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特許7391397新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーおよびその製造方法と使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーおよびその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 5/062 20060101AFI20231128BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20231128BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20231128BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231128BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C07K5/062
A61Q11/00
A61K8/44
A61K8/84
A61Q19/00
C11D3/37
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021517890
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 CN2019089819
(87)【国際公開番号】W WO2019233377
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】201810562174.5
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810562197.6
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810562200.4
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520479180
【氏名又は名称】▲蘇▼州欧▲麗▼特生物医▲薬▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼健
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/033255(WO,A1)
【文献】特開平05-051356(JP,A)
【文献】特開平07-188694(JP,A)
【文献】国際公開第1999/020237(WO,A1)
【文献】Colloids and Surfaces, A: Physicochemical and Engineering Aspects,2015年,Vol.471,pp.108-116, Supplementary data p.1-11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーであり、
前記ポリマーは、ポリマーまたはその塩の総重量中に、ラウリン酸を実質的に含有しない若しくはラウリン酸を含有せず、
前記ポリマーの融点は148~150℃である、アミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩
【請求項2】
前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続することで、式(I)で表される構造を形成することを特徴とする、請求項1に記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩。
【化1】
【請求項3】
前記ポリマーの重量平均分子量は5000~500万の範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩。
【請求項4】
前記塩はポリマーと塩基で形成されるものであり、前記塩基は無機塩基と有機塩基を含むことを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩。
【請求項5】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーのナトリウム塩であって、ラウリン酸を実質的に含有しない若しくは含有しないことを特徴とする、アミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩。
【請求項6】
前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムモノマー同士が水素結合を介して接続することで、式(II)で表される構造を形成することを特徴とする、請求項に記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩。
【化2】
ただし、nは8~20000である;n個のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムは、同じ平面で水素結合を介して順番に接続されている、或いはn個のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムは、水素結合を介して順番に接続され、且つそれらの両端部が水素結合を介して接続することで、柱状に形成されている。
【請求項7】
アミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩の重量平均分子量は5000~500万の範囲内にあることを特徴とする、請求項に記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩。
【請求項8】
下記の工程を含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩の製造方法
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよび触媒を混合して攪拌し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化超分子ポリマーを得る
前記溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、または上記溶媒と水からなる混合溶媒からなる群から選ばれるものである;
前記触媒は、硫酸、p-トルエンスルホン酸、乳化剤からなる群から選ばれる1種または2種以上である;
前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、溶媒、L-アラニル-L-アラニン、触媒のモル比は1:(5~10):(0.1~0.2):(0.001~0.1)である;
前記攪拌の条件は:温度25℃~100℃、圧力5kg~50kg、時間1~3時間である。
【請求項9】
前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品は、下記の工程によって製造されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
(1)L-アラニル-L-アラニンおよび金属無機塩基を蒸留水と有機溶媒の混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニル-L-アラニン塩溶液を得る;
(2)以上で得られるL-アラニル-L-アラニン塩溶液に塩化ラウロイルと金属無機塩基を順次に加えた後、攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得る;
(3)以上で得られるペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、冷却してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得る。
【請求項10】
工程(1)における前記L-アラニル-L-アラニンと金属無機塩基のモル比は1:(1~1.5)である;前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上である;前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランからなる群から選ばれる1種または2種以上である;前記蒸留水と有機溶媒の体積比は1:(1~1.5)であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項11】
工程(2)における前記塩化ラウロイルとL-アラニル-L-アラニンの仕込モル比は(0.8~1):1である;前記攪拌の条件は:温度5~50℃、時間1~3時間である;前記金属無機塩基の濃度は30~80%である;前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項12】
工程(2)では、工程(1)で得られるL-アラニル-L-アラニン塩溶液にN-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液と金属無機塩基を加え、攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得ることを特徴とする、請求項に記載の方法。
前記N-ラウロイル-L-アラニルクロリドの溶液は、下記の工程によって得られる:
N-ラウロイル-L-アラニンと塩素化試薬を混合して反応させ、冷却後、ペンタン-2-オンと活性炭を加え、脱色・ろ過、減圧蒸留を順次に行い、引き続き有機溶剤を加えてN-ラウロイル-L-アラニン中の酸塩化物を溶解させ、N-ラウロイル-L-アラニルクロリドの溶液を得る。
【請求項13】
前記N-ラウロイル-L-アラニンと塩素化試薬のモル比は(1~1.5):5である;前記塩素化試薬は、塩化チオニル、三塩化リン、トリホスゲン、N-クロロスクシンイミドの中の1種または2種以上であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~のいずれかに記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩の、界面活性剤としての使用。
【請求項15】
前記界面活性剤は、家庭用化学製品分野、農業、医薬品産業に適用されることを特徴とする、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1~のいずれかに記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩と、N-ラウロイル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーまたはその塩とを含む組成物であって、組成物の総重量で、N-ラウロイル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーまたはその塩の重量百分率含有量は0~60%の範囲内にあることを特徴とする、組成物。
【請求項17】
研磨剤と、保湿剤と、増粘剤と、界面活性剤とを含むアミノ酸練り歯磨きであって、
前記界面活性剤が、請求項1~のいずれかに記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩を含み前記練り歯磨きの総重量で、0.1~25%の界面活性剤、10~50%の研磨剤、5~40%の保湿剤、0.1~6%の増粘剤を含むアミノ酸練り歯磨き。
【請求項18】
ドデシル硫酸ナトリウムを含有しないことを特徴とする、請求項17に記載のアミノ酸練り歯磨き。
【請求項19】
その総重量で、下記のものを含むスキンケア組成物。
油類 50~95重量%;
界面活性剤 0.5~30重量%;及び
懸濁粒子 0~45重量%
