(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】中空構造体及び中空構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/20 20060101AFI20231128BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B32B3/20
B32B27/20 Z
(21)【出願番号】P 2019133991
(22)【出願日】2019-07-19
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柴垣 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】翠尾 典
(72)【発明者】
【氏名】木村 空
【審査官】馳平 憲一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-301073(JP,A)
【文献】特開2015-120288(JP,A)
【文献】特開2013-163351(JP,A)
【文献】国際公開第2012/118030(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 49/00-49/46;
49/58-49/68;
49/72-51/28;
51/42;
51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数のセルが並設された中空構造体であって、
前記複数のセルが並設されるコア層と、
前記コア層の
上面の表面に配置される
上側スキン層と、
前記コア層の下面の表面に配置される下側スキン層と、
前記コア層及び前記
上側スキン層の間で前記コア層と前記
上側スキン層とを溶着する
上側樹脂層と、
前記コア層及び前記下側スキン層の間で前記コア層と前記下側スキン層とを溶着する下側樹脂層とを備え、
前記コア層
、前記上側スキン層及び前記下側スキン層のうち少なくとも
前記上側スキン層及び前記下側スキン層は、無機材料と樹脂材料とが配合されることで構成されているとともに、配合される無機材料の質量比率が
50%以上に設定され
、
前記上側樹脂層の厚さと前記下側樹脂層の厚さとは、厚みの差が40%以下に設定され、
前記コア層は、厚み方向に立設されて前記セルを区画する側壁部と、前記側壁部の上端縁に設けられた上壁部と、前記側壁部の下端縁に設けられた下壁部とを備え、
前記側壁部は、隣接する一方の前記セルを構成する第1側壁部と、隣接する他方の前記セルを構成する第2側壁部とを有し、
前記側壁部は、前記第1側壁部と前記第2側壁部とが溶着されない非溶着部を有し、
前記上壁部及び前記下壁部には、セルの断面形状である正六角形の最も長い対角線となる位置に開口部が形成されている中空構造体。
【請求項2】
内部に複数のセルが並設された
請求項1に記載の中空構造体の製造方法であって、
配合される無機材料の質量比率が配合される樹脂材料の配合比率よりも高く設定されている中間層と、前記中間層の上下面の少なくとも一方の表面に接着されるとともに樹脂材料によって構成されている表面層とを有する平坦シート材を成形するシート成形工程と、
前記平坦シート材から所定の凹凸形状を有する凹凸シート材を成形する工程を含むコア層成形工程と、
配合される無機材料の質量比率が配合される樹脂材料の配合比率よりも高く設定されている中間層と、前記中間層の上下面の少なくとも一方の表面に接着されるとともに樹脂材料によって構成されている表面層とを有する平坦シート材を成形する工程を含むスキン層成形工程と、
前記コア層成形工程によって成形されたコア層の表面に形成された表面層と前記スキン層成形工程によって成形されたスキン層の表面に形成された表面層とを熱溶着することで、前記コア層と前記スキン層とを溶着する溶着工程とを備える中空構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体及び中空構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に多角柱状又は円柱状をなす複数のセルが並設される板状の樹脂構造体が知られている。例えば、特許文献1の樹脂構造体は、円柱状のセルが並設されるコア層としての芯材板の表面にスキン層としての積層板が溶着されている。特許文献1では、コア層及びスキン層を構成する材料として、樹脂材料にタルク等のフィラーを含有させたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コア層とスキン層とは、コア層及びスキン層を構成する樹脂材料が熱溶着することによって互いに溶着されている。樹脂材料に対して含有されるフィラーの量を多くすると、コア層とスキン層とが溶着しにくくなる。本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、コア層及びスキン層のうち少なくともスキン層として樹脂材料に無機材料を含有するものを採用する中空構造体において、コア層とスキン層との間の溶着性能を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する中空構造体は、内部に複数のセルが並設された中空構造体であって、前記複数のセルが並設されるコア層と、前記コア層の上下面の少なくとも一方の表面に配置されるスキン層と、前記コア層及び前記スキン層の間で前記コア層と前記スキン層とを溶着する樹脂層とを備え、前記コア層及び前記スキン層のうち少なくともスキン層は、無機材料と樹脂材料とが配合されることで構成されているとともに、配合される無機材料の質量比率が25%よりも大きく設定されている。
【0006】
上記構成では、コア層及びスキン層のうち少なくともスキン層は無機材料を質量比率で25%よりも多く含むことから、コア層とスキン層とを直接溶着することはしにくい。この点、コア層及びスキン層の間に樹脂層が介在することによって、コア層とスキン層との間の溶着を樹脂層によって担うことができる。したがって、コア層とスキン層とを溶着する際には、樹脂層を熱することでコア層とスキン層とを溶着することができる。このため、コア層及びスキン層の間に樹脂層が介在しない場合と比べて、樹脂層を介してコア層とスキン層との溶着性能を高めることができる。
