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特許7391365自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド及びそれを含有する樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド及びそれを含有する樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20231128BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20231128BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20231128BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20231128BHJP
   C09D 175/14 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 8/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20231128BHJP
   A61Q 3/02 20060101ALI20231128BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20231128BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20231128BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231128BHJP
【FI】
C08G18/67 080
C08G18/44
C08G18/62 004
C08F290/06
C09D175/14
A61K8/00
A61K8/81
A61Q3/02
C09D11/30
C09J175/14
C09J7/38
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2019229037
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2020100821
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2018239186
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314001841
【氏名又は名称】KJケミカルズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 美希
(72)【発明者】
【氏名】平田 明理
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/141537(WO,A1)
【文献】特開2015-071682(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047615(WO,A1)
【文献】特開2012-107101(JP,A)
【文献】特表2017-535625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87;71/00-71/04
C08F283/01;290/00-290/14;299/00-299/08
C09D1/00-10/00;101/00-201/10
C09D11/00-13/00
C09J7/00-7/50
A61K8/00-8/99;A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタン(A)であって、
(A)の数平均分子量は25,000以上であり、
(A)のハードセグメント部分の含有量は40~70質量%であり、
(A)の硬化物の動的粘弾性法により測定されるtanδのピーク温度における値は0.2~1.0の範囲にあることを特徴とする自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)。
【請求項2】
25℃における硬化物のtanδの値は0.1~0.8の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)。
【請求項3】
硬化物のガラス転移温度(Tg)が-50~40℃の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)。
【請求項4】
1分子当たりの(メタ)アクリルアミド基の平均含有個数が1~10であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)。
【請求項5】
1分子当たりの(メタ)アクリルアミド基の個数と(メタ)アクリレート基の個数の比率(モル%)は100/0~25/75の範囲内であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)。
【請求項6】
少なくともポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格から選ばれる1種又は2種以上の骨格を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)1~100質量%を含有する自己修復材料用重合性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の重合性樹脂組成物に、光重合開始剤及び/又は不飽和結合を有する化合物をさらに含有することを特徴とする自己修復材料用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物を活性エネルギー線照射により重合して得られる自己修復材料用硬化物。
【請求項10】
請求項7に記載の重合性樹脂組成物に、熱重合開始剤及び/又は不飽和結合を有する化合物をさらに含有することを特徴とする自己修復材料用重合性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物を熱により重合して得られる自己修復材料用硬化物。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は請求項7、8、10のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは請求項9又は11に記載の硬化物を含有する自己修復性コート剤。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は請求項7、8、10のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは請求項9又は11に記載の硬化物を含有する自己修復性フィルム。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は請求項7、8、10のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは請求項9又は11に記載の硬化物を含有する自己修復性粘着シート。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は請求項7、8、10のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは請求項9又は11に記載の硬化物を含有する自己修復性封止材。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は請求項7、8、10のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは請求項9又は11に記載の硬化物を含有する自己修復性インク。
【請求項17】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は請求項7、8、10のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは請求項9又は11に記載の硬化物を含有する自己修復性インクジェットインク。
【請求項18】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は請求項7、8、10のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは請求項9又は11に記載の硬化物を含有する自己修復性立体造形用インク。
【請求項19】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は請求項7、8、10のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは請求項9又は11に記載の硬化物を含有する自己修復性爪化粧料。
【請求項20】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は請求項7、8、10のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは請求項9又は11に記載の硬化物を含有する自己修復性車両外装塗料。
