(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】花留め、及び、花留めの製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 7/02 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A47G7/02 G
(21)【出願番号】P 2019223399
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-11-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.開催期間 令和1年5月7日-12日 2.展示会名 第8回金澤・加賀工藝展 3.開催場所 新光三越 台南新天地6F C區文化會舘 住所 台湾台南市中西区西門路一段658號 4.公開者 株式会社森合金 5.公開された発明の内容 株式会社森合金は、第8回金澤・加賀工藝展にて、金森和治及び高下裕子が発明した花留めを公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】519046432
【氏名又は名称】株式会社金森合金
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】金森 和治
(72)【発明者】
【氏名】高下 裕子
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-157394(JP,U)
【文献】登録実用新案第3084307(JP,U)
【文献】登録実用新案第3036854(JP,U)
【文献】特開2005-001273(JP,A)
【文献】実開昭50-097797(JP,U)
【文献】特開2002-294489(JP,A)
【文献】特開2000-051032(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0047502(US,A1)
【文献】特開2011-196352(JP,A)
【文献】実開昭59-013649(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂型鋳造の銅合金鋳物で構成された柱体形状の花留め本体と、
柱体形状の前記花留め本体において、天面から底面まで貫通した貫通孔と
を有し、
前記花留め本体の天面及び底面の少なくとも一部が研磨されており、
前記
砂型鋳造により形成された前記貫通孔の壁面は、未研磨であ
り、前記砂型鋳造で使用した砂の粒径に応じた表面粗さとなっている
花留め。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記天面から前記底面に向かって徐々に狭まっている
請求項1に記載の花留め。
【請求項3】
前記花留め本体の天面及び底面は、全面にわたって研磨されており、
前記貫通孔の壁面は、前記天面及び前記底面よりも粗い表面となっている
請求項2に記載の花留め。
【請求項4】
砂で成形した鋳型に銅合金を流し込んで、貫通孔が設けられた柱体形状の花留めを成型する工程と、
成型された柱体形状の前記花留めの表面のうち、前記貫通孔の壁面を除いた領域を、金属光沢ができるまで研磨する工程と
を有する花留めの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花留め、及び、花留めの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、台盤1に挿入孔2を穿設し、同挿入孔2の内面3を傾斜させることにより同挿入孔2の入口から同孔2の深部に行くにしたがい挿入面積を減少させてなる生花用花留めが開示されている。
また、特許文献2には、筒状に形成された花留本体の内壁面に垂直方向の切溝を多数形成したことを特徴とする花留が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実全昭52-157394号公報
【文献】実全昭50-097797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、機能性に優れた花留めを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る花留めは、銅合金鋳物で構成された柱体形状の花留め本体と、柱体形状の前記花留め本体において、天面から底面まで貫通した貫通孔とを有し、前記花留め本体の天面及び底面の少なくとも一部が研磨されており、前記貫通孔の壁面が未研磨である。
【0006】
好適には、前記貫通孔は、前記天面から前記底面に向かって徐々に狭まっている。
【0007】
好適には、前記花留め本体の天面及び底面は、全面にわたって研磨されており、前記貫通孔の壁面は、前記天面及び前記底面よりも粗い表面となっている。
【0008】
また、本発明に係る花留めの製造方法は、鋳型に銅合金を流し込んで、貫通孔が設けられた柱体形状の花留めを成型する工程と、成型された柱体形状の前記花留めの表面のうち、前記貫通孔の壁面を除いた領域を、金属光沢ができるまで研磨する工程とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生けた植物を長持ちさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図2に例示した花留め1のA-A線切断部を例示する端面図である。
【
図4】植物Pを生けた状態の花留め1を例示する図である。
【
図5】実施形態における花留め1の製造方法(S10)を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
まず、本実施形態における花留め1の構成を説明する。
図1は、実施形態における花留め1の斜視図である。
図2は、花留め1を例示する六面図である。
図2(A)は平面図、
図2(B)は底面図、
図2(C)は正面図、
図2(D)は右側面図である。なお、背面図は、正面図と対称につき省略し、左側面図は、右側面図と対称につき省略する。
