(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】評価装置、評価方法、プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0241 20230101AFI20231128BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20231128BHJP
【FI】
G06Q30/0241
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2020527588
(86)(22)【出願日】2019-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2019025432
(87)【国際公開番号】W WO2020004485
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2018121329
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北城 圭一
(72)【発明者】
【氏名】平山 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 史洋
(72)【発明者】
【氏名】末谷 大道
(72)【発明者】
【氏名】星 朱香
(72)【発明者】
【氏名】石黒 達治
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特許第5799351(JP,B1)
【文献】特開2013-180076(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190428(WO,A1)
【文献】DMOCHOWSKI, Jacek P. et al.,Audience preferences are predicted by temporal reliability of neural processing,[online],2014年07月29日,[令和元年9月5日 検索], インターネット<URL:https://www.nature.com/articles/ncomms5567.pdf>
【文献】上向 俊晃,注視行動の予測に向けた動画像コンテンツの視覚的特徴と実測した注視点の正準相関分析,FIT2010 第9回情報科学技術フォーラム 講演論文集 第3分冊 査読付き論文・一般論文 画像認識,2010年08月20日,第77-82ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価装置であって、
各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成部と、
上記脳波データ対生成部が生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析部と、
上記正準相関分析部が算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出部と、
上記正準負荷量算出部が算出した各正準負荷量、及び、予め定められた基準負荷量に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価部と、を備えている、
ことを特徴とする評価装置。
【請求項2】
上記コンテンツ評価部は、(1)各被験者に対応する代表正準負荷量として、上記正準負荷量算出部が算出した該被験者に対応する正準負荷量を代表する代表値を算出する代表正準負荷量算出処理と、(2)各被験者に対応する類似度として、上記代表正準負荷量算出処理にて算出した該被験者に対応する代表正準負荷量と上記基準負荷量との類似度を算出する類似度算出処理と、(3)上記コンテンツの評価指標として、上記類似度算出処理にて算出した各類似度を代表する代表値を算出する評価指標算出処理と、を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
各被験者に対応する上記類似度は、該被験者に対応する上記代表正準負荷量と上記基準負荷量との内積、成す角の余弦、又は、相関である、
ことを特徴とする請求項2に記載の評価装置。
【請求項4】
上記基準負荷量は、評価対象とするコンテンツのなかで、大規模集団調査による評価結果が最上位又は最下位のコンテンツに対する代表正準負荷量である、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の評価装置。
【請求項5】
上記コンテンツは、コマーシャル動画である、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の評価装置。
【請求項6】
コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価装置であって、
各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成部と、
上記脳波データ対生成部が生成した各脳波データ対に対応する正準相関係数を算出する正準相関分析部と、
上記正準相関分析部が算出した正準相関係数に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価部と、を備えている、
ことを特徴とする評価装置。
【請求項7】
コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価装置であって、
各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成部と、
上記脳波データ対生成部が生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析部と、
上記正準相関分析部が算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出部と、
上記正準負荷量算出部が算出した各正準負荷量に対する主成分分析により主成分スコアを算出する主成分分析部と、
上記主成分分析部が算出した主成分スコア、及び、予め定められた基準スコアに基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価部と、を備えている、
ことを特徴とする評価装置。
【請求項8】
コンピュータが、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価方法であって、
前記コンピュータが、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波信号対生成処理と、
前記コンピュータが、上記脳波信号対生成処理にて生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析処理と、
前記コンピュータが、上記正準相関分析処理にて算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出処理と、
前記コンピュータが、上記正準負荷量算出処理にて算出した各正準負荷量、及び、予め定められた基準負荷量に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価処理と、を含んでいる、
ことを特徴とする評価方法。
【請求項9】
コンピュータが、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価方法であって、
前記コンピュータが、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波信号対生成処理と、
前記コンピュータが、上記脳波信号対生成処理にて生成した各脳波データ対に対応する正準相関係数を算出する正準相関分析処理と、
前記コンピュータが、上記正準相関分析処理にて算出した各正準相関係数に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価処理と、を含んでいる、
ことを特徴とする評価方法。
【請求項10】
コンピュータが、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価方法であって、
前記コンピュータが、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成処理と、
前記コンピュータが、上記脳波データ対生成処理にて生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析処理と、
前記コンピュータが、上記正準相関分析処理にて算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出処理と、
前記コンピュータが、上記正準負荷量算出処理にて算出した各正準負荷量に対する主成分分析により主成分スコアを算出する主成分分析処理と、
前記コンピュータが、上記主成分分析処理にて算出した主成分スコア、及び、予め定められた基準スコアに基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価処理と、を含んでいる、
ことを特徴とする評価方法。
【請求項11】
請求項1から7までの何れか1項に記載の評価装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、コンピュータを上記各部として機能させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波データに基づいてコンテンツを評価する評価装置及び評価方法に関する。また、そのような評価装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム、及び、そのようなプログラムが記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
コマーシャル動画などのコンテンツの評価は、従来、アンケートなどの大規模集団調査により行われることが一般的であった。しかしながら、大規模集団調査を実施するためには、時間的及び金銭的に大きなコストが掛かる。また、コストを下げるために調査対象とする集団を小規模にすると、評価の客観性が損なわれる。
【0003】
