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特許7391348医用画像処理システム、医用画像処理方法および医用画像処理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】医用画像処理システム、医用画像処理方法および医用画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20231128BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20231128BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20231128BHJP
   G06F 3/04815 20220101ALI20231128BHJP
   G06F 3/04845 20220101ALI20231128BHJP
【FI】
A61B6/03 360P
A61B5/055 380
G06T19/00 A
G06F3/04815
G06F3/04845
A61B6/03 360G
A61B6/03 360Q
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019118271
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2020000863
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2018120835
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】七戸 金吾
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-180292(JP,A)
【文献】特開2011-025005(JP,A)
【文献】特開2013-039353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0207371(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0001761(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0181978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14
G06F 3/01、3/048-3/04895
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示デバイスと、
操作者による複数の入力を同時に受け付けることができる入力デバイスと、
複数の解剖学的構造についての立体的配置を表す三次元画像を作成可能な少なくとも1つのデータセットを格納するデータ格納部と、
前記入力デバイスによって受け付けられた入力に従って前記表示デバイスへの前記画像の表示を制御する画像表示制御部と、
を有し、
前記画像表示制御部は、
前記データセットから少なくとも前記三次元画像を作成する処理と、
作成した前記三次元画像、および前記三次元画像とは形式が異なるが前記三次元画像と関連付けられた第二画像を、前記三次元画像が表示される三次元画像表示領域および前記第二画像が表示される第二画像表示領域に分けて前記表示デバイスに同時に表示させる処理と、
前記入力デバイスによって受け付けられた入力に応じて、または前記入力とは無関係に、前記三次元画像および前記第二画像の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成し、前記補助画像を前記三次元画像および前記第二画像の他方に表示させる処理と、
を行い、かつ、
前記画像表示制御部は、前記三次元画像表示領域および前記第二画像表示領域の両方において同時に前記入力デバイスからの入力を受け付けると、それぞれが受け付けた入力に従った所定の処理を同時に行う
ように構成されている医用画像処理システム。
【請求項2】
前記第二画像は、前記複数の解剖学的構造の断面を表す二次元画像である請求項1に記載の医用画像処理システム。
【請求項3】
前記三次元画像は、前記解剖学的構造ごとに設定された複数のレイヤーで構成され、
前記情報は、前記複数のレイヤーを示す情報である複数のレイヤー情報を含み、
前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、
前記三次元画像を前記レイヤーごとに異なる色相で表示させる処理と、
前記複数のレイヤーのうち少なくとも1つのレイヤーについて、前記二次元画像が表す断面に対応する断面での前記三次元画像の断面画像を、前記補助画像として、前記三次元画像で表示された色と同じ色相で作成する処理と、
前記断面画像を前記二次元画像上に重ね合わせる処理と、
を行なうように構成されている請求項2に記載の医用画像処理システム。
【請求項4】
前記複数の解剖学的構造は、動脈系血管および静脈系血管を含み、
前記画像表示制御部は、前記断面画像を作成する処理において、前記動脈系血管として設定されたレイヤーおよび前記静脈系血管として設定されたレイヤーについて前記断面画像を作成する処理を行うように構成されている請求項3に記載の医用画像処理システム。
【請求項5】
前記情報は、前記三次元画像および前記二次元画像に共通の座標情報を含む、請求項2から4のいずれか一項に記載の医用画像処理システム。
【請求項6】
前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、前記二次元画像上の任意の座標が前記入力デバイスから入力されると、表示されている前記二次元画像が表す断面に対応する平面画像を、前記補助画像として、前記三次元画像上の前記入力された前記座標を通る位置に表示させる処理を含む処理を行う請求項5に記載の医用画像処理システム。
【請求項7】
前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、前記二次元画像上の任意の座標が前記入力デバイスから入力されると、表示されている前記二次元画像が表す断面での前記解剖学的構造の輪郭部を他の部分と異なる色相で表したハイライト輪郭画像を、前記補助画像として、前記三次元画像上に表示させる処理を含む処理を行う請求項5または6に記載の医用画像処理システム。
【請求項8】
前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、前記二次元画像上の任意の座標が前記入力デバイスから入力されると、前記三次元画像の、入力された前記座標に対応する位置に、前記補助画像としてカーソルを表示させる処理を含む処理を行う請求項5から7のいずれか一項に記載の医用画像処理システム。
【請求項9】
前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、前記三次元画像の前記解剖学的構造上の任意の座標が前記入力デバイスから入力されると、入力された前記座標に一致する前記座標情報を持つ前記二次元画像のサムネイルを、前記補助画像として前記二次元画像および前記三次元画像とは別に前記表示デバイスに表示させる処理を含む処理を行う請求項5に記載の医用画像処理システム。
【請求項10】
前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、前記サムネイルを承認する意味を表す入力が前記入力デバイスから入力されると、前記サムネイルを拡大表示させる処理をさらに行う請求項9に記載の医用画像処理システム。
【請求項11】
前記画像表示制御部は、前記入力デバイスからの入力によって前記三次元画像上の前記解剖学的構造の1つが指定されると、指定された前記解剖学的構造を半透明で表示する処理をさらに行うように構成されている請求項1から10のいずれか一項に記載の医用画像処理システム。
【請求項12】
前記画像表示制御部は、前記入力デバイスからの入力に応じて、前記三次元画像表示領域および前記第二画像表示領域のサイズを変更するサイズ変更処理をさらに行うように構成されている請求項1から10のいずれか一項に記載の医用画像処理システム。
【請求項13】
前記画像表示制御部は、前記サイズ変更処理において、
前記三次元画像表示領域と前記第二画像表示領域との間にサイズ変更用アイコンを表示させる処理と、
前記入力デバイスからの入力に応じて前記サイズ変更用アイコンの表示位置を変更する処理と、
前記サイズ変更用アイコンの表示位置に従って前記三次元画像表示領域および前記第二画像表示領域のサイズを変更する処理を行う請求項12に記載の医用画像処理システム。
【請求項14】
画像を表示する表示デバイスと、操作者による複数の入力を同時に受け付けることができる入力デバイスと、複数の解剖学的構造についての立体的配置を表す三次元画像を作成可能な少なくとも1つのデータセットを格納するデータ格納部と、を用いる医用画像処理方法であって、
前記データセットから前記三次元画像を作成することと、
作成した前記三次元画像、および前記三次元画像とは形式が異なるが前記三次元画像と関連付けられた第二画像を、前記三次元画像が表示される三次元画像表示領域および前記第二画像が表示される第二画像表示領域に分けて前記表示デバイスに同時に表示させることと、
前記入力デバイスによって受け付けられた入力に応じて、または前記入力とは無関係に、前記三次元画像および前記第二画像の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成し、前記補助画像を前記三次元画像および前記第二画像の他方に表示させることと、
前記三次元画像表示領域および前記第二画像表示領域の両方において前記入力デバイスからの入力を受け付けると、それぞれが受け付けた入力に従った所定の処理を同時に行うことと、
を含む医用画像処理方法。
【請求項15】
データ格納部に格納された、複数の解剖学的構造についての立体的配置を表す三次元画像を作成可能な少なくとも1つのデータセットから作成された少なくとも前記三次元画像を表示デバイスに表示させる処理をコンピュータに実行させる医用画像処理プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記データセットから前記三次元画像を作成させる処理と、
作成した前記三次元画像、および前記三次元画像とは形式が異なるが前記三次元画像と関連付けられた第二画像を、前記三次元画像が表示される三次元画像表示領域および前記第二画像が表示される第二画像表示領域に分けて前記表示デバイスに同時に表示させる処理と、
操作者による複数の入力を同時に受け付けることができる入力デバイスによって受け付けられた入力に応じて、または前記入力とは無関係に、前記三次元画像および前記第二画像の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成させ、前記補助画像を前記三次元画像および前記第二画像の他方に表示させる処理と、
を実行させ、かつ、
前記三次元画像表示領域および前記第二画像表示領域の両方において同時に前記入力デバイスからの入力を受け付けると、それぞれが受け付けた入力に従った所定の処理を同時に実行させる医用画像処理プログラム。
【請求項16】
請求項15に記載の医用画像処理プログラムを記憶している、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者から得られた医用画像データの表示を処理する医用画像処理システム、医用画像処理方法および医用画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CT装置等の撮像装置によって得られた医用画像を用いた診断および治療が行われている。撮像装置で得られた医用画像は、例えば、病変の有無の確認、手術前のシミュレーション、および手術中のナビゲーション等に利用される。医用画像として利用されるのは二次元画像および/または三次元画像である。上述した撮像装置によって取得される画像データは、複数のスライス画像データ、すなわち二次元画像データである。三次元画像は、複数の二次元画像データからボリュームデータを作成することによって得ることができる。例えば特許文献1、2には、二次元画像と三次元画像を同一の表示デバイスに表示できる医用画像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-357789号公報