【請求項21】
請求項1~6のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は請求項7、8、10のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは請求項9又は11に記載の硬化物を含有する自己修復性建築物外装用塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己修復性、耐汚染性、耐屈曲性を有する硬化膜を形成できるウレタン(メタ)アクリルアミド、及びそれを含有する樹脂組成物とそれらを硬化して得られる硬化膜ならびに硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックは透明、軽量、安価で成型加工性に優れることから、日常の幅広い分野で使用されている。しかしながら、汎用のプラスチックは一般にその表面は硬度が高いものではなく日常での使用において容易に傷がつきやすい。また、このような傷つき以外にプラスチックは油脂や皮脂など多種多様な汚染源により汚染される。そのような傷や汚染は製品の外観や機能を低下させ、商品価値を低下させてしまう。
【0003】
かかる課題を解決するために、反応性コーティング剤によるプラスチックへの表面保護処理を施される。硬化方法としては、熱硬化や紫外線や電子線などによる活性エネルギー線硬化あるが、近年では生産性の向上のため、硬化に時間のかかる熱硬化に代わって短時間で硬化工程が完了する活性エネルギー線硬化が多く検討されている。
【0004】
例えば、表面硬度を高めるハードコート処理が施されるが、処理を行っても全く傷がつかなくなるわけではなく、また一度ついた傷を修復することは困難である。一方、表面に傷がついてもその傷を自然に修復させる自己修復コーティングが近年提案されている。自己修復コーティングとは、一度ついた傷が塗膜の分子運動に起因する弾性、内包及び/又は傷つき後に付与する修復剤などにより時間の経過とともに自然に修復される機能のことである。このような自己修復コーティングには、自己修復性だけでなく、高い加工性を付与できるような柔軟性と強度や、製品の美観を保つのに寄与する耐汚染性を有することが求められる。
【0005】
特許文献1には、1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとポリカプロラクトン変性アルキル(メタ)アクリレートとを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレートを含有する活性エネルギー性硬化性組成物が提案された。この組成物の硬化物(厚さ60μm)のスクラッチ痕(15μm)が回復しなくなる臨界荷重は、25℃、相対湿度50%の雰囲気下にて、235mN以上となるが、その硬化性については一切記述がなく、硬化物にタック感(べとつき)がある可能性がある。
【0006】
特許文献2には、ポリエーテルジオール、ポリイソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させてなる特定の範囲のウレタン基濃度を有する多官能ウレタン(メタ)アクリレート及び単官能ウレタン(メタ)アクリレートの混合物からなる自己修復材料が提案された。この自己修復材料は、その硬化物内に単官能ウレタン(メタ)アクリレート由来の運動自由度の高い分岐鎖が存在し、分岐鎖が傷を塞ぐように動くことができるため高い傷修復性を有するとされている。しかしながら、塗膜のタック感、耐汚染性については一切記述がない。
【0007】
特許文献3には、ポリイソシアネート、1,4-ブタンジオールを含むポリカーボネートポリオール、分子量500未満の低分子量ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの反応物であるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(A)を含むその硬化膜が特定の引張弾性率である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が提案された。この組成物の硬化膜は、柔軟性、機械的強度、耐汚染性などに優れるものの、その自己修復性や破断伸度は不十分である。
【0008】
特許文献4には、アロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレート、40/60~60/40の比率で組み合わせたウレタン(メタ)アクリレート組成物が提案された。この組成物の硬化膜はアロファネート基由来の屈曲性や多官能(メタ)アクリレート由来の高い表面硬度を有するが、その自己修復性は不十分であり、耐汚染性については一切記述されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-244426号公報
【文献】特開2013-049839号公報
【文献】特開2014-196430号公報
【文献】特開2015-086300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、活性エネルギー線に対する硬化性が高く、自己修復性、耐汚染性と耐屈曲性を有する硬化膜を形成できるウレタン(メタ)アクリルアミド、及びそれを含有する樹脂組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、ウレタン(メタ)アクリルアミドとそれを含有する樹脂組成物を硬化して得られる自己修復性、耐汚染性、耐屈曲性に優れ、且つ良好な透明性を有する硬化物及び成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ウレタン(メタ)アクリルアミドにおいて、特定範囲の損失弾性率を有する硬化物が自己修復性を示すことを見出した。また、自己修復性硬化物を形成できるウレタン(メタ)アクリルアミド(以下は自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)と略称する。)が含有されることにより、活性エネルギー線に対する硬化性が高く、優れた自己修復性、耐汚染性、耐屈曲性を有する硬化物を形成できる自己修復材料用樹脂組成物(以下は自己修復性樹脂組成物と略称する。)を見いだし、本発明に至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明は
(1)(メタ)アクリルアミド基を有するポリウレタンであって、その硬化物の動的粘弾性法により測定される損失弾性率(tanδ)のピーク温度における値は0.2~1.0の範囲にあることを特徴とする自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)、
(2)25℃における硬化物のtanδの値は0.1~0.8の範囲であることを特徴とする前記(1)に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)、
(3)硬化物のガラス転移温度(Tg)が-50~40℃の範囲であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)、
(4)数平均分子量が5,000以上であることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか一項に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)、
(5)ハードセグメント部分の含有量は20~70質量%であることを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか一項に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)、
(6)少なくともポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格から選ばれる1種又は2種以上の骨格を有することを特徴とする前記(1)~(5)のいずれか一項に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)、
(7)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)1~100質量%を含有する自己修復材料用重合性樹脂組成物、
(8)前記(7)に記載の重合性樹脂組成物に、光重合開始剤及び/又は不飽和結合を有する化合物をさらに含有することを特徴とする自己修復材料用活性エネルギー線硬化性樹脂組成物、
(9)前記(8)に記載の組成物を活性エネルギー線照射により重合して得られる自己修復材料用硬化物、
(10)前記(7)に記載の重合性樹脂組成物に、熱重合開始剤及び/又は不飽和結合を有する化合物をさらに含有することを特徴とする自己修復材料用重合性樹脂組成物、
(11)前記(10)に記載の組成物を熱により重合して得られる自己修復材料用硬化物、
(12)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は前記(7)、(8)、(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは前記(9)又は(11)に記載の硬化物を含有する自己修復性コート剤、
