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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】検体採取スワブ
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20231128BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G01N1/04 V
G01N33/48 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022136144
(22)【出願日】2022-08-29
【審査請求日】2023-07-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000167842
【氏名又は名称】広陵化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】中西 司
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060397(JP,A)
【文献】実開平07-016161(JP,U)
【文献】特開昭64-045811(JP,A)
【文献】国際公開第2021/054465(WO,A1)
【文献】特開2021-025160(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0202499(US,A1)
【文献】特開2019-017547(JP,A)
【文献】特表2014-503068(JP,A)
【文献】特開2022-149094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドと、前記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体と、を備える検体採取スワブであって、
前記繊維体は、異型度が2.0~2.4であるY字型断面を有する繊維を含む不織布により形成されている検体採取スワブ。
【請求項2】
前記不織布の厚みは、0.1~3mmである請求項に記載の検体採取スワブ。
【請求項3】
前記不織布の目付は、60~150g/m2である請求項1又は2に記載の検体採取スワブ。
【請求項4】
前記ロッドは、最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部、を有する先端領域部を有するロッドである請求項1又は2に記載の検体採取スワブ。
【請求項5】
前記繊維体は、ポリエステル類で形成されている請求項1又は2に記載の検体採取スワブ。
【請求項6】
生物学検体採取用である請求項1又は2に記載の検体採取スワブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体採取スワブに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床及び診断分析の分野においては、生物学的検体を採取するためにスワブが用いられている。この様なスワブはロッドの先端に天然繊維や合成繊維により形成された繊維体からなる検体採取部を有するものであり、綿棒等が例示される。
【0003】
例えば、インフルエンザウイルスの感染検査は、綿棒を用いて鼻腔や咽喉から粘液を採取し、得られた粘液中のインフルエンザウイルスの有無を判定することにより実施されている(特許文献1)。この様な綿棒として、綿やレーヨン等からなる親水性の綿球部を備えたスワブが知られている(特許文献2)。また、フロック化した綿球部を備えたスワブも知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2002-508193号公報
【文献】特開2003-315218号公報
【文献】特表2007-523663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~3に記載されるスワブは検体の採取量が不安定であり、採取した検体の採取量も少なく、さらには検体採取部の材質や形状によって被検者に痛みや不快感を与えるといった問題があった。また、生物学的検体として涙液を採取する際は、ろ紙を採取具として使用することが一般的であるが、充分な採取量を得ることが難しく、また眼は特にデリケートな器官であるため、被検者が受ける痛みや不快感が大きくなる傾向があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、被検者に痛みや不快感を与えずに、鼻腔、咽喉、眼(結膜)等から検査に充分な量の粘液等の生物学的検体を安定して採取できる検体採取スワブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、特定の繊維体を備える検体採取スワブを用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ロッドと、前記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体と、を備える検体採取スワブであって、
