(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】中空構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 3/12 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
B32B3/12 B
(21)【出願番号】P 2019171329
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊東 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】新海 達也
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-309165(JP,A)
【文献】特開2017-124577(JP,A)
【文献】特開2016-007900(JP,A)
【文献】登録実用新案第3212836(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0173935(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B60R 3/00-7/14
B29C63/00-63/48
65/00-65/82
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に立設された側壁によって区画された複数のセルが並設された熱可塑樹脂製の中空板状のコア層と、前記コア層の少なくとも一方の主面に接合された板材を備えた中空構造体であって、
前記コア層は、自身の厚み方向に曲げ力が作用したときに、他の部位より曲がり易い易曲がり仮想線を有するように前記セルが並設され、
前記板材が有する複数の側辺のうち、前記易曲がり仮想線との交差角度が最も小さい側辺を特定側辺としたとき、
前記板材は、前記特定側辺が、易曲がり仮想線と交差するように前記コア層に接合されてい
て、
前記コア層のセルの形状は不均一であり、セルの側壁部が延びる方向がギザギザ状に形成されていて、前記板材の角部は、ギザギザ状の易曲がり仮想線に重ならないように接合されていることを特徴とする中空構造体。
【請求項2】
前記コア層の少なくとも一方の主面には、合成樹脂製のスキン層が接合されており、
前記スキン層が接合された側の前記板材は、前記スキン層の外面に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の中空構造体。
【請求項3】
前記コア層は、一枚のシート材を真空成形して膨出部が形成された凹凸シート材を折り畳むことにより、2層構造をなす前記側壁が一方向に延びるように前記セルが並設されており、
前記易曲がり仮想線は、前記2層構造をなす側壁に沿って延びる仮想線であることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空構造体。
【請求項4】
前記板材は、前記特定側辺が、前記易曲がり仮想線を跨ぐように接合されていることを特徴とする請求項3に記載の中空構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑樹脂製の中空板状のコア層に板材を接合した中空構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に複数のセルが並設された中空板材は、適度な強度を有し、軽量で取扱い性にも優れていることから、例えば、車両後部の荷室床面を構成するラゲッジボードや、荷室上部に取り付けられるトノカバー等に適用することが知られている。特許文献1には、車両後部の荷室床面を構成するラゲッジパネルに、一対の表層部と、一対の表層部を離間して支持する支持部とを有する中空板材を適用することが記載されている。一対の表層部を離間して支持する支持部は、中空板材の厚み方向に延びて中空板材の内部に複数のセルを区画している。
【0003】
特許文献1に記載されるラゲッジパネルは、その重量および体積の増加を抑制しつつ、ラゲッジパネルの剛性を保持することを目的として、中空板材の一対の表層部のそれぞれに長方形板状の鋼板が接合されて形成されている。鋼板を接合する位置は、ラゲッジパネルに要求される剛性を保持する点から適宜設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鋼板が部分的に接合されている場合、鋼板が接合されている部分と接合されていない部分との境界部分でラゲッジパネルとしての剛性に差が生じ、鋼板の側辺に沿って、ラゲッジパネルが厚み方向に変形し易くなる場合がある。また、中空板材によっては、セルの並設態様によってその厚み方向の曲がり易さに差が生じる場合がある。そのため、鋼板の側辺が中空板材の曲がり易い方向に沿っていると、鋼板の側辺に沿うようにラゲッジパネルが厚み方向に変形し易くなる。
【0006】
本発明は、従来のこうした問題を解決するためになされたものであり、変形し難い中空構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、厚み方向に立設された側壁によって区画された複数のセルが並設された熱可塑樹脂製の中空板状のコア層と、前記コア層の少なくとも一方の主面に接合された板材を備えた中空構造体であって、前記コア層は、自身の厚み方向に曲げ力が作用したときに、他の部位より曲がり易い易曲がり仮想線を有するように前記セルが並設され、前記板材が有する複数の側辺のうち、前記易曲がり仮想線との交差角度が最も小さい側辺を特定側辺としたとき、前記板材は、前記特定側辺が、易曲がり仮想線と交差するように前記コア層に接合されている。
