(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】流体回収システム、濃縮装置、および流体回収方法
(51)【国際特許分類】
B04B 13/00 20060101AFI20231128BHJP
A61F 2/02 20060101ALI20231128BHJP
B04B 5/06 20060101ALI20231128BHJP
B04B 11/02 20060101ALI20231128BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B04B13/00
A61F2/02
B04B5/06
B04B11/02
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2020560515
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(86)【国際出願番号】 AU2019050036
(87)【国際公開番号】W WO2019140491
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-24
(32)【優先日】2018-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519402719
【氏名又は名称】サイノジー プロダクツ プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Scinogy Products Pty Ltd
【住所又は居所原語表記】59 Finlayson Avenue,Mount Martha,Victoria 3934,AUSTRALIA
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】フィッツパトリック,イアン
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-111306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0312481(US,A1)
【文献】特開2018-143122(JP,A)
【文献】特表2013-506556(JP,A)
【文献】国際公開第01/003798(WO,A1)
【文献】特開平11-004886(JP,A)
【文献】特表2013-526901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/00-15/12
A61F 2/02
C12M 1/00- 3/10
C12Q 1/00- 3/00
A61M 1/00- 1/38
A61M 60/00-60/90
G01N 1/00- 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮装置と動作的にかみ合うように構成された流体回収システムであって、
流体ポンプ機構に沿って結合された第1流体経路および第2流体経路を含む濃縮チャンバであって、前記濃縮チャンバからの濃縮済み流体を回収するべく、前記第2流体経路を介して流体回収管へ流体が前記濃縮チャンバを退出する際に、前記第1流体経路を介して前記濃縮チャンバへ流体が進入するところの濃縮チャンバと、
前記流体回収管からの流体のフローを2つ以上の
流体アウトプット管のひとつに切り替えるように構成された回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータであって、少なくともひとつの流体アウトプット管は流体捕捉経路を与え、少なくともひとつの流体アウトプット管は非捕捉経路を与えるところの回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータと、
前記濃縮装置と動作的にかみ合うとき、前記回収バルブアセンブリに先行する前記
流体回収管内の流体の濃度を検出するように構成された濃度センサーと、
コントローラであって、
前記流体回収管内
を移動した流体の体積を決定するべく、前記流体ポンプ機構の動作をモニターし、
第1濃度から第2濃度への前記流体回収管内の流体の第1濃度推移であって、前記第2濃度は前記第1濃度より高く、
当該濃度推移は前記
流体回収管を通過する流体中の濃縮粒子
部分の前縁を
指す、第1濃度推移、および、前記第2濃度から第3濃度への第2濃度推移であって、前記第3濃度は前記第2濃度より低く、
当該濃度推移は前記
流体回収管を通過する流体中の濃縮粒子
部分の後縁を
指す、第2濃度推移、を同定するために前記濃度センサーをモニターし、
前記流体回収管内の流体フローを前記流体
捕捉経路へ切り替えるための第1制御イベントを、
前記第2流体経路への濃縮チャンバのアウトレットと回収バルブアセンブリとの間の液量に基づいて判定し、
前記第1濃度推移、前記第2濃度推移、および
前記流体回収管内を移動した流体の体積の検出に基づいて、回収用のターゲット材料を含む懸濁の体積を決定し、
回収用のターゲット材料を含む懸濁の前記体積を捕捉するべく、前記流体捕捉経路から非捕捉経路へ前記流体回収管内の流体フローを切り替えるための第2制御イベントを判定し、
前記第1制御イベントにしたがって非捕捉経路と流体捕捉経路との間を切り替え、前記第2制御イベントにしたがって前記流体捕捉経路と非捕捉経路との間を切り替えるよう、前記バルブアクチュエータの動作を制御するように構成されたコントローラと
を備える流体回収システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記
移動した流体の体積を制御するべく前記
流体ポンプ機構を動作するようさらに構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記
流体ポンプ機構は蠕動ポンプであり、前記コントローラは前記ポンプの回転位置および/または前記ポンプ管のキャリブレーションに基づきかつモニタリングして、前記
移動した流体の体積をモニターするよう構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
濃縮前縁閾値濃度を表す前記第1濃度推移の検出は、濃縮が前記センサーによって観測される前に
、回収イベントの開始時に決定される基準濃度に関連している、ことを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
濃縮体積開始トリガーは前記流体中の濃縮の最大濃度の認識によって初期化され、前記コントローラは、最大濃度が生じるところの前記
移動した流体の体積を決定し、かつ、アウトプットバルブにおいて前記最大濃度の到着にアライメントするよう前記バルブアクチュエータの動作用の前記第1制御イベントを判定するべく、前記第1濃度推移を解析するよう構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、濃縮粒子の付加的クランプが観測されたとき
、すべてのターゲット材料が回収されるまでターゲット回収体積を拡大しつつ、濃度ベースの体積決定を優先させるように構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
収集停止トリガーは、検出された最大濃度に関する希釈閾値濃度であり、前記コントローラは前記希釈閾値濃度に基づいて前記バルブアクチュエータの動作用の前記第2制御イベントを判定するべく前記第2濃度推移を解析するように構成されている、ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、回収済み濃縮体積に基づいて粒子数を決定し、かつ、粒子特性および動作パラメータに基づいて前記
回収済み濃縮体積用の粒子濃度推定を決定するようにさらに構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、
複数の処理履歴情報データセットであって、各データセットは粒子特性データ、動作パラメータデータ、および処理用のアウトプット粒子濃度を含むところのデータセットのデータストアにアクセスし、
前記粒子特性および動作条件に対する一つ以上の相関処理履歴情報データセットを同定し、
同定済み処理履歴データセットから粒子濃度推定を決定するように構成されている、ことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
各履歴データセットは、少なくとも決定済み粒子濃度を含み、前記コントローラは、カレントの処理と同定済み処理履歴データセットとの間の相関を検証するべく、濃度センサー出力を、同定済み処理履歴データと比較するように構成されている、ことを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、濃度センサーベースの収集トリガーが存在しない場合には、体積に基づいてバルブアクチュエータの動作を収集経路に切り替えさせるべく、前記濃縮チャンバとバルブアセンブリとの間の流体の体積および
前記移動した流体の体積に基づいて、第1制御イベントを判定するようにさらに構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラは、濃度センサーベースの収集トリガーが存在しない場合には、特定体積に基づいて、第2制御イベントを判定するようにさらに構成されている、ことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
濃縮装置であって、
流体ポンプ機構と、
濃縮チャンバであって、前記濃縮チャンバへ流体を導入するべく前記
流体ポンプ機構に沿って結合された第1流体経路および第2流体経路を有し、前記濃縮チャンバからの濃縮済み流体を回収するべく、流体が前記第2流体経路を介して前記濃縮チャンバを退出するに従い、流体は前記第1流体経路を介して前記濃縮チャンバに進入する、ところの濃縮チャンバと、
前記濃縮チャンバの前記第2流体経路に結合された流体回収管と、
前記流体回収管からの流体フローを2つ以上の
流体アウトプット管のひとつに切り替えるよう構成された回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータであって、少なくともひとつの流体アウトプット管は流体捕捉経路を与え、少なくともひとつの流体アウトプット管は非捕捉経路を与える、ところの回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータと、
前記濃縮装置に動作的にかみ合うとき、前記回収バルブアセンブリに先行する前記
流体回収管中の流体の濃度を検出するよう構成された濃度センサーと、
コントローラであって、
前記流体回収管内
を移動した流体の体積を制御するべく、前記流体ポンプ機構の動作を制御し、
第1濃度から第2濃度への前記流体回収管内の流体の第1濃度推移であって、前記第2濃度は前記第1濃度より高く、
当該濃度推移は前記
流体回収管を通過する流体中の濃縮済み粒子
部分の前縁を
指す、第1濃度推移、および、前記第2濃度から第3濃度への第2濃度推移であって、前記第3濃度は前記第2濃度より低く、
当該濃度推移は前記
流体回収管を通過する流体中の濃縮済み粒子
部分の後縁を指す、第2濃度推移、を同定するために前記濃度センサーをモニターし、
前記流体回収管内の流体フローを前記流体回収経路へ切り替えるための第1制御イベントを、
前記第2流体経路への濃縮チャンバのアウトレットと回収バルブアセンブリとの間の液量に基づいて判定し、
前記第1濃度推移、前記第2濃度推移、および前記
移動した流体の体積の検出に基づいて、回収用のターゲット材料を含む懸濁の体積を決定し、
回収用のターゲット材料を含む懸濁の前記体積を捕捉するべく、前記流体捕捉経路から非捕捉経路へ前記流体回収管内の流体フローを切り替えるための第2制御イベントを判定し、
前記第1制御イベントにしたがって非捕捉経路と流体捕捉経路との間を切り替え、前記第2制御イベントにしたがって前記流体捕捉経路と非捕捉経路との間を切り替えるよう、前記バルブアクチュエータの動作を制御するように構成されたコントローラと
を備える濃縮装置。
【請求項14】
前記濃縮装置は対向流遠心分離器であり、前記コントローラは濃縮チャンバの回転を制御するようにさらに構成されており、前記
流体ポンプ機構は、
分離動作フェーズ中、対向流方向の流体フローに、前記第2流体経路を介して
前記濃縮チャンバに進入する流体を生じさせ、それにより、前記濃縮チャンバの回転による遠心力および前記対向流
方向の流体フローが流体中の粒子の流動床内への濃縮を生じさせ、前記濃縮済み流体を与え、
回収動作フェーズ中、流体が前記第2流体経路を介して前記濃縮チャンバから引かれるに従い、回収方向の流体フローに前記第1流体経路を介して前記チャンバに進入する流体を生じさせ、それにより、前記流体フローおよび前記濃縮チャンバの回転による遠心力が濃縮済み流体の前記流動床を前記第2流体経路へ移動させ、前記流体回収管を通じて前記濃縮チャンバから引き出す、ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記コントローラは、前記回収動作フェーズ前に前記流動床の対向流条件の安定性を維持しつつ、前記
流体ポンプ機構の動作およびチャンバの回転を減速するように構成されている、ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記対向流遠心分離器は、コンパクトな対向流遠心分離システムであり、当該システムは、
再利用可能なサブシステムと、
使い捨ての交換可能なサブシステムと
を有し、
前記再利用可能なサブシステムは、
回転モータヘッドと、
蠕動ポンプと、
バルブアセンブリと、
前記回転
モータヘッド、
前記蠕動ポンプ、および
前記バルブアセンブリを収容するケースと
を有し、
前記使い捨ての交換可能なサブシステムは、
小さい液量および短い回転半径用に構成された分離チャンバであって、ネック部分に結合された実質的に円錐の流体エンクロージャ部分を有し、前記ネック