前記繊維体が、異型度が1.4~4.0である断面を有する繊維を含む不織布により形成されている検体採取スワブを提供する。
【0009】
前記繊維は、Y字型、T字型、U字型、V字型、H字型、又はW字型の断面を有する繊維であることが好ましい。
【0010】
前記繊維は、Y字型断面を有する繊維であることが好ましい。
【0011】
前記不織布の厚みは、0.1~3mmであることが好ましい。
【0012】
前記不織布の目付は、60~150g/m2であることが好ましい。
【0013】
前記ロッドは、最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部、を有する先端領域部を有するロッドであることが好ましい。
【0014】
前記繊維体は、ポリエステル類で形成されていることが好ましい。
【0015】
前記検体採取スワブは、生物学検体採取用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の検体採取スワブは、被検者に痛みや不快感を与えずに、鼻腔、咽喉、眼(結膜)等から検査に充分な量の粘液等の生物学的検体を安定して採取できることから、臨床や診断分析の分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ロッドと検体採取スワブの一実施形態を示す。
図2】検体採取スワブの繊維体の第一の実施形態を示す。
図3】検体採取スワブの繊維体の第二の実施形態(正面図)を示す。
図4】検体採取スワブの繊維体の第三の実施形態(正面図)を示す。
図5】ロッドと、ロッドの先端領域部に包着された袋状の繊維体の一実施形態を示す。
図6】実施例の評価で使用した装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<検体採取スワブ>
本発明における検体採取スワブ(以下、「本発明のスワブ」と称する)は、ロッドと、上記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体と、を備え、上記繊維体が、異型度が1.4~4.0である断面を有する繊維(以下、「異型断面繊維」と称する場合がある)を含む不織布により形成されていることを特徴とする。本発明のスワブは、上記の構成を有することから、被検者に痛みや不快感を与えることなく、鼻腔、咽喉、眼(結膜)等から検査に充分な量の粘液等を安定して採取することができる。
【0019】
図1を用いて、本発明のスワブの一実施形態について説明する。図1の(A)はロッド(繊維体を取り付ける前のロッド)を示しており、図1の(B)はロッドと、上記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体とを備えるスワブを示している。図1(A)及び(B)の1は把持部を、2はロッドを、3はロッドの最先端部を、4は検体採取部である繊維体を示している。繊維体4は、異型断面繊維を含む不織布により形成されている。
【0020】
図2は繊維体の第一の実施形態を示している。(A)は繊維体の正面図を示し、(B)は繊維体の側面図を示す。図3は繊維体の第二の実施形態を示している。図4は繊維体の第三の実施形態を示している。これらの繊維体は、不織布を2つ折りにして一方の面と他方の面でロッドを挟み込み、その後に不織布を溶着・溶断して形成された袋状の繊維体である。このため、上記ロッドの最先端部に対応する繊維体の端部は、上記不織布の折り目部分に該当し、先端部分が柔らかい形状となるため、被検者に痛みや不快感を与えない点で有効である。
【0021】
図2の(A)における繊維体の側部5は、不織布の溶着・溶断によりその形状が決定されたものであって、適度な硬さを有する。側部5は、ロッドの最先端部への伸び方向(以下、単に「ロッドの伸び方向」と称することがある)とは逆方向に凸部6を有する。側部5は図示される様に略三角形形状を示している。本実施形態における繊維体は上記特徴を有することにより、他の実施形態(例えば、図3及び4における第二及び三の実施形態)と比較しても、鼻腔や咽喉等から検査に充分な量の粘液等の生物学的検体を極めて安定に採取することができる。その理由を以下に記載する。
【0022】
インフルエンザウイルスやコロナウィルスの感染検査では、感染の疑いがある者に対して鼻水等の検体(生物学的検体)を採取するが、感染者の鼻水等は粘度が高い傾向がある。検体の粘度が高い場合、検体採取スワブの繊維体に対する浸潤性が低くなることから、当該検体を安定に採取することが難しいことがある。また、検体採取スワブの繊維体が不織布により形成されたものであって柔らかい性質を有している点で、粘度の高い検体を掻き出す能力が充分ではない場合がある。この様な場合に、本実施形態における繊維体は、その側部が適度な硬さを有しつつ、ロッドの最先端部への伸び方向とは逆方向に凸部6を有するという形状をとることから、粘度の高い検体を掻き出すための能力が高い。すなわち、本発明のスワブが本実施形態における繊維体を備える場合、検体の粘度が高くても、当該繊維体の形状から検体を鼻腔や咽喉等から掻き出す能力が高く、また、当該繊維体が、異型断面繊維を含む不織布により形成されていることから検体を充分に浸潤させることができるため、これらの相乗効果により鼻腔や咽喉等から検査に充分な量の鼻水等の検体を極めて安定に採取することができるといえる。さらに、検体を鼻腔や咽喉等から掻き出す能力が高く、繊維体が不織布により形成されていることから、被検者に痛みや不快感を与えることがないといえる。