【0008】
上記の構成によれば、コア層に接合された板材は、板材の側辺のうち、コア層の易曲がり仮想線との交差角度が最も小さい特定側辺が、易曲がり仮想線と交差するように接合されている。そのため、コア層が易曲がり仮想線に沿って曲がるような曲げ力が作用したとしても、板材の特定側辺によってコア層が曲がることが抑制される。変形しにくい中空構造体が得られる。
【0009】
上記の構成において、前記コア層の少なくとも一方の主面には、合成樹脂製のスキン層が接合されており、前記スキン層が接合された側の前記板材は、前記スキン層の外面に接合されていることが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、コア層にスキン層が接合されていることにより、コア層が補強される。中空構造体の変形が抑制される。
上記の構成において、前記コア層は、一枚のシート材を真空成形して膨出部が形成された凹凸シート材を折り畳むことにより、2層構造をなす前記側壁が一方向に延びるように前記セルが並設されており、前記易曲がり仮想線は、前記2層構造をなす側壁に沿って延びる仮想線であることが好ましい。
【0011】
上記の構成によれば、コア層の厚み方向に曲げ力が作用すると、2層構造の側壁が層間剥離し易く、2層構造をなす側壁に沿ってコア層に変形が生じ易くなる。板材は2層構造をなす側壁に沿って延びる仮想線に特定側辺が交差するように接合されているため、2層構造をなす側壁での層間剥離が生じ難く、コア層に変形が生じ難い。
【0012】
上記の構成において、前記板材は、前記特定側辺が、前記易曲がり仮想線を跨ぐように接合されていることが好ましい。
上記の構成によれば、易曲がり仮想線を跨いでいることにより、板材の特定側辺の部分では、2層構造の側壁に連続的に層間剥離が生じることが抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、板材が接合されていても変形し難い中空構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は本実施形態の中空構造体の斜視図、(b)は(a)における1B‐1B線断面図、(c)は(a)における1C‐1C線断面図。
【
図2】(a)はコア層の斜視図、(b)は(a)におけるβ‐β線断面図、(c)は(a)におけるγ‐γ線断面図。
【
図3】(a)は鋼板の接合位置について説明する図、(b)は(a)で一点鎖線で囲んだ部分の拡大斜視図。
【
図4】(a)はコア層を構成する凹凸シート材の斜視図、(b)は凹凸シート材の折り畳み途中の状態を示す斜視図、(c)は凹凸シート材を折り畳んだ状態を示す斜視図。
【
図5】(a)~(d)は中空構造体の製造方法について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を具体化した中空構造体10について、
図1~
図3に基づいて説明する。本実施形態の中空構造体10は、車両後部の荷室上部に取り付けられるトノカバーに適用される。
【0016】
図1(a)~(c)に示すように、本実施形態の中空構造体10は、中空板状をなすコア層20と、その上下の両主面に接合された鋼板30、40とで構成されている。ここで中空構造体10の上下とは、
図1(b)及び(c)における上下で規定する。
【0017】
図1(a)に示すように、中空構造体10は、全体として上面視略台形状の板状である。中空構造体10に接合された鋼板30、40の大きさは、コア層20の上下の両主面より小さいことから、中空構造体10の大きさは、コア層20の大きさにほぼ一致する。
【0018】
コア層20の長手方向の最大長は約100cmであり、短手方向の最大長は約20cmであり、その厚みは約5mmである。コア層20を上面視したとき、コア層20は、最も長い側辺20aの両端部に、一対の短い側辺20b、20cが約70゜の角度をなすように連設され、側辺20b、20cの他方の端部に、曲線状の側辺20dが連設された形状をなしている。
【0019】
図1(b)及び(c)に示すように、コア層20は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製の凹凸シート材を折り畳んで形成されている。コア層20には、複数のセルSが並設されている。そして、コア層20は、上壁部21と、下壁部22と、上壁部21及び下壁部22の間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部23とで構成されている。
【0020】
図2(b)及び(c)に示すように、コア層20の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。
図2(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部23の上部に2層構造の上壁部21が設けられている。この2層構造の上壁部21の各層は互いに接合されている。また、第1セルS1においては、側壁部23の下部に1層構造の下壁部22が設けられている。一方、
図2(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部23の上部に1層構造の上壁部21が設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部23の下部に2層構造の下壁部22が設けられている。この2層構造の下壁部22の各層は互いに接合されている。
【0021】
