(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】ソイルセメント
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20231128BHJP
C04B 24/10 20060101ALI20231128BHJP
C04B 24/32 20060101ALI20231128BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20231128BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20231128BHJP
C09K 17/14 20060101ALI20231128BHJP
C09K 17/44 20060101ALI20231128BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20231128BHJP
C09K 17/48 20060101ALI20231128BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/10
C04B24/32 A
C04B24/12 A
C04B14/10 Z
C09K17/14 P
C09K17/44 P
C09K17/10 P
C09K17/48 P
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2021153078
(22)【出願日】2021-09-21
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】川上 博行
(72)【発明者】
【氏名】小原 陸
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184339(JP,A)
【文献】セメント系固化材による地盤改良マニュアル[第4版],日本,社団法人セメント協会,2012年10月10日,p. 47-49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分と、下記(B)成分と、水硬性粉体と、粘土鉱物を含む土壌と、水とを含有するソイルセメントであって、
(A)成分と(B)成分の合計含有量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の含有量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、ソイルセメント。
(A)成分:炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グリコシドの少なくとも1種
(B)成分:下記一般式(B11)で表される非イオン性界面活性剤、下記一般式(B12)で表される非イオン性界面活性剤及び下記一般式(B13)で表される非イオン性界面活性剤から選ばれる非イオン性界面活性剤であって、HLB値が2以上11以下である非イオン性界面活性剤の少なくとも1種
【化1】
〔式中、
R
11、R
31:それぞれ、炭素数8以上22以下のアルキル基、炭素数8以上22以下のアルケニル基、炭素数8以上22以下のアラルキル基、及び炭素数8以上22以下の置換アリール基から選ばれる基
R
21:炭素数7以上21以下のアルキル基、炭素数7以上21以下のアルケニル基、炭素数7以上21以下のアラルキル基、及び炭素数7以上21以下の置換アリール基から選ばれる基
R
22:炭素数2以上4以下のアルキレン基
X
1:炭素数1以上3以下のアルキル基、及び-R
22-OHで表される基から選ばれる基R
32、R
33:それぞれ、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
p1:3以上100以下の数
q1、r1:それぞれ、0以上の数であり、q1とr1の合計は、0.5以上100以下の数
である。〕
【請求項2】
(A)成分の含有量と、(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)が、0.05以上2.0以下である、請求項1に記載のソイルセメント。
【請求項3】
(A)成分と(B)成分の合計含有量と、粘土鉱物の含有量との質量比(粘土鉱物/((A)+(B)))が、2以上100以下である、請求項1又は2に記載のソイルセメント。
【請求項4】
下記(A)成分と、下記(B)成分と、水硬性粉体と、粘土鉱物を含む土壌と、水とを混合するソイルセメントの製造方法であって、
(A)成分と(B)成分の合計混合量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の混合量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、ソイルセメントの製造方法。
(A)成分:炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グリコシドの少なくとも1種
(B)成分:下記一般式(B11)で表される非イオン性界面活性剤、下記一般式(B12)で表される非イオン性界面活性剤及び下記一般式(B13)で表される非イオン性界面活性剤から選ばれる非イオン性界面活性剤であって、HLB値が2以上11以下である非イオン性界面活性剤の少なくとも1種
【化2】
〔式中、
R
11、R
31:それぞれ、炭素数8以上22以下のアルキル基、炭素数8以上22以下のアルケニル基、炭素数8以上22以下のアラルキル基、及び炭素数8以上22以下の置換アリール基から選ばれる基
R
21:炭素数7以上21以下のアルキル基、炭素数7以上21以下のアルケニル基、炭素数7以上21以下のアラルキル基、及び炭素数7以上21以下の置換アリール基から選ばれる基
R
22:炭素数2以上4以下のアルキレン基
X
1:炭素数1以上3以下のアルキル基、及び-R
22-OHで表される基から選ばれる基R
32、R
33:それぞれ、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
p1:3以上100以下の数
q1、r1:それぞれ、0以上の数であり、q1とr1の合計は、0.5以上100以下の数
である。〕
【請求項5】
(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体と、水と、粘土鉱物を混合してスラリーを調製してから、該スラリーと土壌を混合する、請求項4に記載のソイルセメントの製造方法。
