(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】二重床のカバー部材
(51)【国際特許分類】
E04F 15/024 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
E04F15/024 601B
E04F15/024 601H
E04F15/024 603A
(21)【出願番号】P 2019139316
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000162135
【氏名又は名称】共同カイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】近藤 光
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴信
(72)【発明者】
【氏名】得原 湧
【審査官】小林 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-009788(JP,A)
【文献】特開平06-033578(JP,A)
【文献】特開2010-001610(JP,A)
【文献】特開平10-219981(JP,A)
【文献】実開平06-025443(JP,U)
【文献】特開2003-003655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00 - 15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持体間に略板状体のカバー部材が架け渡されて形成された二重床システムにおけるカバー部材であって、
その基面に長尺状の溝部で構成される補強部を複数有し、
前記支持体によって支持される被支持部を複数有し、
前記被支持部のうち隣り合う第1被支持部と第2被支持部とに挟まれる第1縁部と、
前記第1被支持部と、前記第2被支持部以外で前記第1被支持部と隣り合うその他の被支持部との間に挟まれる第2縁部とを有し、
前記第1縁部の略中央近傍において、頂点側が縁部側に位置し、底辺側が前記カバー部材中央側に位置するように、複数の前記補強部がデルタ状に配置されるとともに、
前記デルタ状に配置された複数の前記補強部は、各々、前記第1被支持部と前記第2被支持部とを結ぶ直線に対して略平行な方向に長尺となるように設けられていることを特徴とする二重床のカバー部材。
【請求項2】
複数の支持体間に略板状体のカバー部材が架け渡されて床面が形成され、その上面に仕上材が載置された二重床システムにおけるカバー部材であって、
その基面に長尺状の溝部または長尺状で前記仕上材が沈み込むような構造の孔部で構成される補強部を複数有し、
前記支持体によって支持される被支持部を複数有し、
前記被支持部のうち隣り合う第1被支持部と第2被支持部とに挟まれる第1縁部と、
前記第1被支持部と、前記第2被支持部以外で前記第1被支持部と隣り合うその他の被支持部との間に挟まれる第2縁部とを有し、
前記第1縁部の略中央近傍において、頂点側が縁部側に位置し、底辺側が前記カバー部材中央側に位置するように、複数の前記補強部がデルタ状に配置されるとともに、
前記デルタ状に配置された複数の前記補強部は、各々、前記第1被支持部と前記第2被支持部とを結ぶ直線に対して略平行な方向に長尺となるように設けられていることを特徴とする二重床のカバー部材。
【請求項3】
前記カバー部材は、突出部を有し、
前記突出部は、前記支持体に対して位置決め可能に設けられており、
前記突出部は、前記カバー部材の基面に垂直な方向に押し出された頂部を有し、
前記カバー部材と2箇所で一体となって前記頂部まで連続して設けられたことを特徴とする請求項
2に記載の二重床のカバー部材。
【請求項4】
二重床システムにおけるカバー部材であって、
略板状の基面と複数の支持体とを有し、
前記基面に長尺状の溝部で構成される補強部を複数有し、
前記支持体のうち隣り合う第1支持体と第2支持体とに挟まれる第1縁部と、
前記第1支持体と、前記第2支持体以外で前記第1支持体と隣り合うその他の支持体との間に挟まれる第2縁部とを有し、
前記第1縁部の略中央近傍において、頂点側が縁部側に位置し、底辺側が前記カバー部材中央側に位置するように、複数の前記補強部がデルタ状に配置されるとともに、
前記デルタ状に配置された複数の前記補強部は、各々、前記第1支持体と前記第2支持体とを結ぶ直線に対して略平行な方向に長尺となるように設けられていることを特徴とする二重床のカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重床システムおよび二重床システムのカバー部材に関し、例えば、床基体に配置した複数の支持体間にカバー部材が架け渡され、更に仕上材が載置される二重床システムおよび二重床システムのカバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、快適なオフィス空間や商業施設等々の構築に欠かせない技術として、二重床システムが広く利用されている。この二重床システムは、床基体に立脚・或いは載置した支持体と、支持体間に架け渡して配置するカバー部材とを備え、支持体及びカバー部材の上面に、仕上材が載置され利用されるようになっている。
なお、上記の二重床システムは、支持体と、支持体間に架け渡されて配置されたカバー部材により床下空間及び二重床面が構成されている。
【0003】
ところで、二重床システムは、使用状態において様々な外力にさらされるため、これらに耐え得る適切な強度を有するように設計がなされる必要がある。例えば、人の歩行をはじめとして、台車の移動、什器の設置等々、種々の要因による外力が二重床システムに加えられることが想定される。
【0004】
この強度面の要請を満たすためには、カバー部材に所定の強度を持たせる必要があるが、カバー部材に所定の強度を有する程度に厚みを持たせた鋼板を使用する方法が知られている。しかしながら、単に上記方法を採用すると鋼板の素材の使用量が多く、材料コストが高いものとなってしまう。更には、カバー部材の重量がかなりのものとなってしまうため、搬入・設置に困難があり施工コストの増大も免れない。そのため、カバー部材に使用する素材の量を低減する課題は広く知られているところであるが、これに対しては補強部を設けることで強度を増す方法が採られている。これは、構造的に強度を向上させることで、鋼板の厚さにのみに頼る必要がなくなり、より薄い鋼板でも所望の強度を得ることができるためである。
【0005】
そして、上記の強度を向上させる補強部が設けられたカバー部材を備えた二重床システムの構成が特許文献1~3に開示されている。
【0006】
特許文献1に記載の二重床システム(フリーアクセスフロア)は、方形のカバー部材(パネル部材)に大型の補強部(大きい寸法で形成された補強部)が設けられている。具体的には、カバー部材(パネル部材)は、平板部と、平板部に形成された凹状断面形状(溝状)のリブ(補強部)とを有している。上記のリブは、互いに略平行に形成される2本の第1リブと、この第1リブと略直角の方向に伸びて、互いに略平行に形成される2本の第2リブとを有し、第1リブと第2リブとが、互いに突き抜けるように交差して溝が連続している井桁状に形成された大型なものになっている(特許文献1の
図1、
図3等参照)。すなわち、特許文献1に記載のカバー部材のリブ(補強部)は、複数のリブが交差している形状になっていると共に、カバー部材の上面の外周縁部を除く全域にわたって溝が連続している大型のものになっている。
【0007】
また、特許文献2に記載の二重床システム(フリーアクセスフロア)は、角部近傍4点で支持される方形のカバー部材(配線カバー)に、対角線上に延在する2本の補強部を斜交させた×字状の補強部を設ける構成が開示されている。具体的には、カバー部材(配線カバー)は、面板部と、面板部の端縁から下方に屈曲させた立設板とを備え、面板部には、その対角線上に平面視X字状をなす凹状断面形状(溝状)の補強部(リブ)が形成されている。
【0008】
また、特許文献3に記載の二重床システム(二重床)は、カバー部材(架設床板)が、補強溝(補強部)が形成された下板と、上面(一方面)が平らな上板(シート材)とを有する構成になっている。なお、カバー部材(架設床板)は、下板の上に上板(シート材)が載置され、その周囲などの複数箇所で、熔接やかしめなどの方法で接合することにより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-223383号公報
【文献】特開平11-324288号公報