【0023】
図3の繊維体の側部5は、図2の繊維体と同様に、不織布の溶着・溶断によりその形状が決定されたものであって、適度な硬さを有する。また、側部5は正面視で略半円形状を有するため、当該形状により、ある程度、粘度の高い検体を掻き出す能力を備えるといえる。したがって、本実施形態における繊維体は、検体の粘度が高い場合であっても検体を鼻腔や咽喉等から掻き出す能力がある程度高いといえる。
【0024】
図4の繊維体の側部5は、図2の繊維体と同様に、不織布の溶着・溶断によりその形状が決定されたものであって、適度な硬さを有し、溶着部がロッドに沿った形状(すなわちロッドと平行な形状)となっている。したがって、本実施形態における繊維体は、検体の粘度が高い場合であっても検体を鼻腔や咽喉等から掻き出す能力がある程度高いといえる。
【0025】
図5の(A)はロッドの先端領域部を示しており、図5の(B)はロッドの先端領域部に包着している袋状の繊維体を示している。図5の11は最先端部を、12は抜け止め突端を有する返し片部を、13は抜け止め突端を、14はフランジ部を、15はロッドの先端領域部に包着している繊維体を、16は繊維体の袋口部を示している。なお、12の抜け止め突端を有する返し片部は、図示される様に正面視で略三角形形状を示し、一方と他方が対となっている。
【0026】
本発明のスワブが繊維体として、異型断面繊維を含む不織布により形成されていることにより、特に、鼻腔、咽喉、眼(結膜)等から検査に充分な量の生物学的検体を安定して採取することができる。この特性は、異型断面繊維を含む不織布が生物学的検体を充分に浸潤させることができることに起因するものと考えられる。より具体的には、上記不織布が異型断面繊維を含むことから、不織布中の繊維同士が空隙の多い状態で重なり合うこととなり、充分な空隙率を確保できる結果、検査に必要となる生物学的検体が安定して採取できることになる、との説明が可能である。
【0027】
本発明のスワブは上記の特性により、眼(結膜)から生物学的検体(例えば、涙液)を安定して採取する際に有用である。眼(結膜)から涙液を採取する際は、ろ紙を採取具として使用することが一般的である。しかしながら、ろ紙が有する検体採取能は低く、検査に充分な量の涙液を得ることが難しかった。この点で、検査に必要となる涙液を安定して採取できる本発明のスワブは有用である。
【0028】
検体採取部が不織布によって形成された検体採取スワブは、不織布が高い空隙率を有することから、ロッドの最先端部への伸び方向に不織布を引き抜こうとする力に弱く、ロッドから上記検体採取部が脱落することがある。鼻腔や咽喉から粘液を採取する際にロッドから検体採取部が脱落することは、重大な医療事故を引き起こす可能性があることから、ロッドから検体採取部が脱落しない特性が求められる。以下、この様な特性を「脱落回避性」と称する。
【0029】
[ロッド]
ロッドの形状は特に限定されないが、繊維体の脱落回避性の観点からは、フランジ部及び抜け止め突端を有する返し片部の何れか1つを有する先端領域部を有する形状であることが好ましく、フランジ部及び抜け止め突端を有する返し片部の両方を有する先端領域部を有する形状であることがより好ましい。ロッドが、フランジ部及び抜け止め突端を有する返し片部の両方を有する先端領域部を有する場合、抜け止め突端を有する返し片部が、最先端部及びフランジ部の間に位置すること、すなわち、ロッドが、最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部、を有する先端領域部を有することが、高い脱落回避性が発揮される点で特に好ましい。
【0030】
フランジ部は、繊維体の袋内部及び/又は袋口部と接触することにより脱落回避性を発揮する。すなわち、ロッドの伸び方向に繊維体を引き抜こうとする力が加わった場合、繊維体の袋内部及び/又は袋口部がフランジ部に接触することで、引き抜こうとする力とは逆方向の力が生じ、その結果、脱落回避性が発揮される。したがって、フランジ部は繊維体の袋内部及び/又は袋口部と接触し得る幅(ロッドの中心軸を通る縦断面視での広さ)を有することが好ましい。また、フランジ部の形状は特に限定されないが、ロッドの中心軸を通る縦断面視で略円形であることが、高い脱落回避性が発揮される点で好ましい。
【0031】
抜け止め突端を有する返し片部は、繊維体の袋内部及び/又は袋口部と接触することにより脱落回避性を発揮する。すなわち、ロッドの伸び方向に繊維体を引き抜こうとする力が加わった場合、繊維体の袋内部及び/又は袋口部が抜け止め突端を有する返し片部に接触することで、引き抜こうとする力とは逆方向の力が生じ、その結果、脱落回避性が発揮される。したがって、抜け止め突端を有する返し片部は繊維体の袋内部及び/又は袋口部と接触し、且つ上記の「逆方向の力」を発揮し得る抜け止め突端を備えることを必要とする。また、抜け止め突端を有する返し片部の形状は特に限定されないが、例えば、正面視で略三角形形状であって、ロッドの伸び方向とは逆方向に抜け止め突端が配向する形状であることが、高い脱落回避性が発揮される点で好ましい。また、抜け止め突端を有する返し片部は、図5に示される様にロッド表面に2個存しており、且つ一方と他方が対となっていてもよいがこれに限定されず、例えば、ロッド表面に1~6個存する態様であってもよい。