【0007】
上記の中空構造体において、前記コア層及び前記スキン層のうち少なくともスキン層は、配合される無機材料の質量比率が50%以上に設定されている。
無機材料の質量比率を高くすると曲げ剛性が高くなる等の特長があるものの溶着性能が低下する等の課題があり、樹脂材料の質量比率を高くすると溶着性能が高くなる等の特長があるものの曲げ剛性が低くなる等の課題がある。上記構成によれば、コア層及びスキン層に配合される材料の質量比率を最適なものに設定することでコア層及びスキン層の曲げ剛性を高めることができ、かつ樹脂層によってコア層とスキン層との溶着性能を高めることができる。
【0008】
上記の中空構造体において、前記コア層は、厚み方向に立設されて前記セルを区画する側壁部と、前記側壁部の上端縁に設けられた上壁部と、前記側壁部の下端縁に設けられた下壁部とを備え、前記側壁部は、隣接する一方の前記セルを構成する第1側壁部と、隣接する他方の前記セルを構成する第2側壁部とを有し、前記側壁部は、前記第1側壁部と前記第2側壁部とが溶着されない非溶着部を有していることが好ましい。
【0009】
上記構成では、側壁部に第1側壁部と第2側壁部とが溶着されない非溶着部が設けられているため、中空構造体の上下面の一方の面に衝撃が加わった場合に、第1側壁部と第2側壁部との間にずれが生じやすい。第1側壁部と第2側壁部との間のずれによって、中空構造体の衝撃吸収性を高めることができて、中空構造体の耐衝撃性を高めることができる。
【0010】
上記課題を解決する中空構造体の製造方法は、内部に複数のセルが並設された中空構造体の製造方法であって、配合される無機材料の質量比率が配合される樹脂材料の配合比率よりも高く設定されている中間層と、前記中間層の上下面の少なくとも一方の表面に接着されるとともに樹脂材料によって構成されている表面層とを有する平坦シート材を成形するシート成形工程と、前記平坦シート材から所定の凹凸形状を有する凹凸シート材を成形する工程を含むコア層成形工程と、配合される無機材料の質量比率が配合される樹脂材料の配合比率よりも高く設定されている中間層と、前記中間層の上下面の少なくとも一方の表面に接着されるとともに樹脂材料によって構成されている表面層とを有する平坦シート材を成形する工程を含むスキン層成形工程と、前記コア層成形工程によって成形されたコア層の表面に形成された表面層と前記スキン層成形工程によって成形されたスキン層の表面に形成された表面層とを熱溶着することで、前記コア層と前記スキン層とを溶着する溶着工程とを備える。
【0011】
上記方法によれば、シート成形工程において、樹脂材料によって構成されている表面層を有する平坦シート材を成形し、コア層成形工程において、平坦シート材からコア層を成形している。また、スキン層成形工程において、表面層を有する平坦シート材からスキン層を成形している。そして、溶着工程において、コア層の表面に形成された表面層とスキン層の表面に形成された表面層とを熱溶着することで、表面層を介してコア層とスキン層とを溶着することができる。このため、コア層及びスキン層の間を表面層によって溶着しない場合と比べて、コア層とスキン層との溶着性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の中空構造体及び中空構造体の製造方法によれば、コア層及びスキン層のうち少なくともスキン層として樹脂材料に無機材料を含有するものを採用する中空構造体において、コア層とスキン層との間の溶着性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図6】(a)は中空構造体のコア層を構成する凹凸シート材の斜視図、(b)は凹凸シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は凹凸シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
中空構造体の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の中空構造体1は、内部に複数のセルSが並設されたコア層2と、コア層2の上面に溶着されたシート状の上側スキン層3と、コア層2の下面に溶着されたシート状の下側スキン層4とを備えた板状部材として構成されている。
【0015】
コア層2は、所定の凹凸形状を有する後述の凹凸シート材100を折り畳んで形成されている。当該凹凸シート材100は、後述の平坦シート材200に所定の凹凸形状を形成することによって成形されている。また、上側スキン層3及び下側スキン層4は、後述の平坦シート材200が用いられている。
【0016】
コア層2、上側スキン層3、及び下側スキン層4は、配合される無機材料の質量比率が25%よりも大きく設定されており、40%以上に設定することが好ましく、50%~80%に設定することがより好ましい。また、コア層2、上側スキン層3、及び下側スキン層4は、配合される樹脂材料の質量比率が75%以下に設定されており、60%未満に設定することが好ましく、50%未満に設定することがより好ましい。すなわち、コア層2、上側スキン層3、及び下側スキン層4では、配合される無機材料の質量比率と配合される樹脂材料の質量比率とが25:75の場合よりも無機材料の質量比率を大きく設定している。
【0017】
コア層2、上側スキン層3、及び下側スキン層4を成形するために用いられる平坦シート材200について説明する。
図2に示すように、平坦シート材200は、3層構造をなしている。平坦シート材200は、中間層201と、中間層201の上面に溶着された上側表面層202と、中間層201の下面に溶着された下側表面層203とにより構成されている。
【0018】
中間層201は、無機材料と樹脂材料とが所定配合比率で配合されることによって構成されている。本実施形態では、中間層201を構成する無機材料として炭酸カルシウムが用いられている。中間層201を構成する無機材料の真比重は、2.3~3.0に設定されている。具体的には、本実施形態の無機材料として用いられる炭酸カルシウムの真比重は、2.4~2.7である。中間層201を構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂が用いられている。本実施形態では、中間層201を構成する熱可塑性樹脂の中でもポリプロピレン樹脂が用いられている。