【文献】特開平10-219981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した「特許文献1及び2」に記載の二重床システムは、補強部により強度の向上が図られているものの、使用するにつれて、カバー部材に設けられた補強部の溝状の部分に仕上材が落ち込んでしまい(入り込んでしまい)、仕上材の上面に補強部と同様の溝(以下、本願においてはこの仕上材に形成される溝を「跡残り」という)が形成され、床面の見栄えが悪くなるという課題を有している。
【0011】
具体的には、特許文献1に記載のカバー部材の補強部は、複数のリブ(溝状のリブ)が交差していると共に、カバー部材の上面の外周縁部を除く全域にわたって溝が連続して形成された大きなものになっている(大型の補強部が形成されている)。この補強部の構成によれば、二重床システムが使用されたときに、このカバー部材に載置された仕上材が、補強部の溝状の部分に落ち込み易い。特に、リブの交差部分である略方形の窪みは、その対角線の長さがリブ単独の幅よりも大きなものとなることから、二重床システムが使用されることにより、視覚的に目立つ「大きな跡残り」が形成される。
また、特許文献2に記載のカバー部材の補強部は、方形のカバー部材の一辺に対して、斜め方向をなす2本のリブ(溝状のリブ)が交差した構成になっている。この構成によれば、特に角部4点で支持されるカバー部材について効果的に補強効果を得られることが知られているが、二重床システムが使用されて、カバー部材に載置された仕上材が溝状の部分に落ち込んだときに、視覚的に目立つ「斜め方向の跡残り」が形成される。
このように、特許文献1及び2に記載された補強部は、純粋に強度面の改善を目的とするものであって、これらによる跡残りは非常に目立ちやすいものとなってしまう。こういった目立ちやすい跡残りは、仕上材の美観を損ねてしまうため、外観上好ましいものとは言えない。
【0012】
一方、上述した特許文献3に記載の二重床システムは、補強溝(補強部)が形成された下板と、仕上材との間に、上面が平らな上板(シート材)が介在されることになるため、仕上材が補強部の溝に直接触れることが防止され、仕上材に跡残りが発生しない。
しかしながら、特許文献3に記載の二重床システムは、補強溝(補強部)が形成された下板を覆うシート材が増える分、当然に材料費、施工の手間の両面でコスト増を免れないため、コストダウンを目的に補強部を設けたにも関わらず逆にコストが増大してしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、強度を保ちつつカバー部材の補強部による仕上材の跡残りを目立ちにくいものとする二重床システムおよび二重床システムのカバー部材を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1態様は、複数の支持体間に略板状体のカバー部材が架け渡されて形成された二重床システムにおけるカバー部材であって、その基面に長尺状の溝部で構成される補強部を複数有し、前記支持体によって支持される被支持部を複数有し、前記被支持部のうち隣り合う第1被支持部と第2被支持部とに挟まれる第1縁部と、前記第1被支持部と、前記第2被支持部以外で前記第1被支持部と隣り合うその他の被支持部との間に挟まれる第2縁部とを有し、前記第1縁部の略中央近傍において、頂点側が縁部側に位置し、底辺側が前記カバー部材中央側に位置するように、複数の前記補強部がデルタ状に配置されるとともに、前記デルタ状に配置された複数の前記補強部は、各々、前記第1被支持部と前記第2被支持部とを結ぶ直線に対して略平行な方向に長尺となるように設けられていることを特徴とする。
また、本発明の第1態様の他の例は、複数の支持体間に略板状体のカバー部材が架け渡されて床面が形成され、その上面に仕上材が載置された二重床システムにおけるカバー部材であって、その基面に長尺状の溝部または長尺状で前記仕上材が沈み込むような構造の孔部で構成される補強部を複数有し、前記支持体によって支持される被支持部を複数有し、前記被支持部のうち隣り合う第1被支持部と第2被支持部とに挟まれる第1縁部と、前記第1被支持部と、前記第2被支持部以外で前記第1被支持部と隣り合うその他の被支持部との間に挟まれる第2縁部とを有し、前記第1縁部の略中央近傍において、頂点側が縁部側に位置し、底辺側が前記カバー部材中央側に位置するように、複数の前記補強部がデルタ状に配置されるとともに、前記デルタ状に配置された複数の前記補強部は、各々、前記第1被支持部と前記第2被支持部とを結ぶ直線に対して略平行な方向に長尺となるように設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明の第1態様の構成によれば、斜め方向の補強部や、大きい補強部によらずとも、複数の補強部によって従来の厚みの板材で十分な強度を持つ二重床システムのカバー部材を得ることができため、低コストで跡残りの目立ちにくい二重床システムのカバー部材を得ることができる。
【0022】
また、前記カバー部材は、突出部を有し、前記突出部は、前記支持体に対して位置決め可能に設けられており、前記突出部は、前記カバー部材の基面に垂直な方向に押し出された頂部を有し、前記カバー部材と2箇所で一体となって前記頂部まで連続して設けられることが望ましい。
【0023】
この構成によれば、前記突出部による孔部の跡残りも目立ちにくくなる構造となるため、二重床システムのカバー部材全体として、さらに跡残りを目立ちにくいものとすることができる。
【0024】
また、本発明の第2態様は、二重床システムにおけるカバー部材であって、略板状の基面と複数の支持体とを有し、前記基面に長尺状の溝部で構成される補強部を複数有し、前記支持体のうち隣り合う第1支持体と第2支持体とに挟まれる第1縁部と、前記第1支持体と、前記第2支持体以外で前記第1支持体と隣り合うその他の支持体との間に挟まれる第2縁部とを有し、前記第1縁部の略中央近傍において、頂点側が縁部側に位置し、底辺側が前記カバー部材中央側に位置するように、複数の前記補強部がデルタ状に配置されるとともに、前記デルタ状に配置された複数の前記補強部は、各々、前記第1支持体と前記第2支持体とを結ぶ直線に対して略平行な方向に長尺となるように設けられていることを特徴とする。
【0025】
本発明の第2態様の構成によれば、斜め方向の補強部や、大きい補強部によらずとも、複数の補強部によって従来の厚みの板材で十分な強度を持つ二重床システムのカバー部材を得ることができため、上述した第3態様と同様、低コストで跡残りの目立ちにくい二重床システムのカバー部材を得ることができる。
【0026】
また、本発明の第5様態は、略板状体の基面に複数の支持体を設けてなるカバー部材が敷き詰められて形成された二重床システムにおいて、前記カバー部材は、その基面に長尺状の溝部または孔部で構成される補強部を複数有し、前記補強部は、前記カバー部材の1辺に対して、長尺方向が略平行な第1補強部および長尺方向が略垂直な第2補強部のみで構成されるとともに、前記第1補強部及び前記第2補強部は互いに交差しないで設けられていることを特徴とする。
【0027】
本発明の第5様態の構成によれば、略板状体の基面に複数の支持体を設けてなるカバー部材を使用する場合においても、本発明の第1様態と同様の効果を有する二重床システムを得ることができる。
【0028】
また、本発明の第6様態は、略板状体の基面に複数の支持体を設けてなるカバー部材が敷き詰められて床面が形成され、その上面に仕上材が載置された二重床システムにおいて、前記カバー部材は、その基面に長尺状の溝部または孔部で構成される補強部を複数有し、複数の前記補強部は、複数の前記補強部相互が、略平行な方向および略垂直な方向に長尺であり、かつ、互いに交差しないもののみを含み、前記仕上材は、所定方向を有する視覚的パターンを有するとともに、前記所定方向が1つの前記補強部の長尺方向に対して略平行方向または略垂直方向となるように配置されることを特徴とする。
【0029】
本発明の第6様態の構成によれば、略板状体の基面に複数の支持体を設けてなるカバー部材を使用する場合においても、本発明の第2様態と同様の効果を有する二重床システムを得ることができる。
【0030】
また、本発明の第7様態は、略板状体の基面に複数の支持体を設けた二重床システムにおけるカバー部材であって、前記基面に長尺状の溝部または孔部で構成される補強部を複数有し、前記支持体によって支持される被支持部を複数有し、前記被支持部のうち隣り合う第1被支持部と第2被支持部とに挟まれる第1縁部と、前記第1被支持部と、前記第2被支持部以外で前記第1被支持部と隣り合うその他の被支持部との間に挟まれる第2縁部とを有し、前記第1縁部の略中央近傍において、頂点側が縁部側に位置し、底辺側が前記カバー部材中央側に位置するように、複数の前記補強部がデルタ状に配置されるとともに、前記デルタ状に配置された複数の前記補強部は、各々、前記第1被支持部と前記第2被支持部とを結ぶ直線に対して略平行な方向に長尺となるように設けられていることを特徴とする。
