(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】生体用吸引装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/00 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A61M1/00 137
A61M1/00 131
(21)【出願番号】P 2023131703
(22)【出願日】2023-08-11
【審査請求日】2023-08-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304052754
【氏名又は名称】ブルークロス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100210804
【氏名又は名称】榎 一
(74)【代理人】
【識別番号】100198498
【氏名又は名称】高橋 靖
(72)【発明者】
【氏名】柏又 謙司
(72)【発明者】
【氏名】宮村 幸春
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-010299(JP,A)
【文献】特表2010-522061(JP,A)
【文献】特許第4889491(JP,B2)
【文献】特表2019-509880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引対象の生体内に挿置される吸引チューブに連通して負圧力を作用させる吸引タンクと、
前記吸引タンクに吸引圧をかけるエア吸引部と、
前記エア吸引部を電力制御する制御部と
、
前記吸引タンクにかかる前記吸引圧を検出する圧力検出部
とを備え、
前記制御部は、
前記圧力検出部が検出する前記吸引圧の時系列データについて、前記吸引チューブに粘稠性の吸引物が詰まった際に生じる脈動パターンか否かを判定する脈動判定部と、
前記脈動パターンの判定に応じて、前記吸引圧を上げて、前記吸引チューブの粘稠性の詰まり解消を図る粘稠対策部とを含む
ことを特徴とする生体用吸引装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生体用吸引装置であって、
前記エア吸引部は、
前記吸引タンクから空気を吸引するエアポンプと、
前記吸引タンクに外気を流入させる外気調整バルブとを含み、
前記制御部は、
前記エアポンプの吸引電力を電力制御して、前記吸引タンクから空気を引くポンプ制御部と、
前記外気調整バルブを一時的に開く電力制御によって、前記吸引タンクにかかる前記吸引圧を下方調整する外気調整部とを含み
前記粘稠対策部は、前記脈動パターンの前記吸引圧の山に同期して前記吸引圧を引き上げ、前記脈動パターンの前記吸引圧の谷に同期して前記吸引圧を引き下げる制御(以下「共振制御」という)を行う
ことを特徴とする生体用吸引装置。
【請求項3】
吸引対象の生体内に挿置される吸引チューブに連通して負圧力を作用させる吸引タンクと、
前記吸引タンクに吸引圧をかけるエア吸引部と、
前記エア吸引部を電力制御する制御部とを備え、
前記エア吸引部は、
前記吸引タンクから空気を吸引するエアポンプと、
前記吸引タンクに外気を流入させる外気調整バルブとを含み、
前記制御部は、
前記エアポンプの吸引電力を電力制御して、前記吸引タンクから空気を引くポンプ制御部と、
前記外気調整バルブを一時的に開く電力制御によって、前記吸引タンクにかかる前記吸引圧を下方調整する外気調整部とを含み、
前記吸引電力を検出する電力監視部を備え、
前記制御部は、
前記制御部によって前記吸引圧が目標値付近に定値制御されている状態で、前記電力監視部が監視する前記吸引電力の時系列データについて、前記吸引チューブの閉塞が解消しない状況で生じる前記吸引電力の電力低減パターンか否かを判定する閉塞判定部と、
前記電力低減パターンの判定に応じて、前記吸引圧を下げて、前記吸引チューブの閉塞性の詰まり解消を図る閉塞対策部とを含む
ことを特徴とする生体用吸引装置。
【請求項4】
吸引対象の生体内に挿置される吸引チューブに連通して負圧力を作用させる吸引タンクと、
前記吸引タンクに吸引圧をかけるエア吸引部と、
前記エア吸引部を電力制御する制御部とを備え、
前記エア吸引部は、
前記吸引タンクから空気を吸引するエアポンプと、
前記吸引タンクに外気を流入させる外気調整バルブとを含み、
前記制御部は、
前記エアポンプの吸引電力を電力制御して、前記吸引タンクから空気を引くポンプ制御部と、
前記外気調整バルブを一時的に開く電力制御によって、前記吸引タンクにかかる前記吸引圧を下方調整する外気調整部とを含み、
さらに、前記エア吸引部は
、
標準配置の標準エアポンプと
着脱自在に追加される増設エアポンプとを含み、
前記標準エアポンプの吸気と、前記増設エアポンプの吸気とを複合して、前記吸引タンクから空気を吸引するエアコネクタを備え、
前記制御部は、追加された前記増設エアポンプを前記標準エアポンプと併せて駆動することによって、
前記吸引タンクに対する吸引空気量の上限を、前記標準エアポンプの単体使用時より上げる
ことを特徴とする生体用吸引装置。
【請求項5】
請求項4に記載の生体用吸引装置であって、
前記制御部は、前記吸引圧が増加している期間は前記標準エアポンプおよび前記増設エアポンプを両方駆動し、前記制御部によって前記吸引圧が目標値付近に定値制御されている期間は、前記標準エアポンプおよび前記増設エアポンプのどちらか一方を駆動する
ことを特徴とする生体用吸引装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の生体用吸引装置であって、
生体用吸引装置の本体を外部電源に接続するためのコードを巻き取り自在に収容する増設リール部とを備え、
前記増設リール部は、前記本体に対して着脱自在に収納される
