(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】電子素子実装用母基板、電子素子実装用基板、および電子装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20231128BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20231128BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20231128BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20231128BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H01L23/02 F
H01L23/12 C
H01L23/28 D
H05K1/02 G
H05K3/00 J
H05K3/00 X
(21)【出願番号】P 2018013578
(22)【出願日】2018-01-30
【審査請求日】2020-08-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】足柄 志保
(72)【発明者】
【氏名】濱上 雅和
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】棚田 一也
【審判官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-179523(JP,A)
【文献】特開2008-135524(JP,A)
【文献】特開平11-312851(JP,A)
【文献】特開2007-335732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/54
H01L 23/00-23/04
H01L 23/06-23/31
H05K 1/00- 1/02
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、
前記上面に位置し、電子素子が実装される実装領域と、
前記上面に前記実装領域を囲んで、前記上面の端部に位置した凹部と、
前記凹部に位置した第1膜と、
前記上面に平面視で前記実装領域に隣接して位置した電極パッドと、を有した基板を備えており、
前記第1膜および前記電極パッドは、同一平面上に位置しており、
前記第1膜は、平面視で前記基板の外辺と接する
第1縁部と、前記第1縁部以外の第2縁部と、を有しており、前記第2縁部は、一部が前記凹部の周縁に接しているかまたは前記凹部の周縁から完全に離間していることを特徴とする電子素子実装用基板。
【請求項2】
上面に電子素子が実装される実装領域と、
前記上面に前記実装領域を囲んで、前記上面の端部に位置した凹部と、
前記凹部に位置した第1膜と、を有した基板を備えており、
前記第1膜および前記実装領域は、同一平面上に位置しており、
前記第1膜は、平面視で前記基板の外辺と接する
第1縁部と、前記第1縁部以外の第2縁部と、を有しており、前記第2縁部は、一部が前記凹部の周縁に接しているかまたは前記凹部の周縁から完全に離間していることを特徴とする電子素子実装用基板。
【請求項3】
上面に電子素子が実装される実装領域を有する連続した複数の基板領域と、
前記基板領域のそれぞれの上面に前記実装領域を囲んで、前記基板領域の上面の端部に位置した凹部と、
前記凹部に位置した第1膜と、
前記基板領域に平面視で前記実装領域に隣接して位置した電極パッドと、
を備えており、
前記第1膜および前記電極パッドは、同一平面上に位置しており、
前記第1膜は、平面視で前記複数の基板領域同士の境界と重なる
第1縁部と、前記第1縁部以外の第2縁部と、を有しており、前記第2縁部は、一部が前記凹部の周縁に接しているかまたは前記凹部の周縁から完全に離間していることを特徴とする電子素子実装用母基板。
【請求項4】
上面に電子素子が実装される実装領域を有する連続した複数の基板領域と、
前記基板領域のそれぞれの上面に前記実装領域を囲んで、前記基板領域の上面の端部に位置した凹部と、
前記凹部に位置した第1膜と、を備えており、
前記第1膜および前記実装領域は、同一平面上に位置しており、
前記第1膜は、平面視で前記複数の基板領域同士の境界と重なる
第1縁部と、前記第1縁部以外の第2縁部と、を有しており、前記第2縁部は、一部が前記凹部の周縁に接しているかまたは前記凹部の周縁から完全に離間していることを特徴とする電子素子実装用母基板。
【請求項5】
前記基板は平面視において矩形状であり、
前記凹部は、前記基板の角に沿って2辺に跨っていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子素子実装用基板。
【請求項6】
前記基板は平面視において矩形状であり、
前記凹部は、前記基板の4つの角部にそれぞれ位置していることを特徴とする請求項1、2、
5のいずれか1つに記載の電子素子実装用基板。
【請求項7】
前記第1膜は、銅、タングステン、またはモリブデンを含んでいることを特徴とする請求項1、2、
5、
6のいずれか1つに記載の電子素子実装用基板。
【請求項8】
前記基板領域は平面視において矩形状であり、
前記凹部は、前記基板領域の角に沿って2辺に跨っていることを特徴とする請求項3または4に記載の電子素子実装用母基板。
【請求項9】
前記基板領域は平面視において矩形状であり、
前記凹部は、前記基板領域の4つの角部にそれぞれ位置していることを特徴とする請求項3、4、
8のいずれか1つに記載の電子素子実装用母基板。
【請求項10】
前記第1膜は、銅、タングステン、またはモリブデンを含んでいることを特徴とする請求項3、4
、8、
9のいずれか1つに記載の電子素子実装用母基板。
【請求項11】
請求項1、2、
5、
6、
7のいずれか1つに記載の電子素子実装用基板と、
前記実装領域に実装された電子素子とを備えたことを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子、例えばCCD(Charge Coupled Device)型またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の撮像素子、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子、圧力、気圧、加速度、ジャイロ等のセンサー機能を有する素子、または集積回路等が実装される電子素子実装用基板、および電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
絶縁層からなる配線基板を備えた電子素子実装用基板が知られている。また、このような電子素子実装用基板を複数個有する電子素子実装用母基板が知られている。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、電子素子を実装する工程の一つに電子素子実装用母基板に電子素子を実装し、その後に各電子素子実装用基板を得るために切断する場合がある。このとき、切断を行う位置を定める方法として例えば電子素子実装用母基板のダミー領域にダイシングマークを設けることがある。また、電子素子を実装する際にその位置を定める方法としてアライメントマークを設ける場合がある。