【文献】特許第4971402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、2に記載の発明では、三次元画像とそれに対応する二次元画像を同一の表示デバイスに表示するものであるが、二次元画像と三次元画像との対応関係をより詳細に知りたいという要求もある。例えば、動脈系の血管と静脈系の血管とが複雑に走行しているような部位では、二次元画像と三次元画像とを視覚的に対比することによって複数の血管同士の位置関係を把握するようなことも行われるが、二次元画像と三次元画像とが単に並べて表示されているだけでは、三次元画像と二次元画像との対応関係を把握しにくい場合があるなど、診断や治療に使用するには使い勝手が良いとはいえなかった。
【0005】
本発明は、同一の表示デバイスに表示される各種画像の対応関係を把握しやすく、診断や治療において有効に利用できる画像を表示させる医用画像処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の医用画像処理システムは、画像を表示する表示デバイスと、
操作者による入力を受け付ける入力デバイスと、
複数の解剖学的構造についての立体的配置を表す三次元画像を作成可能な少なくとも1つのデータセットを格納するデータ格納部と、
前記入力デバイスによって受け付けられた入力に従って前記表示デバイスへの前記画像の表示を制御する画像表示制御部と、
を有し、
前記画像表示制御部は、
前記データセットから少なくとも前記三次元画像を作成する処理と、
作成した前記三次元画像、および前記三次元画像とは形式が異なるが前記三次元画像と関連付けられた第二画像を前記表示デバイスに同時に表示させる処理と、
前記入力デバイスによって受け付けられた入力に応じて、または前記入力とは無関係に、前記三次元画像および前記第二画像の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成し、前記補助画像を前記三次元画像および前記第二画像の他方に表示させる処理と、
を行うように構成されている。
【0007】
本発明の医用画像処理方法は、画像を表示する表示デバイスと、操作者による入力を受け付ける入力デバイスと、複数の解剖学的構造についての立体的配置を表す三次元画像を作成可能な少なくとも1つのデータセットを格納するデータ格納部と、を用いる医用画像処理方法であって、
前記データセットから前記三次元画像を作成することと、
作成した前記三次元画像、および前記三次元画像とは形式が異なるが前記三次元画像と関連付けられた第二画像を前記表示デバイスに同時に表示させることと、
前記入力デバイスによって受け付けられた入力に応じて、または前記入力とは無関係に、前記三次元画像および前記第二画像の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成し、前記補助画像を前記三次元画像および前記第二画像の他方に表示させることと、
を含む。
【0008】
本発明の医用画像処理プログラムは、データ格納部に格納された、複数の解剖学的構造についての立体的配置を表す三次元画像を作成可能な少なくとも1つのデータセットから作成された少なくとも前記三次元画像を表示デバイスに表示させる処理をコンピュータに実行させる医用画像処理プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記データセットから前記三次元画像を作成させる処理と、
作成した前記三次元画像、および前記三次元画像とは形式が異なるが前記三次元画像と関連付けられた第二画像を前記表示デバイスに同時に表示させる処理と、
前記三次元画像および前記第二画像の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成させ、前記補助画像を前記三次元画像および前記第二画像の他方に表示させる処理と、
を実行させる。
【0009】
(本発明で用いる用語の定義)
「解剖学的構造」とは、被写体内で認識可能な、例えば臓器、骨、血管等の対象物(オブジェクト)のことをいい、脂肪や、腫瘍等の病変等も含む。また、全体としてみれば1つの解剖学的構造であっても、複数の単位に分けられたり別個の役割等を有していたりする解剖学的構造については、複数の解剖学的構造として扱われることもある。例えば、肺は、上葉、中葉および下葉をそれぞれ別個の解剖学的構造として扱うことができ、また、血管は、動脈系血管と静脈系血管をそれぞれ別個の解剖学的構造として扱うことができる。
【0010】
画像の表示における「半透明」とは、三次元画像での解剖学的構造の表示形態の一つであり、隠れていた他の解剖学的構造を視認できるように透過率が設定されていることを意味し、半透明とされる対象となる解剖学的構造をほとんど視認することができない状態での表示も含む。具体的な透過率としては、30%~90%の間とすることができる。
【0011】
「二次元画像」とは、解剖学的構造の断面を表す画像を意味し、「三次元画像」とは、三次元の情報を二次元的に表した画像を意味する。「二次元画像」は、「断面画像」ということもある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、互いに関連した複数種類の画像を表示デバイスに表示させる場合において、表示されている画像の対応関係を視覚的に把握しやすく、診断や治療において有効に利用できる画像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態による医用画像処理システムのブロック図である。
図2図1に示す表示デバイスに表示される初期画面の一例を示す図である。
図3図2に示す画面上への、三次元画像および二次元画像の表示の一例を示す図である。
図4】二次元画像における、着色画像の重ね合わせを説明する図である。
図5】表示デバイスへの、二次元画像が示す断面位置の、三次元画像への表示の一例を示す図である。
図5A図5に示す表示において、二次元画像上の位置を特定した場合の、二次元画像および三次元画像への表示の一例を示す図である。
図5B】三次元画像および二次元画像の両方への入力に対する並列処理の一例を説明する図である。
図5C】三次元画像および二次元画像の両方への入力に対する並列処理の一例を説明する図である。
図5D】三次元画像および二次元画像の両方への入力に対する並列処理の一例を説明する図である。
図6】三次元画像上で指定した場所での二次元画像を二次元画像表示領域に表示する場合の手順の一例を説明する図であり、二次元画像に表示させる断面の位置を三次元画像上で指定した段階を示している。
図6A】三次元画像上で指定した場所での二次元画像を二次元画像表示領域に表示する場合の手順の一例を説明する図であり、指定した場所での二次元画像が二次元画像表示領域に表示された段階を示している。
図7図6に示した段階において、指定した場所が属する解剖学的構造を半透明で表示した例を示す図である。
図8A】三次元画像表示領域および二次元画像表示領域のサイズ変更を説明する図であり、二次元画像表示領域のサイズを拡大した状態を示す。
図8B】三次元画像表示領域および二次元画像表示領域のサイズ変更を説明する図であり、三次元画像表示領域のサイズを拡大した状態を示す。
図9】本発明の他の実施形態による医用画像処理システムの表示画面の一例を示す図である。
図9A図9に示す画面においてメニューボタンアイコンを操作することによって表示される画面の一例を示す図である。
図10A図9Aに示す画面から選択できる三次元画像のクリッピング機能を説明する図である。
図10B図9Aに示す画面から選択できる三次元画像のクリッピング機能を説明する図である。
図10C図9Aに示す画面から選択できる三次元画像のクリッピング機能を説明する図である。
図11A図9Aに示す画面から選択できる三次元画像のパースペクティブ表示機能を説明する図である。
図11B図9Aに示す画面から選択できる三次元画像のパースペクティブ表示機能を説明する図である。
図11C図9Aに示す画面から選択できる三次元画像のパースペクティブ表示機能を説明する図である。
図12A図9Aに示す画面から選択できる三次元画像のスプリットウィンドウ表示機能を説明する図である。
図13A】三次元画像の半透明表示および非表示機能を説明する図である。
図13B】三次元画像の半透明表示および非表示機能を説明する図である。
図13C】三次元画像の半透明表示および非表示機能を説明する図である。
図13D】三次元画像の半透明表示および非表示機能を説明する図である。
図13E】三次元画像の半透明表示および非表示機能を説明する図である。
図13F】三次元画像の半透明表示および非表示機能を説明する図である。
図13G】三次元画像の半透明表示および非表示機能を説明する図である。
図14A】血管支配領域の計算機能を説明する図である。
図15】本発明の他の形態による処置支援システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照すると、画像表示制御部11と、データ格納部12と、表示デバイス13と、入力デバイス14とを少なくとも有する、本発明の一実施形態による医用画像処理システム1のブロック図が示されている。医用画像処理システム1は、これらに加えてデータ入出力インターフェース15、医用情報管理装置21、薬液注入装置22および撮像装置23をさらに有していてもよい。本形態の医用画像処理システム1は、三次元画像およびその三次元画像と関連付けられた他の種類の画像である第二画像を表示デバイス13に同時に表示できるように構成されるものであり、以下においては、第二画像が二次元画像である場合を例に挙げて説明する。
【0015】
表示デバイス13は、液晶ディスプレイおよび有機ELディスプレイなど、画像表示制御部11で作成された画像を表示できる任意のディスプレイであってよい。入力デバイス14は、例えば、キーボードやマウスなど、操作者による入力操作を受け付け、画像表示制御部11にデータ等を入力できる任意のデバイスであってよい。また、ディスプレイとタッチスクリーンとを組み合わせたタッチパネルを、表示デバイス13および入力デバイス14として用いることもできる。
【0016】
さらに、入力デバイス14として、非接触で入力を行うことのできる非接触入力ユニットを組み合わせることもできる。非接触入力ユニットは、ジェスチャ認識技術を利用したものと音声認識技術を利用したものに分けることができる。
【0017】
ジェスチャ認識技術を利用した非接触入力ユニットの一例として、「Leapセンサ」(Leap Motion社製)が挙げられる。「Leapセンサ」は、操作者の指の動き等を非接触で認識できる入力デバイスであり、赤外線照射部と、赤外線カメラ等を有する。赤外線照射部から照射された赤外線が操作者の手に当たったときの反射光を赤外線カメラで撮影し、画像解析を行うことで、三次元空間内での操作者の手および指の位置、動作および形状等をリアルタイムで検出するものである。
【0018】
ジェスチャ認識技術を利用した非接触入力ユニットの他の例として、「リアルセンス」(インテル社製)が挙げられる。「リアルセンス」は、RGBカメラおよび赤外線カメラから構成された3Dカメラ、赤外線センサ等をモジュール化したものであり、色情報の他に奥行情報を取得でき、操作者の指等の動作を三次元で認識可能である。
【0019】
本形態では、Leapセンサおよびリアルセンスのいずれも利用可能であり、いずれにおいても、入力のための操作者の動作は、タッチパネル上での操作者の動作(例えば、タップ、ダブルタップ、スワイプ、フリック、ピンチイン、ピンチアウトなど)と同じ動作に加え、奥行方向の動作も利用可能である。実際の入力動作に際しては、アクリル樹脂等からなる透明な平板を適宜位置に配置し、その平板を基準面として入力動作を行うようにすることで、奥行方向での位置ずれによる誤認識を防止することができる。
【0020】
音声認識技術を利用した非接触入力ユニットの例として、音声認識ユニットを挙げることができる。音声認識ユニットは、操作者が発生した音声を取得するマイクロフォンと、マイクロフォンが取得した音声を認識して操作用信号に変換する音声認識装置と、を有することができる。音声認識装置の設置場所は任意であってよいが、マイクロフォンは、操作者の近くに設置することが好ましい。
【0021】