【請求項6】
下記(A)成分と、下記(B)成分と、水硬性粉体と、水と、粘土鉱物を含む土壌とを含有する、地盤改良体であって、
(A)成分と(B)成分の合計含有量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の含有量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、地盤改良体。
(A)成分:炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グリコシドの少なくとも1種
(B)成分:下記一般式(B11)で表される非イオン性界面活性剤、下記一般式(B12)で表される非イオン性界面活性剤及び下記一般式(B13)で表される非イオン性界面活性剤から選ばれる非イオン性界面活性剤であって、HLB値が2以上11以下である非イオン性界面活性剤の少なくとも1種
【化3】
〔式中、
R
11、R
31:それぞれ、炭素数8以上22以下のアルキル基、炭素数8以上22以下のアルケニル基、炭素数8以上22以下のアラルキル基、及び炭素数8以上22以下の置換アリール基から選ばれる基
R
21:炭素数7以上21以下のアルキル基、炭素数7以上21以下のアルケニル基、炭素数7以上21以下のアラルキル基、及び炭素数7以上21以下の置換アリール基から選ばれる基
R
22:炭素数2以上4以下のアルキレン基
X
1:炭素数1以上3以下のアルキル基、及び-R
22-OHで表される基から選ばれる基R
32、R
33:それぞれ、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
p1:3以上100以下の数
q1、r1:それぞれ、0以上の数であり、q1とr1の合計は、0.5以上100以下の数
である。〕
【請求項7】
下記(A)成分と、下記(B)成分と、水硬性粉体と、粘土鉱物を含む土壌と、水とを混合する、地盤の改良工法であって、
(A)成分と(B)成分の合計混合量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の混合量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、地盤の改良工法。
(A)成分:炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グリコシドの少なくとも1種
(B)成分:下記一般式(B11)で表される非イオン性界面活性剤、下記一般式(B12)で表される非イオン性界面活性剤及び下記一般式(B13)で表される非イオン性界面活性剤から選ばれる非イオン性界面活性剤であって、HLB値が2以上11以下である非イオン性界面活性剤の少なくとも1種
【化4】
〔式中、
R
11、R
31:それぞれ、炭素数8以上22以下のアルキル基、炭素数8以上22以下のアルケニル基、炭素数8以上22以下のアラルキル基、及び炭素数8以上22以下の置換アリール基から選ばれる基
R
21:炭素数7以上21以下のアルキル基、炭素数7以上21以下のアルケニル基、炭素数7以上21以下のアラルキル基、及び炭素数7以上21以下の置換アリール基から選ばれる基
R
22:炭素数2以上4以下のアルキレン基
X
1:炭素数1以上3以下のアルキル基、及び-R
22-OHで表される基から選ばれる基R
32、R
33:それぞれ、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
p1:3以上100以下の数
q1、r1:それぞれ、0以上の数であり、q1とr1の合計は、0.5以上100以下の数
である。〕
【請求項8】
(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体と、水と、粘土鉱物を混合してスラリーを調製してから、該スラリーと土壌を混合する、請求項7に記載の地盤の改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメント、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソイルセメントとは、土にセメント系固化材あるいはこれに水を加えて混合したものである。このソイルセメントを利用する工法としては、地盤改良工法、山留め工法、基礎杭工法、埋め戻し工法などがある。これらの工法では通常、セメント系固化材と水とを事前に混合したセメントミルクを土に添加する。上記セメント系固化材としては、普通ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメント、およびポルトランドセメントと高炉スラグ、石灰石粉、フライアッシュ、シリカ微粉末、炭酸カルシウム、石膏などを混合して得られる混合セメントなどが用いられる。この固化材および水の添加量は、ソイルセメントの造成対象となる土の物性、例えば、砂・シルト・粘土などの土質や、その含水状態などや、施工形態および施工目的などに応じて決定される。
【0003】
基礎杭工法は場所打ち杭工法と既製杭工法に大別される。場所打ち杭工法とは、現場で組んだ円筒状の鉄筋を掘削した地盤の中に落とし込み、後から生コンクリートを穴の中に流し込み、固めて杭を形成する工法である。一方既製杭工法とは、既製のコンクリート杭や鋼管杭を地中に埋め込む工法であり、打ち込み杭工法と埋め込み杭工法に分けられる。打ち込み杭工法は杭を直接叩き込むことで埋設するため、騒音量が大きくなる傾向にあることから、国内では埋め込み杭工法が広く適用されている。
【0004】
特許文献1には、(A)特定の(ポリ)グリコシドの少なくとも1種と、(B1)特定の式で表される非イオン性界面活性剤の少なくとも1種とを含有する、流動性に優れた水硬性組成物が得られる水硬性組成物用分散剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
埋め込み杭工法では地中に埋め込んだ杭の支持力を強固にするために、杭先端に根固め液と呼ばれるセメントミルクを注入する。根固め部には強度を保持するために水/水硬性粉体比が比較的小さなソイルセメントが形成されるが、根固め部でソイルセメントの水和発熱による温度上昇により温度ひび割れが発生すると杭の支持力が低下してしまう。
