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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】吸収体処理方法及び吸収体処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20231128BHJP
   A61F 13/84 20060101ALI20231128BHJP
   B02C 18/06 20060101ALI20231128BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20231128BHJP
   B09B 101/67 20220101ALN20231128BHJP
【FI】
B09B3/70
A61F13/84
B02C18/06 Z
B09B3/30
B09B101:67
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021009003
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112950
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】511124208
【氏名又は名称】株式会社そうぎょう
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 龍一
(72)【発明者】
【氏名】木村 茂信
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-011158(JP,A)
【文献】特開2020-054936(JP,A)
【文献】特開2003-019169(JP,A)
【文献】特開2012-081433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体の処理方法であって、
前記吸収体を破砕する工程と、
前記吸収体に第一の濃度の処理液を供給する工程と、
前記吸収体の破砕物及び前記処理液を回転ドラム内に排出する工程と、
前記吸収体の破砕物及び処理液を前記回転ドラム内で撹拌して当該破砕物に含まれる吸収性ポリマーの体積を縮小する工程と、
前記回転ドラムによって前記吸収性ポリマーの体積を縮小した後の破砕物を脱水する工程と、
前記吸収性ポリマーの体積を縮小する工程及び破砕物を脱水する工程後の処理排液を第一の濃度より濃度の低い第二の濃度以下に希釈する工程と、
前記第二の濃度以下に希釈された処理排液を排出する工程と、
前記脱水後の破砕物を、前記回転ドラム内に導入された破砕物搬出コンベアで、当該回転ドラム外に搬出する工程を備えた、
ことを特徴とする吸収体処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の吸収体処理方法において、
回転ドラムの内周面に付着した破砕物を、破砕物剥離手段によって当該回転ドラムの内周面から剥離する工程を更に含む、
ことを特徴とする吸収体処理方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の吸収体処理方法において、
吸収性ポリマーの体積を縮小する工程後の処理排液及破砕物の脱水後の処理排液を排液希釈装置に排出する工程と、
吸収性ポリマーの体積を縮小する工程後の処理排液及破砕物の脱水後の処理排液を前記排液希釈装置で第二の濃度以下に希釈する工程を更に含む
ことを特徴とする吸収体処理方法。
【請求項4】
請求項3記載の吸収体処理方法において、
排液希釈装置に排出された破砕物及び処理排液中に含まれる残渣を破砕物回収手段で回収する工程を更に含む、
ことを特徴とする吸収体処理方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の吸収体処理方法において、
破砕物に処理液を供給したのち、当該処理液の量よりも多い量の水を当該破砕物に供給して処理液を希釈する、
ことを特徴とする吸収体処理方法。
【請求項6】
吸収体の処理装置であって、
吸収体を破砕する破砕装置と、
前記吸収体に第一の濃度の処理液を供給する処理液供給装置と、
前記破砕装置で破砕された前記吸収体の破砕物を処理する破砕物処理装置と、
前記破砕物処理装置から排出された処理排液を第一の濃度より濃度の低い第二の濃度以下に希釈する排液希釈装置と、
前記排液希釈装置によって前記第二の濃度以下に希釈された処理排液を当該排液希釈装置外に排出する排出手段を備え、
前記破砕物処理装置は、前記破砕物及び処理液を撹拌して当該破砕物に含まれる吸収性ポリマーの体積を縮小する工程及び吸収性ポリマーの体積を縮小した後の破砕物を脱水する工程を実行する回転ドラムと、当該回転ドラム内に導入され、前記脱水後の破砕物を当該回転ドラム外に搬出する破砕物搬出コンベアを備えた、
ことを特徴とする吸収体処理装置。
【請求項7】
請求項6記載の吸収体処理装置において、
破砕物処理装置は、回転ドラムの内周面に付着した破砕物を剥離する破砕物剥離手段を備えた、
ことを特徴とする吸収体処理装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載の吸収体処理装置において、
破砕物処理装置は、回転ドラムを収容するドラムカバーを備え、
前記ドラムカバーに、前記回転ドラムから当該ドラムカバーに排出された処理排液を排液希釈装置に排出する排出管が連結され、
前記排出管に当該排出管の開閉を切り替える切替えバルブが設けられた、
ことを特徴とする吸収体処理装置。
【請求項9】
求項8載の吸収体処理装置において、
回転ドラムからこぼれおちる破砕物及び処理排液を受ける受け体を備え、
前記受け体に、当該受け体に排出された破砕物及び処理排液を外部に排出する補助排出管が連結された、
