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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
   H01H 71/02 20060101AFI20231128BHJP
   H02B 1/42 20060101ALI20231128BHJP
   H01H 73/06 20060101ALI20231128BHJP
   H01R 9/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H01H71/02
H02B1/42
H01H73/06 A
H01R9/00 B
H01R9/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020031191
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021136142
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢司
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-018685(JP,A)
【文献】特開2013-222609(JP,A)
【文献】特開平09-191189(JP,A)
【文献】特開2017-174699(JP,A)
【文献】特開2006-331986(JP,A)
【文献】特開2016-134338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 - 69/01
H01H 71/00 - 83/22
H01R 9/15 - 9/28
H02B 1/40 - 1/44
H05K 5/00 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が接続される水平面及び水平面と異なる方向に広がる垂直面を備えた負荷側端子板を複数備えた機器本体と、取り付け台への固定に用いられる固定部の移動時に操作される取り付けレバーを備えた電気機器であって、
取り付けレバーは、負荷側端子板の垂直面と対向する覆い部と、固定部と、を
備え、
取り付けレバーは、負荷側端子板の垂直面が延在する方向に移動することで固定部を取り付け台に固定する取り付け状態とされ、当該取り付け状態とした場合に、覆い部が、水平方向に並ぶ複数の負荷側端子板の垂直面の80%以上を覆うことが可能な電気機器。
【請求項2】
取り付けレバーは、負荷側端子板の垂直面に対応する位置に排気孔を備えた請求項1に記載の電気機器。
【請求項3】
取り付けレバーは、取り付けレバーの移動方向にガイド可能なガイド部を複数備えた請求項1又は2に記載の電気機器。
【請求項4】
第一のガイド部と、第一のガイドと取り付けレバーの移動方向にずれた位置にある第二のガイド部を備えた請求項3に記載の電気機器。
【請求項5】
機器本体は、二つの負荷側端子板の間に隔壁部を備え、
前記隔壁部に接することが可能なガイド部を取り付けレバーに備えた請求項3乃至4の何れかに記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部の移動時に操作される取り付けレバーを備えた電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の固定孔を備えた取り付け台を分電盤の背面側に設けることがある。特許文献1に記載されているように、このような取り付け台にブレーカなどの電気機器を固定する場合、電気機器に備えられた部品を摺動させて固定部を固定孔に差し込むことがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-018685号公報
【0004】
ところで、特許文献1に記載されている電気機器は、負荷側端子板が電気機器の下方側に露出している。このような構成とすることに関しては、製造上のメリットはあるが、電気機器の性能上は必要が無い。一方、この露出部分の面積が大きくならないようにしたいとの要望があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、電線が接続される水平面及び水平面と異なる方向に広がる垂直面を備えた負荷側端子板を機器本体の外面側に位置させた電気機器において、電気機器が取り付け台に取り付けられた状態では、負荷側端子板の露出を抑制できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、電線が接続される水平面及び水平面と異なる方向に広がる垂直面を備えた負荷側端子板を複数備えた機器本体と、取り付け台への固定に用いられる固定部の移動時に操作される取り付けレバーを備えた電気機器であって、取り付けレバーは、固定部を取り付け台に固定する取り付け状態とした場合に、水平方向に並ぶ複数の負荷側端子板の垂直面の80%以上を覆うことが可能な電気機器とする。
【0007】
また、取り付けレバーは、負荷側端子板の垂直面に対応する位置に排気孔を備えた構成とすることが好ましい。
【0008】
また、取り付けレバーは、取り付けレバーの移動方向にガイド可能なガイド部を複数備えた構成とすることが好ましい。
【0009】
また、第一のガイド部と、第一のガイドと前後方向にずれた位置にある第二のガイド部を備えた構成とすることが好ましい。
【0010】
また、機器本体は、二つの負荷側端子板の間に隔壁部を備え、前記隔壁部に接することが可能なガイド部を取り付けレバーに備えた構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、電線が接続される水平面及び水平面と異なる方向に広がる垂直面を備えた負荷側端子板を機器本体の外面側に位置させた電気機器において、電気機器が取り付け台に取り付けられた状態では、負荷側端子板の露出を抑制することが可能となり負荷側端子板に電線が触れたり、作業者の手が触れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態における電気機器の斜視図である。ただし、固定部を取り付け台に固定する取り付け状態である。