また温度ひび割れを防止する方法としては、ソイルセメントの温度上昇量を低く抑えること、放熱条件を良くすることが考えられる。ソイルセメントの温度上昇を抑制するため、セメントの水和反応を遅延させるカルボン酸塩やグルコン酸塩あるいはケイフッ化物などの超遅延剤をソイルセメントに添加することが考えられるが、この方法では、ソイルセメントの水和時間を遅延する効果、すなわち凝結時間が伸びる効果が得られるだけで、最終的な温度上昇量や上昇速度は何も添加しないソイルセメントと同等か若干小さくなるだけで効果はあまり期待できない。
【0007】
本発明は、水硬性粉体と水を接触した際の水和発熱による温度上昇を抑制し、且つ凝結時間の遅延を抑制する、ソイルセメント、及びその製造方法、並びに地盤改良体、地盤の改良方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記(A)成分と、下記(B)成分と、水硬性粉体と、粘土鉱物を含む土壌と、水とを含有するソイルセメントであって、
(A)成分と(B)成分の合計含有量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の含有量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、ソイルセメントに関する。
(A)成分:炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グリコシドの少なくとも1種
(B)成分:下記一般式(B11)で表される非イオン性界面活性剤、下記一般式(B12)で表される非イオン性界面活性剤及び下記一般式(B13)で表される非イオン性界面活性剤から選ばれる非イオン性界面活性剤の少なくとも1種
【0009】
【0010】
〔式中、
R11、R31:それぞれ、炭素数8以上22以下のアルキル基、炭素数8以上22以下のアルケニル基、炭素数8以上22以下のアラルキル基、及び炭素数8以上22以下の置換アリール基から選ばれる基
R21:炭素数7以上21以下のアルキル基、炭素数7以上21以下のアルケニル基、炭素数7以上21以下のアラルキル基、及び炭素数7以上21以下の置換アリール基から選ばれる基
R22:炭素数2以上4以下のアルキレン基
X1:炭素数1以上3以下のアルキル基、及び-R22-OHで表される基から選ばれる基R32、R33:それぞれ、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
p1:3以上100以下の数
q1、r1:それぞれ、0以上の数であり、q1とr1の合計は、0.5以上100以下の数
である。〕
【0011】
また本発明は、前記(A)成分と、前記(B)成分と、水硬性粉体と、粘土鉱物を含む土壌と、水とを混合するソイルセメントの製造方法であって、
(A)成分と(B)成分の合計混合量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の混合量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、ソイルセメントの製造方法に関する。
【0012】
また本発明は、前記(A)成分と、前記(B)成分と、水硬性粉体と、水と、粘土鉱物を含む土壌とを含有する、地盤改良体であって、
(A)成分と(B)成分の合計含有量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の含有量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、地盤改良体に関する。
【0013】
また本発明は、前記(A)成分と、前記(B)成分と、水硬性粉体と、粘土鉱物を含む土壌と、水とを混合する、地盤の改良工法であって、
(A)成分と(B)成分の合計混合量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の混合量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、地盤の改良工法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水硬性粉体と水を接触した際の水和発熱による温度上昇を抑制し、且つ凝結時間の遅延を抑制する、ソイルセメント、及びその製造方法並びに地盤改良体、地盤の改良方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例でのセメントの水和発熱による断熱温度上昇量の測定方法を示した模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の効果発現機構の詳細は不明であるが、以下のように推定される。一般的に、糖などのポリオールはセメント粒子に吸着する性質を持っている事から、(A)成分の(ポリ)グリコシドはセメント粒子表面に吸着することが推察される。また、(B)成分の非イオン性界面活性剤は、所定のHLBを有していることにより、親油性が高まり、(A)成分のアルキル基又はアルケニル基に配位し、セメント粒子表面に油膜が形成されるものと推察される。この油膜がセメント粒子と水との接触を妨げることによって、セメントの水和発熱が抑制されると考えられる。一方、(A)成分がセメント粒子から溶出するカルシウムイオンをキレートし、カルシウムシリケート水和物(C-S-H)の核成長を阻害することで、セメントミルクの凝結が遅延すると考えられる。そこに粘土鉱物が共存すると、粘土の層間にカルシウムイオンが取り込まれ、(A)成分のキレート作用からカルシウムイオンが保護されることで、凝結遅延が抑制されると考えられる。
【0017】
〔ソイルセメント及びその製造方法〕
本発明は、(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体と、粘土鉱物を含む土壌と、水とを含有するソイルセメントであって、
(A)成分と(B)成分の合計含有量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の含有量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、ソイルセメントに関する。
【0018】
<(A)成分>
(A)成分は、炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グリコシドの少なくとも1種である。
【0019】