前記界面活性剤は、請求項1~のいずれかに記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩を含む
【請求項20】
界面活性剤を含む、アミノ酸洗濯用洗剤であって、前記界面活性剤が、請求項1~のいずれかに記載のアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩を含み、前記アミノ酸洗濯用洗剤の総重量における、記界面活性剤の重量百分率は0.1~25%であることを特徴とする、アミノ酸洗濯用洗剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸系界面活性剤の製造の技術分野に属し、具体的には、新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーの製造方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、家庭用化学製品産業、農業、医薬品産業などの多くの分野で不可欠な構成要素です。現在市場で使用されている界面活性剤は数十種類もあるが、一般的に使用されているものは主に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SLS)、ラウレス硫酸ナトリウム(AES)、ラウリル硫酸ナトリウム(K12)である。これらの3つの主要な界面活性剤は、数十年間、ひいては数百年間もの間で使用されてきたため、使用の過程でそれらの悪影響が徐々に現れ、人間の安全および環境への影響がよく報告される。
【0003】
他の界面活性剤としては、糖類であるアルキルポリグリコシド(APG)や、ラウロイル-L-グルタミン酸、ラウロイルグリシン、ラウロイルサルコシンのようなアミノ酸系界面活性剤などがある。それらは生体物質系界面活性剤であり、安全性が高く、生分解性に優れ、肌触りに優れながら、注目を集めているが、このような界面活性剤は、洗浄力が低いため、主な界面活性剤として単独で使用されることは殆どなく、他の主な界面活性剤と組み合わせて使用する必要があることは多く、家庭用化学製品の主な界面活性剤による安全性と生分解性でのネガティブな問題を根本的に解決していなかった。
【0004】
N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、特定の含有量のラウリン酸の存在で形成することができるが、従来の方法特許によってはポリマーを得ることができず、且つポリマーの効果は方法特許の化合物の効果よりも優れているので、本発明はN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化超分子ポリマーを製造した。
【0005】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化超分子ポリマーは、N-ラウロイル-L-アラニンに対する詳細な研究に基づいて合成された新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーであり、N-ラウロイル-L-アラニンの基本的な特性を備える。しかし、1つの水素結合が追加されたため、構造全体がより安定化され、分断しにくくなる。そして、1つのL-アラニンが追加されたことで、鎖全体は長くなり、ステアリン酸の長さに似ており、N-ラウロイル-L-アラニンよりも油汚れとの結合能が強く、形成された環がより広いスペースを持ち、より多くの有機分子化合物および生体物質をカプセル化することができ、それによりカプセル化された物質のいくつかの物理的および化学的特性を変化させる。N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自体は生体物質から由来する材料であり、天然に安全性と生分解性を備えることから、用途がより広がり、人間の生活環境に大きな変化をもたらす。
【0006】
自己組織化超分子ポリマーN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンのナトリウム塩は、2つの水素結合を有するため、それにより形成された二次元平面構造は、より強い構造的接続性を有し、形成されたネットワーク構造は容易に破壊できない。しかも、単一分子に1つのL-アラニンが追加されたことにより、単一分子の鎖は長くなり、炭素数18のステアリン酸ナトリウムの長さに似ており、これでより強力な洗浄力およびカプセル化性を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生分解性に優れ、強力な洗浄力を有する界面活性剤を獲得するために、本発明は、N-ラウロイル-L-アラニンの研究に基づいて、新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーを合成した。該化合物は、既存の界面活性剤、ひいてはN-ラウロイル-L-アラニンと比較しても、より効果的な洗浄・静菌特性を示し、家庭用化学製品産業、農業および医薬品産業などの分野で好適に使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の技術方案によって、本発明の目的およびその課題の解決を図る。本発明によれば、下記の構造を有する新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーは提出される:
【0009】
【化21】
【0010】
新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーのモノマーは、下記の構造を有する:
【0011】
【化22】
【0012】
ただし、RはH、NaまたはKからなる群から選ばれる。
本発明はさらに、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンを基本単位として、水素結合により自己組織化して超分子ポリマーとなり、重量平均分子量の数値は5000~500万の範囲内にあることを特徴とする、新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーに関する。
【0013】
前記ポリマーは、ラウリン酸を実質的に含有しない;実質的に含有しないとは、ラウリン酸をHPLCによって検出できないことを意味する。
本発明はさらに、下記の構造を有する新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩に関する。
【0014】
【化23】
【0015】
ただし、nはN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムで形成される自己組織化ポリマーの分子の数を表す。
本発明はさらに、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムを基本単位として、水素結合により自己組織化して超分子ポリマーとなり、重量平均分子量の数値は5000~500万の範囲内にあることを特徴とする、新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩に開示する。
【0016】
さらに、以下の技術方案によって、本発明の目的およびその課題の解決を図る。本発明によれば、前記の化合物を製造する方法は下記のように提出される:
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよび触媒を加え、所定の条件下で攪拌してから、冷却してろ過し、得られる固形物を洗浄して乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化超分子ポリマーを得る。
【0017】
本発明にかかる前記方法において、前記溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、または上記溶媒と水からなる混合溶媒からなる群から選ばれるものである。
【0018】
本発明にかかる前記方法において、前記触媒は、硫酸、p-トルエンスルホン酸、乳化剤からなる群から選ばれる1種または複数種である。
本発明にかかる前記方法において、前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、溶媒、L-アラニル-L-アラニン、触媒のモル比は1:(5~10):(0.1~0.2):(0.001~0.1)である。
【0019】
本発明にかかる前記方法において、前記攪拌の条件は:温度25℃~100℃、圧力5kg~50kg、時間1~3hである。
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を製造するための前記方法は、下記の工程を含む:
(1)L-アラニル-L-アラニンおよび金属無機塩基を蒸留水と有機溶媒の混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニル-L-アラニン塩溶液を得る;
(2)以上で得られるL-アラニル-L-アラニン塩溶液に塩化ラウロイルと金属無機塩基を順次に加えた後、所定の条件下で攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得る;
(3)以上で得られるペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、冷却してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得る。
【0020】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(1)における前記L-アラニル-L-アラニンと金属無機塩基のモル比は1:(1~1.5)である。
本発明にかかる前記方法において、前記工程(1)における前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0021】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(1)における前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランからなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0022】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(1)における前記蒸留水と有機溶媒の体積比は1:(1~1.5)である。
本発明にかかる前記方法において、前記工程(2)における前記塩化ラウロイルとL-アラニル-L-アラニンの仕込モル比は(0.8~1):1である。
【0023】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(2)における前記攪拌の条件は:温度5~50℃、時間1~3hである。
本発明にかかる前記方法において、前記工程(2)における前記金属無機塩基の濃度は30~80%である。
【0024】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(2)における前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0025】
さらに、以下の技術方案によって、本発明の目的およびその課題の解決を図る。本発明によれば、下記の工程を含む前記の化合物を製造する方法は提出される:
(1)N-ラウロイル-L-アラニンと塩素化試薬を混合して反応させ、冷却後、ペンタン-2-オンと活性炭を加え、脱色・ろ過、減圧蒸留を順次に行い、引き続き有機溶剤を加えてN-ラウロイル-L-アラニン中の酸塩化物を溶解させ、N-ラウロイル-L-アラニルクロリドの溶液を得る;
(2)L-アラニンおよび金属無機塩基を蒸留水と有機溶媒の混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニン塩溶液を得る;