【0005】
電子素子実装用基板(電子素子実装用母基板)の表面は、塵等の付着あるいは搬送時等に傷等が生じる場合がある。これらの要因により、ダイシングマークを画像認識で認識する際において、これら塵または傷をダイシングマークと誤認識し、または検出できず、電子素子実装用母基板を切断する工程において不具合が生じるおそれや、アライメントマークと誤認識して、または検出できず、電子素子を実装する工程において実装ずれなどが生じるおそれがあった。
【0006】
また、近年の電子素子実装用基板の小型化の要求により電子素子実装用基板の外辺と実装される電子素子との実装位置の精度は厳しくなり、また電子素子を実装するパッド若しくは内部配線等は外辺とのクリアランスがより小さくなっている。このとき、ダイシングマークが工程誤差等の影響で位置がずれることで、切断位置がずれてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様に係る電子素子実装用基板は、上面と、上面に位置し、電子素子が実装される実装領域と、上面に実装領域を囲んで、上面の端部に位置した凹部と、凹部に位置した第1膜と、上面に平面視で実装領域に隣接して位置した電極パッドと、を有した基板を備えており、第1膜および電極パッドは、同一平面上に位置しており、第1膜は、平面視で基板の外辺と接する部分と、凹部の周縁から離間している部分とを有している。また、本発明の別の態様に係る電子素子実装用基板は、上面に電子素子が実装される実装領域と、上面に実装領域を囲んで、上面の端部に位置した凹部と、凹部に位置した第1膜と、を有した基板を備えており、第1膜および実装領域は、同一平面上に位置しており、第1膜は、平面視で基板の外辺と接する部分と、凹部の周縁から離間している部分とを有している。
【0008】
本発明の1つの態様に係る電子素子実装用母基板は、上面に電子素子が実装される実装領域を有する連続した複数の基板領域と、基板領域のそれぞれの上面に実装領域を囲んで、基板領域の上面の端部に位置した凹部と、凹部に位置した第1膜と、基板領域に平面視で実装領域に隣接して位置した電極パッドと、を備えており、第1膜および電極パッドは、同一平面上に位置しており、第1膜は、平面視で複数の基板領域同士の境界と重なる部分と、凹部の周縁から離間している部分と、を有している。また、本発明の別の態様に係る電子素子実装用母基板は、上面に電子素子が実装される実装領域を有する連続した複数の基板領域と、基板領域のそれぞれの上面に実装領域を囲んで、基板領域の上面の端部に位置した凹部と、凹部に位置した第1膜と、を備えており、第1膜および実装領域は、同一平面上に位置しており、第1膜は、平面視で複数の基板領域同士の境界と重なる部分と、凹部の周縁から離間している部分と、を有している。
【0009】
本発明の1つの態様に係る電子素子実装用母基板は、上面に電子素子が実装される実装領域を有する複数の基板領域と、複数の基板領域を囲んで、複数の基板領域と連続して位置したダミー領域と、ダミー領域の上面に位置した凹部と、凹部に位置した第1膜と、基板領域に平面視で実装領域に隣接して位置した電極パッドと、を備えており、第1膜および電極パッドは、同一平面上に位置しており、平面視で凹部は円形状であり、第1膜は凹部の周縁から離間している部分を有している。また、本発明の別の態様に係る電子素子実装用母基板は、上面に電子素子が実装される実装領域を有する複数の基板領域と、複数の基板領域を囲んで、複数の基板領域と連続して位置したダミー領域と、ダミー領域の上面に位置した凹部と、凹部に位置した第1膜と、を備えており、第1膜および実装領域は、同一平面上に位置しており、平面視で凹部は円形状であり、第1膜は凹部の周縁から離間している部分を有している。
【0010】
本発明の1つの態様に係る電子装置は、電子素子実装用基板と、実装領域に実装された電子素子電子素子とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1つの態様に係る電子素子実装用基板は、上記のような構成により、切断の位置精度を向上させることが可能となる。よって切断の位置により電子素子の実装位置の精度が低減することを防ぎやすくするとともに、センシングの不具合が発生する、または実装不良が起きることを低減させることが可能となる。また、電子素子実装用基板を使用した電子装置の実装性を向上させることが可能となる。
【0012】
また、本発明の1つの態様に係る電子素子実装用基板は、上記のような構成により、電子装置をマウントする際において実装不具合の発生を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る電子素子実装用基板および電子装置の外観を示す上面図であり、
図1(b)は
図1(a)のX1-X1線に対応する縦断面図である。
【
図2】
図2(a)は本発明の第1の実施形態に係る電子モジュールの外観を示す上面図であり、
図2(b)は
図2(a)のX2-X2線に対応する縦断面図である。
【
図3】
図3(a)は本発明の第1の実施形態に係る電子素子実装用基板の要部Aの拡大平面図であり、
図3(b)は
図3(a)のX3-X3線に対応する縦断面図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は本発明の第1の実施形態に係る電子素子実装用基板の要部Aの拡大平面図のその他の態様を示している。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は本発明の第1の実施形態に係る電子素子実装用基板の要部Aの拡大平面図のその他の態様を示している。
【
図6】
図6(a)は本発明の第2の実施形態に係る電子素子実装用基板および電子装置の外観を示す上面図であり、
図6(b)は
図6(a)のX6-X6線に対応する縦断面図である。
【
図7】
図7(a)は本発明の第3の実施形態に係る電子素子実装用基板および電子装置の外観を示す上面図であり、
図7(b)は
図7(a)のX7-X7線に対応する縦断面図である。
【
図8】
図8(a)は本発明の第4の実施形態に係る電子素子実装用基板および電子装置の外観を示す上面図であり、
図8(b)および
図8(c)は
図8(a)のX8-X8線に対応する縦断面図である。
【
図9】
図9は本発明の第5の実施形態に係る電子素子実装用母基板の外観を示す上面図である。
【
図10】
図10は本発明の第5の実施形態に係る電子素子実装用母基板の要部Bの拡大平面図である。
【
図11】
図11は本発明の第6の実施形態に係る電子素子実装用母基板の外観を示す上面図である。
【
図12】
図12は本発明の第6の実施形態のその他の態様に係る電子素子実装用母基板の外観を示す上面図である。
【
図13】
図13は本発明の第6の実施形態に係る電子素子実装用母基板の要部Cの拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<電子素子実装用基板および電子装置の構成>
以下、本発明のいくつかの例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、電子素子実装用基板に電子素子が実装された構成を電子装置とする。また、電子素子実装用基板の上面側に位置するようにまたは電子装置を囲んで設けられた筐体または部材を有する構成を電子モジュールとする。電子素子実装用基板、電子装置および電子モジュールは、いずれの方向が上方若しくは下方とされてもよいが、便宜的に、直交座標系xyzを定義するとともに、z方向の正側を上方とする。