ことを特徴とする生体用吸引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体から不要な物体(痰や鼻汁や分泌物や生理食塩水や異物など)を吸引する生体用吸引装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、気道にからむ不要な物体を吸引し、吸引物として除去する痰吸引装置の技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、『吸引カテーテルに連通され吸引した痰を収容する収容容器と、収容容器に連通されて収容容器を介して吸引カテーテルに負圧力を発生させるエアポンプとからなる痰吸引装置』旨の技術が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の生体用吸引装置において、吸引圧が低めに設定された場合、吸引物の量や粘稠性によっては吸う力が不足して、吸引カテーテル(吸引チューブ)が詰まり易いという問題が生じる。
【0006】
一方、吸引圧が高めに設定された場合、吸引チューブの吸う力が強すぎて、周囲の粘膜に貼り付きやすいなど、熟練していないユーザにとって吸引チューブの扱いが難しくなるという問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、生体用吸引装置において、吸引圧を細かく制御可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
生体用吸引装置は、吸引対象の生体内に挿置される吸引チューブに連通して負圧力を作用させる吸引タンクと、前記吸引タンクに吸引圧をかけるエア吸引部と、前記エア吸引部を電力制御する制御部とを備える。前記エア吸引部は、前記吸引タンクから空気を吸引するエアポンプと、前記吸引タンクに外気を流入させる外気調整バルブとを含む。前記制御部は、前記エアポンプの吸引電力を電力制御して、前記吸引タンクから空気を引くポンプ制御部と、前記外気調整バルブを一時的に開く電力制御によって、前記吸引タンクにかかる前記吸引圧を下方調整する外気調整部とを含む。
【発明の効果】
【0009】
上述した構成の生体用吸引装置では、「エアポンプの制御」および「外気調整バルブの制御」という二重の制御手段によって、吸引圧を細かく制御することが可能になる。
【0010】
なお、上述した以外の課題、構成および効果の詳しい内容については、後述する実施形態において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1の概略構成を例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、吸引タンク110とエアポンプ121との間のエア系統を例示する図である。
【
図3】
図3は、吸引タンク110の装着部分を例示する図である。
【
図4】
図4は、生体用吸引装置100の外観を例示する図である。
【
図5】
図5は、モバイルバッテリ560による電源供給を説明する図である。
【
図6】
図6は、増設リール部500による電源供給を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施例1のメイン動作(前半)を例示する流れ図である。
【
図8】
図8は、実施例1のメイン動作(後半)を例示する流れ図である。
【
図9】
図9は、粘稠対策モードの動作を例示する流れ図である。
【
図10】
図10は、脈動パターンが生じる機序を説明する図である。
【
図12】
図12は、閉塞対策モードの動作を例示する流れ図である。
【
図13】
図13は、電力低減パターンが生じる機序を説明する図である。
【
図14】
図14は、電力低減パターンを模式的に例示する図である。
【
図16】
図16は、吸引タンク110とエアポンプ300(標準エアポンプ310および増設エアポンプ320)との間のエア系統を例示する図である。
【
図17】
図17は、実施例2のメイン動作(実施例1と異なる部分)を例示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
《実施例1の概略構成》
図1は、実施例1の概略構成を例示するブロック図である。
図1において、実施例1のシステムは、生体用吸引装置100に、集積容器200、および吸引チューブAを着脱自在に装着して、構成される。
【0014】
この内、生体用吸引装置100は、吸引タンク110、排出部111、エア吸引部120、制御部130、圧力検出部140、電力監視部150、吸引スイッチ160、音声/表示部170、および吸引ダイヤル180を備える。
【0015】
さらに、このエア吸引部120は、エアポンプ121、ポンプ駆動回路121a、外気調整バルブ122、バルブ駆動回路122a、および配管123を備える。
【0016】
また、この制御部130は、ポンプ制御部131、外気調整部132、脈動判定部133、粘稠対策部134、閉塞判定部135、閉塞対策部136、第1センサ137、および第2センサ138などの機能を備える。
以下、各部の構成について、部分図を用いて順に説明する。
【0017】
《エア系統の構成説明》
図2は、吸引タンク110とエアポンプ121との間のエア系統を例示する図である。
【0018】
図1および
図2において、吸引タンク110は、吸引対象の生体内に挿置される吸引チューブAと連通して負圧力を作用させる気密容器である。さらに、吸引タンク110は、吸引チューブAで吸引される吸引物を受け取って、一次的に蓄積する一次容器も兼ねる。
【0019】
吸引タンク110の上面には、フィルタ112が設けられる。このフィルタ112は、液体の通過を阻止して、気体を通過させる機能を有する。
【0020】
吸引タンク110は、このフィルタ112を介して、配管123に連結する。なお、吸引タンク110を生体用吸引装置100から取り外して洗浄する際には、吸引タンク110と配管123との連結箇所を外すことが可能である。
【0021】
エアポンプ121は、配管123を介して、吸引タンク110に連結される。ポンプ制御部131は、ポンプ駆動回路121aに制御信号を与えることによって、エアポンプ121の吸引電力を電力制御する。このエアポンプ121の電力制御によって、吸引タンク110にかかる吸引圧が増減調整される。
【0022】
外気調整バルブ122は、配管123の経路上に設けられる。外気調整部132は、バルブ駆動回路122aに制御信号を与えることによって、外気調整バルブ122の開閉を電力制御する。このように外気調整バルブ122を一時的(間欠的)に開く電力制御によって、吸引タンク110には外気(大気圧)が流入し、内圧である吸引圧は下方調整される。