図2(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されている。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層20は、全体としてハニカム構造をなしている。なお、
図2(a)では、2層構造の上壁部21、下壁部22の図示を省略している。また、
図1(b)では、上壁部21、下壁部22、及び側壁部23の層構造の図示を省略している。
【0022】
図2(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。
図2(a)に仮想線Lで示すように、第1セルS1の2層構造の側壁部23はY方向に沿うように延びている。また、仮想線Mで示すように、第2セルS2の2層構造の側壁部23はY方向に沿うように延びている。仮想線L、Mは互いに平行である。第1セルS1及び第2セルS2では、2層構造の側壁部23は、その上下両端部で互いに熱溶着されている一方で、コア層20の厚み方向中央部には互いに熱溶着されていない部分を有している。
【0023】
図3(a)及び(b)に示すように、中空構造体10のコア層20を構成するセルSは、コア層20を上面視したときの側辺20aが、コア層20における仮想線M、Lとの交差角度θが約10゜となるように傾斜する方向に並設されている。なお、
図3(a)では、コア層20のセルSにおける2層構造の側壁部23が延びる方向、つまり、仮想線L、Mが延びる方向を点線で示している。
【0024】
図1(a)~(c)に示すように、中空構造体10の上側の主面には、鋼板30が接合されている。鋼板30は、コア層20と同形状であり、全体として上面視略台形状の薄板状である。鋼板30の長手方向の最大長はコア層20の長手方向の最大長より約1cm程度短く、鋼板30の短手方向の最大長はコア層20の短手方向の最大長より約1cm短い。鋼板30は、例えばアルミニウム合金、鉄合金、銅合金などの金属製であり、その厚みは0.05mm~4mm程度、好ましくは2mm以下である。鋼板30を上面視したとき、鋼板30は、最も長い側辺30aの両端部に、一対の短い側辺30b、30cが約70゜の角度をなすように連設され、側辺30b、30cの他方の端部に、曲線状の側辺30dが連設された形状をなしている。
【0025】
図1(a)に示すように、鋼板30は、中空構造体10のすべての端縁において、コア層20の端縁より内側となる位置に接合されている。そして、鋼板30の端縁とコア層20の端縁との距離は中空構造体10のすべての端縁においてほぼ同一とされている。つまり、鋼板30の各側辺30a、30b、30c、30dと、コア層20を上面視したときの各側辺20a、20b、20c、20dとの距離はほぼ同一とされている。また、中空構造体10のすべての端縁において、鋼板30の上面は、後に説明するコア層20の封止部11における上側の平坦面11bの上面とほぼ面一とされている。
【0026】
図1(b)及び(c)に示すように、中空構造体10の下側の主面には、鋼板40が接合されている。この実施形態では、鋼板40は、鋼板30と同様の構成であり、鋼板30と同様の位置に、同様の態様で接合されている。以下では、鋼板30について説明し、鋼板40についての説明は省略する。
【0027】
図3(a)に示すように、鋼板30は、その端縁とコア層20の端縁との距離が中空構造体10のすべての端縁においてほぼ同一とされていることから、鋼板30の側辺30aは、コア層20を上面視したときの側辺20aと平行となっている。そのため、
図3(b)に示すように、鋼板30は、側辺30aとコア層20における仮想線L、Mとの交差角度θが約10゜となるように傾斜して接合されている。
【0028】
また、鋼板30の側辺30bは、コア層20における仮想線L、Mに対して、約80゜の角度を有して傾斜しており、鋼板30の側辺30cは、コア層20における仮想線L、Mに対して、約60゜の角度を有して傾斜している。鋼板30の曲線状の側辺30dは、コア層20における仮想線L、Mに対して、-40゜~20゜の範囲の角度を有して傾斜している。
【0029】
図1(b)及び(c)に示すように、中空構造体10の周縁部には、セルSの内部空間が中空構造体10の外部に露出しないように封止する封止部11が設けられている。封止部11は、中空構造体10の周縁部を内側に加熱しつつ圧縮することにより形成されている。したがって、封止部11は、中空構造体10のコア層20の上壁部21、下壁部22及び側壁部23を構成する熱可塑性樹脂からなる一体構成物である。また、封止部11は、中空構造体10の周方向全体に形成されている。
【0030】
図1(b)及び(c)に示すように、封止部11は、断面視すると全体として四角形状の外形状を有する。具体的には、封止部11は、中空構造体の面方向に沿って延びる上下一対の平坦面11bと、各平坦面11bから厚み方向の中央側に向けて円弧状に傾斜する上下一対の傾斜面11cとを有する。また、封止部11は、各傾斜面11cの間において中空構造体の厚み方向に延びる先端面11aを有する。封止部11の先端面11aが中空構造体10の端縁を構成し、コア層20を上面視したときの各側辺20a、20b、20c、20dを構成する。
【0031】
図1(c)に示すように、封止部11の平坦面11bと鋼板30、40の表面とは面一になっており、鋼板30、40の端縁は、封止部11で覆われている。
封止部11の内部には、圧縮される前のセルSの内部空間に起因する空間S3が形成されている。なお、
図1(b)及び(c)では、封止部11の内部の空間S3を断面半円状に示しているが、封止部11を形成する際の温度や圧縮の程度によって空間S3の形状や大きさは変化し得る。また、
図1(b)及び(c)では、封止部11をコア層20とは別部材として示しているが、封止部11はコア層20と一体的に形成されている。
