(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ソノトロードおよびガイドシャフトのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20231128BHJP
A61B 17/32 20060101ALI20231128BHJP
A61B 17/88 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
A61B17/00 700
A61B17/32 510
A61B17/88
(21)【出願番号】P 2020542741
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2019052868
(87)【国際公開番号】W WO2019154833
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-03
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】501485227
【氏名又は名称】ウッドウェルディング・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】シュベリー,アンドレ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-223582(JP,A)
【文献】特開2001-8943(JP,A)
【文献】実用新案登録第2508203(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 ― 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動を伝達するために使用されるシステムであって、ソノトロード(1)とガイドシャフト(2)とを備え、前記ソノトロード(1)は、遠位端(1.1)と近位端(1.2)とを有し、かつ、波長を有し前記遠位端(1.1)と前記近位端(1.2)との間の少なくとも1つの波節位置(N)と前記遠位端(1.1)の波腹(A)位置とを含む定常波で振動するように設計され、前記ガイドシャフト(2)は、遠位端(2.1)と、近位端と、前記遠位端(2.1)から前記近位端まで延在する貫通開口部(3)とを含み、動作について、前記ソノトロード(1)は、径方向クリアランスを有する前記ガイドシャフト(2)の前記貫通開口部(3)を通って延在し、前記ガイドシャフト(2)の前記遠位端(2.1)は、前記ソノトロード(1)の前記少なくとも1つの波節位置のうち最遠位波節位置(N1)の遠位側に位置し、
前記ソノトロード(1)は、前記最遠位波節位置(N1)の断面が大きな部分(1.3)を含み、当該部分(1.3)は、前記ソノトロード(1)の一体部分であり、前記ソノトロード(1)と同じソノトロード材料で形成されており、それによって、前記ソノトロード(1)と前記ガイドシャフト(2)との間の前記径方向クリアランス(RC)は、前記最遠位波節位置(N1)における前記ソノトロードの前記部分(1.3)についての最小径方向クリアランス(RC1)であり、前記ソノトロード(1)の前記遠位端(1.1)には、最遠位の波腹位置に搭載されたポリマーリング(10)が備えられている、システム。
【請求項2】
超音波振動を伝達するために使用されるシステムであって、ソノトロード(1)とガイドシャフト(2)とを備え、前記ソノトロード(1)は、遠位端(1.1)と近位端(1.2)とを有し、かつ、波長を有し前記遠位端(1.1)と前記近位端(1.2)との間の少なくとも1つの波節位置(N)と前記遠位端(1.1)の波腹(A)位置とを含む定常波で振動するように設計され、前記ガイドシャフト(2)は、遠位端(2.1)と、近位端と、前記遠位端(2.1)から前記近位端まで延在する貫通開口部(3)とを含み、動作について、前記ソノトロード(1)は、径方向クリアランスを有する前記ガイドシャフト(2)の前記貫通開口部(3)を通って延在し、前記ガイドシャフト(2)の前記遠位端(2.1)は、前記ソノトロード(1)の前記少なくとも1つの波節位置のうち最遠位波節位置(N1)の遠位側に位置し、前記ソノトロード(1)と前記ガイドシャフト(2)との間の前記径方向クリアランス(RC)は、前記最遠位波節位置(N1)を含むソノトロード部分(1.3)についての最小径方向クリアランス(RC1)であり、前記ソノトロード(1)の前記遠位端(1.1)には、最遠位の波腹位置に搭載されたポリマーリング(10)が備えられており、