(13)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は前記(7)、(8)、(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは前記(9)又は(11)に記載の硬化物を含有する自己修復性フィルム、
(14)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は前記(7)、(8)、(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは前記(9)又は(11)に記載の硬化物を含有する自己修復性粘着シート、
(15)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は前記(7)、(8)、(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは前記(9)又は(11)に記載の硬化物を含有する自己修復性封止材、
(16)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は前記(7)、(8)、(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは前記(9)又は(11)に記載の硬化物を含有する自己修復性インク、
(17)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は前記(7)、(8)、(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは前記(9)又は(11)に記載の硬化物を含有する自己修復性インクジェット用インク、
(18)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は前記(7)、(8)、(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは前記(9)又は(11)に記載の硬化物を含有する自己修復性立体造形用インク、
(19)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は前記(7)、(8)、(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは前記(9)又は(11)に記載の硬化物を含有する自己修復性爪化粧料、
(20)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は前記(7)、(8)、(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは前記(9)又は(11)に記載の硬化物を含有する自己修復性車両外装塗料、
(21)前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のウレタン(メタ)アクリルアミド、又は前記(7)、(8)、(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物、或いは前記(9)又は(11)に記載の硬化物を含有する自己修復性用建築物外装用塗料、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば特定の動的粘弾性を有する自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)及びそれを含有する樹脂組成物は、良好な硬化性と透明性を有し、且つ、得られる硬化物の自己修復性、耐屈曲性及び耐汚染性が高く、柔軟性と強度のバランスに優れた組成物の構成を見出し、本発明に至ったものである。
【0014】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)は、アミド結合とウレタン結合との間の相互作用により分子内及び/又は分子間で水素結合が形成されやすいため、その硬化膜に外力による傷がついても、高分子鎖(ソフトセグメントに該当する)の分子運動に伴う水素結合(ハードセグメントに該当する)の可逆的な結合と切断が繰り返し生じることにより、傷が消失すると発明者らは考えている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)は、分子内及び/又は分子間でアミド基とアミド基同士或いはアミド基とウレタン基との間で水素結合が形成されやすく、また、形成される水素結合は可逆的に結合、解離が可能であり、それによりはしご(ジッパー)型の架橋領域が形成される。このような構造により、ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)が優れた自己修復性を提供することでき、自己修復性材料用樹脂組成物の構成成分として好適に用いることができる。
【0016】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)は、ポリオール、水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物及びポリイソシアネートとの反応で得ることができる。ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)は、その硬化物の自己修復性を有すれば、骨格について特に限定するものではない。具体的にエーテル骨格、エステル骨格、カーボネート骨格、シリコーン骨格、ジエン系骨格、水素添加ジエン系骨格、イソプレン骨格及び水素添加イソプレン骨格、アクリル骨格が挙げられる。また、これらの骨格から選ばれる1種もしくは2種以上の骨格を有してもよい。さらに、ポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格から選ばれる1種又は2種の骨格を有することが好ましい。ポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格を有することにより、ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)は、自己修復性発現のための重要因子である、粘弾特性を示すtanδが特定の範囲内に有するため、得られる硬化膜の強度と柔軟性のバランスがとりやすくなる。なお、ポリオレフィン骨格は共役又は非共役のオレフィン骨格あるいはそれらの水素添加骨格が含まれる。これらの骨格は1種類を単独で含有してもよいし、また2種類以上を含有してもよい。
【0017】
ポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格を有するポリウレタンは、各骨格を有するポリオール、ポリイソシアネート、水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物を反応させることで得られる。ポリオールとしては、ポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリ1,2-ブタジエンポリオール、水添1,2-ポリブタジエンポリオール、ポリ1,4-ブタジエンポリオール、水添1,4-ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオールなどのポリオレフィンポリオール類、炭素数1~12の直鎖、分岐または環状の脂肪族炭化水素または芳香環骨格または複素環骨格を有するポリオールと炭酸ジエステルからなるポリカーボネートポリオール類が挙げられ、これらポリオール類は1種類単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。また、炭素数1~12の直鎖、分岐または環状の脂肪族炭化水素または芳香環骨格または複素環骨格を有するポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、シリコーン骨格に水酸基を導入した類、水酸基含有(メタ)アクリレートとその他(メタ)アクリル酸類、その他(メタ)アクリレート類を共重合することで得られるポリオール類を1種類以上併用してもよい。また、ポリオール中のポリカーボネート骨格及び/又はポリオレフィン骨格を有するポリオールが、本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)を形成するポリオール全体に対して20質量%以上であることが好ましい。20質量%未満であった場合、硬化膜の強度と柔軟性のバランスが崩れやすく、耐屈曲性が低下する場合や自己修復性、耐汚染性が低下する可能性がある。
【0018】
選ばれるポリオールは、数平均分子量450~6,500であることが好ましく、また500以上3,000以下であることがより好ましい。これらのポリオールの数平均分子量が6,500以下であれば、自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)は、活性エネルギー線に対して十分な硬化性を有し、また、ポリオールの数平均分子量が450以上であれば、適度な架橋密度により優れた自己修復性を発現することができる。