部分を介し円錐先端から前記円錐の流体エンクロージャを通じて中心に伸びる浸漬管を有し、前記円錐の流体エンクロージャの先端までの流体経路を与え、前記ネック部分は溶出流体経路をさらに有するところの分離チャンバと、
前記分離チャンバと流体連通するように構成された第1流体ポートおよび第2流体ポートと、前記第1流体ポートおよび前記第2流体ポートへまたはそこから流体を分配するための外部流体供給コンポーネントへ結合するように構成された複数の流体経路であって、少なくともひとつの流体経路は前記バルブアセンブリとかみ合うように構成されており、それにより流体経路は前記バルブアセンブリの動作によって選択的に開閉可能であるところの複数の流体経路と、前記蠕動ポンプの動作によって
流体分配マニホールド内に流体フローを生じさせるべく、前記蠕動ポンプと流体経路との間の動作的かみ合いを可能にするように構成されたポンプ係合部とを有する流体分配マニホールドと、
前記分離チャンバの前記ネック部分を前記流体
分配マニホールドへ結合し、かつ、前記浸漬管と前記第1流体ポートとの間の第1流体連通経路および前記溶出流体経路と前記第2流体ポートとの間の第2流体連通経路を与える回転カップリングであって、前記回転カップリングは、前記流体分配マニホールドが前記ケースによって固定位置に保持されている間、前記流体分配マニホールドに関して前記ネック
部分を通じた回転軸の回りに前記分離チャンバの回転を許すように構成されている、ところの回転カップリングと
を有し、
前記ネック部分は、前記回転軸の回りに前記分離チャンバの回転を生じさせるよう、前記回転モータヘッドとかみ合うようにさらに構成され、
前記使い捨て交換可能サブシステムは、対向流遠心分離プロセスを実行するための閉環境を与える、ことを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記ポンプ、濃度センサーおよびバルブアセンブリは、前記濃度センサーおよびポンプ係合部分を通過して前記
流体分配マニホールドを通じて前記分離チャンバからアウトプットまで、回収経路に対して短い長さの流体経路を与えるように配置されている、ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記コントローラは、前記蠕動ポンプの回転位置および/または前記ポンプ管のキャリブレーションに基づきかつモニターして、前記
移動した流体の体積をモニターするように構成されている、ことを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項19】
濃縮装置の流体回収システムにおいて実行される濃縮済み流体回収方法であって、前記濃縮装置は、
流体ポンプ機構と、濃縮チャンバであって、前記
流体ポンプ機構に沿って結合された第1流体経路および第2流体経路を有し、前記濃縮チャンバからの濃縮済み流体を回収するべく、流体が前記第2流体経路を介して流体回収管へ前記濃縮チャンバを退出するに従い、流体は前記第1流体経路を介して前記濃縮チャンバに進入する、ところの濃縮チャンバと、前記流体回収管からの流体フローを2つ以上の
流体アウトプット管のひとつに切り替えるよう構成された回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータであって、少なくともひとつの流体アウトプット管は流体捕捉経路を与え、少なくともひとつの流体アウトプット管は非捕捉経路を与える、ところの回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータと、前記濃縮装置に動作的にかみ合うとき、前記回収バルブアセンブリに先行する前記流体回収管に沿った固定した距離での前記
流体回収管内の流体の濃度を検出するよう構成された濃度センサーと、コントローラとを有し、当該方法は、
前記流体回収管内
を移動した流体の体積を決定するべく、前記コントローラの動作によって前記流体ポンプ機構をモニターする工程と、
前記濃度センサーを使って、前記コントローラによって前記
流体回収管内を流れる流体の濃度をモニターする工程と、
第1濃度から第2濃度への前記流体回収管内の流体の第1濃度推移を同定する工程であって、前記第2濃度は前記第1濃度より高く、
当該濃度推移は前記
流体回収管を通過する前記流体中の濃縮済み粒子
部分の前縁を
指す、工程と、
前記第1濃度推移、
前記移動した流体の体積、および、前記
第2流体経路への濃縮チャンバアウトレットと回収バルブアセンブリとの間の
液量の検出に基づいて、前記コントローラによって、前記流体回収管中の流体フローを、流体捕捉経路へ切り替えるための第1制御イベントを判定する工程と、
前記第2濃度から第3濃度への第2濃度推移を同定する工程であって、前記第3濃度は前記第2濃度より低く、
当該濃度推移は前記
流体回収管を通過する流体中の濃縮済み粒子
部分の後縁を
指す工程と、
前記第2濃度推移および
前記移動した流体の体積の検出に基づいて、回収用のターゲット材料を含む懸濁の体積を決定する工程と、
回収用のターゲット材料を含む懸濁の前記体積を捕捉するべく、前記流体回収管内の流体フローを、前記流体捕捉経路から非捕捉経路へ切り替えるための第2制御イベントを判定する工程と、
前記第1制御イベントにしたがって非捕捉経路と流体捕捉経路との間を切り替えるよう、前記バルブアクチュエータの動作を制御する工程と、
前記第2制御イベントにしたがって前記流体捕捉経路と非捕捉経路との間の前記バルブアクチュエータの動作を制御する工程と
を備える方法。
【請求項20】
前記バルブアクチュエータの動作用の前記第1制御イベントを判定する工程は、前記濃縮済み流体の前縁に関して収集開始トリガーに先行する計算済み体積、および前記濃度センサーとバルブアセンブリとの間の前記
流体回収管内の流体の前記体積に基づいている、ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記濃縮装置は対向流遠心分離器であり、当該方法は、
回収動作フェーズ前の
対向流条件
での流動床の安定性を維持しつつ、前記
流体ポンプ機構の動作、およびチャンバの回転を減速する工程をさらに備える請求項19または20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明の技術分野は、懸濁液中の粒子を濃縮するために使用される装置から、流体を回収するためのシステム、方法およびコントローラであり、該システムの応用例は、生物学的および他の微粒子分離応用のために対向流遠心分離器とともに動作するものである。
【背景技術】
【0002】
再生医療および先端細胞療法は、構成物を作成し、免疫原性応答を分配し、または、患者体内で修復応答を刺激するために、生きた人間由来の細胞の操作を構築する医学療法技術を生み出している。これらの技術のいくつかは単一ソースの細胞(同種プロダクト)から複数の患者へ多くのドーズを分配することができるが、当該患者または一致したドナーから分配された細胞を処理しかつ分配することが安全かつ有効であることが認識されつつある。当該患者または一致したドナー特有の細胞プロダクト(自己移植プロダクト)を生成することは、典型的に小さいバッチ処理を要求する。
【0003】
伝統的な遠心分離技術は、遠心分離器内外へ手動で移送されるべきプロダクトを含むベッセルを要求する。伝統的遠心分離システムは、細胞を、ベッセルの端部に堆積させかつペレットを形成させる。プロダクトを添加または除去するべくベッセルにアクセスすることは、オープンプロセスステップとしてベッセルを開放するか、それを無菌経路と結合または切断することを要求する。
【0004】
回転システムを通じる集積流体フローを有する対向流遠心分離は、これらの相互作用を避けるのに使用可能である。対向流遠心分離は、遠心加速度のもとで液体中の粒子の設定速度が、サポート媒質の流れによって反作用を受けるところの技術である。それによって、粒子は、流動床内で懸濁される。細胞療法の場合、流動床は、媒質流体中で懸濁した細胞の濃縮である。細胞は、伝統的な遠心分離を使用して作成されるようなパレットではなく、流体内で懸濁した細胞の濃縮として回収される。
【0005】
対向流遠心分離は、非常に静的なので、細胞は流動床内で拡張して培養可能である。細胞集合は伝統的な堆積法に比べ劇的に減少されうる。さらに、この技術は、細胞の濃度および分子構造特性により、生きた細胞から死んだ細胞を分離することを可能にし、それが対向流遠心分離を現在の実行可能な細胞集団を増加させるための唯一の有効な技術にしている。
【0006】
遠心加速度のもとで、細胞または粒子に対して半径方向内側の流体フローを分配することは、対向流の状況を作り出す。各粒子が体験する遠心加速度は回転中心からその粒子までの半径方向距離に比例する。粒子の流動床を作り出すために、対向流量は回転の各半径に対して調節される必要がある。これは、チャンバを成形することにより達成され、通常、チャンバは半径方向外側に向かう先端を有する円錐として形成される。対向流体フローは、その円錐先端を通じてインプットされる。流体フローは比較的高速で円錐の先端に進入し、インプット流体の速度は、半径方向内側に進むにつれ、円錐の断面が増加するため漸進的に減少する。媒質流体内で懸濁された凝縮粒子は、流体流量を反転させて、円錐分離チャンバの先端から粒子濃縮懸濁液を抽出することにより回収される。流動床内の細胞濃縮懸濁の体積は、細胞の数および流動床の濃度に依存し、この体積は非常に小さい。
【0007】
各粒子用のバッチとして複雑な医療プロダクトを製造することは、使い捨ての機能的に閉じたシステム内で細胞プロダクトを操作することができるデバイスの需要を創出する。対向流遠心分離は多くの利点を有し、多くの商業的に入手可能な専用の機能的に閉じたシステムで現在使用されている。しかし、商業的に入手可能な対向流遠心分離システムは、典型的に、自己移植細胞療法に所望されるものより、大きな体積を使って動作する。非常に小さい体積の濃縮流体の回収が、自己移植細胞療法の実用的な商業的実現を可能にするために要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
その患者特有の細胞プロダクトの製造を可能にするべく、使い捨てのバッチ処理および精確な小体積回収用の信頼性が高い利用可能なイクイップメントに対するニーズが存在する。
【0009】
自己移植プロダクトは、非常に少量のインプットおよびアウトプット細胞プロダクトを含んでよい。達成すべき処理は、最小損失およびすべての処理を最小数の操作で完了する能力でもって小さい細胞集団を扱うことが可能な方法を要求する。細胞プロダクトプロトコルの最終ステップは、典型的に、充填およびフィニッシュを準備する最終製剤ステップに向かうべく、細胞集団の知識を要求する。試薬および最終プロダクトの体積は、注意深い液量制御を要求して、1から2mlの範囲であってよい。複数の患者用の患者特定プロダクトを処理することは、さらに、外部環境への露出を避けるべくバッグおよび管内にプロダクトを閉じこめる機能的に閉じた処理方法の使用を通じて、共通の低度な空間内でのバッチの並行処理によって促進される。重要な利点は、使い捨てプロダクト供給チェーンの一部として、バッチ実行前の処理システム無菌状態のプレクオリフィケーションである。これは、整った無菌化および検証方法に関連するコストおよび遅延を回避する。
【0010】
本願発明は、使い捨て対向流遠心分離システム内の流動床として濃縮された小さい細胞集団の操作を容易にする処理ベッセル、制御ストラテジ、センサー、およびイクイップメントを記述する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様は、濃縮装置と動作的にかみ合うように構成された流体回収システムを与え、当該システムは、ポンプ機構に沿って結合された第1流体経路および第2流体経路を有する濃縮チャンバであって、濃縮チャンバから濃縮流体を回収するべく、第2流体経路を介して流体回収管へ濃縮チャンバから流体が退出するに従い、流体が第1流体経路を介して濃縮チャンバに進入するところの濃縮チャンバと、流体回収管からの流体フローを、2つ以上のアウトプット流体管のひとつに切り替えるように構成された回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータであって、少なくともひとつの流体アウトプット管は流体捕捉経路を与え、少なくともひとつの流体アウトプット管は非捕捉経路を与えるところの回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータとを有し、
当該流体回収システムは、
濃縮装置と動作的にかみ合う際、回収バルブアセンブリの上流側の回収管内の流体の濃度を検出するように構成された濃度センサーと、
コントローラであって、
流体回収管内の流体の動的流量移動を決定するべく、流体ポンプ機構の動作をモニターし、
第1濃度から第2濃度への流体回収管中の流体内の第1濃度推移であって、第2濃度は第1濃度よりも高く、濃度推移は回収管を通過する流体中の濃縮粒子の一部の前縁を示すところの第1濃度推移を同定し、
第2濃度から第3濃度への第2濃度推移であって、第3濃度は第2濃度より低く、該濃度推移は回収管を通過する流体中の濃縮粒子の一部の後縁を示す、ところの第2濃度推移を同定するための濃度センサーをモニターし、
濃縮チャンバアウトレットと回収バルブアセンブリとの間の液量に基づいて、流体回収管内の流体フローを流体捕捉経路に切り替えるための第1制御イベントを判定し、
第1濃度推移、第2濃度推移、および動的流量移動の検出に基づいて、回収用のターゲット材料を含む懸濁の体積を決定し、回収用のターゲット材料を含む懸濁の体積を捕捉するべく、流体回収管中の流体フローを、流体捕捉経路から非捕捉経路に切り替えるための第2制御イベントを判定し、
第1制御イベントに従って非捕捉経路と流体捕捉経路との間を切り替え、第2制御イベントに従って流体捕捉経路と非捕捉経路との間で流体フローを切り替えるように、バルブアクチュエータの動作を制御するように構成されたコントローラと、
を有する。
【0012】