前記ガイドシャフト(2)の前記遠位端(2.1)は、前記ソノトロード(1)の前記遠位端(1.1)よりも近位方向に位置し、動作について、透過性スリーブまたはカニューレを挿入されたねじが前記ガイドシャフト(2)の前記遠位端(2.1)に接続され、前記透過性スリーブは前記ソノトロード(1)の前記遠位端(1.1)を包む、システム。
【請求項3】
前記ガイドシャフト(2)の前記遠位端(2.1)は、前記ソノトロード(1)の前記遠位端(1.1)と実質的に同じ軸方向位置を有する、または前記ソノトロード(1)の前記遠位端(1.1)を遠位方向に超えて伸び、処置要素が、前記ソノトロード(1)の前記遠位端(1.1)に連結されている、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記最遠位波節位置(N1)を含む前記ソノトロード部分(1.3)は、隣接するソノトロード部分よりも大きな断面を有し、前記ガイドシャフト(2)の前記貫通開口部(3)は、断面が一定の遠位部分を含み、全ての動作中、前記最遠位波節位置(N1)を含む前記ソノトロード部分(1.3)が位置している、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記最遠位波節位置(N1)を含む前記ソノトロード部分(1.3)は、前記ソノトロードの一体部分である、
請求項2のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ソノトロード(1)の長さは前記波長の半分の2倍または3倍に相当する、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記最小径方向クリアランス(RC1)は0.01~0.1mmの範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記最遠位波節位置(N1)を含む前記ソノトロード部分(1.3)に隣接する位置の前記ソノトロード(1)と前記ガイドシャフト(2)との間の径方向クリアランスは、前記最小径方向クリアランス(RC1)よりも約5~10倍大きい、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記最遠位波節位置(N1)を含む前記ソノトロード部分(1.3)に遠位方向に隣接する位置の前記ソノトロード(1)と前記ガイドシャフト(2)との間の径方向クリアランスは、前記最遠位波節位置(N1)を含む前記ソノトロード部分(1.3)に近位方向に隣接する位置と比較して大きい、請求項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記最遠位波節位置(N1)を含む前記ソノトロード部分(1.3)の軸方向延在部分は、前記波長の半分の2~4%である、請求項1から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記ソノトロード(1)と前記ガイドシャフト(2)の前記貫通開口部(3)とは、実質的に円形の断面を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記ソノトロード(1)はチタンで形成される、および/または、前記ガイドシャフト(2)はステンレス鋼から形成される、請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記最遠位波節位置(N1)を含む前記ソノトロード部分(1.3)は3mmの直径を有し、前記ガイドシャフト(2)の遠位部分は3.1mmの直径の貫通内腔を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記最遠位波節位置(N1)を含む前記ソノトロード部分(1.3)に隣接するソノトロード部分は2.5mmの直径を有し、前記ガイドシャフト(2)の遠位部分は直径が3.1mmの貫通内腔を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記ポリマーリング(10)は、前記ソノトロード(1)の円周溝内に位置し、前記ソノトロード(1)から径方向に突出している、請求項1~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記ポリマーリング(10)はPEEKまたはポリウレタンから形成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載のシステムの一部である、ソノトロード(1)。