図3は、
図2に例示した花留め1のA-A線切断部を例示する端面図である。
【0012】
図1及び
図2に例示するように、花留め1は、銅合金鋳物で構成された鋳物であり、砂型鋳造により形成されている。花留め1は、花留め本体10と、貫通孔20とを有する。
花留め本体10は、銅又は銅を主成分とする金属(銅合金)の鋳物で構成された花留め1の本体である。花留め本体10は、円柱、又は、角柱の形状である。すなわち、花留め本体10は、柱体の形状である。
また、花留め本体10は、金属光沢を放つよう、側面、天面、及び、底面が全面にわたって研磨されている。即ち、花留め本体10は、天面及び底面の少なくとも一部が研磨されている。ここで、本例における花留め本体10の天面とは、
図2(A)に例示した花留め本体10の端面を示し、花留め本体10の底面とは、
図2(B)に例示した花留め本体10の端面を示す。
また、花留め本体10の大きさは、例えば直径5cm以上7cm以下、かつ、厚み2cm以上4cm以下の大きさであり、本例の花留め本体10は、直径6cm以上6.5cm以下以下、かつ、厚み2.5cmの大きさに形成される。
【0013】
貫通孔20は、
図2及び
図3に例示したように、円柱の形状である花留め本体10に複数設けられ、天面から底面まで貫通した孔である。貫通孔20は、
図2(B)に例示した底面に位置する貫通孔の開口の大きさより、
図2(A)に例示した天面に位置する貫通孔の開口の大きさの方が大きい。具体的には、
図3に例示した貫通孔20A~20Dに着目すると、天面に位置する貫通孔の開口幅Dは、底面に位置する貫通孔の開口幅dより広く形成されており、貫通孔20は、天面及び底面の開口を接続するように、天面から底面に向かって徐々に狭まっている。また、隣り合う2つの貫通孔20の間に位置する壁面の厚みは、天面から底面に向かって徐々に厚くなっている。
また、貫通孔20の壁面22は、平らでない凹凸のある表面となっている。貫通孔20の壁面22は、砂型鋳造で使用した砂の粒径に応じた表面粗さとなっており、未研磨である。そのため、貫通孔20の壁面22は、研磨された花留め本体10の天面、底面、及び側面よりも粗い表面となっている。なお、貫通孔20の壁面22は、砂型に使用する砂の粒径に応じて、表面粗さを適宜変更することができる。壁面22は、表面を粗くすることにより表面積を大きくしている。
【0014】
次に、使用状態における花留め1を説明する。
図4は、植物Pを生けた状態の花留め1を例示する図である。
図4(A)は、植物Pを生けた状態の花留め1を例示する斜視図であり、
図4(B)、植物Pを生けた状態の花留め1の断面図である。
図4(A)に例示するように、花留め1は、水を張った花器Vに、水に沈めた状態で配置される。そして、花留め1は、植物Pを立てた状態で固定している。花留め1は、水に沈めた状態で配置することにより、銅が水中に溶出する。これにより、花留め1は、水中に溶出した銅(いわゆる銅イオン)の殺菌作用により、雑菌の繁殖を防止することができる。よって、植物Pを長持ちさせることができる。また、貫通孔20は、未研磨で粗い壁面22であるため、水と接触する面積を大きくすることができる。これにより、花留め1は、水中に高濃度の銅イオンを溶出させやすい。
【0015】
また、
図4(B)に例示するように、植物Pの基端は、植物Pの基端Aのように、植物Pの基端を折り曲げた状態、又は、植物Pの基端Bのように、植物Pの基端を折り曲げず真っ直ぐな状態で、貫通孔20に挿入されている。植物Pの基端を、天面から底面に向かって貫通孔20に押し込みながら挿入すると、植物Pは、天面から底面に向かって徐々に狭くなる貫通孔20の壁面22により次第に、植物Pの基端を圧迫され挟まれる。これにより、花留め1は、植物Pを立てた状態で固定できる。このとき、植物Pの基端は、貫通孔20の壁面22の凹凸と引っ掛かるため、花留め1は、より強固に植物Pを固定できる。
【0016】
次に、実施形態における花留め1の製造方法を説明する。
図5は、実施形態における花留め1の製造方法(S10)を例示するフローチャートである。
図5に例示するように、ステップ100(S100)において、製造者は、砂で成形した鋳型に、溶かした銅合金を流し込む。
ステップ102(S102)において、鋳型に流し込んだ銅合金が冷えて固まった後に、製造者は、鋳型から花留め本体10を取り出す。取り出した花留め本体10は、貫通孔20が設けられた柱体形状となっている。製造者は、取り出した花留め本体10から砂を落とし、湯口やバリを除去する。
ステップ104(S104)において、製造者は、花留め本体10の表面のうち、花留め本体10の側面、天面及び底面のみを全面にわたって、金属光沢ができるまで研磨する。即ち、製造者は、花留め本体10の表面のうち、貫通孔20の壁面22を除いた領域を、金属光沢ができるまで研磨する。これにより、花留め1の意匠性を向上させると共に、使用時における使用者の手指の怪我を防止することができる。また、花留め本体10の天面及び底面を研磨することにより、花器Vの盛る面や植物Pの傷防止とすることができる。そして、製造者は、花留め1を得ることができる。
【0017】
以上説明したように、本実施形態における花留め1によれば、銅合金の鋳物で構成することにより、植物を生けた水中に銅イオンを含有させることができる。これにより、水中における雑菌の繁殖を防止することができるため、植物を長持ちさせることができる。
【0018】
なお、本実施形態において、貫通孔20の軸方向が花留め本体10の天面及び底面に対して略垂直となるように、貫通孔20を形成する場合を説明したが、貫通孔20の軸方向が花留め本体10の天面及び底面に対して傾斜するように、貫通孔20を形成してもよい。
また、本実施形態において、銅合金の鋳物で花留め本体10を構成する場合を説明したが、例えば、抗菌性のない金属で構成した鋳物や陶器で花留め本体10を形成し、この花留め本体10の表面に、抗菌性のある金属の皮膜を形成してもよい。抗菌性のある金属として、例えば、錫、銅、銀等が挙げられる。
【符号の説明】
【0019】
1 花留め
10 花留め本体
20 貫通孔
22 壁面