ある実施形態において、コントローラはさらに、動的流量移動を制御するためのポンプ機構を動作させるように構成されている。ある実施形態において、ポンプ機構は、蠕動ポンプであり、コントローラは、ポンプの回転位置および/またはポンプ管のキャリブレーションをモニターし、それに基づいて、動的流量移動をモニターするように構成されている。ある実施形態において、コントローラはさらに、回転ポンプ位置の知識に基づいて動的流量移動を制御するように構成されている。ある実施形態において、コントローラはさらに、ポンプ閉塞部材の回転位置の知識に基づいて動的流量移動を制御するように構成されている。
【0013】
ある実施形態において、コントローラは、流体中の濃縮粒子の前縁に対する収集開始トリガーに先行する計算済み体積、および濃度センサーとバルブアセンブリとの間の回収管内の流体の体積に基づいて、バルブアクチュエータの動作用の第1制御イベントを判定するように構成されている。ある実施形態において、収集開始トリガーは収集閾値濃度である。濃度センサーが光学濃度センサーである実施形態において、濃度は管内の流体の透過率に基づいて判定される。閾値濃度が管内のクリアな流体に対する透過率ベースラインである場合、コントローラは、センサーの完全なキャリブレーション無しで、比として比較できるように透過率ベースの閾値レベルを容易にするベースライン透過率を蓄積するように構成される。
【0014】
コントローラは、濃縮流体の後縁に対する収集停止トリガーに先行する計算済み体積、および濃度センサーとバルブアセンブリとの間の回収管内の流体の体積に基づいて、バルブアクチュエータの動作用の第2制御イベントを判定するように構成されている。ある実施形態において、収集停止トリガーはベースライン濃度(または光学センサー実施形態用の透過率)に対する濃縮希釈閾値濃度であり、コントローラは、濃縮希釈閾値濃度に基づいてバルブアクチュエータの動作用の第2制御イベントを判定するべく、第2濃度推移を解析するように構成されている。ある実施形態において、濃縮希釈閾値の選択は流体捕捉経路に分配される細胞濃度を最大化する。
【0015】
ある実施形態において、コントローラはさらに、濃度センサーベースの収集トリガーが存在しない場合、体積に基づいてバルブアクチュエータの作用を収集経路へ切り替えさせるべく、濃縮チャンバとバルブアセンブリとの間の流体の体積、および動的流量移動に基づいて第1制御イベントを判定するように構成されている。コントローラはさらに、濃度センサーベース収集トリガーが存在しない場合、特定分配体積に基づいて第2制御イベントを判定するように構成されてよい。
【0016】
第2の態様は濃縮装置を与え、当該装置は、
ポンプ機構と、
濃縮チャンバへ流体を導入するよう、ポンプ機構に沿って結合された第1流体経路および第2流体経路を有する濃縮チャンバであって、濃縮チャンバからの濃縮済み流体を回収するべく、流体が第2流体経路を通じて濃縮チャンバから退出するに従い、流体が第1流体経路を通じて濃縮チャンバに進入するところの濃縮チャンバと、
濃縮チャンバの第2流体経路に結合された流体回収管と、
流体回収管からの流体フローを2つの以上の流体アウトプット管のひとつに切り替えるように構成された回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータであって、少なくともひとつの流体アウトプット管は流体捕捉経路を与え、少なくともひとつの流体アウトプット管は非捕捉経路を与える、ところの回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータと、
濃縮装置と動作的にかみ合う際、回収バルブアセンブリに先行する回収管内の流体の濃度を検出するよう配置されて構成される濃度センサーと、
コントローラであって、
流体回収管中の流体の動的流量移動を制御する流体ポンプ機構の動作を制御し、
第1濃度から第2濃度への流体回収管中の流体の第1濃度推移であって、第2濃度は第1濃度より高く、濃度推移は回収管を通過する濃縮流体の一部の前縁を示すところの第1濃度推移を同定し、
第2濃度から第3濃度への第2濃度推移であって、第2濃度は第2濃度より低く、濃度推移は回収管を通過する濃縮流体の一部の後縁を示すところの第2濃度推移を同定するために濃度センサーをモニターし、
濃縮チャンバアウトレットと回収バルブアセンブリとの間の液量に基づいて、流体回収管中の流体フローを流体捕捉経路へ切り替えるための第1制御イベントを判定し、
第1濃度推移、第2濃度推移および動的流量移動の検出に基づいて、回収用のターゲット材料を含む懸濁の体積を決定し、
回収用のターゲット材料を含む懸濁の体積を捕捉するべく、流体回収管内の流体フローを流体捕捉経路から非捕捉経路へ切り替えるための第2制御イベントを判定し、
第1制御イベントに従って非捕捉経路と流体捕捉経路との間を切り替え、第2制御イベントに従って流体捕捉経路と非捕捉経路との間で流体フローを切り替えるべくバルブアクチュエータの動作を制御するように構成されたコントローラと
を有する。
【0017】
ある実施形態において、濃縮装置は対向流遠心分離器であり、コントローラはさらに、濃縮チャンバの回転およびポンプ機構を制御するように構成されており、それにより、
分離動作フェーズ中、対向流方向の流体フローが第2流体経路を通じて流体を濃縮チャンバに進入させ、濃縮チャンバの回転による遠心力および対向流フローが、流動床内への流体中粒子の濃縮を生じさせ、濃縮流体を与え、
回収動作フェーズ中、回収方向の流体フローが第2流体経路を通じて濃縮チャンバから引かれるに従い、第1流体経路を介してチャンバ内に流体を進入させ、流体フローおよび濃縮チャンバの回転による遠心力が、濃縮流体の流動床を、第2流体経路へ移動させ、かつ流体回収管を通じて濃縮チャンバから引かせるように構成されている。
【0018】
濃縮装置のある実施形態において、コントローラは、回収動作フェーズの前に、流動床対向流状態の安定性を保持するコーディネートされた動作で、ポンプ機構およびチャンバ回転の動作を遅くするように構成されている。
【0019】
対向流遠心分離がコンパクトな対向流である実施形態において、遠心分離システムは、
再利用可能なサブシステムと、
使い捨ての交換可能なサブシステムとを有し、
該再利用可能なサブシステムは、
回転モータヘッドと、
蠕動ポンプと、
バルブアセンブリと、
回転ヘッド、蠕動ポンプおよびバルブ動作アセンブリを収容するケースとを含み、
使い捨ての交換可能なサブシステムは、
小さい液量および小さい回転半径用に構成された分離チャンバであって、ネック部分に結合された実質的に円錐形状の流体エンクロージャ部を有し、ネックを通じて円錐先端から円錐流体エンクロージャを介して中心軸方向に伸長し、円錐流体エンクロージャの先端へ流体経路を与える浸漬管を有し、ネック部分はさらに溶出流体経路を有する、ところの分離チャンバと、
分離チャンバと流体連通するように構成された第1流体ポートおよび第2流体ポートと、第1流体ポートおよび第2流体ポートへまたはそこから分配するため外部の流体供給コンポーネントへ結合するように構成された複数の流体経路であって、流体経路の少なくともひとつはバルブアセンブリと結合するように構成されており、それにより流体経路は、バルブアセンブリの動作により選択的に開閉されるところの複数の流体経路と、蠕動ポンプと流体経路との間での動作的かみ合いを可能にし、蠕動ポンプの動作によってマニホールド内に流体フローを生じさせるように構成されたポンプ結合部とを有する流体分配マニホールドと、
分離チャンバのネック部分を流体分配マニホールドに結合し、浸漬管と第1流体ポートとの間に第1流体連通経路および溶出流体経路と第2流体ポートとの間に第2流体連通経路を与える回転カップリングであって、流体分配マニホールドはケースによって固定位置に保持されるが、回転カップリングは流体分配マニホールドに対して回転軸の回りに分離チャンバの回転を許可するように構成されている、ところの回転カップリングと、
を有し、
ネック部はさらに、回転軸の回りに分離チャンバの回転を生じさせるべく回転モータヘッドとかみ合うように構成されており、
使い捨ての交換可能なサブシステムは、対向流遠心分離処理を実行するための閉じた環境を与える。
【0020】
濃縮装置の本実施形態において、ポンプ、濃度センサー、およびバルブアセンブリは、濃度センサーおよびポンプ結合部を通過してマニホールドを介して分離チャンバからアウトプットへ回収経路用の短い流体経路長を与えるよう配置されうる。
【0021】
コントローラは、蠕動ポンプの回転位置および/またはポンプ管のキャリブレーションをモニターし、それに基づいて、動的流量移動をモニターするように構成されてよい。コントローラはさらに、回転ポンプ位置の知識に基づいて、動的流量移動を制御するように構成されてよい。コントローラはさらに、ポンプ閉塞部材の回転位置の知識に基づいて動的流量移動を制御するように構成されてよい。
【0022】
ある実施形態において、コントローラは、濃縮装置内の浸漬管およびバルブアセンブリとの間の既知の体積に基づいて、バルブアクチュエータの動作用の第1制御イベントを判定するように構成されている。収集体積開始トリガーは、濃縮済み粒子が回収管内に存在する前に、イベントの開始時に決定されたベースライン光学濃度に対する濃度閾値であってよい。収集体積は、透過率がベースライン光学濃度に戻るところの第2光学濃度閾値から決定可能である。閾値は、光学濃度センサーの絶対値キャリブレーションに対する感度を除外するべくベースライン値のパーセンテージとして特定されてよい。ある実施形態において、コントローラは、光学濃度閾値イベントの間で、観測済み体積フローから濃縮分配体積を決定する。
【0023】
ある実施形態において、コントローラは、濃縮分配体積を付加して第1制御イベントに基づいて、バルブアクチュエータの動作用の第2制御イベントを判定するように構成されてよい。第1制御イベントが生じたとき、第2濃度閾値は生じなかったことを理解するに違いない。ある実施形態において、コントローラは、第1制御イベントの前に第1閾値イベントが生じてから、第2閾値イベントを予測してよい。この場合、第2光学濃度閾値イベントは、第1制御イベントの後に分配されるべき濃縮分配体積を定義する。収集閾値濃度および濃縮希釈閾値濃度は、収集経路へ分配される流体の濃度を最大化するように選択されてよい。
【0024】
ある実施形態において、コントローラはさらに、濃度センサーベースの収集トリガーが存在しない場合、体積に基づいて、バルブアクチュエータの作用を収集経路へ切り替えさせるよう、濃縮チャンバ、バルブアセンブリおよび動的流量移動との間の流体の体積に基づいて、第1制御イベントを判定するように構成されている。コントローラはさらに、濃度センサーベースの収集トリガーが存在しない場合、特定の体積に基づいて、第2の制御イベントを判定するように構成されてよい。
【0025】
他の態様において、濃縮装置の流体回収システム内で実行される濃縮済み流体回収方法が与えられ、当該濃縮装置は、ポンプ機構と、ポンプ機構に沿って結合された第1流体経路および第2流体経路を有する濃縮チャンバであって、濃縮チャンバからの濃縮済み流体を回収するべく、第2流体経路を介して流体回収管へ濃縮チャンバを退出するに従い、流体が第1流体経路を通じて濃縮チャンバに進入するところの濃縮チャンバと、流体回収管から2つ以上のアウトプット流体管のひとつへ、流体のフローを切り替えるように構成された回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータであって、少なくともひとつの流体アウトプット管は流体捕捉経路を与え、少なくともひとつの流体アウトプット管は非捕捉経路を与えるところの回収バルブアセンブリおよびバルブアクチュエータとを有し、当該流体回収システムは、該濃縮装置と動作的にかみ合う際、回収管中の流体の濃度を検出するべく、回収バルブアセンブリに先行する流体回収管に沿って固定した距離に配置されるよう構成された濃度センサーと、コントローラとを有し、
当該方法は、
流体回収管中の流体の動的流量移動を判定するべく、コントローラによって流体ポンプ機構の動作をモニターする工程と、
回収管中の流体フローの濃度を、濃度センサーを使ってコントローラによりモニターする工程と、
第1濃度から第2濃度への流体回収管中の流体内の第1濃度推移を同定する工程であって、第2濃度は第1濃度より高く、濃度推移は、回収管を通過する濃縮流体の部分の前縁を示すところの工程と、
第1濃度推移、動的流量移動、および濃度センサーと回収バルブアセンブリとの間の距離に基づいて、コントローラによって、流体回収管中の流体フローを流体捕捉経路に切り替えるための第1制御イベントを判定する工程と、
第2濃度から第3濃度への第2濃度推移を同定する工程であって、第3濃度は第2濃度より低く、濃度推移は回収管を通過する濃縮流体の部分の後縁を示すところの工程と、
第2濃度推移、動的流量移動、および濃度センサーと回収バルブアセンブリとの間の距離の検出に基づいて、流体捕捉経路から非捕捉経路へ、流体回収管中の流体フローを切り替えるための第2制御イベントを判定する工程と、
非捕捉経路と流体捕捉経路との間を切り替えるべく、第1制御イベントに従い、バルブアクチュエータの動作を制御する工程と、
流体捕捉経路と非捕捉経路との間で流体フローを切り替えるべく、第2制御イベントに従ってバルブアクチュエータの動作を制御する工程とを有する。
【0026】
当該方法はさらに、ポンプ動作を制御する工程をさらに有し、それにより動的流量移動を制御する。
【0027】
当該方法のある実施形態において、バルブアクチュエータの動作用の第1制御イベントを判定する工程は、濃度センサーとバルブアセンブリとの間の回収管内の流体の体積および濃縮流体の前縁に対する収集開始トリガーに先行した計算済み体積に基づいている。当該方法のある実施形態において、収集開始トリガーはベースライン濃度に対する収集閾値濃度である。
【0028】