【0032】
次に、中空構造体10を製造する方法について、
図4及び
図5に基づいて説明する。中空構造体10を製造するための工程は、コア層20を形成するコア層形成工程と、コア層20の上下の両主面に鋼板30、40を接合する鋼板接合工程と、コア層20をトリミングするトリミング工程と、コア層20の周縁部に封止部11を形成する封止工程とから構成されている。
【0033】
まず、コア層20を製造するコア層形成工程について、
図4に基づいて説明する。コア層形成工程は、一枚のシート材を真空成形して膨出部が形成された凹凸シート材100を折り畳むことにより、2層構造の側壁部23が一方向に延びるようにセルSが並設されたコア層20を形成する工程である。
【0034】
図4(a)に示すように、凹凸シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成される。凹凸シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、凹凸シート材100の長手方向(Z1方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Z2方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0035】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0036】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、凹凸シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0037】
図4(a)及び(b)に示すように、上述のように構成された凹凸シート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層20が形成される。具体的には、凹凸シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてZ1方向に圧縮する。そして、
図4(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのZ2方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がZ1方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層20が形成される。
【0038】
上記のように凹凸シート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層20の上壁部21が形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層20の下壁部22が形成される。なお、
図4(c)に示すように、上壁部21における第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部22における第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0039】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部23を構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部23を構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部23となる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、凹凸シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0040】
次に、コア層20の上下の両主面に鋼板30、40を接合する鋼板接合工程について説明する。
図5(a)に示すように、金属製の薄板を略台形状にトリミングして、鋼板30、40を準備する。なお、
図5では、鋼板30のみを示して、鋼板40についての図示を略している。鋼板30、40の一方の主面には、図示しない接着剤層が設けられている。また、コア層形成工程で形成されたコア層20を所定形状に切断したものを準備する。コア層20は、中空構造体10の長手方向の長さより10cm程度長く、中空構造体10の短手方向の長さより10cm程度長い上面視矩形状に切断したものを準備する。
【0041】
図示しない加熱炉内で、所定時間、所定温度、鋼板30,40を加熱した後、図示しないプレス機の台座上に鋼板40、コア層20、鋼板30の順に載置する。コア層20及び鋼板30、40に対して、プレス金型等で上方から圧をかけて加熱状態で押圧することにより、
図5(b)に示すように、コア層20に対して鋼板30、40を接合する。なお、鋼板30、40の加熱温度は、鋼板30、40に設けられた接着剤層の溶融温度よりも高い温度に設定されている。
【0042】
次に、コア層20をトリミングするトリミング工程について説明する。
図5(c)に示すように、鋼板30、40が接合されたコア層20を冷却後、コア層20において、鋼板30、40の端縁から所定距離外側に部分を、鋼板30、40の端縁に沿うようにしてトリミングする。コア層20をトリミングする位置は、鋼板30、40の端縁の位置に封止部11を形成するのに十分な距離が確保されるように設計されていることが好ましい。その距離は、例えば1mm~50mmであり、好ましくは3mm~10mmである。コア層20をトリミングすることにより、中空構造体10と少し大きいコア層20を有し、その上下の両主面に鋼板30、40が接合された中間体50が得られる。