【0019】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)を形成するポリオールとして、前記数平均分子量450~6,500のポリカーボネート骨格、ポリオレフィン骨格ポリオールを有するもの以外に、同じ骨格を有しても異なる骨格を有してもよい、数平均分子量450未満のポリオール(以下低分子量ポリオールと呼ぶ)を含有することができる。低分子量ポリオールとは、分子内に2つ以上の水酸基を有し、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、グリセリン、ブタンジオール、ブタントリオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、オクタントリオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、ジヒドロキシオクタデカン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの水酸基2つ以上を有する炭素数1~18の鎖状、もしくはシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、イノシトール、ノルボルナンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルネンジメタノール、ノルボルネンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、アダマンタンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタントリオール、スピログリコール、ジオキサングリコール、1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール、1,4:3,6-ジアンヒドロアンニトール、1,4:3,6-ジアンヒドロイジトール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添テルペンジフェノール及びこれらのEO、PO、カプロラクトン変性物などの脂環状骨格を有するポリオールなどが挙げられる。これらの低分子量ポリオールは1種又は2種以上を含有することも可能である。
【0020】
低分子量ポリオールの含有量は、自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)を形成するポリオールの全体に対して20質量%以下であることが好ましい。その含有量が20質量%以下ならば、良好な柔軟性、屈曲性が得られる。
【0021】
ポリイソシアネートとしては、1分子内に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物が挙げられ、具体的にはトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソンアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート類、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-水添キシリレンジイソシアネート、1,4-水添キシリレンジイソシアネート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式イソシアネート類、又は、これらのアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプなどの多量体が挙げられる。このうち黄変が生じにくいことから、脂肪族、脂環式イソシアネート類、又は、これらのアダクトタイプ、イソシアヌレートタイプ、ビュレットタイプなどの多量体が望ましい。これらポリイソシアネート類は1種類単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。
【0022】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物としては、N-ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)-N-アルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジヒドロキシアルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これら水酸基を有する(メタ)アクリルアミドは1種類単独で使用してもよいし、また2種類以上併用してもよい。中でも、安全性が高く(皮膚刺激性指標のPIIは0)、工業品として調達が容易な点からN-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0023】
水酸基を有する(メタ)アクリルアミド化合物とともに、必要に応じて水酸基を一つ以上有する(メタ)アクリルエステル化合物を併用してもよい。水酸基を有する(メタ)アクリルエステル化合物としては、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0024】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)は、一つ以上の(メタ)アクリルアミド基を有するものである。(メタ)アクリルアミド基はメタクリルアミド基とアクリルアミド基であり、自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド1分子に当たり、(メタ)アクリルアミド基の平均含有個数(官能基数)が1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。また、(メタ)アクリルアミド基と(メタ)アクリルエステル由来の(メタ)アクリレート基の合計個数の平均値(官能基数)が1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。官能基数が1未満であれば、非重合性化合物の存在による光硬化性、硬化膜の表面硬度や強度が低下する問題があり、一方、官能基数が10を超えると、硬化膜の柔軟性が低減する問題がある。
【0025】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の1分子当たりの(メタ)アクリルアミド基の個数と(メタ)アクリレート基の個数の比率(モル%)は100/0~25/75の範囲内であれば、耐汚染性と自己修復性を両立することができ、好ましい。また、個数の比率(モル%)は100/0~50/50であれば、耐汚染性がさらに改善されるため、より好ましい。
【0026】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)のハードセグメント部分の含有量は20~70質量%の範囲内であれば、得られる硬化物の自己修復性が良好であり、好ましい。また、ハードセグメント部分の含有量は30~60質量%の範囲内であることがより好ましい。なお、ハードセグメント部分の含有量は、自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の質量に対して、当該ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)を構成するポリイソシアネート、低分子量ポリオール、水酸基を有する(メタ)アクリルアミド及び水酸基を有する(メタ)アクリレートの質量の合計の割合(質量%)で定義される。
【0027】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)のアクリル当量、即ち、(メタ)アクリルアミド基又は(メタ)アクリレート基の1モル当たりの分子量(g/eq)が100~100,000であることが好ましく、1,000~50,000であることがより好ましく、1,000~30,000であることが最も好ましい。アクリル当量が100~100,000の範囲内にあれば、優れた自己修復性と耐汚染性、耐屈曲性を付与することができる。
【0028】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の分子量は、数平均で5,000~100,000の範囲であることが好ましく、また5,000~50,000の範囲であることがより好ましく、5,000~30,000の範囲であることが最も好ましい。分子量が5,000未満であれば、得られる硬化膜の屈曲性が不十分となりやすい。一方、分子量が100,000を超えると、樹脂組成物の粘度が高くなり、塗布性が十分に満足できない問題や、得られる硬化膜にタック(べとつき)が残りやすい問題がある。
【0029】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の硬化膜のガラス転移温度Tgは、-50~40℃の範囲にあることが好ましく、-40~30℃の範囲にあることがより好ましく、-20~25℃の範囲にあることが最も好ましい。この範囲内にあれば、良好な自己修復性を発現することができる。
【0030】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の硬化膜のTgの測定方法は特に限定されず、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry(DSC))、熱機械分析(Thermomechanical Analysis(TMA))、動的粘弾性測定(Dynamic Mechanical Analysis(DMA))などの熱分析により測定可能である。また、1種又は2種以上の装置により測定することができる。