このような問題の解決に資する可能性のある技術として、脳波データ(脳波信号)に基づくコンテンツの評価方法が知られている。例えば、特許文献1には、コンテンツを視聴する異なる被験者から取得した脳波データの相互相関係数に基づいて、該コンテンツを評価する方法が開示されている。また、非特許文献1には、コンテンツを視聴する異なる被験者から取得した脳波データの正準相関係数に基づいて、該コンテンツを評価する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開特許公報「特許第5799351号(2015年9月4日登録)」
【非特許文献】
【0005】
【文献】Jacek P. Dmochowski, Matthew A. Bezdek, Brian P. Abelson, John S. Johnson, Eric H. Schumacher & Lucas C. Parra, "Audience preferences are predicted by temporal reliability of neural processing", NATURE COMMUNICATIONS, 5: 4567, DOI: 10.1038/ncomms5567, www.nature.com/naturecommunications, 29 Jul 2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
脳波データに基づいてコンテンツを評価する評価方法を用いて、大規模集団調査による評価結果を予測することができれば、小さなコストで客観性の高い評価結果を得ることができ、極めて有益である。
【0007】
しかしながら、大規模集団調査におけるコンテンツの評価尺度は様々である。例えば、コンテンツを視聴しているときに被験者に喚起される好意、好感、記憶、認知、及び共感(他者と情報を共有する意欲)の程度は、それぞれ、そのコンテンツの評価尺度となり得る。また、コンテンツがコマーシャル動画である場合、コマーシャル動画を視聴しているときに被験者に喚起される、商品に対する興味及び購買意欲の程度は、それぞれ、そのコマーシャル動画の評価尺度となり得る。このため、脳波データに基づいてコンテンツを評価する評価方法を用いて、様々な評価尺度で実施される大規模集団調査による評価結果を予測するためには、その評価方法が評価尺度に対する柔軟性を有している必要がある。しかしながら、脳波データに基づく従来のコンテンツ評価方法は、このような柔軟性を有していない。このため、脳波データに基づく従来のコンテンツ評価方法を用いて、様々な評価尺度で実施される大規模集団調査による評価結果を予測することは困難である。
【0008】
さらに、脳波データに基づいてコンテンツを評価する評価方法を用いて、大規模集団調査による評価結果を精度良く予測するためには、複数の脳波データから、コンシステンシー(試行間での相関)の低い情報を捨象してコンシステンシーの高い情報を抽出する必要がある。しかしながら、脳波データに基づく従来の評価方法では、異なる被験者から得られた複数の脳波データから、被験者間での相関が低い情報を捨象することは行われているものの、同じ被験者に対する異なる試行で得られた複数の脳波データから、コンシステンシーの低い情報を捨象することは行われていない。このため、脳波データに基づく従来のコンテンツ評価方法には、大規模集団調査による評価結果を予測する際の予測精度に関して、改善の余地が残されている。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の一態様は、様々な評価尺度で実施される大規模集団調査による評価結果を精度良く予測することが可能な評価装置及び評価方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価装置は、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価装置であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成部と、上記脳波データ対生成部が生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析部と、上記正準相関分析部が算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出部と、上記正準負荷量算出部が算出した各正準負荷量、及び、予め定められた基準負荷量に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価部と、を備えている。
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価装置は、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価装置であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成部と、上記脳波データ対生成部が生成した各脳波データ対に対応する正準相関係数を算出する正準相関分析部と、上記正準相関分析部が算出した正準相関係数に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価部と、を備えている。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価装置は、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価装置であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成部と、上記脳波データ対生成部が生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析部と、上記正準相関分析部が算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出部と、上記正準負荷量算出部が算出した各正準負荷量に対する主成分分析により主成分スコアを算出する主成分分析部と、上記主成分分析部が算出した主成分スコア、及び、予め定められた基準スコアに基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価部と、を備えている。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価方法は、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価方法であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波信号対生成処理と、上記脳波信号対生成処理にて生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析処理と、上記正準相関分析部にて算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出処理と、上記正準負荷量算出処理にて算出した各正準負荷量、及び、予め定められた基準負荷量に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価処理と、を含んでいる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価方法は、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価方法であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波信号対生成処理と、上記脳波信号対生成処理にて生成した各脳波データ対に対応する正準相関係数を算出する正準相関分析処理と、上記正準相関分析処理にて算出した各正準相関係数に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価処理と、を含んでいる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価方法は、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価方法であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成処理と、上記脳波データ対生成処理にて生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析処理と、上記正準相関分析処理にて算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出処理と、上記正準負荷量算出処理にて算出した各正準負荷量に対する主成分分析により主成分スコアを算出する主成分分析処理と、上記主成分分析処理にて算出した主成分スコア、及び、予め定められた基準スコアに基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価処理と、を含んでいる。
【0016】
なお、本発明の各態様に係る評価装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、上記コンピュータを上記評価装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記評価装置をコンピュータにて実現させるプログラム、及び、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記の方法によれば、上記コンテンツに対する大規模集団調査による様々な尺度での評価結果を、精度良く予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す評価装置により実施される評価処理(前半)の流れを示すデータフロー図である。
【
図3】
図1に示す評価装置により実施される評価処理(後半)の流れを示すデータフロー図である。
【
図4】
図2及び
図3に示す評価処理に含まれるコンテンツ評価処理の具体例を示すデータフロー図である。
【
図5】基準負荷量を強度分布としてプロットしたグラフである。
【