【0015】
(第1の実施形態)
図1~
図5を参照して本発明の第1の実施形態における電子モジュール31、電子装置21、および電子素子実装用基板1について説明する。なお、本実施形態では
図1では電子装置21を示しており、
図2では電子モジュール31を示している。また、
図3~
図5に電子素子実装用基板1の要部Aの拡大平面図またはその断面図を示す。
【0016】
電子素子実装用基板1は、上面に電子素子10が実装される実装領域4を備える基板2を有している。基板2は上面に実装領域4を囲んで、上面の端部に位置した凹部5を有している。基板2は凹部5に位置した第1膜6を有している。
【0017】
電子素子実装用基板1は、上面に電子素子10が実装される実装領域4を備える基板2を有している。ここで、
図1および
図2に示す例では、基板2は複数の絶縁層からなっているが、例えばモールドのような構成またはその他の構成であってもよい。基板2を構成する絶縁層の材料は例えば、電気絶縁性セラミックスまたは樹脂が使用される。
【0018】
基板2を形成する絶縁層の材料として使用される電気絶縁性セラミックスとしては例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミック焼結体等が含まれる。基板2を形成する絶縁層の材料として使用される樹脂としては例えば、熱可塑性の樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂またはフッ素系樹脂等が含まれる。フッ素系樹脂としては例えば、四フッ化エチレン樹脂が含まれる。
【0019】
基板2は、
図1に示すように7層の絶縁層から形成されていてもよいし、6層以下または8層以上の絶縁層から形成されていてもよい。絶縁層が6層以下の場合には、電子素子実装用基板1の薄型化を図ることができる。また、絶縁層が8層以上の場合には、電子素子実装用基板1の剛性を高めることができる。また、
図1~
図2に示す例のように、各絶縁層に開口部を設け、設けた開口部の大きさを異ならせた上面に段差部を形成していてもよく、後述する電極パッド3が段差部に設けられていてもよい。
【0020】
電子素子実装用基板1は例えば、最外周の1辺の大きさは0.3mm~10cmであり、平面視において電子素子実装用基板1が四角形状あるとき、正方形であってもよいし長方形であってもよい。また例えば、電子素子実装用基板1の厚みは0.2mm以上である。
【0021】
電子素子実装用基板1の基板2は、電子素子10を実装する実装領域4を有する。ここで、実装領域4は少なくとも1つ以上の電子素子10が実装される領域であり、例えば電極パッド3の最外周の内側、蓋体が実装される領域、またはそれ以上等、適宜定めることが可能である。なお、本実施形態においては電極パッド3の最外周の内側の領域を実装領域4と仮定している。実装領域4は電子素子10以外の部品が実装されていても良い。また、実装領域4に実装される電子素子10および/または部品の個数は特に指定されない。
【0022】
電子素子実装用基板1の基板2は表面に例えば電子素子10と接続される電極パッド3
を有していてもよい。さらに基板2の上面、側面または下面には、外部回路接続用電極が設けられていてもよい。外部回路接続用電極は、基板2と外部回路基板、あるいは電子装置21と外部回路基板とを電気的に接続していてもよい。
【0023】
さらに基板2の上面または下面には、電極パッド3または/および外部回路接続用電極以外に、絶縁層間に形成される内部配線導体および内部配線導体同士を上下に接続する貫通導体が設けられていてもよい。これら内部配線導体または貫通導体は、基板2の表面に露出していてもよい。この内部配線導体または貫通導体によって、電極パッド3または/および外部回路接続用電極はそれぞれ電気的に接続されていてもよい。
【0024】
電極パッド3、外部回路接続用電極、内部配線導体または/および貫通導体は、複数の絶縁層が電気絶縁性セラミックスから成る場合には、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銀(Ag)若しくは銅(Cu)またはこれらから選ばれる少なくとも1種以上の金属材料を含有する合金等が含まれる。また、銅からなっていてもよい。また、電極パッド3、外部回路接続用電極、内部配線導体または/および貫通導体は、複数の層が樹脂から成る場合には、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)若しくはチタン(Ti)またはこれらから選ばれる少なくとも1種以上の金属材料を含有する合金等が含まれる。
【0025】
電極パッド3、外部回路接続用電極、内部配線導体または/および貫通導体の露出表面に、さらにめっき層を有していてもよい。この構成によれば、外部回路接続用の電極、導体層および貫通導体の露出表面を保護して酸化を低減することができる。また、この構成によれば、電極パッド3と電子素子10とをワイヤボンディング等の電子素子接続材13を介して良好に電気的接続することができる。めっき層は、例えば、厚さ0.5μm~10μmのNiめっき層を被着させるか、またはこのNiめっき層および厚さ0.5μm~3μmの金(Au)めっき層を順次被着させてもよい。
【0026】
基板2は上面に実装領域4を囲んで、上面の端部に位置した凹部5を有している。凹部5は基板2の端部に少なくとも1つ以上位置していればよい。また、
図1および
図2に示す例では、凹部5は扇状で一部において側壁を有していない形状(一部が解放されている形状)であってもよいが、側壁をすべて有するような形状(閉じられた形状)であってもよい。
【0027】
基板2は凹部5に位置した第1膜6を有している。第1膜6は、基板2が電気絶縁性セラミックスから成る場合には、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銀(Ag)若しくは銅(Cu)またはこれらから選ばれる少なくとも1種以上の金属材料を含有する合金等が含まれる。また、銅からなっていてもよい。また、第1膜6は、基板2が樹脂から成る場合には、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)若しくはチタン(Ti)またはこれらから選ばれる少なくとも1種以上の金属材料を含有する合金等が含まれる。
【0028】
一般的に、電子素子10を実装する際にその位置を定める方法として電子素子実装用基板1にアライメントマークを設ける場合がある。本実施形態においては電子素子実装用基板1の基板2は凹部5を有しており、凹部5に位置した第1膜6を有している。ここで。第1膜6がアライメントマークとして機能させることで、上述した塵または傷がアライメントマーク近傍に生じることを低減させることが可能となる。よって、アライメントマークを画像認識で認識する際において、これら塵または傷をアライメントマークと誤認識し、またはアライメントマークを検出できず、電子素子10を実装する工程において実装ずれなどの不具合を低減させることが可能となる。
【0029】