【0023】
圧力検出部140は、吸引タンク110と外気調整バルブ122との間の配管123の経路上に設けられる。この配置箇所において、圧力検出部140は、エアポンプ121および外気調整バルブ122の圧力作用を総合して、「吸引タンク110に作用する吸引圧」を検出する。
【0024】
排出部111は、弁部111aおよび留め具111bを備える。弁部111aは、留め具111bで押さえた状態で、吸引タンク110の漏斗状の底面の先端にねじ止めされる。
【0025】
排出部111は、吸引タンク110の負圧力によって、弁部111aが閉塞する。その結果、吸引タンク110の負圧力が排出部111から逃げずに、吸引チューブAに負圧力が集中的に作用する。また、排出部111(弁部111a)の閉塞によって、吸引チューブAの吸引物は、排出部111を通らず、吸引タンク110に一次的に蓄積される。
【0026】
排出部111は、吸引タンク110の負圧解除に際して、弁部111aを開放する。その結果、吸引タンク110に一次的に蓄積された吸引物は、吸引タンク110の漏斗状の底面を伝って、排出部111から排出される。排出先に配置される集積容器200は、排出される吸引物を二次的に集積する。
【0027】
《吸引タンク110の装着部分の構成》
図3は、吸引タンク110の装着部分を例示する図である。
図3に示すように、吸引タンク110は、生体用吸引装置100の収納部分100aに対して着脱自在に装着され、ロック部100bによって固定される。
【0028】
収納部分100aの底面は、吸引タンク110の底面に形状を合わせて漏斗状に形成される。この漏斗の先端の底には、排出部111の部分を集積容器200側へ貫通させるための貫通孔100cが設けられる。
【0029】
収納部分100aには、吸引タンク110の透明箇所を介して、吸引タンク110内の吸引物の蓄積量を検出するための第1センサ137が設けられる。
【0030】
《生体用吸引装置100の外観構成》
図4は、生体用吸引装置100の外観を例示する図である。
図4において、生体用吸引装置100の外観には、吸引スイッチ160、音声/表示部170、吸引ダイヤル180、および電池蓋100dなどのユーザ操作に供する部材が配置される。
【0031】
《生体用吸引装置100の電源について》
図5は、モバイルバッテリ560による電源供給を説明する図である。
図5において、取り外し可能な電池蓋100dの裏側には、収納空間570が設けられる。この収納空間570には、充電可能なモバイルバッテリ560が着脱自在に収納される。
【0032】
このモバイルバッテリ560の端子を、生体用吸引装置100内の電源回路(不図示)に配線接続することによって、モバイルバッテリ560の電源使用が可能になる。
【0033】
図6は、増設リール部500による電源供給を説明する図である。
図6において、生体用吸引装置100の本体底には、底蓋510aが取り外し可能に設けられる。この底蓋510aを取り外すと、下部増設空間510があらわれる。この下部増設空間510には、増設リール部500が着脱自在に収納(例えば、オプションパーツとして増設)される。
【0034】
この増設リール部500には、生体用吸引装置100を外部電源に接続するためのコード530が巻き取り自在に収容される。
【0035】
コード530の端子先は、本体側面のコード出口510b(
図5参照)から外部へ引き伸ばしされる。このコード530の端子先は、USB端子などの汎用の電源端子であって、対応する外部電源の端子に直に接続することができる。
【0036】
さらに、このコード530の端子先には、所定の電源アダプタ540も接続可能である。この電源アダプタ540は、接続する外部電源の種類(商用コンセント、シガーソケットなど)に応じて交換可能である。下部増設空間510には、増設リール部500と共に、この電源アダプタ540も一緒に収納される。
【0037】
コード530の本体側の端子先は、生体用吸引装置100内の電源回路(不図示)に接続される。以上のコード接続によって、増設リール部500を経由した電源供給が可能になる。
【0038】
《実施例1のメイン動作の説明》
つづいて、実施例1のメイン動作について説明する。
図7および
図8は、実施例1のメイン動作を例示する流れ図である。
以下、
図7および
図8に示すステップ番号の順に動作を説明する。
【0039】
ステップS101: ポンプ制御部131は、吸引スイッチ160がON状態になるまで省電力モードで待機する。ここで、吸引スイッチ160がON状態に変化すると、ポンプ制御部131はステップS102に動作を移行する。
【0040】
ステップS102: 制御部130は、第2センサ138の出力を取得する。第2センサ138は、集積容器200を載置する面に複数配置され、集積容器200の荷重と荷重バランスを検出する。制御部130は、第2センサ138の出力に基づいて、排出部111の排出先に集積容器200が正常配置されているか否かを判定する。
【0041】
ここでの正常配置とは、第2センサ138が集積容器200として最低限の荷重を検知しつつ、かつ荷重バランスが均等であることに該当する。一方、配置異常(正常配置でない)とは、第2センサ138が集積容器200としての最低限の荷重を検知しない(集積容器200が存在しない)か、荷重バランスが偏って不均等(集積容器200が正しい位置に挿置されていない)か、のどちらかである。
【0042】
判定の結果において、集積容器200が正常配置されている場合、制御部130は、ステップS104に動作を移行する。一方、集積容器200が正常配置されていない場合、制御部130は、エアポンプ121を動作させずに、ステップS103に動作を移行する。
【0043】
ステップS103: 制御部130は、音声/表示部170を介して、集積容器200の『配置異常』を音声または表示(発光や点滅なども含む、以下同じ)などによってユーザに報知する。ユーザには、この報知によって、集積容器200を正常に配置していただく。このユーザ動作の後に、制御部130はステップS101に動作を戻す。
【0044】