【0043】
次に、中間体50におけるコア層20の周縁部に封止部11を形成する封止工程について説明する。
図5(d)に示すように、中間体50には、長辺側封止治具61、一対の短辺側封止治具62、63、及び曲線側封止治具64を用いた周縁封止処理が施される。長辺側封止治具61、一対の短辺側封止治具62、63、及び曲線側封止治具64は、例えば電磁ヒータ等によって、コア層20を構成する熱可塑性樹脂の溶融温度よりも高い温度に加熱できるようになっている。
【0044】
図5(d)に示すように、長辺側封止治具61は、全体として長尺な形状をなしている。そして、長辺側封止治具61の長手方向の寸法は、外側よりも内側の方が短くなっている。その結果、長辺側封止治具61の両端には傾斜部61aが形成されている。これら傾斜部61aは、長辺側封止治具61の長手方向に対して45度の角度をなしている。また、長辺側封止治具61の内側における長手方向の寸法は、中間体50の長手方向の長さよりも若干短くなっている。同様に、一対の短辺側封止治具62、63、及び曲線側封止治具64にも、それぞれ傾斜部62a,63a、64aが形成されている。
【0045】
長辺側封止治具61、一対の短辺側封止治具62、63、及び曲線側封止治具64の内側には、長手方向に沿って延びる図示しない溝部が形成されている。長辺側封止治具61、一対の短辺側封止治具62、63、及び曲線側封止治具64を型締めして、各傾斜部61a、62a、63a、64aが互いに当接した状態では、長手方向に延びる溝部で囲まれた部分が、中空構造体10の形状となる。
【0046】
図5(d)に示すように、封止工程で中間体50の周縁部に封止部11を形成する際には、中間体50の周縁部の側方に、加熱した長辺側封止治具61、一対の短辺側封止治具62、63、及び曲線側封止治具64を配置する。そして、長辺側封止治具61、一対の短辺側封止治具62、63、及び曲線側封止治具64の各溝部を中間体50に押し付けるように型締めすると、中間体50の周縁部は、溝部の形状に沿って加熱変形する。これにより、中間体50の周縁部が、中間体50の面方向中央側に向けて圧縮されて封止部11が形成される。
【0047】
ここで、長辺側封止治具61、一対の短辺側封止治具62、63、及び曲線側封止治具64は加熱されている。そのため、中間体50のうち、長辺側封止治具61、一対の短辺側封止治具62、63、及び曲線側封止治具64に触れた部分は溶融して流動性を有する。そして、溶融した中間体50の一部(熱可塑性樹脂)は、溝部の形状に沿って流動し、その後固化する。このようにして、中間体50の周縁部には、溝部の内面形状と略同一形状であり、先端面11a、平坦面11b、及び傾斜面11cを有する封止部11が形成される。
【0048】
次に、本実施形態の中空構造体10の作用について説明する。
中空構造体10は、複数のセルSが並設されたコア層20と、コア層20の上下の両主面に接合された鋼板30、40を備えている。コア層20には、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在し、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部23によって区画されている。第1セルS1の2層構造の側壁部23は、
図2(a)に示す仮想線Lに沿って延びており、第2セルS2の2層構造の側壁部23は、仮想線Mに沿って延びている。また、第1セルS1及び第2セルS2では、2層構造の側壁部23は、その上下両端部で互いに熱溶着されている一方で、コア層20の上下方向中央部には互いに熱溶着されていない部分を有している。そのため、コア層20に対して厚み方向に曲げ力が作用すると、2層構造の側壁部23の上端部或いは下端部において熱溶着された部分が、曲げ力に抗しきれずに剥がれ易くなり、2層構造の側壁部23が層間剥離を起こす。その結果、コア層20はY方向に延びる仮想線L、Mに沿って曲がり易くなる。
【0049】
図2(b)及び(c)に示すように、例えば、コア層20に対して上方へ向かって曲げ力が作用すると、仮想線Lに沿って延びる第1セルS1の2層構造の側壁部23では、側壁部23の下端部において熱溶着された部分に曲げ力が作用する。これにより、連続して延びる第1セルS1の2層構造の側壁部23の下端部における溶着部分が剥がれ易くなり、2層構造の側壁部23が層間剥離を起こす。こうした第1セルS1での変形に伴って、第2セルS2でも、2層構造の下壁部22が仮想線Lに沿って剥がれ易くなり、第2セルS2の下壁部22は、その中央で分断される。その結果、コア層20は、仮想線Lに沿って曲げられ、仮想線Lの両側が上方へ向かって変形する。
【0050】
また、コア層20に対して下方へ向かって曲げ力が作用すると、仮想線Mに沿って延びる第2セルS2の2層構造の側壁部23では、側壁部23の上端部において熱溶着された部分に曲げ力が作用する。これにより、連続して延びる第2セルS2の2層構造の側壁部23の上端部における溶着部分が剥がれ易くなり、2層構造の側壁部23が層間剥離を起こす。こうした第2セルS2での変形に伴って、第1セルS1でも、2層構造の上壁部21が仮想線Mに沿って剥がれ易くなり、第1セルS1の上壁部21は、その中央で分断される。その結果、コア層20は、仮想線Mに沿って曲げられ、仮想線Mの両側が下方へ向かって変形する。
【0051】
このように、コア層20に並設された第1セルS1及び第2セルS2は、コア層20の厚み方向に曲げ力が作用したときに、他の部位より曲がり易い方向を有しており、ここでの仮想線L、Mが請求項で言う易曲がり仮想線に相当する。