当該方法のある実施形態において、バルブアクチュエータの動作用の第2制御イベントを判定する工程は、濃縮流体の後縁に対する収集停止トリガーに先行した計算済み体積に基づいている。当該方法のある実施形態において、収集停止トリガーは、ベースライン濃度に対する希釈閾値濃度であり、当該方法はさらに、第2濃度推移を解析し、かつ、収集停止トリガーに基づいて、バルブアクチュエータの動作用の第2制御イベントを判定する工程を含む。当該方法のある実施形態において、収集閾値濃度および希釈閾値濃度は、管中の濃縮を流体トレーリングすることにより、アウトプットプロダクトの希釈を最小化するように選択される。
【0029】
当該方法のある実施形態はさらに、濃度センサーベースの収集トリガーが存在しない場合、体積に基づいて、バルブアクチュエータの作用を収集経路へ切り替えさせるべく、濃縮チャンバとバルブアセンブリとの間の流体の体積および動的流量移動に基づいて、第1制御イベントを判定する工程を有する。ある実施形態はさらに、濃度センサーベースの収集トリガーが存在しない状態では、特定の捕捉体積に基づいて、第2制御イベントを判定する工程を有する。
【0030】
濃縮装置が対向流遠心分離であるところの方法の実施形態において、当該方法はさらに、回収動作フェーズ前の流動床対向流状態の安定性を保持するコーディネートされた動作で、ポンプ機構およびチャンバ回転の動作を遅くする工程を有する。
【0031】
本願発明のすべての態様を組み込む実施形態は、添付する図面を参照して例示的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、流体回収システムの実施形態の代表ブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、粒子の濃縮懸濁が光学センサーを通過する際の時間にわたって、流体回収管を横切る光透過率の変化をグラフ化した、光学濃度センサー出力グラフの例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、ベースライン読み取りのパーセンテージとして特定された、収集開始および収集終了閾値トリガーを設定するためのコントローラユーザーインターフェースの例を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、細胞収集用の収集チャンバとバルブアセンブリとの間の体積を定義するバルブ設定を選択するためのユーザーインターフェースの例である。
【
図2D】
図2Dは、時間にわたって、回収管中の流体の透過率(流体中の濃縮粒子の濃度)を表す濃縮濃度トレースを示す図である。
【
図2E】
図2Eは、光学濃度センサートレース上のクランプのインパクトを表す、時間にわたって回収管中の流体の透過率を表す濃縮濃度トレースを示す図である。
【
図3】
図3は、対向流遠心分離プロセスに関連する基本的概念を示す図である。
【
図4】
図4は、対向流遠心分離と動作的にかみ合う流体回収システムの実施形態のブロック図である。
【
図5A】
図5Aは、層流によって生じる、スラグの引き出し効果を示すべく、チャンバアウトレットから管に沿って異なる距離で取られた同じ体積の凝縮粒子のスラグに対する光学濃度測定の例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、層流によって生じる、スラグの引き出し効果を示すべく、チャンバアウトレットからより長い管に沿って異なる距離で取られた同じ体積の凝縮粒子のスラグに対する光学濃度測定の例を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、流体回収システムの実施形態を組み込む関連する使い捨てキッとおよびコンパクトな対向流遠心分離器の実施形態の組立済みの例を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、流体回収システムの実施形態を組み込む関連使い捨てキットおよびコンパクトな対向流遠心分離器の実施形態の再利用可能なサブシステムの例を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、流体回収システムの実施形態を組み込む関連する使い捨てキットおよびコンパクトな対向流遠心分離器の実施形態の使い捨てキットの例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6Aの遠心分離器用の分離チャンバ装置の例であり、チャンバ構成およびチャンバ用の流体流路の詳細を示す図である。
【
図8】
図8は、
図6AからCに示す流体回収システムおよびバルブアセンブリの略示図である。
【
図9A】
図9Aは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す図である。
【
図9B】
図9Bは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す図である。
【
図9C】
図9Cは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す図である。
【
図9D】
図9Dは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す図である。
【
図9E】
図9Eは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す図である。
【
図9F】
図9Fは、分離チャンバの先端に形成された流体チャネル構造の実施形態を示す図である。
【
図10】
図10は、光学濃度センサーの設定例を示す図である。
【
図11】
図11は、フォールバック体積トリガープリセットを有する光学濃度体積検出によって回収体積を決定する収穫イベントのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
実施形態は、流体中に懸濁した粒子を濃縮するための濃縮システムとともに使用する流体回収システムおよび方法を与え、この懸濁は、濃縮システムから引かれる流体ストリームから回収される。例えば、流体回収システムの実施形態は、遠心分離器と動作的にかみ合うように構成された濃度センサーおよびコントローラを有する。
図1のブロック図は、遠心分離器15と動作的にかみ合った濃度センサー20、およびコントローラ10を有する流体回収システム5を表し、流体内で懸濁した粒子を濃縮するように構成されている。濃縮装置は、ポンプ機構30に沿って結合された第1流体経路42および第2流体経路45を含む濃縮チャンバ40を有する。このシステムにおいて、濃縮チャンバ40からの濃縮流体を回収するべく、流体が第2流体経路45を通じて流体回収管48へ退出するに従い、流体は第1流体経路42を通じて濃縮チャンバ40へ進入する。
【0034】
ポンプ機構30の動作は、システムを通じた流体フロー、すなわち、第1流体経路42から、チャンバ40を通じて、第2流体経路45および回収管48を通じた流体フローを生じさせる。ポンプ機構はポンプ出力流量、例えばml/sを制御するべくコントロールされてよいことが理解できよう。しかし、システムのさまざまなセグメントを通じる流量は、システムジオメトリに基づいて変化する。例えば、流体速度は、より広いチャンバを通じた流体速度に比べ、小さい管中においてより速くなる。対向流遠心分離器の円錐分離チャンバは、チャンバ直径の変化のため、チャンバを通じて異なる流体速度を示す。システムのシールされた流体フロー経路において、システムのさまざまな部分がシステムジオメトリのために異なる速度を経験するが、ポンプ流量はシステムを通じて移動する流体の体積に対応することが理解できよう。ポンピング速度すなわち流量の変化は、移動する液量の対応する変化を生じさせる。本詳細な説明において、動的流量移動の用語は、液量のこの変化可能なムーブメントの瞬間的値を言及するものとして使用される。
【0035】
回収バルブアセンブリ50およびバルブアクチュエータ(図示せず)は、流体回収管48から2つ以上のアウトプット流体管のひとつへ流体の流れを切り替えるように構成されてよく、少なくともひとつの流体アウトプット管70は流体捕捉経路を与え、少なくともひとつの流体アウトプット管60は非捕捉経路を与える。流体回収システムが濃縮装置15と動作的にかみ合うとき、濃度センサー20は回収バルブアセンブリ50の手前の回収管48内の流体の濃度を検出するように構成されている。チャンバアウトプット45とアウトプットバルブアセンブリ50との間には、既知の体積の流体27が存在する。濃度センサーが流体回収経路内のどこかに配置されうることが理解されよう。濃度センサーは、回収管を通過する流体中の濃縮粒子の濃度の指標を与える。流体経路内の実際の位置は重要ではない。コントローラは、光学濃度および動的流量に基づいて回収すべき濃縮体積を判定する。流体回収は、設定閾値濃度間の懸濁中の粒子濃縮閾値の検出に基づいている。
【0036】
コントローラ10は、流体回収管中の動的流量移動の体積を決定するべく流体ポンプ機構30の動作をモニターし、かつ、濃度センサーをモニターするように構成されている。コントローラは、濃度センサー出力より、第1濃度から第2濃度への流体回収管内の流体中の第1濃度推移を同定し、第2濃度は第1濃度より高く、この濃度推移は回収管48を通過する流体懸濁中の濃縮粒子部分の前縁を示す。コントローラはまた、濃度センサー出力より、第2濃度から第3濃度への第2濃度推移を同定し、第3濃度は第2濃度より低く、この濃度推移は回収管48を通過する濃縮流体懸濁の後縁を示す。
【0037】
ある実施形態において、濃度センサー20は、懸濁が濃度センサーを通過する際に、流体の光透過率の変化を検出する光学濃度センサーであってよい。透過率のグラフの例が
図2Aに示されており、それは光学濃度センサー出力の例を示し、懸濁中の濃縮粒子のスラグが光学センサーを通過する際に、センサーを通過した液量81に対して流体回収管を横切る光透過率80の変化をグラフ化したものである。
図2Aに示すように、最初に、光透過率は高く(符号82参照)、スラグに先行する実質的にクリアな媒質流体が予想される。濃縮が濃度センサーに到達する際90、第1濃度推移83は比較的急勾配であり、高82から低84への透過率の急速な変化を示す。スラグの後縁がセンサーを通過する際91、第2の濃度推移85が生じ、それは、低い透過率84から粒子の存在しない流体媒質の高い透過率89へ戻る推移85を示している。システムは、制御された動作の開始時に観測されるクリアな流体透過率82に対する回収管中の流体の透過率に基づいて、濃縮検出済み閾値86および濃縮通過済み閾値88を同定するように構成されてよい。
【0038】
動的流量と同時に濃度閾値推移イベントをモニターすることによって、コントローラは、設定閾値によって判定される際に、濃縮を表す液量を決定する。
【0039】
濃度ベースの濃縮体積検出の判定と平行して、コントローラ10は、チャンバアウトレット45とバルブアセンブリ50との間の既知の液量27が完了したときを判定するべく、流体回収管48中の動的液量をモニターする。このイベントは、非捕捉経路から捕捉経路への流体フローの切り替えをトリガーする。その際、コントローラは、決定した体積が分配されたか、または、他のイベント、例えば、プリセット分配体積が完了したかを判定するべく濃度センサーに動的液量のモニターを開始させる。これが生じたとき、コントローラは、流体捕捉経路70から非捕捉経路60へ流体経路を切り替える。
【0040】
流体回収システムおよび方法の実施形態は、濃縮チャンバから回収されている流体ストリーム中の濃縮粒子懸濁の前縁および後縁を検出するように構成されている。ある実施形態において、濃度センサー20は、光学濃度センサーである。光学濃度センサーは、例えば
図2Aに示すように、回収管中を流れる流体の光透過率を測定する。回収管を流れる流体は、典型的に、媒質流体中で懸濁した粒子の濃縮に先行および後行する粒子の実質的にクリアな媒質流体である。例えば、粒子の流動床は、懸濁スラグの前および懸濁スラグの後に管を通じて流れる、実質的に無粒子の媒質流体と比較した、比較的高い濃縮で懸濁した粒子のスラグとして、分離チャンバからの媒質のフローによって回収管を通じて引き出されてよい。媒質流体中に懸濁した濃縮粒子の光透過率は、媒質流体単体のものと異なるか、または、比較的低濃縮の粒子を有するもの、例えば、実質的に無粒子の先行および後行媒質流体を通じたものと異なり、より高い濃縮粒子懸濁を通じたより低い光透過率になると予想される。光透過性は、不透明性または透過率としても言及される。流動床中に懸濁した粒子の濃縮は、典型的に、周囲流体より不透明に見える。
【0041】
第1濃度推移83は、光学センサーによって検出される、光透過率の変化から同定可能である。ある例において、これは、回収管中を流れる流体中の光透明性の減少であってよい。
【0042】
生きた細胞プロトコルにとって、アウトプットプロダクト内にターゲットの濃縮細胞(細胞/ml)を探すのが通常である。細胞が希少かつ貴重である場合、細胞を回収することは特に重要であり、最小の実用体積中で、濃縮ステップを付加することなく、ターゲットの最終精製体積に希釈することが可能でなければならない。
【0043】
濃縮チャンバは、包括的に細胞で一杯になりにくいことが理解されよう。異なるプロトコルおよびバッチは、異なる細胞ポピュレーションを生じさせ、したがって、回収するのに要求される異なる体積を生じさせる。対向流遠心分離器で展開されるひとつの実施形態において、細胞は、流動床を漸進的に形成する先端から濃縮チャンバ内に蓄積する。これにより、入手可能なこれらの細胞が、濃縮のスラグとして回収されることが可能となる。動作条件および懸濁媒質が不変の場合、濃縮スラグの体積は、濃縮済み細胞の数を表す。
【0044】
流体回収システムの実施形態は、流体回収経路を横切る濃度センサーを有する。ある実施形態において、これは、流体回収経路を形成する使い捨て管を通じて光の統計的比率を観測する光学センサーである。
【0045】
他の実施形態において、濃度の変化は、色の変化として検出されてよい。他の実施形態において、濃度の変化は、特定の光子波長の吸収の変化として検出されてよい。他の実施形態において、濃度変化は、流体を通過する周波数スペクトル透過率の変化として検出されてよい。他の実施形態において、濃度センサー20は、流体懸濁中に濃縮された常磁性粒子を検出するように構成された磁化率センサーであってよい。他の実施形態において、濃度は、粒子からの光子放射の強度として観測されてよい。