図2図1に示す電気機器の側面図である。ただし、固定部を取り付け台に固定する取り付け状態である。
図3図1に示す電気機器の分解斜視図である。
図4】実施形態における電気機器の斜視図である。ただし、固定部は取り付け台に固定していない解除状態である。
図5図4に示す電気機器の側面図である。ただし、固定部は取り付け台に固定していない解除状態である。
図6】実施形態における取り付けレバーの斜視図である。
図7】実施形態における取り付けレバーを図6とは異なる方向から見た斜視図である。
図8】電気機器を母線バーに取り付ける直前の、母線バーと、取り付け台と、電気機器を表した図である。
図9図1に示す電気機器を前側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に発明を実施するための形態を示す。図1乃至図5に示されていることから理解されるように、本実施形態の電気機器1は、電線が接続される水平面51及び水平面51と異なる方向に広がる垂直面52を備えた負荷側端子板50を複数備えた機器本体2と、取り付け台91への固定に用いられる固定部31の移動時に操作される取り付けレバー3を備えている。また、この取り付けレバー3は、固定部31を取り付け台91に固定する取り付け状態とした場合に、水平方向に並ぶ複数の負荷側端子板50の垂直面52の80%以上を覆うことが可能である。このため、電気機器1が取り付け台91に取り付けられた状態では、負荷側端子板50の露出を抑制することが可能となる。
【0014】
ここで、回路遮断器を例に挙げて電気機器1を説明する。ただし、図1に示すことから理解されるように、電源が電気機器1に接続される側を上側、負荷側端子板50が配置される側を下側とし、取り付け台91と対向する側が後側、その反対面側(ハンドル28が設けられている側)を前側とする。また、上下方向及び前後方向のいずれにも直交する方向を左右方向とする。なお、この上下方向及び左右方向により広がりが認識できる面の方向を水平方向とする。
【0015】
図1などに示す電気機器1は、電源側端子が母線バー93とプラグイン接続が可能な構造であり、負荷側の端子は端子ねじ29などを用いて配線を接続する構造である。電気機器1は、機器本体2と、取り付けレバー3を備えているが、図1から図3に示すことから理解されるように、実施形態の機器本体2は、主要な駆動部分を備えるベース部21とベース部21の組み合わせることで左右両側の外郭を構成する左右カバー22と、前側の外郭を構成する前カバー23を備えている。なお、左右カバー22には、取り付けレバー3の移動を規制可能な溝状の取り付けレバー保持部24を備えている。
【0016】
また、この機器本体2は、側面視略U字状の負荷側端子板50を備えている。この負荷側端子板50は、配線が直接的に接続される水平面51と、この水平面51となす角度が90度となるように延びる垂直面52と、垂直面52の水平面51とは異なる方から延びる腕部53を備えている。なお、この腕部53には、可動接点と接触可能な固定接点54を備えている。
【0017】
負荷側端子板50は、水平面51と垂直面52が機器本体2の外面に位置するようにベース部21に取り付けられる。水平面51は端子ねじ29などを利用して負荷側の配線と接続される部分であるが、垂直面52は直接的に配線などが接触することは期待されていない部分である。このため、本実施形態では、負荷側端子板50の垂直面52の大部分を隠すことができるような構成としている。
【0018】
実施形態では、取り付け台91への固定に用いられる固定部31の移動時に操作される取り付けレバー3を備えており、この取り付けレバー3を用いて、水平方向に並ぶ複数の負荷側端子板50の垂直面52の80%以上を覆うことができるようにしている。なお、通常、固定部31を取り付け台91に固定する取り付け状態とした後に、負荷側端子板50に配線が接続されるため、固定部31を取り付け台91に固定する取り付け状態とした場合に、水平方向に並ぶ複数の負荷側端子板50の垂直面52の80%以上を覆うことができればよい。ただし、固定部31を取り付け台91に固定する取り付け状態としていない場合であっても、水平方向に並ぶ複数の負荷側端子板50の垂直面52の80%以上を覆う構成とすれば、更に良い。なお、取り付けレバーが、水平方向に並ぶ複数の負荷側端子板の垂直面を覆う割合は90%以上であっても95%以上であっても良い。
【0019】
なお、水平方向に並ぶ複数の負荷側端子板50の垂直面52を覆うパーセンテージは、機器本体2の外周側で左右方向に並んでいる負荷側端子板50の垂直面52を水平方向(上下方向)に見た場合に、並んだ負荷側端子板50の全ての垂直面52の面積(取り付けレバー3が備えられていない機器本体2を下方から見た場合に認識される垂直面52の総面積)を分母として、これらすべての垂直面52のうち、水平方向から見て取り付けレバー3により覆われている部分の面積を分子とし、その値に100を掛けたものである。
【0020】
実施形態の取り付けレバー3は図1から図5に示すことから理解されるように、前後方向に移動できる。実施形態の取り付けレバー3には、図6及び図7に示すことから理解されるように、取り付け台91への固定に用いられる固定部31を備えている。この取り付けレバー3が後側に押し付けられた場合、図2に示すことから理解されるように、機器本体2から固定部31が突出する。一方、この取り付けレバー3が前側に引っ張られた場合、図5に示すことから理解されるように、機器本体2内に固定部31が収まる。
【0021】
図8に示すことから理解されるように、電気機器1を取り付ける取り付け台91には、取付穴92が設けられているため、取り付けレバー3を後側に押し付け、機器本体2から固定部31を突出させて取付穴92に差し込むことで、電気機器1を取り付け台91に固定することができる。