ことを特徴とする吸収体処理装置。
【請求項10】
請求項9記載の吸収体処理装置において、
排液希釈装置は希釈タンクを備え、
前記希釈タンクは希釈室と分離小室に仕切られ、
ドラムカバーに連結された排出管に、受け体に連結された補助排出管が連結され、
前記分離小室に、前記排出管及び補助排出管を通過して当該分離小室に排出され破砕物を回収する破砕物回収手段が設けられた、
ことを特徴とする吸収体処理装置。
【請求項11】
請求項6から請求項10のいずれか1項に記載の吸収体処理装置において、
破砕物搬出コンベアに、当該破砕物搬出コンベアに付着した破砕物及び処理排液を剥離する剥離スクレーパが設けられ、
回転ドラムでの撹拌時及び脱水時に前記破砕物搬出コンベアが搬出方向と反対方向に回転すると、当該回転ドラムでの撹拌時及び脱水時に当該破砕物搬出コンベアに付着した破砕物及び処理排液が前記剥離スクレーパで剥離され、当該剥離スクレーパで剥離された破砕物及び処理排液が前記破砕物搬出コンベアによって前記回転ドラム内に戻される、
ことを特徴とする吸収体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て紙オムツをはじめとする吸収性ポリマーを含む物品(以下「吸収体」という)の処理に用いる方法及び装置に関し、より詳しくは、吸収体を破砕物と処理排液とに分離して処理するのに用いる吸収体処理方法及び吸収体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
介護や育児等の現場では、使い捨て紙オムツが広く利用されている。使用のたびに洗濯をしなければならない布オムツと異なり、使い捨て紙オムツは洗濯が不要であるため、介護や育児等にかかわる人々の負担軽減に貢献している。
【0003】
使い捨て紙オムツは一回使いきりであるため、使用後には適切に処分する必要がある。使用後の紙オムツ(使用済み紙オムツ)は焼却や埋め立てなどによって処理されることもあるが、近年では、環境への影響を考慮して、専用の処理装置が用いられることもある。
【0004】
従来、使用済み紙オムツの処理装置として、使用済み紙オムツを回転ドラムで落下させ、その落下による衝撃によって、使い捨て紙オムツを解体するものが知られている(特許文献1及び2)。特許文献1及び2の処理装置によれば、使用済み紙オムツを破砕物と処理排液とに分離して処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-019169号公報
【文献】特開2003-190928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、使用済み紙オムツを処理する際には、吸収性ポリマーから水を除去して吸収性ポリマーの体積を縮小するために塩化カルシウム溶液等の処理液が用いられる。処理に用いられた処理液(処理排液)は最終的に下水に排出されるため、下水処理や下水道施設への悪影響がないように留意する必要がある。
【0007】
ところが、下水処理や下水道施設への悪影響がないように、ある特定の物質の濃度の低い処理液(たとえば、法令やガイドライン等で定められる排出基準値以下の濃度の処理液)を用いる場合、吸収性ポリマーから水を除去して吸収性ポリマーの体積を縮小するのに時間がかかるという難点がある。現状では、吸収性ポリマーからの体積を短時間で縮小することができ、下水処理や下水道施設への影響が少ない処理方法や処理装置はなく、それらを実現できる方法や装置の提案が待望されている。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、紙オムツをはじめとする各種吸収体の処理に用いることのできる方法及び装置であって、吸収性ポリマーの体積を短時間で縮小することができ、下水処理や下水道施設への影響が少ない吸収体処理方法及び吸収体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[吸収体処理方法]
本発明の吸収体処理方法は、吸収体の処理方法であって、吸収体を破砕する工程と、吸収体に第一の濃度の処理液を供給する工程と、吸収体の破砕物及び処理排液を撹拌して当該破砕物に含まれる吸収性ポリマーの体積を縮小する工程と、吸収性ポリマーの体積を縮小する工程後の処理排液を第一の濃度よりも濃度の低い第二の濃度以下に希釈する工程と、前記第二の濃度以下に希釈された処理排液を排出する工程を備えた方法である。
【0010】
[吸収体処理装置]
本発明の吸収体処理装置は、吸収体の処理装置であって、吸収体を破砕する破砕装置と、吸収体に第一の濃度の処理液を供給する処理液供給装置と、破砕装置で破砕された吸収体に含まれる吸収性ポリマーの体積を縮小して、当該吸収性ポリマーの体積を縮小した後の処理排液を排出する破砕物処理装置と、破砕物処理装置から排出された処理排液を希釈する排液希釈装置と、排液希釈装置によって第二の濃度以下に希釈された処理排液を排液希釈装置外に排出する排出手段を備えた装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸収体処理方法及び吸収体処理装置は、吸収性ポリマーの体積を縮小するときには第一の濃度の処理液(排出時よりも高濃度の処理液)を使用するため、吸収性ポリマーの体積を短時間で縮小することができ、排出する前に第一の濃度よりも濃度の低い第二の濃度以下に希釈するため、下水処理や下水道施設への影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は本発明の吸収体処理装置(オムツ処理装置)の一例を示す斜視図、(b)は(a)の吸収体処理装置を別の角度から見た場合の斜視図。
図2】(a)は図1(a)の吸収体処理装置に外壁材が取り付けられた状態の斜視図、(b)は図1(b)の吸収体処理装置に外壁材が取り付けられた状態の斜視図。