ステップS104: 制御部130は、集積容器200の集積量が集積限度を超えるか否かを判定する。ここでの集積限度とは、集積容器200が吸引物を最大限に集積した重量(容器重量を含む)から余裕分(吸引1回分における吸引タンク110の標準的または最大の蓄積量)を減算した「許容上限の集積量」に相当する。
【0045】
判定の結果において、集積容器200の集積量が集積限度を超えない場合、制御部130は、ステップS106に動作を移行する。一方、集積容器200の集積量が集積限度を超えた状態で吸引動作を行うと集積容器200が後から溢れるおそれがある。そこで、集積容器200の集積量が集積限度を超えた場合、制御部130は、エアポンプ121を動作させずに、ステップS105に動作を移行する。
【0046】
ステップS105: 制御部130は、音声/表示部170を介して、集積容器200の『満杯』を音声または表示などによってユーザに報知する。ユーザには、この報知に応じて、集積容器200の交換や、集積容器200内の吸引物の廃棄をしていただく。このユーザ動作の後に、制御部130はステップS101に動作を戻す。
【0047】
ステップS106: 制御部130は、吸引ダイヤル180のダイヤル値を、ユーザが設定した吸引圧の目標値(定値制御の目標値)として情報取得する。
【0048】
ステップS107: 外気調整部132は、エアポンプ121の吸引開始に先立って、バルブ駆動回路122aを介して外気調整バルブ122を閉塞する。
【0049】
ステップS108: ポンプ制御部131は、ポンプ駆動回路121aを介して、エアポンプ121を吸引駆動し、吸引タンク110の吸引圧を目標値付近まで上昇させる。
【0050】
ステップS109: ポンプ制御部131は、吸引圧の検出値が目標値付近に収まるように、エアポンプ121の吸引電力を上下方向に電力制御する。ここでの電力制御は、例えば、ポンプ駆動回路121aによるエアポンプ121の電圧値制御、電流値制御、PWM制御などによって実施される。
【0051】
ステップS110: 外気調整部132は、エアポンプ121の電力制御の下方調整では応答速度が間に合わずに、吸引圧の検出値が目標値付近を上回るか否かを判定する。判定の結果において上回る場合、外気調整部132はステップS111に動作を移行する。一方、吸引圧の検出値が目標値付近に留まる場合、外気調整部132はステップS112に動作を移行する。
【0052】
ステップS111: 外気調整部132は、吸引圧の検出値を目標値付近に下方調整するように、外気調整バルブ122の開閉を一時的(間欠的)に電力制御する。ここでのバルブ制御は、例えば、外気調整バルブ122を開く期間と閉じる期間とのデューティ比を調整するPWM制御などによって実施される。この動作の後、外気調整部132は、ステップS110に動作を戻す。
【0053】
ステップS112: 吸引タンク110の負圧力によって、排出部111の閉塞が維持される。その結果、吸引チューブAからの吸引物は、吸引タンク110に一次的に蓄積される。
【0054】
ステップS120: 制御部130は、吸引チューブAの粘稠性の詰まり発生を警戒して、粘稠対策モード(
図9参照)の処理ルーチンを実施する。この粘稠対策モードの詳細は後述する。
【0055】
ステップS121: 制御部130は、吸引チューブAの閉塞発生を警戒して、閉塞対策モード(
図12参照)の処理ルーチンを実施する。この閉塞対策モードの詳細は後述する。
【0056】
ステップS122: 制御部130は、第1センサ137および第2センサ138の出力に基づいて、吸引タンク110が蓄積上限に達したか否かを判定する。ここでの蓄積限度は、吸引タンク110のフル容量と、集積容器200の空き部分の容量との小さい方の値として算出される。
【0057】
ステップS123: 吸引タンク110が蓄積上限に達しない場合、制御部130は、ステップS124に動作を移行する。一方、吸引タンク110が蓄積上限に達する場合、制御部130は、音声/表示部170を介してユーザに「吸引動作を一時停止して吸引タンク110の排出動作を一旦行う」旨を報知しつつ、ステップS125に動作を移行する。
【0058】
ステップS124: 制御部130は、吸引スイッチ160がOFF状態に変化したか否かを判定する。吸引スイッチ160がON状態のままの場合、制御部130はステップS106に動作を戻して、吸引動作を継続する。一方、吸引スイッチ160がOFF状態に変化した場合、制御部130はステップS125に動作を移行する。
【0059】
ステップS125: ポンプ制御部131は、エアポンプ121の吸引動作を停止し、負圧力を解除して排出部111を開放する。
【0060】
ステップS126: さらに、外気調整部132は、外気調整バルブ122を全開して、吸引タンク110の負圧力を大気圧まで急激に下げることで、排出部111の開放を迅速化する。
【0061】
ステップS127: 排出部111の開放によって、吸引タンク110に一次的に蓄積された吸引物は排出部111から排出される。排出部111から排出された吸引物は、集積容器200に二次的に集積される。
【0062】
ステップS128: 制御部130は、第2センサ138の出力に基づいて、集積容器200の蓄積量の増加が停止して安定したか否かを判定する。集積容器200の蓄積量の増加が停止した場合、制御部130は、吸引物の排出が完了したと判断して、ステップS129に動作を移行する。集積容器200の蓄積量が増加中の場合、制御部130は、吸引物が排出途中であると判断して、ステップS127に動作を戻す。なお、この待機中に吸引スイッチ160が再びON状態に変化した場合は、制御部130はステップS106に動作を戻して、吸引動作を再開する。
【0063】
ステップS129: 外気調整部132は、次回の吸引動作に備えて、外気調整バルブ122を閉塞する。
【0064】
以上の一連のメイン動作により、生体用吸引装置100による一回分の吸引動作が完了する。制御部130は、動作をステップS101に戻し、最小電力での待機モード(省エネモード)に入って、次回の吸引動作に備える。
【0065】
このような吸引動作の合間に、ユーザは、吸引チューブAや集積容器200の着脱を行ってもよいし、洗浄液(水など)の吸引や浸漬などによって吸引チューブAや装置内の洗浄を行ってもよい。