【0031】
本発明の第7様態の構成によれば、略板状体の基面に複数の支持体を設けてなるカバー部材を使用する場合においても、本発明の第3様態と同様の効果を有する二重床システムを得ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、強度を保ちつつカバー部材の補強部による仕上材の跡残りを目立ちにくいものとする二重床システムおよび二重床システムのカバー部材を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1実施形態の二重床システムの構成を示した模式図である。
【
図2】
図1におけるA-A矢視線断面を示した模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の二重床システムを構成するカバー部材を斜め上方から視た状態を示した模式図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の二重床システムを構成するカバー部材の断面を説明するための模式図であり、(a)が
図3に示すB-B矢視線断面を示した模式図であり、(b)が
図3に示すC-C矢視線断面を示した模式図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の二重床システムを構成するカバー部材の補強部の配置及びその効果を説明するための模式図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の二重床システムを構成するカバー部材の第1変形例を示した模式図である。
【
図7】本発明の第1実施形態の二重床システムを構成するカバー部材の第2変形例を示した模式図である。
【
図8】
図7に示すカバー部材の断面を説明するための模式図であり、
図7に示すD-D矢視線断面を示した模式図である。
【
図9】
図7に示すカバー部材の第2変形例の係止部を説明するための模式図であり、(a)が第2変形例の構成を説明するための対比として示した第1実施形態の係止部を示した模式図であり、(b)が第2変形例の係止部を示した模式図である。
【
図10】本発明の第2実施形態の構成を示した模式図である。
【
図11】本発明の第3実施形態の構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態(第1~第3実施形態)の二重床システム及び二重床システムを構成するカバー部材について図面に基づいて説明する。
【0035】
《第1実施形態》
先ず、本発明の第1実施形態の二重床システム及び二重床システムを構成するカバー部材について、
図1~5を参照しながら説明する。
ここで、
図1は、第1実施形態の二重床システムの構成を示した模式図であり、
図2は、
図1におけるA-A矢視線断面を示した模式図である。また、
図3は、第1実施形態の二重床システムを構成するカバー部材を斜め上方から視た状態を示した模式図である。また、
図4は、第1実施形態の二重床システムを構成するカバー部材の断面を説明するための模式図であり、(a)が
図3に示すB-B矢視線断面を示した模式図であり、(b)が
図3に示すC-C矢視線断面を示した模式図である。また、
図5は、第1実施形態の二重床システムを構成するカバー部材の補強部の配置及びその効果を説明するための模式図である。
【0036】
図1に示すように、第1実施形態の二重床システムW1は、床基体5に対して、所定寸法に形成された置き敷き式のマット体1を敷き詰めることで、マット体1に形成された複数の支持体10相互間に形成された配線空間16を隣接するマット体1同士で連通させて一体とし、一連の配線空間を形成しつつ、カバー部材2(2a、2b、2c)をこの一連の配線空間16の上方に配置して二重床面を形成するものである。また、二重床システムW1は、マット体1に設けられた支持体10の上面11と、カバー部材2の上面21とに、仕上材3が載置されて利用されるようになっている。
以下、第1実施形態の二重床システムW1の各構成について詳細に説明する。
【0037】
先ず、第1実施形態の二重床システムW1を構成するマット体1について説明する。
図1、2に示すように、マット体1は、方形のシート状の基部1a(
図1参照)を有し、基部1aの上面に、ブロック状(略直方体状)に形成された複数の支持体10が、相互間に所定の間隔(隙間)を空けて縦横に規則的に配置された状態で設けられている。また、マット体1は、隣接して配置された支持体10同士の隙間により配線空間16を形成している。
【0038】
図1に示す例では、マット体1に、3種類のサイズの支持体10(10a、10b、10c)が設けられている。具体的には、基部1aの中央部に、フルサイズの支持体10aが形成され、基部1aの4隅に、フルサイズの支持体10aの4分の1のサイズの支持体10bが4つ設けられている。また、基部1aの4つの辺縁に、フルサイズの支持体10aの2分の1のサイズの支持体10cが4つ設けられている。このように、基部1aに、複数種類のサイズの支持10を配置することにより、マット体1には、井の字状の配線空間16が形成される。
なお、マット体1は、複数の支持体10の相互間に配線空間16を形成しているが、この配線空間16には対向する支持体10相互間に形成される通路部分と、2つの通路部分が交差して形成される交差部分とが含まれている。
【0039】
そして、上記のように構成されたマット体1は、その辺縁に配線空間16の開口が形成されるため、マット体1同士を敷き詰めた状態において、隣り合うマット体1の各々の辺縁の開口が一致し、各々の配線空間16が連通して一体の配線空間となる。この一体の配線空間は、全体としてグリッド状(格子状、方眼状等のグリッド状)に形成されるため、十分な配線容量を確保できる。
【0040】
なお、
図1に示すマット体1の場合、マット体1同士を敷き詰めた場合に、フルサイズではない支持体10b、10cと、他の隣接するマット体1のフルサイズではない支持体10b、10cが一体となってフルサイズの支持体10aと略同一の形状になる。
ただし、二重床システムW1の端部(角部以外の端部)に配置されるマット体1には2分の1のサイズの支持体10cが配置され、二重床システム1の角部に配置されたマット体4には4分の1のサイズのものが配置される。また、柱等の構造物を避けてマット体1を配置する場合には、4分の3サイズの支持体(図示せず)が設けられたものが配置される。
【0041】
また、マット体1に形成された配線空間16は、その上方が、支持体10の上に載置されたカバー部材2(2a、2b、2c)により被覆されるようになっている。
また、カバー部材2(2a、2b、2c)を載置させるために、支持体10の上面11には、上面11より下方に「カバー部材2の略厚み寸法と、カバー部材2に設けられたクッション材25(
図2参照)の略厚み寸法とを加算した寸法」だけ窪んだ段差部12が形成されている。この段差部12は、支持体10の配線路空間16側において、配線空間16に沿って形成されている。
なお、カバー部材2(2a、2b、2c)は、隣接する支持体10間に架け渡されて載置した状態(載置状態)にした際に、支持体10同士の隙間により形成される配線空間16よりも幅広の寸法になるように設計されている。支持体10の段差部12に、カバー部材2(2a、2b、2c)を載置すると、支持体10の上面11と、カバー部材2(2a、2b、2c)の上面21とが面一になって二重床面が形成されるようになっている。
【0042】
そして、支持体10にカバー部材2(2a、2b、2c)を載置して面一な二重床面が形成されところに、仕上材3が載置される。
この仕上材3は、略方形の部材であり、複数枚を敷き詰めるものであって、通常は支持体10が形成するグリッドと、隣り合った仕上材3の目地が形成するグリットとが傾かない状態となるよう、仕上材3を支持体10の形成するグリッドに合わせて載置する。
【0043】
さらに、第1実施形態では、支持体10に、カバー部材2に設けられた係止部(突出部)23(
図1、
図3参照)と係合する抉り部(切り欠き部)18(
図1参照)が設けられている(係止部23については後述する)。抉り部18は、支持体10の段差部12の所定位置において、段差部12よりも下方に抉られて、凹状に凹んだ形状になっている。