【0031】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の硬化膜の動的粘弾性(DMA)法により測定した損失弾性率tanδのピーク温度は、-20~60℃の範囲であることが好ましく、-10~30℃の範囲であることがより好ましい。tanδのピーク温度がこの範囲であれば、優れた自己修復性を発現できる。
【0032】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の硬化膜の動的粘弾性(DMA)法により測定した損失弾性率tanδのピーク温度における値は、0.2~1.0の範囲であることが好ましく、0.2~0.8の範囲であることがより好ましい。tanδのピーク温度における値がこの範囲であれば、優れた自己修復性と高い耐屈曲性を発現できる。
【0033】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の硬化膜の動的粘弾性(DMA)法により測定した25℃における損失弾性率tanδの値は、0.1~0.8の範囲であることが好ましく、0.2~0.7の範囲であることがより好ましい。25℃におけるtanδの値がこの範囲であれば、優れた自己修復性と高い耐汚染性を発現できる。
【0034】
本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の硬化膜の動的粘弾性(DMA)法により測定した損失弾性率tanδのピーク温度と動的粘弾性(DMA)法以外の方法により測定したガラス転移温度Tgの差は、10~40℃の範囲であることが好ましく、15~35℃の範囲であることがより好ましい。両者の温度差がこの範囲であれば、優れた自己修復性を発現できる。
【0035】
本発明の自己修復材料用樹脂組成物中の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の含有量は1質量%以上であれば、得られる硬化膜の自己修復性が発現できる。また、その含有量は20質量%以上であると、硬化膜の自己修復性が著しく表れるため、好ましい。自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)は分子量や官能基数によって、自己修復材料用樹脂組成物としてそのまま(100質量%)用いることができる。
【0036】
自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)と併用する他成分として、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)を配合することができる。本発明に用いられるエチレン性不飽和基を有する化合物(B)((A)を除く)は、単官能不飽和化合物(b1)と2官能以上の不飽和化合物(多官能不飽和化合物)(b2)から構成される。(A)の分子量、含有する(メタ)アクリルアミド基の数により、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)として(b1)と(b2)を併用しても良いが、(b1)、(b2)のそれぞれ単独を自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)に添加して用いることが可能である。また、エチレン性不飽和基を有する化合物(B)の含有量は、自己修復材料用樹脂組成物(E)全体に対して0~80質量%であることが好ましい。(B)の含有量はこの範囲内であれば、(A)との配合比調整によって、自己修復性、表面硬度と柔軟性、強靭性、耐汚染性のバランスよい硬化膜が得られる。
【0037】
前記単官能不飽和化合物(b1)は、分子内にエチレン性不飽和基一つを有するモノマーであれば、特に限定することはない。また、エチレン性不飽和基はラジカル重合性を有すれば特に限定されず、具体的には(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基、マレイミド基、α置換マレイミド基、α,β置換マレイミド基などが挙げられる。(b1)の含有量は、(B)全体に対して30~100質量%であることが好ましい。この比率で配合することによって得られる硬化膜の自己修復性、表面硬度、光沢性と柔軟性が良好である。
【0038】
単官能性不飽和化合物(b1)のうち、(メタ)アクリレート基を含む化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、炭素数が1~22の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したアルキル(メタ)アクリレート類、炭素数が1~18の直鎖、分岐、環状のヒドロキシアルキル基を導入したヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸とヒドロキシアルキルカルボン酸類からなる(メタ)アクリル酸エチルカルボン酸、(メタ)アクリル酸エチルコハク酸、(メタ)アクリル酸エチルフタル酸、(メタ)アクリル酸エチルヘキサヒドロフタル酸などの(メタ)アクリル酸アルキルカルボン酸類、炭素数が1~18の直鎖、分岐、環状のアルキルスルホン酸基を導入した(メタ)アクリル酸アルキルスルホン酸類、炭素数が1~18の直鎖、分岐、環状のアルキルリン酸基を導入した(メタ)アクリル酸アルキルリン酸類、炭素数が1~18のアルキル基と炭素数1~4のアルキレングリコール基からなる官能基を導入したアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、アルコキシジアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、アルコキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類や、フェノキシ基と炭素数1~4のアルキレングリコール基からなる官能基を導入したフェノキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、フェノキシジアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、フェノキシトリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートや、炭素数が1~6のアミノアルキル基を導入したN-アルキルアミノ(メタ)アクリレート類や、炭素数が1~6のアミノアルキル基と炭素数1~6のアルキル基からなるN-アルキルアミノアルキル基を導入したN-アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類や、炭素数が1~6のアミノアルキル基と炭素数1~6のアルキル基からなるN,N-ジアルキルアミノアルキル基を導入したN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類や、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートなどの環状構造を導入した(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどのエポキシ基を導入した(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0039】
単官能性不飽和化合物(b1)のうち、(メタ)アクリルアミド基を含む化合物としては、(メタ)アクリルアミド、モノ又はジ置換(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンなどが挙げられ、また、モノ又はジ置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、炭素数1から18の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したN-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基を導入したN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル-N-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のヒドロキシアルキル基および炭素数1~6のアルキル基を導入したN-アルキル-N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N-アルキル-N-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミドや、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアルコキシ基と炭素数1~6のアルキレン基からなるアルコキシアルキル基を導入したN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(アルコキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアルコキシ基と炭素数1~6のアルキレン基からなるアルコキシアルキル基、炭素数が1~6のアルキル基を導入したN-アルキル-N-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアルキルスルホン酸基を導入したN-スルホアルキルアクリルアミド、炭素数が1~6のアミノアルキル基を導入したN-アルキルアミノ(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアミノアルキル基と炭素数1~6のアルキル基からなるN-アルキルアミノアルキル基を導入したN-アルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数が1~6のアミノアルキル基と炭素数1~6のアルキル基からなるN,N-ジアルキルアミノアルキル基を導入したN,N-ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0040】