【0066】
《粘稠対策モードの動作説明》
続いて、上述した粘稠対策モード(
図8のステップS120参照)の動作について、具体的に説明する。
【0067】
図9は、粘稠対策モードの動作を例示する流れ図である。
以下、
図9に示すステップ番号の順に説明する。
【0068】
ステップS200: 脈動判定部133は、圧力検出部140が検出する吸引圧の時系列データを収集する。脈動判定部133は、この吸引圧の時系列データが、吸引チューブAに粘稠性の吸引物が詰まった際に生じる脈動パターンか否かを判定する。
【0069】
図10は、この脈動パターンが生じる機序を説明する図である。
図10の(P1)に示すように、吸引チューブAに粘稠性の吸引物が詰まると、吸引チューブAが一時的に狭窄または閉塞する。このとき、吸引チューブAを通過する吸引空気量が減少変化することによって、吸引タンク110にかかる吸引圧が若干だけ上昇する。
【0070】
一方、この詰まり状態で吸引動作を行うと、吸引チューブAの内壁から粘稠性の吸引物の一部が瞬間的に引き剥がされる。このとき、
図10の(P2)に示すように、空気の通り道が一時的に広がって吸引チューブAを通過する吸引空気量が一瞬だけ増加する。その結果、吸引タンク110にかかる吸引圧が若干だけ下降する。
【0071】
このような吸引圧の上昇と下降が断続的に繰り返されることによって、吸引圧の時系列データは、
図10の(P3)に示すように、吸引圧の変動が山谷を繰り返す脈動パターンを示すようになる。
【0072】
ステップS201: 脈動パターンと判定された場合、脈動判定部133は、粘稠性の詰まりが発生したと判定して、ステップS202に動作を移行する。一方、脈動パターンと判定されない場合、脈動判定部133は、粘稠対策モードの処理ルーチンを抜けて、元のメイン動作(
図7および
図8参照)に戻る。
【0073】
ステップS202: 粘稠対策部134は、外気調整部132に指示して、本モード中は外気調整バルブ122を閉塞状態に維持する。また、本モード中は吸引圧の定値制御における目標値付近の許容範囲を一時的に拡大する。
【0074】
ステップS203: 粘稠対策部134は、吸引圧の目標値を現在値から一時的に引き上げて、吸引チューブAに作用する負圧力を高める。このように瞬間的に高めた負圧力によって、粘稠性の吸引物の引き剥がしを図る。
【0075】
ステップS204: 脈動判定部133は、脈動パターンが解消したか否かを判定する。脈動パターンが解消した場合、脈動判定部133はステップS210に動作を移行する。一方、脈動パターンが解消していない場合、脈動判定部133はステップS205に動作を移行する。
【0076】
ステップS205: 吸引圧の一時的な引き上げ(ステップS203参照)については、試行回数の上限が予め設定される。脈動判定部133は、吸引圧の引き上げ回数が、試行回数の上限に達したか否かを判定する。試行回数の上限に達しない場合、脈動判定部133は、ステップS203に動作を戻し、吸引圧の一時的な引き上げを繰り返す。一方、試行回数の上限に達した場合、脈動判定部133は次の試みに移るため、ステップS206に動作を進める。
【0077】
ステップS206: 粘稠対策部134は、脈動パターンの吸引圧の山に同期して、エアポンプ121の吸引圧を引き上げる。また、粘稠対策部134は、脈動パターンの吸引圧の谷に同期して、エアポンプ121の吸引圧を戻す(以下「共振制御」という)。
【0078】
図11は、この共振制御を説明する図である。
図11の(Q1)では、粘稠性の詰まりによって吸引チューブAが狭窄または閉塞している。脈動判定部133は、この狭窄または閉塞のタイミングを、脈動パターンに現れる吸引圧の山(上昇変動のピーク)によって検知する。粘稠対策部134は、この山のタイミングに同期して、ポンプ制御部131を介して、エアポンプ121の吸引圧を引き上げる。すると、狭窄または閉塞する詰まりでは、空気漏れが少ないため、吸引圧が効率的に作用する。その結果、粘稠性の詰まりは、吸引チューブA内を吸引タンク110へ向かって少しずつ進む。
【0079】
一方、
図11の(Q2)では、粘稠性の詰まりが吸引チューブAから瞬間的に一部剥がれて、空気の通り道が一時的に拡がる。脈動判定部133は、この一部剥がれのタイミングを、脈動パターンに現れる吸引圧の谷(下降変動のピーク)によって検知する。粘稠対策部134は、この谷のタイミングに同期して、外気調整部132(またはポンプ制御部131)を介して、外気調整バルブ122(またはエアポンプ121)を制御して、吸引圧を引き下げる。すると、詰まりの近傍を流れる気流が乱れて、剥がれていた箇所が再び塞がる。そのため、
図11の(Q1)の状態に移行する。
【0080】
このような
図11の(Q1)(Q2)を繰り返す共振制御によって、粘稠対策部134は、粘稠性の詰まりの解消を図る。
【0081】
ステップS207: 脈動判定部133は、共振制御の後に脈動パターンが解消したか否かを判定する。脈動パターンが解消した場合、脈動判定部133はステップS210に動作を移行する。一方、脈動パターンが解消していない場合、脈動判定部133はステップS208に動作を移行する。
【0082】
ステップS208: 共振制御(ステップS206参照)については、試行回数の上限が予め設定される。脈動判定部133は、共振制御の試行回数が、試行回数の上限に達したか否かを判定する。試行回数の上限に達しない場合、脈動判定部133は、ステップS206に動作を戻し、共振制御を繰り返す。一方、試行回数の上限に達した場合、脈動判定部133は、ここでの詰まりの解消を諦めて、ステップS209に動作を進める。
【0083】
ステップS209: 粘稠対策部134は、音声/表示部170を介して、粘稠性の詰まりが解消しない旨を報知し、その詰まり解消のための対策(吸引チューブAの交換や洗浄など)をユーザに推奨する。
【0084】
ステップS210: 粘稠対策部134は、粘稠対策モードにおいて変更した吸引圧やその目標値をモード以前の状態に戻す。その後、粘稠対策モードの処理ルーチンを抜けて、元のメイン動作(
図7および
図8参照)に戻る。
【0085】