【0032】
前述の通り、ロッドの先端領域部が、最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部を有する場合は、フランジ部及び抜け止め突端を有する返し片部の何れか1つのみを有する場合と比較すると、高い脱落回避性が発揮される傾向がある。これは、ロッドの伸び方向に繊維体を引き抜こうとする力が加わった場合、フランジ部や抜け止め突端が繊維体の袋内部と接触することにより、引き抜こうとする力とは逆方向の力が分散し、繊維体がロッドとの接触により受ける損傷が低減する結果、繊維体の破壊が生じず、ロッドからの脱落が生じないことに起因すると考えられる。
【0033】
このため、ロッドの先端領域部が、最先端部、フランジ部、及びこれらの間に位置し且つ抜け止め突端を有する返し片部を有し、さらに、ロッドの中心軸から抜け止め突端の距離が、ロッドの中心軸からフランジ部の延出端の距離よりも長い場合は、ロッドの伸び方向に繊維体を引き抜こうとする力が加わった際に、抜け止め突端と袋内部とが容易に接触し得ることとなり、極めて高い脱落回避性が発揮されることとなる。
【0034】
また、脱落回避性の観点からは、最先端部と繊維体の袋底部とが接触していることが好ましい。
【0035】
ロッドの最先端部の形状は特に限定されないが、例えば、略球状であることが好ましい。例えば、鼻腔や咽喉から粘液を採取する際にスワブの最先端部が鼻腔や咽喉に触れることがあるが、略球状とすることにより、被検者に痛みを与えることなく検体を採取可能となる。
【0036】
ロッドの先端領域部は、繊維体に包着される部分を指し、例えば、最先端部、抜け止め突端を有する返し片部、及びフランジ部を有していてもよい。
【0037】
ロッドは、持ちやすくするために把持部を設けてもよいし、設けなくてもよい。また、把持部はロッドと材質が異なっていてもよいが同一であることが好ましい。
【0038】
ロッドの材質は、一般的にスワブに用いられる材質であれば特に限定されないが、例えば、紙、木、金属、プラスチックが挙げられる。この中でも、加工性の観点からはプラスチックが好ましく、例えば、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネートが挙げられる。
【0039】
ロッドは、繊維体の取り付けの際や、スワブの滅菌操作の際に加熱することがあるため、その加熱温度によっては融解しないものを材質として用いることが好ましい。ロッドの融点は、例えば、60℃以上が好ましく、より好ましくは80℃以上、さらに好ましく100℃以上である。
【0040】
ロッドの幅方向における断面形状は特に限定されず、例えば、円形、三角形、四角形、六角形、偏平形が挙げられる。また、ロッドに把持部を設ける場合も同様の形状であってもよいが、その断面が六角形断面であることが特に好ましい。
【0041】
ロッドの長さは特に限定されないが、例えば60~250mmであることが好ましく、より好ましくは80~200mmである。
【0042】
把持部の長さは特に限定されないが、例えば30~150mmであることが好ましく、より好ましくは60~120mmである。把持部の直径は特に限定されないが、例えば0.4~10.0mmであることが好ましく、より好ましくは1.0~5.0mmである。ここで、把持部の直径とは把持部の幅方向における断面図において最も長い径のことを指す。
【0043】
ロッドの先端から抜け止め突端までの長さは特に限定されないが、例えば4~30mmであり、より好ましくは6~25mmであり、さらに好ましくは8~20mmである。なお、「ロッドの先端」とは、「ロッドの最先端部の先端」と言い換えることができる。
【0044】
ロッドの先端からフランジ部までの長さは特に限定されないが、例えば5~30mmであり、より好ましくは8~25mmであり、さらに好ましくは10~20mmである。
【0045】
抜け止め突端からフランジ部までの長さは特に限定されないが、例えば0.3~10mmであり、より好ましくは0.5~5mmであり、さらに好ましくは0.8~3mmである。
【0046】
フランジ部の厚みは特に限定されないが、例えば0.1~3mmであり、より好ましくは0.2~2mmであり、さらに好ましくは0.3~1mmである。
【0047】
ロッド(ロッドの先端領域部)の直径は特に限定されないが、例えば、0.3~2.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.4~2.0mmである。ここで、ロッドの直径とはロッドの幅方向における断面において最も長い径のことを指す。
【0048】
ロッドの表面から抜け止め突端までの長さ(ロッドの表面を底辺とした場合の抜け止め突端の高さ)は特に限定されないが、例えば0.1~5mmであり、より好ましくは0.2~3mmであり、さらに好ましくは0.3~1mmである。
【0049】
フランジ部の直径は特に限定されないが、例えば0.3~10mmであり、より好ましくは0.5~5mmであり、さらに好ましくは0.8~3mmである。
【0050】
[繊維体]