図3】破砕装置の一例を示す斜視図。
図4】(a)は図3の破砕装置のタンクカバーを外した状態の斜視図、(b)は(a)の破砕装置を別の角度から見た場合の斜視図。
図5】(a)は破砕装置を正面側から見た場合の内部構造説明図、(b)は破砕装置を右側面側から見た場合の内部構造説明図。
図6】(a)は破砕物処理装置とシュートの一例を示す斜視図、(b)は(a)からシュートを外した状態の斜視図。
図7】(a)はスクレーパとスクレーパ駆動手段を備えた破砕物剥離手段の説明図、(b)はスクレーパの移動位置の説明図。
図8】ベルトコンベアの裏面側に設けられた剥離スクレーパの説明図。
図9】処理液タンクと排液希釈装置の一例を示す斜視図。
図10】処理液用ポンプに接続された処理液通路の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態)
本発明の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。本願の処理対象である吸収体には使い捨て紙オムツや生理用品等の吸収性ポリマー(高分子ポリマー)を備えた各種物品が含まれるが、ここでは、吸収体が使い捨て紙オムツの場合を一例とする。なお、本願において、「破砕物」には使い捨て紙オムツ(吸収体)を構成する不織布、ビニール、吸収性ポリマー、テープ、汚物などが含まれ、「処理排液」には処理に使用された処理液や尿などの液体が含まれる。
【0014】
一例として図1(a)(b)に示す吸収体処理装置(以下、「オムツ処理装置」という)は、破砕装置10と、脱臭装置20と、破砕物処理装置30と、処理液供給装置40と、排液希釈装置50と、制御盤60と、ダストボックス70を備えている。脱臭装置20、破砕物処理装置30、処理液供給装置40、排液希釈装置50、制御盤60及びダストボックス70はラック80に搭載されている。図2(a)(b)に示すように、ラック80内の臭気を漏れにくくするため、ラック80の外周は外壁材90で覆われている。
【0015】
前記破砕装置10は使用済み紙オムツを破砕する装置である。一例として図3図5(a)(b)に示す破砕装置10は、使用済み紙オムツを投入する破砕タンク11と、破砕タンク11内に配置された固定破砕具12及び可動破砕具13と、可動破砕具13を駆動する破砕具駆動手段14を備えている。
【0016】
図5(a)(b)に示すように、前記破砕タンク11は、固定破砕具12及び可動破砕具13が配置されるタンク本体11aと、タンク本体11aの上方に取り付けられたタンクカバー11bを備えている。
【0017】
前記タンク本体11aは、前方、後方、左側方及び右側方が囲われた上下面開口の角筒状の中空体である。図5(b)に示すように、タンク本体11aの前後両面には開口部が設けられている。各開口部の周縁には、複数枚の固定破砕具12が間隔をあけて固定された破砕具台座12aが開口部を閉塞するように取り付けられ、複数枚の固定破砕具12がタンク本体11a内に突出するようにしてある。この実施形態では、各破砕具台座12aに六枚の固定破砕具12が取付けられた場合を一例としているが、固定破砕具12は六枚より多くても少なくてもよい。
【0018】
図5(a)に示すように、タンク本体11aの左側面と右側面には回転軸14cが架設されている。回転軸14cは、その長手方向両端が左側面と右側面の外側に配置されたピローブロック15a、15bで回転可能に支持されている。回転軸14cのうち、左側面の外側に突出した部分には、破砕具駆動手段14として駆動モータ14a及びギヤボックス14bが接続されている。
【0019】
前記回転軸14cには、固定破砕具12と協働して使用済み紙オムツを破砕する可動破砕具13が取り付けられている。可動破砕具13は回転軸の長手方向に間隔をあけて複数枚設けられ、各可動破砕具13の間に固定破砕具12が配置されるように構成されている。可動破砕具13と固定破砕具12の間には、各可動破砕具13の間に固定破砕具12が配置されたときに、各破砕具間に若干のクリアランスが確保されるようにしてある。駆動モータ14aによって回転軸14cが回転すると、回転軸14cに固定された可動破砕具13が回転し、可動破砕具13と固定破砕具12によって使用済み紙オムツが破砕される。
【0020】
タンク本体11aの後方側の面の下端側には、破砕タンク11内に処理液を供給(噴霧)する処理液ノズル42jが導入されている。この処理液ノズル42jには後述する処理液供給装置40が接続され、その処理液供給装置40から供給された処理液が破砕タンク11内に噴霧されるようにしてある。処理液には、たとえば、塩化カルシウム溶液を用いることができる。
【0021】
処理液ノズル42jから噴霧される処理液の濃度は、1~5%程度、好ましくは1~3%程度、さらに好ましくは2%程度とすることができる。いずれの場合も、後述する排出基準値よりも高い濃度とする。高濃度の処理液を噴霧することで、吸収性ポリマーの離水を促進させる(体積を縮小させる)とともに、吸収余力のある吸収性ポリマーの再膨潤を防ぐことができる。
【0022】
タンク本体11aの下端側には、破砕タンク11内で破砕された使用済み紙オムツを破砕タンク11外に排出するための排出口が設けられている。排出口の周縁には破砕物処理装置30に通じるシュート16(図6(a))が取り付けられ、破砕タンク11内の破砕物や処理液がシュート16を通じて破砕物処理装置30に排出されるようにしてある。
【0023】
図示は省略しているが、破砕物や処理液がシュート16の途中で止まることなく破砕物処理装置30に確実に排出できるように、シュート16の途中には高圧ノズルを配置することもできる。この場合、高圧ノズルから噴射される液体(水道水や処理液など)によって、破砕物や処理液を破砕物処理装置30に確実に排出することができる。
【0024】