(3)以上で得られるL-アラニン塩溶液に、工程(1)で得られるN-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液と金属無機塩基を加えた後、所定の条件下で攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得る;
(4)以上で得られるペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、冷却してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得る;
(5)N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよび触媒を加え、所定の条件下で攪拌した後、冷却してろ過し、得られる固形物を洗浄して乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化超分子ポリマーを得る。
【0026】
本発明にかかる前記方法の工程(1)において、ペンタン-2-オンの添加量は80~100mLで、活性炭の添加量は1~3gで、有機溶媒の添加量は80~100mLである。
【0027】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(1)において、前記N-ラウロイル-L-アラニンと塩素化試薬のモル比は(1~1.5):5であり、前記塩素化試薬は、塩化チオニル、三塩化リン、トリホスゲン、N-クロロスクシンイミドの中の1種または複数種であっても良い。
【0028】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(2)における前記L-アラニンと金属無機塩基のモル比は1:(1~1.5)である。
本発明にかかる前記方法において、前記工程(2)における前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0029】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(2)における前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランからなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0030】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(2)における前記蒸留水と有機溶媒の体積比は1:(1~1.5)である。
本発明にかかる前記方法において、前記工程(3)における前記N-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液とL-アラニンの仕込モル比は(0.8~1):1である。
【0031】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(3)における前記攪拌の条件は:温度5~50℃、時間1~3hである。
本発明にかかる前記方法において、前記工程(3)における前記金属無機塩基の濃度は30~80%である。
【0032】
本発明にかかる前記方法において、前記工程(3)における前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または複数種である。
【0033】
さらに、以下の技術方案によって、本発明の目的およびその課題の解決を図る。本発明によれば、前記製造方法によって得られる化合物の、家庭用化学製品分野、農業、医薬品産業における界面活性剤としての使用は提出される。
【0034】
さらに、以下の技術方案によって、本発明の目的およびその課題の解決を図る。本発明によれば、前記化合物の、家庭用化学製品分野、農業、医薬品産業における界面活性剤としての使用は提出される。
【0035】
さらに、以下の技術方案によって、本発明の目的およびその課題の解決を図る。本発明によれば、前記製造方法によって得られるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成される超分子アミノ酸は提出される。
【0036】
従来技術に比べて、本発明の有益な技術効果は:
1、本発明にかかる新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、その製造方法のプロセス工程が簡単であり、天然ラウリン酸とL-アラニル-L-アラニンの縮合によって形成されるもので、通常の条件下で安定して存在し、人間に無毒で無害であり、人体や自然に入るとすぐにラウリン酸とL-アラニンに生分解され、生分解生成物もリサイクル可能な天然物であり、しかも反応条件が緩やかで工業生産に適している。
【0037】
2、本発明にかかる方法によって製造される自己組織化超分子N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンにおいて、ラウリン酸の重量百分率含有量は0.0001%~0.02%の範囲内にあり、ラウリン酸を実質的に含有せず、即ち、ラウリン酸の含有量はN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの構造および性能に影響を与えず、製品の品質に対するラウリン酸の影響を効果的に回避した。
【0038】
3、本発明にかかる方法によって得られる自己組織化超分子N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは、三次元ネットワーク構造を取り、油汚れなどの有機物を強力に吸着でき、使用中でpHを6~7とし、pHに対する人間の要求をより満たせ、その90%以上はナトリウム塩として存在し、残部は酸として存在し、二次元と三次元の形で共存し、強力な洗浄能力と、細菌、農薬、臭気などを吸着する特性とが付与される。
【0039】
4、本発明にかかる方法によって製造される自己組織化超分子N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは、構造と性能が安定し、且つ超分子の性質も持ち、その分子は溶液中で、水素結合、静電力、疎水力やπ-π相互作用などの各種のゲル化因子の存在によって、液体成分を静止させ、三次元ネットワーク空間構造を持つアミノ酸を形成し、それにより物理的滅菌、臭気除去、農薬残留物除去などの特性を備える:優れた静菌率を有し、大腸菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンスおよび緑膿菌に対する静菌率はいずれも100%に達する;農薬残留物を効果的に除去し、メタミドホスに対する除去率は90.6%、アセフェートに対する除去率は93.2%に達する;優れた脱臭性能も共に有する。
【0040】
5、本発明にかかる方法によって製造される新規なアミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、無数の柱状体の形で存在し、分子間に巨大な隙間があり、薬物分子、農薬残留物や微細な無機粒子などの有機物をカプセル化することができる。医薬品分野での使用において、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは、薬物分子をカプセル化し、酵素の作用下で薬物の活性成分をゆっくりと放出させ、徐放剤として機能することができる;農薬分野での使用において、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは、農薬をカプセル化し、農薬が植物の内部に浸透して侵入するのを防ぐことができる;化粧品分野での使用において、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは天然油と組み合わせると、人体自身から分泌される油に近くなるように油の物理的性質を変化させ、優れた触り心地を有する。N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは、化粧品の活性成分をカプセル化することにより、活性成分を酸化・失活しにくくすることもできるし、粒子を化粧品系に均一に分散・懸濁させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明にかかる化合物のモノマーの構造である。
図2a図2aは、本発明の実施例1における合成方法によってN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を製造する化学反応式である;
図2b図2bは、本発明の実施例4における合成方法によってN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を製造する化学反応式である;
図2c図2cは、本発明の実施例5における合成方法によってN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を製造する化学反応式である;
図2d図2dは、本発明の実施例7における合成方法によってN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を製造する化学反応式である。
図3図3は、本発明の実施例1における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化超分子ポリマーの核磁気共鳴スペクトルである;ただし、ppmは100万分の1の化学シフトの単位である。
図4a図4aは、本発明の実施例1における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマーで形成された超分子アミノ酸の構造形成図である;
図4b図4bは、本発明の実施例1における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマーで形成された超分子アミノ酸の構造形成図である。
図5a図5aは、本発明の実施例1における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの10000倍電子顕微鏡画像である;
図5b図5bは、本発明の実施例1における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの20000倍電子顕微鏡画像である;
図5c図5cは、本発明の実施例1における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの50000倍電子顕微鏡画像である。
図6図6は、本発明の実施例1における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンから超分子アミノ酸ナトリウム塩をさらに形成する形成過程図である。
図7図7は、本発明の実施例1における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化超分子ポリマーの質量分析スペクトルである;ただし、 Counts vs Mass-to-Chorge(m/z) Sample Name:ZZXF(P161014Y) サンプル名:ZZXF(P161014Y) Inj Vol:注入体積 Data filename:ZZXF(P161014Y)-02.d データファイル名:ZZXF(P161014Y)-02.d Position:位置 Injposition:注入位置 ACQ method:ACQ方法 Instrument Name:機器名 Sample Type:サンプルタイプ Comment:コメント User name:ユーザー名 IRM Calibration Status:IRM補正データ Acquired Time:精確な時間 Success:成功 PM:午後
【発明を実施するための形態】
【0042】