この抉り部18により、支持体10の段差部12に、カバー部材2が載置された際に、抉り部18が係止部23(23a、23b、23c、23d)と係合して、カバー部材2を位置決めできると共に、カバー部材2の「位置ずれ及びガタつき」が防止される。このように、本実施形態によれば、支持体10の段差部12に、カバー部材2を載置するだけで、抉り部18にカバー部材2の係止部21が係合されて、容易に位置ズレ防止効果を発揮させることができる。
【0044】
なお、上述したマット体1の構成は、あくまでも一例に過ぎない。
例えば、マット体1における配線空間16の形状および支持体10の配置は、適宜設計されるものである。例えば、支持体10bをマット体の4隅に配置することで配線空間16を十字路のように形成してもよい。また、配線空間16の設計に関わらず、マット体1そのものを隣接させずに所定距離離間して配置することで、マット体1相互間に配線空間を形成してもよく、配線空間が形成されればどのように設計しても差し支えない。
【0045】
また、上述したマット体1では、支持体10の配線空間16沿いに連続して段差部12を設けて、これにカバー部材2(2a、2b、2c)を載置する構成としているが、非連続に段差部12を設け、かつカバー部材2(2a、2b、2c)に突出部を設け、当該突出部が各段差部12に係合するように構成されていてもよい。カバー部材2(2a、2b、2c)が支持体10から支持を受けることができれば、適宜どのような載置構成にしても差し支えない。
【0046】
また、上述したマット体1を構成する支持体10は、置き敷きタイプで、その上面11も二重床面を構成するものであるが、特にこれに限定されるものではない。例えば、カバー部材2を敷き詰めてカバー部材2のみで二重床面を形成するタイプである置き敷きタイプの二重床や、支持体がレベル調整式の脚タイプである二重床等、カバー部材2(またはカバー部材2の同様の機能を果たすカバー部材)を載置可能な構成であれば、適宜どのような構成としてもよい。
【0047】
次に、第1実施形態の二重床システムW1を構成するカバー部材2(2a、2b、2c)について説明する。
【0048】
図1に示すように、カバー部材2(2a、2b、2c)は、略方形の板状に形成されており、その一方面が支持体10の上面11と共に、床面を形成する上面21になっており、その他方面が配線空間16と相対向させる下面22(
図2参照)になっている。また、カバー部材2(2a、2b、2c)には、上面21から下面22に向けて凹んだ溝形状の長尺な補強部27(溝部で形成された補強部)が複数形成されている。複数の補強部27は、いずれも、カバー部材2(2a、2b、2c)の1辺に対して、長尺方向が略平行な方向或いは略垂直な方向に形成されている。
【0049】
また、
図2に示すように、カバー部材2(2a、2b、2c)には、裏面22の端部近傍にクッション材25が設けられている。このクッション材25は、カバー部材2と支持体10との接触部分に介在されるものであり、支持体10とカバー部材2(2a、2b、2c)の鉛直方向のズレの発生を防止する。また、クッション材25は、カバー部材2(2a、2b、2c)と支持体10との、あるいはカバー部材2a、2b、2c相互の摺動による音の発生を防止する。尚、
図2以外の図ではクッション材25は図示していない。
【0050】
なお、上記のカバー部材2a、2b、2cのうち、カバー部材2aは、
図1に示すように、マット体1に形成された配線空間16の交差した箇所(交差空間)の上方に配置されるものであり、配線空間16の交差空間近傍の4つの支持体10に架け渡される。具体的には、カバー部材2は、略方形の角部4か所が支持体10の段差部12に載置されて支持される(4つの支持体10により、カバー部材2aの全体が支持される)。
また、上記のカバー部材2a、2b、2cのうち、カバー部材2b、2cは、
図1に示すように、マット体1に形成された一の配線空間16を挟んで隣り合う2つの支持体10間に架け渡されるものである。具体的には、カバー部材2b、2cは、略方形の対向する2辺縁が支持体10に載置されて支持される(2つの支持体10によりカバー部材2b、2cの全体が支持される)。
以下、カバー部材2a、2b、2cについて順番に説明する。
【0051】
先ず、カバー部材2aについて説明する
カバー部材2aは、略方形の板状の鋼板を加工したものである。略正方形の鋼板の4辺を外方に延出させた外形であり、複数の補強部27をプレス成形により形成している(
図3参照)。
具体的には、
図3に示すように、カバー部材2aは、正方形の鋼板の4隅に、それよりも小さい正方形の切り欠きを設け、特に中心側の角部を斜辺とした形状(八角形状の鋼板の4辺を延出させた略十字形状とも言える)に形成されている。また、カバー部材2aは、上記の4隅の切り欠きの角部を斜辺とした形状箇所に、各々に係止部23a、23b、23c、23dが形成されている。
また、カバー部材2は、マット体1に形成された配線空間16の交差部分をカバーする形状(覆う形状)とすべく、略方形の形状から通路部分にも若干かかるように4つの辺縁31、32、33、34が外方に突出した形状になっている。
なお、カバー部材2aでは、辺縁31が辺縁33に対して平行方向に形成されており、且つ辺縁31が辺縁32、34に対して垂直方向に形成されている。また、カバー部材2aでは、辺縁32が辺縁34に対して平行方向に形成されており、且つ辺縁32が辺縁31、33に対して垂直方向に形成されている。
【0052】
また、上記の係止部23a、23b、23c、23dは、上述したマット体1の支持体10に設けられた抉り部18の空間に収まる程度のサイズで半錐形状にプレス成形により形成されたものであり、カバー部材2の下面22から突出している。
そして、係止部23a、23b、23c、23dがカバー部材2aの下面22側で突出しているため、カバー部材2aがマット体1に載置された状態(使用状態)において、係止部23a、23b、23c、23dが抉り部18に収まってマット体1と干渉することで、カバー部材2の水平方向へのズレを規制する。
【0053】
次に、
図5を参照しながら、カバー部材2aの補強部27の配置について、カバー部材2aにかかる荷重との関係を踏まえて説明する。
【0054】
カバー部材2aは、係止部23a、23b、23c、23dを挟むその両側部が、支持体10に支持される被支持点(被支持部)38、39、40、41になっている。カバー部材2aは、支持体10に載置されると、係止部23a、23b、23c、23dの近傍の被支持点(被支持部)38、39、40、41が、支持体10の段差部12から支持を受ける。
また、カバー部材2は、支持体10に載置されると、上記の被支持部38、39、40、41間において、辺縁31、32、33、34が架空された状態になる(即ち、カバー部材2は、支持体10に載置した状態にすると、4箇所の被支持点38、39、40、41により支持されて、辺縁31、32、33、34が架空状態となる)。
【0055】
具体的には、カバー部材2aは、支持体10に載置されると、4箇所の被支持部38、39、40、41のうち隣り合う被支持部(第1被支持部)38及び被支持部(第2被支持部)39が支持体10に支持され、被支持部38及び被支持部39に挟まれる辺縁(第1縁部)31が架空されている状態になる。
また、カバー部材2aは、支持体10に載置されると、被支持部(第1被支持部)38と、被支持部(第2被支持部)39以外で被支持部(第1被支持部)38と隣り合うその他の被支持部(第3被支持部)41とが支持体10に支持され、被支持部38及び被支持部41に挟まれる辺縁(第2縁部)34が架空されている状態になる。
また、カバー部材2aは、支持体10に載置されると、被支持部(第2被支持部)39と、被支持部(第1被支持部)38以外で被支持部(第2被支持部)39と隣り合うその他の被支持部(第4被支持部)40とが支持体10に支持され、被支持部39及び被支持部40の間に挟まれる辺縁(第3縁部)32が架空されている状態になる。
また、カバー部材2aは、支持体10に載置されると、被支持部(第3被支持部)41と、被支持部(第1被支持部)38以外で被支持部(第3被支持部)41と隣り合うその他の被支持部(第4被支持部)40とが支持体10に支持され、被支持部40及び被支持部41の間に挟まれる辺縁(第4縁部)33が架空されている状態になる。
【0056】
また、二重床システムW1は、その上面から人の歩行や什器の設置等によって荷重を受けるため、架空状態にあるカバー部材2aの辺縁31、32、33、34の中央部分(4か所の部分)及びその近傍部と、カバー部材2全体の中央部分(1箇所の部分)との計5箇所が最も強度が低い領域になる。そのため、二重床システム等の二重床製品を構成するカバー部材の強度試験においては、一般的に、カバー部材の辺縁の中央部分及びその近傍と、カバー部材全体の中央部分とが強度試験の対象とされている。