(A)成分のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、(B)成分との会合体の形成しやすさ、および水溶性の観点から、8以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下である。
【0020】
(A)成分は、炭素数8以上20以下のアルキル基を有するものが好ましい。
【0021】
(A)成分の糖縮合度は、水溶性の観点から、1以上、そして、5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である。
【0022】
(A)成分を構成する糖としては、具体的にはグルコース、マルトース、スクロースが挙げられる。(A)成分は、炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グルコシドの少なくとも1種が好ましく、炭素数8以上20以下のアルキル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グルコシドの少なくとも1種が好ましい。
【0023】
<(B)成分>
(B)成分は、前記一般式(B11)で表される非イオン性界面活性剤〔以下、(B11)成分という〕、前記一般式(B12)で表される非イオン性界面活性剤〔以下、(B12)成分という〕及び前記一般式(B13)で表される非イオン性界面活性剤〔以下、(B13)成分という〕から選ばれる非イオン性界面活性剤であって、HLB値が2以上11以下である非イオン性界面活性剤の少なくとも1種である。
【0024】
(B)成分のHLBは、ソイルセメントの水和発熱抑制の観点から、2以上、好ましくは2.5以上、より好ましくは3以上、そして、11以下、好ましくは11未満、より好ましくは10以下、更に好ましくは9以下、より更に好ましくは7以下である。
ここで、HLBとは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、化合物が親水性か親油性かを知る指標となるものである。一般的な非イオン性界面活性剤では、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。
【0025】
本発明において、(B11)、(B12)、(B13)成分のHLBは、グリフィン法で算出された値である。グリフィン法によるHLBは、下記式より算出される。
HLB=20×親水部の式量の総和/分子量
【0026】
また、(B)成分は、2種以上の非イオン性界面活性剤を用いる場合、その組成で混合した混合物のHLBが前記所定の範囲にあればよい。
なお、2種以上の非イオン性界面活性剤を用いる場合、HLBは各非イオン性界面活性剤のHLBと重量比率との加重平均値として算出する。
【0027】
一般式(B11)中、R11は、好ましくは炭素数8以上22以下のアルキル基、炭素数8以上22以下のアルケニル基、及び炭素数8以上22以下の置換アリール基から選ばれる基であり、より好ましくは炭素数8以上22以下のアルキル基から選ばれる基である。炭素数8以上22以下のアルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。炭素数8以上22以下のアルケニル基の炭素数は、好ましくは10以上、そして、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下である。炭素数8以上22以下の置換アリール基の炭素数は、好ましくは14以上、そして、好ましくは22以下である。置換アリール基としては、モノベンジルフェニル基、ジベンジルフェニル基、モノスチレン化フェニル基、ジスチレン化フェニル基のような炭素数8以上16以下のアラルキル基で置換された置換アリール基、オクチルフェニル基、及びノニルフェニル基のような炭素数8以上12以下のアルキル基で置換されたフェニル基が挙げられる。
一般式(B11)中、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基である。AOは、炭素数2又は3のアルキレンオキシ基、更に炭素数2のアルキレンオキシ基を含むことが好ましい。
一般式(B11)中、p1は、AOの平均付加モル数であり、水溶性およびソイルセメントの流動性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、そして、好ましくは50以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは45以下、より更に好ましくは20以下、より更に好ましくは4.5以下、より更に好ましくは3以下である。
【0028】
一般式(B12)中、R21は、好ましくは炭素数7以上21以下のアルキル基から選ばれる基である。炭素数7以上21以下のアルキル基の炭素数は、7以上、そして、好ましくは17以下である。
一般式(B12)中、R22は、好ましくは炭素数2のアルキレン基である。
一般式(B12)中、X1のうち、炭素数1以上3以下のアルキル基は、炭素数1のアルキル基が好ましい。また、-R22-OHで表される基は、R22が炭素数2のアルキレン基であるものが好ましい。X1は、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましい。
【0029】
一般式(B13)中、R31は、好ましくは炭素数8以上22以下のアルキル基から選ばれる基である。炭素数8以上22以下のアルキル基の炭素数は、好ましくは10以上、そして、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
一般式(B13)中、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基である。AOは、炭素数2又は3のアルキレンオキシ基、更に炭素数2のアルキレンオキシ基を含むことが好ましい。
一般式(B13)中、q1、r1は、それぞれ、0以上の数であり、q1とr1の合計は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、そして、好ましくは6以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは3.5以下、より更に好ましくは3.0以下、より更に好ましくは2.5以下である。
【0030】