上述した粘稠対策モードの一連の処理によって、「粘稠性の詰まりの自動検出」および「詰まりの解消を図る対処動作」が完了する。
【0086】
《閉塞対策モードの動作説明》
続いて、上述した閉塞対策モード(
図8のステップS121参照)の動作について、具体的に説明する。
【0087】
図12は、閉塞対策モードの動作を例示する流れ図である。
以下、
図12に示すステップ番号の順に説明する。
【0088】
ステップS300: 閉塞判定部135は、電力監視部150が検出するエアポンプ121(エア吸引部120)の吸引電力の時系列データを収集する。閉塞判定部135は、吸引圧が目標値付近に定値制御されている状態で、この吸引電力の時系列データが、吸引チューブAが閉塞を起こした際に生じる電力低減パターンを示すか否かを判定する。
【0089】
図13は、この電力低減パターンが生じる機序を説明するための図である。
図13において、横軸は、吸引チューブAの吸引空気量(風量)を示す。縦軸は、吸引タンク110にかかる吸引圧(静圧)を示す。一方、これら二軸からなる座標面には、吸引電力をパラメータ変更させた際の『風量-静圧の特性カーブ』を複数示す。
【0090】
ここで、ポンプ制御部131は、吸引圧の検出値が目標値付近に収まるように、エアポンプ121を電力制御する定値制御を繰り返す。その結果、吸引圧(静圧)が目標値付近の範囲(
図13に示す斜線範囲)に収まるように、吸引チューブAの吸引空気量(風量)に応じて吸引電力(α、β、γ、δなど)の電力制御が実施される。
【0091】
この内、吸引電力αは、開放状態の吸引チューブAで空気を吸引しつつ、吸引圧を目標値に維持するのに必要な電力値である。吸引電力β~γの範囲は、吸引チューブAで吸引物(痰など)を正常に吸引しつつ、吸引圧を目標値付近に維持するのに必要な電力値の変動範囲である。吸引電力δは、吸引チューブAが閉塞した(吸引空気量:ゼロ)の状態で、吸引圧を目標値付近に維持するのに必要な電力値である。
【0092】
目標値付近の定値制御中において吸引電力がおよそβからγまでの範囲に収まれば、吸引チューブAは閉塞せず、正常電力範囲にあるといえる。一方、この正常電力範囲から外れてδほどの電力低減が所定の時間(自己回復の望める猶予時間)を超えて継続した場合、吸引チューブAの閉塞が解消しない状況と判定される。
図14は、このような機序によって生じる電力低減パターンを模式的に例示する図である。
【0093】
ステップS301: 目標値付近の定値制御中に電力低減パターンを検知すると、閉塞判定部135は、閉塞詰まりの解消を図るため、ステップS302に動作を移行する。一方、電力低減パターンと判定されない場合、閉塞判定部135は、閉塞対策モードの処理ルーチンを抜けて、元のメイン動作(
図7および
図8参照)に戻る。
【0094】
ステップS302: 閉塞対策部136は、吸引圧の定値制御を一時休止する。この状態で、閉塞対策部136は、外気調整部132に指示して外気調整バルブ122を開放し、外気(大気圧)を吸引タンク110に流入させる。その結果、吸引タンク110の吸引圧は下がり、吸引チューブAの閉塞詰まり(粘膜などへの貼り付きなど)の解消が図られる。
【0095】
なお、閉塞対策部136は、エアポンプ121の吸引動作の休止によって吸引圧を下げて、吸引チューブAの閉塞詰まり(粘膜などへの貼り付きなど)の解消を図ってもよい。
【0096】
ステップS303: 閉塞対策部136は、閉塞詰まりの解消に必要な時間経過をおいて、吸引圧の定値制御を再開する。
【0097】
ステップS304: 閉塞判定部135は、目標値付近の定値制御において電力低減パターンが解消されるか否かを判定する。解消されていた場合、閉塞判定部135は、閉塞対策モードの処理ルーチンを抜けて、元のメイン動作(
図7および
図8参照)に戻る。一方、電力低減パターンが解消していない場合、閉塞判定部135はステップS305に動作を移行する。
【0098】
ステップS305: 閉塞詰まりの対策動作については、試行回数の上限が予め設定される。閉塞判定部135は、この対策動作の試行回数が、試行回数の上限に達したか否かを判定する。試行回数の上限に達しない場合、閉塞判定部135は、ステップS302に動作を戻し、対策動作の試行を繰り返す。一方、試行回数の上限に達した場合、閉塞判定部135は、閉塞詰まりの解消を諦めて、ステップS306に動作を進める。
【0099】
ステップS306: 閉塞対策部136は、音声/表示部170を介して、閉塞詰まりが解消しない旨を報知し、その詰まり解消のための対策(吸引チューブAの交換や洗浄など)をユーザに推奨する。その後、閉塞対策モードの処理ルーチンを抜けて、元のメイン動作(
図7および
図8参照)に戻る。
【0100】
上述した閉塞対策モードの一連の処理によって、「閉塞詰まりの自動検出」および「閉塞詰まりの解消を図る対処動作」が完了する。
【0101】
《実施例1の効果》
以下、実施例1が奏する効果について説明する。
【0102】
(1)特許文献1の従来技術では、エアポンプの吸引動作によって吸引圧を上げる方向で制御が行われる。そのため、吸引圧を素早く下げる制御が難しく、吸引圧を細かく制御することができなかった。
【0103】
それに対して、実施例1は、「エアポンプ121の制御」および「外気調整バルブ122の制御」という二重の制御手段を有する。そのため、外気調整バルブ122を開いて吸引圧を素早く下げる方向での制御が可能になる。したがって、実施例1は、「エアポンプ121の制御」に加えて、「外気調整バルブ122の制御」を行うことによって、吸引圧を細かく制御できるという点で優れている。
【0104】
(2)実施例1では、吸引圧が目標値付近を超えた場合、外気調整バルブ122を即座に開いて吸引圧を素早く下げることができる。そのため、実施例1は、吸引圧が上限を超えて上がりすぎるなどの事態を防止できるという点で優れている。
【0105】
(3)特許文献1の従来技術では、吸引圧が低めに設定された場合、吸引物の量や粘稠性によっては吸う力が不足して、吸引チューブが詰まり易いという問題が生じる。
【0106】
それに対して、実施例1では、吸引圧の時系列データについて、吸引チューブAに粘稠性の吸引物が詰まった際に生じる脈動パターンか否かを判定する。したがって、実施例1は、粘稠性の吸引物が吸引チューブAに詰まった事態を自動的に検知できるという点で優れている。