繊維体は、袋状且つロッドの先端領域部に対して包着可能なものであって、異型断面繊維を含む不織布により形成されていれば特に限定されない。本発明のスワブにおいて、繊維体は検体採取部に相当する。上記不織布は、上記異型断面繊維以外の繊維(以下、「その他の繊維」と称することがある)を含んでいてもよい。
【0051】
上記異型断面繊維の断面における異型度は、1.4~4.0であれば特に限定されないが、1.6~3.5であることが好ましく、より好ましくは1.8~3.0、さらに好ましくは1.9~2.7、特に好ましくは2.0~2.4、最も好ましくは2.1~2.3である。異型度が上記範囲内にあることにより、不織布において繊維同士が空隙の多い状態で重なり合うため、充分な空隙率を確保できる結果、生物学的検体を安定して採取できる傾向がある。なお、本明細書において「異型度」は、繊維の断面の長径(もっとも長い部分の径)/短径(もっとも短い部分の径)より算出されたものである。例えば、Y字型断面を有する繊維の異型度は、以下の様に算出される。Y字型断面を有する繊維の断面を平面視した際、3つの凸部と3つの凹部が視認できる。上記3つの凸部の先端が円周上に接するような円の直径を「繊維の断面の長径」とし、上記3つの凹部の先端が円周上に接するような円の直径を「繊維の断面の短径」とする。Y字型断面を有する繊維の異型度は、上記「繊維の断面の長径」/上記「繊維の断面の短径」により算出される。
【0052】
上記異型断面繊維としては、例えば、3葉、4葉等の多葉形状の断面を有する繊維、Y字型、T字型、U字型、V字型、H字型、W字型等の断面を有する繊維が挙げられる。その中でも、Y字型、T字型、U字型、V字型、H字型、W字型の断面を有する繊維が好ましく、Y字型断面を有する繊維がより好ましい。上記異型断面繊維がY字型断面を有する繊維であることにより、不織布において繊維同士がより空隙の多い状態で重なり合うため、高い空隙率を確保できる結果、生物学的検体をより安定して採取できる傾向がある。
【0053】
上記Y字型断面を有する繊維のY字型断面における3方向の凸部は、先端部が基部と同じ太さであってもよいし、異なる太さであってもよい。すなわち、凸部の形状は先細りとなっていてもよいし、先端部が基部と同じ太さか基部よりも太くなっていてもよい。
【0054】
上記その他の繊維としては、例えば、丸断面(略丸断面)、三角、四角等の多角形状の断面を有する繊維が挙げられる。
【0055】
上記異型断面繊維と上記その他の繊維の繊度は特に限定されないが、同一であっても異なっていてもよい。上記異型断面繊維の繊度は、例えば、0.1~10デシテックス(dtex)であり、好ましくは0.3~5デシテックス(dtex)、より好ましくは0.5~3デシテックス(dtex)、さらに好ましくは0.8~2デシテックス(dtex)、特に好ましくは1.0~1.6デシテックス(dtex)、最も好ましくは1.1~1.5デシテックス(dtex)である。上記その他の繊維の繊度は、例えば、0.1~10デシテックス(dtex)であり、好ましくは0.3~5デシテックス(dtex)、より好ましくは0.6~3デシテックス(dtex)、さらに好ましくは1.0~2.4デシテックス(dtex)、特に好ましくは1.2~2.0デシテックス(dtex)、最も好ましくは1.4~1.8デシテックス(dtex)である。繊度を上記範囲にすることにより、不織布に適当な強度が付与される傾向がある。
【0056】
上記異型断面繊維と上記その他の繊維の平均径は特に限定されないが、同一であっても異なっていてもよく、例えば、3.0~70μmであることが好ましく、より好ましくは5.0~30μm、さらに好ましくは10~20μmである。繊維の長さは特に制限されないが、例えば、平均繊維長で10~100mmであることが好ましい。
【0057】
上記異型断面繊維と上記その他の繊維に使用する素材は特に限定されないが、同一であっても異なっていてもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612或いはその共重合体などのポリアミド類、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコールなどの合成ポリマーなどが挙げられる。これらの中でもポリエステル類(ポリエステル繊維)は、生物学的検体をより安定して採取できる観点から特に好ましい。
【0058】
また、上記ポリエステル類は、繊維表面が親水化処理されたものであることが好ましい。繊維表面を親水化させる表面処理剤としては特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン付加アルキルもしくはフェニルエーテルと芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールから得られるポリエステル化合物を主成分とする親水性油剤が挙げられる。特に、ポリオキシエチレン付加アルキルもしくはフェニルエーテルと芳香族ジカルボン酸とエチレングリコールを縮重合反応させて得られたブロック型ポリエステル(ブロック共重合体)が好ましく用いられる。芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジメチル、および5-スルホイソフタル酸ジメチル等が挙げられるが、中でもテレフタル酸またはイソフタル酸がより好ましく用いられる。