(B1)成分は、ソイルセメントの断熱温度上昇抑制の観点から、好ましくは(B12)成分及び(B13)成分から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは(B12)成分から選ばれる少なくとも1種である。
【0031】
<組成、任意成分等>
本発明のソイルセメントは、(A)成分の含有量が、水硬性粉体100質量部に対して、ソイルセメントの断熱温度上昇抑制の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.04質量部以上、更に好ましくは0.07質量部以上、更に好ましくは0.10質量部以上、そして、ソイルセメントの水和反応遅延性の観点から、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.3質量部以下、より更に好ましくは0.2質量部以下である。
【0032】
本発明のソイルセメントは、(B)成分の含有量が、水硬性粉体100質量部に対して、ソイルセメントの断熱温度上昇抑制の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、そして、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.6質量部以下、より更に好ましくは0.4質量部以下である。
【0033】
本発明のソイルセメントは、(A)成分と(B)成分の合計含有量が、水硬性粉体100質量部に対して、ソイルセメントの断熱温度上昇抑制の観点から、0.05質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.15質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上、より更に好ましくは0.3質量部以上、そして、ソイルセメントの水和反応遅延性の観点から、4.0質量部以下、好ましくは2.0質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.7質量部以下、より更に好ましくは0.5質量部以下である。
【0034】
本発明のソイルセメントにおいて、(A)成分の含有量と、(B)成分の含有量との質量比(A)/(B)は、ソイルセメントの断熱温度上昇抑制の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.13以上、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.4以下である。
【0035】
本発明のソイルセメントは、水硬性粉体を含有する。水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸塩セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどのポソラン作用及び/又は潜在水硬性を有する粉体や、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。ここで、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する質量部や質量比などにおいても同様である。
【0036】
本発明のソイルセメントは、粘土鉱物を含む土壌を含有する。土壌としては、砂、シルト、粘土等が挙げられる。これらは施工現場で発生する発生土を用いることができる。また、本発明のソイルセメントの土壌以外の成分を含む組成物を、地盤改良等の目的で高圧ジェット噴流体として地盤等に注入した際に、地盤中の土を噴流体に巻き込むことによって、ソイルセメントを製造して良い。本発明のソイルセメントは、例えばトンネル工事における流動化処理土、すなわちインバートモルタル等として用いることができる。
【0037】
粘土鉱物としては、カオリン(カオリナイト、ディッカイト、ナクライトなど)、蛇紋石(リザーダイト、アンチゴライト、クリソタイルなど)、雲母粘土鉱物(イライト、セリサイト、海緑石、セラドナイトなど)、クロライト、バーミキュライト、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトなど)などが挙げられる。土壌が含む粘土の種類、量などは多様であるが、本発明では、例えば、モンモリロナイト及びカオリナイトから選ばれる粘土鉱物を含む土壌を対象とすることができる。
【0038】
本発明のソイルセメントは、土壌の含有量が、水硬性粉体100質量部に対して、ソイルセメントの凝結遅延性の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、そして、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。
【0039】
本発明のソイルセメントは、粘土鉱物の含有量が、水硬性粉体100質量部に対して、ソイルセメントの凝結遅延性の観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは7質量部以上、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは13質量部以下、より更に好ましくは10質量部以下である。
【0040】
本発明のソイルセメントは、水/水硬性粉体比が、ソイルセメントの圧縮強度の観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、そして、好ましくは200%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは80%以下である。ここで、水/水硬性粉体は、ソイルセメント中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)であり、水/水硬性粉体×100で算出される。水/水硬性粉体比はW/Pで標記される場合があり、水硬性粉体がセメントである場合は、W/Cで表記される場合がある。
【0041】
本発明のソイルセメントにおいて、(A)成分と(B)成分の合計含有量と、粘土鉱物の含有量との質量比(粘土鉱物/((A)+(B)))が、ソイルセメントの凝結遅延性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは8以上、より更に好ましくは15以上、より更に好ましくは20以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは40以下、より更に好ましくは35以下である。