【0057】
また、二重床システムW1のカバー部材2に対する負荷で特に問題となるのは什器による負荷であり、一般的に什器のペースキャップ等の床面と接する部材の接触面積が概ね半径50mmの円と同程度の面積になっている。そのため、二重床製品においては、半径50mmの円形の押圧子により、二重床を押圧した場合に所望の強度が得られていることが重要な課題となる。
【0058】
そして、
図5に示すように、カバー部材2a全体の中央を半径50mmの押圧子で押圧すると(図中の符号129で示す円形破線が押圧子の押圧面を示している)、図中の破線で示す弧125、126、127、128のラインが最も変形し易い部分になる。すなわち、カバー部材2aの4つの辺縁を架空状態にすると、荷重の影響により、変形し易い部分として、4つの弧125、126、127、128が発生する。
なお、カバー部材2aが覆う部分の配線空間16が十字路ではなくT字路であって辺縁33が何らかの支持体によって支持される場合は2つの弧125、126の部分が大きい荷重を受けて、変形しやすい部分になる。
【0059】
この変形しやすい部分(弧125~128)は、被支持部38、39、40、41と、カバー部材2a中央の押圧点との位置関係で発生するものであり、カバー部材2aの概形が略方形以外の多角形や円形等の形状であっても発生する。
【0060】
そして、本実施形態では、上述したカバー部材2aのなかで、荷重の影響により変形し易い部分である5箇所の領域に対して、跡残りが目立ちにくくなることを考慮して、以下に示す位置に補強部27を設けるようにしている。
【0061】
具体的には、
図5に示すように、第1実施形態では、カバー部材2aのなかの辺縁31、32、33、34の中央部分の近傍の変形し易い弧125、126、127、128の部分の強度を向上させるため、カバー部材2aの辺縁31、32、33,34毎に、それぞれ、4つの補強部27(27a、27b、27c、27d)を略デルタ状に配置している。すなわち、カバー部材2aの辺縁31、32、33、34のそれぞれに対して、デルタ形状の頂点側が辺縁側に位置し、デルタ状の底辺側がカバー部材2aの中央側に位置するように、4つの補強部27がデルタ状に配置されている。
また、デルタ状に配置された補強部27(27a、27b、27c、27d)は、対応する辺縁31、32、33,34に対して、略平行な方向に長尺となるように配置されるように設けられている。
【0062】
この補強部27aを頂点とし、補強部27c、27dを底辺とした略デルタ状の配置した構成によれば、カバー部材2aの最弱部となる弧125、126、127、128の部分に対して効果的な補強効果が得られる。
そして、上記のデルタ状に配置された補強部27(27a、27b、27c、27d)の構成によれば、溝が連続している大型の補強部を設けなくても、変形し易い部分(弧125、126、127、128の部分)の強度を向上させることができ、従来の厚みの板材で十分な強度を持つ二重床システムのカバー部材2aを提供することができる。
【0063】
また、上記のデルタ状に配置された補強部27(27a、27b、27c、27d)は、特許文献1に記載の「溝が連続している大型の補強部」のような視覚的に目立つ「大きな跡残り」が形成されることがなく、跡残りを目立ちにくくなる構成になっている。
また、上記のデルタ状に配置された補強部27(27a、27b、27c、27d)は、対応する辺縁31、32、33,34に対して、略平行な方向に長尺となるように設けられているため、「斜め方向の跡残り」が形成されることがなく、跡残りを目立ちにくくする構成になっている。
【0064】
また、上記のデルタ状に形成される補強部27(27a、27b、27c、27d)は、例えば、以下に示す位置に配置することにより形成することができる。
【0065】
具体的には、カバー部材2aの辺縁31の略中心近傍に、辺縁31に対して長尺方向が平行をなす補強部27aが形成されている。この補強部27aは、長尺方向の一端側が、カバー部材2aの内側で辺縁34側にそれていく弧125に交わるように設けられている。また、補強部27aは、長尺方向の他端側が、カバー部材2の内側で辺縁32側にそれていく弧126に交わるように設けられている。
また、カバー部材2aの辺縁31の略中心近傍では、この補強部27aに対して、カバー部材2aの中心部側に所定寸法だけ離間している位置に補強部27bが形成されている。この補強部27bは、補強部27aと同様、長尺方向の一端側が、カバー部材2の内側で辺縁34側にそれていく弧125に交わるように設けられている。また、補強部27bは、補強部27aと同様、長尺方向の他端側が、カバー部材2の内側で辺縁32側にそれていく弧126に交わるように設けられている。
また、カバー部材2aの辺縁31の略中心近傍では、上記の補強部27bに対して、カバー部材2aの中心部側に所定寸法だけ離間し且つ片縁34側にスライドした位置に補強部27cが形成されている。この補強部27cは、長尺方向の中央部がカバー部材2の弧125に交わるように設けられている。
また、カバー部材2aの辺縁31の略中心近傍では、上記の補強部27bに対して、カバー部材2aの中心部側に所定寸法だけ離間し且つ片縁32側にスライドした位置に補強部27dが形成されている。この補強部27dは、長尺方向の中央部がカバー部材2の弧126に交わるように設けられている。
【0066】
なお、カバー部材2aの辺縁31の略中心近傍に設けられるデルタ状に形成される補強部27(27a、27b、27c、27d)は、いずれも、その長尺方向が、辺縁31に対して略平行に形成されている(図中のx方向に対して平行に形成されている)。
また、辺縁31の略中心近傍のデルタ状に形成される補強部27(27a、27b、27c、27d)では、補強部27a及び補強部27bは、辺縁31に沿う方向(図中のx方向)の位置が同じであり、且つ辺縁31に直交する縁辺34に沿う方向(y方向)に所定の間隔を空けて配置されている(並列に配置されている)。
また、辺縁31の略中心近傍のデルタ状に形成される補強部27(27a、27b、27c、27d)では、補強部27c及び補強部27dは、縁辺34に沿う方向(y方向)の位置が同じであり、且つ辺縁31に沿う方向(図中のx方向)に所定の間隔を空けて配置されている(直列に配置されている)。
【0067】
また、カバー部材2aの他の辺縁32、33、34の略中心近傍においても、辺縁31の略中心近傍の補強部27(27a、27b、27c、27d)と同様、変形しやすい部分である弧125~128に交わるように、複数の補強部27a、27b、27c、2dがデルタ状に配置されている。
【0068】
また、カバー部材2aは、パネル中央にも補強部27(27e、27f、27g、27h)が設けられている。これは押圧子の接触部(符号129で示す円形破線が接触部の外形円を示している)も、また弧125~128と同様に最弱の変形部となるためである。本実施形態では、カバー部材2aのパネル中央部の変形を抑制するために、押圧子の接触部の外形円(符号129で示す円形破線に示す外形円)と交差するように、複数の補強部27e、27f、27g、27hを設けている。
なお、複数の補強部27e、27f、27g、27hは、辺縁31、32、33,34に対して、略平行方向及び略垂直方向のいずれかに長尺となるように配置されている。
【0069】
なお、カバー部材2aに設けられた補強部27a、27b、27c、27d、7e、27f、27g、27hは、いずれも、その長尺方向が、辺縁31、32、33,34に対して、略平行方向及び略垂直方向のいずれかになるように形成されているが、さらに、それぞれが、互いに交差しないように配置されている。
すなわち、カバー部材2aは、上述した特許文献1に記載の発明のような「溝部の交差部分」が無いため、補強部27a、27b、27c、27d、7e、27f、27g、27hの幅よりも大きな溝部が形成されず、跡残りが目立ちにくくする構成になっている。
【0070】
次に、カバー部材2b、2cについて
図1を参照しながら説明する。
なお、カバー部材2b、2cの説明において、上述したカバー部材2aと同じ構成には同じ符号をつけて説明を省略する。
【0071】
図示するように、カバー部材2b、2cは、上述したカバー部材2aと同様、略方形の板状の鋼板を加工したものであり、略長方形状に形成されている。なお、カバー部材2cは、カバー部材2bの半分の大きさに形成されている。
【0072】