発明者は広範囲にわたって詳細に研究した結果、特定の方法により、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマーが水素結合を介して自己組織化して形成されるポリマーを、ラウリン酸を実質的に含有しない若しくは含有しないものにすることができると共に、油性物質を固形化させることのできる隙間含有弾性構造を形成することができることと、ポリマーが塩基と塩を形成すると、ポリマー塩もまた界面活性剤として機能することができることと、を見出した。それらに基づき、本発明を完成した。
【0043】
本文に用いられるように、「本発明で提供されるポリマーまたはその塩はラウリン酸を実質的に含有しない若しくは含有しない」とは、例えば高速液体クロマトグラフ(紫外線検出器を備える;クロマトグラフィーカラム:ODS-2 HYPERSIL C18 250*4.6mm 5μm;移動相真空吸引ろ過脱気装置および0.45μm有機フィルター膜)によってラウリン酸を検出できないこと、即ち、ラウリン酸の含有量はN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの性質および構造に影響を与えないことを意味する。或いは、質量分析において、得られる質量分析スペクトルではラウリン酸の特徴的な分子イオンピークを検出できないことを意味する。例えば、Agilent 1200/6220液体クロマトグラフィー/質量分析計によって取得された図7に示す質量分析スペクトルがあるが、それに限定されない。
【0044】
本発明にかかるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩は、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムおよび/またはN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンカリウムである。N-ラウロイル-L-アラニンが塩基性アミノ酸と形成される塩、例えばアルギニン、ヒスチジン、リジンなどと形成される塩であっても良い。
【0045】
ポリマーまたはその塩
本発明は、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーであって、ラウリン酸を実質的に含有しない若しくは含有しないアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩を提供する。
【0046】
前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマーまたはその塩は、下記の構造を有する化合物である:
【0047】
【化24】
【0048】
ただし、RはH、NaまたはKからなる群から選ばれる。
前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続することで、式(I)で表される構造を形成できる:
【0049】
【化25】
【0050】
本発明で提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーの重量平均分子量は5000~500万の範囲内にあり、その融点は148~150℃である。
本発明はさらに、前記アミノ酸自己組織化超分子ポリマーの塩を提供し、上記塩はポリマーと塩基で形成されるものであり、上記塩基は無機塩基と有機塩基を含む。
【0051】
一つの好ましい例において、前記無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化リチウムからなる群から選ばれる。
一つの好ましい例において、前記有機塩基は、天然塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン、またはヒスチジン)である。
【0052】
本発明の一つの実施形態では、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーのナトリウム塩であって、ラウリン酸を実質的に含有しない若しくは含有しないアミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩を提供する。
【0053】
前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムモノマー同士が水素結合を介して接続することで、式(II)で表される構造を形成できる:
【0054】
【化26】
【0055】
ただし、nは8~20000である;n個のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムは、同じ平面で水素結合を介して順番に接続されている、或いはn個のN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムは、水素結合を介して順番に接続され、且つそれらの両端部が水素結合を介して接続することで、柱状に形成されている。
【0056】
提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーのナトリウム塩の重量平均分子量は5000~500万の範囲内にある。
本発明はさらに、本発明で提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩と、ラウリン酸を実質的に含有しない若しくは含有しないN-ラウロイル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーまたはその塩とを含む組成物を提供し、ただし、組成物の総重量で、N-ラウロイル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続して形成されるポリマーまたはその塩の重量百分率含有量は0~60%の範囲内にある。
【0057】
前記N-ラウロイル-L-アラニンモノマー同士が水素結合を介して接続することで、式(I′)で表される構造を形成できる:
【0058】
【化27】

その重量平均分子量は2000~500万の範囲内にあり、その融点は82~84℃である;該ポリマーのナトリウム塩の最大溶解度は15w/v%であり、これは溶解度法(「中国薬局方」(2015年版)汎用例)によって決定されるものであり、つまり、25℃、1気圧で、100mlの水に溶解できるN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムの自己組織化ポリマーは最大で15グラムである。
【0059】
前記N-ラウロイル-L-アラニンナトリウムモノマー同士が水素結合を介して接続することで、式(II′)で表される構造を形成できる:
【0060】
【化28】
【0061】
ただし、nはN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムで形成される自己組織化超分子ポリマーの分子の数を表す。
n個のN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムは、同じ平面で水素結合を介して順番に接続されている、或いはn個のN-ラウロイル-L-アラニンナトリウムは、水素結合を介して順番に接続され、且つそれらの両端部が水素結合を介して接続することで、柱状に形成されている。
【0062】
式(II′)で表されるポリマーのナトリウム塩の重量平均分子量は2800~77万の範囲内にある;これから推測できるように、nは10~3000の範囲内にあり、得られるナトリウム塩の水への溶解度は15グラム/100mlを超えない。
【0063】
ポリマーまたはその塩の製造方法
本発明は、下記の工程を含むアミノ酸自己組織化超分子ポリマーの製造方法を提供する:
第1工程では、L-アラニル-L-アラニンおよび金属無機塩基を蒸留水と有機溶媒の混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニル-L-アラニン塩溶液を得る;
第2工程では、以上で得られるL-アラニル-L-アラニン塩溶液に塩化ラウロイルと金属無機塩基を順次に加え、反応系をpH=8~10にした後、所定の条件下で攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得る;
第3工程では、以上で得られるペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩をpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で1~3時間放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得る;
第4工程では、以上で得られるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよび触媒を加え、所定の条件下で攪拌し、本発明で提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーを得る。
【0064】
本発明の一つの実施形態において、前記第1工程における前記蒸留水と有機溶媒の体積比は1:(1~1.5)である。
本発明の一つの実施形態において、前記第1工程における前記L-アラニル-L-アラニンと金属無機塩基のモル比は1:(1~1.5)である。
【0065】
本発明の一つの実施形態において、前記第1工程における前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0066】
本発明の一つの実施形態において、前記第1工程における前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0067】
本発明の一つの実施形態において、前記第2工程における前記塩化ラウロイルとL-アラニル-L-アラニンの仕込モル比は(0.8~1):1である。
本発明の一つの実施形態において、前記第2工程における前記攪拌の条件は:温度5~50℃、時間1~3時間である。
【0068】
本発明の一つの実施形態において、前記第2工程における前記金属無機塩基の濃度は30~80%である;前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0069】
本発明の一つの実施形態において、前記第2工程では、5~50℃で、第1工程で得られるL-アラニル-L-アラニン塩溶液にN-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液と金属無機塩基を加え、反応系をpH=8~10にした後、所定の条件下で攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得る。
【0070】
本発明の一つの実施形態において、前記N-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液は、N-ラウロイル-L-アラニンと塩化チオニルを混合して1~3時間反応させた後、過剰な塩化チオニルを蒸留除去し、冷却後、ペンタン-2-オンと活性炭を加え、脱色・ろ過、減圧蒸留を順次に行い、残りの塩化チオニルを取り除き、引き続き無水アセトンを加えてN-ラウロイル-L-アラニン中の酸塩化物を溶解させ、N-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液を得る。前記N-ラウロイル-L-アラニンと塩化チオニルのモル比は(1~1.5):5である。
【0071】
本発明の一つの実施形態において、前記第2工程では、得られるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンメチルエステルと金属無機塩基を蒸留水と有機溶媒の混合溶液に溶解させ、4~8時間反応させ、反応終了後、過剰な有機溶媒を蒸留除去し、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得る。
【0072】