データ格納部12は、複数の解剖学的構造についての立体的配置を表す三次元画像を作成可能な少なくとも1つのデータセットを格納する。データ格納部12としては、HDD(Hard Disc Drive)、SSD(Solid State Drive)および各種メモリの少なくとも一種を含むことができる。データ格納部12には、これら二次元画像データおよび三次元画像データの他に、画像表示制御部11が行う処理に必要な少なくとも1つのプログラム、テーブル、データベース等が格納されていてもよい。
【0022】
データ格納部12に格納されるデータセットは、データ入出力インターフェース15を通じて医用情報管理装置21から取得することができる。データ入出力インターフェース15は、医用情報管理装置21と無線接続されるものであってもよいし有線接続されるものであってもよい。医用情報管理装置21としては、PACS(picture Archiving and CommunicationSystems)、RIS(Radiology Information System)およびHIS(Hospital Information System)等が挙げられる。
【0023】
医用情報管理装置21は、薬液注入装置22によって薬液(例えば造影剤)が注入され、撮像装置23によって撮像された被験者の医用画像データを管理する。薬液注入装置22としては、シリンジや薬液バッグ等に充填された造影剤等の薬液を、予め設定された注入条件に従って被験者に注入する任意の注入装置を用いることができる。撮像装置23は、CT(Computed Tomography)装置、MRI(Maganetic Resonance Imaging)装置、アンギオグラフィ装置、PET(Positoron Emission Tomography)装置、超音波診断装置等、画像データで構成された医用画像を撮像することのできる任意の装置であってよい。データ格納部12に格納されるデータセットは、撮像装置23から取得することもできる。
【0024】
ここで、データ格納部12に格納されるデータセットについて説明すると、データセットの例としては、複数の解剖学的構造についてのボリュームデータセットが挙げられる。ボリュームデータセットは、撮像装置23によって被験者に対して特定の方向(例えば、体軸方向、左右方向、前後方向、これらの少なくとも1つに対して傾斜した方向など)に一定の間隔(例えば1mm間隔)で連続的に撮影された複数(例えば300)のスライス画像データを体軸方向に配列して得られるデータセットである。また、データ格納部12に格納されるデータセットは、撮像装置23から直接または間接的に取得された生データであってもよい。この場合、画像表示処理部11は、データ格納部12に格納された生データの再構成を行い、任意の画像を得るように構成されることが好ましい。
【0025】
ボリュームデータセットは複数のボクセルからなり、各ボクセルのボクセル値に基づく所定の処理により、複数の解剖学的構造を抽出することができる。そして、各ボクセルに対して、抽出した解剖学的構造ごとに透過率や色相が設定される。よって、各ボクセルは、座標情報、透過率情報および色相情報を含んでいる。このようにして解剖学的構造が抽出され、解剖学的構造ごとに透過率や色相が設定されたボリュームデータセットにレンダリング処理を行うことによって、三次元画像を作成することができる。レンダリング処理としては、ボリュームレンダリング(VR)、最大値投影法(MIP)などが挙げられる。
【0026】
解剖学的構造の抽出のための処理、各ボクセルに対する透過率や色相の設定、およびレンダリング処理など、ボリュームデータセットから三次元画像を作成するための各処理は公知の処理であってよいので、ここではそれらの詳細な説明は省略する。また、ボリュームデータセットにおける解剖学的構造の抽出、および透過率・色相の設定は、この画像表示制御部11で行ってもよいし、予め、解剖学的構造が抽出され透過率および色相が設定されたボリュームデータセットがデータ格納部12に格納されていてもよい。
【0027】
解剖学的構造ごとに透過率および色相が設定されたボリュームデータセットは、解剖学的構造ごとに複数のレイヤーに分けられており、各ボクセルがレイヤー情報を含んでいてもよい。この場合、ボリュームデータセットは、解剖学的構造ごとの複数のレイヤー情報を持つ1つのデータファイルとしてデータ格納部12に格納されていてもよいし、それぞれレイヤー情報ごとに分けられた複数のデータファイルとしてデータ格納部12に格納されていてもよい。ボリュームデータセットがいずれの形態で格納されるかは、ボリュームデータセットの格納時に操作者が任意に選択できるようにしてもよい。
【0028】
ボリュームデータセットを任意の平面で切り出して再構成することによって、二次元画像を作成することができる。このような処理を、任意断面再構成(MPR)という。医療分野で用いられる二次元画像としては、基本的に、被験者の体軸方向に垂直なアキシャル断面、被験者の左右方向に垂直なサジタル断面および被験者の前後方向に垂直なコロナル断面がある。
【0029】
これらの二次元画像は、ボリュームデータセットから作成された、所望の断面位置における二次元画像データを用いて作成することができる。二次元画像データの作成は、データ格納部12に格納されたボリュームデータセットを用い、この画像表示制御部11で行うことができる。あるいは、ボリュームデータセットを用いて予め作成された複数の二次元画像データ(二次元画像データセット)が、その元となるボリュームデータセットとともにデータ格納部12に格納されてもよい。いずれの場合でも、ボリュームデータから二次元画像データが作成された段階で、ボリュームデータの各ボクセルの座標情報が二次元画像データに引き継がれ、したがって、共通のボリュームデータに基づく三次元画像および二次元画像は共通の座標データを持っている。また、二次元画像の表示に際しては、二次元画像データの補間処理がなされてもよい。
【0030】
例えば上記のアキシャル断面、サジタル断面およびコロナル断面といった複数の断面における二次元画像データセットがデータ格納部12に格納される場合、二次元画像データセットは、全ての断面についての複数の二次元画像データを有する1つのデータファイルとしてデータ格納部12に格納されていてもよいし、それぞれ各断面についての複数の二次元画像データを有する複数のデータファイルとしてデータ格納部12に格納されていてもよい。
【0031】
再び図1を参照すると、データ入出力インターフェース15と医用情報管理装置21との接続が有線接続であって、かつ、データ入出力インターフェース15がケーブル着脱式のコネクタである場合、およびデータ入出力インターフェース15と医用情報管理装置21との接続が無線接続である場合、医用画像処理端末10を医用画像処理システム1として構成することができる。医用画像処理端末10は、好ましくは、画像表示制御部11、データ格納部12、表示デバイス13、入力デバイス14およびデータ入出力インターフェース15を単一の筐体内に収めたものとして構成される。医用画像処理端末10は、タブレット端末や、タッチパネルディスプレイを有するノート型パーソナルコンピュータなど、可搬型の端末である。ただし、医用画像処理端末10は、表示デバイス13および入力デバイス14が画像表示制御部11と別体のユニットで構成されたワークステーションとして構成されていてもよい。
【0032】
画像表示制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を備えたコンピュータユニットで構成することができ、入力デバイス14によって受け付けられた入力に従って表示デバイス13への画像の表示を制御する種々の処理を実行する。画像表示制御部11で行われる処理は、コンピュータプログラムで実現してもよいし、論理回路によるハードウェアで実現してもよい。
【0033】
画像表示制御部11で行われる処理をコンピュータプログラムで実現する場合、コンピュータプログラムは、前述したように、データ格納部12に格納することができる。データ格納部12に格納されたコンピュータプログラムは、画像表示制御部11のRAMにロードされることによって実行され、CPUなどのハードウェアと協働することによって各種処理が実行される。
【0034】
コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶させてもよい。コンピュータプログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は特に限定されず、例えば、メモリーカード、CD-ROM等の記録媒体であってもよい。記録媒体に記憶されたコンピュータプログラムは、適宜のリーダーを介してコンピュータユニットに実装することができる。適宜のリーダーとは、例えば、記録媒体がメモリーカードである場合はカードリーダ、記録媒体がCD-ROMである場合はCDドライブ、などが挙げられる。
【0035】
または、コンピュータプログラムは、外部のサーバから通信ネットワークを介してコンピュータユニットにダウンロードされたものであってもよい。
【0036】
画像表示制御部11は、画像の表示を制御する種々の処理を実行するため、入力判定部11a、表示処理部11bおよび補助画像処理部11cを、概念的な構成として有している。
【0037】
入力判定部11aは、入力デバイス14が受け付けた入力を、入力を受け付けた入力デバイス14の種類、入力された信号の変化などから、表示デバイス13に表示されている画像に対してどのような処理を行うかを判定する。
【0038】
表示処理部11bは、主に、表示デバイス13の表示領域についての処理および表示領域内での画像表示についての処理を行う。これらの処理について、データ格納部12にボリュームデータセットが格納されている場合を例に挙げ、図2および図3をさらに参照して説明する。
【0039】
表示領域の処理では、表示処理部11bは、図2に示すように、表示デバイス13の画面における画像表示領域を、第1表示領域および第2表示領域、具体的には三次元画像表示領域100aおよび二次元画像表示領域100bに分けて表示させる。また、表示処理部11bは、入力デバイス14による入力操作に用いられるボタン(アイコン)および/または入力デバイス14からの入力に応じた各種マーク等を表示デバイス13表示させることもできる。
【0040】
表示領域内での画像表示についての処理では、図3に示すように、三次元画像表示領域100aに、データ格納部12に格納されているボリュームデータセットから作成された三次元画像300を表示させると同時に、二次元画像表示領域100bに、三次元画像300上で特定された位置に対応する二次元画像200を、データ格納部12に格納されているボリュームデータセットから作成し、表示させる処理を行う。
【0041】
補助画像処理部11cは、二次元画像表示領域100bに表示されている二次元画像200の表示および三次元画像表示領域100aに表示されている三次元画像300への補助画像の表示の処理を行うものであり、特に、二次元画像200および三次元画像300の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成し、その補助画像を二次元画像200および三次元画像300の他方に表示させる処理を行うことができるように構成されている。この処理は、入力デバイス14が受け付けた入力に従った処理であってもよいし、入力デバイス14からの入力とは無関係に予め設定された手順に従った処理であってもよい。
【0042】
次に、上述した医用画像処理システム1による画像処理について、医用画像処理システム1をタブレット型の医用画像処理端末10に適用した場合を例に挙げて説明する。以下で説明するタブレット型の医用画像処理端末10は、画像表示制御部11、データ格納部12、表示デバイス13、入力デバイス14およびデータ入出力インターフェース15を1つの筐体に収め、表示デバイス13および入力デバイス14としてタッチパネルを備えた、可搬型の医用画像処理端末10である。
【0043】
医用画像処理端末10の電源が入れられ、医用画像処理プログラムが起動されると、以下に述べる一連の処理が、画像表示制御部11によって行われる。
【0044】