第1膜6は、内部配線導体または貫通導体によって、電極パッド3または/および外部回路接続用電極等はそれぞれ電気的に接続されていてもよい。また、第1膜6は、絶縁膜から成っていてもよい。これにより、第1膜6が金属材料から成るときと同様の効果を奏することが可能となる。また、基板2が電気絶縁性セラミックスからなる場合、第1膜6が同種の絶縁膜であることで、焼結し一体化することが可能となる。よって第1膜6が剥離することを低減できるとともに、切断の際に切断刃が接触しても第1膜6が伸びてショート等が発生することを低減させることが可能となる。
【0030】
なお、
図3に示す例では、第1膜6はL字箇所が金属膜または絶縁膜で形成されているが、その逆であってもよい。言い換えると、凹部5の底面にL字またはその他の所定の形状以外の箇所に金属膜または絶縁膜からなる第1膜6が位置していてもよい。
【0031】
第1膜6の露出表面に、めっき層を有していてもよい。この構成によれば、第1膜6の露出表面を保護して酸化を低減することができる。めっき層は、例えば、厚さ0.5μm~10μmのNiめっき層を被着させるか、またはこのNiめっき層および厚さ0.5μm~3μmの金(Au)めっき層を順次被着させてもよい。
【0032】
第1膜6は
図1に示す例のように電子素子実装用基板の外辺に接するように設けられていてもよいが、電子素子実装用基板の外辺から間を設けて位置していてもよい。電子素子実装用基板の外辺に接するように設けられていることで、電子素子実装用基板1を切断する際により精度よく切断することができる。言い換えると、電子素子実装用基板に設けられたアライメントマークと電子素子実装用基板の外辺との位置の精度(公差)をより向上させることが可能となる。第1膜6が電子素子実装用基板の外辺から間を設けて位置していることで、第1膜6が切断時に切断刃と接することを低減させることが可能となる。また、第1膜6が外部から接触される事を低減させることが可能となる。よって、第1膜6に傷が発生することで、第1膜6が剥がれるまたは画像認識においてご認識が発生することを低減させることが可能となる。
【0033】
図1に示す例では、基板2は平面視において矩形状であり、凹部5は、基板2の角に沿って2辺に跨っている。言い換えると、
図1に示す例では、矩形状の基板2の角部に凹部5および凹部5に位置する第1膜6を有している。このことで、第1膜6をインデックスマークとしても使用することができ方向性の確認が容易となる。また、第1膜6を画像認識部で検知する場合において、検知しやすくなりより実装性を向上させることができる。また、角部が最上面に位置しないことで搬送容器等との接触によるクラックまたは割れを低減させることが可能となる。また、凹部5は角部以外の部分に設けられていてもよい。
【0034】
凹部5および凹部5に位置する第1膜6は基板2に少なくとも1つ有していればよく、例えば
図1に示す例のように2つ以上有していてもよい。凹部5および凹部5に位置する第1膜6が2つ以上有していることで、その2つの凹部5(第1膜6)の位置関係で、電子素子実装用基板1の実装による回転ズレを確認することができる。よって、外部回路基板にマウントする工程において、電子装置21が実装による回転ズれをして実装されることを低減させることが可能となる。また、画像認識部にZ軸方向の距離を測る機能がついている場合などは、凹部5(第1膜6)を2つ有することで、電子素子実装用基板1のZ軸方向における傾きも検知することができる。
【0035】
また、基板2は平面視において矩形状であり、凹部5は、基板2の4つの角部にそれぞれ位置していてもよい。このことでより詳細にZ軸方向における基板2の傾きを検出することができ、よって、外部回路基板にマウントする工程において、電子装置21が傾いて実装されることを低減させることが可能となる。
【0036】
また、凹部5および第1膜6が複数個存在するとき、いずれか1つの凹部5または/および第1膜6の大きさ、形状等を異ならせることで、本発明の効果を奏するとともに、電子素子実装用基板1の方向性を示すインデックスマークとして使用することが可能となる。
【0037】
図3~
図5に、電子素子実装用基板1の要部Aの拡大図とその断面図、およびその他の実施形態の拡大図を示す。
図3に示す例では、
図1に示す基板2の凹部(第1膜6)の拡大図および断面図を示す。
図3に示す例のように、凹部5の底面に第1膜6は位置している。この構造により、上述した、塵の付着および基板2の傷を低減させ実装性を向上させることが可能となる。なお、ここで凹部5の深さとしては、基板2が電気絶縁性セラミックスの場合、例えば30μm以上あってもよい。これにより、基板2に生じる傷等よりも深い位置に凹部5の底面(第1膜6)を位置させることが可能となり、凹部5の底面(第1膜6)に傷が発生し難くすることができる。
図4および
図5に要部Aのその他の実施形態の拡大図を示す。
【0038】
図3(a)に示す例では、凹部5は上面視において扇状であったが、
図4に示す例のように、矩形状または矩形状以外の多角形であってもよい。
図3(a)に示す例のように、凹
部5が上面視において扇状であることで、凹部5を作製する工程において、基板2にクラックまたは割れを低減させることが可能となる。また、また、
図4(a)に示す例のように、凹部5は矩形状であることで。また、
図4(b)に示す例のように、凹部5は第1膜6を拡大した形状であってもよい。このことで、凹部の開口面積をより小さくすることが可能となり、塵が凹部内部へ侵入する事を低減させることが可能となる。よって、塵の付着を低減させ実装性を向上させることが可能となる。
【0039】
図3(a)に示す例では、第1膜6は上面視においてL字の形状であってもよい。L字の形状であることで、第1膜6がX軸およびY軸のどちらの方向性も確認することができる。よって、より実装時の位置の精度(公差)を向上させることが可能となる。なお、
図3(a)に示す例のようなL字形状ではなく、第1膜6は
図5(b)に示すように2方向に向かった矩形状の膜を2つ有する形状であっても同様の効果を奏することが可能となる。さらに、角部に第1膜6を有していないことで、切断時またはハンドリング時の応力(ストレス)が角部の第1膜6にかからず、第1膜6が捲れるまたは剥がれることを低減させることができる。また、第1膜6は
図5(a)に示す例のようにX軸またはY軸のどちらか一方にのみ伸びている形状であってもよい。このことで、第1膜6をインデックスマークとして使用することでで、電子素子実装用基板1の方向性を確認することができる。なお、第1膜6は角部が円弧状であってもよく、円弧状であることで第1膜6が剥がれることを低減させることが可能となる。
【0040】
<電子装置の構成>
図1に電子装置21の例を示す。電子装置21は、電子素子実装用基板1と、電子素子実装用基板1の上面または下面に実装された電子素子10を備えている。
【0041】
電子装置21は、電子素子実装用基板1と、電子素子実装用基板1に実装された電子素子10を有している。電子素子10の一例としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)型またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の撮像素子、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子、圧力、気圧、加速度、ジャイロ等のセンサー機能を有する素子、または集積回路等である。なお、電子素子10は、接着材を介して、基板2の上面に配置されていてもよい。この接着材は、例えば、銀エポキシまたは熱硬化性樹脂等が使用される。