【請求項18】
遠位端(1.1)に連結された処置要素をさらに備える、請求項17に記載のソノトロード。
【請求項19】
前記処置要素は切刃(40)である、請求項18に記載のソノトロード。
【請求項20】
前記切刃(
40)は、粗いことによって、または対応する面構造を含むことによって、研削またはラスピングのために備えられた側面を含む、請求項19に記載のソノトロード。
【請求項21】
カニューレを挿入され穿孔のあるねじまたは透過性スリーブを、熱可塑性特性を有する材料と前記熱可塑性特性を有する前記材料を液化させる振動エネルギーの使用とによって強化または増強することにより非ヒト動物の組織を処置するための装置での、請求項1~16のいずれか1項に記載のシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ソノトロードおよびガイドシャフトを備えるシステムに関し、システムに好適なソノトロードに関する。ソノトロードおよびガイドシャフトは、ソノトロードの長さの少なくとも一部がガイドシャフトを通って延在するような位置になるとソノトロードの動作を可能にするように、互いに適合されている。システムは、超音波振動がたとえば変換器ユニットによって発生し、ソノトロードを通過してソノトロードの遠位端に送られて、物体または媒体に加えられて所望の効果を実現する装置での使用に好適である。本発明に係るシステムは特に、ソノトロード遠位端が長手方向に振動し、ソノトロードが細長く、かつ、ソノトロードの長さの大部分がガイドシャフト内で延在する用途に好適である。これは、たとえば低侵襲手術の医療分野の場合の事例であり、その場合、たとえば超音波ハンドピース内に収容されている変換器ユニットは患者の外側に位置し、ソノトロードは、変換器ユニットに連結され、患者内で組織を通過して標的部位に到達しなければならず、ソノトロードがそれを通過して到達する組織は、ガイドシャフトによって振動の影響を受けない状態に保たれるべきであり、それを通ってソノトロードが到達する組織開口部は、可能な限り小さくなければならない。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
WO2011/054123では、熱可塑性要素によって、硬組織内の透過性スリーブ(特にカニューレを挿入された骨ねじ)を固定するのに好適なシステムが開示されている。このように固定するために、熱可塑性要素は透過性スリーブ内に位置決めされ、透過性スリーブは超音波ハンドピースに連結され、その場で液化され、熱可塑性要素の近位面に対して押圧されているハンドピースのソノトロードによって、透過性スリーブを通って少なくとも部分的に押圧されている。超音波ハンドピースは筐体を含み、筐体では、変換器ユニットとソノトロードとの組合せが筐体内で制限された態様で軸方向に移動可能で筐体から音響的に分離されるように、ソノトロードの遠位端が遠位方向の筐体端から突出可能になるように、かつ、近位方向の筐体部分と変換器ユニットとの間で作用するドライバスプリングが変換器ユニットとソノトロードとの組合せを筐体の近位端から離すように付勢するように、変換器ユニットと、それに連結されたソノトロードと、ドライバスプリングとが配置されている。内部に熱可塑性要素が位置決めされた透過性スリーブが筐体の遠位端に連結されているシステムの組立てられた構成では、システムの一部は閉じた負荷フレームを形成し、この負荷フレームでは、熱可塑性要素がソノトロードの遠位面と透過性スリーブとの間で圧縮され、ソノトロードは、遠位方向の筐体部分の内面上に配置された2つの摺動ブッシュによって支持されている筐体と透過性スリーブとによって完全に封止されている。
【0003】
EP1790303(オリンパス)の公報では、ガイドチューブ内に配置されたソノトロードを備える超音波処置装置が開示され、遠位方向ソノトロード端部はガイドチューブから突出し、組織を処置するために形成されている。ソノトロードの波節位置において、シリコンゴムで形成された支持部材がガイドチューブに搭載されている。同様に、DE3707403、US2016/00374708およびEP340125の公報では、ソノトロードが波節位置において弾性および/または耐摩耗性リングを保持するソノトロード配列が開示されている。US5346502の公報では、波節位置でソノトロードと接触している(径方向クリアランスが存在しない)ポリマー外装内で延在するソノトロードが開示されている。