前記タンクカバー11bは、前方、後方、左側方、右側方及び上方が囲われた下方開口の直方体状の中空体である。図5(b)に示すように、タンクカバー11bの前方面には、使用済み紙オムツを投入するオムツ投入口17が設けられている。オムツ投入口17の周縁には当該オムツ投入口17を開閉する投入口扉18が設けられている。
【0025】
投入口扉18の前面上部には、投入口扉18を操作するための持ち手具18aが取り付けられている。投入口扉18は下端側が蝶番でタンク本体11aに連結されており、持ち手具18aを手前に引くと、蝶番での連結部分を回転軸として投入口扉18が回転するように構成されている。図示は省略しているが、投入口扉18が不用意に開くのを防止するため、使用時に投入口扉18が開くのを防止する電磁ロックが設けられている。
【0026】
この実施形態では、オムツ投入口17の手前側に悪臭の流出を軽減する可動式のスクリーン19が設けられている。図5(b)に示すように、この実施形態のスクリーン19は、オムツ投入口17の略全面を覆うことのできるサイズの平板材であり、上端側がタンクカバー11bの上面に連結されている。スクリーン19の下端側はフリーにしてあり、使用済み紙オムツが投入されると、当該使用済み紙オムツの重さによってスクリーン19の下端側が後方に押され、使用済み紙オムツがタンク本体11a内に到達するようにしてある。
【0027】
タンクカバー11bの上方面には、破砕タンク11内に水道水を供給(噴射)する水道水ノズル53bが導入されている。この水道水ノズル53bは、図示しない水道水供給部に接続され、水道水供給部から供給される水道水が破砕タンク11内に噴射されるようにしてある。
【0028】
ここで噴射される水道水は、破砕タンク11内(内部の固定破砕具12や可動破砕具13等を含む)を洗浄するとともに、処理液の濃度を希釈するために利用される。処理液を確実に希釈するため、水道水ノズル53bから噴射される水道水の量は、処理液ノズル42jから噴霧される処理液の量よりも多くなるように設定される。
【0029】
具体的には、破砕物処理装置30内に排出されたときに、処理排液が濃度0.4%程度まで希釈される量の水道水が噴射される。この実施形態では、水道水ノズル53bとして噴射角度が70度程度のものを用いている。洗浄力向上の観点から、水道水ノズル53bには高圧噴射可能なものを用いるのが好ましい。
【0030】
前記脱臭装置20は、破砕タンク11内やオムツ処理装置内の臭いの原因物質を除去する装置である。図1(a)(b)に示すように、この実施形態の脱臭装置20は、二本の吸気ダクト21と、脱臭機本体22と、排気ダクト23を備えている。図示は省略しているが、脱臭機本体22には吸気用のファン及び排気用のファンが設けられている。吸気用のファンは両吸気ダクト21に、排気用のファンは排気ダクト23に設けることもできる。
【0031】
前記二本の吸気ダクト21の一方(以下「第一吸気ダクト」という)21aは、破砕タンク11内の臭いの原因物質を吸引して脱臭機本体22に送出するものであり、一端側が破砕タンク11に、他端側が脱臭機本体22に接続されている。
【0032】
前記二本の吸気ダクト21の他方(以下「第二吸気ダクト」という)21bは、オムツ処理装置全体の臭いの原因物質を吸引して脱臭機本体22に送出するものであり、一端側がダストボックス70の上方に配置され、他端側が脱臭機本体22に接続されている。
【0033】
図示は省略しているが、脱臭機本体22は両吸気ダクト21から導入された臭いの原因物質を除去する複数本の吸排気ホースを備えている。吸排気ホースには、たとえば、光触媒を利用した脱臭機を用いることができる。この実施形態では、吸排気ホースを四本用いる場合を一例としているが、吸排気ホースは四本より多くても少なくてもよい。
【0034】
脱臭機本体22には脱臭効果に加えて、滅菌効果を備えたものを用いることもできる。なお、ここでいう滅菌とは、菌を死滅或いは減少させる程度の意味であり、厳密な意味で菌が全滅していない状態をも含む概念である。
【0035】
前記破砕物処理装置30は、破砕タンク11から排出された破砕物に含まれる吸収性ポリマーの還元、処理排液の脱水、処理排液の排出、脱水後の破砕物の排出を行う装置であり、撹拌手段や脱水手段、排水手段として機能する。ここでいう還元とは、処理液を吸収した吸収性ポリマーから処理排液を排出して、その体積を縮小することをいう。
【0036】
一例として図6(a)(b)に示す破砕物処理装置30は、回転ドラム(撹拌槽)31と、ドラムカバー32と、ドラム駆動手段33と、破砕物剥離手段34と、破砕物搬出コンベア35を備えている。これらの各構成は受け体36に載置されている。受け体36には、たとえば、リキッドパンなどを用いることができる。この実施形態の破砕物処理装置30は、後述する排出管32bの電磁バルブ(切替えバルブ)32cを閉じた状態で運転する撹拌モードと、当該電磁バルブ32cを開いた状態で運転する脱水モードの二つのモードに切り替えられるように構成されている。
【0037】
この実施形態の回転ドラム31は前面開口の有底筒状の容器である。回転ドラム31は底面が横を向く横倒しの状態で設置されている。図示は省略しているが、回転ドラム31の周面及び底面には処理排液を排出するための排液排出口が設けられている。この実施形態では、排液排出口として幅0.5mm未満のスリットが複数設けているが、排液排出口は直径0.5mm未満の孔等であってもよい。
【0038】
排液排出口を0.5mm未満としたのは、処理排液が通過し、破砕物や還元後の(体積縮小後の)吸収性ポリマーが通過しないようにするためである。ただし、この寸法は一例であり、所期の目的を達成できる限り、排液排出口のサイズはこれより大きくすることも小さくすることもできる。
【0039】