本発明の一つの実施形態において、前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンメチルエステルと金属無機塩基の仕込モル比は1:(1~1.5)である;前記金属無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0073】
本発明の一つの実施形態において、前記蒸留水と有機溶媒の体積比は1:(3~7)である;前記有機溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリルからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0074】
本発明の一つの実施形態において、前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンメチルエステルは、L-アラニンメチルエステル塩酸塩および水溶性有機塩基(トリエチルアミン、ピリジン、トリエタノールアミンから選ばれる1種または2種以上)およびN-ラウロイル-L-アラニルクロリドをアセトンに溶解させ、所定の条件下で反応させた(0~5℃で3~7時間反応させた)後、室温まで昇温して引き続き4~6時間反応させ、反応終了後、過剰なアセトンを蒸留除去することによって得られる;前記N-ラウロイル-L-アラニルクロリドは、N-ラウロイル-L-アラニンとトリホスゲンをクロロホルムに溶解させ、少量の触媒(ジメチルホルムアミド、ピリジン、1-メチルピロリドン、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジンから選ばれる1種または2種以上)を加えて反応させた(クロロホルムと触媒の体積比は(200~300):(1~10)で、30~50℃で4~8時間反応させた)後、過剰なクロロホルムを蒸留除去することによって得られる;前記N-ラウロイル-L-アラニンとトリホスゲンの仕込モル比は(1~1.5):0.3である;前記L-アラニンメチルエステル塩酸塩と水溶性有機塩基とN-ラウロイル-L-アラニルクロリドの仕込モル比は(0.8~1):(0.8~1):1である。
【0075】
本発明の一つの実施形態において、前記第3工程における前記塩酸の濃度は5~15%である。
本発明の一つの実施形態において、前記第4工程における前記溶媒は、アセトン、メタノール、エタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、または上記溶媒と水からなる混合溶媒からなる群から選ばれるものである。
【0076】
本発明の一つの実施形態において、前記第4工程における前記触媒は、硫酸、p-トルエンスルホン酸、乳化剤からなる群から選ばれる1種または2種以上である。
本発明の一つの実施形態において、前記第4工程における前記N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、溶媒、L-アラニル-L-アラニン、触媒の混合モル比は1:(5~10):(0.1~0.2):(0.001~0.1)である。
【0077】
本発明の一つの実施形態において、前記第4工程における前記攪拌の条件は:温度25℃~100℃、圧力5kg~50kg、時間1~3時間である。
本発明の一つの実施形態において、前記第4工程では、攪拌してから、冷却してろ過し、得られる固形物を洗浄して乾燥し、ラウリン酸を実質的に含有しないN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得る。
【0078】
ポリマーまたはその塩の使用
本発明で提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーは、油性物質の固形化に適用でき、その塩は界面活性剤として適用できる。
【0079】
本発明で提供されるアミノ酸自己組織化超分子ポリマーまたはその塩は、家庭用化学製品分野、農業または医薬品産業において広範に使用することができ、例えば練り歯磨き、スキンケア組成物、洗濯用洗剤、石鹸、粉石鹸、食器用洗剤、顔面マスクなどの製造に使用できるが、それらに限定されない。
【0080】
以下、図面および実施例に基づいて本発明をさらに説明するが、これらの実施例は、本発明を説明するためのものだけであり、本発明の範囲を限定するためものではないことが理解されるべきである。また、本発明の開示内容を読み終わった後、当業者は本発明に各種の変動や修正をすることができるが、それらの均等の様態も同様に本願の特許請求の範囲に含まれることが理解されるべきである。
【実施例
【0081】
実施例1 N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの合成
実例1
常温で、2Lの三つ口フラスコにおいて、16.0g(0.1mol)のL-アラニル-L-アラニンと4.0g(0.1mol)の水酸化ナトリウムを450mLの蒸留水と450mLのアセトンの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニル-L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0082】
25℃の条件下で、L-アラニル-L-アラニン塩溶液に21.9g(0.1mol)の塩化ラウロイルをゆっくりと滴下し、次に50%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=9にし、滴下完了後、25℃で2h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得た。
【0083】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で2h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得た。
【0084】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:7.5:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度60℃、圧力27kgの条件下で2h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に100℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0085】
得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が30.5gで、収率が89.3%で、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が148~150℃であった。図3は得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの核磁気共鳴スペクトルである。図7は得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの質量分析スペクトルである。
【0086】
試験により分かるように、上記の反応系を常圧条件下で攪拌すると、反応系にまだ少量のラウリン酸が検出され、最終の製品としてN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンポリマーが得られない。
【0087】
実例2
常温で、2Lの三つ口フラスコにおいて、16.0g(0.1mol)のL-アラニル-L-アラニンと6.0g(0.15mol)の水酸化カリウムを450mLの蒸留水と450mLのアセトニトリルの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニル-L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0088】
25℃の条件下で、L-アラニル-L-アラニン塩溶液に17.52g(0.08mol)の塩化ラウロイルをゆっくりと滴下し、次に30%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=9にし、滴下完了後、50℃で0.5h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得た。
【0089】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で3h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得た。
【0090】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:10:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度25℃、圧力50kgの条件下で3h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に70℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0091】
得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が32.35gで、収率が94.72%で、融点が148~150℃であった。
【0092】
実例3
常温で、2Lの三つ口フラスコにおいて、16.0g(0.1mol)のL-アラニル-L-アラニンと4.0g(0.1mol)の水酸化カリウムを450mLの蒸留水と600mLのアセトニトリルの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニル-L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0093】
25℃の条件下で、L-アラニル-L-アラニン塩溶液に21.9g(0.1mol)の塩化ラウロイルをゆっくりと滴下し、次に80%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=9にし、滴下完了後、5℃で3.5h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得た。
【0094】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で1h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得た。
【0095】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に水とエタノールの混合溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、水とエタノールの混合溶媒、L-アラニル-L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:5:0.2:0.001のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度100℃、圧力5kgの条件下で1h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に130℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0096】
得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が29.15gで、収率が85.35%で、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が148~150℃であった。
【0097】
実例4