【0004】
引用したすべての公報完全な開示は、本明細書で引用により援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明の目的は、振動しているソノトロードがガイドシャフト内で軸方向に移動される場合の動作にさらに好適になるように、従来技術で知られているようなソノトロードおよびガイドシャフトのシステムを改善することであり、このシステムでは、ソノトロードは細長い、すなわち、比較的小さな曲げ強度を有し、ソノトロードはガイドシャフト内でその長さの大部分にわたって、特に全長さにわたって延在し、ガイドシャフトは、可能な限り細く、可能であれば2つ以上のピースを含み、そのため、ソノトロードとガイドシャフトとの間の径方向クリアランスは小さく、同軸性は完全に保証されていない可能性がある。このように示したソノトロードおよびガイドシャフトのシステムでは、ソノトロードを通る振動エネルギーの伝達は可能な限り効率的でなければならず、ソノトロードとガイドシャフトとの間の摩擦は可能な限り低くなければならない。そのような摩擦および対応する摩擦摩耗は、望ましくないエネルギー損および望ましくない場所での熱の生成をもたらし、システムの寿命を縮めるだけでなく、医療用途、摩耗破片、特に金属破片が近隣組織にとって有害と分かっている場合があるため、さらに防止されるべきである。さらに、示した目的が達成される本発明に係る手段は、可能であれば特に一定の断面を有するガイドシャフトの貫通開口部にとって、技術的に簡単であるべきである。
【0006】
周知のソノトロードと同じである、本発明に係るシステムのソノトロードは、たとえば20~40kHzの範囲の振動周波数に適合されるように、かつ、波腹位置(最大振幅の位置)が両端にある状態の定常波で実質的に長手方向に振動するために、設計されていることが好ましい。これは、ソノトロードが定常波の波長の半分(λ/2)の整数倍に相当する長さを有すること、および、2つのソノトロード端間の少なくとも1つの波節位置(最小振幅の位置)が存在することを表す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的は、ソノトロードの最遠位波節位置が存在するシステムの軸方向の位置において、ソノトロードとガイドシャフトとの間の径方向クリアランスが最小になる領域を設けることによって、本発明に係るシステムにおいて実現される。これは、最遠位波節位置で大きな断面を有するソノトロードによって、および、遠位端部分から一定の断面を含むソノトロードの最遠位波節位置を超えて延在するガイドシャフト部分の貫通開口部によって、実現される。遠位方向および近位方向に大きな断面(最遠位波節位置)を有するソノトロード部分に隣接するのは、より小さな断面(より大きな径方向クリアランス)を有するソノトロード部分であり、異なる断面間の移行は、段差を含んでもよい、または段階的移行でもよく、大きな断面を有する部分の遠位側のソノトロード部分の断面は、大きな断面を有する部分の近位側のソノトロードの断面よりも小さくてもよい。これは、ソノトロードとガイドシャフトとの間の径方向クリアランスがガイドシャフトの最遠位部分を通って延在するソノトロード部分についてさらに大きく、ソノトロードの最遠位波節位置において小さくなり、近位方向に隣接するソノトロード部分について再び大きくなるが、最遠位部分についてほどは大きくならない可能性があることを表す。
【0008】
ソノトロードは好ましくは、金属、たとえばチタンで形成され、ガイドシャフトも金属(たとえばステンレス鋼)で、または硬ポリマー材料で形成される。最遠位波節位置のソノトロード部分は好ましくは、同じソノトロード材料で形成され、ソノトロードの一体部分である。ソノトロードとガイドシャフトとの間の摩擦をさらに低減するために、少なくとも最遠位波節位置を含むソノトロードの最遠位部分、または正にソノトロード全体が、好適な摩擦低減被覆で被覆されてもよく、チタンソノトロードの場合、好ましくは窒化チタンで構成される。
【0009】
さらに、波腹位置を構成する遠位ソノトロード端はリングを保持し、リングは、ソノトロード断面を増大させ、ガイドシャフトの材料よりも柔軟かつソノトロード材料よりも柔軟な材料で形成される。遠位リングはたとえば、ポリマー、好ましくはPEEKで形成される。