【0019】
中間層201は、配合される無機材料の質量比率が40%以上に設定されており、50%以上に設定されることが好ましい。このため、本実施形態では、中間層201に配合される無機材料の質量比率が55~60%に設定されている。すなわち、本実施形態では、中間層201は、配合される無機材料の質量比率が配合される樹脂材料の質量比率よりも高く設定されている。また、中間層201は、配合される樹脂材料の質量比率が60%未満に設定されており、50%未満に設定されることが好ましい。本実施形態では、中間層201に配合される樹脂材料の質量比率を40~45%に設定されている。すなわち、中間層201は、配合される無機材料の質量比率と配合される樹脂材料の質量比率とが55:45~60:40の間に設定されることがより好ましい。なお、コア層2、上側スキン層3、及び下側スキン層4に配合される無機材料の質量比率が40%以上に設定される場合、コア層2と各スキン層との間の溶着強度を十分確保することができない溶着性能となることが想定される。コア層2、上側スキン層3、及び下側スキン層4に配合される無機材料の質量比率が25%よりも大きく設定されている場合、コア層2と各スキン層との溶着性能が不足しつつあることが想定される。また、中間層201の厚さは、0.1~1.0mmであることが好ましい。
【0020】
上側表面層202及び下側表面層203は、樹脂材料によって構成されている。上側表面層202及び下側表面層203を構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂が用いられている。本実施形態では、上側表面層202及び下側表面層203を構成する熱可塑性樹脂の中でもポリプロピレン樹脂が用いられている。なお、中間層201、上側表面層202、及び下側表面層203を構成する熱可塑性樹脂は、いずれも同一の材質であることが好ましい。上側表面層202及び下側表面層203は、配合される樹脂材料の質量比率を100%に近付けることが好ましいが、接着性を高めるために他の材料を含有してもよい。また、上側表面層202及び下側表面層203に、他の材料として耐侯性を高める耐侯剤を含有してもよい。また、本実施形態では、上側表面層202及び下側表面層203は、単一の樹脂材料によって構成されたが、接着性を高めるために他の樹脂材料を含有してもよい。また、上側表面層202及び下側表面層203の厚さは、それぞれ0.01~1.0mmであることが好ましい。
【0021】
図1、
図3、及び
図4に示すように、コア層2の内部には、中空構造体1の厚み方向Tに直交する方向に並設されるように複数のセルSが区画形成されている。中空構造体1の厚み方向Tとは、上下方向であって、コア層2、上側スキン層3、及び下側スキン層4の各層が積層される積層方向である。セルSには、第1セルS1及び第1セルS1と構成の異なる第2セルS2が存在する。コア層2は、厚み方向Tに立設されて複数のセルSを区画する側壁部21と、側壁部21の上端縁に設けられた上壁部22と、側壁部21の下端縁に設けられた下壁部23とを備えている。これら側壁部21、上壁部22、及び下壁部23によって、コア層2の内部に六角柱状のセルSが区画形成されている。
図3に示すように、第1セルS1は、厚み方向Tに直交する方向が側壁部21によって閉塞され、その上端が2層構造の上壁部22によって閉塞され、その下端が1層構造の下壁部23によって閉塞されている。この2層構造の上壁部22は、互いに熱溶着されている。また、
図4に示すように、第2セルS2は、厚み方向Tに直交する方向が側壁部21によって閉塞され、その上端が1層構造の上壁部22によって閉塞され、その下端が2層構造の下壁部23によって閉塞されている。この2層構造の下壁部23は、互いに熱溶着されている。第1セルS1同士の間は、2層構造の側壁部21によって区画されている。側壁部21は、隣接する一方の第1セルS1を構成する第1側壁部21a及び隣接する他方の第1セルS1を構成する第2側壁部21bを有している。また、第2セルS2同士の間は、2層構造の側壁部21によって区画されている。側壁部21は、隣接する一方の第2セルS2を構成する第3側壁部21e及び隣接する他方の第2セルS2を構成する第4側壁部21fを有している。
【0022】
図3及び
図4に示すように、側壁部21と上壁部22との境界部分は、微視的には、直線状に上方へ延びる側壁部21から湾曲しながら上壁部22に繋がった状態となっている。すなわち、側壁部21と上壁部22との境界部分は、湾曲形状をなしている。また、側壁部21と下壁部23との境界部分についても同様に、湾曲形状をなしている。
【0023】
図3の部分拡大図に示すように、第1セルS1同士を区画する側壁部21は、第1側壁部21a及び第2側壁部21bが厚み方向Tと直交する方向において熱溶着されている部分である溶着部21cと、第1側壁部21a及び第2側壁部21bが厚み方向Tと直交する方向において熱溶着されていない部分である非溶着部21dとを有している。非溶着部21dは、厚み方向Tにおける側壁部21の中央部に設けられている。溶着部21cは、厚み方向Tにおける側壁部21の上端部及び下端部に設けられている。
【0024】
図4の部分拡大図に示すように、第2セルS2同士を区画する側壁部21は、第3側壁部21e及び第4側壁部21fが厚み方向Tと直交する方向において熱溶着されている部分である溶着部21gと、第3側壁部21e及び第4側壁部21fが厚み方向Tと直交する方向において熱溶着されていない部分である非溶着部21hとを有している。非溶着部21hは、厚み方向Tにおける側壁部21の中央部に設けられている。溶着部21gは、厚み方向Tにおける側壁部21の上端部及び下端部に設けられている。なお、
図3及び
図4以外の図では、側壁部21、上壁部22、及び下壁部23の2層構造を省略して簡略的に図示している。
【0025】
図1に示すように、第1セルS1は、X方向に沿って列をなすように並設されている。また、第2セルS2は、X方向に沿って列をなすように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において、交互に隣接配置されている。これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層2は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0026】