まず、表示処理部11bが、図2に示すように、医用画像処理端末10の表示デバイス13の画像表示領域を三次元画像表示領域100aと二次元画像表示領域100bとに分けて表示させる。また、表示処理部11bは、操作者による入力操作に用いられる各種アイコンを表示デバイス13に表示させる。表示デバイス13に表示させる各種アイコンとしては、画像データをデータ格納部12から読み出すのに用いられる少なくとも1つのデータ読み出しアイコン111、および入力デバイス14の選択に用いられる入力選択アイコン114等が含まれる。入力選択アイコン114は、入力デバイス14として、タッチパネルの他に、Leapセンサや音声認識ユニット等、他の入力デバイス14が接続されている場合に有効である。
【0045】
操作者がデータ読み出しアイコン111をタップすると、この操作が入力判定部11aにて判定される。表示処理部11bは、データ格納部12からボリュームデータセットを読み出し、図3に示すように、二次元画像200および三次元画像300を作成し、それぞれ断面再構成処理あるいはレンダリング処理といった適宜処理を施し、二次元画像表示領域100bおよび三次元画像表示領域100aに表示させる。二次元画像表示領域100bに表示される二次元画像200は、三次元画像表示領域100aに表示される三次元画像300中の特定された位置に対応する二次元画像200である。
【0046】
このとき表示される三次元画像300の向き(被験者の前後方向から見た画像か、被験者の左右方向から見た画像か、または被験者の体軸方向から見た画像か)は、表示処理部11bによって予め定められていてもよいし、入力デバイス14から入力されるようにしてもよい。また、二次元画像200は、三次元画像300中の特定された位置に対応するものであるが、三次元画像300中のどの位置に対応するか、およびどの方向の断面か(被験者の体軸方向に垂直なアキシャル断面か、被験者の左右方向に垂直なサジタル断面か、または被験者の前後方向に垂直なコロナル断面か)は、表示処理部11bによって予め定められていてもよいし、入力デバイス14から入力されるようにしてもよい。一例として、三次元画像300は、被験者の正面から見た画像が表示され、二次元画像200は、三次元画像300の中心を通るアキシャル断面が表示されるように定めることができる。なお、三次元画像300の向きおよび二次元画像200の断面は、表示デバイス13に表示された表示切り替えアイコン112、113をタップすることによって任意に切り替えることができる。
【0047】
また、表示処理部11bは、三次元画像表示領域100aに表示された三次元画像300および二次元画像領域100bに表示された二次元画像200の表示を、それぞれ個別に、または互いに連動して、および入力デバイス14からの入力に応じて、または予め定められた設定に従って処理する。以下、表示の処理のいくつかの例について説明する。
【0048】
(三次元画像の回転、拡大・縮小、平行移動等)
三次元画像表示領域100aに表示されている三次元画像300は、入力デバイス14による所定の入力操作によって、任意の方向への回転、拡大・縮小、平行移動等、表示の変更が可能である。これらの表示の変更には、入力デバイス14がタッチパネルである場合、タッチパネル特有の操作を利用することができる。この操作が入力判定部11aで判定され、これによって表示処理部11bは、入力判定部11aでの判定結果に応じて、三次元画像300の表示を変更する。表示の変更としては、例えば、スワイプ操作によりスワイプ方向に応じて三次元画像300を回転させること、ピンチイン・ピンチアウト操作による三次元画像300の縮小・拡大などが挙げられる。また、2点をタッチした状態でスライドすることによって三次元画像300を平行移動させることもできる。
【0049】
(二次元画像の断面位置変更、拡大・縮小等)
二次元画像表示領域100bに表示されている二次元画像200も、入力デバイス14による所定の入力操作によって、三次元画像300と同様、断面位置の変更、拡大・縮小等、表示の変更が可能である。表示の変更として、例えば、二次元画像表示領域100b内の特定の領域(右端部など)で上下方向にスワイプ操作することによって、表示される二次元画像200が表す断面位置を変更することなどが挙げられる。また、三次元画像300と同様、ピンチイン・ピンチアウト動作によって二次元画像200を縮小・拡大表示させることも可能である。
【0050】
補助画像処理部11cは、二次元画像200および三次元画像300の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成し、作成した補助画像を二次元画像200および三次元画像300の他方に表示させる処理を行う。以下に、補助画像処理部11cによる処理のいくつかの例について説明する。
【0051】
(二次元画像での特定の解剖学的構造のカラー表示)
一般に、三次元画像300は、解剖学的構造ごとに設定された複数のレイヤーで構成されており、座標情報の他に、これらレイヤーを示す情報である複数のレイヤー情報、およびレイヤーごと(解剖学的構造ごと)に異なる色相情報を持っている。これらの情報は、ボリュームデータセットから三次元画像300を作成した際に、ボリュームデータセットの各ボクセルから引き継いだ情報である。表示処理部11bは、これらの情報に従って三次元画像表示領域100aに三次元画像300を表示させる。したがって、三次元画像300は、レイヤーごとに異なる色相で表示される。
【0052】
一方、二次元画像200は、例えばCT値の大小に応じた濃淡で表されるモノクロ画像である。このような二次元画像200において、複雑に配置された様々な解剖学的構造が表示されていると、二次元画像200の読影が困難になることがある。
【0053】
そこで、補助画像処理部11cは、図3および図4に示すように、少なくとも1つのレイヤー301、302についての二次元画像201、202を補助画像として作成する。ここで作成する二次元画像201、202は、三次元画像300上で特定された位置に対応する二次元画像、すなわち二次元画像表示領域100bに表示されている二次元画像200と同じ断面での、各レイヤー301、302についての二次元画像201、202である。また、これら二次元画像201、202は、それぞれ対応するレイヤー301、302に設定される色相と同じ色相で表示されている。補助画像処理部11cは、作成した二次元画像201、202を、二次元画像表示領域100bに表示されている二次元画像200上に重ね合わせる。
【0054】
以上の処理により、二次元画像200の特定の解剖学的構造が三次元画像300と同じ色相で表示されるので、二次元画像200での解剖学的構造の区別を視覚的に容易に行えるようになる。二次元画像200上に補助画像として表示するレイヤーは、予め定められていてもよいし、入力デバイス14によって入力されるようにしてもよい。
【0055】
このような、二次元画像200への補助画像の表示は、脈管系に適用すると特に効果的である。血管は、その走行方向に垂直な断面では略円形として観察される。また、リンパ節もその断面は略円形として観察される。二次元画像200に略円形の解剖学的構造が表示されている場合、それが血管であるかリンパ節であるかを判断するには、二次元画像200をスクロール(断面位置を変更)させなければならない。リンパ節は球状であるのに対して血管はチューブ状であるので、スクロールすることによってその構造の違いを把握できるからである。
【0056】
そこで、三次元画像300において、動脈系血管に相当するレイヤー301を赤色で表示するとともに、静脈系血管に相当するレイヤー302を青色で表示する場合、レイヤー301に対応する赤色の二次元画像201およびレイヤー302に対応する青色の二次元画像202を二次元画像200に重ねて表示することで、二次元画像200上で動脈系血管と静脈系血管の区別を容易に行うことができる。そして、二次元画像表示領域100bに表示されている二次元画像200に、赤色にも青色にも着色されていない略円形の解剖学的構造が表示されていれば、二次元画像200をスクロールすることなく、その解剖学的構造がリンパ節であると推測することができる。
【0057】
(二次元画像の断面位置を三次元画像へ表示)
二次元画像200および三次元画像300はそれぞれ被験者の体軸方向、左右方向および前後方向について互いに対応する座標情報を持っている。よって、二次元画像200および三次元画像300の座標情報を利用して、三次元画像表示領域100aに表示されている三次元画像300上で、二次元画像表示領域100bに表示されている二次元画像200に対応する断面位置を表すことができる。
【0058】
その一例を図5に示す。例えば、前述した二次元画像200の断面位置変更で述べた、二次元画像表示領域100b内の特定の領域(右端部など)でスワイプ操作がなされると、入力判定部11aは、スワイプ操作されている位置に応じて、体軸方向についてのみの座標が入力されたと判定する。このような、二次元画像表示領域100bでの任意の座標の入力が入力デバイス14(ここで説明する例ではタッチパネル)からなされると、補助画像処理部11cは、二次元画像表示領域100bに表示されている二次元画像200が表す断面に相当する平面画像310を、補助画像として、三次元画像表示領域100aの、入力された座標を通る位置に表示させる。平面画像310は、解剖学的構造が平面画像310によって隠れてしまわないように、半透明で表示することが好ましい。
【0059】
このように、二次元画像200が表す断面に相当する平面画像310を三次元画像表示領域100aに表示することで、二次元画像表示領域100bに表示されている二次元画像200が、三次元画像表示領域100aに表示されている三次元画像300のどの位置での断面を表しているかを直感的に把握することができる。
【0060】
三次元画像表示領域100aには、上述した平面画像310と併せて、この平面画像310が通る断面での解剖学的構造の輪郭部に相当する位置にハイライト輪郭画像311を、補助画像としてさらに表示させてもよい。より詳しくは、二次元画像表示領域100bでの任意の座標の入力がなされると、補助画像処理部11cは、三次元画像表示領域100aに表示されている三次元画像300の、二次元画像表示領域100bに表示されている二次元画像200が表す断面での解剖学的構造の輪郭部を、この解剖学的構造の他の部分と異なる色相で表示させる。このように、解剖学的構造の輪郭部をハイライト表示させることによって、上述した効果をより良好に発揮することができる。「ハイライト表示」とは、対象となる解剖学的構造の色とは異なる、視覚的に区別可能な色相で表示することを意味する。
【0061】
上述した例では、二次元画像表示領域100b上の特定の領域での入力操作によって、体軸方向の座標が入力される場合を説明したが、二次元画像200上をスワイプ操作すると、入力判定部11aは、スワイプ操作されている位置に応じて、左右方向(x軸方向)、前後方向(y軸方向)および体軸方向(z軸方向)についての座標情報が入力されたと判定する。このように二次元画像200上で任意の座標が入力された場合、補助画像処理部11cは、図5Aに示すように、三次元画像表示領域100aに表示されている三次元画像300の、入力された座標に対応する位置に、補助画像としてカーソル320を表示させる。これにより、二次元画像200上で特定された位置が三次元画像300上のどの位置に対応するかを直感的に把握することができる。
【0062】
この場合、補助画像処理部11cは、二次元画像200上に、入力されている座標の、左右方向(x軸方向)での位置を表す線分210および前後方向(y軸方向)での位置を表す線分211を表示させることが好ましい。これら線分210、211の交点が、入力されている座標を示す。これにより、二次元画像200と三次元画像300との対応を視覚的に把握することができる。
【0063】
上述した、座標情報を利用した、平面画像310の表示、ハイライト輪郭画像311の表示、およびカーソル320の表示等は、それぞれ単独で行われるようにしてもよいし、2つ以上を組み合わせてもよい。
【0064】
(複数の入力の並行処理)
入力デバイス14がタッチパネルである場合など、入力デバイス14が同時に複数の入力を受け付けることができる場合、画像表示制御部11は、二次元画像に関する入力および三次元画像に関する入力に従った処理を並行して実行することができる。以下、入力デバイス14がタッチパネルである場合の、複数の入力のへ並列処理の一例について説明する。
【0065】