また、カバー部材2bは、短手方向の辺縁の長さ寸法(幅寸法)が、カバー部材2aの辺縁31、32、33、34の長さ寸法と同じになっており、短手方向の辺縁に対して、長尺方向が略平行になっている、複数の補強部27が形成されている。
また、カバー部材2cは、長手方向の辺縁の長さ寸法(幅寸法)が、カバー部材2aの辺縁31、32、33、34の長さ寸法と同じ長さ寸法になっており、長手方向の辺縁に対して、長尺方向が略平行になっている、複数の補強部27が形成されている。また、複数の補強部27は、それぞれが、互いに交差しないように配置されている。
【0073】
なお、本実施形態では、カバー部材2(2a、2b、2c)の補強部27が溝部により構成されている場合について述べたが特にこれに限定されるものではない。補強部27は、カバー部材2(2a、2b、2c)の強度を向上できて、仕上材3が沈み込みこむ様な構造であれば、凹み部、孔部等、どの様な構造であっても良い。
【0074】
次に、本実施形態の二重床システムW1の構成が、跡残りが目立ちにくいものになっている理由について説明する。
【0075】
第1実施形態のカバー部材2(2a、2b、2c)においても、その上面11に、溝状の補強部27が形成されているため、二重床システムW1を使用しているうちに、徐々に補強部27の溝状部分に仕上材3が沈み込んでしまい、仕上材3の上面に補強部27の形状に対応した溝状の跡残り(図示しない)が表出することがある。
この跡残りは、補強部27の溝形状に応じて形成されるため、溝の配置、概形、傾き、深さ等々、忠実にカバー部材2上の補強部27の全てが写し出される。例えば、補強部27に起因する跡残りは、当然に補強部27の幅、長さ、深さの寸法に応じたものが表出する。そのため、補強部27の長さ方向に長尺な形状となる。これは二重床システムW1で使用する全てのカバー部材2(2a、2b、2c)が原因となる現象であり、カバー部材2a、2b、2cの補強部27も仕上材3に跡残りを表出させる。
【0076】
ところで、第1実施形態の二重床システムW1では、配線空間16が所定パターンのグリッド状に形成される(
図1参照)。そのため、カバー部材2(2a、2b、2c)で配線空間16を覆った状態にすると、カバー部材2(2a、2b、2c)は、所定パターンのグリッド状に配置される。また、仕上材3は、このグリッドに沿って傾きがなるべく無いように敷き詰められる。そうすると、敷き詰められた仕上材3同士の境界である目地も、カバー部材2(2a、2b、2c)が形成するグリッドに対して傾きがない状態のグリッドを形成する。
【0077】
カバー部材2aは、その表面21に、補強を目的とした補強部27が設けられているが、全ての補強部27は、その長さ方向がカバー部材aの辺縁31、32、33、34のいずれかに対して垂直な方向か、または平行な方向となるものであり、辺縁31、32、33、34に対して斜交するものは存在しない。また、カバー部材2b、2cの補強部27についても、カバー部材2b、2cが支持体10に載置されると、カバー部材aの辺縁31、32、33、34のいずれかに対して、垂直な方向か、または平行な方向に配置され、辺縁31、32、33、34に対して斜交するものは存在しない。すなわち、カバー部材2a、2b、2cの補強部27は、上述のグリット形状に対して、斜交するものは存在しない。
そのため、カバー部材2a、2b、2cによる複数の跡残りは、仕上材3にグリッド状に表出し、かつ仕上材3の目地のグリッドに対してその長さ方向が平行な方向、或いは垂直な方向のもののみとなる。
【0078】
仮に、複数の跡残りの中に、長さ方向が仕上材3の目地のグリッドに対して斜交するものが存在する場合、仕上材3が敷き詰められた二重床システム1の全体において、斜交する跡残りが目立ち易いものであり、外観上好ましくない。これは、即ち、カバー部材2の補強部27においてその長さ方向が辺縁31、32、33、34のいずれかに平行であるもの以外のもの、または垂直であるもの以外のものが含まれる場合、仕上材3に外観上好ましくない跡残りを表出させることを意味する。
しかしながら、第1実施形態では、上述した通り、仕上材3の目地のグリッドに対してその長さ方向が平行な方向、或いは垂直な跡残りのみが形成されるため、跡残りが目立ちにくいものとなる。
【0079】
さらに、本実施形態では、仕上材3にタイルカーペットを使用している。タイルカーペットは、目(製造において必然的に発生する仕上材表面の毛の流れ)が形成されるものであり、これによって視覚的に所定の方向性が認識されるものであり、その目の方向がタイルカーペットの1辺に対して垂直かまたは平行となるように製造されるものである。
【0080】
そして、第1実施形態においては、仕上材3の目地のグリッドに対して複数の補強部27がその長さ方向が平行または垂直となる位置に配置されるため、仕上材3の目に対しても複数の補強部27がその長さ方向が平行または垂直となる様に位置する。そうすると、補強部27による仕上材3の跡残りもカーペットの目に対して、その長さ方向が並行または垂直に表出する。
なお、仮に仕上材3の目の方向に対して長さ方向が斜めの跡残りがあった場合、外観上非常に目立ち易いものとなってしまうが、第1実施形態に於いては斜めの跡残りは発生しないため、跡残りが比較的目立ちにくいものとなる。
【0081】
さらに云えば、仕上材3は、タイルカーペットの様な構造上所定の方向性、或いは模様を含んでしまうものである場合、特に顕著に斜めの跡残りが目立ち易いものとなるため、第1実施形態において跡残りの目立ちを抑制する効果が期待でき、好適である。この他、ビニルタイル、その他の仕上材3を採用した場合であっても、表面に一定の視覚的パターンが認められるものであれば跡残りを目立ちにくいものとすることができる。
なお、第1実施形態の構成によれば、上述した特許文献3に記載の発明のようなシート材を設ける必要がなく、特許文献3に記載の発明のようなコストの上昇を招くことがない。
【0082】
《カバー部材の寸法》
次に、カバー部材2の寸法の補強部27の好ましい寸法について説明する。
カバー部材2aは、1辺の長さ寸法が「147mm」、厚さ寸法が「2.3mm」である。また、第1実施形態では、仕上材3は、厚さ寸法が「6mm」のものを用いている。
【0083】
そして、カバー部材2aの補強部27は、その幅寸法(
図4(b)に示すYの寸法)が「Y≦9mm」になるように設けるとよい。このような幅寸法にするのは以下の理由による。
具体的には、市販されている、溝状のリブ等で補強部を形成しているカバー部材においては、幅寸法が10mm以上のサイズの補強部が設けられているものが一般的である。そして、一般的な、この幅寸法が10mm以上の補強部では、カバー部材が補強部の溝状部分に入り込むことで生じる跡残りが目立ちやすかった。
これに対して、本願発明者が、カバー部材2の製品開発の過程において、カバー部材2aの補強部27の幅寸法を「9mm以下」にしたものを作成してみたところ、「10mm以上」のものと比べて、補強部はあと残りが目立ちにくく、補強効果も同等に得られることが分った。
【0084】
更に、本願発明者は、カバー部材2aの製品開発の過程において、カバー部材2aの補強部27の長さ寸法(
図4(a)に示すXの寸法)を「X≦45mm」にすると、従来技術(特許文献1、特許文献2に記載の従来技術)の様なカバー部材のような略1辺の長さ程度の補強部に比して、跡残りが目立ちにくくなり、好適であることを見出だした。
なお、カバー部材2aの補強部27の深さ寸法(
図4(a)に示すZの寸法)を「Z≦2.5mm」以下の範囲にすると、好適な強度の補強部を得ることができる。これは、カバー部材2aの鋼板の厚み寸法の110%程度であり、幅、長さを上記寸法の範囲で設計する場合に好適な補強強度が得られる範囲となる。
【0085】
また、本願発明者は、カバー部材2aの製品開発において、更に好ましくは、カバー部材2aの補強部27の幅寸法を「6mm~7mm」、長さ寸法を「20mm~30mm」、深さ寸法を「1.8mm~2.2mm」の範囲にすると、跡残りを抑制しつつ所望の強度を実現することができることを確認した。
これは、仕上材3の厚みが6mmであるところ、幅寸法を7mm以下とすると跡残りが目立ちにくいものとなるためである。また、カバー部材2の幅寸法の範囲による場合、好適な強度と目立ちにくさが得られる寸法範囲が前述の長さおよび深さの寸法範囲となる。特に、第1実施形態においては幅寸法が6.5mm、長さ寸法が25mm、深さ寸法が2mmとして設けており、好適な設計となっている。
【0086】
なお、上記の補強部27の寸法は、例示に過ぎず、当然に上記の寸法範囲を参考として適宜選択すればよく、或いは、カバー部材2aを異なる面積・厚さの鋼板によって制作した場合は、上記寸法の差分・比率等を勘案して好適な範囲を選択すれば差し支えない。