【0046】
光透過率の実施形態において、
図2Aに示すように、光透過率は、細胞濃縮スラグが、最初に光学濃度センサーを通過するときに急激に降下する。最後の濃縮スラグがセンサーを通過してチャンバから移動する際に、センサー正面において減少する濃縮細胞に比例して、センサーによって観測される透過率の回復が存在し、それがここで、スラグの後縁85として言及される。
【0047】
ある実施形態において、コントローラは、濃縮チャンバのアウトレット45とバルブアセンブリ50との間の固定体積の知識を使用する。代替的実施形態において、コントローラは、バルブアセンブリからの固定した距離である濃度センサーの位置の知識を使用し、光学センサーとバルブアセンブリとの間の管の容積を知ることが可能になる。この固定した容積は、既知のイクイップメントジオメトリ(センサーとバルブとの間の距離)および、異なる管が使用可能な管仕様に基づく管内径に基づいて予め決定されるか、システムコントローラによって計算されてよい。例えば、ユーザーは、管を含む使い捨てキット部品を画定(すなわち、ピックリストまたはメニューから部品の使い捨てキットを選択)するべく、コントローラ内にデータを入力してよく、対応する管仕様は、体積を計算するためにコントローラによって使用されてよい。
【0048】
ポンプ動作のモニタリングを通じた動的流量移動と、第1および第2濃度推移の検出の相関を通じて、コントローラは、センサーを横切る濃縮の体積を決定することができる。
【0049】
ポンプ動作のモニタリングを通じて動的流量移動と、濃縮分離チャンバアウトプット45とバルブアセンブリとの間の流体体積(
図4の符号250を参照)の知識の相関を通じて、コントローラ10は、バルブアセンブリが、非捕捉経路60から流体捕捉経路70へ流れを移行するよう動作するところのポイントをコーディネートすることができる。
【0050】
第1閾値が生じるところの動的流量90は、概して非常に予想可能である。これにより、第1制御イベントは、濃度ベースセンサーイベントと独立して実行可能となる。
【0051】
制御設計の他の実施形態は、濃縮を最大にするために観測動的流量によって分配バルブの開放を調節することである。センサーと円錐先端との間の体積(
図4の符号260)の知識を適応することによって、イベント90(
図2A)が生じるところの動的流量は第1制御イベントを指示することができる。この意味および濃縮密度プロファイルの解析を通じて、コントローラは、
図2Dに示すように、最大濃縮プロダクトが分配バルブへ与えられるときに、第1制御イベントを生じさせるよう指示することができる。
【0052】
ターゲットの分配体積は、濃度モニタリングツールによって、および、ユーザー定義プリセットのような制御内の代替定義手段を通じて、または、先行プロセス動作からの格納済み情報を通じて決定される。
【0053】
ポンプ動作のモニタリングを通じた動的流量移動と、分配されるべきターゲット体積との間の相関を通じて、コントローラは、バルブアセンブリ50が流体捕捉経路70から流体非捕捉経路60へ移行するところのポイントをコーディネートすることができる。例えば、バルブ動作は、前縁および後縁流体による希釈を最小化するべく、バルブに到着するスラグによってコーディネートされてよい。濃度推移検出を駆動する閾値の調節は、後縁粒子を犠牲にして、最大の粒子濃縮回収を可能にする。後縁閾値の代替的調節は、後縁粒子を含むことにより、粒子の損失を最小化するように設定されてよい。
【0054】
流体回収システムの実施形態は、流体中に懸濁した濃縮粒子を回収するための任意の濃縮装置とともに使用されてよい。実施形態は、小体積の濃縮装置とともに使用するのに特に有利である。例えば、懸濁用のいくつかの医療技術回収体積は5ml以下である。いくつかの治療応用例は、もし回収する非常に少量の細胞が存在すれば、1ml以下の所望の回収体積を有する。
【0055】
任意の細胞濃縮ステップのひとつの重要な基準は、細胞が回収される体積がどのくらい小さいかである。したがって濃縮回収プロセスの目的は、濃縮回収バルブを通過するターゲット細胞を含む流体体積のみを移行させることである。
【0056】
濃縮チャンバをアウトレットバルブに結合する管の物理的体積に基づいて、コントローラは、バルブアセンブリにおける濃縮の前縁83の到着、および、流体を回収経路へ方向転換するようバルブを作動させるときを予測することができる。
【0057】
懸濁細胞の回収を停止するべくバルブアセンブリを動作する第2イベントは、予め特定され、固定した分配体積、または、濃度推移のモニタリングを通じて決定される体積に基づいている。濃度推移から決定された体積は第1イベントが生じたときに完全に画定されなくてよいことが理解されよう。第1濃度閾値イベントが同定されたことの認識は、フォールバック体積プリセットではなく、濃度ベースの体積制御を展開するよう制御システムに指示するために使用される。
【0058】
濃度ベースの体積を画定する第2濃度推移は、バルブがすでに流体捕捉経路70へ分配アウトプットを開始しても、動的に判定可能である。
【0059】
いくつかの細胞プロダクトは、作成中に分離チャンバ40内のノーマルの細胞懸濁とともに蓄積可能材料のクランプを凝集する傾向がある。濃縮回収動作が生じたとき、流動床の後ろをクランプが流れるのが通常である。これは、
図2Eに示すように、メインイベントに続く付加的な低い透過率イベントとして密度センサーによって観測される。コントローラ10が、ターゲット体積が分配されたことを判定する前にこれらのイベントが生じた場合、これらの材料がアウトプット材料へ失われないことを保証するべく分配体積が増加されてよい。
図2Bに示すユーザー定義設定“イネーブル捕捉クランプ”は、このロジックがコントローラ10へ導入されうるところの文脈を示す。
【0060】
粒子懸濁濃縮の後縁がセンサー20を通過するとき、閾値セッティングはレンジ内にあり、コントローラ10は濃縮の体積を決定するべく第2濃度推移を記録する。コントローラ10によるポンプ30のコーディネーションを通じて、バルブアセンブリ50は、濃縮体積が捕捉済み流体75への流体捕捉経路70へ移送されたとき、流体フローを流体捕捉経路70から非捕捉経路60へ再び方向付ける。こうして、捕捉済み流体75はセンサーによって観測される濃縮の体積を表す。
【0061】
既知の液量27の分配を通じてバルブアセンブリ50を移行するポイントにあるが、濃度センサーが第1濃度推移を検出せず、粒子濃縮が第1濃度推移を認識する閾値に対して十分でなかったことを示す場合、コントローラ10は、捕捉済み流体用のプリセット最小体積の展開を含む代替アクションを取りうる。
【0062】
他の制御シナリオにおいて、捕捉済み液量は、濃縮回収イベントに対するプリセットであってよく、濃度センサーによって検出された濃縮体積が記録され、ターゲットの捕捉済み流体粒子濃縮を達成するべく、後続の希釈ステップを指示するのに使用される。他の実施形態において、希釈ステップは、検出済み濃縮体積に基づいて、コントローラ10によって管理されるアルゴリズムに応答して、流体捕捉経路70から非捕捉経路60への移行を遅延させることにより、単一の粒子回収ステップに統合されうる。
【0063】
流体は、典型的に、細胞ダメージを最小化するべく小さい流体せん断ハンドリングに対して所望されるような層流レジームに従って、濃縮分離チャンバ40から引かれることが理解されよう。しかし、層流のもとで管を通じて流れるプロダクトは、管の中心を流れる流体に対して、管の表面の流体を遅延させる管壁境界層の性質を被る。後縁において体系的希釈の発生が進むにしたがい、これは、管壁に沿って引き出される細胞濃縮のスラグを生じさせる。
図5Aおよび5Bは、層流によって生じたスラグの引き出し効果およびそれが管の長さとともにいかに進むかを示す、スラグインプットから管に沿って変化した距離で取られた同じ体積のスラグの光学濃度測定の例を示す。観測されるように、
図5Aのスラグの後縁を示す濃度推移510は、
図5Bの対応する濃度推移520より急勾配である。これは、スラグの後縁がより引かれ、したがって、
図5Bのより長い管を通じた移動によって、より希釈されることを示す。
【0064】
バルブアセンブリへの後縁の到着を観測する能力により、スラグのこの希釈化後縁のどれくらいが回収されるかの制御が可能となる。例えば、最小希釈が所望されるところの状況において、回収バルブを閉じるための第2イベントは、後縁がバルブに到着する前に生じるようにコーディネートされてよい。他の例において、第2イベントは、希釈の最小化と粒子回収の最大化との間の妥協を与えつつ、後縁での選択された希釈閾値によってコーディネートされてよい。
【0065】
プロセス管を通じる粒子濃度推移から生じる体系的損失の認識は、濃縮チャンバアウトレットからバルブアセンブリまでの経路が積極的に短いところの
図8のハイライト、および、
図6Aから6Cに示す実施形態設計を生んだ。濃縮から引き出されることによって生じる潜在的な希釈を減少させるために、この経路をできるだけ短くするのが好ましい。
【0066】
制御インターフェースのひとつの実施形態が、
図2Bに示され、そこでは、濃縮の開始および終了を検出するための閾値は回収ゴールに基づいて調節されうる。閾値は、濃縮がセンサーに到達する前に、分離チャンバからのフローの開始時に捕捉されるベースラインセンサー読み取りに基づいている。回収ゴールが細胞の最大数を回収するものであれば、収集開始トリガーは、前縁の開始時の流体を捕捉するように、例えば、基準読み取りの90%に設定され、後縁の終了時のエンドトリガーは、例えば98%に設定される。回復ゴールが希釈を最小化することであれば、回収開始トリガーは前縁の終了であり例えば基準読み取りの30%であってよく、エンドトリガーは後縁の開始であり例えば50%(後縁での媒質流体による希釈前のカットオフ)であってよい。
【0067】
光学濃度センサーが透過率を検出する場合、相対的濃縮は検出した流体濃度と相関する。収集開始および終了トリガーは、流体懸濁内の粒子濃度に基づく。
【0068】
収集開始トリガーは、最大検出濃度に対する収集閾値濃度であってよい。この実施形態において、コントローラは、収集閾値濃度に基づきバルブアクチュエータの動作用の第1制御イベントを判定し、濃縮流体の最大濃度を決定するべく第1濃度推移を解析するように構成されている。
【0069】
収集開始および終了トリガーを設定するためのユーザーインターフェースの例が
図2Bに示されている。
図2Cは、バルブアセンブリのバルブを流体回収用に動作するよう選択するためのバルブアセンブリの設定例を示す。
【0070】
収集閾値濃度および希釈閾値濃度は、濃縮に先行する流体によってアウトプットプロダクトの希釈を最小化するよう選択されてよい。このイベントのタイミングはチャンバからセンサーまでの容積距離によって予測可能であるが、ある状況において、コントローラは、細胞が非常に少ないため、光学センサーが容積決定によって優先されなければならないと結論づけなければならず、前縁を検出することは非常に重要である。ある使用のシナリオにおいて、細胞または粒子の回収済み濃縮は非常に少なく、懸濁の前縁は明確に判別するのが困難であるか、不可能である。もしそうであれば、メカニズムに、濃度センサーベースの収集を優先させることが所望される。これは、回収フェーズの開始時において、濃縮チャンバと回収バルブアセンブリとの間のシステム内に既知の体積の流体が存在するという事実に基づく体積トリガーであってよい。この例において、コントローラは、濃縮チャンバとバルブアセンブリとの間の流体の体積に基づいて第1制御イベントを判定し、濃度センサーベースの収集トリガーが存在しない場合、体積に基づいてバルブアクチュエータの作用を収集経路に切り替えさせる。捕捉カットオフは体積トリガーであってもよく、捕捉を開始した後に特定された体積をカットオフする。体積回収は、濃縮チャンバジオメトリに基づく予想される流動床サイズおよび予想される細胞回収に基づいて、設定されてよい。回収体積は、回収を最大化させつつ、希釈を最小化するように設定されてよい。例えば、回収液量は、0.5から2mlの間であってよく、この値は、実施形態に応じてこの範囲より大きいかまたは小さくてよい。
【0071】
コントローラは、収集トリガーに応答して、アウトプットバルブの開閉時間を決定するためにポンプキャリブレーションデータを使用する。バルブ動作は、センサー閾値が検出された時、ポンプ位置レジスタをプリセットすることで、センサーを通過する濃縮の推移とオーバーラップしてよい。本願発明のある実施形態において、ポンプは蠕動ポンプである。蠕動ポンプの回転位置は動的流量移動を決定するためにモニターされてよい。ポンプの回転位置を制御することにより、動的流体移動に対して高精度の制御が可能となる。コントローラは、バルブ動作によってポンプ動作/移動をコーディネートしてよい。
【0072】
このストラテジは、0.5ml、控えめな見積もりでも2mlまで体積を減少させた濃縮細胞を分配することができる。濃縮細胞の体積は、プロセスを管理するために要求されない。もし必要であれば、濃縮細胞の最終分配体積はターゲット体積まで増加されてよい。スラグの到着時に光学濃度センサーをトリガーするのに十分な細胞が存在しなければ、コントローラはチャンバからセンサーまでの容積距離を理解することによってこの失敗を検出する。その後、アルゴリズムがデフォルトの容積分配ストラテジになる。
【0073】
流体回収システムの実施形態は、流体中に懸濁する粒子の濃縮ポピュレーションを回収するように構成された任意のシステムとともに使用されてよい。流体回収システムおよび方法の実施形態は、対向流(反対流としも知られる)遠心分離タイプの濃縮装置と組み合わせると特に有利である。
【0074】