医療画像処理端末10は、二次元画像表示領域100b上でのタッチパネルからの入力が受け付けられている状態で、さらに、三次元画像表示領域100a上でのタッチパネルの入力を受け付けることができるように構成される。画像表示制御部11は、二次元画像表示領域100bおよび三次元画像表示領域100aの両方からの入力を受け付けると、それぞれが受け付けた入力に従った所定の処理を同時に実行することができる。二次元画像表示領域100b上での入力が受け付けられている状態とは、二次元画像表示領域100b上で操作者によってタッチおよびスライドなどタッチパネルの操作が行なわれている状態を意味する。
【0066】
例えば、図5Bに示すように、操作者が二次元画像表示領域100b上の任意の位置をタッチすることによって二次元画像表示領域100b上の座標を指定すると、前述したように、補助画像処理部11cは、平面画像310、ハイライト輪郭画像311、カーソル320などの補助画像の少なくとも1つを三次元画像領域100a上に表示させる。また、補助画像処理部11cは、指定した座標の位置を表す線分210、211を二次元画像表示領域100b上に表示させる。
【0067】
この状態で、操作者が三次元画像表示領域100a上で三次元画像の回転、拡大、縮小または平行移動などのための操作が入力として受け付けられると、画像表示制御部11は、三次元画像表示領域100aに補助画像の少なくとも1つを表示させながら、操作者による三次元画像表示領域100a上での操作に従った、三次元画像表示領域100a上に表示されている三次元画像の回転、拡大、縮小、または平行移動を含む処理を実行する。このとき、補助画像処理部11cは、例えば図5C~5Dに示すように、三次元画像表示領域100aに表示する補助画像(平面画像310、ハイライト輪郭画像311、カーソル320など)の位置を、三次元画像の回転、拡大、縮小または平行移動に対応して移動させる。
【0068】
図5B~5Dに示した例では、二次元画像表示領域100b上での入力が変更されない場合を示した。しかし、二次元画像表示領域100b上での入力の変更を受け付けながら、三次元画像表示領域100a上での入力を受け付けることもできる。この場合も、画像表示制御部11は、二次元画像表示領域100b上での入力の変更に従った所定の処理の実行と、三次元画像表示領域100a上での入力に従った所定の処理を同時に実行することができる。ここで、二次元画像表示領域100b上での入力の変更は、座標位置の変更および前述した断面位置の変更等を含む。
【0069】
(表示する二次元画像を三次元画像上で指定)
ここまで説明した例は、二次元画像表示領域100bに表示される二次元画像200の変更が、二次元画像表示領域100b内での入力操作等、二次元画像200に対する入力によるものであった。しかし、三次元画像300および二次元画像200は互いに対応する位置情報を持っているので、三次元画像300における座標の入力によって、補助画像として任意の二次元画像200を表示させることもできる。以下に、その一例を、図6および図6Aを参照して説明する。
【0070】
まず、操作者が三次元画像表示領域100aに表示されている三次元画像300の解剖学的構造上の任意の座標を入力デバイス14により入力する。座標の入力は、入力デバイス14がタッチパネルである場合、三次元画像300上の任意の位置をタップすると、その操作を入力判定部11aが、タップした位置での座標が入力されたと判定することによって行うことができる。座標が入力されると、補助画像処理部11cは、入力された座標を含む二次元画像データをデータ格納部12から読み出し、図6に示すように、読み出した二次元画像データから作成した二次元画像のサムネイル400を補助画像として表示デバイス13に表示させる。
【0071】
サムネイル400は、入力された座標を含む断面における解剖学的構造全体を表す必要はなく、入力された座標を中心とする所定の範囲の二次元画像であってよい。サムネイル400として表示される範囲の大きさは、予め設定しておくことができる。またサムネイル400は、既に表示されている二次元画像200および三次元画像300と区別できるよう、三次元画像表示領域100aおよび二次元画像表示領域100bとは別の領域に表示されることが好ましい。図6に示す例では、サムネイル400は、三次元画像表示領域100aと二次元画像表示領域100bとの間に、三次元画像表示領域100aおよび二次元画像表示領域100bにオーバーラップさせて表示されている。なお、入力された座標の三次元画像300上での位置を操作者が認識できるように、補助画像処理部11cは、三次元画像300上の入力された座標に対応する位置にポインタ330を表示させることが好ましい。
【0072】
表示されたサムネイル400を承認する場合、操作者は入力デバイス14からその旨の入力を行う。入力デバイス14がタッチパネルである場合は、サムネイル400をタップすると、その操作を入力判定部11aが、サムネイル400を承認する意味を表す入力がなされたと判定し、これによってサムネイル400を承認する入力を行うことができる。サムネイル400を承認しない場合は、再び座標の入力を行う。
【0073】
サムネイルが承認されると、補助画像処理部11cは、図6Aに示すように、サムネイルの表示を削除し、サムネイルとして表示されていた二次元画像200を二次元画像表示領域100bに表示させる。以上により、三次元画像300上で指定した座標での二次元画像200を表示させることができる。このように、二次元画像表示領域100bに表示させる二次元画像200を三次元画像300上で指定できるようにすることによって、所望の位置での二次元画像200をより簡単に表示させることができる。このような処理は、三次元画像300において気になる箇所を二次元画像200で詳細に確認したい場合に特に有効である。
【0074】
二次元画像表示領域100bに表示させる二次元画像200を三次元画像300上で指定できるようにした場合、三次元画像300として表示される解剖学的構造のサイズ等によっては、意図した座標の指定が難しいことがある。そこで、例えば図7に示すように、三次元画像300の解剖学的構造上の任意の座標が指定(入力)されたとき、補助画像処理部11cは、指定された座標を含む解剖学的構造を半透明で表示させるようにすることが好ましい。これにより、指定した座標が意図した座標であるかどうかを容易に確認することができる。
【0075】
(三次元画像での解剖学的構造等の半透明表示)
補助画像処理部11cは、図5図5Aおよび図7に示すように、三次元画像表示領域100aに表示される画像の一部を半透明で表示させることができる。図5および図5Aでは、二次元画像200が表す断面の位置を示す平面画像310、および三次元画像300として表示される解剖学的構造のうち平面画像310よりも下方の部分が半透明で表示されている。また、図7では、三次元画像300として表示される解剖学的構造のうち指定された解剖学的構造が半透明で表示されている。このように、三次元画像300において特定の表示を半透明で表示することで、解剖学的構造の状態等を容易に把握することができる。
【0076】
(画像表示領域のサイズ変更)
画像表示制御部11は、入力デバイス14からの入力に応じて、三次元画像表示領域100aおよび二次元画像表示領域100bのサイズを任意に変更するサイズ変更処理を行うようにしてもよい。サイズの変更について、入力デバイス14がタッチパネルである場合を例に挙げて説明する。
【0077】
表示処理部11bは、図8Aに示すように、三次元画像表示領域100aと二次元画像表示領域100bとの境界部に、サイズ変更用アイコン115を表示させる。操作者は、入力デバイス14からの入力としてサイズ変更用アイコン115を左右方向にスワイプ操作すると、入力判定部11aはこの操作を画像表示領域のサイズ変更のための入力操作であると判定する。表示処理部11bは、その入力操作に応じて、具体的にはスワイプ操作方向に応じて、サイズ変更用アイコン115の表示位置を変更し、図8Aおよび図8Bに示すように、サイズ変更用アイコン115の位置が、三次元画像表示領域100aと二次元画像表示領域100bとの境界部となるように、三次元画像表示領域100aおよび二次元画像表示領域100bのサイズを変更する。また、それと同時に、補助画像処理部11cは、変更された三次元画像表示領域100aのサイズに合わせて三次元画像300のサイズを変更し、二次元画像表示領域100bのサイズに合わせて二次元画像200のサイズを変更する。このようなサイズの変更は、三次元画像300または二次元画像200を詳細に確認したい場合などに有効である。
【0078】
(表示に関する様々な機能)
医用画像処理システム1は、画像処理制御部11が実行する機能として、上述した以外にも、表示に関する様々な機能を持つことができる。これらの機能は、二次元画像および三次元画像がそれぞれ別個に持つこともできる。複数の機能を持つ場合、画像表示制御部11は、各種機能を呼び出すためのそれぞれの機能に対応した複数のアイコンを含む機能呼び出しアイコン群を表示デバイス13に表示させるように構成されることができる。この場合、三次元画像表示領域100aおよび二次元画像表示領域100bの十分な有効表示領域を確保するため、画像表示制御部11は、通常は機能呼び出しアイコン群を非表示とし、必要に応じて表示させるようにすることが好ましい。
【0079】
そのために、画像表示制御部11は、例えば図9に示すように、三次元画像表示領域100aおよび二次元画像表示領域100bに、それぞれメニューボタンアイコン500a、500bを表示させることができる。操作者がこれらメニューボタンアイコン500a、500bをタップすると、画像表示制御部11は、三次元画像表示領域100aおよび二次元画像表示領域100bに、機能呼び出しアイコン群を表示させる。ユーザがアイコン群の中から所望のアイコンをタップすることによって、タップされたアイコンに対応する機能が選択される。
【0080】
医用画像処理システム1が持つことのできる、表示に関する機能の種類および数は特に制限されず、任意であってよい。表示に関する機能の幾つかの例を以下に説明する。
【0081】
(1)リバート機能
前述したように、三次元画像は、表示される向きおよびサイズを任意に変更することができ、また、二次元画像は、表示される断面位置およびサイズを任意に変更することができる。リバート機能とは、三次元画像および/または二次元画像の表示を初期化する機能である。表示を初期化するとは、表示処理部11bがデータ格納部12からデータセットを読み出し、適宜処理を実行して、三次元画像表示領域100aおよび二次元画像表示領域100bに最初に表示する初期画像を表示させることを意味する。
【0082】
図9Aに示すように、三次元画像表示領域100aおよび二次元画像表示領域100bにそれぞれリバートアイコン520、560が表示される。三次元画像表示領域100a上のリバートアイコン520がタップされると、画像表示制御部11は、三次元画像に対してリバート機能を実行する。二次元画像表示猟奇100b上のリバートアイコン560がタップされると、画像表示制御部11は、二次元画像に対してリバート機能を実行する。
【0083】
三次元画像表示領域100aまたは二次元画像表示領域100bのいずれか一方のみにリバートアイコン520または560が表示されてもよい。その場合、表示されたリバートアイコン520または560がタップされることによって、三次元画像および二次元画像の両方に対してリバート機能が実行されてもよい。また、画像の初期化に際しては、現在表示されている画像から初期画像へ一気に変化させてもよいし、漸次的に変化させてもよい。現在表示されている画像から初期画像へ漸次的に変化させることで、ユーザは現在表示されている画像と初期画像との対応を容易に把握できる。
【0084】
(2)クリッピング機能
クリッピング機能とは、三次元画像表示領域100aに表示されている三次元画像の任意の一部を切り抜いて表示する機能である。図9Aに示す形態では、「BBox」と表示されたクリッピングアイコン530がタップされると、画像表示制御部11は、クリッピング処理を実行する。以下に、画像表示制御部11による三次元画像のクリッピング処理の一例を説明する。
【0085】
クリッピング処理が実行されると、図10Aに示すように、六面体の内側に解剖学的構造を配置した三次元画像600が、三次元画像表示領域100aに表示される。六面体は、その内側に位置する解剖学的構造をユーザが視認できるよう、半透明で表示される。また、図示した形態では、六面体は各面が長方形で構成された直方体であるが、各面の形状は、解剖学的構造の立体的形状に応じて任意であってよい。なお、ここでの説明では、三次元画像を大きく表示して視覚的な理解を容易にするため、三次元画像表示領域100aのサイズを大きくした状態で説明する。