図3及び
図4に示すように、このように形成されたコア層2は、その上下面が樹脂層5を介して上側スキン層3及び下側スキン層4に溶着されている。樹脂層5は、コア層2及び上側スキン層3の間に介在される上側樹脂層5aと、コア層2及び下側スキン層4の間に介在される下側樹脂層5bとを有している。上側樹脂層5aの厚さと下側樹脂層5bの厚さとは差があり、これらの厚みの差は40%以下に設定されており、20%以下に設定されることが好ましい。コア層2の上壁部22に上側樹脂層5aを介して上側スキン層3が溶着し、コア層2の下壁部23に下側樹脂層5bを介して下側スキン層4が溶着することで中空構造体1が形成されている。
【0027】
図3に示すように、第1側壁部21a及び第2側壁部21bは、それぞれ平坦シート材200によって構成されている。第1側壁部21aでは、第1セルS1の内部空間に露出する側に上側表面層202が位置し、第2側壁部21bに対向する側に下側表面層203が位置している。また、第2側壁部21bでは、第1セルS1の内部空間に露出する側に上側表面層202が位置し、第1側壁部21aに対向する側に下側表面層203が位置している。第1側壁部21a側の下側表面層203と第2側壁部21b側の下側表面層203との間で、溶着部21c及び非溶着部21dが形成されている。
【0028】
2層構造の上壁部22は、第1上壁部22a、第2上壁部22b、及び第3上壁部22cによって構成されている。第1上壁部22aの下方に第2上壁部22b及び第3上壁部22cが配置されている。第2上壁部22b及び第3上壁部22cは、厚み方向Tと直交する方向において並んで配置されている。第1上壁部22aの一端は第2上壁部22bの一端に接続され、第2上壁部22bの他端は第1側壁部21aの上端に接続されている。第1上壁部22aの他端は第3上壁部22cの他端に接続され、第3上壁部22cの一端は第2側壁部21bの上端に接続されている。第1上壁部22a、第2上壁部22b、及び第3上壁部22cは、平坦シート材200によって構成されている。第1上壁部22aでは、上面に上側表面層202が位置し、下面に下側表面層203が位置している。第2上壁部22b及び第3上壁部22cは、上面に下側表面層203が位置し、下面に上側表面層202が位置している。ただし、第1上壁部22aの上面に位置している上側表面層202については、コア層2と上側スキン層3とが溶着される際に、熱溶着されることでコア層2と上側スキン層3とを溶着する上側樹脂層5aとして機能する。
【0029】
1層構造の下壁部23では、上面に上側表面層202が位置し、下面に下側表面層203が位置している。ただし、下壁部23の下面に位置している下側表面層203については、コア層2と下側スキン層4とが溶着される際に、コア層2と下側スキン層4とを熱によって溶着する下側樹脂層5bとして機能する。
【0030】
図4に示すように、第3側壁部21e及び第4側壁部21fは、それぞれ平坦シート材200によって構成されている。第3側壁部21eでは、第2セルS2に露出する側に下側表面層203が位置し、第4側壁部21fに対向する側に上側表面層202が位置している。また、第4側壁部21fでは、第2セルS2に露出する側に下側表面層203が位置し、第3側壁部21eに対向する側に上側表面層202が位置している。第3側壁部21e側の上側表面層202と第4側壁部21f側の上側表面層202との間で、溶着部21g及び非溶着部21hが形成されている。
【0031】
1層構造の上壁部22では、上面に上側表面層202が位置し、下面に下側表面層203が位置している。ただし、上壁部22の上面に位置している上側表面層202については、コア層2と上側スキン層3とが溶着される際に、熱溶着されることでコア層2と上側スキン層3とを溶着する上側樹脂層5aとして機能する。
【0032】
2層構造の下壁部23は、第1下壁部23a、第2下壁部23b、及び第3下壁部23cによって構成されている。第1下壁部23aの上方に第2下壁部23b及び第3下壁部23cが配置されている。第2下壁部23b及び第3下壁部23cは、厚み方向Tと直交する方向において並んで配置されている。第1下壁部23aの一端は第2下壁部23bの一端に接続され、第2下壁部23bの他端は第1側壁部21aの下端に接続されている。第1下壁部23aの他端は第3下壁部23cの他端に接続され、第3下壁部23cの一端は第2側壁部21bの下端に接続されている。第1下壁部23a、第2下壁部23b、及び第3下壁部23cは、平坦シート材200によって構成されている。第1下壁部23aでは、上面に上側表面層202が位置し、下面に下側表面層203が位置している。第2下壁部23b及び第3下壁部23cは、上面に下側表面層203が位置し、下面に上側表面層202が位置している。第1下壁部23a、第2下壁部23b、及び第3下壁部23cでは、厚み方向Tと直交する方向における面に下側表面層203が位置している。ただし、第1下壁部23aの下面に位置している下側表面層203については、コア層2と下側スキン層4とが溶着される際に、熱溶着されることでコア層2と下側スキン層4とを溶着する下側樹脂層5bとして機能する。
【0033】
図3~
図5に示すように、コア層2の上壁部22及び下壁部23には、セルSの断面形状である正六角形の最も長い対角線となる位置に、上壁部22及び下壁部23を二分するような略紡錘形状の開口部24が形成されている。開口部24は、第1セルS1では上壁部22のみに形成されており、第2セルS2では下壁部23のみに形成されている。つまり開口部24は、各セルSにおいて、2層構造の上壁部22及び下壁部23のみに形成されている。
【0034】
上側スキン層3は、平坦シート材200によって構成されている。上側スキン層3では、上面に上側表面層202が位置し、下面に下側表面層203が位置している。ただし、上側スキン層3の下面に位置している下側表面層203については、コア層2と上側スキン層3とが溶着される際に、熱溶着されることでコア層2と上側スキン層3とを溶着する上側樹脂層5aとして機能する。
【0035】
下側スキン層4は、平坦シート材200によって構成されている。下側スキン層4では、上面に上側表面層202が位置し、下面に下側表面層203が位置している。ただし、下側スキン層4の上面に位置している上側表面層202については、コア層2と下側スキン層4とが溶着される際に、熱溶着されることでコア層2と下側スキン層4とを溶着する下側樹脂層5bとして機能する。