この実施形態のドラムカバー32は、内部に回転ドラム31が収まる収容部を備えた前面開口のリング状ケースである。図示は省略しているが、ドラムカバー32の前面開口には破砕物や処理排液の飛散を防止する飛散防止パネルが設けられている。飛散防止パネルには、シュート16を導入するためのシュート導入口と、後述するベルトコンベア35aを導入するためのコンベア導入口が開口されている。
【0040】
ドラムカバー32の周面の下端側には、ドラムカバー32内の処理排液を外部に排出するための排出口32aが開口されている。排出口32aは、回転ドラム31の回転方向先方側に、換言すると、回転ドラム31の回転によって回転ドラム31内に発生する気流の流れ方向先方側に設けられている。排出口32aをこのような位置に設けることにより、脱水により生じた処理排液が気流によって流れやすくなり、ドラムカバー32内で滞ることなくスムーズに排出口32aから流れ出るというメリットがある。
【0041】
前記排出口32aには排出管32bが接続され、排出口32aから排出される処理排液が排出管32bに送出されるようにしてある。排出管32bには電磁バルブ32cが接続され、当該電磁バルブ32cが閉じられるとドラムカバー32内の処理排液(処理液)がドラムカバー32内に貯留し、電磁バルブ32cが開かれるとドラムカバー32内の処理排液がドラムカバー32外に排出される。
【0042】
ドラムカバー32内に収容された回転ドラム31にはドラム駆動手段33が連結され、当該ドラム駆動手段33の動力によって回転ドラム31がドラムカバー32内で正逆方向に回転するようしてある。この実施形態のドラム駆動手段33は、ドラム用モータ33aと、第一プーリー33bと、第二プーリー33cと、伝達ベルト33dと、回転軸33eを備えている。
【0043】
第一プーリー33bはドラム用モータ33aの出力軸に、第二プーリー33cは回転軸33eの一端側にそれぞれ連結され、それら第一プーリー33bと第二プーリー33cに伝達ベルト33dが巻回されている。回転軸33eの他端側は回転ドラム31の底面に連結されており、ドラム用モータ33aの動力によって回転軸33eが回転することで、回転ドラム31が回転するようにしてある。
【0044】
前記破砕物剥離手段34は、回転ドラム31の内周面に付着した破砕片を回転ドラム31から剥離するための手段である。一例として図7(a)(b)に示す破砕物剥離手段34は、スクレーパ34aと、スクレーパ駆動手段34bを備えている。
【0045】
この実施形態のスクレーパ34aは平板材である。スクレーパ34aは、スクレーパ駆動手段34bによって、先端部が回転ドラム31の内面に当接する位置(以下「剥離位置」という)と、回転ドラム31の内面に当接しない位置(以下「退避位置」という)に回転するように(切り替えられるように)構成されている。
【0046】
この実施形態のスクレーパ駆動手段34bは、ロータリーアクチュエータ34cと、主動ギヤ34dと、従動ギヤ34eと、スクレーパ軸34fを備えている。主動ギヤ34dはロータリーアクチュエータ34cの出力軸に、従動ギヤ34eはスクレーパ軸34fの一端側に接続されている。スクレーパ軸34fにはスクレーパ34aが取り付けられ、ロータリーアクチュエータ34cの動力によってスクレーパ軸34fを正回転させることで、退避位置にあるスクレーパ34aが剥離位置まで回転し、スクレーパ軸34fを逆回転させることで、剥離位置にあるスクレーパ34aが退避位置に戻るようにしてある。
【0047】
図6(a)(b)に示すように、破砕物搬出コンベア35は、ベルトコンベア35aと、コンベア駆動モータ35bと、排出ガイド35cを備えている。この実施形態のベルトコンベア35aは、間隔をあけて配置された前後のローラに無端ベルトが周回されたベルトコンベアである。ベルトコンベア35aはコンベア駆動モータ35bによって回転する。
【0048】
ベルトコンベア35aの幅方向側方には、搬送中の破砕物が側方から落下するのを防止するこぼれ止め材35dが設けられている。ベルトコンベア35aの排出方向先方側には、ベルトコンベア35aの搬送方向に対して斜めに配置された排出ガイド35cが設けられている。ベルトコンベア35aで搬送された破砕物は排出ガイド35cによってダストボックス70内に排出される。
【0049】
図8に示すように、ベルトコンベア35aの裏面側には剥離スクレーパ35eが設けられている。剥離スクレーパ35eは薄板状であり、その先端辺がベルトコンベア35aの裏面側に接触するようにしてある。
【0050】
破砕物処理装置30内で撹拌及び脱水を行う際には、ベルトコンベア35a上に破砕物や処理排液が付着することがある。この実施形態では、ベルトコンベア35aに付着した破砕物や処理排液を回転ドラム31内に戻せるように、撹拌時及び脱水時にベルトコンベア35aが排出方向と反対方向(図8の矢印方向)に回転するようにしてある。
【0051】
このとき、ベルトコンベア35aに付着した破砕物や処理排液は剥離スクレーパ35eによって剥離され、回転ドラム31内に戻される。これにより、処理が完了していない破砕片がダストボックス70に回収されたり、破砕物や処理排液が回転ドラム31外に排出されたりするのを効果的に防止することができる。
【0052】
前記受け体36は、還元(撹拌)時や脱水時に回転ドラム31からこぼれる破砕物や処理排液を受けるための部材である。受け体36には、受け体36にこぼれ落ちた破砕物や処理排液を排出するための補助排出管36aが連結されている。図示は省略しているが、補助排出管36aの先端側は排出管32bに連結されており、補助排出管36aを通過した破砕物や処理排液は排出管32bを流れる処理排液と合流して希釈タンク51の分離小室51bに排出されるようにしてある。受け体36の底面側には稼働時の振動を防止する防振ゴム36bが設置されている。
【0053】