【0052】
図3(a)及び(b)に示すように、中空構造体10のコア層20を構成するセルSは、コア層20を上面視したときの側辺20aが、コア層20における仮想線M、Lとの交差角度θが約10゜となるように傾斜する方向に並設されている。また、コア層20に接合された鋼板30は、側辺30aとコア層20における仮想線L、Mとの交差角度θが約10゜となるように傾斜して接合されている。鋼板30の他の側辺30b、30c、30dも、コア層20における仮想線L、Mに対して、側辺30aより大きな角度を有して傾斜している。つまり、鋼板30が有する複数の側辺30a、30b、30c、30dのうち、仮想線M、Lとの交差角度が最も小さい側辺30dの交差角度θが約10゜である。請求項の易曲がり仮想線に相当する仮想線L、Mとの交差角度が最も小さい側辺30aが、請求項で言う特定側辺に相当する。なお、側辺30dは曲線状であり、仮想線L、Mとの交差角度が0゜となる部分も含んでいる一方、40゜となる部分も含んでいる。ここでの特定側辺とは、易曲がり仮想線との交差角度が特定側辺全体で最も小さい側辺を言うものとする。
【0053】
コア層20に並設されたセルSに対して、鋼板30の接合される向きが特定されることにより、コア層20に対して厚み方向に曲げ力が作用したときのコア層20の変形が抑制される。つまり、鋼板30の特定側辺である側辺30aが仮想線L、Mと交差角度θが約10゜となるように延びており、側辺30aが仮想線L、Mを跨ぐように鋼板30がコア層20に接合されている。そのため、2層構造の側壁部23が仮想線L、Mに沿って連続的に剥がれることが抑制され、コア層20が仮想線L、Mに沿って変形することが抑制される。
【0054】
こうした作用は、仮想線L、Mとの交差角度が側辺30aより大きい、側辺30b、30c、30dによっても得られる。つまり、特定側辺である側辺30aが易曲がり仮想線と交差するように鋼板30が接合されていることにより、コア層20が易曲がり仮想線を有するようにセルSが並設されていても、側壁部23の層間剥離に起因するコア層20の変形が抑制される。
【0055】
次に、本実施形態の中空構造体10によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の中空構造体10は、厚み方向に立設された側壁部23によって区画された複数のセルSが並設されたコア層20と、コア層20の上下の両主面に接合された鋼板30、40を備えている。コア層20は、その厚み方向に曲げ力が作用したときに、他の部位より曲がり易い易曲がり仮想線としての仮想線L、Mを有するようにセルSが並設されている。そして、鋼板30は、仮想線L、Mとの交差角度が最も小さい側辺30aが、仮想線L、Mとの交差角度θが約10゜となるようにコア層20に接合されている。鋼板40も同様に接合されている。
【0056】
そのため、コア層20に接合された鋼板30、40によって、コア層20が易曲がり仮想線としての仮想線L、Mに沿って曲がることが抑制される。変形したり破損したりし難い中空構造体が得られる。
【0057】
(2)コア層20は、一枚のシート材を真空成形して膨出部が形成された凹凸シート材100を折り畳むことにより、2層構造をなす側壁部23が一方向に延びるようにセルSが並設されている。そして、鋼板30は、特定側辺である側辺30aが、2層構造をなす側壁部23が延びる方向と同方向に延びる仮想線L、Mと交差角度θが約10゜となるようにコア層20に接合されている。
【0058】
そのため、コア層20に接合された鋼板30、40によって、2層構造をなす側壁部23の層間剥離による変形が生じ難くなる。2層構造の側壁部23に沿ってコア層20が変形することが抑制される。
【0059】
(3)鋼板30の側辺30aが仮想線L、Mと交差角度θが約10゜となるように延びており、側辺30aが仮想線L、Mを跨ぐように鋼板30がコア層20に接合されている。
【0060】
そのため、2層構造の側壁部23に連続的に層間剥離が生じることが抑制される。
(4)鋼板30、40は、コア層20の大きさより小さいが、コア層20と同形状であり、コア層20のほぼ全面に亘って接合されている。
【0061】
そのため、中空構造体10としての剛性を向上させることができる。
(5)コア層20の端縁は封止部11で封止されている。
そのため、コア層20に並設されたセルSの内部に埃、ゴミ、水分等が侵入することが抑制される。
【0062】
(6)鋼板30、40は、その端縁の位置が中空構造体10の端縁より内側となるように接合されており、コア層20の端縁は封止部11で封止されている。
そのため、封止部11の先端面11aが他の物体に衝突しても、比較的に強度の高い鋼板30の端縁や鋼板40の端縁からの衝突力が物体に伝わりにくい。その結果、中空構造体10が衝突した物体に傷やへこみ等をつけにくい。
【0063】
(7)中空構造体10における封止部11は、中空構造体10の厚み方向の中央側に向かって傾斜する傾斜面11cを有しており、中空構造体10における封止部11の先端面11aにおいて鋭角な角部を有さない。
【0064】
そのため、中空構造体10の端縁が他の物体にぶつかっても、その他の物体に傷等をつけにくい。
(8)中空構造体10の周縁部の封止部11は、コア層20の周縁部を圧縮して形成したものであるため、封止部11が設けられていない箇所に比べて剛性が高い。
【0065】
そのため、封止部11を設けない中空構造体と比較して、中空構造体10としての剛性を向上させることができる。
(9)封止部11は、中空構造体10の周縁部を内側に加熱しつつ圧縮することによって形成された樹脂溜りが冷却固化されて形成されている。
【0066】