【0042】
電子素子10と電子素子実装用基板1とは例えばワイヤーボンディング、半田ボール、金バンプ等を含む電子素子接続材13で電気的に接続されていてもよい。電子装置21は
、電子素子10を覆うとともに、電子素子実装用基板1の上面に接合された蓋体12を有していてもよい。ここで、電子素子実装用基板1は基板2の枠状部分の上面に蓋体12を接続してもよいし、蓋体12を支え、基板2の上面であって電子素子10を取り囲むように設けられた枠状体を設けてもよい。また、枠状体と基板2とは同じ材料から構成されていてもよいし、別の材料で構成されていてもよい。
【0043】
枠状体と基板2と、が同じ材料から成る場合、基板2は枠状体とは開口部を設けるなどして最上層の絶縁層と一体化するように作られていてもよい。また、別に設ける、ろう材等でそれぞれ接合してもよい。
【0044】
また、基板2と枠状体とが別の材料から成る例として枠状体が蓋体12と基板2とを接合する蓋体接合材14と同じ材料から成る場合がある。このとき、蓋体接合材14を厚く設けることで、接着の効果と枠状体(蓋体12を支える部材)としての効果を併せ持つことが可能となる。このときの蓋体接合材14は例えば熱硬化性樹脂または低融点ガラスまたは金属成分から成るろう材等が挙げられる。また、枠状体と蓋体12とが同じ材料から成る場合もあり、このときは枠状体と蓋体12は同一個体として構成されていてもよい。
【0045】
蓋体12は、例えば電子素子10がCMOS、CCD等の撮像素子、またはLEDなどの発光素子である場合ガラス材料等の透明度の高い部材が用いられる。また蓋体12は例えば、電子素子10が集積回路等であるとき、金属製材料、セラミック材料または有機材料が用いられていてもよい。
【0046】
蓋体12は、蓋体接合材14を介して電子素子実装用基板1と接合している。蓋体接合材14を構成する材料として例えば、熱硬化性樹脂または低融点ガラスまたは金属成分から成るろう材等がある。
【0047】
電子装置21が
図1に示すような電子素子実装用基板1を有することで、電子装置21を外部回路基板等にマウントする工程において、マウント時の不具合を低減させることが可能となる。また、電子素子実装用基板1に電子素子10を実装する工程においても、電子素子10の実装ズレ等の不具合を低減させることが可能となる。
【0048】
<電子モジュールの構成>
図2に電子素子実装用基板1を用いた電子モジュール31の一例を示す。電子モジュール31は、電子装置21と電子装置21の上面または電子装置21を覆うように設けられた筐体32とを有している。なお、以下に示す例では説明のため撮像モジュールを例に説明する。
【0049】
電子モジュール31は筐体32(レンズホルダー)を有していてもよい。筐体32を有することでより気密性の向上または外部からの応力が直接電子装置21に加えられることを低減することが可能となる。筐体32は、例えば樹脂または金属材料等から成る。また、筐体32がレンズホルダーであるとき筐体32は、樹脂、液体、ガラスまたは水晶等からなるレンズが1個以上組み込まれていてもよい。また、筐体32は、上下左右の駆動を行う駆動装置等が付いていて、電子素子実装用基板1の表面に位置するパッド等と半田などの接合材を介して電気的に接続されていてもよい。
【0050】
なお、筐体32は上面視において4方向の少なくとも一つの辺において開口部が設けられていてもよい。そして、筐体32の開口部から外部回路基板が挿入され電子素子実装用基板1と電気的に接続していてもよい。また筐体32の開口部は、外部回路基板が電子素子実装用基板1と電気的に接続された後、樹脂等の封止材等で開口部の隙間を閉じて電子モジュール31の内部が気密されていてもよい。
【0051】
電子モジュール31が
図2に示すような電子装置21および電子素子実装用基板1を有することで、外部回路基板へのマウント時または電子素子10を実装時のズレが発生し、電子モジュールを作動させた場合に誤作動が生じる恐れを低減させることが可能となる。
【0052】
<電子素子実装用基板および電子装置の製造方法>
次に、本実施形態の電子素子実装用基板1および電子装置21の製造方法の一例について説明する。なお、下記で示す製造方法の一例は、多数個取り配線基板を用いた基板2の製造方法である。
【0053】
(1)まず、基板2を構成するセラミックグリーンシートを形成する。例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)質焼結体である基板2を得る場合には、Al2O3の粉末に焼結助材としてシリカ(SiO2)、マグネシア(MgO)またはカルシア(CaO)等の粉末を添加し、さらに適当なバインダー、溶剤および可塑剤を添加し、次にこれらの混合物を混錬してスラリー状となす。その後、ドクターブレード法またはカレンダーロール法等の成形方法によって多数個取り用のセラミックグリーンシートを得る。
【0054】
なお、基板2が、例えば樹脂から成る場合は、所定の形状に成形できるような金型を用いて、トランスファーモールド法またはインジェクションモールド法等で成形することによって基板2を形成することができる。また、基板2は、例えばガラスエポキシ樹脂のように、ガラス繊維から成る基材に樹脂を含浸させたものであってもよい。この場合には、ガラス繊維から成る基材にエポキシ樹脂の前駆体を含浸させ、このエポキシ樹脂前駆体を所定の温度で熱硬化させることによって基板2を形成できる。
【0055】
(2)次に、スクリーン印刷法等によって、上記(1)の工程で得られたセラミックグリーンシートに電極パッド3、外部回路接続用電極、内部配線導体および貫通導体となる部分に、金属ペーストを塗布または充填する。この金属ペーストは、前述した金属材料から成る金属粉末に適当な溶剤およびバインダーを加えて混練することによって、適度な粘度に調整して作製される。なお、金属ペーストは、基板2との接合強度を高めるために、ガラスまたはセラミックスを含んでいても構わない。
【0056】
また、基板2が樹脂から成る場合には、電極パッド3、外部回路接続用電極、内部配線導体および貫通導体は、スパッタ法、蒸着法等によって作製することができる。また、表面に金属膜を設けた後に、めっき法を用いて作製してもよい。
【0057】
なおこの工程において、凹部5の底面となる箇所に第1膜6となる金属ペーストまたは絶縁ペーストを塗布または充填することが可能となる。
【0058】
(3)次に、前述のグリーンシートを金型等によって加工する。ここで基板2となるグリーンシートの所定の箇所に、金型、パンチング、またはレーザー等を用いて凹部5を設けてもよい。
【0059】
(4)次に、各絶縁層となるセラミックグリーンシートを積層して加圧する。このことにより各絶縁層となるグリーンシートを積層し、基板2(電子素子実装用基板1)となるセラミックグリーンシート積層体を作製してもよい。また、この時、複数層を積層したセラミックグリーンシートをの所定の位置に、金型、パンチング、またはレーザー等を用いて凹部5とを設けてもよい。もしくは、凹部5となる位置に貫通孔を有する複数のセラミックグリーンシートを準備し、それぞれを積層して複数の層からなる基板2としてもよい。
【0060】
