。
【0028】
次いで、アタッチメント10を地中に挿入して、地中を掘削する。具体的には、地盤改良機40を地面に固定した後、駆動装置11を駆動させながらアタッチメント10を下降させる。この際、駆動装置11は、正転方向の回転駆動力を発生するように駆動する。上述したように、駆動装置11が正転方向の回転駆動力を発生すると、回転駆動力伝達部によって、螺旋部14及び円筒部12が正転方向に回転する。これによって、アタッチメント10が地中に挿入されて掘削される。地中の掘削によって排出される土砂は、円筒部12の外周に運ばれ、フィン13によって地表に排出される。アタッチメント10が所定の深さまで到達すると、駆動装置11の正転回転の駆動を停止し、掘削を終了する。
【0029】
ここで、図3に示すように、開閉扉20の全体は、円筒部12の外周面12bと仮想円弧50とで構成される仮想円(12b,50)の内側に位置し、円筒部12の外周面12bより内側にくぼんだ凹所25内に位置している。このため、地中を掘削するために、円筒部12が正転方向(矢印Aの方向)に回転すると、地中の土砂は凹所25内に侵入し、円筒部12と共に回転することになる。その結果、開閉扉20と、その開閉扉20の表面に接触する土砂との間に相対運動(滑り)は生じす、開閉扉20の表面が摩耗することが抑制される。特に、開閉扉20の第2長辺部21bは、地中の土砂から大きな圧力を受けるが、凹所25内に侵入した土砂が当接部材26及び開閉扉20によって形成されるコーナ部に好適に保持される。これによって、開閉扉20の第2長辺部21bの摩耗が好適に抑制される。一方、開閉扉20の第1長辺部21aは、円筒部12のスリット12aより内側に位置することで、円筒部12によって過大な土砂の圧力が作用することが抑制される。これによって、開閉扉20の第1長辺部21aの摩耗が抑制される。
【0030】
次いで、アタッチメント10を上昇させ、地中に砕石杭を形成する。砕石杭の形成は、以下の手順で行われる。まず、図4に示すように、開閉扉20を開いた状態で、砕石投入装置32に砕石を投入する。砕石投入装置32に投入された砕石は、砕石投入孔15を介して円筒部12内に投入される。次に、反転方向の回転駆動力が発生するように、駆動装置11を駆動する。すると、螺旋部14は、反転方向に回転し、円筒部12内に投入された砕石を螺旋部14から押圧しながら円筒部12外に排出する。これによって、アタッチメント10が地中から押し出されると共に、円筒部12で形成した空間に砕石杭が形成される。上述したように、駆動装置11が反転方向の回転駆動力を発生すると、回転駆動力伝達部によって螺旋部14のみが反転方向に回転し、円筒部12は正転方向にも反転方向にも回転しない状態となる。このため、円筒部12に設けられる砕石投入孔15の位置が周方向に変化することを回避することができ、砕石投入装置32の位置を調整することなく円筒部12内へ砕石を投入することができる。そして、アタッチメント10が地表まで押し出されると、駆動装置11の反転方向の駆動を停止し、砕石杭の形成が終了する。
【0031】
本実施例の砕石杭形成装置100では、開閉扉20の摩耗が抑制され、開閉扉20の使用による損傷が抑制される。このため、開閉扉20の交換周期を長くすることができ、砕石杭形成装置100(詳細には、アタッチメント10)のメンテナンスのためのコストを低減することができる。
【0032】
なお、本実施例では、開閉扉20の第1長辺部20aと第2長辺部20bのそれぞれが仮想円(12b、50)の内側に位置するようにしたが、このような構成に限定されない。例えば、摩耗による損傷が大きい第2長辺部20bのみを仮想円(12b、50)の内側に配置し、第1長辺部20aは仮想円(12b、50)上に位置してもよい。また、本実施例では、第1長辺部20aと第2長辺部20bを仮想円(12b、50)より同一距離だけ内側に配置したが、このような構成には限られない。例えば、第2長辺部20bを、第1長辺部20aと比較して仮想円(12b、50)のより内側に位置するように配置してもよい。さらには、本実施例では、円筒部12に取付けた取付プレート28に砕石投入孔15を形成し、取付プレート28に開閉扉20を固定したが、このような構成に限られない。例えば、円筒部に砕石投入孔を直接形成し、その円筒部に開閉扉を直接固定するようにしてもよい。
【0033】
また、本実施例は、掘削した土砂を地表面に排出するタイプ(いわゆる、排土タイプ)のアタッチメントであったが、このような例に限られない。本明細書に開示の技術は、例えば、図6に示すような無排土タイプのアタッチメントにおいても採用することができる。図6に示すアタッチメントでは、円筒部112の外周面に排土用のフィンが設けられていないが、円筒部112の外周面を延長して形成される仮想円弧の内側に開閉扉20の両端部が配置される。開閉扉20の両端部を仮想円弧の内側(すなわち、凹所)に配置することで、開閉扉20の損傷を抑制することができる。
【0034】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記の実施例においては、円筒部が時計回り(例えば、図3の時計回り)に回転するときに土砂を掘削したが、このような例に限られず、上記の実施例とは逆方向に円筒部が回転するときに土砂を掘削し、また、開閉扉の固定位置が上記の実施例とは左右が逆になったものなども本発明の範囲内となる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0035】
10 アタッチメント
11 駆動装置
12 円筒部
12b 外周面
14 螺旋部
15 砕石投入孔
15a 第1長辺
15b 第2長辺
15c 第1短辺
15d 第2短辺
20a 開閉扉
21a 第1長辺部
21b 第2長辺部
21c 第1短辺部
21d 第2短辺部
25 凹所
26 当接部材
29 軸
50 仮想円
100 砕石杭形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6