【0086】
ユーザが三次元画像600のうちクリッピングしたい1つの面610をタップすると、タップした面610がアクティブとされる。三次元画像600のどの面がアクティブであるかユーザが視覚的に認識できるように、アクティブな面と他の面とを視覚的に区別することが好ましい。視覚的な区別のため、例えば図10Bに示すように、アクティブとされた面610を他の面と異なる色で表示することができる。あるいは、アクティブとされた面610の枠(辺)の色を他の面の枠(辺)と異なる色で表示したり、これらを組み合わせたりすることもできる。
【0087】
ユーザが、アクティブとされた面610をタッチしたまま、表示されている三次元画像600のアクティブとされた面610に垂直な方向に対応する方向にスライドさせると、図10Cに示すように、三次元画像600はスライド方向に応じてクリッピングされる。このとき、クリッピングされた面に解剖学的構造が存在する場合、クリッピングされた面では解剖学的構造は断面で表示される。この状態で他の面がタップされると、タップされた他の面がアクティブとされ、上記と同様にして、三次元画像600をさらに他の面でクリッピングすることもできる。
【0088】
ここでは、三次元画像表示領域100a上に表示される三次元画像の処理について説明したが、三次元画像のクリッピングに対応して、二次元画像表示領域100b上の二次元画像の表示を変更してもよい。例えば、三次元画像をクリッピングすることによって切り取られた部分が二次元画像表示領域100b上に二次元画像として表示されている場合、その切り取られた部分に対応する部分を、非表示としたり、他の色で表示させたりするなど、切り取られていない部分と視覚的に区別できる表示とすることができる。
【0089】
(3)パースペクティブ表示機能
通常、三次元画像の表示には平行投影(「オーソグラフィック表示」ともいう)が用いられる。各部の寸法比率が正確に描画されるからである。パースペクティブ表示は、三次元画像を透視投影で表した、遠近感を出す表現方法の一つである。
【0090】
図9Aに示す形態では、機能選択用アイコンの1つとして、三次元画像を透視投影で表すパースペクティブアングルアイコン540を有する。ユーザがこのパースペクティブアングルアイコン540をタップすると、画像表示制御部11は、図11Aに示すように、三次元画像表示領域100aに画角調整アイコン700を表示させる。ユーザが画角調整アイコン700をタッチしたままスライドさせると、図11Bおよび図11Cに示すように、スライド量に応じて、三次元表示領域100aに表示されている三次元画像の画角が広くなり、近い位置にある部分はより大きく、遠い位置にある部分はより小さく表示される。これによって、三次元画像の遠近感が強調される。この際、画角調整アイコン700のスライド量に応じて、画角調整アイコン700のサイズ(例えば長さ)を変化させることで、パースペクティブ表示の程度をユーザが容易に把握できる。
【0091】
三次元画像を透視投影で表すことで、内視鏡で見た画像に近い画像を表示させることができる。よって、パースペクティブ表示機能は、内視鏡手術などにおいて、撮像装置から取得した画像を内視鏡によって得られた実際の臓器の画像と対比しながら処置を進めるなど、内視鏡手術などにおいて有効に利用できる。
【0092】
(4)スプリットウィンドウ機能
医用画像処理システムは、スプリットウィンドウ機能を有することができる。その場合、図9Aに示すように、機能選択用のアイコン群は、スプリットウィンドウアイコン550を含んでいる。ユーザがスプリットウィンドウアイコン550をタップすることによって、画像表示制御部11は、スプリットウィンドウ機能を実行する。
【0093】
スプリットウィンドウ機能とは、図12Aに示すように、三次元画像表示領域100aを複数の領域101a、102aに分割し、それぞれの領域101a、102aに三次元画像を表示させる機能である。各領域101a、102aに表示された三次元画像は、各領域101a、102a上でのユーザによる所定の操作に基づく画像表示制御部11の処理によって、向き、大きさ、表示する解剖学的構造などを独立して変更することができる。スプリットウィンドウ機能は、解剖学的構造を異なる同時に異なる向きから確認する場合に有効に利用することができる。
【0094】
図12Aに示した形態では、三次元画像表示領域100aを左右に分割しているが、上下に分割してもよい。また、スプリットウィンドウアイコン550がタップされる都度、左右への分割、上下への分割および分割なしが切り替えられてもよい。さらに、三次元画像表示領域100aの分割数は3つ以上であってもよい。
【0095】
(5)シーン保存機能
医用画像処理システムは、シーン保存機能を有することができる。その場合、図9Aに示すように、機能選択用のアイコン群は、シーン保存アイコン570aおよび570bを含んでいる。ユーザがシーン保存アイコン570aまたは570bをタップすることによって、画像処理制御部11は、シーン保存機能を実行する。
【0096】
シーン保存機能とは、現在表示されている画像を医用画像処理システムに保存する機能、具体的には、現在表示されている画像について、向き、大きさ、位置および表示する対象といった、表示に必要な各種データを含むデータセットを、データ格納部12に新たに格納する機能である。三次元画像表示領域100a上のシーン保存アイコン570aがタップされることによって、そのときに三次元画像表示領域100a上に表示されている三次元画像のデータセットがデータ格納部12(図1参照)に格納され、二次元画像表示領域100b上のシーン保存アイオン570bがタップされることによって、その時に二次元画像表示領域100b上に表示されている二次元画像のデータセットがデータ格納部12に格納される。
【0097】
保存された画像は、サムネイル580として適宜位置、例えば、三次元画像は三次元画像表示領域100a、二次元画像は二次元画像表示領域100bに表示されることができる。ユーザが所望のサムネイル580をタップすると、画像処理制御部11は、対応するデータセットをデータ格納部12から読み出し、三次元画像表示領域100aまたは二次元画像表示領域100bに、三次元画像または二次元画像として表紙させる。これにより、この医用画像処理システムによる作業を中断した後、改めて作業を続行するよいな場合、中断前の画像に迅速にアクセスすることができる。
【0098】
ここでは、三次元画像表示領域100a用のシーン保存アイコン570aおよび二次元画像表示領域100b用のシーン保存アイコン570bの両方を有する場合について説明したが、いずれか一方のみであってもよい。
【0099】
(6)オブジェクトの非表示および非表示オブジェクトの再表示
医用画像処理システムは、オブジェクトの非表示機能を有することもできる。この場合、非常時とされたオブジェクトを再表示させる機能をさらに有することもできる。オブジェクトは、解剖学的構造であってよい。
【0100】
例えば、図13Aに示す状態において、ユーザが、三次元画像表示領域100aに表示されている、複数のオブジェクトを含む三次元画像のうち任意のオブジェクト(肝臓の実質臓器)800をタップすることによって選択すると、図13Bに示すように、選択されたオブジェクト800は半透明で表示される。また、前述したように、選択されたオブジェクト800に対応する二次元画像のサムネイル400が表示されてもよい。選択されたオブジェクト800がもう一度タップされると、オブジェクト800の表示は半透明から元の表示、言い換えると透過率がゼロである非透過表示に戻される。このように、本形態では、オブジェクト800が選択される都度、オブジェクト800の表示が半透明表示と非透過表示とに切り替えられる。
【0101】
オブジェクト800の半透明表示は、透過度が異なる複数の半透明表示を含むことができる。この場合、オブジェクト800の半透明表示の切り替えは、ユーザがオブジェクト800をタップする都度、次第に透過度が増していくように切り替えられることが好ましい。
【0102】
オブジェクト800が選択されると、図13Bに示すように、選択されたオブジェクト800に対する追加の処理の選択用のアイコン群850がさらに表示されるようにすることもできる。追加の処理としては、例えば、選択したオブジェクトの非表示を含むことができる。この場合、アイコン群850は、非表示アイコン851を含むことができる。
【0103】
オブジェクト800が選択された状態でユーザが非表示アイコン851をタップすると、図13Cに示すように、選択されていたオブジェクト800は非表示とされ、他のオブジェクト801、802、803(例えば、肝動脈、肝静脈および門脈)のみが表示される。
【0104】
図13Cに示した状態で、ユーザが別のオブジェクト(肝動脈)801をタップすることによって選択すると、図13Dに示すように、そのオブジェクト801が半透明で表示され、さらに、前述したのと同様、アイコン群850が表示される。ここでさらにユーザが非表示アイコン851をタップすると、図13Dに示すように、選択されていたオブジェクト801は非表示とされ、他のオブジェクト802、803のみが表示される。
【0105】
ここでは、最初のオブジェクト800を非表示とした後に次のオブジェクト801を選択した場合について説明したが、最初のオブジェクト800を選択して半透明で表示された状態(図13B)で次のオブジェクト801を選択することもできる。この場合は、最初のオブジェクト800が半透明表示とされたまま次のオブジェクト801も半透明表示とされる。また、オブジェクト800、801、802、803を選択したときの初期設定は、半透明表示である必要はなく、非表示であってもよい。例えば、図13Aに示した状態においてオブジェクト800を選択すると、図13Cに示すように、選択されたオブジェクト800が非表示とされてもよい。この場合、追加の処理用の非表示アイコン851は不要である。
【0106】
非表示とされたオブジェクトを再度表示させたい場合がある。しかしこの場合、表示させたいオブジェクトが画面上に存在していないので、オブジェクトを選択することができない。
【0107】
そこで、医用画像処理システムは、非表示とされたオブジェクトを再表示させる機能を有することができる。再表示の機能は、例えば、メニューボタンアイコン500aから呼び出すことができる。図9Aに示したように、メニューボタンアイコン500aをタップすることによって表示される機能選択用のアイコンは、再表示アイコン510を含むことができる。ただし、非表示とされたオブジェクトが存在しない場合、再表示アイコン510は、機能呼び出しアイコンの他のアイコン(520~550)とは異なる色および/またはサイズで、言い換えると非アクティブな状態で表示される。非表示とされたオブジェクトが存在する場合、図13Fに示すように、再表示アイコン510は、機能呼び出しアイコン群の他のアイコンと同じ色およびサイズで、言い換えるとアクティブな状態で表示される。
【0108】
アクティブな再表示アイコン510をユーザがタップすると、図13Gに示すように、非表示オブジェクトバー910が表示される。非表示オブジェクトバー910上には、非表示とされたオブジェクトが表示される。非表示とされたオブジェクトの表示形式は、リスト形式など任意であってよいが、ユーザが直感的に把握できるように、非表示とされたオブジェクトを表す画像のサムネイルを表示させることが好ましい。一形態では、図13Gに示すように、サムネイル901、902が表示される。これらのサムネイルのうち、ユーザが再表示させたいオブジェクトのサムネイルをタップすると、タップしたサムネイルに対応するオブジェクトが三次元画像表示領域100a上に再表示される。非表示オブジェクトバー910は、非表示オブジェクトの有無にかかわらず常時表示されてもよいし、非表示オブジェクトが存在する場合にはユーザからの入力を介することなく自動的に表示されるようにしてもよい。この場合、再表示アイコン510は不要である。
【0109】
(7)血管支配領域計算機能