また、単官能性不飽和化合物(b1)が(メタ)アクリルアミド基を含む化合物として、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルフォリン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、メトキシブチル(メタ)アクリルアミドが挙げられ、(メタ)アクリルアミド基を含む化合物が硬化膜の強靭性や基材への密着性を付与できるため、より好ましい。
【0041】
単官能性不飽和化合物(b1)のうち、ビニル基を含む化合物としては、炭素数が1~22のカルボン酸を導入したカルボン酸ビニルエステル、炭素数が1~22の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したアルキルビニルエーテル、ビニルクロライド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルオキサゾリン、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、炭素数が1~22の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したマレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルアミド、マレイン酸ジアルキルアミド、マレイン酸アルキルイミド、フマル酸モノアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、フマル酸モノアルキルアミド、フマル酸ジアルキルアミド、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルアミド、イタコン酸ジアルキルアミド、イタコン酸アルキルイミド、ビニルカルボン酸、ビニルスルホン酸、ビニルリン酸などが挙げられる。
【0042】
単官能性不飽和化合物(b1)のうち、アリル基を含む化合物としては、炭素数が1~22のカルボン酸を導入したカルボン酸アリルエステル、炭素数が1~22の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したアルキルアリルエーテル類、フェニルアリルエーテル、アルキルフェニルアリルエーテル、アリルアミン、分岐、環状のアルキル基を導入したモノまたはジアルキルアリルアミンなどが挙げられる。
【0043】
単官能性不飽和化合物(b1)のうち、マレイミド基を含む化合物としては、炭素数が1~22の直鎖、分岐、環状のアルキル基を導入したN-アルキルマレイミド、N-アルキル-α-メチルマレイミド、N-アルキル-α-エチルマレイミド、N-アルキル-α,β-ジメチルマレイミド、N-アルキル-α-フェニルマレイミド、炭素数が1~12の直鎖、分岐、環状のヒドロキシアルキル基を導入したN-ヒドロキシアルキルマレイミド、N-ヒドロキシアルキル-α-メチルマレイミド、N-ヒドロキシアルキル-α-エチルマレイミド、N-ヒドロキシアルキル-α,β-ジメチルマレイミド、N-ヒドロキシアルキル-α-フェニルマレイミド、マレイミド基を有するアルコキシシラン化合物、マレイミド基を有するカルボン酸化合物などが挙げられる。
【0044】
本発明に用いられるエチレン性不飽和基を有する化合物(B)において、皮膚刺激性や臭気など安全性の観点から単官能性不飽和化合物(b1)は、(メタ)アクリレート系モノマー、(メタ)アクリルアミド系モノマーが好ましく、また硬化性の観点からアクリルアミド系モノマーが好ましい。
【0045】
これらの単官能性不飽和化合物(b1)は1種類を単独で使用してもよいし、また2種類以上を併用してもよい。
【0046】
前記多官能性不飽和化合物(b2)としては、分子内にエチレン性不飽和基2つ以上を有するモノマーやオリゴマーであれば、特に限定されることはない。また、エチレン性不飽和基はラジカル重合性を有すれば特に限定されず、具体的には(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、ビニルエーテル基、メチルビニルエーテル基、アリル基、(メタ)アリルエーテル基などが挙げられる。また、分子内にこれらのエチレン性不飽和基は、同一の官能基2つ以上を有するものでもよいし、異なる官能基を任意に選んだ2種以上を組み合わせたものでもよい。(b2)の含有量は、(B)全体に対して0~30質量%であることが好ましい。(b2)の含有量は(B)全体に対して30質量%を超えると、調製される活性エネルギー硬化性組成物の粘度が高く塗布性が低下する可能性がある。また、得られる硬化膜の柔軟性が不十分であり、基材の凹凸への追従性が低下し、耐久性が不十分となる可能性がある。
【0047】
多官能性不飽和化合物(b2)のうち、例えば、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(トリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレン(炭素数1~4)グリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3(又は1,4)-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化(シクロ)ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリウレタンジ(メタ)アクリルアミド、アリル(メタ)アクリルアミド、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、多官能であれば、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートでもかまわない。これらの多官能性不飽和化合物(b2)は1種類を単独で使用してもよいし、また2種類以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の自己修復材料用樹脂組成物(E)は可視光線や紫外線照射、又は加熱により十分に硬化することができる。通常、速やかな硬化を行うためには重合開始剤(C)を含有する必要がある。可視光線や紫外線照射を利用する場合は光重合開始剤(c1)を含有する必要があり、加熱を利用する場合は熱重合開始剤(c2)を含有する必要がある。エチレン性不飽和基を有する化合物(B)の不飽和基がマレイミド基、α置換マレイミド基とα,β置換マレイミド基からなる群より選択される1種以上の不飽和結合を含む官能基である場合、これらの不飽和基が光照射や加熱により活性ラジカルを生じるため、自己修復材料用樹脂組成物(E)には重合開始剤(C)を含有させなくてもよい。
【0049】
本発明で用いる光重合開始剤(c1)としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、αアミノケトン系、キサントン系、アントラキノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、高分子光重合開始剤系などの通常使用されるものから適宜選択すればよい。例えば、アセトフェノン類としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1、ベンゾイン類としては、ベンゾイン、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン、α-アリルベンゾイン、α-ベンゾイルベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、αアミノケトン類としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-(4-メチルフェニル)メチル-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、キサントン類としては、キサントン、チオキサントン、アントラキノン類としては、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、アシルフォスフィンオキサイド類としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、高分子光重合開始剤としては2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパン-1-オンのポリマーなどが挙げられる。これらの光重合開始剤(c1)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