【0010】
ほとんどの場合、ソノトロードおよびガイドシャフト貫通開口部(内腔)の断面は円形であるが、当然のことながら、他の断面形状も可能であり、どのような場合でも、ガイドシャフト内へのソノトロードの搭載は、ソノトロードのすべての側で等しい径方向クリアランスが可能な限り十分確保されるように、可能な限り同軸であるべきである。
【0011】
ソノトロードによって伝達される振動の半波長の2倍もしくは3倍、またはさらにはそれ以上に相当する軸方向の長さを有するソノトロードを備えるシステムの場合、最遠位波節位置を上述の態様で備えるだけでなく、さらに近位方向に位置するソノトロード部分の1つまたは可能であれば2つの波節位置を備えることが有利な場合がある。後者の対策は特に、断面が遠位方向のソノトロード端から近位方向のソノトロード端に向かって増大しない、またはわずかに増大するだけである、まさに細いソノトロードの場合に有利である。
【0012】
本発明の例示的な実施形態について、添付の図面に関連してさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るシステムの例示的な実施形態を示す図であり、
図1の上半分は、長手方向軸に沿って切断されたシステムを、システムのソノトロードが動作される定常振動波の図と共に示し、
図1の下半分は、長さに沿って異なる位置のシステムの複数の断面を示す。
【
図2】
図1に示すシステムのソノトロードの3次元図である。
【
図3】本発明に係るシステムに好適な例示的なソノトロードの最遠位波節位置または他の波節位置をさらに拡大して示す図である。
【
図4】本発明に係るシステムに好適な例示的なソノトロードの遠位端(波腹位置)をさらに拡大して示す図である。
【
図5】たとえば多孔性、線維性、もしくは他の態様では好適な材料における、または患者の骨組織におけるねじの固定を強化または増強するのに好適なデバイスにおける、本発明に係るシステムの適用例を示す図である。
【
図6】処置要素、たとえば、骨を切断するための刃がソノトロードの遠位端に連結された、本発明に係るシステムの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい実施形態の説明
添付の図面のすべてにおいて、同じ参照符号は同じ要素または同じ機能を果たす類似の要素を示す。
【0015】
図1は、本発明に係るシステムを、その例示的な実施形態を示すことによって説明する図である。
図1の上半分は、ソノトロードが動作される対応する定常振動波の図と組合わされた、長手方向軸に沿って切断されたシステムを示す。
図1の下半分は、位置I、II、IIIおよびIVにおけるシステムの複数の断面をさらに拡大して示す。システムは、遠位端1.1および近位端1.2を有するソノトロード1と、遠位端2.1および近位端(図示せず)を有するガイドシャフト2とを備え、動作中、ソノトロード1の近位端1.2は、振動源(たとえば、図示しない変換器ユニット)に連結され、ガイドシャフト2の近位端は、振動源およびソノトロードの近位端がそれ自体が周知の態様で配設されてもよい筐体(図示せず)に連結されてもよい。システムの動作中の構成では、ソノトロード1は、ガイドシャフト2を通って延在する貫通開口部3に位置する。
【0016】
波形図に示すように、
図1に示すソノトロードは、波長の半分の2倍(2×λ/2)に相当する軸方向長さを有し、遠位ソノトロード端1.1および近位ソノトロード端1.2は、波腹位置ANを構成し、ソノトロード長さに沿って2つの波節位置N1およびN2が存在し、最遠位波節位置はN1で示されている。ガイドシャフト2は、遠位端2.1がソノトロード1の最遠位波節位置N1よりも遠位方向に位置するように配置され、これは、ソノトロード1が動作中にガイドシャフト2内で軸方向に変位されるように配置される用途の場合、ガイドシャフト内のすべてのソノトロードの位置について当てはまる。
【0017】
本発明によると、ソノトロード1とガイドシャフト2との間の径方向クリアランスRCは、ソノトロード1の最遠位波節位置N1において最小になる。これは、少なくともソノトロード1の遠位端部分から最遠位波節位置N1を超えて延在する遠位部分において一定の断面を有するガイドシャフト2の貫通開口部3によって、ならびに、遠位方向および近位方向に遠位波節位置N1に隣接する位置IIおよびIIIの断面と比較して最遠位波節位置N1の断面(位置Iにおける断面を参照)が大きな部分1.3を含むソノトロード1によって、特に軸方向に変位可能なソノトロードに適用可能になるために実現される。そこで、さらに上述したように、ソノトロード1とガイドシャフト2との間の径方向クリアランスは、対応して異なる断面を有するソノトロード(