前記処理液供給装置40は、破砕装置10内に処理液を供給するための装置である。この実施形態の処理液供給装置40は、処理液タンク41と、処理液通路42と、処理液用ポンプ43と、水道水通路44を備えている。処理液用ポンプ43にはマグネットポンプなどを用いることができる。
【0054】
前記処理液タンク41は、破砕装置10に供給する処理液を生成して貯留するためのタンクである。図9に示すように、この実施形態の処理液タンク41は直方体状の中空容器であり、上面には塩化カルシウムを投入するための処理液投入口41aが設けられている。処理液投入口41aの周縁には持ち手付きの開閉蓋41bが設けられ、開閉蓋41bを手前に引くことで処理液投入口41aに塩化カルシウムを投入することができる。この実施形態では、処理液タンク41内に濃度2%程度の処理液が保持されるようにしてある。
【0055】
処理液タンク41の内部には、処理液タンク41内の処理液量を検知する空検知センサ41c及び満タン検知センサ41dが設けられている。この実施形態では、処理液タンク41内の処理液量が、処理液タンク41の底面から20mm未満となったときに空検知センサ41cで検知され、処理液タンク41内の処理液量が、処理液タンク41の底面から340mmに達したときに満タン検知センサ41dで検知されるようにしてある。空検知センサ41c及び満タン検知センサ41dによって検知されると、そのことが音や光などによって外部に報知されるようにしてある。
【0056】
図10に示すように、この実施形態では、処理液通路42として、処理液タンク41と処理液用ポンプ43の間に接続された第一処理液通路42aと、処理液用ポンプ43の第一吐出路43aに接続された第二処理液通路42bと、処理液用ポンプ43の第二吐出路43bに接続された第三処理液通路42cと、処理液用ポンプ43の第三吐出路43cに接続された第四処理液通路42dを備えている。
【0057】
第二処理液通路42b及び第三処理液通路42cは処理液用ポンプ43から吐出された処理液を処理液タンク41内に帰還させるための通路である。第二処理液通路42b及び第三処理液通路42cの先方には2ポートバルブ42eが接続され、2ポートバルブ42eには二本の帰還パイプ42f、42gが接続されている。第二処理液通路42b及び第三処理液通路42cを通過した処理液は、2ポートバルブ42e及び二本の帰還パイプ42f、42gを通じて処理液タンク41内に戻るようにしてある。
【0058】
なお、両帰還パイプ42f、42gの先端には図示しないエルボが接続され、帰還した処理液を横向きに排出できるようにしてある。帰還した処理液が処理液タンク41内で横向きに排出されるようにすることで、帰還した処理液によって処理液タンク41内が撹拌され、処理液タンク41内の処理液の濃度の偏りを防止することができる。
【0059】
前記第四処理液通路42dは処理液用ポンプ43から吐出された処理液を破砕装置10に供給するための通路である。第四処理液通路42dの先方側には流量センサ42h及び2ポートバルブ42iが接続されている。第四処理液通路42dの先方側は処理液ノズル42j(図5(a)(b))に接続され、第四処理液通路42dを通過した処理液が、当該処理液ノズル42jから破砕装置10内に噴霧されるようにしてある。
【0060】
前記排液希釈装置50は、処理排液が所定の排出基準値を満たすように、破砕物処理装置30から排出された処理排液を一旦保持して希釈するためのタンクである。ここでいう排出基準値とは、2019年9月に国土交通省水管理・国土保全局下水道部が公表した「Baタイプ(Bタイプ破砕回収一体型)の実証試験棟実施における基本的な考え方」において示された、塩化カルシウムを使用する場合における塩化物イオン濃度が1000mg/L以下(0.1%以下)を意味する。
【0061】
この実施形態の排液希釈装置50は、希釈タンク51と、水道水供給部から供給される水道水を希釈タンク51に導入する水道水導入通路52と、水道水供給部から供給される水道水を破砕装置10及び処理液タンク41に供給する水道水供給通路53と、希釈タンク51内の処理排液(希釈液)を排出する排出手段54を備えている。
【0062】
前記希釈タンク51は破砕物処理装置30から排出された処理排液を一旦保持して希釈するためのタンクである。図9に示すように、この実施形態の希釈タンク51は処理液タンク41よりも薄型の直方体状の中空容器である。希釈タンク51の内部は、仕切板によって希釈室51aと分離小室51bに仕切られている。
【0063】
希釈室51aと分離小室51bの上面は開口しており、それぞれ、希釈室用蓋部材51cと分離小室用蓋部材51dで閉じられている。希釈室用蓋部材51cには導入パイプ52dを導入するための導入パイプ用開口51eが、分離小室用蓋部材51dには排出管32bを導入するための排出管用開口51fが開口されている。
【0064】
図示は省略しているが、分離小室51bには、排出管32bから排出された破砕物を回収する破砕物回収手段として、ソックスフィルタが装着されている。ソックスフィルタで回収された破砕物は、適宜取り出して他の破砕物とともに廃棄することができる。なお、分離小室51bに排出された処理排液は、分離小室51bを構成する仕切板をオーバーフローしたもののみが希釈室51aに流れ込むようにしてある。
【0065】
この実施形態では、希釈室51aの容量を30リットル、分離小室51bの容量を3リットルとしている。ただし、この数値は一例であり、希釈室51a及び分離小室51bの容量はこれより大きくすることも小さくすることもできる。
【0066】
前記水道水導入通路52は、蛇口などの水道水供給部から供給される水道水を希釈タンク51に導入するための通路である。この実施形態の水道水導入通路52には、ジョイント52a、流量センサ52b、2ポートバルブ52c及び導入パイプ52dが接続されている。導入パイプ52dは希釈タンク51の希釈室51aに導入され、水道水導入通路52を通過した水道水が希釈室51aに供給されるようにしてある。