また、複数の補強部27の全てを同一寸法とする必要はなく、適宜、幅、長さ、深さ、形成方法の異なる補強部を組み合わせて使用してもよい。
また、デルタ配置の補強部27が3列とする例を示しているが、適宜、2列、或いは4列以上の複数列としてもよい。
【0087】
以上説明したように、第1実施形態によれば、強度を保ちつつカバー部材2の補強部27による仕上材3の跡残りを目立ちにくいものとする二重床システムW1および二重床システムW1のカバー部材2を低コストで提供することができる。
【0088】
《第1実施形態の第1変形例》
次に、第1実施形態の第1変形例について、
図6を参照しながら説明する。
ここで、
図6は、第1実施形態の二重床システムを構成するカバー部材の第1変形例を示した模式図である。なお、第1変形例では、上述した第1実施形態と同じ構成には同じ符号をつけて、説明を省略する。
【0089】
図示する第1変形例は、第1実施形態のカバー部材2aを、カバー部材2dに変更したものであり、カバー部材2d以外の構成は、第1実施形態と同じである。また、第1変形例のカバー部材2dは、第1実施形態と、補強部27の数及び配置を変更したものであり、それ以外の構成は、第1実施形態のものと同じである。
【0090】
第1実施形態において、カバー部材の中心を押圧した場合の最弱部とデルタ配置された補強部の関係性を説明したが、第1変形例においては、カバー部材の辺縁31、32、33、34の中央に半径50mmの円形の押圧子(第1実施形態と同じもの)で押圧したときに受ける荷重による影響について説明する。
第1変形例においては、複数の補強部27(27a、27i)を設けるようにしている。
【0091】
具体的には、カバー部材2dの辺縁31の中央において、押圧子が概ねカバー部材2dの面内に含まれるような位置に配置して、押圧子を押圧する(符号129で示す円形破線が押圧子の押圧面を示している)。この場合、カバー部材2aには、図示する半円135のライン(半円ライン)、および直線137のライン(直線ライン)が最弱部として発生する。
【0092】
そして、第1変形例では、カバー部材2dの辺縁31、32、33,34毎に、それぞれ、2つの補強部27(27a、27i)を略デルタ状に配置している。すなわち、カバー部材2dでは、その辺縁31、32、33,34毎に、補強部27aを頂点とし補強部27iを底辺としたデルタ状の補強部27が形成されている。
なお、補強部27(27a、27i)は、対応する辺縁に対して、長尺方向が略平行となるように形成されている。また、補強部27iは、補強部27iよりも長尺方向の長さ寸法が大きい形状に形成されている。また、補強部27a及び補強部27iは、図中の「y方向」に所定間隔を空けて配置されている。また、補強部27iは、その長尺方向の中心が、補強部27aの長尺方向の中心と、図中の「x方向」において同じ位置になるように形成されている。
【0093】
さらに、第1変形例のカバー部材2dでは、半円135のラインに対して補強部27iが2点で斜交するとともに、直線137に対して補強部27a及び補強部27iが各々1点で直交するように、補強部27(27a、27i)が形成されている。この補強部27(27a、27i)の構成によれば、効果的に最弱部に対して変形抑制効果を与えることができる。
【0094】
そして、第1変形例では、上記のデルタ状に配置された補強部27(27a、27i)は、対応する辺縁31、32、33,34に対して、略平行な方向に長尺となるように設けられているため、「斜め方向の跡残り」が形成されることがなく、上述した第1実施形態と同様、跡残りを目立ちにくくする構成になっている。
なお、上記の補強部27a、fは、溝部により形成されていても良いし、凹み部、孔部等、どの様な構造で形成されていても良い。
また、第1実施形態のカバー部材2aにおいても、デルタ状に配置された補強部27が第1変形例で説明した効果を同様に備える。例えば、カバー部材2aにおいて辺縁31を押圧子で押圧した場合、最弱部としての直線137および半円135が同様に発生する。これに対し、補強部27a、27b、27c、27dが当該最弱部に対して、第1変形例における補強部27a、27iが発揮する補強効果を、同様に発揮するものである。
【0095】
《第1実施形態の第2変形例》
次に、第1実施形態の第2変形例について、
図7、追加図、8を参照しながら説明する。
ここで、
図7は、第1実施形態の二重床システムを構成するカバー部材の第2変形例を示した模式図である。
図8は、
図7に示す第2変形例の係止部を説明するためのD-D矢視線断面図である。
図9は、
図7に示すカバー部材の第2変形例の係止部を説明するための模式図であり、(a)が第2変形例の構成を説明するための対比として示した第1実施形態の係止部を示した模式図であり、(b)が第2変形例の係止部を示した模式図である。なお、第2変形例では、上述した第1実施形態と同じ構成には同じ符号をつけて、説明を省略する。
【0096】
図示する第2変形例は、第1実施形態のカバー部材2aを、カバー部材2eに変更すると共に、支持体10の抉り部18の形状を変更したものであり、それ以外の構成は、第1実施形態と同じである。また、第1変形例のカバー部材2eは、第1実施形態のカバー部材2aの係止部23を係止部51に変更したものであり、それ以外の構成は、第1実施形態のものと同じである。
【0097】
この係止部51(突出部)は、
図8に示すように、カバー部材2aの基面(上面21及び下面22)に対して、垂直な方向に帯状に押し出されて形成されており、カバー部材2aの基面と2箇所の屈曲部51b、51bで一体となって頂部51aまで連続して設けられている。また、図示する通り、頂部51aと下面22との間には孔部51hが形成され、アーチ状に形成されている。
なお、図示しないが、支持体10の抉り部(切り欠き部)18は、この係止部51(突出部)を受け入れて係合する形状に形成されている。
【0098】
具体的には、上述した第1実施形態では、カバー部材2aに設けられた係止部23(23a、23b、23c、23d)が半錐形状に形成されているため、上方から見た場合、
図9(a)に示されるとおり略三角形状の溝が形成される。これに比べて、第2変形例の係止部(突出部)51は、帯状に押し出された頂部51aが幅を持った状態で形成されている。
そして、第2変形例によれば、
図9(b)に示されるとおり上方から見た場合、長方形状の溝が形成されている。従って、係止部51による跡残りの方が、係止部23(23a、23b、23c、23d)による跡残りよりも幅の狭いものとなり、より目立ちにくいものとなる。
【0099】
《第2実施形態》
次に、本発明の第2実施形態の二重床システム及び二重床システムを構成するカバー部材について、
図10を参照しながら説明する。
ここで、
図10は、第2実施形態の二重床システムの構成を示した模式図である。なお、第2実施形態では、上述した第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付けて、説明を省略する。
【0100】
第2実施形態の二重床システムW2は、複数の支持体210が連結部201で連結されて所定間隔を空けて配置されたところに、複数のカバー部材220が架け渡されて敷き詰められる構成になっている。なお、支持体210には、凹状に凹んだ抉り部267が設けられている。この抉り部267には、カバー部材220の各辺縁の端部に設けられた屈曲部220Fが挿入されて係合するようになっており、また、支持体210には更に抉り部210Hが設けられており、カバー部材220の下面側の四隅部のそれぞれに突設している補強部227j、227kが挿入されて係合するようになっている。また、補強部227j、227kは位置決めの他、補強にも寄与しており、カバー部材220が支持体210から受ける支持力を受けるに当たり、接触箇所近傍で変形することなく効果的に受け止めることができるようになっている。
【0101】
また、第2実施形態のカバー部材220は、矩形の板状に形成されていると共に、上面から下面に向けて凹んだ溝状の補強部227が複数形成されている。
【0102】
具体的には、カバー部材220では、その辺縁231、232、233,234毎に、それぞれ、5つの補強部227(227a、227b、227c、227d、227e)を略デルタ状に配置している。すなわち、カバー部材220の辺縁231、232、233、234のそれぞれに対して、デルタ形状の頂点側が辺縁側に位置し、デルタ状の底辺側がカバー部材220の中央側に位置するように、5つの補強部227(227a、227b、227c、227d、227e)がデルタ状に配置されている。