図6】10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画のCM好感度ランキング(CM総合研究所が実施した「消費者3000人の月例CM好感度調査」より得られたCM好感度得票数より算出されたランキングのことを指す。なお、「CM好感度」は株式会社東京企画の登録商標である。以下同様。)と、そのコマーシャル動画に対応する平均類似度との相関を示す散布図である。
【
図7】上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画のCM好感度得票数(log10変換)と、そのコマーシャル動画に対応する平均類似度との相関を示す散布図である。
【
図8】上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画のCM好感度ランキングと、31人の被験者による主観評価値を平均することより求めた、そのコマーシャル動画に対する平均主観評価値との相関を示す散布図である。
【
図9】上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画のCM好感度ランキングと、そのコマーシャル動画に対応する正準相関係数との相関を示す散布図である。
【
図10】上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画のCM好感度ランキングと、非特許文献1に記載の評価方法により求めた、そのコマーシャル動画に対応する正準相関係数との相関を示す散布図である。
【
図11】(1)上記10本のコマーシャル動画のなかで、獲得したCM好感度得票数が最も多いコマーシャル動画に対応する正準負荷量の平均値を基準負荷量とした場合の各コマーシャル動画に対応する平均類似度と、(2)上記10本のコマーシャル動画のなかで、獲得したCM好感度得票数が最も少ないコマーシャル動画に対応する正準負荷量の平均値を基準負荷量とした場合の各コマーシャル動画に対応する平均類似度との相関を示す散布図である。
【
図12】上記10本のコマーシャル動画の各々について、重回帰分析により得られたモデル式を用いて算出したCM好感度得票数の予測値と、実際のCM好感度得票数との相関を示す散布図である。ここで、重回帰分析は、各コマーシャル動画のCM好感度得票数を目的変数とし、各コマーシャル動画に対応する平均類似度を説明変数とする重回帰分析である。
【
図13】
図1に示す評価装置として機能するコンピュータのブロック図である。
【
図14】本発明の変形例1に係る評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図15】
図14に示す評価装置により実施される評価処理(前半)の流れを示すデータフロー図である。
【
図16】
図14に示す評価装置により実施される評価処理(後半)の流れを示すデータフロー図である。
【
図17】本発明の変形例2に係る評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図18】
図17に示す評価装置により実施される評価処理の流れを示すデータフロー図である。
【
図19】基準スコアを強度分布としてプロットしたグラフである。
【
図20】上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画のCM好感度ランキングと、そのコマーシャル動画に対応する主成分スコア類似度との相関を示す散布図である。
【
図21】上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画のCM好感度得票数(log10変換)と、そのコマーシャル動画に対応する主成分スコア類似度との相関を示す散布図である。
【
図22】正準負荷量に基づく評価および主成分スコアに基づく評価の各々によって得られる脳領域パターンデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る評価装置1について、図面に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0020】
(正準相関分析)
評価装置1において利用される、多チャンネル時系列データX,Yに対する正準相関分析について説明する。
【0021】
多チャンネル時系列データX,Yは、それぞれ、サンプリング数がT、チャンネル数がchの多チャンネル時系列データであり、式(1),(2)に示すようにT行ch列の行列によって表現されているものとする。ここで、X
1,X
2,…,X
chは、それぞれ、第1の多チャンネル時系列データXの各列を構成する時系列データ(T次元の列ベクトル)であり、Y
1,Y
2,…,Y
chは、それぞれ、第2の多チャンネル時系列データYの各列を構成する時系列データ(T次元の列ベクトル)である。
【数1】
【数2】
まず、第1の多チャンネル時系列データXを、各チャンネルの時系列データX
1,X
2,…,X
Tのサンプル平均が0になるように正規化することによって、第1の正規化多チャンネル時系列データX’を算出する。また、第2の多チャンネル時系列データYを、各チャンネルの時系列データY
1,Y
2,…,Y
Tのサンプル平均が0になるように正規化することによって、第2の正規化多チャンネル時系列データY’を算出する。
【数3】
【数4】
ここで、第1の正規化多チャンネル時系列データX’の線形変換U=AX’と第2の正規化多チャンネル時系列データY’の線形変換V=BY’との相関係数Rに注目する。ここで、A,Bは、それぞれ、式(5),(6)に示すようにch行D列であり、U,Vは、それぞれ、式(7),(8)に示すようにT行D列の行列である。ここで、U
1,U
2,…,U
Dは、それぞれ、行列Uの各列を構成するT次元の列ベクトルであり、V
1,V
2,…,V
Dは、それぞれ、第2の多チャンネル時系列データYの各列を構成する時系列データである。なお、Dは、D=min(rank(X),rank(Y))により定義される自然数である。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
線形変換U,Vの相関係数Rを最大化する行列A,Bの要素を正準係数という。また、そのときの行列U,Vを正準変数といい、そのときの相関係数Rを正準相関係数という。正準相関分析とは、多チャンネル時系列データX,Yから、正準係数A,B、正準変数U,V、及び正準相関係数Rを算出する演算のことを指す。
【0022】
第1の正準変数Uの第n列(nは1以上D以下の自然数)を構成する列ベクトルU
nと第1の多チャンネル時系列データXの各列を構成する時系列データX
1,X
2,…,X
chとの相関係数s
1=corrcoef(U
n,X
1),s
2=corrcoef(U
n,X
2),…,s
ch=corrcoef(U
n,X
ch)により構成されるch次元のベクトルS=[s
1,s
2,…,s
ch]を、n次の正準負荷量という。ここで、corrcoef(U
n,X
j)は、以下のように定義される。
【数9】
同様に、第2の正準変数Vの第n列(nは1以上D以下の自然数)を構成する列ベクトルV
nと第2の多チャンネル時系列データYの各列を構成する時系列データY
1,Y
2,…,Y
chとの相関係数t
1=corrcoef(V
n,Y
1),t
2=corrcoef(V
n,Y
2),…,t
ch=corrcoef(V
n,Y
ch)により構成されるch次元のベクトルT=[t
1,t
2,…,t
ch]を、n次の正準負荷量という。ここで、corrcoef(Vn,Yj)は、以下のように定義される。
【数10】
なお、正準相関分析は、公知のアルゴリズムにより実現することができる。例えば、MATLAB(登録商標)の関数canoncorr(X,Y)=[A,B,R,U,V]では、QR分解、特異値分解(svdアルゴリズム)、及び正規化を組み合わせることによって、正準相関分析を実現している。
【0023】
(評価装置の構成)
評価装置1の構成について、
図1~3を参照して説明する。
図1は、評価装置1の構成を示すブロック図である。
図2~3は、評価装置1により実行される評価処理の流れを示すデータフロー図である。
【0024】
評価装置1は、コンテンツCを視聴させながら脳波を測定する試行を、M人の被験者の各々に対してN回ずつ実施することによって得られたM×N個の脳波データに基づいて、コンテンツCを評価するための装置である。ここで、Mは、任意に選択可能な1以上の自然数であり、Nは、任意に選択可能な2以上の自然数である。
【0025】
以下、i人目の被験者に対するj回目の試行において得られた脳波データを、脳波データX(i,j)と記載する。ここで、iは、1以上M以下の自然数であり、jは、1以上N以下の自然数である。各脳波データX(i,j)は、脳波信号を表す多チャンネル時系列データであり、T行ch列の行列によって表現される。ここで、Tは、サンプリングポイント数であり、chは、チャンネル数である。サンプリングポイント数Tは、例えば、15000であり(コンテンツCの再生時間が15秒であり、サンプリング周期が1ミリ秒である場合)、チャンネル数chは、例えば、63である。この場合、各脳波データX(i,j)は、15000行63列の行列となる。
【0026】
評価装置1は、
図1に示すように、脳波データ取得部11と、脳波データ対生成部12と、正準相関分析部13と、正準負荷量算出部14と、コンテンツ評価部15と、を備えている。
【0027】
脳波データ取得部11は、脳波データ取得処理S1を実行するための構成である。脳波データ取得処理S1は、
図2に示すように、各被験者について、N個の脳波データX
(i,1),X
(i,2),…,X
(i,N)を取得する処理である。脳波データ取得部11が取得する脳波データの個数は、1被験者あたりN個であり、1コンテンツあたりM×N個である。
【0028】
なお、各脳波データX(i,j)の取得先は、特に限定されない。例えば、各脳波データX(i,j)がメモリに格納されている場合、脳波データ取得部11は、該脳波データX(i,j)を該メモリから読み出す。或いは、各脳波データX(i,j)が脳波計から供給される場合、脳波データ取得部11は、該脳波データX(i,j)を該脳波計から取得する。
【0029】
脳波データ対生成部12は、脳波データ対生成処理S2を実行するための構成である。脳波データ対生成処理S2は、
図2に示すように、各被験者について、脳波データ取得処理S1にて取得したN個の脳波データX
(i,1),X
(i,2),…,X
(i,N)から、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する脳波データX