【0067】
水道水導入通路52が接続されたジョイントには水道水供給通路53が接続されている。水道水供給通路53の先端側には2ポートバルブ53aが接続され、一方のポートが破砕装置10の水道水ノズル53b(図5(a)(b))に接続され、水道水供給通路53を通過した水道水を当該水道水ノズル53bから破砕装置10内に噴射できるように構成されている。
【0068】
前記2ポートバルブ53aのうち、他方のポートには処理液タンク41側へ水道水を送出する水道水送出路53cが接続されている。水道水送出路53cには流量センサ53d、2ポートバルブ53e及び導入パイプ53fが接続されている。この導入パイプ53fは処理液タンク41内に導入され、水道水送出路53cを通過した水道水が処理液タンク41に導入されるようにしてある。
【0069】
前記排出手段54は希釈タンク51内の液(水道水及び処理排液)を排出するための手段である。この実施形態の排出手段54は通常排出路54aと、強制排出路54bを備えている。通常排出路54aは、排出基準値以下の希釈タンク51内の処理排液を下水として排出するための通路であり、2ポートバルブ54cが接続されている。強制排出路54bは強制的に処理排液を排出する場合に使用するものであり、手動バルブ54dが接続されている。
【0070】
前記制御盤60は、オムツ処理装置を構成する各装置の操作及び制御をするための装置である。制御盤60によって、ポンプやモータなどの制御を行うほか、各種設定の変更などを行うことができる。
【0071】
前記ダストボックス70は、破砕物処理装置30から排出される脱水後の破砕物を収容するものである。図示は省略しているが、ダストボックス70には上下開口の有底容器等を用いることができる。上方の開口部は破砕物処理装置30から排出される破砕物を全て回収できる形状及び大きさとするのが好ましい。破砕物がはりつきにくいように、ダストボックス70の内面にはフッ素コート層などを設けることもできる。ダストボックス70の内面には、フッ素コート層以外の撥水層を設けることもできる。
【0072】
次に、本実施形態のオムツ処理装置の動作(使用済み紙オムツの処理方法)について説明する。
【0073】
オムツ投入口17から破砕タンク11内に使用済み紙オムツを投入して図示しないスタートボタンを押すと、駆動モータ14aによって回転軸14cが回転し、回転軸14cに固定された可動破砕具13と固定破砕具12によって使用済み紙オムツが破砕される。このとき、可動破砕具13は正転と逆転を繰り返し、使用済み紙オムツを引きちぎるように破砕する(破砕工程)。
【0074】
破砕装置10の破砕タンク11内では処理液ノズル42jから処理液が噴霧され、使用済み紙オムツに付着する。破砕する段階で処理液を噴霧する(使用済み紙オムツに付着させる)ことで、使用済み紙オムツに含まれる吸収性ポリマーの還元が促進されるとともに、吸収性ポリマーが再膨潤しにくくなるという効果がある。
【0075】
このとき噴霧される処理液の濃度(第一の濃度)は、排出基準値(第二の濃度)よりも高いもの、たとえば、1~5%程度、好ましくは1~3%程度、さらに好ましくは2%程度とすることができる。処理液の濃度は高すぎると希釈に大量の水が必要になり資源の浪費を引き起こし、濃度が低すぎると吸収性ポリマーの還元に時間がかかる。
【0076】
可動破砕具13が正逆方向に所定回数回転し、使用済み紙オムツの破砕が完了すると、破砕された破砕物及び処理排液がタンク本体11aからシュート16を通じて破砕物処理装置30の回転ドラム31内に排出される。このとき、破砕タンク11内に導入された水道水ノズル53bから水道水が噴射され、破砕タンク11の内部(破砕タンク11内の各部材を含む)が洗浄される。
【0077】
水道水ノズル53bから噴射される水道水は、洗浄水として利用されるほか、処理排液を希釈(一次希釈)するための水としても利用される。噴射される水道水の量はオムツの量や大きさ等によって変えることができるが、回転ドラム31内に排出されたときの処理排液の濃度(第三の濃度)が0.2~1.0%程度、好ましくは0.3~0.7%程度、より好ましくは0.4%程度となるような量を噴射するのが好ましい。いずれの場合も、処理排液を希釈できるように、処理液ノズル42jから噴霧される処理液の量よりも多く噴射する必要がある。
【0078】
破砕物及び処理排液が回転ドラム31内に排出されると、ドラム駆動手段33によって回転ドラム31が回転し、回転ドラム31内の破砕物及び処理液が撹拌されて破砕物中の吸収性ポリマーの還元が行われる(撹拌工程)。
【0079】
撹拌工程での回転ドラム31の回転数及び回転時間は、破砕物の量(使用済み紙オムツの量)や破砕物の大きさ等によっても異なるが、たとえば、150~450rpmで5分程度とすることができる。回転数や回転時間は一例であり、これ以外であってもよい。回転ドラム31が所定回数及び所定時間回転して還元処理が完了すると、排出管32bの電磁バルブ32cが開いてドラムカバー32内の処理排液が排出される。
【0080】
その後、排出管32bの電磁バルブ32cが開いた状態で回転ドラム31がさらに回転し、当該回転ドラム31内の破砕物が脱水される(脱水工程)。脱水時の回転ドラム31の回転速度は、100rpm、200rpm、300rpmのように段階的に上がるように設定しておくのが好ましい。脱水時に生じた処理排液は排出管32bを通って希釈タンク51の分離小室51bに排出される。
【0081】
前記撹拌工程や脱水工程の際に回転ドラム31からこぼれた破砕物や処理排液は受け体36で受けられ、受け体36の排出口(図示しない)から補助排出管36aに流出する。補助排出管36aに流出した破砕物や処理排液は、補助排出管36aの先端側に連結された排出管32bを通過して希釈タンク51の分離小室51bに排出される。
【0082】