なお、デルタ状に配置された補強部227(227a、227b、227c、227d、227e)は、対応する辺縁231、232、233、234に対して、略平行な方向に長尺となるように設けられている。
【0103】
また、5つの補強部227a、227b、227c、227d、227eのうち、補強部227bが長尺方向の長さ寸法が一番大きく、補強部227dが長尺方向の長さ寸法が一番小さくなるように形成されている。また、補強部227c及び補強部227eは、サイズが同じである。また、補強部227c及び補強部227eは、長尺方向の長さ寸法が、補強部227aよりも大きくなっている。すなわち、5つの補強部227a、227b、227c、227d、227eの長尺方向の長さ寸法は、「補強部227b>補強部227c=補強部227e>補強部227a>補強部227d」の関係になっている。
同様に、5つの補強部227a、227b、227c、227d、227eの幅方向の長さ寸法は、「補強部227a>補強部227b>補強部227c=補強部227d=補強部227e」の関係になっている。
【0104】
また、カバー部材220は、その四隅部に、それぞれ、補強部227j、227kが形成されている。補強部227j、227kは、カバー部材220の下面側に突設しており、支持体210の抉り部267に係合するようになっている。この補強部227j、227kは、支持体210にかかる領域と、カバー部材210の架空状態の領域にかかる領域とにまたがって設けられているため、強度アップと支持体210に対するカバー部材210の位置決めが可能となっている。
【0105】
また、カバー部材220全体の中央には、補強部227f、227g、227h、227iが設けられており、効果的に最弱部であるカバー部材220の中央部分の変形を抑止している。補強部227f、227g、227h、227iは、概ね略方形の形状を形成しているが、半径50mmの押圧子を接触させた場合、その境界と補強部227f、227g、227h、227iの各々が斜交して効果的に変形を抑止する。
【0106】
また、第2実施形態の補強部227a~227kは、いずれも、カバー部材220の1辺(辺縁231、232、233,234のいずれか1辺)に対して、略平行な方向或いは略垂直な方向に、長尺方向が配置されている。また、複数の補強部227a~227kは、それぞれが、互いに交差しないように配置されている。
【0107】
この第2実施形態においても、第1実施形態と同様、「大型の跡残り」や「斜め方向の跡残り」が形成されることがなく、上述した第1実施形態と同様、跡残りを目立ちにくくする構成になっている。
また、第2実施形態の構成は、上述した第1実施形態と同様、上述した特許文献3に記載の発明のようなシート材を設ける必要がなく、特許文献3に記載の発明のようなコストの上昇を招くことがない。
以上説明したように、第2実施形態によれば、強度を保ちつつカバー部材220の補強部227による仕上材3の跡残りを目立ちにくいものとする二重床システムW2および二重床システムW2のカバー部材220を低コストで提供することができる。
【0108】
《第3実施形態》
次に、本発明の第3実施形態の二重床システム及び二重床システムを構成するカバー部材について、
図11を参照しながら説明する。
ここで、
図11は、第3実施形態の二重床システムの構成を示した模式図である。なお、第3実施形態では、上述した第1実施形態と同じ構成には同じ符号をつけて、説明を省略する。
【0109】
第3実施形態の二重床システムW3は、複数の支持体310が等間隔に並んでいる状態で、カバー部材320が架け渡されて敷き詰められる構成になっている。
【0110】
また、第3実施形態のカバー部材320は、矩形の板状に形成されている。
このカバー部材320では、その辺縁331、332、333,334毎に、それぞれ、3つの補強部328(328a、328b、328c)を略デルタ状に配置している。
【0111】
具体手的には、カバー部材320の辺縁331、332、333、334のそれぞれに対して、補強部328aを頂点、補強部328b,328cを底辺としたデルタ状に配置して形成しており、この構成により、カバー部材320のなかの強度が弱い辺縁331、332、333、334の中央近傍部が変形することを効果的に抑制することができる。
【0112】
なお、補強部328a、328b、328cは、開放型の補強構造であるが、仕上材3が沈込むことが可能であれば、この様な形状としても効果が得られる。
また、補強部328a、328b、328cは、対応する辺縁331、332、333、334に対して、略平行な方向に長尺となるように設けられている。
【0113】
また、カバー部材320全体の中央には補強部327(327a、327b、327c、327d)が設けられており、効果的に最弱部であるカバー部材65の中央部分の変形を抑制している。補強部327a、327b、327c、327dは、概ね略十字形の形状を形成しているが、半径50mmの押圧子を接触させた場合、その境界と補強部327a、327b、327c、327dの各々が斜交して効果的に変形を抑止するようになっている。
なお、補強部327a、327b、327c、327dは、カバー部材320の1辺(辺縁331、332、333,334のいずれか1辺)に対して、略平行な方向或いは略垂直な方向に、長尺方向が配置されている。
【0114】
このように、第3実施形態のカバー部材320の補強部327a、327b、327c、327d、328a、328b、328cの構成によれば、特許文献1に記載の「溝が連続している大型の補強部」のような視覚的に目立つ「大きな跡残り」が形成されることがなく、視覚的に目立ちやすい跡残りが形成されることを抑制できる。
また、第3実施形態のカバー部材320の補強部327a、327b、327c、327d、328a、328b、328cは、カバー部材320の1辺(辺縁331、332、333,334のいずれか1辺)に対して、略平行な方向或いは略垂直な方向に、長尺方向が配置されている。そのため、第3実施形態では、「斜め方向の跡残り」が形成されることがなく、特許文献2に記載のものと比べて、跡残りを目立ちにくくすることができる。
また、第3実施形態の構成は、上述した第1実施形態と同様、上述した特許文献3に記載の発明のようなシート材を設ける必要がなく、特許文献3に記載の発明のようなコストの上昇を招くことがない。
【0115】
以上説明したように、第3実施形態によれば、強度を保ちつつカバー部材320の補強部327、328による仕上材3の跡残りを目立ちにくいものとする二重床システムW3および二重床システムW3のカバー部材320を低コストで提供することができる。
【0116】
なお、本発明の二重床システムは、上記実施形態(第1~第3実施形態)に限定されるものではなく、各実施形態や本明細書記載例の部分的な構成を組み合わせて特定したもの、各実施形態の部分的な構成を変更して特定したもの、各実施形態の構成に本明細書記載例の部分的な構成を追加して特定したもの、各実施形態の部分的な構成を削除して特定したものを包含するものである。
【0117】
前述の各実施の形態においては支持体とカバー部材とが分離されたものを例示しているが、基面と支持体が一体となって設けられたカバー部材及びこれを使用した二重床システムとしてもよい。
【符号の説明】
【0118】
W1、W2、W3…二重床システム
3…仕上材
5…床基体
1…マット体
1a…基部
10(10a、10b、10c)…支持体
11…上面
12…段差部
16…配線空間
18…抉り部
2(2a、2b、2c)…カバー部材
21…上面
22…下面
23(23a、23b、23c、23d)…係止部
25…クッション材
27(27a、27b、27c、27d、27e、27f、27g、27h、27i)…補強部
31、32、33、34…辺縁
38、39、40、41…被支持点(被支持部)
51…係止部
51a…頂部
51b…屈曲部
51h…孔部
125、126、127、128…弧
129…押圧子の押圧面
135…ライン(半円ライン)
137…ライン(直線ライン)
201…連結部
210…支持体
210H…抉り部
220…カバー部材
220F…屈曲部
227(227a、227b、227c、227d、227e、227f、227g、227h、227i、227j、227k)…補強部
231、232、233,234…辺縁
267…抉り部
310…支持体
320…カバー部材
327(327a、327b、327c、327d)…補強部
328(328a、328b、328c)…補強部
331、332、333、334…辺縁