常温で、500mLの三つ口フラスコにおいて、27.1g(0.1mol)のN-ラウロイル-L-アラニンと69.48g(0.5mol)の塩化チオニルを混合し、2h反応させた。反応終了後、過剰な塩化チオニルを蒸留除去し、冷却後、100mLペンタン-2-オンと2gの活性化炭素を加え、脱色・ろ過、減圧蒸留を順次に行い、残りの塩化チオニルを取り除いた。引き続き100mLの無水アセトンを加えてN-ラウロイル-L-アラニン中の酸塩化物を溶解させ、N-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液を得た。
【0098】
常温で、2Lの三つ口フラスコにおいて、8.9g(0.1mol)のL-アラニンと4.0g(0.1mol)の水酸化ナトリウムを450mLの蒸留水と450mLのアセトンの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニンナトリウム溶液を得た。
25℃の条件下で、L-アラニン塩溶液に上記で得られたN-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液を0.1molゆっくりと滴下し、次に50%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=9にし、滴下完了後、25℃で2h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得た。
【0099】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で2h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得た。
【0100】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:10:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度25℃、圧力50kgの条件下で3h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に70℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0101】
得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が31.1gで、収率が90.7%で、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が148~150℃であった。
【0102】
実例5
常温で、250mLの三つ口フラスコにおいて、窒素保護下で、27.1g(0.1mol)のN-ラウロイル-L-アラニンと4.53g(0.033mol)の三塩化リンを90度に加熱し、2~3h反応させた。反応終了後、亜リン酸を取り除き、室温まで冷却した。引き続き100mLの無水アセトンを加えてN-ラウロイル-L-アラニン中の酸塩化物を溶解させ、N-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液を得た。
【0103】
常温で、2Lの三つ口フラスコにおいて、8.9g(0.1mol)のL-アラニンと4.0g(0.1mol)の水酸化ナトリウムを450mLの蒸留水と450mLのアセトンの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0104】
25℃の条件下で、L-アラニン塩溶液に上記で得られたN-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液を0.1molゆっくりと滴下し、次に50%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=9にし、滴下完了後、25℃で2h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得た。
【0105】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で2h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得た。
【0106】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:10:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度25℃、圧力50kgの条件下で3h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に70℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0107】
得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が31.6gで、収率が92.3%で、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が148~150℃であった。
【0108】
実例6
常温で、1Lの三つ口フラスコにおいて、40.65g(0.15mol)のN-ラウロイル-L-アラニンと69.48g(0.5mol)の塩化チオニルを混合し、3h反応させた。反応終了後、過剰な塩化チオニルを蒸留除去し、冷却後、120mLペンタン-2-オンと1gの活性化炭素を加え、脱色・ろ過、減圧蒸留を順次に行い、残りの塩化チオニルを取り除いた。引き続き80mLの無水アセトンを加えてN-ラウロイル-L-アラニン中の酸塩化物を溶解させ、N-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液を得た。
【0109】
常温で、2Lの三つ口フラスコにおいて、8.9g(0.1mol)のL-アラニンと4.0g(0.1mol)の水酸化カリウムを450mLの蒸留水と600mLのアセトニトリルの混合溶液に溶解させ、均一に攪拌し、L-アラニンナトリウム溶液を得た。
【0110】
25℃の条件下で、L-アラニン塩溶液に上記で得られたN-ラウロイル-L-アラニルクロリドのアセトン溶液を0.1molゆっくりと滴下し、次に80%水酸化ナトリウム溶液を滴下して反応系をpH=9にし、滴下完了後、5℃で3.5h攪拌し続け、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得た。
【0111】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩に塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で1h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得た。
【0112】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:10:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度25℃、圧力50kgの条件下で3h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に70℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0113】
得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が29.95gで、収率が87.72%で、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が148~150℃であった。
【0114】
実例7
1Lの三つ口フラスコにおいて、27.1g(0.1mol)のN-ラウロイル-L-アラニンと9.9g(0.033mol)のトリホスゲン(CCl)を200mLのクロロホルムと5mLのDMF(ジメチルホルムアミド)の混合溶液に溶解させ、反応系を40℃で6h磁気撹拌し、反応後に残りのクロロホルムを蒸留除去し、N-ラウロイル-L-アラニルクロリドを得た。
【0115】
1Lの三つ口フラスコにおいて、13.95g(0.1mol)のL-アラニンメチルエステル塩酸塩、10.1g(0.1mol)のトリエチルアミン、および23.55g(0.1mol)のN-ラウロイル-L-アラニルクロリドを500mLのアセトンに溶解させ、反応系を0℃で2h磁気攪拌した後、室温まで昇温して引き続き反応系を5h磁気攪拌し、反応終了後、残りのアセトンを蒸留除去し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンメチルエステルを得た。
【0116】
1Lの三つ口フラスコにおいて、35.6g(0.1mol)のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンメチルエステルと7.2g(0.3mol)の水酸化リチウムを500mLのメタノールと100mLの水の混合溶液に溶解させ、反応系を6h磁気攪拌し、反応終了後、メタノールを蒸留除去し、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得た。
【0117】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩に10%塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で2h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得た。
【0118】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:10:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度25℃、圧力50kgの条件下で3h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に70℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0119】
得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が31.9gで、収率が93.4%で、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が148~150℃であった。
【0120】
実例8
1Lの三つ口フラスコにおいて、40.65g(0.15mol)のN-ラウロイル-L-アラニンと9.9g(0.033mol)のトリホスゲン(CCl)を400mLのクロロホルムと1mLのピリジンの混合溶液に溶解させ、反応系を50℃で4h磁気撹拌し、反応後に残りのクロロホルムを蒸留除去し、N-ラウロイル-L-アラニルクロリドを得た。
【0121】
1Lの三つ口フラスコにおいて、11.16g(0.08mol)のL-アラニンメチルエステル塩酸塩、7.91g(0.1mol)のピリジン、および23.55g(0.1mol)のN-ラウロイル-L-アラニルクロリドを700mLのアセトンに溶解させ、反応系を5℃で3h磁気攪拌した後、室温まで昇温して引き続き反応系を4h磁気攪拌し、反応終了後、残りのアセトンを蒸留除去し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンメチルエステルを得た。
【0122】
1Lの三つ口フラスコにおいて、35.6g(0.1mol)のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンメチルエステルと5.6g(0.1mol)の水酸化カリウムを300mLのエタノールと100mLの水の混合溶液に溶解させ、反応系を4h磁気攪拌し、反応終了後、メタノールを蒸留除去し、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得た。