排出管32bから分離小室51bに排出された破砕物や処理排液中に含まれる残渣は分離小室51bに装着されたソックスフィルタで回収され、処理排液のうち分離小室51bを構成する仕切板をオーバーフローした処理排液が希釈室51aに流入する(処理排液分離工程)。
【0083】
希釈タンク51の希釈室51aに流入した処理排液は、水道水が貯留された希釈室51a内で濃度が希釈(二次希釈)される(希釈工程)。希釈室51a内で水道水によって希釈された希釈液は、塩分濃度計などのセンサによって塩分濃度がモニタリングされ、塩分濃度が所定の排出基準値を下回ると、排出手段54を介して下水として排出される。
【0084】
一方、脱水工程の終了後、回転ドラム31の内周面に付着した破砕物は破砕物剥離手段34で剥離される(破砕物剥離工程)。具体的には、スクレーパ駆動手段34bによって、退避位置にあるスクレーパ34aが剥離位置に移動し、その状態で回転ドラム31が回転することで、回転ドラム31の内周面に付着した脱水後の破砕物がスクレーパ34aによって剥離される。このとき、スクレーパ駆動手段34bによって、スクレーパ34aが回転ドラム31の内周面に当接するように角度が調整される。
【0085】
スクレーパ34aで剥離された破砕物は、回転ドラム31内に位置するベルトコンベア35a上に落下し、当該ベルトコンベア35aによって先方に搬送される(破砕物搬出工程)。ベルトコンベア35aで搬送された破砕物は排出ガイド35cによってダストボックス70内に排出される。ダストボックス70に排出された破砕物は、適宜取り出して廃棄することができる。
【0086】
説明は省略しているが、前述の一連の工程が行われる間、脱臭装置20によって、使用済み紙オムツの処理に際して生じる臭いの原因物質が除去されるようにしてある。
【0087】
なお、この実施形態のオムツ処理装置では、使用済み紙オムツを一枚ずつ処理することも複数枚をまとめて処理することもできる。使用済み紙オムツの処理量や大きさによっても異なるが、使用済み紙オムツを投入してから破砕物をダストボックス70に排出するまでの全処理が5~10分程度で完了するようにしてある。
【0088】
(その他の実施形態)
前記実施形態は、吸収体が使い捨て紙オムツの場合を一例としているが、本発明の吸収体処理方法及び吸収体処理装置は、生理用品その他の吸収体の処理に用いることもできる。
【0089】
前記実施形態のオムツ処理装置の各構成は、すべてが必須の構成というわけではなく、不要な構成は適宜省略あるいは他の構成で代替することができる。また、前記実施形態のオムツ処理装置の各構成は、個別の装置として製造販売等することもできる。
【0090】
前記実施形態の構成は一例であり、本発明は、その要旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形、変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の吸収体処理方法及び吸収体処理装置は、介護施設や支援施設、保育園、幼稚園、こども園をはじめ、一般家庭、公共施設など、様々な施設のトイレ(個々のトイレブースを含む)に設置して使用することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 破砕装置
11 破砕タンク
11a タンク本体
11b タンクカバー
12 固定破砕具
12a 破砕具台座
13 可動破砕具
14 破砕具駆動手段
14a 駆動モータ
14b ギヤボックス
14c 回転軸
15a ピローブロック
15b ピローブロック
16 シュート
17 オムツ投入口
18 投入口扉
18a 持ち手具
19 スクリーン
20 脱臭装置
21 吸気ダクト
21a 第一吸気ダクト
21b 第二吸気ダクト
22 脱臭機本体
23 排気ダクト
30 破砕物処理装置
31 回転ドラム(撹拌槽)
32 ドラムカバー
32a 排出口
32b 排出管
32c 電磁バルブ(切替えバルブ)
33 ドラム駆動手段
33a ドラム用モータ
33b 第一プーリー
33c 第二プーリー
33d 伝達ベルト
33e 回転軸
34 破砕物剥離手段
34a スクレーパ
34b スクレーパ駆動手段
34c ロータリーアクチュエータ
34d 主動ギヤ
34e 従動ギヤ
34f スクレーパ軸
35 破砕物搬出コンベア
35a ベルトコンベア
35b コンベア駆動モータ
35c 排出ガイド
35d こぼれ止め材
35e 剥離スクレーパ
36 受け体
36a 補助排出管
36b 防振ゴム
40 処理液供給装置
41 処理液タンク
41a 処理液投入口
41b 開閉蓋
41c 空検知センサ
41d 満タン検知センサ
42 処理液通路
42a 第一処理液通路
42b 第二処理液通路
42c 第三処理液通路
42d 第四処理液通路
42e 2ポートバルブ
42f 帰還パイプ
42g 帰還パイプ
42h 流量センサ
42i 2ポートバルブ
42j 処理液ノズル
43 処理液用ポンプ
43a 第一吐出路
43b 第二吐出路
43c 第三吐出路
44 水道水通路
50 排液希釈装置
51 希釈タンク
51a 希釈室
51b 分離小室
51c 希釈室用蓋部材
51d 分離小室用蓋部材
51e 導入パイプ用開口
51f 排出管用開口
52 水道水導入通路
52a ジョイント
52b 流量センサ
52c 2ポートバルブ
52d 導入パイプ
53 水道水供給通路
53a 2ポートバルブ
53b 水道水ノズル
53c 水道水送出路
53d 流量センサ
53e 2ポートバルブ
53f 導入パイプ
54 排出手段
54a 通常排出路
54b 強制排出路
54c 2ポートバルブ
54d 手動バルブ
60 制御盤
70 ダストボックス
80 ラック
90 外壁材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10