【0036】
コア層2は、コア層2を構成する平坦シート材200のうち、上側樹脂層5aとして機能する上側表面層202及び下側樹脂層5bとして機能する下側表面層203を除いた部分である。上側スキン層3は、上側スキン層3を構成する平坦シート材200のうち、上側樹脂層5aとして機能する下側表面層203を除いた部分である。下側スキン層4は、下側スキン層4を構成する平坦シート材200のうち、下側樹脂層5bとして機能する上側表面層202を除いた部分である。
【0037】
中空構造体1の製造方法について説明する。ここでは、凹凸シート材100を折り畳み成形してコア層2とするコア層成形工程を中心に説明する。なお、凹凸シート材100は、平坦シート材200に所定の凹凸形状を形成したものであることから、平坦シート材200と同様に、3層構造をなしている。ただし、以下では、説明を簡略化するために、凹凸シート材100が3層構造をなしている旨の説明を割愛する。
【0038】
平坦シート材200を成形するシート成形工程を実行する。
図2に示すように、シート成形工程では、配合される無機材料の質量比率が配合される樹脂材料の質量比率よりも高く設定されている中間層201と、上側表面層202及び下側表面層203とを有する平坦シート材200を成形する。シート成形工程では、中間層201の上面に上側表面層202を接着し、中間層201の下面に下側表面層203を接着することにより、平坦シート材200を成形する。
【0039】
コア層2を成形するコア層成形工程を実行する。コア層成形工程は、凹凸シート成形工程と、折り畳み工程とを含んでいる。凹凸シート成形工程では、平坦シート材200から所定の凹凸形状を有する凹凸シート材100を成形する。折り畳み工程では、凹凸シート成形工程において成形された凹凸シート材100を折り畳むことによりコア層2を成形する。
【0040】
図6(a)に示すように、凹凸シート成形工程において、凹凸シート材100は、平坦シート材200に所定の凹凸形状に形成することにより成形される。凹凸シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120がその幅方向であるX方向に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向であるY方向の全体に亘って形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅である上面の短手方向の長さは平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さである側面の短手方向の長さの2倍の長さとなるように設定されている。
【0041】
膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0042】
こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、凹凸シート成形工程において、凹凸シート材100の塑性を利用して凹凸シート材100を部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、凹凸シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって平坦シート材200から成形することができる。なお、凹凸シート材100が成形された場合において、上側表面層202の厚さと下側表面層203の厚さとの厚みの差は20%以下であることが好ましい。この厚みの差は、真空成形において、真空引きによる変形量が大きい部分と小さい部分があることによって生じる。例えば、平坦シート材200の下面を真空引きすることで凹凸シート材100を成形する場合、1層構造の上壁部22は真空引きによる変形量が小さい部分にあたり、2層構造の下壁部23は真空引きによる変形量が大きい部分にあたることから、下壁部23の肉厚は上壁部22の肉厚よりも厚く設定されている。例えば、平坦シート材200の下面を真空引きすることで凹凸シート材100を成形する場合、1層構造の下壁部23は真空引きによる変形量が小さい部分にあたり、2層構造の上壁部22は真空引きによる変形量が大きい部分にあたることから、上壁部22の肉厚は下壁部23の肉厚よりも厚く設定されている。開口部24の孔の大きさは、コア層2の成形時の加熱温度、コア層2の熱収縮、平坦シート成形工程における平坦シート材200の延伸状態、凹凸シート成形工程における真空成形による凹凸シート材100の延伸状態等により決定される。コア層2の熱収縮は、凹凸シート成形工程や真空成形によって凹凸シート材100の厚みが薄くなっているほど大きくなり、また、平坦シート材200及び凹凸シート材100の延伸が大きいほど大きくなる。
【0043】
図6(a)及び
図6(b)に示すように、折り畳み工程において、上述のように構成された凹凸シート材100を加熱して軟化させる。そして、折り畳み工程において、その凹凸シート材100を境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層2が成形される。具体的には、凹凸シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより板状のコア層2が形成される。
【0044】