【0123】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩に15%塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で1h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得た。
【0124】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:10:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度25℃、圧力50kgの条件下で3h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に70℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0125】
得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が32.4gで、収率が94.9%で、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が148~150℃であった。
【0126】
実例9
1Lの三つ口フラスコにおいて、27.1g(0.15mol)のN-ラウロイル-L-アラニンと9.9g(0.033mol)のトリホスゲン(CCl)を700mLのクロロホルムと10mLの1-メチルピペリジンの混合溶液に溶解させ、反応系を30℃で8h磁気撹拌し、反応後に残りのクロロホルムを蒸留除去し、N-ラウロイル-L-アラニルクロリドを得た。
【0127】
1Lの三つ口フラスコにおいて、11.16g(0.08mol)のL-アラニンメチルエステル塩酸塩、8.1g(0.08mol)のトリエチルアミン、および23.55g(0.1mol)のN-ラウロイル-L-アラニルクロリドを300mLのアセトンに溶解させ、反応系を3℃で7h磁気攪拌した後、室温まで昇温して引き続き反応系を6h磁気攪拌し、反応終了後、残りのアセトンを蒸留除去し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンメチルエステルを得た。
【0128】
1Lの三つ口フラスコにおいて、35.6g(0.1mol)のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンメチルエステルと20g(0.5mol)の水酸化ナトリウムを700mLのエタノールと100mLの水の混合溶液に溶解させ、反応系を8h磁気攪拌し、反応終了後、メタノールを蒸留除去し、ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩を得た。
【0129】
ペースト状のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン塩に5%塩酸を加えてpH=3~4になるように酸型化させ、白色固形物を徐々に析出させ、その後、氷浴で3h放置してからろ過し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品を得た。
【0130】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品に水とアセトンの混合溶媒、L-アラニル-L-アラニンおよびp-トルエンスルホン酸を加え、ただし、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン粗製品、水とアセトンの混合溶媒、L-アラニン、p-トルエンスルホン酸を1:10:0.2:0.002のモル比で添加し、且つ少量のラウリン酸が完全に消耗されるように温度25℃、圧力50kgの条件下で3h攪拌した後、冷却してろ過し、得られた固形物をさらに純水で2回洗浄し、最後に70℃で乾燥し、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを得た。
【0131】
得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、質量が30.9gで、収率が90.5%で、ラウリン酸の含有量が検出不能で、融点が148~150℃であった。
【0132】
実施例2 N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの構造的特徴
図4aは、本発明の実施例1における合成方法で得られたアミノ酸自己組織化超分子ポリマーで、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマーで形成された超分子アミノ酸の構造形成図である;図4bは、本発明の実施例1における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマーで形成された超分子アミノ酸の構造形成図である。上記の核磁気共鳴スペクトルと質量分析スペクトルから分かるように、本プロセスで生産されたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは実質的に不純物としてのラウリン酸を含有せず、プロセスで合成されたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは、3つの水素結合を形成でき、両末端にそれぞれ炭素数11の炭素鎖のアルカン構造を有し、油と油の適合性の原理に従って、親油性末端と親油性末端が互いに鎖状に適合し、両端部が接続することで、環を形成する。環同士もまた、水素結合および油と油の適合性により、無限に重なり合って柱状の分子クラスターを形成する。柱状の分子クラスターもまた、無限に重なり合って特殊な空間構造を形成し、超分子アミノ酸と呼ばれる。
【0133】
柱状の分子クラスターもまた、無限に重なり合って特殊な空間構造を形成するが、2つまたはそれ以上の立体配置が存在するため、重なり合うと所定の角度で偏差が生じ、重なり合う時に分岐鎖が形成される。図5a、5bおよび5cはそれぞれ、本発明の実施例1における合成方法で得られたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの10000倍、20000倍および50000倍電子顕微鏡画像を示す。図5a、5bおよび5cに示されるように、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンモノマーで形成された超分子アミノ酸の形成原理および構造はより一層証明された。
【0134】
上記超分子アミノ酸は形成されると、さらに水酸化ナトリウムと反応し、図6に示される超分子アミノ酸のナトリウム塩の構造を生成する。図6に示すように、そのナトリウム塩の構造は、一方の端部が親水性で、他方の端部が親油性であり、分子同士が水素結合を介して接続し、特殊な秩序的に配置される二次元ネットワーク構造を形成し、炭素鎖の長さがステアリン酸に似ているため、油汚れとの強い結合能を有し、主な界面活性剤として使用することができる。
【0135】
ラウリン酸の存在は、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン同士の水素結合を介する無限な接続の形成を阻害し、実験により判明されたように、ラウリン酸を含有するN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンでは、上記のような電子顕微鏡画像を取得できない。従って、本プロセスは、不純物であるラウリン酸が残留する問題を解決したことにより、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン同士は水素結合を形成して無限に接続しやすくなり、特殊な性能を備える。本プロセスは、不純物であるラウリン酸の残留で、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの構造が破壊され、ひいてはN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの性能が影響・破壊されるという問題を効果的に解決したことにより、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン同士は水素結合を形成して無限に接続しやすくなり、特殊な性能を備える。
【0136】
更なる実験において、本発明は、N-デカノイル-L-アラニル-L-アラニンを使用して、同じ条件下で構造研究を行ったが、上記のような三次元ネットワーク構造を見出さなかった;それは、N-デカノイル-L-アラニル-L-アラニンは炭素鎖の長さが短く、2つの分子の親油性末端で環を形成できないからであると推測される;同様に、それにより、親油性基の炭素鎖が12~18である場合、L-アラニル-L-アラニンと形成される脂肪族アシル-L-アラニル-L-アラニンは、脂肪酸を除いた条件下でも、分子間の水素結合および油と油の適合性によって、上記のような空間構造を形成できると推測される。このような構造は、一旦形成されると安定となり、実験により証明されたように、10%未満の少量の脂肪酸を追加しても、既存の構造の安定性および性能・使用が損なわれない。
【0137】
実施例3 N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの使用
実例1 N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの細菌に対する静菌作用の評価
実施例1の方法で合成されたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを10g取り、水に入れ、10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=6~7になるように中和し、100mLの水溶液を調製した。原液を5mL取り、この溶液で黄色ブドウ球菌、大腸菌、緑膿菌、カンジダ・アルビカンス、緑膿菌などの一般的な細菌が事前に接種されたフルーツプレートをそれぞれ浸漬し、所定の時間で作用され、浄水で1回すすぎ、フルーツプレート上の細菌の残留を確認した。検出結果は表1に示す:
【0138】
【表1】
【0139】
上記のデータから明らかなように、本発明の方法に従って合成されたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマー溶液は、大腸菌、黄色ブドウ球菌およびカンジダ・アルビカンスに対して顕著な静菌作用を有し、原液であるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン溶液は大腸菌に2分間作用した後、静菌率が100%に達した;また、原液は黄色ブドウ球菌に2分間作用した後、静菌率が100%に達した;カンジダ・アルビカンスに3分間作用した後の静菌率も同様に100%に達した;原液は緑膿菌に2分間作用した後、静菌率も同様に100%に達した。
【0140】
比較実例1 N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの細菌に対する静菌作用の評価
同様な条件下で、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの静菌効果を検出し、下表2に示す:
ただし、実例1と比較実例1の相違点は、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの代わりにN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを使用したことのみであり、他の条件はいずれも実例1と一致した。
【0141】
【表2】
【0142】