本発明で用いる熱重合開始剤(c2)としては、アゾ系、過酸化物系、高分子熱重合開始剤系などの通常使用されるものから適宜選択すればよい。例えば、アゾ類としては、2,2‘-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、ジメチル-1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボン酸)など、過酸化物類としては、過酸化ベンゾイル、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジt-ヘキシルペルオキシド、2,2’-ビス(4,4’-t-ブチルペルオキシシクロへキシル)プロパン、過安息香酸t-ブチルなどが挙げられる。これらの熱重合開始剤(c2)は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
重合開始剤(C)の含有量は、自己修復材料用樹脂組成物(E)全体に対して0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。0.1質量%以上である場合には、薄塗りでも十分な硬化性を有し、得られる硬化膜の強度も耐久性も良好である。10質量%以下である場合には、活性エネルギー硬化性組成物(E)のポットライフが十分に長く、保管中のゲル化などのトラブルが発生しない。
【0052】
本発明の自己修復材料用樹脂組成物(E)には、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。具体的には、添加剤としては、熱重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線増感剤、チオール化合物などの硬化促進剤、防腐剤、リン酸エステル系およびその他の難燃剤、界面活性剤、帯電防止剤、顔料、染料などの着色剤、香料、消泡剤、充填剤、シランカップリング剤、表面張力調整剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、有機フィラー、無機フィラー、シリカ粒子などを添加することができる。これらその他成分の添加量は、本発明による自己修復材料用樹脂組成物(E)が発現する特性に悪影響を与えない程度であれば特に限定されず、(E)全体に対して5質量%以下の範囲が好ましい。
【0053】
本発明の自己修復材料用樹脂組成物(E)は、溶剤を含まない組成物として用いることもできるが、粘度の調製により塗布性を向上させるため、必要に応じて、溶剤(D)を含有してもよい。溶剤(D)としては水や有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、溶剤を硬化時には除去する観点から、留去しやすい溶剤として常圧における沸点が50~130℃であることが好ましく、さらに、希釈性の点から、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン系溶剤が好ましく、安全性の面からエステル系溶剤やケトン系溶剤が好ましく、なかでも酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンがより好ましい。これらの溶剤は、1種単独でも、2種以上含有してもよい。また、溶剤を含有する場合の含有量は、自己修復材料用樹脂組成物(E)全体に対して、1.0~70質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましい。この範囲内であれば、本発明の自己修復材料用樹脂組成物(E)を製造しやすく、且つ、硬化膜の期待特性に悪影響を与える恐れがない。
【0054】
本発明の自己修復材料用樹脂組成物(E)が溶剤(D)を含有する場合、前記各種基材上に塗布し、溶媒などを蒸発させてから光硬化を行うことが好ましい。また、基材に直接塗工する場合、バーコーター法、スピンコート法、スプレーコート法、ディッピング法、グラビアロール法、ナイフコート法、リバースコート法、ダイコート法、カーテンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法など通常の塗膜形成法を用いることが可能である。硬化膜の厚みは0.1μm~250μmの範囲が好ましく、0.5μm~100μmがより好ましく、1μm~50μmが特に好ましい。膜厚が上記範囲であれば、自己修復性が良好であり、硬化物の柔軟性や耐汚染性などに関しても良好である。
【0055】
本発明の自己修復材料用樹脂組成物(E)の23℃における粘度は、10~100,000mPa・sであることが好ましく、15~10,000mPa・sであることがより好ましい。粘度が上記範囲であれば、塗膜形成時にトラブルが発生しにくくなる。
【0056】
本発明の自己修復材料用樹脂組成物(E)は活性エネルギー線照射により十分に硬化することができる。活性エネルギー線としては、可視光、電子線、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線などの光エネルギー線が上げられる。中でも活性エネルギー線の発生装置、硬化速度及び安全性のバランスから紫外線を使用することが好ましい。また、紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線LEDランプ、マイクロ波方式エキシマランプなどが挙げられる。
【0057】
本発明の自己修復材料用樹脂組成物(E)の光硬化に必要な照射エネルギーは、用途や光源によって多少異なるが、照射エネルギー(積算光量)は5~10,000mJ/cmの範囲が好ましく、10~5,000mJ/cmがより好ましい。この照射エネルギーが範囲であれば、樹脂組成物が十分に硬化できる。
【0058】
本発明の自己修復材料用樹脂組成物(E)の熱硬化における温度は、使用する熱重合開始剤(c2)の種類により異なるが、60~150℃の範囲が好ましく、80~120℃の範囲がより好ましい。温度がこの範囲であれば、樹脂組成物の分解が発生しにくく、十分に硬化できる。また溶剤(D)を含む場合には、溶剤の乾燥と同時に硬化を行うことができる。
【0059】
本発明の自己修復材料用樹脂組成物(E)の硬化物の破断伸度は200%以上であることが好ましく、300%以上であることがより好ましい。破断伸度がこの値以上であれば、硬化物が十分な強度と柔軟性を有する。
【実施例
【0060】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」及び「%」は特記しない限りすべて質量基準である。本発明の自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)の物性分析は下記方法により行った。
【0061】
(1)分子量測定
装置 :Prominence-I LC-2030C(島津製作所社製)
ガードカラム :Shodex KD-G(昭和電工社製)
カラム :Shodex KD-803(昭和電工社製)
カラム温度 :40℃
溶媒 :DMF
送液速度 :0.5mL/min
標準サンプル :ポリスチレン
(2) ガラス転移温度(Tg)測定
サンプル :自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)100質量部
光重合開始剤2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-
1-オン(Omnirad 1173、IGM ResinsB.V.製)
3質量部の紫外線照射硬化物(積算光量1,000mJ/cm
装置 :DSC-60Plus(島津製作所社製)
昇温速度 :10℃/min
(3)損失弾性率(tanδ)測定
サンプル :前記ガラス転移温度測定で使用したサンプルと同様
装置 :DMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)
昇温温度 :4℃/min
【0062】
実施例及び比較例に用いられる単官能性不飽和化合物(b1)は、以下に示す。
b1-1:イソボルニルアクリレート(IBOA)
b1-2:4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート(KJケミカルズ株式会社の登録商標「Kohshylmer」TBCHA)
b1-3:アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ株式会社の登録商標「ACMO」)
b1-4:ジメチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社の登録商標「DMAA」)
b1-5:ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社の登録商標「DEAA」)
【0063】
実施例及び比較例に用いられる多官能性不飽和化合物(b2)は、以下に示す。
b2-1:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、3官能)
b2-2:ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)アクリレート(PETA、3~4官能)