(i,p),X
(i,q)からなる脳波データ対{X
(i,p),X
(i,q)}を生成する処理である。ここで、pは、1以上N-1以下の自然数であり、qは、p+1以上N以下の自然数である。脳波データ対生成部12が生成する脳波データ対の個数は、1被験者あたり
NC
2個であり、1コンテンツあたりM×
NC
2個である。
【0030】
正準相関分析部13は、正準相関分析処理S3を実行するための構成である。正準相関分析処理S3は、
図2に示すように、脳波データ対生成処理S2にて生成した各脳波データ対{X
(i,p),X
(i,q)}から、該脳波データ対{X
(i,p),X
(i,q)}に対応する正準変数U
(i,p,q),V
(i,p,q)を算出する処理である。正準相関分析処理S3においては、各脳波データ対{X
(i,p),X
(i,q)}に対応する正準変数U
(i,p,q),V
(i,p,q)と共に、各脳波データ対{X
(i,p),X
(i,q)}に対応する正準係数A
(i,p,q),B
(i,p,q)、及び、各脳波データ対{X
(i,p),X
(i,q)}に対応する正準相関係数R
(i,p,q)が算出される。正準変数U
(i,p,q),V
(i,p,q)は、それぞれ、T行D列の行列であり、正準変数U
(i,p,q),V
(i,p,q)の算出は、上述した正準相関分析によって行われる。ここで、Dは、D=min(rank(X
(i,p)),rank(X
(i,q)))により定義される自然数である。正準相関分析部13が算出する正準変数及び正準係数の個数は、1被験者あたり2×
NC
2個であり、1コンテンツあたり2×M×
NC
2個である。正準相関分析部13が算出する正準相関係数の個数は、1被験者あたり
NC
2個であり、1コンテンツあたりM×
NC
2個である。
【0031】
正準負荷量算出部14は、正準負荷量算出処理S4を実行するための構成である。正準負荷量算出処理S4は、
図2及び
図3に示すように、正準相関分析処理S3にて算出した各正準変数U
(i,p,q)から、該正準変数U
(i,p,q)に対応する1次からL次までのL個の正準負荷量s
(i,p,q,1),s
(i,p,q,2),…,s
(i,p,q,L)を算出すると共に、各正準変数V
(i,p,q)から、該正準変数V
(i,p,q)に対応する1次からL次までのL個の正準負荷量t
(i,p,q,1),t
(i,p,q,2),…,t
(i,p,q,L)を算出する処理である。ここで、Lは、任意に選択可能な1以上D以下の自然数である。正準負荷量s
(i,p,q,n),t
(i,p,q,n)は、それぞれ、ch次元のベクトルであり、正準負荷量s
(i,p,q,n),t
(i,p,q,n)の算出は、それぞれ、上述した式(9),(10)に従って行われる。ここで、nは、1以上L以下の自然数である。正準負荷量算出部14が算出する正準負荷量の個数は、1被験者あたり2×L×
NC
2個であり、1コンテンツあたり2×L×M×
NC
2個である。
【0032】
コンテンツ評価部15は、コンテンツ評価処理S5を実行するための構成である。コンテンツ評価処理S5は、
図3に示すように、正準負荷量算出処理S4にて算出した2×L×M×
NC
2個の正準負荷量、及び、基準として予め定められた正準負荷量(以下、「基準負荷量」と記載)に基づいてコンテンツCを定量評価する処理である。コンテンツ評価処理S5の具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0033】
後述する実施例で明らかにするように、大規模集団調査による評価結果が近い(例えば、好感度得票数が近い、又は、好感度得票数に基づいて決定された好感度ランキングにおける順位が近い)2つのコンテンツでは、これら2つのコンテンツに対応する各正準負荷量の類似度が高くなり、大規模集団調査による評価結果が遠い(例えば、好感度得票数が離れた、又は、好感度得票数に基づいて決定された好感度ランキングにおける順位が離れた)2つのコンテンツでは、これら2つのコンテンツに対応する各正準負荷量の類似度が低くなる。
【0034】
本実施形態に係る評価装置1においては、正準負荷量算出処理S4にて算出した2×L×M×NC2個の正準負荷量、及び、予め定められた基準負荷量に基づいてコンテンツCを定量評価する。したがって、本実施形態に係る評価装置1によれば、コンテンツCに対する大規模集団調査による様々な尺度での評価結果を、精度良く、且つ定量的に予測することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、正準負荷量算出処理S4にて算出した2×L×M×NC2個の正準負荷量に基づいてコンテンツCを定量評価する構成について説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、正準相関分析処理S3にて算出したM×NC2個の正準相関係数に基づいてコンテンツCを定量評価する形態も、本発明の範疇に含まれる。正準負荷量の類似度と同様、正準相関係数の類似度には、大規模集団調査による評価結果の近さが反映される。したがって、正準相関分析処理S3にて算出したM×NC2個の正準相関係数に基づいてコンテンツCを定量評価する構成を採用した場合においても、コンテンツCに対する大規模集団調査による様々な尺度での評価結果を、定量的に予測することができる。正準相関係数に基づいてコンテンツCを定量評価する形態の詳細については変形例1として後述する。
【0036】
(コンテンツ評価処理の具体例)
コンテンツ評価処理S5の一具体例について、
図4を参照して説明する。
図4は、本具体例に係るコンテンツ評価処理S5の流れを示すデータフロー図である。
【0037】
本具体例に係るコンテンツ評価処理S5は、
図4に示すように、平均正準負荷量算出処理S51(特許請求の範囲における「代表正準負荷量算出処理」の一例)と、類似度算出処理S52と、平均類似度算出処理S53(特許請求の範囲における「評価指標算出処理」の一例)と、を含んでいる。
【0038】
平均正準負荷量算出処理S51は、
図4に示すように、各被験者について、正準負荷量算出処理S4にて算出した2×L×
NC
2個の正準負荷量s
(i,p,q,n),t
(i,p,q,n)から、2×L個の平均正準負荷量s
(i,n),t
(i,n)を算出する処理である。平均正準負荷量s
(i,n)は、例えば、式(11)により与えられ、平均正準負荷量t
(i,n)は、例えば、式(12)により与えられる。平均正準負荷量算出処理S51にて算出する平均正準負荷量の個数は、1被験者あたり2×L個であり、1コンテンツあたり2×M×L個である。
【数11】
【数12】
類似度算出処理S52は、
図4に示すように、各被験者について、平均正準負荷量算出処理S51にて算出した各平均正準負荷量s
(i,n)から、該平均正準負荷量s
(i,n)と基準負荷量s
(n)との類似度d
s
(i,n)を算出すると共に、平均正準負荷量算出処理S51にて算出した各平均正準負荷量t
(i,n)から、該平均正準負荷量t
(i,n)と基準負荷量t
(n)との類似度d
t
(i,n)を算出する処理である。類似度d
s
(i,n)は、例えば、内積s
(i,n)・s
(n)により与えられ、類似度d
t
(i,n)は、例えば、内積t
(i,n)・t
(n)により与えられる。類似度算出処理S52にて算出する類似度の個数は、1被験者あたり2×L個であり、1コンテンツあたり2×M×L個である。
【0039】
平均類似度算出処理S53は、
図4に示すように、類似度算出処理S52にて算出した2×M×L個の類似度d
s
(i,n),d
t
(i,n)から、2×L個の平均類似度d
s
(n),d
t
(n)を算出する処理である。平均類似度d
s
(n)は、例えば、式(13)により与えられ、平均類似度d
t
(n)は、例えば、式(14)により与えられる。平均類似度算出処理S53にて算出する平均類似度の個数は、1コンテンツあたり2×L個である。
【数13】
【数14】
本具体例に係るコンテンツ評価処理S5においては、例えば、大規模集団調査による評価結果(例えば、好感度得票数、又は、好感度得票数に基づいて決定された好感度ランキング)が最上位のコンテンツについて、上述した方法と同様の方法で得られた平均正準負荷量を、基準負荷量s
(1),s
(2),…,s
(L),t
(1),t
(2),…,t
(L)として利用することができる。この場合、平均類似度d
s
(1),d
s
(2),…,d
s
(L),d
t
(1),d
t
(2),…,d
t
(L)が高いときには、コンテンツCに対する大規模調査による評価結果が高いことを予想され、平均類似度d
s
(1),d
s
(2),…,d
s
(L),d
t
(1),d
t
(2),…,d
t
(L)が低いときには、コンテンツCに対する大規模調査による評価結果が低いことを予想される。
【0040】
また、本具体例に係るコンテンツ評価処理S5においては、例えば、大規模集団調査による評価結果が最下位のコンテンツについて、上述した方法と同様の方法で得られた平均正準負荷量を、基準負荷量s(1),s(2),…,s(L),t(1),t(2),…,t(L)として用いることもできる。この場合、平均類似度ds
(1),ds
(2),…,ds
(L),dt
(1),dt
(2),…,dt
(L)が高いときには、コンテンツCに対する大規模集団調査による評価結果が低いことを予想され、平均類似度ds
(1),ds
(2),…,ds
(L),dt
(1),dt
(2),…,dt
(L)が低いときには、コンテンツCに対する大規模集団調査による評価結果が高いことを予想される。
【0041】
なお、本具体例においては、正準負荷量s(i,n)と基準負荷量s(n)との類似度ds
(i,n)として、内積s(i,n)・s(n)を用いたが、本具体例はこれに限定されない。例えば、正準負荷量s(i,n)と基準負荷量s(n)との類似度ds
(i,n)として、正準負荷量s(i,n)と基準負荷量s(n)との成す角θの余弦cosθ=s(i,n)・s(n)/|s(i,n)||s(n)|を用いてもよいし、正準負荷量s(i,n)と基準負荷量s(n)との相関係数corrcoef(s (i,n),s(n))を用いてもよい。何れの場合であっても、本具体例と同様の効果が得られる。
【0042】
(前処理)
なお、本実施形態においては、脳波信号そのものを表す多チャンネル時系列データを脳波データX