(5)次に、このセラミックグリーンシート積層体を約1500℃~1800℃の温度で焼成して、基板2(電子素子実装用基板1)が複数配列された多数個取り配線基板を得る。なお、この工程によって、前述した金属ペーストは、基板2(電子素子実装用基板1)となるセラミックグリーンシートと同時に焼成され、電極パッド3、外部回路接続用電極、内部配線導体および貫通導体となる。
【0061】
(6)次に、焼成して得られた多数個取り配線基板を複数の基板2(電子素子実装用基板1)に分断する。この分断においては、基板2(電子素子実装用基板1)の外縁となる箇所に沿って多数個取り配線基板に分割溝を形成しておき、この分割溝に沿って破断させて分割する方法またはスライシング法等により基板2(電子素子実装用基板1)の外縁となる箇所に沿って切断する方法等を用いることができる。なお、分割溝は、焼成後にスライシング装置により多数個取り配線基板の厚みより小さく切り込むことによって形成することができるが、多数個取り配線基板用のセラミックグリーンシート積層体にカッター刃を押し当てたり、スライシング装置によりセラミックグリーンシート積層体の厚みより小さく切り込んだりすることによって形成してもよい。なお、上述した多数個取り配線基板を複数の基板2(電子素子実装用基板1)に分割する前もしくは分割した後に、それぞれ電解または無電解めっき法を用いて、電極パッド3、外部接続用パッドおよび露出した配線導体にめっきを被着させてもよい。
【0062】
(7)次に、電子素子実装用基板1の上面または下面に電子素子10を実装する。電子素子10はワイヤボンディング等の電子素子接続材13で電子素子実装用基板1と電気的に接合させる。またこのとき、電子素子10または電子素子実装用基板1に接着材等を設け、電子素子実装用基板1に固定しても構わない。また、電子素子10を電子素子実装用基板1に実装した後、蓋体12を蓋体接合材14で接合してもよい。
【0063】
以上(1)~(7)の工程のようにして電子素子実装用基板1を作製し、電子素子10を実装することで、電子装置21を作製することができる。なお、上記(1)~(7)の工程順番および、工程の回数等は指定されない。また、上述した(1)~(7)の工程の全てを経る必要はない。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態による電子素子実装用基板1について、
図6を参照しつつ説明する。なお、
図6(a)は本実施形態における電子素子実装用基板1、電子装置21の形状を示している。なお、
図6に示す電子装置21では蓋体12を省略している。
【0065】
本実施形態における電子素子実装用基板1において、第1の実施形態の電子素子実装用基板1と異なる点は、第1膜6が断面視において電極パッド3と同一平面状に位置している点である。
【0066】
図6に示す例では、電子素子実装用基板1の基板2は開口部を有し、開口部の内部の上面に電極パッド3を有しており、凹部5の底面に位置する第1膜6は電極パッド3と同一の高さ(同一平面上)に位置している。例えば電極パッド3または第1膜6はスクリーン印刷法、スパッタ法、蒸着法等によって塗布または形成される。このとき、同一の層(同一平面上)にあるパターン同士はほかの層同士のパターンと比較すると位置の精度(公差)が良くなる傾向がある。そのため、電子素子実装用基板1の電極パッド3と第1膜6とが同一の高さ(同一平面上)にあることで、電極パッド3と第1膜6との位置はずれにくくなる。よって、第1膜6をアライメントマークとして電子素子10を実装すると、電極パッド3と電子素子10との位置を精度よく実装することが可能となる。さらに、電子素子実装用基板1を作製する工程において、第1膜6をダイシングマークとして切断することで、電子素子実装用基板1の外辺と第1膜6との位置を精度よく切断することができる。言い換えると、電子素子実装用基板1の外辺と電子素子10とを、精度良く実装することが可能となる。よって、第1膜6が塵または傷等で画像認識の不具合が生じることを低減させることが可能となるとともに、切断の位置により電子素子10の実装位置の精度が低減することを防ぎやすくすることが可能となる。よって、センシングの不具合が発生する、または実装不良が起きることを低減させることが可能となる。
【0067】
なお、電極パッド3が複数層にわたって位置しているときは、第1膜6はいずれかの層の電極パッド3と同一平面上に位置していればよい。なお、幅の小さい電極パッド3が多い層と第1膜6とを同一平面上とすることで、幅の小さい電極パッド3と第1膜6との位置がずれにくくなり、接続不良を低減させることが可能となる。よって、第1膜6をアライメントマークとして電子素子10を実装すると、電極パッド3と電子素子10との実装性をより向上させることが可能となる。
【0068】
なお、電極パッド3と同一平面上に位置する第1膜6は少なくとも1か所あればよく、第1膜6(凹部5)が複数ある場合は、そのほかの第1膜6(凹部5)の高さ一は指定されない。
【0069】
本実施形態の電子素子実装用基板1の製造方法としては基本的に、第1の実施形態と同様である。例えば、基板2が電気絶縁性セラミックスからなる場合、第1の実施形態の製造方法で、電極パッド3となる金属ペーストを印刷・塗布する際に、第1膜6となる金属ペーストまたは絶縁ペーストを塗布することで作製することができる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態による電子素子実装用基板1について、
図7を参照しつつ説明する。なお、
図7(a)は本実施形態における電子素子実装用基板1、電子装置21の形状を示している。なお、
図7に示す電子装置21では蓋体12を省略している。
【0071】
本実施形態における電子素子実装用基板1において、第1の実施形態の電子素子実装用基板1と異なる点は、第1膜6が断面視において電子素子10の実装面と同一平面状に位置している点である。
【0072】
図7に示す例では、電子素子実装用基板1の基板2は開口部を有し、実装領域4は開口部の内側に位置しており、凹部5の底面に位置する第1膜6は実装領域4(開口部の底面)と同一の高さ(同一平面上)に位置している。本実施形態に示す例のように、電子素子実装用基板1の実装領域4と第1膜6とが同一の高さ(同一平面上)にあることで、第1膜6をアライメントマークとして電子素子10を実装すると、実装領域4と電子素子10との位置を精度よく実装することが可能となる。さらに、電子素子実装用基板1を作製する工程において、第1膜6をダイシングマークとして切断することで、電子素子実装用基板1の外辺と第1膜6との位置を精度よく切断することができる。言い換えると、電子素子実装用基板1の外辺と電子素子10とを、精度良く実装することが可能となる。よって、第1膜6が塵または傷等で画像認識の不具合が生じることを低減させることが可能となるとともに、切断の位置により電子素子10の実装位置の精度が低減することを防ぎやすくすることが可能となる。よって、センシングの不具合が発生する、または実装不良が起きることを低減させることが可能となる。
【0073】
なお、実装領域4は
図7に示す例のように開口部の底面に位置していてもよいし、例えば開口部に段差を有しているとき、その段差の上面に位置していてもよい。例えば、開口部に段差を有しているとき、その段差の上面に実装領域4が位置している時は、その段差と同一平面上に第1膜6を位置させることで、上述した効果を奏することが可能となる。