【0022】
実施形態の取り付けレバー3は、垂直面52と対向することになる平面状の覆い部32と固定部31が連結部33により連結されているが、この覆い部32には、下側に突出する突起部34を備えている。図1及び図6に示す例では、突起部34は、覆い部32の前側及び後側の双方に設けられている。この突起部34は作業者が指を引っ掛けることができるように突出している。後側の突起部34は取り付けレバー3を引っ張り上げる際の利便性を高めることができ、前側の突起部34は取り付けレバー3を押し下げる際の利便性を高めることができる。
【0023】
また、実施形態では、取り付けレバー3が引き上げられて、固定部31が機器本体2の内部に収まっている状態(図5参照)では、取り付けレバー3の端部が水平面51よりも前側に位置するため、水平視において水平面51と取り付けレバー3がオーバーラップする。一方、取り付けレバー3を押しつけて、機器本体2を取り付け台91に固定できる位置まで固定部31が突出する状態(図2参照)においては、取り付けレバー3の端部が水平面51よりも後側に位置するため、水平視において、取り付けレバー3の奥側に水平面51が視認できる。このようにすれば、固定部31を用いて電気機器1を取り付け台91に取り付けた場合は、通常通り、電線を水平面51に取り付けることができる。また、固定部31を用いて電気機器1を取り付け台91に取り付けていない場合は、取り付けレバー3の存在により、水平面51に電線を取り付けられないようにすることができる。
【0024】
ところで、取り付けレバー3の覆い部32の左右両端部には、上方向に突出する規制部35を備えている。この規制部35は負荷側端子板50側に向けて突出することになり、異物が左右方向から負荷側端子板50に向けて侵入することを抑制することができる。また、隣接する電気機器1の端子板との絶縁距離を長くすることができる。
【0025】
取り付けレバー3は前後方向に移動させるものであるが、実施形態の取り付けレバー3は、機器本体2と接することで取り付けレバー3の移動方向にガイド可能なガイド部を複数備えている。このため、左右方向に延びる覆い部32を備えた取り付けレバー3であっても、押圧時などに取り付けレバー3が傾きにくくなる。
【0026】
実施形態の取り付けレバー3は、図1及び図9に示すことから理解されるように、上側に突出するガイド部36aを備えている。図9に示すガイド部36aは、機器本体2に備えられた二つの負荷側端子板50の間に位置する隔壁部27に接することが可能なものである。このようにすると、ガイド部36aを覆い部32に設けても、電気機器1を大きくしなくても良い。
【0027】
また、実施形態では、隔壁部27に接することが可能なガイド部36aは、隔壁部27の両面側に位置することができるよう、左右方向に間隔をあけて二つ設けている。この二つのガイド部36aの距離は、隔壁部27の厚みと略同等としているため、取り付けレバー3の左右方向の揺れを高度に抑制できる。なお、ガイド部36aは一つでもよいし三つ以上としても良い。
【0028】
また、実施形態の取り付けレバー3は、覆い部32と固定部31を連結する連結部33が機器本体2と接することで取り付けレバー3の移動方向にガイド可能なガイド部36bとなる。実施形態では、連結部33の二本のアームがそれぞれ、機器本体2のベース部21と接することで取り付けレバー3の移動方向にガイド可能なガイド部36bとなるように構成されている。
【0029】
この連結部33のガイド部36bと、覆い部32に設けたガイド部36aは前後方向(取り付けレバー3の移動方向)にずれた位置にある。このように、第一のガイド部と、第一のガイドと前後方向にずれた位置にある第二のガイド部を備えた構成とすると、ガイドの安定性を上げることが可能となる。
【0030】
また、実施形態では、ガイド部36aと異なり、連結部33のガイド部36bは、それぞれ、機器本体2に挟まれるように構成されている。つまり、前側に位置するガイド部36aは、機器本体2を挟み込むように構成され、後側に位置するガイド部36bは機器本体2から挟み込まれる構成である。このように、機器本体2側に挟まれるガイド部と、機器本体2を挟むガイド部の双方を備えた構成とすることで、機器本体2と取り付けレバー3の位置関係を強固にできる。
【0031】
ところで、図3に示すことから理解されるように、負荷側端子板50の垂直面52の内側には、固定接点54が位置することになる。電気が流れている状態で固定接点54と可動接点が引き剥がされるとアークが生じるが、この際に発生するガスは、垂直面52の付近を通って機器本体2の外に出てくる。一方、その付近は取り付けレバー3に覆われることになる。そこで、実施形態の取り付けレバー3は、負荷側端子板50の垂直面52に対応する位置に排気孔39を備えた構成とした。このようにすれば、取り付けレバー3を介してガスを電気機器1の外側に放出することができる。なお、取り付けレバー3と垂直面52の間には隙間が設けられている。
【0032】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、電気機器は、ブレーカなどの回路遮断器で無くても良く、例えば端子台であっても良い。
【0033】
また、取り付けレバーは、常時、垂直面全体を覆っているものでも良い。
【0034】
また、実施形態では、一つの取り付けレバーで左右に並ぶ垂直面のいずれも覆うことができるものであるが、このような形態に限ることは無い。例えば、複数の取り付けレバーにより左右に並ぶ垂直面を覆うようにしても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 電気機器
2 機器本体
3 取り付けレバー
27 隔壁部
31 固定部
36a ガイド部
36b ガイド部
39 排気孔
50 負荷側端子板
51 水平面
52 垂直面
91 取り付け台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9