【0042】
本発明のソイルセメントは、更に、(C)消泡剤〔以下、(C)成分という〕を含有することができる。ただし、(A)成分及び(B)成分は、(C)成分からは除かれる。
【0043】
(C)成分としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、エーテル系消泡剤、ポリアルキレンオキシド系消泡剤、アルキルリン酸エステル系消泡剤、及びアセチレングリコール系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が挙げられる。
(C)成分としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、及びエーテル系消泡剤から選ばれる1種以上の消泡剤が好ましい。
シリコーン系消泡剤は、ジメチルポリシロキサンが好ましい。
脂肪酸エステル系消泡剤は、非水溶性のポリアルキレングリコール脂肪酸エステルが好ましい。
エーテル系消泡剤は、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルが好ましい。
ポリアルキレンオキシド系消泡剤は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体が好ましい。
アルキルリン酸系消泡剤では、リン酸トリブチル、リン酸イソトリブチル、ナトリウムオクチルホスフェートが好ましい。
アセチレングリコール系消泡剤では2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール又はそのアルキレンオキシド付加物が好ましい。
【0044】
(C)成分としては、ソイルセメントの強度低下を抑制できる観点から、脂肪酸エステル系消泡剤が好ましい。
【0045】
シリコーン系消泡剤は、水と相溶性のある乳化タイプが好ましい。水と相溶性のある乳化タイプのシリコーン系消泡剤の市販品としては、KM-70、KM-73A〔いずれも信越シリコーン(株)〕、TSAシリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)、FSアンチフォームシリーズ〔東レ・ダウコーニング(株)〕、アンチフォームE-20〔花王(株)〕等が挙げられる。
【0046】
脂肪酸エステル系消泡剤であるポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの市販品としては、レオドールTW-L120〔花王(株)〕、ニコフィックス、フォームレックス〔いずれも日華化学(株)〕等が挙げられる。
【0047】
エーテル系消泡剤であるポリアルキレングリコールアルキルエーテルの市販品としては、消泡剤No.1、消泡剤No.5、消泡剤No.8〔いずれも花王(株)〕や、SNデフォーマー15-P、フォーマスターPC〔いずれもサンノプコ(株)〕等が挙げられる。
【0048】
ポリアルキレンオキシド系消泡剤のうちポリエチレンオキシドポリプロピレンオキシドのブロック共重合体の市販品としては、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマー、例えばPLURONIC(商標)製品〔BASF社〕等が挙げられる。
【0049】
アセチレングリコール系消泡剤の市販品としては、SURFYNOL(商標)400シリーズ〔エアープロダクツアンドケミカルズ社〕等が挙げられる。
【0050】
本発明のソイルセメントは、(C)成分を含有する場合、その含有量が、水硬性粉体100質量部に対して、ソイルセメントの消泡性の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0051】
本発明のソイルセメントは、更に、(D)分散剤〔以下、(D)成分という〕を含有することができる。分散剤は、リグニンスルホン酸系重合体、ポリカルボン酸系重合体、ナフタレン系重合体、メラミン系重合体、及びフェノール系重合体から選ばれる1種以上の分散剤が挙げられ、分散性の観点から、好ましくはポリカルボン酸系共重合体、リグニンスルホン酸系共重合体、及びナフタレンスルホン酸系共重合体から選ばれる1種以上の分散剤であり、より好ましくはリグニンスルホン酸系重合体、及びポリカルボン酸系重合体から選ばれる1種以上の分散剤である。
【0052】
ナフタレン系重合体としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製マイテイ150等)、メラミン系重合体としてはメラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物(例えば花王株式会社製マイテイ150-V2)、フェノール系重合体としては、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(特開昭49-104919号公報に記載の化合物等)、リグニンスルホン酸系重合体としてはリグニンスルホン酸塩(BASF社製ポゾリスNo.70、ボレガード社製ウルトラジンNA、日本製紙ケミカル株式会社製サンエキス、バニレックス、パールレックス等)等を用いることができる。
【0053】
ポリカルボン酸系共重合体としては、(メタ)アクリル酸の重合体、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体(例えば特開平8-12397号公報に記載の化合物等)、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールとマレイン酸等のジカルボン酸との共重合体等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるカルボン酸の意味である。
【0054】
本発明のソイルセメントは、(D)成分を含有する場合、その含有量が、水硬性粉体100質量部に対して、作業性の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0055】
本発明のソイルセメントは、更にその他の成分を含有することもできる。例えば、AE剤、遅延剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、流動化剤等(但し、(A)成分~(D)成分に該当するものは除く)が挙げられる。
【0056】