【0074】
なお、電極パッド3と同一平面上に位置する第1膜6は少なくとも1か所あればよく、第1膜6(凹部5)が複数ある場合は、そのほかの第1膜6(凹部5)の高さ一は指定されない。
【0075】
また、例えば電子素子実装用基板1が電子素子10以外の電子部品等が実装される場合、これら電子部品が実装される面と同一平面上に第1膜6を有していてもよい。このことで、第1膜6をアライメントマークとして電子部品を実装すると、電子部品の位置を精度よく実装することが可能となる。さらに、電子素子実装用基板1を作製する工程において、第1膜6をダイシングマークとして切断することで、電子素子実装用基板1の外辺と第1膜6との位置を精度よく切断することができる。言い換えると、電子素子実装用基板1の外辺と電子部品とを、精度良く実装することが可能となる。よって、第1膜6が塵または傷等で画像認識の不具合が生じることを低減させることが可能となるとともに、切断の位置により電子部品の実装位置の精度が低減することを防ぎやすくすることが可能となる。よって、センシングの不具合が発生する、または実装不良が起きることを低減させることが可能となる。
【0076】
本実施形態の電子素子実装用基板1の製造方法としては基本的に、第1の実施形態と同様である。例えば、基板2が電気絶縁性セラミックスからなる場合、実装領域4が位置するセラミックグリーンシートの所定の箇所に第1膜6となる金属ペーストまたは絶縁ペーストを塗布することで作製することができる。
【0077】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態による電子素子実装用基板1について、
図8を参照しつつ説明する。なお、
図8は本実施形態における電子素子実装用基板1、電子装置21の形状を示している。なお、
図8に示す電子装置21では蓋体12を省略している。
【0078】
本実施形態における電子素子実装用基板1において、第1の実施形態の電子素子実装用基板1と異なる点は、第1膜6が断面視において電子素子10の実装面と同一平面状および電極パッド3と同一平面上に位置している点である。
【0079】
図8に示す例では、電子素子実装用基板1の基板2は開口部を有し、開口部の内部に、実装領域4と電極パッド3が位置しており、複数設けられた凹部5および第1膜6は実装領域4(開口部の底面)または/および電極パッド3と同一の高さ(同一平面上)に位置している。
図8に示す例では、電子素子実装用基板1の実装領域4または/および電極パッド3のそれぞれと複数の第1膜6の少なくともそれぞれ1つがとが同一の高さ(同一平面上)にある。これにより、いずれかの第1膜6をアライメントマークとして電子素子10を実装すると、電子素子10の位置を精度よく実装することが可能となる。また、そのほかの第1膜6と電子素子10との位置関係を画像検査機等で確認することで、例えば基板2が電気絶縁性セラミックスからなる場合、各層の積層ズレの程度を確認することが可能となる。さらに、電子素子実装用基板1を作製する工程において、第1膜6をダイシングマークとして切断することで、電子素子実装用基板1の外辺と第1膜6との位置を精度よく切断することができる。言い換えると、電子素子実装用基板1の外辺と電子素子10とを、精度良く実装することが可能となる。よって、第1膜6が塵または傷等で画像認識の不具合が生じることを低減させることが可能となるとともに、切断の位置により電子素子10の実装位置の精度が低減することを防ぎやすくすることが可能となる。よって、センシングの不具合が発生する、または実装不良が起きることを低減させることが可能となる。なおこの時、電子素子10を実装する際のアライメントマークとして使用した第1膜6とダイシングマークとして使用する第1膜6とは同一のものを使用することで、より効果を向上させることが可能となる。
【0080】
本実施形態の電子素子実装用基板1の製造方法としては基本的に、第1の実施形態と同様である。例えば、基板2が電気絶縁性セラミックスからなる場合、電極パッド3と同一平面上に位置する第1膜6は電極パッド3と同時に印刷・塗布することで設けることができ、実装領域4と同一平面上に位置する第1膜6は実装領域4が位置するセラミックグリーンシートの所定の箇所に第1膜6となる金属ペーストまたは絶縁ペーストを塗布することで作製することができる。
【0081】
(第5の実施形態)
図9および
図10を参照して本発明の第5の実施形態における電子素子実装用母基板51について説明する。なお、本実施形態では
図9で電子素子実装用母基板51を示している。また、
図10に電子素子実装用母基板51の要部Bの拡大平面図を示す。
【0082】
電子素子実装用母基板51は、上面に電子素子10が実装される実装領域4を有する連続した複数の基板領域52aを有している。基板領域52aはそれぞれの上面に実装領域4を囲んで、基板領域52aの上面の端部に位置した凹部5を有している。電子素子実装用母基板51は凹部5に位置した第1膜6を有している。
【0083】
電子素子実装用母基板51は、上面に電子素子10が実装される実装領域4を有する連続した複数の基板領域52aを有している。ここで、基板領域52aは複数の実装領域4を有しており、さらにそれ以外の領域も有していてよい。言い換えると、複数の基板領域52aは第1の実施形態に記載した電子素子実装用基板1が複数個配列された領域のことである。このような中央部に実装領域4(電子素子実装用基板1)が複数配列された複数の基板領域52aを有する電子素子実装用母基板51は、基板領域52aを個々に切断分割することによって、複数の実装領域4(電子素子実装用基板1)を作製することができる。
【0084】
電子素子実装用母基板51は、電子素子実装用基板1と同様の材料から構成される。電子素子実装用母基板51を形成する絶縁層の材料として使用される電気絶縁性セラミックスとしては例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミック焼結体等が含まれる。電子素子実装用母基板51を形成する絶縁層の材料として使用される樹脂としては例えば、熱可塑性の樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂またはフッ素系樹脂等が含まれる。フッ素系樹脂としては例えば、四フッ化エチレン樹脂が含まれる。
【0085】
電子素子実装用母基板51は電子素子実装用基板1と同様に複数の絶縁層で構成されていてもよい。電子素子実装用母基板51は、各絶縁層の表面と内部に形成された配線導体が形成されていてもよい。また、電子素子実装用母基板51の基板領域52aは各電子素子実装用基板1と同様にそれぞれの表面に電極パッド3および外部回路接続用電極、内部に貫通導体および内部配線を有していてもよい。
【0086】
電子素子実装用母基板51は、各絶縁層の表面と内部に形成された配線導体は、複数の絶縁層が電気絶縁性セラミックスから成る場合には、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銀(Ag)若しくは銅(Cu)またはこれらから選ばれる少なくとも1種以上の金属材料を含有する合金等が含まれる。また、銅からなっていてもよい。また、電子素子実装用母基板51は、各絶縁層の表面と内部に形成された配線導体は、複数の層が樹脂から成る場合には、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)若しくはチタン(Ti)またはこれらから選ばれる少なくとも1種以上の金属材料を含有する合金等が含まれる。