三次元画像が実質臓器のオブジェクトおよび血管のオブジェクトを含んでいれば、その実質臓器の血管支配領域(血管が枝において複数の血管部分に分割されている場合は、分割された血管部分ごとの支配領域)を計算することができる。医用画像処理システムは、この血管支配領域計算機能を有することができる。血管支配領域の計算には、ボロノイ法など公知の方法を用いることができる。
【0110】
例えば図13Bに示すように、追加の処理の選択用のアイコン群850が分割アイコン852を含み、ユーザが分割アイコン852をタップするすることによって、画像処理制御部11が血管支配領域計算機能を実行するようにすることができる。図13Bに示す状態では、血管のオブジェクトとして、オブジェクト(動脈)801、オブジェクト(静脈)802およびオブジェクト(門脈)803を有しており、オブジェクト800(肝臓の実質臓器)800が選択されている。この状態でユーザが分割アイコン852をタップすると、画像処理制御部11が血管支配領域を計算し、オブジェクト(肝臓の実質臓器)800を血管のオブジェクト801、802、803の支配領域ごとに視覚的に区別できるように、帯ジェクト(肝臓の実質臓器)800の表示を変更する。血管支配領域の計算が終了すると、図14Aに示すように、計算結果950が表示される。
【0111】
また、分割された実質臓器を再結合して表示させるため、例えば図13Bに示すように、追加の処理の選択用のアイコン群850が結合アイコン853を含み、ユーザが結合アイコン853をタップすることによって、画像処理制御部11が、分割された実質臓器を再結合する処理を実行するようにすることができる。
【0112】
以上、補助画像処理部11cが行う処理をメインに、画像表示制御部11が行ういくつかの処理について説明したが、上述した各処理は単独で行うこともできるし、任意の2つ以上を組み合わせて行うこともできる。
【0113】
また、本発明は、上述した形態に限られるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で適宜変更することができる。その変更例について以下に説明する。
【0114】
(データ格納部に格納されるデータセット)
データ格納部12に格納されるデータセットは、撮像装置23によって撮像された複数のスライス画像データからなる二次元画像データセットであってもよい。この場合、表示処理部11bは、格納されている二次元画像データセットを用いて、二次元画像200を作成し、また、上述した適宜のレンダリング処理を行って三次元画像300を作成することができる。
【0115】
(第二画像)
三次元画像とは形式が異なる第二画像としては、二次元画像に限られない。本発明で利用可能な第二画像は、実際の手術中のビデオ画像であってもよい。三次元画像は、手術の対象である臓器を含んでおり、このように手術中のビデオ画像と同時に、その臓器を含む三次元画像を表示させることで、三次元画像と実際の画像を見比べながら処置を進めていくことができる。ビデオ画像は、データ入出力インターフェース15を介して画像表示制御部11に取り込まれ、三次元画像300とともに表示デバイス13に表示させることができる。三次元画像300およびビデオ画像は表示デバイス13上での表示サイズが一致するように、必要に応じて一方または両者の表示サイズが拡大または縮小されることが好ましい。表示サイズの変更は、入力デバイス14を介しての操作者による入力によることもできるし、ビデオ画像が座標情報を含んでいれば、三次元画像の座標情報と一致するように、画像表示制御部11による処理によって自動的に表示サイズが変更されるようにすることもできる。
【0116】
また、第二画像の他の例として、人工心臓弁やステントなどの人工的な移植片や、手術中に使用する各種器具の二次元または三次元の画像が挙げられる。これら人工的な移植片や器具は、通常はCADデータに基づいて製造されるためCADデータが存在している。CADデータは、寸法に関する情報を含んでいるので、表示処理部11bが、この情報をボリュームデータセット等の座標情報と関連付けたうえで、ボリュームデータセットに基づいて作成された三次元画像と、CADデータに基づいて作成された画像とを互いに等しいサイズで表示デバイス1に表示させ、かつ、一方の画像に対する表示の向きや大きさの変更を他方の画像に連動して表示させることができる。これにより、人工的な移植片や器具が患者に適合するものであるかを術前にシミュレーションすることができる。CADデータは、データ格納部12に格納されていてもよいし、データ入出力インターフェース15を通じて外部から入手してもよい。また、ボリュームデータセット等に基づく三次元画像とCADデータに基づく画像とは、並べて表示させてもよいし、重ねて表示させてもよい。
【0117】
(表示デバイス上での2つの表示領域の配置)
上述した形態では、表示デバイス13の画面を左右に分け、左側を第1表示領域、右側を第2表示領域とした場合について説明した。しかし、第1表示領域と第2表示領域の配置は左右逆であってもよい。また、入力デバイス14を介しての操作者による入力によって、左右を任意に切り替えられるようにしてもよい。
【0118】
さらに、医用画像処理システム1が可搬型の医用画像処理端末10である場合、医用画像処理端末10は向きを任意に変更できるので、例えば、医用画像処理端末10が横向きの場合は第1表示領域と第1表示領域を左右に配置し、医用画像処理端末10が縦向きの場合は第1表示領域と第2表示領域を上下に配置するなど、医用画像処理端末10の向きに応じて各表示領域の配置を変更するようにしてもよい。各表示領域の配置の向きの変更は、操作者による入力デバイス14を通じた入力によるものであってもよいし、医用画像処理端末10の向きを加速度センサ等の適宜センサで検出し、その検出結果に基づいて自動的に切り替わるようにしてもよい。
【0119】
(三次元画像の表示における解剖学的構造の透過率)
三次元画像300においては、表示される解剖学的構造の数および/または表示の重要性に応じて半透明で表示させてもよい。この場合、透過率は、データセットが持つファイルごとに設定されていてもよいし、操作者が入力デバイス14からの入力を通じて任意に設定できるようにされていてもよい。また、解剖学的構造ごとに複数段階で透過率を設定することも可能である。
【0120】
さらに、動脈系血管および静脈系血管が画面の奥行方向に少なくとも部分的に重なって表示される場合、複雑な形状の解剖学的構造が他の解剖学的構造と画面の奥行方向に少なくとも部分的に重なって表示される場合、あるいは多くの解剖学的構造が画面の奥行方向に少なくとも部分的に重なて表示される場合などでは、重なって表示される複数の解剖学的構造がいずれも半透明で表示されると、解剖学的構造の前後関係が把握しにくいことがある。このような場合は、半透明で表示されている解剖学的構造の奥に少なくとも部分的に重なって表示される解剖学的構造については、手前の解剖学的構造と重なっている部分を表示させないようにしてもよい。こうすることによって、半透明で表示されている解剖学的構造同士の前後関係を容易に把握することができる。この処理は、表示処理部11bによって行うことができる。
【0121】
(データセットの時相)
撮像装置23によってボリュームデータセットといったデータセットを取得する場合、造影剤を被験者に注入し、造影剤による造影効果を利用する場合が多い。この場合、造影剤の注入から各血管に到達するまでの時間の相違に起因して、造影効果が現れる時間は、解剖学的構造の種類などによって異なることがある。例えば、通常、静脈は動脈より遅れて造影効果が現れる。よって、複数の解剖学的構造についてボリュームデータセットを取得する方法として、主に以下に示す2つの方法がある。
【0122】
第1の方法は、造影剤を注入して時刻t1後に撮像装置23により撮像動作を行い、それによって得られたデータに対して、時刻t1における標準的な造影効果値、例えばCT値に基づいて解剖学的構造の種類を判断する方法である。この場合、解剖学的構造ごとに分けられ、それぞれ同時刻に取得された複数のボリュームデータが作られる。
【0123】
第2の方法は、造影剤を注入して時刻t1において撮像装置23により撮像動作を行い、例えば動脈系血管についてのボリュームデータを取得し、その後の時刻t2において再度撮像装置23により撮像動作を行い、例えば静脈系血管についてのボリュームデータを取得する方法である。この場合、解剖学的構造ごとに分けられ、それぞれ異なる時刻で取得された複数のボリュームデータが作られる。
【0124】
本発明では、いずれの方法で得られたボリュームデータでも利用でき、それぞれ解剖学的構造ごとに分けられたボリュームデータがまとめ合わせられてボリュームデータセットが構成される。
【0125】
ただし、第1の方法で得られたボリュームデータセットは、解剖学的構造ごとに造影効果値が異なるため、造影効果値が低い解剖学的構造については鮮明な画像が得られないことがある。また、第2の方法でられたボリュームデータセットは、解剖学的構造ごとに異なる時刻で取得されたデータであるため、時刻の違いに起因する被験者の呼吸や解剖学的構造の位置の変化などにより、解剖学的構造ごとの位置関係にずれが生じることがある。
【0126】
これらの不具合を解消するため、1回の撮像動作で複数の解剖学的構造について適切な造影効果が得られるような注入方法で造影剤を注入して得られたデータセットを用いることが好ましい。そこで、造影剤の注入フェーズを、目的とする複数の解剖学的構造に対応して複数のフェーズに分け、各フェーズで注入された造影剤がそれぞれ各解剖学的構造において1回の撮像動作時間の範囲内で適切な造影効果を与えるようにフェーズのインターバルが設定された注入方法で造影剤を注入することが好ましい。これにより、各解剖学的構造が鮮明に描写され、かつ、解剖学的構造同士の位置ずれのない画像を作成できるデータセットを得ることができる。
【0127】
上記の注入方法において、造影剤の注入量は、被験者の体重等に基づいて公知の方法で求めることができる。そして、求められた注入量が各フェーズに振り分けられる。各フェーズにおける造影剤の注入速度は、一定であってもよいし、時間の経過に従って増減させてもよい。また、各フェーズで注入速度が異なってもよい。インターバル時間は、10秒~120秒の間で設定することができる。また、各フェーズ間のインターバル中および/または最後のフェーズの後に生理食塩水を注入してもよい。
【0128】
(他のデバイスへの画像の出力)
表示処理部11bは、作成した三次元画像300および二次元画像200(第二画像)の少なくとも一方を、表示デバイス13に表示させるとともに、データ入出力インターフェース15を介して他のデバイスへデータとして出力するようにすることもできる。他のデバイスへの画像の出力のために、他のデバイスは、データ入出力インターフェース15を介して画像表示制御部11と有線または無線で接続される。
【0129】
表示処理部11bが作成した画像を出力する他のデバイスの一例として、プロジェクション装置が挙げられる。図15に示すように、プロジェクション装置30は、光源31と、光源からの光により、データとして入力された画像に基づいた投影用画像を形成する画像形成処理部32と、画像形成処理部32から出射した光を投影する投影光学系33とを含むことができる。画像形成処理部32は、例えば液晶パネルなどの画像形成素子と、画像形成素子を制御するコントローラとを有することができる。プロジェクション装置30を、例えば、手術等の処置を受ける患者の身体上に画像を投影する位置に配置することで、プロジェクション装置30は、例えば医用画像処理端末10と組み合わせられて処置支援システムを構成することができる。
【0130】
このような処置支援システムでは、患者への処置に先立ち、その患者について予め取得しておいたデータセットを医用画像処理端末10のデータ格納部12に格納する。医用画像処理端末10の画像表示制御部11(具体的には表示処理部11b)は、前述した処理手順に従って、データ格納部12に格納されたデータセットから少なくとも三次元画像300を含む画像を作成する。作成された画像は、表示デバイス13に表示されるとともに、操作者の操作により、または自動でプロジェクション装置30に出力される。
【0131】