図3に示すような例を参照)によって、最遠位波節位置(断面位置II)の遠位側よりも最遠位波節位置N1(断面位置III)の近位側で小さくてもよい。
【0018】
ソノトロード1とガイドシャフト2との間の径方向クリアランスRCについての例示的な値は、最遠位波節位置N1について百分の数ミリメートルであり(RC1:0.01~0.1mm、好ましくは0.05mm以下)、最遠位波節位置N1に隣接する位置IIおよびIIIについて約5~10倍以上である(RC2およびRC3:0.1~0.8mm)。大きな断面を有する最遠位波節位置のソノトロード部分は、振動波長さの半分λ/2の2~4%以下である。
【0019】
図1に示すようなシステムの例示的な実施形態は、チタンソノトロードとステンレス鋼製のガイドシャフトとを含み、2~30kHzの範囲、好ましくは20kHzの振動周波数で動作されるソノトロードは、245mmの軸方向長さを有し、ガイドシャフトは、少なくともガイドシャフトの遠位部分において3.1mmの直径の貫通内腔を有する。ソノトロード直径は最遠位波節位置N1で3mmであり、遠位方向に最遠位波節位置に隣接するソノトロード部分(位置II)の場合2.5mmであり、近位方向に最遠位波節位置に隣接するソノトロード位置(位置III)の場合2.65mmである。そのため、径方向クリアランスRCは、最遠位波節位置で0.05mm(RC1)であり、最遠位波節位置N1の遠位方向で0.3mm(RC2)であり、最遠位波節位置N1の近位方向で0.25mm(RC3)である。
【0020】
図1に示すようなソノトロードの遠位端1.1には、ポリマー材料、たとえば、ソノトロードおよびガイドチューブの材料よりも柔軟な材料であるPEEK、または動作中に遠位ソノトロード端を囲むさらに別の要素の材料のリング10が備えられ、リング10に隣接する位置でソノトロードの断面よりも大きな断面を有する。リング10の好ましい材料はPEEKである。そのように備えられたソノトロード遠位端は、たとえば、カニューレを挿入されたねじの中央内腔でソノトロード遠位端が動作される、すなわちガイドシャフト内のようにきつく密閉された状況にある、WO2011/054123の公報で開示されたような装置にとって、または処置要素、たとえば切刃がソノトロードの遠位端に連結されガイドチューブが可能な限り遠位方向に到達する、特にソノトロードの波腹位置に連結された装置において、特に好適である。振動しているソノトロードが、遠位方向のソノトロード端がガイドシャフト内に位置するように、所与の理由でガイドシャフト内に引っ込められる場合、同じ態様で備えられることが好ましい。示された場合のすべてにおいて、リング10は、ソノトロードとガイドチューブまたは遠位ソノトロード端が動作される他の要素との間との直接的な接触、またはこれとの摩耗を防止する。
【0021】
位置IVの断面から明らかなように、リング10と、リング10を有する遠位方向のソノトロード端が動作する、たとえばカニューレを挿入されたねじの開口部11との間の径方向クリアランスRC4は、ソノトロードの最遠位波節位置N1でのソノトロードとガイドシャフトとの間の径方向クリアランスRC1と同じ範囲だと有利である。
【0022】
図2は、
図1と関連して説明されたようなソノトロードのより現実的な縮尺の3次元図である。ソノトロードの遠位方向の約半分の薄い色合いは、たとえば窒化チタンの摩擦低減被覆を有する被覆を表す。そのような被覆は、最遠位波節位置N1の領域において、および可能であれば遠位ソノトロード端で特に有利であるが、ソノトロード全体を覆ってもよい。
【0023】
図3は
図1よりも大きな縮尺で、本発明に係るシステムに好適なソノトロード1の最遠位波節位置N1の領域を示す図である。大きな断面を有するソノトロード部分1.3はソノトロードの一体部分であり、近隣のソノトロード部分への移行は、たとえば45°の面取りである。ソノトロードはたとえば、それに応じて施盤を用いて部分1.3以外のソノトロード部分の断面を減らすことによって、大きな断面を有するロッドから製造される。
【0024】