第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部21となる。このようにして得られたコア層2は、厚み方向Tにおける両側から加熱される。これにより、第1セルS1を構成する2層構造の上壁部22及び第2セルS2を構成する2層構造の下壁部23が熱溶着される。また、2層構造の側壁部21の上端部同士及び下端部同士が熱溶着される。この加熱処理により、コア層2の折り畳み構造が固定される。側壁部21の上端部及び下端部のうちいずれか一方の肉厚は、側壁部21の上端部及び下端部のうちいずれか他方の肉厚よりも厚い。例えば、平坦シート材200の下面を真空引きすることで凹凸シート材100を成形する場合、第1セルS1及び第2セルS2を構成する側壁部21では、上端部の肉厚は下端部の肉厚よりも厚い。また、例えば、平坦シート材200の上面を真空引きすることで凹凸シート材100を成形する場合、第1セルS1及び第2セルS2を構成する側壁部21では、下端部の肉厚は上端部の肉厚よりも厚い。側壁部21の端部のうち肉厚が厚い端部では、樹脂量が多い。このことから、側壁部21の上端部同士及び下端部同士のうち、肉厚が厚い端部同士は、肉厚が薄い端部同士よりも溶着強度が高くなる。また、コア層2の上壁部22を構成する第1膨出部121及びコア層2の下壁部23を構成する平面領域110のうちいずれか一方の肉厚は、コア層2の上壁部22を構成する第1膨出部121及びコア層2の下壁部23を構成する平面領域110のうちいずれか他方の肉厚よりも厚い。例えば、平坦シート材200の下面を真空引きすることで凹凸シート材100を成形する場合、コア層2の上壁部22を構成する第1膨出部121の肉厚はコア層2の下壁部23を構成する平面領域110の肉厚よりも厚い。この場合、上壁部22における六角柱状のセルSを構成する部分は、下壁部23における六角柱状のセルSを構成する部分よりも、正六角形状に近い形状をなしている。また、例えば、平坦シート材200の上面を真空引きすることで凹凸シート材100を成形する場合、コア層2の下壁部23を構成する平面領域110の肉厚はコア層2の上壁部22を構成する第1膨出部121の肉厚よりも厚い。この場合、下壁部23における六角柱状のセルSを構成する部分は、上壁部22における六角柱状のセルSを構成する部分よりも、正六角形状に近い形状をなしている。また、側壁部21の上端部同士及び下端部同士のうちいずれか一方の端部同士の溶着強度は、側壁部21の上端部同士及び下端部同士のうちいずれか他方の端部同士の溶着強度よりも高く設定されている。すなわち、コア層2の上壁部22を構成する第1膨出部121の肉厚がコア層2の下壁部23を構成する平面領域110の肉厚よりも厚い場合には、側壁部21の上端部同士の溶着強度は側壁部21の下端部同士の溶着強度よりも高い。また、コア層2の下壁部23を構成する平面領域110の肉厚がコア層2の上壁部22を構成する第1膨出部121の肉厚よりも厚い場合には、側壁部21の下端部同士の溶着強度は側壁部21の上端部同士の溶着強度よりも高い。
【0045】
上側スキン層3及び下側スキン層4を成形するスキン層成形工程を実行する。本実施形態では、上側スキン層3及び下側スキン層4として平坦シート材200を用いている。このため、本実施形態のスキン層成形工程は、シート成形工程と同一内容である。
【0046】
コア層2と上側スキン層3及び下側スキン層4とを溶着する溶着工程を実行する。コア層2の上面と上側スキン層3の下面との間は、上側樹脂層5aが熱溶着することにより溶着される。また、コア層2の下面と下側スキン層4との間は、下側樹脂層5bが熱溶着することにより溶着される。これにより、中空構造体1が製造される。また、上側スキン層3をコア層2に熱溶着する際には、第1セルS1における2層構造の上壁部22も再度熱溶着される。同様に、第2セルS2における2層構造の下壁部23も再度熱溶着される。コア層2の上壁部22を構成する第1膨出部121及びコア層2の下壁部23を構成する平面領域110のうちいずれか一方の肉厚は、コア層2の上壁部22を構成する第1膨出部121及びコア層2の下壁部23を構成する平面領域110のうちいずれか他方の肉厚よりも厚い。コア層2の第1膨出部121及び下壁部23の平面領域110のうち肉厚が厚い部分では、樹脂量が多い。このことから、中空構造体1の上面あるいは下面のうち、第1膨出部121の肉厚が厚い面の方が第1膨出部121の肉厚が薄い面よりも平滑面になりやすい。
【0047】
本実施形態の作用について説明する。
コア層2、上側スキン層3、下側スキン層4は、樹脂材料よりも無機材料を多く含む中間層201を有することから、コア層2の中間層201と上側スキン層3の中間層201との間、及びコア層2の中間層201と下側スキン層4の中間層201との間が直接溶着することはしにくい。この点、コア層2及び上側スキン層3の間に上側樹脂層5aが介在することによって、コア層2と上側スキン層3との間の溶着を上側樹脂層5aによって担うことができる。また、コア層2及び下側スキン層4の間に下側樹脂層5bが介在することによって、コア層2と下側スキン層4との間の溶着を下側樹脂層5bによって担うことができる。したがって、コア層2と上側スキン層3とを溶着する際には上側樹脂層5aが熱溶着することでコア層2と上側スキン層3とを溶着することができるとともに、コア層2と下側スキン層4とを溶着する際には下側樹脂層5bが熱溶着することでコア層2と下側スキン層4とを溶着することができる。
【0048】
本実施形態の効果について説明する。
(1)コア層2及びスキン層の間に樹脂層が介在しない場合と比べて、樹脂層を介してコア層2とスキン層との溶着性能を高めることができる。
【0049】
(2)無機材料の質量比率を高くすると曲げ剛性が高くなる等の特長があるものの溶着性能が低下する等の課題があり、樹脂材料の質量比率を高くすると溶着性能が高くなる等の特長があるものの曲げ剛性が低くなる等の課題がある。本実施形態によれば、コア層2及び各スキン層に配合される材料の質量比率を最適なものに設定することでコア層2及び各スキン層の曲げ剛性を高めることができ、かつ樹脂層5によってコア層2と各スキン層との溶着性能を高めることができる。
【0050】
(3)第1セルS1では、側壁部21は、第1側壁部21aと第2側壁部21bとが溶着されない非溶着部21dを有している。また、第2セルS2では、側壁部21は、第3側壁部21eと第4側壁部21fとが溶着されない非溶着部21hを有している。これにより、中空構造体1の上面側に衝撃が加わったときに、第1側壁部21a及び第2側壁部21bの間にずれが生じやすくなるとともに、第3側壁部21e及び第4側壁部21fの間にずれが生じやすくなる。これらのずれによって、側壁部21に非溶着部21d及び非溶着部21hが設けられていない場合と比べて、中空構造体1の衝撃吸収性を高めることができて、中空構造体1の耐衝撃性を高めることができる。
【0051】