そのため、封止部11を形成する際の封止治具の加熱の程度や中空構造体10の周縁部の圧縮の程度によっては、鋼板30の端縁の下方、鋼板40の端縁の上方、空間S3の内側にも樹脂溜りが形成されて端面封止がなされている。これにより、中空構造体10の曲げ強度や破損強度が向上する。
【0067】
(10)中空構造体10のコア層20の上壁部21又は下壁部22には、折り畳み工程での加熱処理によって、熱可塑性樹脂の熱収縮による開口が形成される場合がある。こうした開口は、セルSを上面視したときに最も長い対角線となる部分に沿って形成される。コア層20の上壁部21側で言えば、開口は仮想線Mに沿って形成される。ここで、中空構造体10の端縁に封止部11が形成されていることにより、封止部11の近傍では、開口が小さくなるが、完全に溶融一体化して開口が樹脂で埋められてしまうことにはなり難い。この点、鋼板30は、仮想線L、Mとの交差角度が最も小さい側辺30aが、仮想線L、Mとの交差角度θが約10゜となるようにコア層20に接合されている。
【0068】
そのため、開口が形成されていたとしても、中空構造体10が易曲がり仮想線に沿って曲がることが抑制される。易曲がり仮想線での曲げ強度や破損強度が向上する。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
・上記実施形態の中空構造体10は、凹凸シート材100を折り畳んで形成されたコア層20に鋼板30、40を接合して構成されているが、中空構造体10の構成はこれに限定されない。コア層20の少なくとも一方の主面に、合成樹脂製のシート状のスキン層を接合してもよい。スキン層によってコア層20が補強され、コア層20のみの場合よりも中空構造体10としての変形が抑制される。
【0070】
・コア層20は、凹凸シート材100を折り畳んで形成されているが、上記実施形態の凹凸シート材100とは異なる形状の凹凸シート材を折り畳んで形成してもよい。例えば、特許第4368399号に記載されるように、断面台形状の凸部が複数列設された三次元構造体を順次折り畳んでいくことによりハニカム構造体としてのコア層を形成してもよい。
【0071】
・コア層20は凹凸シート材を折り畳んで形成されたものでなくてもよい。一枚のシート材を真空成形することにより、円柱状や截頭円錐形状の膨出部が形成された凹凸シート材であってもよい。また、複数の帯状のシートを所定間隔毎に屈曲させて配置してセルの側壁を構成した凹凸シート材であってもよい。
【0072】
・コア層20は、柱形状のセルSが区画されたものに限らない。例えば、所定の凹凸形状を有するコア層の上下両面にシート層を接合したものであってもよい。このような構成のコア層としては、例えば特開2014-205341号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよい。
【0073】
・コア層20の内部には六角柱状のセルSが並設されているが、セルSの形状はこれに限定されない。例えば、四角柱状、八角柱状等の多角柱状もよい。また、各セルは隣接していなくてもよく、セルとセルとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。
【0074】
・コア層20は、形状の異なるセルが混在しているものであってもよい。
・コア層20の易曲がり仮想線は、第1セルS1の2層構造の側壁部23が延びる方向である仮想線L、第2セルS2の2層構造の側壁部23が延びる方向である仮想線Mであるが、コア層20が本実施形態とは異なる形状である場合、易曲がり仮想線は、これに限定されない。例えば、隣り合うセルが共通する側壁部を有さず、独立した形状のセルが複数並設されたようなコア層の場合、易曲がり仮想線は、コア層のセルとセルとの間に形成されていてもよい。
【0075】
・上記実施形態のコア層20では、折り畳み工程での加熱処理によりコア層20の上壁部21又は下壁部22に、セルSを上面視したときに最も長い対角線となる部分に沿って、熱可塑性樹脂の熱収縮による開口が形成される場合がある。易曲がり仮想線は、こうした開口が形成された方向に沿うように形成されていてもよい。
【0076】
・鋼板30の特定側辺である側辺30aは直線として形成されているが、鋼板30の主面方向に延びる小さな凹凸が形成されて、全体として直線状に延びているものであってもよい。側辺30aが全体として直線状であって、その直線状の線が、鋼板30の各側辺のうち易曲がり仮想線としての仮想線L、Mとの交差角度が最も小さければ、側辺30aは特定側辺である。
【0077】
・鋼板30の側辺30aと仮想線L、Mとの交差角度θは約10゜でなくてもよい。約10゜より小さくてもよい。仮想線L、Mを跨ぐように鋼板30が接合されていれば、コア層20の変形を抑制することができる。
【0078】
・鋼板30、40のいずれか一方を省略することができる。
・鋼板30、40の少なくともいずれか一方を複数枚に分割することができる。その場合も分割された各鋼板について、特定側辺となる側辺が仮想線L、Mに対して交差するように接合されていることが好ましい、
・鋼板30、40の大きさは特に限定されない。コア層20の1/3程度、1/2程度の大きさであってもよい。
【0079】
・鋼板30の大きさ、形状と、鋼板40の大きさ、形状が異なっていてもよい。強度が必要な部分に適宜接合するようにすればよい。例えば、左右両端部で支持されるラゲッジボードに中空構造体10を適用する場合、曲げ強度が要求される部分に部分的に鋼板30、40を接合すればよい。また、ヒンジ部によって開閉自在に構成されたラゲッジボードに中空構造体10を適用する場合、ヒンジ部を介して連結される少なくとも一方側に鋼板を接合するようにしてもよい。この場合、接合された鋼板において、ヒンジ部側となる辺は、コア層を押し潰して中空部がない薄肉平坦面上に接合し、ヒンジ部とは反対側となる辺は、コア層の易曲がり仮想線と交差するように接合すればよい。