図3は、対向流遠心分離プロセスに関連する基本概念を示し、これは、流体中で懸濁した細胞を含むインプット流体から細胞ポピュレーションを分離する文脈で議論される。プロセスの第1フェーズにおいて、懸濁細胞を含むインプット流体が分離チャンバ310に導入され、チャンバは軸線350の回りを回転し、回転中、チャンバの先端が軸線の回りの円形経路に従い遠心加速度を形成するように、チャンバは軸線に対して垂直方向に向けられる。遠心加速度に対向するべく、流体342は最も外側の先端340からチャンバ内にポンピングされる。この流体は、導入を始めるために使用される細胞懸濁流体であり、よって、チャンバ内に細胞が導入されつづける。代替的に、チャンバ310は、媒質溶液(懸濁中にいずれの細胞もない)によって導入されてよく、細胞は回転が開始された後に導入されてよい。遠心加速度は、細胞をチャンバ310の外側端部方向へ沈殿させ、沈殿方向に対して反対方向に流体フロー342を加えることによって、細胞は懸濁を保持する。チャンバは、局所的流体速度344が、ワーキングゾーン345を作成するべく、各半径において遠心加速度346に一致するように成形されている。正しい流量、流体媒質および遠心分離速度によって、細胞はワーキングゾーン345内で蓄積し、そのゾーン内に安定した流動床を形成する。ゾーン345内に進入する細胞は流動床を形成し、一緒になる。細胞は対向流体フローによってチャンバへ導入される際、これらの細胞は、流体フローおよび遠心加速度の組み合わせ作用によってチャンバ内に進入するので、完全沈殿ポイントにおいて効果的に堆積し、その結果、このプロセスを使って最小の沈殿時間が存在することが理解されよう。
【0075】
流体は、細胞がこの流体から沈殿し、流動床内に蓄積した状態で、チャンバ310を通じて連続して流れており、その結果、チャンバの内側エンド330において、流体は実質的に細胞が存在せず、アウトレットは浄化流体348がチャンバ310から出るのを許す。細胞が流動床内に蓄積されると、流体フロー方向342が逆転するところの濃縮として細胞を回収するべく回収ステップが使用される。細胞流動床は、円錐の先端340の方向へ移動し、流体インプットで使用されたものと同じ流体チャネルを介して、円錐から引き出される。対向流遠心分離器は、チャンバ内の条件に対するその応答によって、異なる細胞ポピュレーションを分離するのにも使用されてよい。流動床が形成されるところの対向流量の増加は、最初に流動床の拡張を生じさせ、各細胞間のより大きな細胞間空間を生じさせ、流動床が円錐を拡張する。より小さいかまたはより粗い外面トポロジーを有するいくつかの細胞は、異なる沈殿速度を有し、流動床内に不安定を生じさせ、円錐から内側に引き出される。このようにチャンバから出る細胞の洗浄は、細部ポピュレーションの差別選択用の周知のプロトコルである水簸として説明される。
【0076】
対向流遠心分離技術は、生きた細胞の希釈懸濁を、1×108細胞/mlを超える濃度で流動床内に捕捉するのを可能にする。この状態で、細胞は、水簸、媒体交換、および洗浄により、細胞選択を含む多様なストラテジによって処理されてよい。
【0077】
説明される流体回収システムおよび方法は、標準的な遠心分離器によって作成されるパレットではなく、懸濁として細胞の高濃縮を分配する細胞回収プロセスを与えるべく、対向流遠心分離システムとともに使用されてよい。
【0078】
図4は、対向流遠心分離器から濃縮粒子の懸濁の回収を示すブロック図である。ブロック図は、懸濁中に細胞の流動床の未知の体積210を有する円錐濃縮チャンバ240を表す。細胞の回収準備ができたとき、流動床をサポートする対向流を作り出すポンプ230が逆転され、任意のターゲットアウトプットベッセルへ機器のバルブ270および280を通じて再方向付け可能な回収経路245を介して、円錐240から濃縮細胞プロダクトを引き出す。流体フロー方向の変化により、流動床を形成する細胞の懸濁は、細胞が実質的に存在しない流体が先行し、かつ、細胞が実質的に存在しない流体が続く円錐の先端から引き出されることが理解されよう。最初に、バルブ280が閉止され、バルブ270が開放され、その結果、媒質流体がごみまたはリサイクル経路へ方向付けられる。バルブ280を開放し、かつ、バルブ270を閉止することで、流体は、捕捉ベッセル290へ方向付けられる。
【0079】
外部ベッセル290へ濃縮として細胞流動床の回収は、対向流ポンプ230を逆転させることにより開始される。流動床は、円錐240の先端へただちに駆動され、チャンバからの流体の連続引き出しにより、細胞は流動状態のままであり、かつ、回収管を通じて回収バルブ280へ引かれることが可能になる。
【0080】
流動床濃縮のリミットは、回収ステップ中に流体経路をブロックすることの最終的な回避である。流動床の濃度は、懸濁濃縮の最適化を可能にする回収ステップの前に、対向流ポンプによって調節可能である。対向流遠心分離処理速度は、対向流ポンプ速度と組み合わせた遠心分離速度によって定義される。処理速度は、細胞ダメージのリスクを最小化するべく回収ステップの前のコーディネートされた動作として減速されてよい。このコーディネートされた減速は、遠心分離速度および対向流ポンプ速度の制御された減速に関連し、その結果、G’sの遠心分離速度で割ったポンプ速度(ml/分)の比率は一定である(ここで、G’sは、遠心分離RPMの平方に比例する)。
【0081】
細胞の生存率を向上させるべく、流体が低い流体せん断ハンドリングのために所望される層流レジームであるように、ポンプが動作される。層流のもとで管を通じて流れるすべてのプロダクトは、管の中心を流れる流体に対して管の表面における流体を遅くする管壁境界層ふるまいを被る。これは、それが進むに従い、管壁に沿って引かれる濃縮細胞のスラグを生じさせる。この引き出し効果は、分離チャンバからスラグの発生ポイントと捕捉ベッセルへの分配ポイントとの間で最短可能距離を有することによって、最小化されうる。説明する器具およびキットデザインの実施形態は、円錐先端と濃縮回収用に特別に配置されたバルブとの間に実際の最短流れ距離を達成するように特定的に構成されている。
【0082】
コントローラは、スラグの前縁および後縁を検出するための光学濃度センサーをモニターするように構成されている。コントローラは、回収を開始し、かつ、スラグの前縁がバルブ280に近づくに従い、回収ベッセル290への回収バルブ280を介する流体フローを許すべく、バルブ270、280の作用をトリガーすることによって、上述したように濃縮捕捉を制御する。そして、後縁(または後縁の希釈閾値)が回収バルブを通過する際に、スラグの後縁の検出に基づいて回収を終了するべく、コントローラが回収バルブの閉止をトリガーする。
【0083】
対向流遠心分離器に対して、粒子は既知の体積を典型的に有する流動床内に蓄積される点が理解されよう。しかし、この流体回収方法を使って、回収された濃縮の体積はコントローラによって計算可能である。コントローラの実施形態は、回収された懸濁体積および粒子濃度推定に基づいて、回収済み濃縮の粒子数を決定するようにさらに構成されてよい。
【0084】
粒子を含む治療プロダクトのフォーミュレーションは、混合媒質中の粒子の制御された濃縮作成に通常基づいている。したがって、フォーミュレーションステップは、粒子が混合されるべき流体試薬の体積を指示するべく、粒子数の決定を要求する。同様の動作は、例えば粒子の培養の前などの他の処理ポイントにおいて、試薬が粒子と相互作用するところのプロセスで共通である。
【0085】
したがって、懸濁内の粒子数を理解する必要性は、プロセスの次のステップを指示する必要がある際に、粒子ベースの治療プロダクトに対して実行される通常の品質制御測定である。この粒子数は、既知の総体積中の希釈懸濁の小さいサンプルを取ることによって普通に実行され、小さいサンプル中の粒子数を決定するのに器具または手動の光学方法が使用される。その後、総懸濁体積中の粒子数は、小さいサンプル数に基づいて推定される。問題は、このサンプリングおよび粒子カウント動作は、前もってその情報が要求されるまで待つプライマリプロセスを必要とすることである。また、粒子をカウントするためのこの方法は、測定値の決定の変動に寄与する多くの影響に晒され、+/-20%の範囲のカウント変動を生じさせる。同じプロダクトおよびプロセス環境の検証データの累積と組み合わせた濃度センサーによる全粒子ポピュレーションの間接的観測は、インプロセスサンプリング無しで、プロセスを完了するための適切な自信を与える。
【0086】
対向流遠心分離処理において、回転チャンバ内で作成された粒子の流動床は、粒子をサポートする流体媒質内のストークス設定ふるまいに影響を与える平均外部寸法または直径、バルク密度、および外部表面モフォロジーなどの粒子の特性によって特徴付けられる。流体媒質特性は、密度および粘性(両方とも温度に敏感)、およびチキソトロピーまたは粘性のせん断感度のような二次特性を含む。これらの相互作用の複雑さにもかかわらず、非常に一定のインプット材料および動作条件を有するプロセスの複製は、単位体積あたりの粒子数(例えば、粒子数/ml)として測定される際、流動床内で一定の粒子濃度を生じさせる一定の流動床ふるまいを分配する。懸濁中の粒子濃度は、一定のインプット材料を使って処理された別個のバッチ間で実質的に類似しており、流動床の体積以外の動作条件は、粒子数の変化を反映しているバッチ間で大きく異なってよい点が理解されよう。
【0087】
この例において流体回収プロセスの実施形態は、粒子数推定を含む。この実施形態において、コントローラは、回収ずみ濃縮体積の粒子数を決定し、粒子特性および動作パラメータに基づいて濃縮の粒子濃度推定を決定するようにさらに構成されている。粒子濃度推定は、例えば、現在の処理バッチと相関するインプット材料および動作条件を有する先行の処理バッチからの履歴データのような経験データに基づいてよい。例えば、このデータは、外部で蓄積され、かつ、実行中の特定のプロセス用のプロセス手順データおよびパラメータとともにコントローラに入力されてよい。代替的に、コントローラは、プロセス実行をモニターし、かつ、実行プロセスごとに粒子濃度を特徴づけるデータ(例えば、濃度センサー出力、粒子数推定、または検証済み粒子数データ)を捕捉するように構成されてよい。この実施形態において、コントローラは、そのデータを、一つ以上の相関する先行/履歴処理イベントを同定し、かつ、粒子濃度推定に使用するべく、懸濁特性をルックアップするべく、ルックアップおよび現在の処理イベントと比較するためのデータベースまたは他のデータ貯蔵庫に格納してよい。
【0088】
回収済み濃縮体積は、濃縮前縁および後縁の検出および第1および第2制御イベントに基づいて、決定されてよい。例えば、スラグの前縁および後縁ならびに動的流量の同定により、スラグの体積は
図2Aに示すように決定可能となる。しかし、流体の収集を開始および停止する、第1制御イベントおよび第2制御イベント用のそれぞれのトリガーは、細胞収穫イベント用のユーザー定義設定に応じて、スラグの前縁および後縁に対して任意のポイントで設定されてよい。例えば、収集は、すべての前縁を捕捉するべく、スラグの前縁が回収バルブに到着する際に開始されるが、スラグの後縁において約50%の希釈の後に停止されてよい。スラグのサイズの決定およびスラグの相対的収集開始および停止ポイントに基づき、懸濁の体積は精確に予測可能であり、細胞推定数(偽細胞数とも言及される)を与えるべくスラグの推定濃度が乗算される。懸濁中の粒子の収集体積がコントローラによって決定されるので、コントローラは、粒子濃度推定を使って体積に対する粒子数を自動的に計算することができる。
【0089】
ある実施形態において、コントローラは、複数の履歴処理情報データセットであって、各データセットは、粒子特性データ、動作パラメータデータおよびプロセス用のアウトプット粒子濃度を含むところのデータストアにアクセスし、かつ、粒子特性および動作条件用の一つ以上の相関履歴処理情報データセットを同定するように構成されている。その後コントローラは、同定した履歴処理データセットから粒子濃度推定を決定してよい。例えば、粒子濃度推定は、動作条件およびインプットに最も近い相関を有する履歴処理イベント用のルックアップ粒子濃度値であってよい。他の例において、粒子濃度推定は、複数の近い相関履歴プロセスの粒子濃度の平均として計算されてよい。
【0090】
他の実施形態において、履歴データは、光学濃度センサー測定データを含んでよく、粒子濃度推定は、少なくも部分的に、カレントの懸濁濃度データと履歴懸濁濃度データとの間の比較に基づいてよい。参照用に格納された履歴データは、処理中、および検証済みの後処理中に捕捉したデータ、例えば、検証済み後処理の実際の粒子濃度データを含んでよい。時間にわたって、履歴データの本体は漸進的により精確な推定方法を可能にするべく蓄積されてよい。
【0091】
ある実施形態において、各履歴データセットは、少なくとも決定済み粒子濃度を有し、コントローラは、カレントの処理と同定済み履歴処理データセットとの間の相関を検証するべく、濃度センサーのアウトプットを同定済み履歴処理データと比較するように構成されている。これは、履歴データに基づいて作成される推定と実際の履歴証拠との間の相関の有効なインジケータとして使用される任意ステップであってもよい。例えば、履歴記録が、処理パラメータ、インプットおよび動作条件に基づいてカレントの処理と相関される場合、記録済み履歴データとカレント測定値における光学濃度特性の比較が為されてよい。光学特性の非類似性は、処理エラーを示すか、または、粒子濃度推定用に使用されている誤った相関または推定を示し、オペレータに対して調査用の警告をトリガーする。したがって、自動化プロセスは、ある程度、自己検証用に構成されてよい。
【0092】
実施形態は、流動床中に懸濁した濃縮粒子の観測に基づいて粒子数推定の自動化および総粒子数を推定するための流動床の体積の測定を可能にする。外部粒子数カウント手段に相関したプロセスを繰り返し実行するためのこの操作からの推定は、外部カウント方法によって達成されるものと比較可能でかつオペレータの介入無しにプロセス進行に十分な粒子カウント処理能力を与えることができる。
【0093】
比較可能なプロセスの例は以下を含むが、これに限定されない。
・インプットされる材料のひとつのバッチは、同じプロセスおよび動作条件を使って、複数のより小さいバッチで処理される。