(4)シート成形工程において、樹脂材料によって構成されている上側表面層202及び下側表面層203を有する平坦シート材200を成形し、コア層成形工程において、平坦シート材200からコア層2を成形している。また、スキン層成形工程において、平坦シート材200から上側スキン層3及び下側スキン層4を成形している。そして、溶着工程において、コア層2の上面に形成された上側表面層202と上側スキン層3の下面に形成された下側表面層203とにより構成される上側樹脂層5a、及びコア層2の下面に形成された下側表面層203と下側スキン層4の上面に形成された上側表面層202とにより構成される下側樹脂層5bを熱溶着することで、各樹脂層を介してコア層2と各スキン層とを溶着することができる。このため、コア層2と各スキン層との間を各樹脂層によって溶着しない場合と比べて、コア層2と各スキン層との溶着性能を高めることができる。
【0052】
(5)上側樹脂層5a及び下側樹脂層5bの厚みが厚いほどコア層2と各スキン層との間の溶着性能は高まる一方、これらの厚みが薄いほどコア層2と各スキン層との間の溶着性能は低くなる。これは、上側樹脂層5a及び下側樹脂層5bの厚みが薄いほど、コア層2と各スキン層との間の接着を担う樹脂材料が少なくなるため、コア層2と各スキン層との溶着強度が低下することが原因の一つである。凹凸シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等を行うことによって成形されることから、上側表面層202の厚さと下側表面層203の厚さとに差が生じやすい。例えば、真空成形法を用いる場合、凹凸シート材100のうち真空引きによって引っ張られる表面層は厚さが薄くなり、引っ張られていない表面層は厚さが維持される。上側樹脂層5a及び下側樹脂層5bは、これらの表面層を含んで構成されていることから、上側樹脂層5aの厚みと下側樹脂層5bの厚みとの厚みの差が生じるおそれがある。これにより、コア層2及び上側スキン層3の間の溶着性能と、コア層2及び下側スキン層4の間の溶着性能とがばらつくおそれがある。
【0053】
この点、本実施形態では、真空引きの際の真空度、凹凸シート材100の凹凸形状、各表面層の材質等を調整すること等によって、上側樹脂層5aの厚みと下側樹脂層5bの厚みとの厚みの差を20%以下に抑えている。このことから、コア層2及び上側スキン層3の間の溶着性能とコア層2及び下側スキン層4の間の溶着性能とがばらつくことを抑えることができる。
【0054】
(6)上側樹脂層5a及び下側樹脂層5bは、ポリプロピレン樹脂等の樹脂材料によって構成されていることから、コア層2と上側スキン層3及び下側スキン層4との剥離強度が向上し、強度に優れた中空構造体1を得ることができる。
【0055】
(7)上側スキン層3及び下側スキン層4は中空構造体1の外表面を構成しているため、中空構造体1に切断等の加工を施す際にはその応力が上側スキン層3及び下側スキン層4に直接的に作用しやすい。本実施形態では、上側スキン層3及び下側スキン層4が無機材料と樹脂材料とが所定配合比率で配合された中間層201を有することにより、中空構造体1の曲げ剛性を高めることができる。具体的には、中間層201に炭酸カルシウムを質量比率で10%添加した場合、中間層201の曲げ剛性を1.2倍に増加させることができる。
【0056】
(8)中空構造体1の外表面が樹脂材料によって構成された各表面層によって構成されていることから、中空構造体1の外表面に無機材料が露出することが抑えられている。このため、中空構造体1の外表面の溶着性を高めることができる。
【0057】
(9)上側樹脂層5a及び下側樹脂層5bを形成することによって、各シート材を成形する際のロールに、平坦シート材200や凹凸シート材100等が当接したとしても、中間層201から無機材料に由来する粉末が飛散することを抑制できる。また、上側樹脂層5a及び下側樹脂層5bを形成することによって、各シート材を成形する際のロールに対して平坦シート材200や凹凸シート材100等が滑ることを抑制できる。
【0058】
(10)中間層201は、樹脂材料よりも比重の大きい無機材料が含まれる分、樹脂材料のみで構成した場合よりも、その質量は重くなる。このため、コア層2の重力方向上側に上側スキン層3を溶着し、コア層2の重力方向下側に下側スキン層4を溶着した場合、コア層2と下側スキン層4との間の溶着強度を、コア層2と上側スキン層3との間の溶着強度よりも高くすることができる。
【0059】
(11)上側スキン層3及び下側スキン層4は中空構造体1の外表面を構成しているため、コア層2の上下面の形状が異なっていても、中空構造体1の上面の曲げ強度及び剥離強度等の物性と、中空構造体1の下面の曲げ強度及び剥離強度等の物性との差を少なくできる。中空構造体1の物性には、表面に位置する上側スキン層3及び下側スキン層4の物性が最も影響するためである。
【0060】
(12)リサイクル法では、プラスチック等の容器包装物の製造業者に対して、容器包装廃棄物をリサイクルする義務が課せられている。製造業者が容器包装廃棄物をリサイクルする義務を履行する手段の一つに、日本容器包装リサイクル協会に対してリサイクルのための委託金を支払うという手段がある。分離するのが困難な複数の材料でできている容器包装物については、容器包装物を構成する材料のうち、重量ベースで最も比率が高い材料の分類で廃棄することが定められている。この点、本実施形態では、コア層2、上側スキン層3、及び下側スキン層4は、それぞれ配合される無機材料の質量比率が配合される樹脂材料の質量比率よりも高く設定されている中間層201を有している。これにより、プラスチックの分類に含まれないような中空構造体1を製造することができる。このことから、当該中空構造体1を製造する製造業者がリサイクル法に基づく上記委託金を支払う義務を負うことを抑えることができる。
【0061】
上記実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・コア層2は、本実施形態のような折り畳み工程によって製造されるものに限らない。シート材を折り畳んで複数のセルが形成されるものであれば、その折り畳み態様は特に限定されない。例えば、特許第4368399号に記載されるように、断面台形状の凸部が複数列設けられた3次元構造体を順次折り畳んでいくことにより、ハニカム構造体としてのコア層2を形成してもよい。
【0062】
・コア層2は、折り畳み工程を経て形成されるものでなく、塑性を有するシート材を膨出されることによって形成してもよい。例えば、塑性を有するシート材を真空成形して、多角柱形状や円柱形状のセルが複数膨出されたような形状のものをコア層2としてもよい。あるいは、シート材を折り曲げることにより膨出領域と平面領域とが交互に形成されたものをコア層2として使用してもよい。