【0107】
(4)実施例1では、脈動パターンを判定すると、吸引圧を上げて、吸引チューブAの粘稠性の詰まり解消を図る。したがって、実施例1は、粘稠性の詰まりを判定すると、自動的に吸引圧を上げて粘稠性の詰まり解消を図るという点で優れている。
【0108】
(5)さらに、実施例1では、脈動パターンの吸引圧の山谷に同期して吸引圧を増減させる共振制御によって、
図11で示したように、粘稠性の詰まりを効率よく解消する。したがって、実施例1は、粘稠性の詰まりを判定すると、自動的に共振制御を実施して粘稠性の詰まり解消を図るという点で優れている。
【0109】
(6)特許文献1の従来技術では、吸引圧が高めに設定された場合、吸引チューブの吸う力が強すぎて、周囲の粘膜に貼り付きやすいなど、熟練していないユーザにとって吸引チューブの扱いが難しくなるという問題が生じる。
【0110】
それに対して、実施例1では、吸引電力の時系列データについて、吸引チューブの閉塞が解消しない状況で生じる電力低減パターンか否かを判定する。したがって、実施例1は、吸引チューブAに生じる閉塞詰まりを自動的に検知できるという点で優れている。
【0111】
(7)さらに、実施例1では、電力低減パターンを判定すると、吸引圧を下げて、吸引チューブの閉塞性の詰まりを解消する。したがって、実施例1は、閉塞詰まりを判定すると、自動的に吸引圧を下げて閉塞性の詰まり解消を図るという点で優れている。
【0112】
(8)実施例1では、電源用のコード530を巻き取って収容する増設リール部500を、生体用吸引装置100の本体内に着脱自在に配置する。したがって、実施例1は、この増設リール部500からコード530を引き伸ばして外部電源に接続することによって、外部電源を確保できる場所であれば生体用吸引装置100の電源使用が可能になるという点で優れている。
【実施例2】
【0113】
続いて、ポンプを増設可能にした実施例2について説明する。
なお、実施例2において、実施例1と共通する構成については、実施例1の説明(
図1~
図14参照)と同じ参照符号を用いて説明し、ここでの重複説明を省略する。
【0114】
《ポンプ増設の構成》
図15は、ポンプ増設の構成を例示する図である。
図15において、実施例2のエアポンプ300は、本体内蔵の標準エアポンプ310と、本体側面に増設可能な増設エアポンプ320との組み合わせとして構成される。
【0115】
この内、標準エアポンプ310は、実施例1で説明したエアポンプ121と同じものである。
【0116】
一方、増設エアポンプ320は、増設ロック部321を介して、生体用吸引装置100の本体側面に装着(着脱自在に増設)される。
【0117】
増設エアポンプ320には、ポンプ駆動回路320aが内蔵される。このポンプ駆動回路320aは、増設ロック部321のロックに伴う接点接触や、手動によるコード接続などによって、本体側に内蔵される制御部130および電源回路(不図示)と電気的に接続される。
【0118】
《エア系統の構成説明》
図16は、吸引タンク110とエアポンプ300(標準エアポンプ310および増設エアポンプ320)との間のエア系統を例示する図である。
【0119】
図16において、エアコネクタ311は、標準エアポンプ310の吸気と、増設エアポンプ320の吸気とを複合して、吸引タンク110から空気を吸引するためのY型のコネクタである。
【0120】
このエアコネクタ311は、配管123を介して、標準エアポンプ310に連結される。この標準エアポンプ310は、ポンプ駆動回路310aを介して、制御部130によって電力制御が行われる。
【0121】
また、エアコネクタ311の連結部311aは、着脱自在な増設配管322を介して、増設エアポンプ320に連結される。この増設エアポンプ320は、ポンプ駆動回路320aを介して、制御部130によって電力制御が行われる。
【0122】
なお、増設エアポンプ320の増設を行わない場合、連結部311aの穴が外気に開放されないよう、密閉手段(蓋や弁やバルブなど)によって閉塞される。
【0123】
さらに、エアコネクタ311は、着脱自在な合流配管312を介して、吸引タンク110に連結される。
【0124】
外気調整バルブ122は、配管123の経路上に設けられる。この外気調整バルブ122を一時的に開閉制御することによって外気(大気圧)が流入し、吸引タンク110に作用する吸引圧は下方調整される。
【0125】
圧力検出部140は、配管123の経路上において、エアコネクタ311と外気調整バルブ122との間に位置する。この位置において、圧力検出部140は、エアポンプ300(標準エアポンプ310および増設エアポンプ320)および外気調整バルブ122の圧力作用を総合して、「吸引タンク110に作用する吸引圧」を検出する。
【0126】
《実施例2のメイン動作の説明》
つづいて、実施例2のメイン動作について説明する。
図17は、実施例2のメイン動作(実施例1と異なる部分)を例示する流れ図である。
【0127】
図17において、実施例2のメイン動作の特徴は、実施例1(
図7~
図8参照)のステップS108~S109に代えて、ステップS400~S402の動作を実施する点である。なお、実施例2の残りの動作は、実施例1(
図7~
図9、
図12)と同様のため、ここでの重複説明を省略する。
以下、このステップS400~S402の動作について順番に説明する。
【0128】
ステップS400: 制御部130は、ポンプ駆動回路320aとの信号通信を試行することによって、増設エアポンプ320が増設されているか否かを判定する。ポンプ駆動回路320aとの信号通信が可能な場合、制御部130は増設エアポンプ320が増設されていると判断して、ステップS401に動作を移行する。一方、ポンプ駆動回路320aとの信号通信が不可能な場合、制御部130は増設エアポンプ320が非増設(使用不可)と判断して、実施例1のメイン動作(
図7~
図8参照)に動作を移行する。
【0129】
ステップS401: 制御部130(ポンプ制御部131)は、吸引圧の検出値が目標値付近に向かって増加する期間は、標準エアポンプ310および増設エアポンプ320を両方駆動する。その結果、吸引空気量の上限を単体使用時よりも増大させて、吸引タンク110内の空気を高速に吸引する。