(i,j)として用いたが、本実施形態はこれに限定さない。例えば、脳波信号そのものを表す脳波データをXとして、この脳波データに前処理を施した脳波データX’を脳波データX
(i,j)として用いてもよい。この前処理としては、例えば、双曲線関数を用いた以下の前処理が挙げられる。
【数15】
双曲線関数を用いた前処理を行うことによって、大規模集団調査の調査結果をより良く再現するコンテンツの定量評価を行うことが可能になる。なお、双曲線関数以外のスケーリング関数を用いた前処理によっても、同様の効果を得ることができる。なお、前処理に用いることのできる双曲線関数以外のスケーリング関数としては、例えば、シグモイド関数その他のロジスティック関数が挙げられる。
【0043】
また、前処理として、脳波信号そのものを表す脳波データをXから、脳波信号の特定の周波数帯域に属する成分(α波、β波、γ波など)を表す脳波データX’を生成するフィルタ処理を施してもよい。また、このような前処理を、スケーリング関数を用いた前処理と組み合わせてもよい。
【0044】
(実施例)
実施例として、10本のコマーシャル動画を用意した。これら10本のコマーシャル動画の各々について、該コマーシャル動画を視聴させながら脳波を測定する試行を、31人の被験者の各々に対して10回ずつ実施した。なお、各コマーシャル動画の再生時間は、15秒であった。また、各脳波データのチャンネル数chは、63であり、サンプリング周波数は1000ヘルツであり、各脳波データのサンプリング数は、15000であった。
【0045】
次に、上記10本のコマーシャル動画のなかで、CM総合研究所が実施した「消費者3000人の月例CM好感度調査」において好感度得票数(以下、「CM好感度得票数」と記載)を最も多く獲得したコマーシャル動画について、上述した方法に従って1次の正準負荷量s(i,2)を被験者毎に算出し、その被験者平均を基準負荷量s(2)とした。そして、10本のコマーシャル動画の各々について、上述した方法に従って平均類似度ds
(2)を算出した。なお、上述した方法を実施する過程においては、正準負荷量s(i,2)と基準負荷量s(2)との類似度ds
(i,2)として、正準負荷量s(i,2)と基準負荷量s(2)との成す角θの余弦cosθを用いた。
【0046】
図5は、63次元のベクトルである基準負荷量s
(2)を強度分布としてプロットしたグラフである。
図5に示すグラフによれば、左脳の側方及び後方に、脳波データのコンシステンシーが高くなる領域が存在することが分かる。
【0047】
図6は、上記10本のコマーシャル動画の各々について、CM好感度得票数をもとに算出されたそのコマーシャル動画のランキング(以下、「CM好感度ランキング」と記載)と、そのコマーシャル動画に対応する平均類似度d
s
(2)との相関を示す散布図である。
図6によれば、CM好感度ランキングが高いコマーシャル動画ほど平均類似度d
s
(2)が高く、CM好感度ランキングが低いコマーシャル動画ほど平均類似度d
s
(2)が低くなることが分かる。換言すれば、平均類似度d
s
(2)を評価指標とする本実施例に係る評価方法によれば、各コマーシャル動画のCM好感度ランキング(大規模集団調査における評価の一例)を精度良く予測できることが分かる。
【0048】
図7は、上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画のCM好感度得票数(log10変換)と、そのコマーシャル動画に対応する平均類似度d
s
(2)との相関を示す散布図である。
図7によれば、CM好感度得票数の多いコマーシャル動画ほど平均類似度d
s
(2)が高く、CM好感度得票数の少ないコマーシャル動画ほど平均類似度d
s
(2)が低くなることが分かる。換言すれば、平均類似度d
s
(2)を評価指標とする本実施例に係る評価方法によれば、各コマーシャル動画のCM好感度得票数(大規模集団調査における評価の一例)を精度良く予測できることが分かる。これは、上記CM好感度ランキングに基づいて定めた基準負荷量を用いた本実施例に係る評価方法が、上記CM好感度ランキングのもととなった、各コマーシャル動画のCM好感度得票数を予測する目的にも使用し得ることを意味する。
【0049】
図8は、上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画のCM好感度ランキングと、上記31人の被験者による主観評価値(1~5の5段階評価)を平均することより求めた、そのコマーシャル動画に対する平均主観評価値との相関を示す散布図である。
図6に示した散布図と
図8に示した散布図とを比較すると、平均類似度d
s
(2)の方が、平均主観評価値よりも、CM好感度ランキングと強い相関を示すことが分かる。換言すれば、平均類似度d
s
(2)を評価指標とする本実施例に係る評価方法によれば、平均主観評価値を評価指標とする評価方法よりも、上記CM好感度ランキングを精度良く予測できることが分かる。
【0050】
図9は、上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画の上記CM好感度ランキングと、そのコマーシャル動画に対応する正準相関係数との相関を示す散布図である。
図9によれば、各コマーシャルのCM好感度ランキングと、そのコマーシャル動画に対応する正準相関係数との間に、一定の相関が存在することが分かる。したがって、平均類似度d
s
(2)を評価指標とする代わりに正準相関係数を評価指標としても、上記CM好感度ランキングを予測できることが分かる。ただし、
図6に示した散布図と
図9に示した散布図との比較から明らかなように、平均類似度d
s
(2)を評価指標とする方が、正準相関係数を評価指標とするよりも予測精度が高い。なお、
図9に示す正準相関係数は、詳細を後述する変形例1を用いて算出した。
【0051】
図10は、上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画の上記CM好感度ランキングと、非特許文献1に記載の評価方法により求めた、そのコマーシャル動画に対応する正準相関係数との相関を示す散布図である。ここで、本明細書に記載の評価方法においては、同じ被験者から得られた2つの脳波データに対する正準相関分析を行うのに対して、非特許文献1に記載の評価方法においては、異なる被験者から得られた2つの脳波データに対する正準相関分析を行う。したがって、非特許文献1に記載の評価方法により求めた正準相関係数は、本明細書に記載の評価方法により求めた正準相関係数とは異なる量である点に留意されたい。本比較例の詳細については後述する。
【0052】
第1に、
図6に示した散布図と
図10に示した散布図とを比較すると、本明細書に記載の評価方法で算出した平均類似度d
s
(2)の方が、非特許文献1に記載の評価方法で算出した正準相関係数よりも、上記CM好感度ランキングと強い相関を示すことが分かる。第2に、
図9に示した散布図と
図10に示した散布図とを比較すると、本明細書に記載の評価方法で算出した正準相関係数(同じ被験者から得られた2つの脳波データに対する正準相関分析により得られる正準相関係数)の方が、非特許文献1に記載の評価方法で算出した正準相関係数(異なる被験者から得られた2つの脳波データに対する正準相関分析により得られる正準相関係数)よりも、上記CM好感度ランキングと強い相関を示すことが分かる。したがって、平均類似度d
s
(2)を評価指標とする場合であっても、同じ被験者から得られた2つの脳波データに対する正準相関分析により得られる正準相関係数を評価指標とする場合であっても、本明細書に記載の評価方法によれば、非特許文献1に記載の評価方法よりも、上記CM好感度ランキングを精度良く予想することが可能になる。
【0053】
図11は、(1)評価対象とした上記10本のコマーシャル動画のなかで、獲得したCM好感度得票数が最も多いコマーシャル動画に対応する正準負荷量の平均値を基準負荷量s
(2)とした場合の各コマーシャル動画に対応する平均類似度d
s
(2)と、(2)評価対象とした上記10本のコマーシャル動画のなかで、獲得したCM好感度得票数が最も少ないコマーシャル動画に対応する正準負荷量の平均値を基準負荷量s
(2)とした場合の各コマーシャル動画に対応する平均類似度d
s
(2)との相関を示す散布図である。
図11によれば、前者の場合の平均類似度d
s
(2)が大きくなるほど、後者の場合の平均類似度d
s
(2)が小さくなることが分かる。これは、前者の場合に得られる評価結果と後者の場合に得られる評価結果とが互いに整合的であることを意味する。
【0054】
最後に、上記10本のコマーシャル動画に関して、各コマーシャル動画のCM好感度得票数を目的変数とし、各コマーシャル動画に対応する3つの平均類似度d
(1)={d
s
(1)+d
t
(1)}/2,d
(2)={d
s
(2)+d
t
(2)}/2,d
(3)={d
s
(3)+d
t
(3)}/2を説明変数とする重回帰分析を行った。
図12は、この重回帰分析により得られたモデル式を用いて算出したCM好感度得票数の予測値と、実際のCM好感度得票数との相関を示す散布図である。
図12によれば、この重回帰分析により得られたモデル式を用いることによって、各コマーシャル動画のCM好感度得票数を精度良く予測できることが分かる。また、この重回帰分析により得られたモデル式を用いれば、上記10本のコマーシャル動画以外のコマーシャル動画についても、平均類似度から実際のCM好感度得票数を容易に予測することができる。
【0055】
なお、ここでは、重回帰分析により得られたモデル式を用いたCM好感度得票数の予測について説明したが、単回帰分析により得られたモデル式を用いたCM好感度得票数の予測についても、同様に実現することが可能である。すなわち、単回帰分析であるか重回帰分析であるかを問わず、回帰分析により得られたモデル式(回帰式)を用いることによって、任意のコマーシャル動画(CM好感度得票数が未知のコマーシャル動画を含む)について、そのコマーシャル動画に対応する平均類似度から、そのコマーシャル動画のCM好感度得票数を精度良く予想することが可能である。
【0056】
(評価装置の構成例)
評価装置1は、例えば、コンピュータ(電子計算機)を用いて構成することができる。
図13は、評価装置1として利用可能なコンピュータ100の構成を例示したブロック図である。
【0057】
コンピュータ100は、