・インプットされる材料および粒子は、非常に一定であると知られているところの複数のバッチ処理(すなわち、異なる個体間のサイズまたは形状の変化が小さく、化学処理が一定の粒子特性を生成する)。
【0094】
任意の粒子数推定を含む対向流遠心分離粒子(例えば、細胞)収穫イベントの例が
図11に示されている。円錐分離チャンバ内の流動床中に懸濁した粒子を蓄積する処理の後、フロー方向は、収穫を開始する(1000)ために逆転される。収穫の開始は、ただちにトリガー“1”を定義し(1005)、それは回収管48から流体捕捉経路70へ流体フローを切り替えるべく回収バルブが開放される(1025)ときを画定する。
【0095】
コントローラは、懸濁スラグの前縁を検出する(1010)べく、濃度センサーをモニターする。トリガー“1”が生じたとき(1015)前縁が検出されなかったら、コントローラは、光学濃度が小さすぎて濃縮の前縁をトリガーすることができなかったと仮定しなければならず、その結果、特定された体積プリセットが使用される。これは、デフォルトのシステム値(例えば、濃縮チャンバの体積の50%または75%と同等)またはユーザー特定値であってよい。例えば、ユーザーは、前回の経験または実行中の処理に対する履歴データに基づいて予想必要体積を推定してよい。
【0096】
懸濁の前縁が濃度センサー出力に基づいて検出された(1010)とき、コントローラは、前縁検出が生じたところの動的流量を記録し、濃縮の後縁を検出する(1040)ために光学濃度センサーのモニターを開始する。
【0097】
光学濃度センサーのモニターと平行して、コントローラは、回収管48からの流体が流体回収経路70、および適当な容器75または他の処理イクイップメントに結合されるべく方向づけられるよう、トリガー“1”の時刻に回収バルブ850を切り替える。
【0098】
コントローラは、光学濃度センサーアキュムレータに基づいて決定された体積が分配されるまで、またはプリセット体積が分配されるまで、回収バルブ850を介して収集用の濃縮を分配しつづける。
【0099】
光学濃度センサーベースのトリガーが設定されたとき、第2濃度推移イベント(スラグの後縁を示す)がまだ生じなければ、回収バルブを通じて流体が分配されている間、コントローラは、流体濃度および液量をモニター(1030)し続ける。スラグの後縁が検出された(1040)とき、コントローラは回収を停止する(1055)ために、回収バルブ動作トリガーを判定する(1050)。このトリガーは、後縁検出および液量フローに基づく。このトリガーは、後縁での希釈閾値に基づいてよく、該閾値はユーザー制御パラメータであってよい。回収の停止は、回収目的およびトレードオフ、例えば、ある細胞回収を犠牲にした最小希釈のスペクトルのセット、希釈を犠牲にした細胞回収の最大化までのセットに基づいて設定されてよい。
【0100】
ある実施形態において、さらなる体積トリガー(1045)が、濃縮細胞が低すぎて前縁イベントをトリガーできない場合のイベントをアドレスするよう設定されてよい。
【0101】
濃縮の制御済み体積を分配し、光学濃度センサーによって検出された体積を記録することもまた実際のストラテジである。こうして収集されたデータは、例えば後続のステップとしてのターゲット濃縮に、最終分配体積を調節するために使用されうる。
【0102】
回収の終了時に回収済み溶液の体積が知られ、さらに回収溶液中に捕捉された濃縮スラグの体積は、前縁および後縁に対するバルブ動作に基づいて決定される(1060)。この決定は、プログラムされた回収パラメータに従って前縁および後縁媒質による希釈を考慮してよい。回収済み溶液内の粒子数の推定(1070)は、例えば、オペレータ入力処理データから検索されるか、懸濁濃度推定をルックアップした(処理パラメータおよび履歴データに基づいて)回収済み懸濁濃度推定に、決定された回収済み懸濁体積を乗算することにより、上述したように実行される。その後システムは、総回収済み体積、濃縮および粒子数推定をアウトプットしてよい(1080)。
【0103】
コントローラは、粒子数推定を実行するよう、および任意で処理を続けるためのさらなるステップを実行するよう構成されてよいことが理解されよう。例えば、アウトプット流体のターゲット濃縮が要求される場合、コントローラは、粒子数推定および回収体積に基づいて後続の希釈ステップを実行し、ターゲット濃縮まで回収済み懸濁を希釈するためのさらなる量の流体を計算するように構成されてよい。このステップおよび粒子数の計算は、回収中に生じてよい。本例において、粒子数推定は、スラグの前縁および後縁の検出、およびスラグ体積の計算に基づいてよい。粒子数はスラグ体積および導出された濃度推定履歴、および粒子数推定に基づいて決定されたターゲット濃縮に要求される総体積に基づいて計算されてよい。その後、回収終了トリガーがターゲット回収濃縮に基づいて決定され、後縁媒質流体の計算済み希釈体積が捕捉された後、回収を止めるように設定される。
【0104】
流体回収システムおよび方法の実施形態は、濃縮装置に一体化されてよい。対向流遠心分離器に流体回収システムを一体化した例が、
図6A~6Cおよび
図9を参照してここで議論される。コンパクトな対向流遠心分離器の実施形態が
図6A~6Cに示されている。このシステムは、ここに参考文献として組み込む、それぞれ2017年5月19日および2018年1月22日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2017901771号および第2018900193号に基づく優先権を主張する、本出願人の名義による国際特許出願PCT/AU2018/050449(国際公開WO2018/204992)に開示されたものに基づいている。このシステムは、回転流体ストリームを定常流体システムに移送するために回転カップリングを使用する。回転カップリングの中心管は、差分せん断によって障害を取り除かれた経路を与える。中心流体経路は、円錐プロセスチャンバの浸漬管に取り付けられる。
図6A~6Cは、装置に一体化された流体回収システムの実施形態を有する対向流遠心分離器の実施形態を示す。
図8は、
図6A~6Cに示す実施形態によってサポートされる流体回収システムおよびバルブアセンブリの代表的なブロック図である。細胞分離用の対向流遠心分離器の両方の実施形態の動作は、以下で
図6A~6Cを参照して説明される。
【0105】
コンパクトな対向流遠心分離システム1100は、再利用可能サブシステム1200および使い捨て交換可能サブシステム1205を有し、搬入プロトコルを単純化するために搬入用にプリアセンブリされかつ無菌化された使い捨てコンポーネントを含む。プリアセンブリは、ヒューマンエラーのリスクを軽減することができる。これはまた、現在の商業的な使い捨てコンポーネントキットに比べ、使い捨てコンポーネントのサイズおよび複雑さを減少させることにより、低い運転コストを提供できる。
【0106】
再利用可能サブシステムは、回転モータヘッド1135、蠕動ポンプ1110、およびバルブアセンブリ1120を有し、ケーシング1130がこれらのコンポーネントを収容する。交換可能サブシステムは、分離チャンバ1140、流体分配結合1152、および分離チャンバ1140を流体結合1152および1154に結合する回転カップリング1160を有する。この使い捨て交換可能サブシステムは、対向流遠心分離処理の実行用の閉環境を与える。
【0107】
分離チャンバ1140は、少ない液量および小さい回転半径用に構成されている。分離チャンバの実施形態の例が
図7に示されている。分離チャンバ1140は、ネック部分1220に結合された実質的に円錐の流体エンクロージャ部分1210を有する。浸漬管1230は、ネック1220を通じて円錐先端1240から円錐流体エンクロージャを通じて中心方向に伸長し、円錐流体エンクロージャの先端1240へ流体経路1250を与える。ネック部分1220はまた、溶出流体経路1260を含む。ネック部分1220は、回転カップリング1160に結合され、その結果、チャンバの回転軸線はネックを通じてチャンバの長さに対する回転半径を減少させている。ネック部分はまた、回転軸の回りに分離チャンバの回転を生じさせるべく、回転モータヘッド1135とかみ合うように構成されている。モータヘッド1135とかみ合うネック部分の構成は、ロック機構を有し、分離チャンバとバランスを保つような重さを有するカウンタであってよい。
【0108】
流体分配マニホールド1150は、分離チャンバ1140と流体連通するように構成された第1流体ポート1170および第2流体ポート1175と、第1流体ポート1170および第2流体ポート1175へまたはそこから流体を分配するための外部流体供給コンポーネント1180へ結合するように構成された複数の流体経路を有する。少なくともひとつの流体経路はバルブアセンブリの動作によって選択的に開閉するためバルブアセンブリ1120とかみ合うように構成されている。マニホールドはまた、蠕動ポンプ1110の動作によって、マニホールド内に流体フローを生じさせるよう、蠕動ポンプ1110と流体経路1180との間の動作的なかみ合いを可能にするように構成されたポンプ係合部分1190を有する。
【0109】
図7において、回転カップリング1160は、分離チャンバ1140を、流体分配マニホールド結合部1152および1154に結合する。回転カップリングは、流体分配マニホールドがケース1130によって固定位置に保持されたまま、流体分配マニホールド1150に対して回転軸の回りに分離チャンバ1140の回転を許すように構成されている。回転カップリングがチャンバのネックに結合されているので、チャンバ用の回転軸はチャンバのネックを通じており、その結果、回転の半径は、軸線からチャンバ先端の外端までのチャンバの長さのみである。回転カップリング1160はまた、浸漬管1230と第1流体ポート1170との間に第1流体連通経路1270と、溶出流体経路1260と第2流体ポート1175との間に第2流体連通経路1275を与える。これらの流体連通経路は回転カップリング内に形成されている。
【0110】
当該システムの利点は、同じシステムコンポーネントおよび処理機能が、完全にスケーリングされた商業製品システムに関して実験室タイプのセットアップで利用可能であるという点である。分離チャンバの例が
図7に示され、分離チャンバ1140は実質的に円錐の流体エンクロージャ1210およびネック部分1220を有する。図示する実施形態は円錐流体エンクロージャを使用したが、実施形態は常に完璧な円錐を使用しなくてよく、この構造のいくつかのバリエーションは、本願発明の態様内にあると考えられることが理解されよう。例えば、短い直線側面部分が円錐の広い端部付近または先端部で使用されてよく、代替的に、階段状の円錐構造が使用されてもよい。浸漬管1230は、流体の分配用ネックから円錐の先端1240へ流体エンクロージャ1210を通じて伸長する。溶出経路1260は、ネック1220を通じて与えられる。内部浸漬管1230を使用することは、商業的対向流遠心分離アーキテクチャーからの有意な発展であり、それは、分離チャンバの外部の流体経路を与え、分離チャンバは分離チャンバに対して対向流体フローを供給するべく先端にインレットを有することが理解されよう。
【0111】
この小さい装置の回転円錐1210内の細胞によって経験されるプロセスは、対向流遠心分離のより大きな実装内の処理と同一である。円錐の先端1240に進入する流体1290は、細胞を生じさせる遠心加速度に対する対向流に対して、円錐の先端から漸進的に成長する流動床内の蓄積を生じさせる。正しい条件で細胞の希釈懸濁が処理チャンバ1210に与えられたとき、細胞は円錐の先端から漸進的に成長する流動床としてチャンバ1210内にトラップされる。細胞を運んでいた媒体は、内側のより大きな円錐の直径を進み、中心サプライと同軸の流体経路を介してかつ回転カップリングを通じて退出する。
【0112】
チャンバ内にトラップされた細胞は流動床を形成し、そこで細胞は処理流体によって互いに分離される。流動床の濃度は、対向流流体流量または遠心分離速度を変化させることにより調節可能である。これは、流動床内の濃縮細胞(細胞/ml)を増加または減少させる。1×108の保存濃縮は、容易に管理可能であり、2から5ミクロンサイズの範囲の細胞が流動床内で、これらの濃度の2倍から4倍で快適に処理可能である。
【0113】
濃縮済み細胞流動床の外部ベッセルへの回収は、対向流ポンプを反転させることにより開始される。流動床は円錐の先端へただちに駆動され、チャンバからの流体の進行中の引き出しにより、細胞は流動状態のまま残ることができる。流動床は回転カップリングの中心流体ラインを通じて移動し、濃縮細胞のスラグとして出現する。
【0114】
図7に示す分離チャンバ設計は、円錐の先端方向への流体接続用に内部ストロー(浸漬管とも言及される)を使用する。これは、多くの有意な利益をもたらす。
・円錐の高圧領域への外部流体結合が存在せず、外部配管構造の製造およびそれに関連する取り扱いリスクを除去する。
・流体チャンバに進入する懸濁細胞の流体フローパターンは、円錐チャンバジオメトリにアライメントするべく自身に戻るように要求される外部配管のジオメトリによって影響を受けない。
・外部流体ラインおよび付随するU字ベンドは、分離チャンバの外側で生じる最大遠心分離領域を生じさせる。重い粒子および細胞凝集は最大遠心分離領域内に蓄積する。既知の商業的システムにおいて、この最大遠心分離領域は分離チャンバの外部、例えば、分離チャンバの先端における流体インプット付近の外部配管内のベンド内などで生じていた。本願発明の実施形態において、このクリティカルな最大遠心分離領域は円錐の先端の内部にある。円錐が透明である場合、この最大遠心分離領域は管理された介入のためにはっきりと観測可能である。
・円錐内の中央浸漬管は技術的に精確で、医療プロダクトコンタクト用に検証され、かつ、低コストで十分な体積で製造された細長い管から作成可能である。細長い管はまた、使用後のこれらのプロダクト用の有害廃棄物ストリームの周知のコンポーネントでもある。これは、分離チャンバコンポーネントに対する初期製造コストおよび廃棄物処理コストの両方で利点を有する。
【0115】