図4は、本発明に係るシステムに好適なソノトロード1の例示的な遠位端1.1の軸方向の断面を示す図である。
図1に関連してすでに説明されたように、遠位ソノトロード端には、ソノトロード上に設けられた円周溝15への搭載に十分な弾性を有するポリマー材料のリング10が備えられる。この手段によって、リング10は、ぴったり合った態様で適切な位置に保たれ、不注意によって外れることが防止される。リング10を設計し大きさを決めること、およびソノトロード端上でのその固定について、ソノトロードが振動しているときにリングに作用する高軸方向加速力、および医療用途の場合は滅菌温度も考慮しなければならない。溝内でリング10を安全に保つために、比較的深い溝におけるクリアランス嵌合(形態嵌合のみ)またはプレス嵌め(形態嵌合に加えて)のどちらかの場合にリングおよび溝の大きさを決めなければならないことが経験で分かっている。そこで、プレス嵌めの代替案は、確率することが容易であるが、特に医療用途においてこれを用いた高温での複数回の滅菌の場合は緩む傾向にある。それゆえ、プレス嵌めの代替案に好適な材料はたとえば、PEEKなどの高温熱可塑性プラスチック材料である。クリアランス嵌合の代替案の場合、緩むことは問題ではなく、リングをソノトロード端に搭載することはより容易だが、高エラストマーなどの弾性が高い材料、たとえば高度に架橋されたポリウレタンが必要である。
【0025】
特定の用途の場合、ソノトロード端に溝を設けずに、リング10を搭載すれば十分である。そのような場合、リングはソノトロードにプレス嵌合される、および/または、好適な接着剤によって固定される。
【0026】
図5は、たとえば多孔性もしくは線維性、もしくは他の態様では好適な材料での、または患者の骨組織でのねじの固定を強化または増強するために適用可能な装置における、本発明に係るシステムの好ましい適用を示す図である。示された強化また増強は、熱可塑性特性および振動エネルギー、特に超音波振動エネルギーを有する材料によって実現され、最初は固体である熱可塑性特性を有する材料は、ねじ内の対応する空間に位置し、ねじの内側に対して圧縮され、振動エネルギーがそれに加えられる。これによって、熱可塑性特性を有する材料の少なくとも一部が液化され、かつ、まず第一にねじが事前に固定されている材料と接触する、またはこれに浸透するねじ壁内のアパーチャを通って液化した材料が変位される。
【0027】
図5は、軸方向セクションにおける、示された強化または増強プロセスに好適なハンドピースの遠位部分を示す図である。ねじ20はカニューレを挿入されたねじであり、中央の遠位方向に少なくとも部分的に閉じた管をねじ切りされた外側ねじ面と接続する好適な穿孔を含む。熱可塑性特性を有する材料を含むピン21が、ねじ管内に位置する。ねじは、特に多軸茎ねじであり、その頭部に自由に回転可能に旋回する態様で連結された、最終的にたとえば固定されたねじにロッドを搭載するための収容片22を含む。強化または増強プロセスのために、ねじは超音波ハンドピースに搭載されるが、
図5ではそのうち、外側シャフト25、内側シャフト26、および内側シャフトを通過してねじ20内に到達するソノトロード30とを含む遠位筐体部分しか示されていない。近位ソノトロード端31は、それ自体が周知の態様で、部分的にしか示されていない近位筐体部分32に位置する振動源(図示せず)に接続されている。近位筐体部分32は、ねじに向かってソノトロードを付勢するドライバスプリング(図示せず)も収容する。ソノトロード30および内側ガイドシャフト26は、共に本発明に係るシステムを構成し、
図1に示すように備えられている(縮尺が小さいため詳細は見えない)。
【0028】
図5に部分的に示すような装置が組立てられ強化または増強プロセスの準備が整うと、熱可塑性特性を有する材料のピン21が遠位方向ソノトロード端部とねじ内の管の底部との間で圧縮される、閉じた負荷フレームを構成する。振動が始まると、熱可塑性特性を有する材料は、少なくとも部分的に液化され、ねじ20から外に押圧される。ピン21への圧縮力を維持するために、および、液化された材料の変位による長さの減少を補償するために、ソノトロード30は、内側(ガイド)シャフトに対して遠位方向に駆動される。
【0029】
特に、公知の多軸茎ねじを取り扱えるように、かつ、低侵襲手術で適用可能になるように、