図13に示したように、バス110を介して互いに接続された演算装置120と、主記憶装置130と、補助記憶装置140と、入出力インタフェース150とを備えている。演算装置120として利用可能なデバイスとしては、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを挙げることができる。また、主記憶装置130として利用可能なデバイスとしては、例えば、半導体RAM(random access memory)などのメモリを挙げることができる。また、補助記憶装置140として利用可能なデバイスとしては、例えば、ハードディスクドライブを挙げることができる。
【0058】
入出力インタフェース150には、
図13に示したように、入力装置200及び出力装置300が接続される。脳波データを供給する脳波計などは、この入出力インタフェース150に接続される入力装置200の一例である。また、評価結果を表示するためのディスプレイは、この入出力インタフェース150に接続される出力装置300の一例である。
【0059】
補助記憶装置140には、コンピュータ100を評価装置1として動作させるための各種プログラムが格納されている。具体的には、コンピュータ100に上述した脳波データ取得処理S1、脳波データ対生成処理S2、正準相関分析処理S3、正準負荷量算出処理S4、コンテンツ評価処理S5を実行させるためのプログラムが格納されている。これらのプログラムは、MATLABなどの数値計算ライブラリに含まれるモジュールであってもよい。
【0060】
演算装置120は、補助記憶装置140に格納された上記プログラムを主記憶装置130上に展開し、主記憶装置130上に展開された上記各プログラムに含まれる命令を実行することによって、コンピュータ100を、脳波データ取得部11、脳波データ対生成部12、正準相関分析部13、正準負荷量算出部14、及びコンテンツ評価部15として機能させる。主記憶装置130は、脳波データ、正準係数、正準変数、正準相関、正準負荷量などを記憶する記憶領域としても機能する。
【0061】
なお、ここでは、内部記録媒体である補助記憶装置140に記録されている上記プログラムを用いてコンピュータ100を評価装置1として機能させる構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、外部記録媒体に記録されているプログラムを用いてコンピュータ100を評価装置1として機能させる構成を採用してもよい。外部記録媒体としては、コンピュータ読み取り可能な「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブル論理回路などを用いることができる。
【0062】
また、コンピュータ100を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムを通信ネットワークを介してコンピュータ100に供給するようにしてもよい。この通信ネットワークは、プログラムを伝送可能であればよく、特に限定されない。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0063】
(変形例1)
上述した実施形態は、前述したように、正準負荷量に基づく代わりに正準相関係数に基づいてコンテンツCを評価する形態に変形することができる。
【0064】
<本変形例の構成>
本変形例に係る評価装置1Aについて、
図14~16を用いて説明する。
図14は、評価装置1Aの構成を示すブロック図である。
図15~16は、評価装置1Aにより実行される評価処理の流れを示すデータフロー図である。以下の説明では、本実施形態と同様、被験者数はMであり、各被験者の1コンテンツあたりの試行回数はNである。
【0065】
評価装置1Aは、
図14に示すように、本実施形態と同様に構成される脳波データ取得部11および脳波データ対生成部12と、正準相関分析部13Aと、コンテンツ評価部15Aとを含む。
【0066】
脳波データ取得部11および脳波データ対生成部12は、本実施形態と同様に構成されることにより、
図15に示すように、脳波データ対{X
(i,p),X
(i,q)}を生成する。生成される脳波データ対の個数は、本実施形態と同様、1被験者あたり
NC
2個であり、1コンテンツあたりM×
NC
2個である。本変形例は、生成された脳波データ対に対して、正準相関分析処理S3の代わりに正準相関分析処理S3Aが実行される点が、本実施形態に対して異なる。
【0067】
正準相関分析部13Aは、正準相関分析処理S3Aを実行するための構成である。正準相関分析処理S3Aは、上述した正準相関分析処理を行うことにより、各脳波データ対{X
(i,p),X
(i,q)}に対応する正準相関係数R
(i,p,q)を算出する。正準相関分析処理S3Aは、
図16に示すように、正準相関係数R
(i,p,q)を算出するための以下の処理S31、S32を含む。
【0068】
処理S31は、各脳波データ対{X(i,p),X(i,q)}に対応して、1次からL次までのL個の正準相関係数R(i,p,q,1),R(i,p,q,2),…,R(i,p,q,L)を算出する処理である。処理S31で算出される正準相関係数の個数は、1被験者あたりL×NC2個であり、1コンテンツあたりL×M×NC2個である。
【0069】
処理S32は、処理S31で算出されたL個の正準相関係数に基づいて、正準相関係数R(i,p,q)を算出する処理である。本変形例では、処理S32において、1次からn次(nは1以上L以下の自然数)までの正準相関係数の和が、正準相関係数R(i,p,q)として算出される。処理S32で算出される正準相関係数の個数は、1被験者あたりNC2個であり、1コンテンツあたりM×NC2個である。
【0070】
コンテンツ評価部15Aは、正準相関分析処理S3Aにより算出されたM×
NC
2個の正準相関係数を用いて、コンテンツの定量評価を行うコンテンツ評価処理S6を実行する。
コンテンツ評価処理S6は、
図16に示すように、処理S61、S62を含む。
【0071】
処理S61は、各被験者について算出されたNC2個の正準相関係数に基づいて、各被験者の正準相関係数R(i)を求める処理である。本変形例では、NC2個の正準相関係数の平均を正準相関係数R(i)とする。処理S61で算出される正準相関係数の個数は、1被験者あたり1個であり、1コンテンツあたりM個である。
【0072】
処理S62は、各コンテンツについて算出されたM個の正準相関係数に基づいて、各コンテンツの正準相関係数Rを求める処理である。本変形例では、M個の正準相関係数の平均を正準相関係数Rとする。処理S62で算出される正準相関係数の個数は、1コンテンツあたり1個である。
【0073】
コンテンツ評価部15は、コンテンツの正準相関係数Rを評価指標として、当該コンテンツを評価する。
【0074】
<実施例>
上述した実施例において本変形例を用いた評価については、前述の
図9に示した通りである。
図9は、10本のコマーシャル動画のCM好感度ランキングと、本変形例によって各コマーシャル動画について算出した正準相関係数Rとの相関を示している。なお、ここでは、本変形例の処理S32においてn=3を適用し、1次から3次までの正準相関係数の和を正準相関係数R
(i,p,q)として算出した。
図9によれば、CM好感度ランキングと、本変形例によって各コマーシャル動画について算出した正準相関係数Rとの間には、一定の相関が存在することが分かる。
【0075】
<比較例の詳細>
前述の
図10を用いて説明した比較例の詳細について説明する。
【0076】
比較例では、非特許文献1に記載の評価方法として、以下の処理S91、S92、S93、S94、S95を実行した。以下の説明では、被験者数はMであり、各被験者の1コンテンツあたりの試行回数はNである。
【0077】
処理S91は、M人の被験者に対して実施されたj回目の各試行(jは1以上N以下の自然数)について得られるM個の脳波データX(j,1),X(j,2),…,X(j,M)から、異なる被験者に対応する脳波データX(j,p),X(j,q)からなる脳波データ対{X(j,p),X(j,q)}を生成する処理である。
【0078】
処理S92は、j回目の各試行について、異なる被験者間の各脳波データ対{X(j,p),X(j,q)}に対応して、正準相関分析により1次からL次までのL個の正準相関係数R(j,p,q,1),R(j,p,q,2),…,R(j,p,q,L)を算出する処理である。処理S92で算出される正準相関係数の個数は、1試行あたりL×MC2個であり、1コンテンツあたりL×N×MC2個である。
【0079】
処理S93は、処理S92で算出されたL個の正準相関係数に基づいて、正準相関係数R(j,p,q)を算出する処理である。ここでは、1次から3次までの正準相関係数の和を正準相関係数R(j,p,q)として算出した。処理S93で算出される正準相関係数の個数は、1試行あたりMC2個であり、1コンテンツあたりN×MC2個である。
【0080】
処理S94は、各試行について算出されたMC2個の正準相関係数の平均を、各試行の正準相関係数R(j)として求める処理である。処理S94で算出される正準相関係数の個数は、1試行あたり1個であり、1コンテンツあたりN個である。
【0081】
処理S95は、各コンテンツについて算出されたN個の正準相関係数の平均を、各コンテンツの正準相関係数R’として求める処理である。処理S95で算出される正準相関係数の個数は、1試行あたり1個である。
【0082】
このように、各コンテンツの正準相関係数を求める際に、比較例は、異なる被験者から得られた脳波データ対を用いるのに対して、変形例1は、同一の被験者によって実施された異なる試行から得られた脳波データ対を用いる点が異なる。
【0083】
図10は、比較例により求めた各コンテンツの正準相関係数R’と、各コマーシャル動画のCM好感度ランキングとの相関を示している。
図10および
図9を比較すると、比較例により求めた正準相関係数R’よりも、変形例1により求めた正準相関係数Rの方が、CM好感度ランキングとの間で強い相関を示すことがわかる。
【0084】
(変形例2)
上述した実施形態は、正準負荷量に基づいてコンテンツCを評価する際に、正準負荷量に対して主成分分析を行う形態に変形することができる。
【0085】
<本変形例の構成>
本変形例に係る評価装置1Bについて、
図17、
図2~3、
図18を用いて説明する。
図17は、評価装置1Bの構成を示すブロック図である。
図2~3、
図18は、評価装置1Bにより実行される評価処理の流れを示すデータフロー図である。以下の説明では、本実施形態と同様、被験者数はMであり、各被験者の1コンテンツあたりの試行回数はNである。また、コンテンツ数はKである。