円錐鋳造の特徴と組み合わせた浸漬管デザインは、流体チャンバ内に良く制御された再現可能流体フロージオメトリを作成することができる。例えば、浸漬管とシャーシーコンポーネントとの間に締まり嵌めを使用することで、管切断長さ、鋳造特徴およびアセンブリトレランスは、締まり嵌めを通じて管の軸再配置によって除去される。分離チャンバの先端内に形成された流体チャネル構造の実施形態が
図9A~9Fに示され、円錐流体エンクロージャの先端400は、円錐流体エンクロージャの回りの流体フローを分散するために、浸漬管410および中心部の周囲に離隔したローブ430からの流体アウトプットを受け取るための中心部分420を含むチャネル構造を有する。流体チャネル構造はまた、浸漬管410を配置およびサポートするのをアシストするように構成されてよい。例えば、
図9Bおよび9Fに示すように、中心部分420は、浸漬管410の端部を受設するようなサイズを有し、それは、遠心力によって適所に保持される(
図9Cおよび9Fに示す)。この実施形態において、中心部分420は、浸漬管410と流体チャンバとの間に一定のオープン流体連通経路を保証し、かつ、浸漬管の軸線方向位置を制御するべく、ローブ430間にレッジ440を有する。浸漬管からの流体は、中心部分420に進入し、流体エンクロージャに対して開口部を与えるローブ430を通じて流出する。図示した実施形態は、先端の周囲に均等に離隔した3つのローブを有するが、例えば、4つ以上のローブ、または複数の均等に離隔した半径方向チャネルなどの他の構造が使用されても良い。この構造は、特に、浸漬管410の正しい位置を保証するための組立処理中に要求される精度を減少させることにより、装置の製造および組立を単純化することが理解されよう。
【0116】
流体は、浸漬管410を通じて流動床(すなわち、細胞濃縮)を引き出すべく、流体フローを逆転させることにより、チャンバから回収可能である。細胞が懸濁している媒質環境へ、最小の撹乱で、回収プロセス中の希釈を最小化しつつ、円錐から流動床を引き出すことが所望されることが理解されよう。流動床内のプロセス条件は、遠心速度および流体流量によって制御される。同様の流動床条件は、流量を一致させることにより、ある範囲の速度で作成可能である。これにより、遠心分離回転速度および流体流量は、安定した状態に流動床を維持しつつ、コーディネートされた作用(例えば、マイクロプロセッサコントローラにより制御されて)として減速することが可能となるが、より遅いプロセス速度は回収プロセスに対してより好適な条件を作り出す。遠心分離速度および流量を減速することもまた、回収プロセス中の細胞ダメージのリスクを減少させる。濃縮流体回収を最大化するために、流動床の最後によって浸漬管内に引き出される無細胞流体の量を減少させ、かつ、流動床回収の終了にむけて希釈を減少させるべく、浸漬管と円錐先端部との間に非常に小さいギャップを有することも所望される。
【0117】
円錐先端400の構造は、良好な回収成果のために、ギャップを最小化するように設計されてよい。
図9に示すように、サポートレッジ440およびローブ430構造が流動床の背後の無細胞液体用の浸漬管入り口周辺のアクセス領域を減少させるので、浸漬管を支持するためのチャネル構造は有利であることが理解されよう。中心部分は、流動床が管から引き出される最後の瞬間まで、流動床の液体により完全に占有されるべきである。流動床の安定性を維持するために流量が制御されれば、ローブは希釈を最小化するべく、無細胞流体の後縁の前に、すべての濃縮流体を浸漬管へ流し込むべきである。
【0118】
図5Aおよび5Bを参照して上述したように、分離チャンバと回収ポイントとの間のスラグの移動距離は、特に後縁でのスラグの希釈の量に影響をあたえる。これは、処理および回収中の細胞ダメージを最小化するのに使用される層流レジームによって悪化する。層流のもとで管中を流通するすべてのプロダクトは、管の中心に流れる流体に対して管の表面の流体を遅延させる管壁面境界層ふるまいを被る。これは、それが進行するに従い、管壁面に沿って引かれる細胞凝集のスラグを生成する。これは、スラグの生成と分配ポイントとの間の距離をできるだけ短くすることにより最小化できる。本実施形態において、器具およびキットの設計は、円錐先端と、凝集回収用に特定に配置されたバルブ850との間に最短粒子フロー距離を達成するように特定的に構成されている。
【0119】
図6A~6Cおよび
図8に示す実施形態において、装置800は回収経路810の長さを最小化するように構成されている。特に、光学濃度センサー820、ポンプ830、およびアウトプットバルブ850を介して、チャンバ840からアウトプットへ流体回収経路を結合するのに要求される管の長さを減少させるように、システムコンポーネントが配置される。回収経路管はこの器具用の使い捨て/消耗キットのコンポーネントであるが、システムコンポーネントの固定した構成は、回収管長が固定されていることを意味し、従って、濃度センサー820とアウトレットバルブ850との間の容積は既知である。消耗キットが予め形成されたマニホールドとして与えられるところの実施形態はまた、製造トレランスまたはヒューマンインストールによる潜在的な変動を最小化する点で有利である。
【0120】
流体回収用にポンプが逆転されるとき回収フェーズを開始する前に、円錐の先端と細胞を含まないアウトレットバルブとの間に流体容積が存在する。この容積は、キット製造によって画定されているので非常に一定であり、その結果器具は、濃縮スラグがちょうど近づく際にバルブを開放すべき時を予測することができる。この特徴および制御システムによるポンプ位置の詳細なモニタリングにより、アウトプットバルブを通過した制御された最終分配体積を、例えば、+/-0.2ml以内で一定とすることが可能となる。
【0121】
他の考察は、円錐処理チャンバ840が包括的に細胞で一杯になりにくいということを理解することである。所与の対向流条件で濃縮されたとき、異なるプロトコルおよびバッチが、異なるレベルでチャンバを満たす異なる細胞ポピュレーションを生じさせる。
【0122】
生きた細胞プロトコルにとって、アウトプットプロダクト内でターゲットの細胞濃縮(細胞/ml)を求めるのが普通である。細胞が希少かつ貴重である場合、濃縮工程を付加せずに、ターゲットの最終フォーミュレーション体積に希釈することができるよう、最小粒子体積中に保持された細胞を回収することが特に重要である。
【0123】
この問題を解決するために、器具は、回収流体経路810を横切る光学濃度センサー820を有する。このセンサーは、使い捨て管810を通じて光透過率を観測する。濃縮細胞スラグが最初にセンサー820を通過するとき、透過率は低くなる。このイベントのタイミングは、チャンバからセンサーまでの容積距離によって予測可能であるが、回収結果の精度を最大化するためにその前縁を検出することが重要である。ある状況において、細胞数が非常に少ないので、コントローラは、光学センサーが容積決定によって優先されるべきであると結論づけなければならない点も理解されよう。
【0124】
濃縮スラグの最後がチャンバから移動してセンサーを通過する際、その正面で減少する濃縮細胞に比例してセンサーによって観測される透過率の回復が存在する。例えば、透過率回復の閾値を95%に設定することによって、細胞ポピュレーションのバルクがセンサーを通過したことになる。その後、このトリガーは、アウトプットバルブを通過して方向付けられた体積を画定するようにコントローラによって使用される。
【0125】
回収制御処理はシステムコントローラ内に一体化され、回収バルブ動作をトリガーすることおよびポンプを制御することは、上述したプロセスに従って実行される。
【0126】
システムコントローラは、第1濃度推移を検出し、かつ、センサーにおいて濃縮流体の前縁を記録するように構成されてよい。システムコントローラは、第2濃度推移を検出し、第2濃度推移を記録し、かつ、回収用の濃縮体積を決定するように構成されてよく、これは、濃縮流体の後縁の%希釈閾値に基づいてよい。システムコントローラは、センサートリガーおよび決定済み体積に応答してアウトプットバルブ850を開閉する時を決定するために、ポンプキャリブレーションデータを使用するように構成されてよい。バルブ動作は、センサーを通過する濃縮の推移とオーバーラップしてよい。
【0127】
コントローラはまた、回収イベント用の容積トリガーをモニターするように構成されてよく、ここで、流体回収が開始される時に、濃縮チャンバとバルブアセンブリとの間で回収する液量が決定され、かつ、第1濃度推移を検出しない場合、回収制御イベント優先トリガーが、動的流量移動に基づいてバルブアクチュエータの動作をトリガーするよう設定される。
【0128】
ある実施形態において、システムコントローラは、一つ以上の流体回収イベントを実行するように構成されてよい。例えば、遠心分離器が、濃度傾斜分離プロトコルの一部として異なる流体層の分離用に使用される。濃度傾斜分離細胞ポピュレーション(すなわち、異なるサイズおよび濃度質量に基づく)は、異なる層の流体に対して慎重に制御された濃度および粘性を追加する。回収イベントは、流体層の各々および異なる出力経路に関連づけられた細胞ポピュレーションを選択的に回収するようにトリガーされてよい。例えば、この実施形態において、バルブアセンブリは、非回収経路または2つの分離回収経路のひとつへ選択的に、単一の流入流体経路を切り替えるように構成されてもよい。第1の回収経路へのこの切り替えは、第1スラグの検出に基づいてトリガーされ、異なる光学濃度の検出に基づいて第2回収経路へ切り替える。その結果、第2濃度推移は、2つの細胞ポピュレーション間の推移を示し、および第1と第2経路との間を切り替えるべくトリガーされる収集の指標である。この技術はまた、単一ポピュレーション用のスラグの異なる部分の回収用に使用されてよいことが理解されよう。例えば、第1回収経路は最大濃度(前縁と後縁との間のセクション)で懸濁を捕捉するために使用され、第2回収経路は幾分希釈された懸濁の前縁および/または後縁を捕捉するために使用されてよい。
【0129】
再循環モードにおいて対向流遠心分離器を細胞捕捉方向に戻すことにより、処理検証目的のこのストラテジによって捕捉されなかったすべての細胞の回収が可能となるか、または、次の細胞捕捉処理ステップの開始を形成することが可能となる。
【0130】
このストラテジは、0.5ml(控えめな見積もりで2ml)まで減少した体積で濃縮細胞を分配することができる。この流体回収システムおよび方法の長所は、細胞濃縮の体積が処理を管理するのに要求されないことである点が理解されよう。したがって、実際の細胞ポピュレーションの予備知識なしで、細胞は最大の実施可能濃縮で回収されてよい。細胞濃縮の最終分離体積は、必要であればターゲット体積まで増加されてよい。典型的に濃縮プロセスは希釈するよりも細胞にダメージまたは死を生じさせやすいので、さらなる濃縮ステップを要求するのではなく回収済みポピュレーションを希釈することが、細胞療法にとって好ましい。
【0131】
システムの実施形態において、スラグの到着時に光学濃度センサーをトリガーするのに十分な細胞が存在しなければ、体積が分配設定まで体積制御中に変化するに従い前縁トリガーが観測されなかったとき、コントローラはこの失敗を検出する。その後コントローラ回収アルゴリズムは、デフォルトの容積分配ストラテジとなる。
【0132】
図10は、光学センサーによる前縁および後縁検出用にトリガー条件を設定するためのユーザーインターフェースの例を示す。これは、実施形態間で変化してよいことが理解されよう。光学濃度センサーの第1考察は、流体媒質を運ぶ管に対するベースライン基準を決定しかつ維持することである。これは、管中に媒質流体のみを有する初期セットアップフェーズ中の光学センサーモニタリングによって得られてよい。コントローラは、LEDスタビライゼーション用のランタイムを最小化する目的、および管および流体媒質光学特性を特徴付ける初期ベースライン濃度基準の決定を有するシステム初期化の一部として、濃度センサー初期化プロセスを実行するように構成されてよい。このベースラインは、ドリフトを検出し、かつ、トリガー検出設定の妥協を回避するべく、光学濃度センサーのバックグラウンドモニタリング用に利用可能である。各光学濃度センサーサンプル用に実行されるバックグランド動作は、完全な管特性の長期間平均に寄与する定義された設定に基づいて、液体または気体(泡を含む)で満たされた管の認識を有する。濃度センサー用のサンプリングレートは、処理フェーズに基づいて変化してよい。例えば、分離チャンバ搬入および分離フェーズ中に、回収フェーズ中と比べてより小さいサンプリングレートが使用されてよい。媒質流体内の泡をモニタリングする場合、より高いサンプリングレートが使用されてもよい。
【0133】
流体回収中、光学センサー用のサンプリングレートは、スラグ検出および回収トリガーの精度を改善するべく増加されてよい。例えば、トリガー中にイネーブルとなったステップは、10ミリ秒までモニタリングレートを増加する。典型的にスラグは濃度の持続的変化を生じさせるので、スラグの存在は泡検出応答からコントローラによって差別化可能である。コントローラは、スラグの後縁を示す透過率への回帰を認識するべく、光学センサー出力を解析するように構成されている。スラグ検出は、回収終了トリガーを判定するべく、後縁検出および透過率回復モニタリングの精度を改善するためにサンプリングレートの増加をトリガーしてよい。
【0134】
本願発明の思想および態様から離れることなく多くの修正が可能であることは当業者の知るところである。
【0135】
本願発明の特許請求の範囲および詳細な説明において、言語表現または必要な暗示のため文脈が他に要求する場合を除き、“備える”、“有する”、“含む”などの用語は、包括的意味で使用され、すなわち、記載した特徴の存在を特定するが、本願発明のさまざまな実施形態にさらなる特徴の存在または付加を排除するものではない。
【0136】
任意の従来技術文献について言及する場合、この文献は、オーストラリアまたは他の任意の国において、共通の一般的知識の一部を形成することを認めるものではないことが理解されるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0137】