表1と表2の比較から明らかなように、本発明にかかるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの静菌効果は、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーに比べて顕著な優位性を有する。上記のデータによって判明されたように、本発明にかかるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーは、静菌において予想外の静菌効果を有する。
【0143】
本分野の公知常識によれば、細菌のサイズは通常0.5~5μmであるが、本発明に用いられる、ラウリン酸を実質的に含有しないN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーによって形成される超分子構造の柱状クラスター同士の隙間もミクロンオーダーであるため、細菌を包み込んで取り除くことができることから、ナノオーダーの泡状細孔を生成できると考えられる。
【0144】
実例2 N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの農薬に対する除去効果の評価
事前に農薬のメタミドホスとアセフェートが噴霧された100gの緑色野菜(チンゲンサイ)を2個取り、その1個をそのまま1Lの浄水に浸漬してから、取り出して野菜の葉における農薬残留物を検出し、それを洗浄前とした。他の1個を実施例3の方法に従って合成されたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーから調製した溶液で洗浄し、それを洗浄後とした。手順は以下の通りであった:
実施例1の方法で合成されたN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを10g取り、水に入れ、10%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH=6~7になるように中和し、100mLの水溶液を調製した。原液を5mL取り、他の1個の事前に農薬のメタミドホスとアセフェートが噴霧された100gの緑色野菜(チンゲンサイ)を細かく切り、上記の溶液に2分間浸漬し、取り出して500mLの浄水ですすいでから、取り出して野菜の葉における農薬残留物を検出した。洗浄前後の農薬残留物のデータの比較は表3に示す:
【0145】
【表3】
【0146】
上記のデータから明らかなように、本発明に用いられる界面活性物質であるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの溶液は、メタミドホスとアセフェートに対して顕著な除去作用を有し、2分間作用した後、メタミドホスに対する除去率は90.6%に達し、アセフェートに対する除去率は93.2%に達し、効果は顕著であった。
【0147】
比較実例2 N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの農薬に対する除去効果の評価
同様な条件下で、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーの静菌効果を検出し、下表4に示す:
ただし、比較実例2と実例2の相違点は、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの代わりにN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーを使用して農薬に対する除去効果を評価したことのみであり、他の条件はいずれも実例2と一致した。
【0148】
【表4】
【0149】
表3と表4の比較から明らかなように、本発明にかかるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの農薬に対する除去効果は、N-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーに比べて顕著な優位性を有する。
【0150】
以上により分かるように、本発明にかかる自己組織化超分子ポリマーであるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンの製造方法は、プロセス工程が簡単で、反応条件が緩やかで、工業生産に適している。本発明にかかる方法によって製造される自己組織化超分子ポリマーであるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは、純度が高く、ラウリン酸の含有量がHPLCによって検出不能で、製品の品質に対するラウリン酸の影響を効果的に回避した。得られるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンは、構造・性能が安定である;優れた静菌率を有し、大腸菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンスおよび緑膿菌に対する静菌率はいずれも100%に達する;農薬残留物を効果的に除去し、メタミドホスに対する除去率は90.6%、アセフェートに対する除去率は93.2%に達する;優れた脱臭性能も共に有し、家庭用化学製品分野、農業、医薬品産業のいずれにも好適に使用できる。
【0151】
実施例4~8
実施例において、アミノ酸練り歯磨きのペーストの総重量部はいずれも100とした。練り歯磨きにおける各物質の組成および具体的な含有量は表5に示す:
【0152】
【表5】
【0153】
実施例9~13
実施例において、アミノ酸練り歯磨きのペーストの総重量部はいずれも100とした。練り歯磨きにおける各物質の組成および具体的な含有量は表6に示す:
【0154】
【表6】
【0155】
実施例4の処方に従って練り歯磨きを調製し、具体的には、10gの水、37.5gのソルビトール、0.2gのサッカリンナトリウム、2gのポリエチレングリコール-400g、5gのグリセリン、0.4gの安息香酸ナトリウムを水溶液に調製し、練り歯磨き製造機に入れるという工程を含んだ。次に、4gのカルボキシメチルセルロース、35gの水和シリカ、0.2gのトチャカエキス、0.1gのカンゾウエキス、および0.1gのスベリヒユエキスを混合した上で練り歯磨き製造機に入れ、ペーストが均一になるまで20~30分間攪拌・研磨した後、真空脱泡した;4.4gのN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニンナトリウムポリマー、1gの食品香料(ミントフレーバー)、0.1gのCI42090を順次に練り歯磨き製造機に入れ、ペーストが均一になるまで10~15分間攪拌・研磨した後、脱泡してアミノ酸練り歯磨きを得た。
【0156】
実施例5~13はいずれも実施例4に記載の方法によって調製されたため、実施例ではそれらの詳細が繰り返されない。
実施例4~13に記載の配合量に従って調製したアミノ酸練り歯磨きにより、アミノ酸界面活性剤を異なる重量部で取り、処方試験を複数回繰り返し、頻繁な歯痛および歯茎出血を有する100人のボランティアに効果の評価を委託したが、使用頻度は1日の朝と夕方にそれぞれ1回ずつで、使用量は1回あたりに約1gのペーストで、歯を磨く時間は1回につき約5分間であった。得られた結果から明らかなように、アミノ酸界面活性成分を含む練り歯磨きは、鎮痛、抗炎症および歯茎出血防止において顕著な効果があり、しかも使用時の味と臭気除去の2つの方面から評価すると、該練り歯磨きのペーストに占めるアミノ酸界面活性成分の重量比は、好ましくは0.1~25%であり、より好ましくは0.5~10%であり、最も好ましくは1~5%である。該薬用練り歯磨きのペーストに占めるアミノ酸界面活性成分の重量比が1~5%になる場合、練り歯磨きの効能と味のバランスが一番良く、しかも口臭の除去も最高レベルに達したと共に、歯を磨いた直後に果物を食べても果物の味に影響を与えず、苦くて乾いた感じがしなかった。
【0157】
実施例14 N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーのスキンケアにおける使用
【0158】
【表7】
【0159】
表7に示す処方1の調製工程は具体的に、57%の天然油混合物と40%のコーンスターチをミキサーに入れ、均質化して粒子を最初に分散させた。その後、油分散体における粒子を83~86℃に加熱しながら混合した。加熱しながら、3%のN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーをミキサーに入れた。サンプルを加熱し、且つ73~86℃で5~10分間保持した。その後、それを65~72℃の範囲内の温度まで冷却しながら、混合可能に保持した。その後、サンプルを体積30mlのタンクに流し、スキンケア組成物を得て、保管して評価に適用した。ただし、処方2~6にかかるスキンケア組成物の製造方法としては、いずれも処方1と同様な方法が採用されたので、ここではそれらの詳細が繰り返されない。
【0160】
上記の実施例で得られたスキンケア組成物において、原料には異なる種類の粒子が異なる含有量で添加された。結果から分かるように、粒子の添加によって油の粘度を上げることに加えて、N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーを使用することによっても、固形有機/無機粒子や、油と混合可能な液体(例えばグリセリン)などを濃厚な天然油に安定して懸濁させ、皮膚に追加のメリットをもたらすことができる。
【0161】
4種類の油不溶性粒子、例えばデンプン、TiO2、マイカ、窒化ホウ素粒子(Koboから由来のCaress BN02)、並びに1種類の油と混合可能な液体、例えばグリセリンを適用した。処方1~6に用いられた天然油混合物の組成はいずれも同じであり、即ち、40%のブドウ種子油と、37.2%のヒマワリ種子油および22.8%のアロエ油を含む。結果によって示されるように、表3に示す処方で得られた組成物はいずれも、室温でも48℃オーブンの中でも安定しており、粒子分離の問題が全く起こっていなかった。 処方7は比較試験として、処方1におけるN-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーの代わりにラウロイルアラニン(ラウリン酸を2%以上含有)を適用したが、その結果、得られた組成物は48℃オーブンの中で48時間後に不安定となり、油っぽくなることが分かった。
【0162】
実施例15 超分子アミノ酸の洗濯用洗剤における使用の実例
【0163】
【表8】
【0164】
蘇州市商品品質監督検査機関によって検査すると、表8の処方1に従って配合された洗濯用洗剤は、洗浄力が標準洗濯用洗剤の洗浄力を上回り、又はそれと同じ、得られたサンプルは、JB01、JB02、JB03汚れ布に対する洗浄力が、JB01、JB02、JB03汚れ布に対する標準洗濯用洗剤の洗浄力を上回った。一方、蘇州市商品品質監督検査機関によって検査すると、処方2に従って配合された洗濯用洗剤は、洗浄力が標準洗濯用洗剤の洗浄力を下回った。
【0165】
実施例16 超分子アミノ酸とN-ラウロイル-L-アラニンで形成された自己組織化ポリマーからなる界面活性剤の洗顔料における使用の実例
【0166】
【表9】
【0167】
N-ラウロイル-L-アラニル-L-アラニン自己組織化ポリマーとN-ラウロイル-L-アラニン自己組織化ポリマーが塩基性水性系で形成された塩は、清潔用の界面活性剤として適用することができ、該界面活性剤は緩やかで、刺激性が無く、オイルコントロール性が強く、敏感な肌により一層適切である。
【0168】
また、当業者が理解できるように、ここに記載のいくつかの実施例が他の特徴ではなく、他の実施例に含まれるいくつかの特徴を含むが、異なる実施例の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内に入っていると共に、異なる実施例を形成することを意味する。例えば下記の特許請求の範囲において、保護が請求された実施例のいずれか1つも、任意の組み合わせで適用することができる。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6
図7