【0086】
評価装置1Bは、
図17に示すように、本実施形態と同様に構成される脳波データ取得部11、脳波データ対生成部12、正準相関分析部13および正準負荷量算出部14と、主成分分析部16と、コンテンツ評価部15Bとを含む。
【0087】
脳波データ取得部11、脳波データ対生成部12、正準相関分析部13および正準負荷量算出部14は、本実施形態と同様に構成されることにより、
図2~3に示したように、1次からL次の正準負荷量s
(i,p,q,n)および1次からL次のt
(i,p,q,n)を生成する。生成される正準負荷量の個数は、1被験者あたり2×L×
NC
2個であり、1コンテンツあたり2×L×M×
NC
2個である。本変形例は、生成された正準負荷量に対して、コンテンツ評価処理S5の代わりに主成分分析処理S7が実行される点が、本実施形態に対して異なる。
【0088】
主成分分析部16は、主成分分析処理S7を実行するための構成である。主成分分析処理S7は、正準負荷量算出部14が算出した各正準負荷量に対する主成分分析により各コンテンツの主成分スコアを算出する処理であり、
図18に示すように、処理S71~S74を含む。
【0089】
処理S71は、正準相関分析処理S3により生成された正準負荷量を1つの行列CLにまとめる処理である。具体的には、処理S71では、各脳波データ対{X(i,p),X(i,q)}について算出されたL個の正準負荷量sから、n個の正準負荷量s(i,p,q,1),s(i,p,q,2),…,s(i,p,q,n)が抽出されるとともに、L個の正準負荷量tから、n個の正準負荷量t(i,p,q,2),…,t(i,p,q,n)が抽出される。なお、nは、1以上L以下の自然数である。抽出される正準負荷量の個数は、1被験者あたり2×n×NC2個であり、1コンテンツあたり2×n×M×NC2個であり、全部でp(p=2×K×n×M×NC2)個である。ここで、各正準負荷量は、ch次元のベクトルデータである。処理71では、p個の各正準負荷量を列ベクトルとするch行p列の行列データCLが生成される。
【0090】
処理S72は、行列データCLに対する主成分分析処理により、主成分係数coeffを算出する処理である。主成分分析処理としては、一例として、Matlab関数「pca」を使用する。coeffの行列数は、p行[ch-1]列である。
【0091】
処理S73は、行列データCLに対する正規化処理により、ch行p列の正規化データCL_stdを生成する処理である。正規化処理では、一例として、行列データCLから、行列データCLの各次元の平均値CL_meanを引くことにより、正規化データCL_stdが生成される。正規化データCL_stdの行列数は、行列データCLと同一であり、ch行p列である。
【0092】
処理S74は、主成分係数coeffおよび行列データCL_stdを用いて、主成分スコアscoreを算出する処理である。処理S74では、主成分係数coeffおよび行列データCL_stdの積から、コンテンツごとに主成分スコアscoreが算出される。主成分スコアscoreの行列数は、ch行[ch-1]列である。具体的には、処理S74では、coeffが、K×[p-K]×[ch-1]の3次元配列に変換される。つまり、変換後のcoeffは、K個の[p-K]×[ch-1]の2次元配列coeff’からなる。また、CL_stdが、K×ch×[p-K]の3次元配列に変換される。つまり、変換後のCL_stdは、K個のch×[p-K]の2次元配列CL_std’からなる。コンテンツごとの主成分スコアscoreは、当該コンテンツに対応するcoeff’およびCL_std’の積から算出される。
【0093】
コンテンツ評価部15Bは、コンテンツ評価処理S8を実行するための構成である。コンテンツ評価処理S8は、主成分分析処理S7にて算出した各コンテンツの主成分スコアscore、及び、基準として予め定められた主成分スコア(以下、「基準スコア」と記載)に基づいてコンテンツCを定量評価する処理である。
【0094】
コンテンツ評価処理S8では、各コンテンツCについて、主成分スコアscoreと基準スコアとの類似度(以下、「主成分スコア類似度」と記載)d_pcaが算出される。主成分スコア類似度d_pcaは、1コンテンツあたり1つ算出される。主成分スコア類似度d_pcaは、1次から(ch-1)次までのd_pca(1),d_pca(2),…,d_pca(ch-1)からなる。
【0095】
後述する実施例で明らかにするように、大規模集団調査による評価結果が近い(例えば、好感度得票数が近い、又は、好感度得票数に基づいて決定された好感度ランキングにおける順位が近い)2つのコンテンツでは、これら2つのコンテンツに対応する各主成分スコア類似度が高くなり、大規模集団調査による評価結果が遠い(例えば、好感度得票数が離れた、又は、好感度得票数に基づいて決定された好感度ランキングにおける順位が離れた)2つのコンテンツでは、これら2つのコンテンツに対応する各主成分スコア類似度が低くなる。
【0096】
本変形例に係る評価装置1Bにおいては、正準負荷量に対して主成分分析処理S7を施すことにより得られた主成分スコアに基づいてコンテンツCを定量評価する。したがって、本変形例に係る評価装置1Bによれば、コンテンツCに対する大規模集団調査による様々な尺度での評価結果を、精度良く、且つ定量的に予測することができる。また、本変形例は、正準負荷量から求めた平均類似度に基づきコンテンツCを定量評価する場合と比べて、より安定的な脳領域パターンデータの抽出を可能にし、より精度よく上記評価結果を予測することができる。
【0097】
<実施例>
上述した実施例において本変形例を用いて評価を行った。具体的には、10本のコマーシャル動画のなかで、CM好感度得票数を最も多く獲得したコマーシャル動画について、本変形例の方法に従って算出した主成分スコアscoreを基準スコアとした。また、10本のコマーシャル動画の各々について、本変形例の方法に従って主成分スコア類似度d_pca(2)を算出した。なお、本変形例の処理S71ではn=3を適用し、1次から3次までの正準負荷量sおよび1次から3次までの正準負荷量tを抽出して行列データCLを生成した。
【0098】
図19は、63次元のベクトルである基準スコアを強度分布としてプロットしたグラフである。
図19に示すグラフによれば、前頭部および後頭部に、脳波データのコンシステンシーが高くなる領域が存在することが分かる。
【0099】
図20は、上記10本のコマーシャル動画の各々について、各コマーシャル動画のCM好感度ランキングと、そのコマーシャル動画に対応する主成分スコア類似度d_pca
(2)との相関を示す散布図である。
図20によれば、CM好感度ランキングが高いコマーシャル動画ほど主成分スコア類似度d_pca
(2)が高く、CM好感度ランキングが低いコマーシャル動画ほど主成分スコア類似度d_pca
(2)が低くなることが分かる。換言すれば、主成分スコア類似度d_pca
(2)を評価指標とする本変形例に係る評価方法によれば、各コマーシャル動画のCM好感度ランキング(大規模集団調査における評価の一例)を精度良く予測できることが分かる。
【0100】
図21は、上記10本のコマーシャル動画の各々について、そのコマーシャル動画のCM好感度得票数(log10変換)と、そのコマーシャル動画に対応する主成分スコア類似度d_pca
(2)との相関を示す散布図である。
図21によれば、CM好感度得票数の多いコマーシャル動画ほど主成分スコア類似度d_pca
(2)が高く、CM好感度得票数の少ないコマーシャル動画ほど主成分スコア類似度d_pca
(2)が低くなることが分かる。換言すれば、主成分スコア類似度d_pca
(2)を評価指標とする本変形例に係る評価方法によれば、各コマーシャル動画のCM好感度得票数(大規模集団調査における評価の一例)を精度良く予測できることが分かる。これは、本変形例に係る評価方法が、各コマーシャル動画のCM好感度得票数を予測する目的にも使用し得ることを意味する。このように、本変形例に係る評価方法は、より安定的な脳領域パターンデータを抽出することができる。また、本変形例に係る評価方法は、正準負荷量に基づいてコンテンツを評価する方法と同等の予測精度を得ることができる。
【0101】
図22は、正準負荷量に基づく評価および主成分スコアに基づく評価の各々によって得られる脳領域パターンデータを示す図である。脳領域パターンデータとは、63次元のベクトルである基準負荷量、または、63次元のベクトルである基準スコアの強度分布のパターンを表すデータである。なお、
図22の説明において、実施例Aとは、上述した実施例であり、上述した通り、10本のコマーシャル動画の各々について、該コマーシャル動画を視聴させながら脳波を測定する試行を、31人の被験者の各々に対して10回ずつ実施したものである。実施例Bとは、実施例Aとは異なる8本のコマーシャル動画の各々について、該コマーシャル動画を視聴させながら脳波を測定する試行を、実施例Aとは異なる21人の被験者の各々に対して10回ずつ実施したものである。
【0102】
図22において、脳領域パターンデータ2201は、実施例Aにおいて正準負荷量に基づく評価によって得られた脳領域パターンデータを示す。なお、脳領域パターンデータ2201は、
図5に示した脳領域パターンデータと同一である。また、脳領域パターンデータ2202は、実施例Bにおいて正準負荷量に基づく評価によって得られた脳領域パターンデータを示す。また、脳領域パターンデータ2203は、実施例Aにおいて主成分スコアに基づく評価によって得られた脳領域パターンデータを示す。なお、脳領域パターンデータ2203は、
図19に示した脳領域パターンデータと同一である。脳領域パターンデータ2204は、実施例Bにおいて主成分スコアに基づく評価によって得られた脳領域パターンデータを示す。
【0103】
図22に示すように、脳領域パターンデータ2203および脳領域パターンデータ2204間の類似性は、脳領域パターンデータ2201および脳領域パターンデータ2202間の類似性よりも高いことがわかる。すなわち、主成分スコアに基づく評価方法は、正準負荷量に基づく評価方法に比べて、実施例Aおよび実施例B間のように被験者群が変化する場合であっても、より安定的な脳領域パターンデータを抽出できることがわかる。
【0104】
(まとめ)