【0080】
・上記実施形態の中空構造体10は、コア層20に鋼板30、40が接合されているが、鋼板30、40以外の他の部材が積層されていてもよい。例えば、鋼板30、40の表面に、不織布シート、合成皮革シート、織物シート、編物シート等、中空構造体10の表面に意匠性を付与するようなシートが積層されていてもよい。
【0081】
例えば、不織布シートを積層する場合、不織布シートの一方の主面に熱可塑性樹脂製の接着層を塗布し、接着層を介して鋼板30、40に接合すればよい。不織布の材質としては、例えば、ポリアミド繊維、アラミド繊維、セルロール繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維等の従来公知の各種繊維が挙げられる。
【0082】
・コア層20に接合するのは鋼板30、40に限定されない、例えば、鋼板30、40に代えて、炭素繊維やガラス繊維等の引張弾性率の高い素材を含有してなる繊維強化樹脂製の薄板をコア層20に接合してもよい。
【0083】
・コア層20を構成する熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより難燃性を高めることができる。
【0084】
・中空構造体10の用途は特に限定されるものではなく、トノカバー以外のものにも適用することができる。例えば、車両後部の荷室床面を構成するラゲッジボードに適用してもよい。或いは、物流・輸送の際に用いられる容器やケースを構成する板材、建築物や足場等を構成する板材、棚やテーブルなどの家具を構成する板材として用いることができる。また、上記の各用途で使用する際には、上記実施形態の中空構造体を芯材として使用し、その外表面に表皮材を設けるようにしてもよい。
【0085】
・中空構造体10の少なくとも一方の主面に、凹部や凸部が形成されたものであってもよい。また、中空構造体10は平坦な板状ではなく、全体が湾曲形状であってもよい。
・中空構造体10の厚みは、約5mmでなくてもよい。約15mmや約20mm等、厚みが大きくてもよい。また、その形状、大きさも適宜変更することができる。
【0086】
・封止部11を中空構造体10の周方向の一部分に形成してもよい。例えば、中空構造体10の周縁部の4辺のうちのいずれかの辺のみに封止部11を形成してもよいし、向かい合う一対の辺にのみ封止部11を形成してもよい。また、中空構造体10の周縁部の1辺の全域に封止部11を設ける場合に限らず、1辺のうちの一部にのみ封止部11を設けてもよい。
【0087】
・封止部11を形成する際の封止治具の加熱の程度や中空構造体10の周縁部の圧縮の程度によっては、封止部11の内部に空間S3が生じないこともある。
・中空構造体10に封止部11を設けなくてもよい。なお、封止部11を設けていない場合、コア層20の端縁が中空構造体10の端縁を構成する。
【0088】
・中空構造体10の封止部11の構成は、上記実施形態のものに限らない。例えば、中空構造体10の周縁部を、一対のプレス板で厚み方向両側から挟み込んで潰すことにより封止部を形成してもよい。この場合の封止部は、中空構造体10のコア層20の厚みよりも薄く形成されるが、コア層20におけるセルSの内部空間が外部に露出しないようになっているならば、封止部であるといえる。
【0089】
・封止部11の断面形状は、上記実施形態の形状に限らず、適宜変更できる。
・上記実施形態では、コア層20に鋼板30、40を接合した後に、中間体50に封止部11を形成したが、封止部11を形成した後にコア層20に鋼板30、40を貼り付けてもよい。
【0090】
・鋼板30、40の左右の角部、つまり、側辺20aと側辺20bとの間の角部、及び側辺20aと側辺20cとの間の角部は、易曲がり仮想線に重ならないように接合してもよい。角部が易曲がり仮想線に重ならないようにすることで、鋼板30、40は、セルSを上面視したときに、角部がセルSの内側の位置となるように接合されることになる。鋼板30、40の角部は、コア層20の変形の起点となり易いが、角部が易曲がり仮想線に重なっていないことから、コア層20が曲がり難くなる。
【0091】
・コア層20のセルSの形状が製造誤差等によって不均一となり、セルSの2層構造の側壁部23が延びる方向がギザギザ状に形成されている場合、鋼板30、40の左右の角部は、ギザギザ状の易曲がり仮想線に重ならないように接合すればよい。
【0092】
・鋼板30、40を接合する位置は、鋼板30、40の左右の角部から0~100mm、好ましくは0~50mm、さらに好ましくは0~30mmとなる位置が、易曲がり仮想線に重ならないように接合すればよい。こうすることで、コア層20の変形の起点となり易い角部からの変形が起こり難く、中空構造体10の変形が抑制される。
【0093】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術思想を以下に記載する。
・中空構造体は、当該中空板材のうち板材の端縁よりも外側の部分に、中空構造体のコア層を構成する熱可塑性樹脂からなる一体構成物であるとともにセルの内部空間が中空板材の外部に露出しないように封止した封止部を有する。
【符号の説明】
【0094】
10…中空構造体、11…封止部、20…コア層、21…上壁部、22…下壁部、23…側壁部(側壁)、30、40…鋼板(板材)、30a…側辺(特定側辺)、30b、30c、30d…側辺、50…中間体、100…凹凸シート材、L、M…仮想線(易曲がり仮想線)、S…セル、S1…第1セル、S2…第2セル。