【0059】
不織布が上記異型断面繊維と上記その他の繊維を含む場合、異型断面繊維の体積割合は特に限定されないが、不織布全体の繊維(100vol%)に対して、例えば、5~95vol%であることが好ましく、より好ましくは20~90vol%、さらに好ましくは40~80vol%、特に好ましくは50~75vol%である。また、その他の繊維の体積割合は特に限定されないが、例えば、5~95vol%であることが好ましく、より好ましくは10~80vol%、さらに好ましくは20~60vol%、特に好ましくは25~50vol%である。不織布に含まれる繊維が上記範囲内であることにより、検体採取スワブが生物学的検体をより安定して採取できる傾向がある。なお、上記「繊維の体積割合」とは、不織布に含まれる繊維の全体積を100vol%として算出されるものであり、上記異型断面繊維を有する繊維と上記その他の繊維の体積割合の和は100vol%となる。
【0060】
不織布が上記異型断面繊維と上記その他の繊維を含む場合、異型断面繊維の含有量は特に限定されないが、不織布全体(100重量%)に対して、例えば、5~95重量%であることが好ましく、より好ましくは20~90重量%、さらに好ましくは40~80重量%、特に好ましくは50~75重量%である。また、その他の繊維の含有量は特に限定されないが、例えば、5~95重量%であることが好ましく、より好ましくは10~80重量%、さらに好ましくは20~60重量%、特に好ましくは25~50重量%である。不織布に含まれる繊維が上記範囲内であることにより、検体採取スワブが生物学的検体をより安定して採取できる傾向がある。
【0061】
不織布としては特に限定されないが、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等によりウェブ状とし、このウェブを浸漬法(ケミカルボンド法)、スプレー法(ケミカルボンド法)、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法(水流交絡法)等の交絡手段によって繊維を交絡させたものが挙げられる。この中でも、スパンレース法により作製された不織布である場合に、スワブの検体採取量が向上するとともに、被検者に与える痛みも減少する傾向がある。また、スパンレース法における不織布の製造工程では、一般的に圧着ロール工程を含むが、スワブの検体採取量の向上の観点からは圧着ロール工程を含まないことが好ましい。これは、圧着ロール工程において繊維の切断が生じることがあり、得られる不織布の空隙が減少することがあるためである。言い換えると、圧着ロール工程を行うことなく製造された不織布は、繊維の切断が生じることがなく、得られる不織布の空隙が増大することから、上記不織布を使用することはスワブの検体採取量が向上する点で好ましいといえる。
【0062】
不織布の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1~3mmであり、より好ましくは0.2~2mmであり、さらに好ましくは0.3~1.5mmである。不織布の目付が上記範囲内であることにより、スワブの検体採取量が向上する傾向がある。
【0063】
不織布の目付は特に限定されないが、例えば、40~200g/m2であることが好ましく、より好ましくは50~180g/m2、さらに好ましくは60~150g/m2、特に好ましくは80~140g/m2である。不織布の目付が上記範囲内であることにより、スワブの検体採取量が向上するとともに、採取した検体の放出効率が高くなる傾向がある。
【0064】
繊維体をロッドに取り付ける方法は特に限定されないが、例えば、布形状の繊維体を2つ折りにして一方の面と他方の面でロッドを挟み込み、その後に繊維体を溶着・溶断して袋状の繊維体とすることが好ましい。上記方法により、折り目部分の溶着・溶断を行う必要が無くなることから、作業が簡便になる点で有効である。また、折り目部分が繊維体の先端部分となることで、先端部分が柔らかい形状となるため、被検者に痛みや不快感を与えない点で有効である。溶着・溶断は、超音波、レーザーを使用することにより実施でき、超音波を用いることが好ましい。
【0065】
繊維体は、その表面を起毛し、毛羽立たせたものであってもよい。布地を起毛する方法には、サンドペーパーによるエメリー起毛法と針布起毛法がある。なお、起毛時期は、不織布を予め起毛しておいてもよいし、布をロッドに取り付けた後に行ってもよい。
【0066】
繊維体は、接着剤によりロッドに固定されてもよいし、接着剤により固定されることなくロッドに包着していてもよい。
【0067】
接着剤を介してロッドに繊維体を取り付ける場合、接着剤の種類は特に限定されないが、エチレン酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、合成ゴム系、アクリル系、及び、ポリウレタン系のホットメルト接着剤を用いることができる。また、その形態は、有機溶剤溶解品、水溶解品、エマルジョン、無溶剤品等の何れであってもよい。接着剤を使用する場合、繊維体における空隙を埋めない程度の量を使用し、接着剤の粘度もその空隙に侵入しにくい程度がよい。
【0068】