図5に示すような装置の一部であるソノトロードおよびガイドシャフトは、さらに説明されたような寸法を有し、ガイドシャフトの内腔または少なくともその最遠位部分は、ねじの管と同様の断面を有することが好ましい。ねじ部分はダブルガイドシャフトの遠位端に取付けられ、互いに対して軸方向に張力がかけられ互いに同軸上に位置合わせされているが、絶対同軸度からのわずかな逸脱を完全に防止することはできない。これは、ソノトロードに最遠位波節位置の領域内の大きな断面を有する部分だけでなく、その遠位端でリングも備えることによって、システムの動作がより問題の少ないものになり、システムの寿命がさらに長くなることを意味する。
【0030】
スリーブを遠位筐体部分に連結するための好適な連結手段が設けられる場合、ねじの代わりに、任意の適切に穴をあけられたまたは穿孔のあるスリーブを、本発明に係る一体化システムを有する、
図5に示す装置で取り扱うことが可能であることは明らかである。
【0031】
図5に部分的に示すような装置に関する詳細は、同じ出願人による「System and method for establishing an anchorage or reinforcement in an object with the aid of in situ liquefaction and displacement of a material having thermoplastic properties(熱可塑性特性を有する材料の原位置での液化および変位による、物体の固定または強化を確立するためのシステムおよび方法)」と題された同時継続出願から得られる。
【0032】
図6は、本発明に係るソノトロード1およびガイドシャフト2のシステムのさらに他の適用例を示す図である。この適用例は、その遠位端に連結された処置要素を有するソノトロードに関し、処置要素は、切削、研削、ラスピング、穿孔、穴抜き、ラビング、洗浄、焼灼などの医療または非医療治療に好適である。
【0033】
図6は、軸方向の断面を示し、ソノトロード1の遠位部分を示す図である。ソノトロード1は、遠位端に波腹位置Aが、および、それから近位方向に距離をあけて配置された波節位置Nがある状態で振動するように選択された振動周波数に適合されている。ソノトロード1は、ガイドシャフト2内で延在する。
【0034】
さらに示すのは、近位連結部41、中間移行部42および遠位刃部43を有する切刃40の形状の処置要素である。連結部41はソノトロード1の遠位端への連結のために備えられ、連結は、振動エネルギーの損失のない伝達のために、たとえば連結部41が保持するねじ切りされたボルト(図示せず)を含み、遠位方向ソノトロード端の遠位面内の対応するねじ切りされた貫通していない内腔と協働することによって、備えられる。連結部41はたとえば、ソノトロード1の遠位端と略同じ断面を有する。刃部43は、狭い矩形断面を有する刃形状であり、鋭利なまたは鋸歯状の側方および/または遠位刃先を有する場合がある。研削工具としても使用可能になるように、刃部43の側面は粗くてもよい、または研削面構造が備えられてもよい。移行部42は、連結部41に適合された断面から刃部43の断面まで横方向に細くなっている。切刃は1つものとして一体的に形成されていることが好ましい。
【0035】
ガイドシャフト2は遠位方向に伸び、ソノトロード1の遠位端と、可能であれば切刃40の連結部41とを覆う。さらに説明したように、ソノトロード1には、波節位置Nにおいてより大きな断面を有する部分1.3と、その遠位端部分(波腹位置A)に搭載されたリング10とが備えられる。
【0036】
図5に示す本発明のシステムの適用例に関連して説明したように、
図6に示すような適用例においても、遠位方向の波腹位置のリング10は、特にシステムによって実施された処置が処置要素に対して横力を加えるときに特に起こる場合がある、ソノトロードとガイドシャフトとのずれに起因する動作の問題の防止を適切に助ける。これはたとえば、刃部に横方向の研削面が備えられ、振動している刃の研削面のうち1つを物体に対して押圧すること、および、同時に研削運動を実施することによって研削するために刃部が使用される場合の事例であり得る。
【0037】
研削面を有する、または有さない、本発明に係るソノトロードおよびガイドシャフトのシステムと関連して使用するのに好適な切刃に関する詳細は、同じ出願人による「Device and method for perforation a dense bone layer(高密度の骨層に穴をあけるための装置および方法)」と題された同時継続出願に見られる。