b2-3:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、6官能)
b2-4:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA、2官能)
b2-5:EBECRYL 9270(2官能ウレタンアクリレート、ダイセル・オルネクス社)
【0064】
実施例及び比較例に用いられる光重合開始剤(c1)は、以下に示す。
c1-1:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(Omnirad 1173、IGM ResinsB.V.製)
c1-2:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM ResinsB.V.製)
c1-3:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Omnirad TPO、IGM ResinsB.V.製)
【0065】
実施例及び比較例に用いられる熱重合開始剤(c2)は、以下に示す。
c2-1:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN、富士フイルム和光純薬製)
【0066】
実施例及び比較例に用いられる溶剤(D)は、以下に示す。
D-1:酢酸エチル
D-2:酢酸ブチル
D-3:メチルエチルケトン
【0067】
実施例に用いられる自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A-1)~(A-4)、比較例に用いられる(メタ)アクリレート基を有するポリウレタン(G-1)~(G-2)の数平均分子量、ガラス転移温度、tanδピーク温度、その温度でのtanδの値、25℃tanδの値、ウレタンを構成するポリオールの構造、ポリイソシアネートの構造、水酸基含有化合物の構造、(メタ)アクリルアミドと(メタ)アクリレートの比率(モル%)などを表1に示す。表1中の略称が表す構造は以下に示す。
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
IPDI:イソホロンジイソシアネート
TMHDI:2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの混合物
H6XDI:1,3-水添キシリレンジイソシアネート
HEAA:N-ヒドロキシエチルアクリルアミド
HEMAA:N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド
MHEAA:N-ヒドロキシエチル-N-メチルアクリルアミド
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
DPPA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
【0068】
【表1】
【0069】
実施例1 自己修復材料用樹脂組成物調製及び評価
自己修復性ウレタン(メタ)アクリルアミド(A)として(メタ)アクリルアミド基を有するポリカーボネート骨格のポリウレタン(A-1)99.9質量部、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(C-1)0.1質量部及び溶剤(D)として酢酸エチル20質量部をそれぞれ容器に加え、室温にて3時間攪拌し、均一な液体である自己修復材料用樹脂組成物(E-1)を得た。
【0070】
(4)粘度
得られた自己修復材料用樹脂組成物(E-1)の粘度をブルックフィールド型粘度計(コーンプレート使用)で23℃において測定した結果を対数にて表示した。
【0071】
得られた自己修復材料用樹脂組成物(E-1)を厚さ100μmのPETフィルム(「コスモシャインA-4100」東洋紡(株)製)易接着処理面上にバーコーターを用い、乾燥後膜厚が10μmとなるように塗布した後、80℃にて3分間乾燥し、未硬化の塗膜を得た。紫外線照射(高圧水銀ランプ 300mW/cm、1,000mJ/cm)して塗膜を硬化させ、硬化膜層を有するPETフィルムを得た。得られた積層体を30mm角に切り取り、硬化膜層の外観、耐タック性、密着性、自己修復性、耐屈曲性と耐汚染性を下記方法により評価を行い、その結果を表2に示す。
【0072】
(5)外観
得られた積層体の表面を目視にて観察した。
○:積層体にゆず肌状の面観が確認できない。
×:積層体にゆず肌状の面観が一部分もしくは全体的に確認できる。
【0073】
(6)耐タック性
得られた積層体の表面を指で触り、べたつき具合を評価した。
◎:べたつきが全くない。
〇:若干のべたつきがあるが、表面に指の跡が残らない。
△:べたつきがあり、表面に指の跡が残る。
×:べたつきがひどく、表面に指が貼りつく。
【0074】
(7)密着性
得られた積層体表面に、JIS K 5600に準拠し、カッターナイフで1mm四方の碁盤目を100個作製し、市販のセロハンテープを貼りあわせた後に剥離した際の、積層体表面に残った碁盤目の個数を評価した。
◎:残存した碁盤目の個数が100個
○:残存した碁盤目の個数が90~99個
△:残存した碁盤目の個数が60~89個
×:残存した碁盤目の個数が60個未満
【0075】
(8)自己修復性
得られた積層体表面を、室温23℃、湿度50%の条件下、真鍮ブラシにより200gの荷重をかけて10往復擦ったときの表面状態を目視によって評価した。
◎:傷が3分以内に復元する。または傷がつかない。
○:3分後に傷が認められるが、24時間後に復元または、60℃にて8時間保持することにより復元する。
×:3分後に傷が認められ、60℃にて8時間保持しても傷が復元しない。
【0076】
(9)耐屈曲性
得られた積層体を塗膜面が外側になるように180°に折り曲げ、1kgの重しを載せて10分間放置し、硬化膜表面の割れの有無を目視にて観察した。
◎:まったく割れが見られなかった。
○:折り曲げ部が一部白化した。
△:折り曲げ部において一部割れが見られた。
×:折り曲げ部において割れが見られた。
【0077】
(10)耐汚染性
得られた積層体表面にエタノールとオレイン酸を直径1cm程度となるようにそれぞれ別々の箇所に塗布し、室温23℃にて1時間保持後、中性洗剤にて洗い流し、表面の状態を観察した。
◎:エタノールとオレイン酸のいずれの跡もまったく見られなかった。
○:エタノール及び/又はオレイン酸を塗布した部分に透明な跡がわずかに見られる。
△:エタノール及び/又はオレイン酸を塗布した部分に白く跡が残り、表面が膨れている。
×:エタノール及び/又はオレイン酸を塗布した部分がべたつき、表面が剥がれている。
【0078】
実施例2、4~8および比較例1~2
表2に記載の組成に変えた以外は実施例1と同様に自己修復材料用樹脂組成物を調製し、硬化フィルム及び積層体を作製、評価した結果を表2に示す。
【0079】
実施例3
実施例1と同様に調製した自己修復材料用樹脂組成物(E-3)を厚さ100μmのPETフィルム(「コスモシャインA-4100」東洋紡(株)製)易接着処理面上にバーコーターを用い、乾燥後膜厚が10μmとなるように塗布した後、80℃にて4時間乾燥を行い、硬化膜層を有するPETフィルムを得た。得られた積層体を30mm角に切り取り、硬化膜層の外観、耐タック性、密着性、自己修復性、耐屈曲性、耐汚染性を下記方法により評価を行った。その結果を表2に示す。
【0080】
表2
【0081】
実施例の結果に示されたとおり、本発明による自己修復材料用樹脂組成物は比較例よりも良好な耐タック性を示すことから光硬化においても熱硬化においても高い硬化性を有し、その硬化膜は優れた自己修復性と耐汚染性が両立した物性を示している。またいずれの実施例もコート剤として使用可能な外観や密着性、屈曲性を有し、活性エネルギー線硬化性自己修復コート剤組成物や活性エネルギー線硬化性爪装飾剤組成物、活性エネルギー線硬化性車両外装保護剤組成物として利用できる。密着性が良好な実施例4~8は活性エネルギー線硬化性粘着剤組成物や活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、活性エネルギー線硬化性封止材組成物として優れている。粘度が100mPa・s以下である実施例2、5は特に操作性に優れ、インクジェット用インク組成物としても好適である。硬化性に優れる本発明のうち、実施例4は溶剤を含まず、粘度も1000mPa・s以下であるため、DLP方式やSLA方式の光造形等で活性エネルギー線硬化性立体造形用樹脂組成物として好適に使用することもできる。耐汚染性および耐屈曲性に優れた硬化物が得られることからいずれの実施例も活性エネルギー線硬化性加飾フィルム用樹脂組成物として好適に使用することもできる。一方で比較例は硬化性が低く、また自己修復性がみられる比較例1では耐汚染性が低く、耐汚染性が良好な比較例2では自己修復性がみられない。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明してきたように、本発明の自己修復材料用樹脂組成物は、高い硬化性を有し、その硬化膜は優れた自己修復性、屈曲性、耐汚染性、柔軟性、強度を示すため、自己修復コーティング剤、粘接着剤、封止材、インクジェット用インク、立体造形用樹脂、爪装飾材、自動車外装保護、加飾フィルムなどの機能部材、デバイスへとして、好適に用いることができる。