繊維体を接着剤によりロッドに固定する場合、接着剤を加熱することで固定してもよい。加熱手段としては、ヒーター、超音波、レーザーを使用することができる。
【0069】
繊維体の長さはロッドの先端領域部に対して包着可能な長さであれば特に限定されないが、例えば8~40mmであり、より好ましくは10~30mmであり、さらに好ましくは12~20mmである。なお、繊維体の長さとは、ロッドに沿った長さであって、袋口部から袋底部までの長さと言い換えることができる。
【0070】
繊維体の袋口部は、フランジ部と接触して脱落回避性を発揮させるために、その直径をフランジ部の直径よりも小さくすることが好ましい。
【0071】
本発明のスワブは、滅菌しておくことが好ましい。滅菌手段は、エチレンオキサイドガスによる化学滅菌、放射線による滅菌、電子線による滅菌等の何れも利用できる。熱可塑性樹脂層に融点の低い樹脂を用いる場合はオートクレーブによる乾熱滅菌は好ましくない。
【0072】
本発明のスワブは、被検者に痛みや不快感を与えずに、鼻腔や咽喉等から検査に充分な量の粘液等の生物学的検体を安定して採取でき、高い脱落回避性を有するため、生物学検体の採取用途(生物学検体採取用)として使用することができ、臨床や診断分析の分野において有用である。
【実施例
【0073】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0074】
(製造例1:ロッドの作製)
住友重機械工業製の射出成型機を使用し、ポリプロピレンを180℃で溶融して型に流し込み、その後冷却することで、最先端部から順に、抜け止め突端を有する返し片部、フランジ部、把持部をこの順で有するロッドを得た。なお、ロッドの先端領域部の形状は図5の(A)で示された形状と同一であり、ロッドの先端から抜け止め突端までの長さは13mm、抜け止め突端からフランジ部の長さは1mm、フランジ部の厚みは0.5mm、最先端部の略球状体の直径は1.38mm、ロッド(先端領域部のロッド)の直径は0.90mm、ロッドの表面から抜け止め突端までの長さ(ロッドの表面を底辺とした場合の抜け止め突端の高さ)は0.4mm、ロッドの表面から抜け止め突端までの長さ(ロッドの表面を底辺とした場合の抜け止め突端の高さ)は0.4mm、抜け止め突端を有する返し片部のロッドに沿った長さ(三角形形状における、ロッドに沿った長さ)は2.0mm、フランジ部の直径は1.5mm、把持部の長さは86mm、ロッドの長さは152mmであった。
【0075】
(製造例2:スワブ1の作製)
株式会社ユウホウ製のY字型断面を有する繊維(ポリエチレンテレフタレート、維度:1.375デシテックス)と丸字型断面を有する繊維(ポリエチレンテレフタレート、維度:1.6デシテックス)とを含む不織布を作成し、エマルゲン401PV(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、花王ケミカル社製)を用いて親水化処理した。上記不織布において、Y字型断面を有する繊維の体積割合は65.8vol%である。上記不織布の厚みは0.8mm、目付は120g/m2である。
【0076】
得られた不織布を流れ方向(縦方向)に沿って2つ折りにし、折り目にロッドの最先端部を当て、一方の面と他方の面でロッドを挟み込んだ後、超音波で溶着・溶断することにより、図2にて示される形状を有する繊維体を備えるスワブ1を作製した。
【0077】
(製造例3:スワブ2の作製)
繊維体を図4にて示される形状としたこと以外は製造例2と同様にして、スワブ2を作製した。上記不織布の厚みは0.8mm、目付は120g/m2である。
【0078】
[スワブの評価]
製造例2及び3で作製したスワブ1及び2とコパン社製のフロックスワブ(以下、「スワブ3」)を用いて、以下の評価を行った。
【0079】
(評価1:スワブによる痛み及び不快感の評価(スワブ挿入時の荷重テスト)
スワブを被検者の鼻腔や咽喉における粘液に挿入する際の荷重が、被検者が検査を受けるときの痛み及び不快感と相関するものと仮定し、スワブを粘液に挿入した時の荷重測定データを採取して、スワブによる痛みの評価を実施した。なお、本評価では、ゼリーナ(商品名、株式会社ウェルハーモニー製)を用いて、3.0重量%ゼリーナ水溶液(ゲル状溶液)を調製し、5℃に冷やして固めたものを被検者の鼻腔や咽喉における粘液とみなして実施した。
【0080】
本評価の具体的な方法を、図6を用いて説明する。図6の21は荷重測定用試験機、22はスワブを固定するための治具(スワブ固定治具)、23はスワブ、24は繊維体、25はゼリーナ水溶液が入ったビーカーである。荷重測定用試験機としてフォースゲージ:ZTS-50N(株式会社イマダ)の荷重測定用試験機21に、スワブ固定治具22を使用してスワブ23を固定し、ビーカー25に入れた3.0重量%ゼリーナ水溶液の表面にスワブ23の繊維体の先端が接触する位置を測定開始点とし、荷重測定用試験機21を連続的に下降させ(下降速度は20mm/s)、スワブ23の先端がビーカー25の底に当たる前に停止し、その時の最大荷重を測定した。同様の操作を15回行って、その平均値を算出した。試験環境は温度23.2℃、湿度は44%である。
【0081】
以上の結果、スワブ1における平均最大荷重は0.210N、スワブ2における平均最大荷重は0.223N、スワブ3における平均最大荷重は0.281Nであった。