本発明は、(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体と、粘土鉱物を含む土壌と、水とを混合するソイルセメントの製造方法であって、
(A)成分と(B)成分の合計混合量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の混合量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、ソイルセメントの製造方法を提供する。
【0057】
本発明のソイルセメントの製造方法は、更に(C)成分を混合することができる。
本発明のソイルセメントの製造方法は、更に(D)成分を混合することができる。
本発明のソイルセメントの製造方法は、本発明のソイルセメントで記載した態様を適宜適用することができる。
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分は、本発明のソイルセメントで記載した態様と同じである。
本発明のソイルセメントの製造方法において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、水硬性粉体、及び粘土鉱物を含む土壌の混合量、並びに各種質量比は、本発明のソイルセメントで記載の各成分の含有量を混合量に置き換えて適用することができる。
【0058】
本発明のソイルセメントの製造方法は、予め(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体と、水と、粘土鉱物を混合してスラリーを調製してから、該スラリーと土壌を混合して製造することができる。
また本発明のソイルセメントの製造方法は、予め(A)成分と、(B)成分と、任意に(C)成分と、任意に(D)成分と、水硬性粉体と、水と、粘土鉱物を混合してスラリーを調製してから、該スラリーと土壌を混合して製造することができる。
【0059】
本発明は、(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体と、水と、粘土鉱物を含む土壌とを含有する地盤改良体であって、
(A)成分と(B)成分の合計含有量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の含有量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、地盤改良体を提供する。
【0060】
本発明の地盤改良体は、更に(C)成分を含有することができる。
本発明の地盤改良体は、更に(D)成分を含有することができる。
本発明の地盤改良体は、本発明のソイルセメント及びその製造方法で記載した態様を適宜適用することができる。
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分は、本発明のソイルセメントで記載した態様と同じである。
本発明の地盤改良体において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、水硬性粉体、及び粘土鉱物を含む土壌の含有量、並びに各種質量比は、本発明のソイルセメントと同じである。
【0061】
本発明は、(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体と、粘土鉱物を含む土壌と、水とを混合する、地盤の改良工法であって、
(A)成分と(B)成分の合計混合量が水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下であり、粘土鉱物の混合量が水硬性粉体100質量部に対して1質量部以上20質量部以下である、地盤の改良工法を提供する。
【0062】
本発明の地盤の改良工法は、更に(C)成分を混合することができる。
本発明の地盤の改良工法は、更に(D)成分を混合することができる。
本発明の地盤の改良工法は、本発明のソイルセメント、及びその製造方法、並びに地盤改良体で記載した態様を適宜適用することができる。
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分は、本発明のソイルセメントで記載した態様と同じである。
本発明の地盤の改良工法において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、水硬性粉体、及び粘土鉱物を含む土壌の混合量、並びに各種質量比は、本発明のソイルセメントで記載の各成分の含有量を混合量に置き換えて適用することができる。
【0063】
本発明の地盤の改良工法は、予め(A)成分と、(B)成分と、水硬性粉体と、水と、粘土鉱物を混合してスラリーを調製してから、該スラリーと土壌を混合することができる。
また本発明の地盤の改良工法は、予め(A)成分と、(B)成分と、任意に(C)成分と、任意に(D)成分と、水硬性粉体と、水と、粘土鉱物を混合してスラリーを調製してから、該スラリーと土壌を混合することができる。
【0064】
本発明の地盤の改良工法では、前記スラリーと土壌とを、体積比(前記スラリー)/(土壌)が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、そして、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下で混合する。
【0065】
ソイルセメントの製造方法又は地盤の改良工法は、例えば、本発明の(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分、及び水を含有する混練水と水硬性粉体と粘土鉱物とを混合してスラリーを得る工程と、該スラリーと土壌とを混合する工程とを含むものが挙げられる。スラリーを得る工程として、使用されるミキサーは均一に混合されるものであれば特に限定されるものではないが、一般的に機械撹拌翼で撹拌するタイプのものが多く使用されている。このミキサー等に撹拌しながら、本発明の(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分、水、水硬性粉体、粘土鉱物を投入し、例えば1分以上10分以下、混練することによりスラリーが得られる。本発明の(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分は、水と予め混合して混練水として用いるか、セメントミルク製造後にセメントミルクに添加して使用することが好ましい。この製造方法では、(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分、粘土鉱物、土壌、水、水硬性粉体は、本発明のソイルセメントで述べた量的関係を満たすように用いることができる。