【0130】
ステップS402: 吸引圧の検出値が目標値付近に維持されて定値制御されている期間、制御部130は、増設エアポンプ320(または標準エアポンプ310)の駆動を停止する。停止されたポンプ側は、付属または等価な逆止弁が閉塞するなどして密閉され、空気の漏れは阻止される。この状態で、制御部130は、一方の標準エアポンプ310(または増設エアポンプ320)を単体で駆動する。
【0131】
なお、これ以降の単体でのポンプ制御は、実施例1のエアポンプ121の制御と同じため、ここでの重複説明を省略する。
【0132】
《実施例2の効果》
実施例2は、上述した実施例1の効果に加えて、次の効果を奏する。
【0133】
(1)吸引タンク110内の吸引圧(負圧)を一旦解除すると、吸引タンク110には大気圧の空気が流入する。この状態から再び吸引動作を開始するためには、吸引タンク110から空気を吸引して、目標値付近まで吸引圧(負圧)を増加させなければならない。それまでの期間、ユーザは、生体内の吸引動作は行えず、待機しなければならない。そこで、実施例2では、吸引圧が増加している期間は、標準エアポンプ310および増設エアポンプ320の両方を駆動する。その結果、単位時間あたりに吸引可能な空気量(吸引空気量)の上限が増大し、吸引タンク110から空気を高速に吸引することが可能になる。したがって、実施例2は、吸引動作が可能になるまでのユーザ待機時間を短縮できるという点で優れている。
【0134】
(2)一方、吸引タンク110の吸引圧が目標値付近に定値制御されている期間は、細い吸引チューブAから吸引される少ない空気量を吸引タンク110から吸引できれば足りる。その場合、吸引空気量の上限を上げる必要はない。そこで、実施例2では、吸引圧が目標値付近に定値制御される期間は、標準エアポンプ310および増設エアポンプ320のどちらか一方を駆動する。したがって、実施例2は、1台のポンプ駆動に切り替えることによって電力消費を削減できるという点で優れている。さらに、実施例2は、1台のポンプ駆動に切り替えることによって、ポンプの駆動音を静音化できるという点でも優れている。
【0135】
《その他の補足事項》
なお、上述した実施形態では、吸引チューブAを口腔または鼻腔から挿入するケースを想定して説明している。しかしながら、本発明は、これに限定されず、吸引チューブAを生体内に挿置するものであればよい。例えば、気管切開カニューレや人工呼吸器や内視鏡や腹腔鏡などと併用して吸引チューブAを生体内に挿置するものでもよい。
【0136】
また、上述した実施例2において、標準エアポンプ310および増設エアポンプ320の一方が故障した場合に、正常なポンプのみを選択駆動して吸引動作を継続実施してもよい。
【0137】
また、上述した実施例2において、標準エアポンプ310の累積駆動時間と、増設エアポンプ320の累積駆動時間がほぼ等しくなるように、両ポンプの駆動を適宜に入れ替えてもよい。この場合、両方の累積駆動時間を揃えることによって、どちらか一方に駆動が偏らずに、一方のポンプが故障するまでの平均故障間隔を引き伸ばすことが可能になる。
【0138】
なお、本発明は、上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0139】
例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために全体を詳細に説明したものであり、本発明は必ずしも説明した全ての構成や全てのステップを備えるものに限定されない。
【0140】
また、本発明は、個々の構成(例えばセンサなどのパーツ)の種類に限定されるものではない。例えば、個々の構成を、均等な機能を有する別種類の構成に変更してもよい。
【0141】
また、実施形態の個々の要素を部分的に組み合わせてもよい。さらに、実施形態に対して、他の構成や他のステップを追加・置換をすることも可能である。また、実施形態に対して、一部の構成や一部のステップを削除してもよい。
【符号の説明】
【0142】
100...生体用吸引装置、100a...収納部分、100b...ロック部、100c...貫通孔、100d...電池蓋、110...吸引タンク、111...排出部、111a...弁部、111b...留め具、112...フィルタ、120...エア吸引部、121...エアポンプ、121a...ポンプ駆動回路、122...外気調整バルブ、122a...バルブ駆動回路、123...配管、130...制御部、131...ポンプ制御部、132...外気調整部、133...脈動判定部、134...粘稠対策部、135...閉塞判定部、136...閉塞対策部、137...第1センサ、138...第2センサ、140...圧力検出部、150...電力監視部、160...吸引スイッチ、170...音声/表示部、180...吸引ダイヤル、200...集積容器、300...エアポンプ、310...標準エアポンプ、310a...ポンプ駆動回路、311...エアコネクタ、311a...連結部、312...合流配管、320...増設エアポンプ、320a...ポンプ駆動回路、321...増設ロック部、322...増設配管、500...増設リール部、510...下部増設空間、510a...底蓋、510b...コード出口、530...コード、540...電源アダプタ、560...モバイルバッテリ、570...収納空間、A...吸引チューブ
【要約】
【課題】本発明は、生体用吸引装置において、吸引圧を細かく制御可能にすることを目的とする。
【解決手段】
生体用吸引装置は、吸引対象の生体内に挿置される吸引チューブに連通して負圧力を作用させる吸引タンクと、前記吸引タンクに吸引圧をかけるエア吸引部と、前記エア吸引部を電力制御する制御部とを備える。前記エア吸引部は、前記吸引タンクから空気を吸引するエアポンプと、前記吸引タンクに外気を流入させる外気調整バルブとを含む。前記制御部は、前記エアポンプの吸引電力を電力制御して、前記吸引タンクから空気を引くポンプ制御部と、前記外気調整バルブを一時的に開く電力制御によって、前記吸引タンクにかかる前記吸引圧を下方調整する外気調整部とを含む。
【選択図】
図1