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価装置は、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価装置であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成部と、上記脳波データ対生成部が生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析部と、上記正準相関分析部が算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出部と、上記正準負荷量算出部が算出した各正準負荷量、及び、予め定められた基準負荷量に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価部と、を備えている。
【0105】
上記の構成によれば、正準相関分析を実施する際にコンシステンシーが低い情報を捨象することができるので、上記コンテンツに対する大規模集団調査による評価結果を精度良く予測することができる。また、上記の構成によれば、正準負荷量に基づいてコンテンツを評価する際に参照する基準負荷量を大規模集団調査の評価尺度に応じて変更することができるので、上記コンテンツに対する大規模集団調査による様々な尺度での評価結果を予測することができる。したがって、上記の構成によれば、上記コンテンツに対する大規模集団調査による様々な尺度での評価結果を、精度良く予測することができる。
【0106】
本発明の一態様に係る評価装置において、上記コンテンツ評価部は、(1)各被験者に対応する代表正準負荷量として、上記正準負荷量算出部が算出した該被験者に対応する正準負荷量を代表する代表値を算出する代表正準負荷量算出処理と、(2)各被験者に対応する類似度として、上記代表正準負荷量算出処理にて算出した該被験者に対応する代表正準負荷量と上記基準負荷量との類似度を算出する類似度算出処理と、(3)上記コンテンツの評価指標として、上記類似度算出処理にて算出した各類似度を代表する代表値を算出する評価指標算出処理と、を実行する、ことが好ましい。
【0107】
上記の構成によれば、上記コンテンツに対する大規模集団調査による様々な尺度での評価結果を、精度良く、且つ定量的に予測することができる。
【0108】
なお、正準負荷量を代表する代表値は、例えば、正準負荷量の平均値である。ここで、平均値を求めるための平均操作は、算術平均、加重平均、幾何平均、及び調和平均の何れであってもよい。また、平均値以外の代表値を、正準負荷量を代表する代表値として用いてもよい。中央値及び最頻値は、そのような代表値の一例である。
【0109】
本発明の一態様に係る評価装置において、各被験者に対応する上記類似度は、該被験者に対応する上記代表正準負荷量と上記基準負荷量との内積、成す角の余弦、又は、相関である、ことが好ましい。
【0110】
上記の構成によれば、上記コンテンツに対する大規模集団調査による様々な尺度での評価結果を、精度良く、定量的に、且つ簡単に予測することができる。
【0111】
本発明の一態様に係る評価装置において、上記基準負荷量は、評価対象とするコンテンツのなかで、大規模集団調査による評価結果が最上位又は最下位のコンテンツに対する代表正準負荷量である、ことが好ましい。
【0112】
上記の構成によれば、上記コンテンツ対する大規模集団調査による評価結果(例えば、好感度得票数などの実測値)を、精度良く、且つ定量的に予測することができる。
【0113】
本発明の一態様に係る評価装置において、上記コンテンツは、コマーシャル動画であることが好ましい。
【0114】
上記の構成によれば、上記コマーシャル動画に対する大規模集団調査による様々な尺度での評価結果を、精度良く予測することができる。
【0115】
ただし、上記コンテンツは、再現性をもって視覚的及び/又は聴覚的に被験者に提示可能なコンテンツであればよく、コマーシャルを目的とするコンテンツであってもよいし、コマーシャルを目的としないコンテンツであってもよい。例えば、上記コンテンツは、(1)映像(動画であってもよいし、静止画あってもよい)のみにより構成されたコンテンツであってもよいし、(2)音声のみにより構成されたコンテンツであってもよいし、(3)映像及び音声により構成されたコンテンツであってもよい。また、上記コンテンツは、(1)テレビ放送により提供されるコンテンツであってもよいし、(2)インターネット配信により提供されるコンテンツであってもよいし、(3)CDやDVDなどの記録媒体から再生されるコンテンツであってもよいし、(4)映画館で上映されるコンテンツであってもよいし、(5)劇場やホールで演奏又は上演されるコンテンツであってもよい。
【0116】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価方法は、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価方法であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波信号対生成処理と、上記脳波信号対生成処理にて生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析処理と、上記正準相関分析部にて算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出処理と、上記正準負荷量算出処理にて算出した各正準負荷量、及び、予め定められた基準負荷量に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価処理と、を含んでいる。
【0117】
上記の方法によれば、上記コンテンツに対する大規模集団調査による様々な尺度での評価結果を、精度良く予測することができる。
【0118】
なお、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価装置であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成部と、上記脳波データ対生成部が生成した各脳波データ対に対応する正準相関係数を算出する正準相関分析部と、上記正準相関分析部が算出した正準相関係数に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価部と、を備えている評価装置も本願発明の範疇に含まれる。
【0119】
また、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価方法であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波信号対生成処理と、上記脳波信号対生成処理にて生成した各脳波データ対に対応する正準相関係数を算出する正準相関分析処理と、上記正準相関分析処理にて算出した各正準相関係数に基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価処理と、を含んでいる評価方法も本願発明の範疇に含まれる。
【0120】
上記の装置及び方法によっても、正準相関分析を実施する際にコンシステンシーが低い情報を捨象することができるので、上記コンテンツに対する大規模集団調査による評価結果を精度良く予測することができる。
【0121】
また、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価装置であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成部と、上記脳波データ対生成部が生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析部と、上記正準相関分析部が算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出部と、上記正準負荷量算出部が算出した各正準負荷量に対する主成分分析により主成分スコアを算出する主成分分析部と、上記主成分分析部が算出した主成分スコア、及び、予め定められた基準スコアに基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価部と、を備えている評価装置も本願発明の範疇に含まれる。
【0122】
また、コンテンツを視聴させながら脳波を測定する試行を各被験者に対して少なくとも2回ずつ実施することによって得られた複数の脳波データに基づいて、上記コンテンツを評価する評価方法であって、各被験者について、該被験者に対して実施された異なる試行に対応する2つの脳波データからなる脳波データ対を生成する脳波データ対生成処理と、上記脳波データ対生成処理にて生成した各脳波データ対に対応する正準変数を算出する正準相関分析処理と、上記正準相関分析処理にて算出した各正準変数に対応する少なくとも1つの正準負荷量を算出する正準負荷量算出処理と、上記正準負荷量算出処理にて算出した各正準負荷量に対する主成分分析により主成分スコアを算出する主成分分析処理と、上記主成分分析処理にて算出した主成分スコア、及び、予め定められた基準スコアに基づいて、上記コンテンツを評価するコンテンツ評価処理と、を含んでいる評価方法も本願発明の範疇に含まれる。
【0123】
上記の装置及び方法によっても、正準相関分析を実施する際にコンシステンシーが低い情報を捨象することができるので、上記コンテンツに対する大規模集団調査による評価結果を精度良く予測することができる。また、上記の装置及び方法は、より安定的な脳領域パターンデータの抽出を可能にし、さらに精度よく上記評価結果を予測することができる。
【0124】
なお、本発明の各態様に係る評価装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、上記コンピュータを上記評価装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記評価装置をコンピュータにて実現させるプログラム、及び、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も本発明の範疇に含まれる。
【0125】
(付記事項)
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 評価装置
11 脳波データ取得部
12 脳波データ対生成部
13 正準相関分析部
14 正準負荷量算出部
15 コンテンツ評価部