本発明は、水硬性粉体、水、及び本発明の添加剤を含有する地盤改良用スラリーを提供する。すなわち、水硬性粉体、水、(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分を含有する地盤改良用スラリーを提供する。
また本発明は、水硬性粉体、粘土鉱物、水、及び本発明の添加剤を含有する地盤改良用スラリーを提供する。すなわち、水硬性粉体、粘土鉱物、水、(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分を含有する地盤改良用スラリーを提供する。
これらにおける(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分には、前記した(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分の態様から選択される1又はそれ以上の態様が適用できる。これらのスラリーは、前記のソイルセメントの製造方法に好適に用いられる。また、以下で述べるスラリーは、本発明の地盤改良用スラリーであってよい。
【0066】
次いで、スラリーと土壌とを混合する工程として、具体的に撹拌混合メカニズムから分類すると、(1)CDM工法に代表される調製されたスラリーを地中で吐出しながら機械撹拌翼で撹拌する工法、(2)噴射撹拌工法に代表される調製されたスラリーを高圧ジェット噴流体として地中に送り、周囲の土砂を削り取り撹拌する工法、(3)地中連続壁工法における多軸式オーガー、例えばSMW工法などや鉛直撹拌横曳式、例えばTRD工法など、など、調製されたスラリーを吐出して原位置の土壌と撹拌・混合する工法などが挙げられ、これら工法によりソイルセメントが製造される。
【0067】
ソイルセメントを造成する方法又は地盤の改良工法の一例として、水硬性粉体と粘土鉱物を、水硬性粉体の質量の好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、そして、好ましくは200%以下、より好ましくは150%以下の混練水(本発明の(A)成分、(B)成分、任意に(C)成分、任意に(D)成分を含む)に混合してスラリーを調製し、このスラリーを改良すべき地盤中に、改良対象土の容積の0.1倍以上1.5倍以下の容積をもって打設・混合し、硬化させる方法が挙げられる。
【0068】
この方法において、スラリー中の混練水の量が、水硬性粉体の質量の50%以上であれば、得られるスラリーの粘性が低減されポンプ圧送が容易となりワーカビリティも良好となり、また前記混練水の質量が200%以下であれば、材料分離が抑制され、改良土の強度低下やバラツキも低減される。
【0069】
またこの方法において、スラリーの打設量が、改良対象土の容量の0.1倍以上であると、スラリーと改良対象土の混合が適正となり、品質も良好となる。
【0070】
また、掘削土を流動化し、埋め戻す工法においても、本発明の水硬性粉体と混練水との混合量、スラリーと改良対象土の混合量は、上記と同様に行うことができる。
【実施例】
【0071】
(A)成分、(B)成分として以下のものを用いた。
【0072】
<(A)成分>
・アルキルポリグリコシド:アルキル鎖の炭素数8から16、アルキル鎖の平均炭素数10、糖縮合度1.1、グルコースの高級アルコール付加物
【0073】
<(B)成分>
・ヤシ油脂肪酸メチルエタノールアミド:脂肪酸の炭素数が8から18の脂肪酸メチルエタノールアミド、HLB3.3
・ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル:オキシエチレン基の平均付加モル数1、かっこ内の数字はエチレンオキシド平均付加モル数である、HLB5.2
・ポリオキシエチレン(2)ラウリルアミン:オキシエチレン基の平均付加モル数2、HLB6.3
【0074】
ソイルセメントの調製
まず、セメントミルクを次の手順で調製した。表1の(A)成分、(B)成分と水とを混合して添加剤水溶液を調製し、500mlプラスチックカップ(500mLディスポカップ、ニッコー・ハンセン株式会社)内でセメントと混合し、ハンドミキサーにて1分間混練してセメントミルクを調製した。
添加剤水溶液を調製するための水は上水道水を用いた。またセメントは、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)を用いた。セメントと添加剤水溶液は、添加剤水溶液/セメントの質量比が60質量%となるように用いた。添加剤水溶液/セメントの質量比は、実質的に水/セメント比(W/C)に相当する。
(A)成分、(B)成分は、水硬性粉体100質量部に対する添加量が表1の通りとなるように用いた。
その後、別の500mlプラスチックカップ内に、土壌として粘土(笠岡粘土)と、セメントミルクとを投入し、ハンドミキサーにて30秒撹拌してソイルセメントを調製した。
粘土は、水硬性粉体100質量部に対する添加量が表1の通りとなるように用いた。
【0075】
凝結時間の測定
調製した表1の各ソイルセメント20gを、定温カロリメーター(TAM Air、TA instrument製)に設置し、20℃一定の条件で水和発熱量の経時変化を測定した。発熱量が最高値に至った時点を凝結時間の指標と定義し、各ソイルセメントの凝結時間を測定した。結果を表1に示した。
【0076】
(3)ソイルセメントの水和発熱による断熱温度上昇量の評価
調製した各ソイルセメントを容量1Lのポリプロピレン製ディスポーサルカップに充填し、ソイルセメント中心部へ熱電対を挿入した後に、カップを1Lのデュワー瓶内に装填し、コルク栓で密閉した。デュワー瓶はポリスチレン製発泡ビーズで充填した発泡スチロール容器(厚み140mm)内に静置し、モルタルの温度変化をデータロガーで経時測定した。この測定方法の模式図を
図1に示す。
水硬性粉体の接水時の温度から最高温度到達までの温度上昇量を断熱温度上昇量とした。結果を表1に示した。また表1では、比較例1を基準に、各実施例、比較例の断熱温度上昇量の差を示した。断熱温度上昇量の差が正の数で且つ大きいほど、水硬性粉体の水和発熱による温度上昇の抑制に優れていることがいえる。
【0077】