作成された画像がプロジェクション装置30に出力されると、プロジェクション装置30に出力された画像がプロジェクション装置30から患者の身体上に投影される。例えば三次元画像300がプロジェクション装置30に出力される場合、表示デバイス13に表示される三次元画像300と同じ三次元画像300が、プロジェクション装置30によって患者の身体上に投影される。操作者は、表示デバイス13に表示されている三次元画像300の、表示デバイス13上での表示サイズおよび位置を、入力デバイス14を適宜操作することによって、患者の身体上に投影された三次元画像300のサイズおよび位置が、患者の身体上の対応する部分で一致するように調整することができる。こうすることによって、患者への処置を、画像として患者の身体上に投影された解剖学的構造で確認しながら効率良く行うことができる。
【0132】
前述したように、三次元画像300においては解剖学的構造ごとに色相が設定されているが、実際の解剖学的構造の色味との関係によっては、身体上に表示された画像が見えにくい場合がある。そこで、画像表示制御部11は、表示処理部11bで作成した三次元画像300の解剖学的構造の色相を任意に設定できるように構成されることが好ましい。また、画像表示制御部11は、投影画像のサイズが確定したら、操作者の操作等によって、表示画像のサイズ変更、回転および移動のうち少なくとも1つあるいは2つ以上の任意の組み合わせをロックする機能(変更を不可とする機能)を有していてもよい。
【0133】
プロジェクション装置30は、画像を投影する対象である患者の身体の立体形状に応じて、例えば平面上に投影した場合と同じような投影画像が得られるような補正機能を有していてもよい。このような補正機能のために、例えば、いわゆる「プロジェクション・マッピング」を行うためのコンピュータプログラムを利用することができる。この場合、例えば、患者に対してグリッド(方眼)を投影し、それを解析してデータを取得し、そのデータを利用しつつ、想定される画像歪みを補正するように画像処理を行い、それにより患者の身体の立体形状に影響されずに画像が得られる。
【0134】
(実寸表示機能)
三次元画像300の基となるデータセットがボリュームデータセットである場合、そのボリュームデータセットが持つ座標情報から各ボクセルの実際の寸法を求めることができる。一方、表示デバイス13は、表示される画像のサイズを表示デバイス13の画素ピッチに応じて適宜変更することで、画像を実寸で表示させることができる。したがって、ボリュームデータセットの1ボクセル当たりの実際の寸法を求め、求められた1ボクセル当たりの実際の寸法と表示デバイス13の画素ピッチとを対応させることで、表示デバイス13に画像を実寸大で表示させることができる。上記の実寸表示処理は、表示処理部11bによって行うことができる。また、画像表示制御部11は、実寸表示処理の実行後、操作者の操作等によって、表示画像のサイズ変更、回転および移動のうち少なくとも1つあるいは2つ以上の任意の組み合わせをロックする機能(変更を不可とする機能)を有していてもよい。
【0135】
表示デバイス13への画像の実寸表示は、操作者による操作によって行うことができる。操作者による操作のために、表示処理部11bは、実寸表示を実行させるための実寸表示用アイコンを表示デバイス13に表示させ、このアイコンを操作者がタップすることにより、上記の実寸表示処理を実行するようにすることができる。
【0136】
実寸表示処理に用いる画素ピッチは、表示デバイス13の仕様として定められている値を用いることができる。あるいは、表示デバイス13の画面サイズおよび縦横の画素数から画素ピッチを計算することもできる。
【0137】
以上のように、表示デバイス13上に画像を実寸大で表示させることで、例えば、患者に人工心臓弁を移植する処置の準備段階において、表示デバイス13に患者の心臓付近のの断面画像を実寸大で表示させた状態で、移植する人工心臓弁(またはその実物体モデル)を、表示デバイス13に表示された画像上に置き、その人工心臓弁が患者に適合するサイズであるか等を確認するのに利用することができる。
【0138】
(付記)
以上、本発明について説明したが、本明細書は以下に記載された発明を開示する。ただし、本明細書の開示事項は以下の発明に限定されない。
【0139】
[1] 画像を表示する表示デバイスと、
操作者による入力を受け付ける入力デバイスと、
複数の解剖学的構造についての立体的配置を表す三次元画像を作成可能な少なくとも1つのデータセットを格納するデータ格納部と、
前記入力デバイスによって受け付けられた入力に従って前記表示デバイスへの前記画像の表示を制御する画像表示制御部と、
を有し、
前記画像表示制御部は、
前記データセットから少なくとも前記三次元画像を作成する処理と、
作成した前記三次元画像、および前記三次元画像とは形式が異なるが前記三次元画像と関連付けられた第二画像を前記表示デバイスに同時に表示させる処理と、
前記入力デバイスによって受け付けられた入力に応じて、または前記入力とは無関係に、前記三次元画像および前記第二画像の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成し、前記補助画像を前記三次元画像および前記第二画像の他方に表示させる処理と、
を行うように構成されている医用画像処理システム。
【0140】
[2] 前記第二画像は、前記複数の解剖学的構造の断面を表す二次元画像である[1]に記載の医用画像処理システム。
【0141】
[3] 前記三次元画像は、前記解剖学的構造ごとに設定された複数のレイヤーで構成され、
前記情報は、前記複数のレイヤーを示す情報である複数のレイヤー情報を含み、
前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、
前記三次元画像を前記レイヤーごとに異なる色相で表示させる処理と、
前記複数のレイヤーのうち少なくとも1つのレイヤーについて、前記二次元画像が表す断面に対応する断面での前記三次元画像の断面画像を、前記補助画像として、前記三次元画像で表示された色と同じ色相で作成する処理と、
前記断面画像を前記二次元画像上に重ね合わせる処理と、
を行なうように構成されている[2]に記載の医用画像処理システム。
【0142】
[4] 前記複数の解剖学的構造は、動脈系血管および静脈系血管を含み、
前記画像表示制御部は、前記断面画像を作成する処理において、前記動脈系血管として設定されたレイヤーおよび前記静脈系血管として設定されたレイヤーについて前記断面画像を作成する処理を行うように構成されている[3]に記載の医用画像処理システム。
【0143】
[5] 前記情報は、前記三次元画像および前記二次元画像に共通の座標情報を含む、[2]から[4]のいずれかに記載の医用画像処理システム。
【0144】
[6] 前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、前記二次元画像上の任意の座標が前記入力デバイスから入力されると、表示されている前記二次元画像が表す断面に対応する平面画像を、前記補助画像として、前記三次元画像上の前記入力された前記座標を通る位置に表示させる処理を含む処理を行う[5]に記載の医用画像処理システム。
【0145】
[7] 前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、前記二次元画像上の任意の座標が前記入力デバイスから入力されると、表示されている前記二次元画像が表す断面での前記解剖学的構造の輪郭部を他の部分と異なる色相で表したハイライト輪郭画像を、前記補助画像として、前記三次元画像上に表示させる処理を含む処理を行う[5]または[6]に記載の医用画像処理システム。
【0146】
[8] 前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、前記二次元画像上の任意の座標が前記入力デバイスから入力されると、前記三次元画像の、入力された前記座標に対応する位置に、前記補助画像としてカーソルを表示させる処理を含む処理を行う[5]から[7]のいずれかに記載の医用画像処理システム。
【0147】
[9] 前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、前記三次元画像の前記解剖学的構造上の任意の座標が前記入力デバイスから入力されると、入力された前記座標に一致する前記座標情報を持つ前記二次元画像のサムネイルを、前記補助画像として前記二次元画像および前記三次元画像とは別に前記表示デバイスに表示させる処理を含む処理を行う[5]に記載の医用画像処理システム。
【0148】
[10] 前記画像表示制御部は、前記補助画像を表示させる処理において、前記サムネイルを承認する意味を表す入力が前記入力デバイスから入力されると、前記サムネイルを拡大表示させる処理をさらに行う[9]に記載の医用画像処理システム。
【0149】
[11] 前記画像表示制御部は、前記入力デバイスからの入力によって前記三次元画像上の前記解剖学的構造の1つが指定されると、指定された前記解剖学的構造を半透明で表示する処理をさらに行うように構成されている[1]から[10]のいずれかに記載の医用画像処理システム。
【0150】
[12] 前記画像表示制御部は、前記入力デバイスからの入力に応じて、前記三次元画像が表示される三次元画像表示領域および前記第二画像が表示される第二画像表示領域のサイズを変更する処理をさらに行うように構成されている[1]から[10]のいずれかに記載の医用画像処理システム。
【0151】
[13]
前記画像表示制御部は、前記サイズ変更処理において、
前記三次元画像表示領域と前記第二画像表示領域との間にサイズ変更用アイコンを表示させる処理と、
前記入力デバイスからの入力に応じて前記サイズ変更用アイコンの表示位置を変更する処理と、
前記サイズ変更用アイコンの表示位置に従って前記三次元画像表示領域および前記第二画像表示領域のサイズを変更する処理を行う[12]に記載の医用画像処理システム。
【0152】
[14] 画像を表示する表示デバイスと、操作者による入力を受け付ける入力デバイスと、複数の解剖学的構造についての立体的配置を表す三次元画像を作成可能な少なくとも1つのデータセットを格納するデータ格納部と、を用いる医用画像処理方法であって、
前記データセットから前記三次元画像を作成することと、
作成した前記三次元画像、および前記三次元画像とは形式が異なるが前記三次元画像と関連付けられた第二画像を前記表示デバイスに同時に表示させることと、
前記入力デバイスによって受け付けられた入力に応じて、または前記入力とは無関係に、前記三次元画像および前記第二画像の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成し、前記補助画像を前記三次元画像および前記第二画像の他方に表示させることと、
を含む医用画像処理方法。
【0153】
[15] データ格納部に格納された、複数の解剖学的構造についての立体的配置を表す三次元画像を作成可能な少なくとも1つのデータセットから作成された少なくとも前記三次元画像を表示デバイスに表示させる処理をコンピュータに実行させる医用画像処理プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記データセットから前記三次元画像を作成させる処理と、
作成した前記三次元画像、および前記三次元画像とは形式が異なるが前記三次元画像と関連付けられた第二画像を前記表示デバイスに同時に表示させる処理と、
前記三次元画像および前記第二画像の少なくとも一方に含まれる情報から補助画像を作成させ、前記補助画像を前記三次元画像および前記第二画像の他方に表示させる処理と、
を実行させる医用画像処理プログラム。
【0154】
[16] [15]に記載の医用画像処理プログラムを記憶している、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【符号の説明】
【0155】
1 医用画像処理システム
10 医用画像処理端末
11 画像表示制御部
11a 入力判定部
11b 表示処理部
11c 補助画像処理部
12 データ格納部
13 表示デバイス
14 入力デバイス
15 データ入出力インターフェース
21 医用情報管理装置
22 薬液注入装置
23 撮像装置
100a 三次元画像表示領域
100b 二次元画像表示領域
200 二次元画像
300 三次元画像
400 サムネイル
図1
図2
図3
図4
図5
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図6A
図7
図8A
図8B
図9
図9A
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図14A
図15