【0063】
・1枚の平坦シート材200を折り畳み成形してコア層2を構成するものに限らず、複数枚の平坦シート材200を使用してコア層2を構成してもよい。例えば、帯状のシートを所定間隔毎に屈曲させるとともに、湾曲・屈曲させた帯状のシートを複数向かい合わせて配置することによりコア層2を構成してもよい。さらに、セルを形成したシートを複数積み重ねてコア層2を構成してもよい。すなわち、上側スキン層3及び下側スキン層4の間において、シートによって複数のセルが区画形成できるのであれば、コア層2を構成するシートの枚数やその湾曲・屈曲の態様はどのようなものであってもよい。
【0064】
・本実施形態では、コア層2の内部に六角柱状のセルSが区画形成されていたが、セルSの形状は特に限定されるものでなく、例えば四角柱状、八角柱状等の多角柱状や円柱状としてもよい。その際、コア層2の内部には異なる形状のセルSが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくてもよく、セルとセルの間に隙間が存在していてもよい。
【0065】
・本実施形態において、上側スキン層3の上面及び下側スキン層4の下面に、さらに一または複数の層が溶着されていてもよい。例えば、中空構造体1の外面に、撥水性、遮光性、高い曲げ剛性等の特定の化学的・物理的性質を付与するための層を溶着してもよいし、所定の模様や色彩を印刷した層を溶着してもよい。上側スキン層3の上面及び下側スキン層4の下面に溶着される層は、樹脂層に限らず、紙層、木材層、金属層等、比較的薄く成形できるものであれば、どのような材料のものであってもよい。
【0066】
・本実施形態では、コア層2の上下面の両面に各スキン層を溶着したが、コア層2の上下面のうち片面にのみスキン層を溶着するようにしてもよい。
・上側スキン層3及び下側スキン層4の厚みは互いに異なっていてもよい。
【0067】
・開口部24の形状は略紡錘形状でなくてもよい。2層構造の上壁部22及び下壁部23が熱収縮して形成されたものであればその形状は特に限定されない。
・開口部24は、2層構造の上壁部22及び下壁部23が熱収縮して形成されたものでなくてもよい。コア層2が形成されたのちに、コア層2に対して連通冶具等で開口部24を形成してもよい。
【0068】
・上側樹脂層5aの厚みと下側樹脂層5bの厚みとの差は、20%を超えていてもよい。
・コア層2、各スキン層のうち少なくともスキン層が、配合される無機材料の質量比率が配合される樹脂材料の質量比率よりも高く設定されている中間層201を有していればよい。
【0069】
・上側樹脂層5aは、コア層2の上面に形成された上側表面層202と上側スキン層3の下面に形成された下側表面層203とにより構成されていたが、これに限らない。上側樹脂層5aは、コア層2の上面に形成された上側表面層202のみで構成されていてもよいし、上側スキン層3の下面に形成された下側表面層203のみで構成されていてもよい。また、下側樹脂層5bは、コア層2の下面に形成された下側表面層203と下側スキン層4の上面に形成された上側表面層202とにより構成されていたが、これに限らない。下側樹脂層5bは、コア層2の下面に形成された下側表面層203のみで構成されていてもよいし、下側スキン層4の上面に形成された上側表面層202のみで構成されていてもよい。
【0070】
・本実施形態では、中間層201、上側表面層202、及び下側表面層203を構成する樹脂材料としてポリプロピレン樹脂が用いられたが、その材料は特に限定されない。例えば、中間層201、上側表面層202、及び下側表面層203を構成する樹脂材料として、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が用いられてもよい。また、中間層201、上側表面層202、及び下側表面層203を構成する樹脂材料は、熱可塑性樹脂に限らない。
【0071】
・本実施形態では、中間層201を構成する無機材料として炭酸カルシウムが用いられたが、その材料は特に限定されない。例えば、中間層201を構成する無機材料としてタルク、マイカ、ガラス繊維、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が用いられてもよい。また、中間層201を構成する無機材料は、フィラーに限らない。なお、タルクの真比重は2.7~2.8であり、マイカの真比重は2.8~3.0であり、水酸化カルシウムの真比重は2.3~2.4であり、水酸化アルミニウムの真比重は2.3~2.4である。仮に、中間層201にタルクを質量比率で10%添加した場合、中間層201の曲げ剛性を1.3倍に増加させることができ、中間層201にタルクを質量比率で20%添加した場合、中間層201の曲げ剛性を1.7~1.8倍に増加させることができる。
【0072】
・本実施形態では、上側表面層202及び下側表面層203を構成する樹脂材料は、中間層201を構成する樹脂材料と同一の材質で構成したが、異なる材質で構成してもよい。例えば、上側表面層202及び下側表面層203を構成する樹脂材料を、中間層201を構成する樹脂材料よりも低融点の樹脂材料で構成してもよい。この場合、例えば官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等の変性ポリオレフィン系樹脂が用いられるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…中空構造体、2…コア層、3…上側スキン層、4…下側スキン層、5…樹脂層、5a…上側樹脂層、5b…下側樹脂層、21…側壁部、21a…第1側壁部、21b…第2側壁部、21c…溶着部、21d…非溶着部、21e…第3側壁部、21f…第4側壁部、21g…溶着部、21h…非溶着部、22…上壁部、22a…第1上壁部、22b…第2上壁部、22c…第3上壁部、23…下壁部、23a…第1下壁部、23b…第2下壁部、23c…第3下壁部、24…開口部、100…凹凸シート材、110…平面領域、120…膨出領域、121…第1膨出部、122…第2膨出部、130…区画体、200…平坦シート材、201…中間層、202…上側表面層、203…下側表面層、P,Q…境界線、S…セル、S1…第1セル、S2…第2セル、T…厚み方向。