【0082】
各スワブの平均最大荷重量から、スワブ1は挿入時にあまり力を必要とせず、痛み及び不快感のリスクが低いと考えられる。スワブ3は植毛タイプであるため、挿入時に先端部が軸を中心に放射状に広がり、ゼリーナ水溶液に突き刺す際に接触面積が大きくなると考えられる。よって、痛み及び不快感のリスクが高いと考えられる。
【0083】
(評価2:スワブによる平均吸水量の評価)
スワブによる平均吸水量の評価を以下の方法で行った。
スワブの重量を測定した後、綿球部(繊維体)を水に10秒間浸す。水を吸収したスワブの重量を測定し、元の重量を減じて吸収重量を算出する。重量測定は電子天秤:BCE224L-1SJP(sartorius社製)を用いて行った。同様の操作を30回行って、その平均値を算出した。試験環境は温度22.4℃、湿度は35%である。
【0084】
以上の結果、スワブ1の平均吸水量は0.1039mL、スワブ2の平均吸水量は0.0734mL、スワブ3の平均吸水量は0.0779mLとなった。
【0085】
各スワブの平均吸水量は、スワブ1が最も大きく、スワブ3が最も小さいことがわかった。
【0086】
(評価3:スワブによる放出率の評価)
スワブに対し、スクイズ操作の際に放出される検体量を、吸光度を利用して算出し、性能を比較する。なお、スワブはスワブ1及び2を使用した。
【0087】
A:ブランク測定
1.スワブを2mlの蒸留水が入ったデンカ製スクイズチューブにつけ、軽くつまんで一方向に10回転させる。
2.スワブの綿球部をデンカ製スクイズチューブのスクイズ部で軽くつまんだまま引き抜く。
3.チューブ内に残った水の吸光度を測定する。
【0088】
B:食用青入り蒸留水を吸収させたスワブの吸光度測定及び吸収重量測定
1.0.04%食用青入り蒸留水を調整する。
2.スワブの重量を測定する。
3.10秒間食用青入り蒸留水をスワブに浸す。
4.吸水状態のスワブの重量からスワブの重量を引き、スワブの吸収重量を算出する。
5.吸水したスワブを使用し、A:ブランク測定と同様の手順で吸光度測定を実施する。
【0089】
C:基準吸光度測定
1.Bで測定した吸収重量から検量線を引く。
2.各サンプルの吸収重量と検量線から基準吸光度(100%放出された際の吸光度)を算出する。
【0090】
D:吸光度測定値の補正
Bで測定した吸光度から、Aのブランク測定値(平均値)を引く。
【0091】
E:放出率計算
Cで算出された基準吸光度とDで算出された補正済吸光度から放出率を計算する。
放出率:(D/C)×100%=(実放出分の濃度における吸光度/100%放出時の濃度における吸光度)
【0092】
スワブ1の放出率は59.6%であり、スワブ2の放出率は48.5%であった。
【0093】
(評価4:スワブによる涙液採取用途評価)
スワブについて、涙液を採取する用途で使用可能であるかについて評価した。また、対比実験としてスワブのかわりにろ紙を使用して評価を行った。
具体的な評価としては以下の通りである。
【0094】
・吸水スピード、吸水量比較(各サンプルは3本分を確認)
1.試料として生理食塩水を食用色素で青く着色したものを作成する。
2.試料をスポイトで1ml分取り、広げたパラフィルム上に落として水滴を作る。
3.サンプルの先端部分を水滴に触れさせ5秒待機し、試料の吸収量を確認した。その結果を表1の「5秒後の吸水量」に記載した。
4.サンプルの吸水部分全体を湿潤させ、最大保持水量を確認した。その結果を表1の「最大保持水量」に記載した。
【表1】
【0095】
サンプルの先端のみ試料に触れさせたところ、スワブ1及び2並びにろ紙の吸水スピードは同等であった。また、スワブ3では吸水ではなく吸着により水分を保持することを確認した。浸透速度の差異(目視確認)に着目すると、スワブ1及び2は全体が短時間で湿潤していた。これは、先端から根本までが短く、距離による浸透速度の減衰によるロスが少ないためと考えられる。ろ紙は試料に触れている場所から離れるほど浸透速度が目に見えて鈍化していた。スワブとろ紙は検体採取量に差があるため、短時間で多量の検体を採取することが出来る点でスワブが優位であることが理解できる。
【符号の説明】
【0096】
1・・・・・把持部
2・・・・・ロッド
3・・・・・最先端部
4・・・・・検体採取部
5・・・・・側部
6・・・・・凸部
11・・・・最先端部
12・・・・抜け止め突端を有する返し片部
13・・・・抜け止め突端
14・・・・フランジ部
15・・・・繊維体
16・・・・繊維体の袋口部
21・・・・荷重測定用試験機
22・・・・スワブ固定治具
23・・・・スワブ
24・・・・繊維体
25・・・・ゼリーナ水溶液が入ったビーカー
【要約】
【課題】本発明の目的は、被検者に痛みや不快感を与えずに、鼻腔、咽喉、眼(結膜)等から検査に充分な量の粘液等の生物学的検体を安定して採取できる検体採取スワブを提供することにある。
【解決手段】ロッドと、前記ロッドの先端領域部に対して包着している袋状の繊維体と、を備える検体採取スワブであって、前記繊維体は、異型度が1.4~4.0である断面を有する繊維を含む不織布により形成されている検体採取スワブ。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6