【0087】
電子素子実装用母基板51は、各絶縁層の表面と内部に形成された配線導体の露出表面に、めっき層を有していてもよい。めっき層は、例えば、厚さ0.5μm~10μmのNiめっき層を被着させるか、またはこのNiめっき層および厚さ0.5μm~3μmの金(Au)めっき層を順次被着させてもよい。
【0088】
これら、電子素子実装用母基板51の表面と内部に形成された配線導体、実装領域4(電子素子実装用基板1)にそれぞれ形成された電極パッド3等は第1の実施形態と同様の材料で構成されていてもよい。
【0089】
複数の基板領域52aは複数の実装領域4(電子素子実装用基板1)が連続して配列されていてもよいし、各実装領域4(電子素子実装用基板1)の間にはその他の領域を有していてもよい。また、基板領域52aにおいて複数の実装領域4(電子素子実装用基板1)は隣り合う実装領域4(電子素子実装用基板1)同士が電気的に接続していてもよい。
【0090】
基板領域52aはそれぞれの上面に実装領域4を囲んで、基板領域52aの上面の端部に位置した凹部5を有している電子素子実装用母基板51は凹部5に位置した第1膜を有している。
【0091】
一般的に、電子素子10を実装する工程の一つに電子素子実装用母基板51に電子素子10を実装し、その後に各電子素子実装用基板1を得るために切断する場合がある。この時、切断を行う位置を定める方法として例えば電子素子実装用母基板51にダイシングマークを設けることがある。また、電子素子10を実装する際にその位置を定める方法としてアライメントマークを設ける場合がある。
【0092】
電子素子実装用母基板51の表面は、塵等の付着が生じる場合がある。また、搬送時に搬送容器等と電子素子実装用母基板51との接触、冶具等と電子素子実装用母基板51との接触等において傷が生じる場合があった。これらの要因により、ダイシングマークを画像認識で認識する際において、これら塵または傷をダイシングマークと誤認識し、または検出できず、電子素子実装用母基板51を切断する工程において切断位置がずれる、切断機が停止してしまうなどの不具合があった。
【0093】
これに対し、本実施形態において、電子素子実装用母基板51は凹部5を有しており、凹部5に位置した第1膜6を有している。ここで。第1膜6をダイシングマークとして機能させることで、上述した塵または傷がダイシングマーク(第1膜6)近傍に生じることを低減させることが可能となる。よって、ダイシングマーク(第1膜6)を画像認識で認識する際において、これら塵または傷をダイシングマーク(第1膜6)と誤認識し、またはダイシングマーク(第1膜6)を検出できず、電子素子実装用母基板51を切断する工程において切断ズレなどの不具合を低減させることが可能となる。
【0094】
電子素子実装用母基板51の第1膜6は、内部配線導体または貫通導体によって、電極パッド3または/および外部回路接続用電極等はそれぞれ電気的に接続されていてもよい。第1膜6は、電子素子実装用母基板51が電気絶縁性セラミックスから成る場合には、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銀(Ag)若しくは銅(Cu)またはこれらから選ばれる少なくとも1種以上の金属材料を含有する合金等が含まれる。また、銅からなっていてもよい。また、第1膜6は、電子素子実装用母基板51が樹脂から成る場合には、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)若しくはチタン(Ti)またはこれらから選ばれる少なくとも1種以上の金属材料を含有する合金等が含まれる。第1膜6の露出表面に、めっき層を有していてもよい。この構成によれば、第1膜6の露出表面を保護して酸化を低減することができる。めっき層は、例えば、厚さ0.5μm~10μmのNiめっき層を被着させるか、またはこのNiめっき層および厚さ0.5μm~3μmの金(Au)めっき層を順次被着させてもよい。
【0095】
第1膜6は、絶縁膜から成っていてもよい。これにより、第1膜6が金属材料から成るときと同様の効果を奏することが可能となる。また、基板2が電気絶縁性セラミックスからなる場合、第1膜6が同種の絶縁膜であることで、焼結し一体化することが可能となる。よって第1膜6が剥離することを低減できるとともに、切断の際に切断刃が接触しても第1膜6が伸びてショート等が発生することを低減させることが可能となる。
【0096】
第1膜6は
図9に示す例のように複数の基板領域52aの境界線と重なるように設けられていてもよいが、複数の基板領域52aの境界線から間を設けて位置していてもよい。基板領域52aの境界線と重なるように設けられていることで、電子素子実装用母基板51を切断する際により精度よく切断することができる。言い換えると、電子素子実装用母基板51に設けられたダイシングマーク(第1膜6)と電子素子実装用基板1の実装領域4との位置の精度(公差)をより向上させることが可能となる。第1膜6が基板領域52aの境界線から間を設けて位置していることで、電子素子実装用母基板51を切断時に第1膜6と切断刃とが接することを低減させることが可能となる。よって、第1膜6に傷が発生することで、第1膜6が剥がれるまたは画像認識において誤認識が発生することを低減させることが可能となる。また、電子素子実装用母基板51を切断時に第1膜6と切断刃とが接することを低減させることで、第1膜6が伸びて外観不良または外部とのショートが発生することを低減させることが可能となる。
【0097】
図9に示す例では、基板領域52aは平面視において矩形状であり、凹部5は、基板領域2aの角に沿って2辺に跨っている。言い換えると、
図9に示す例では、矩形状の基板領域52aの角部に凹部5および凹部5に位置する第1膜6を有している。第1膜6をダイシングマークとして使用する場合において、各電子素子実装用基板1の角部を指していることになる。よって、第1膜6が複数個あるとき、隣り合う第1膜6同士を切断することで、より切断の位置精度を向上させることが可能となる。また、実装領域4(電子素子実装用基板1)の各角部に凹部5が設けられていることで、角部が最上面に位置しないことになり、切断時の応力により角部にクラックまたは割れが発生する事を低減させることが可能となる。また、凹部5は角部以外の部分に設けられていてもよい。
【0098】
電子素子実装用母基板51の基板領域52aは平面視において矩形状であり、凹部5は、基板領域52aの4つの角部にそれぞれ位置していてもよい。このことで第1膜6をダイシングマークとして使用する場合において、各電子素子実装用基板1の4つの角部を指していることになる。よって、隣り合う第1膜6同士を切断することで、より切断の位置精度を向上させることが可能となる。
【0099】
図10に、電子素子実装用母基板51の要部Bの拡大図を示す。
図10に示す例のように、凹部5および第1膜6は隣り合う実装領域4(電子素子実装用基板1)で連続していてもよい。これにより、凹部5を設ける個数を少なくすることができる。よって、凹部5間の距離を開けることができ、凹部5を設ける際の応力でクラックまたは割れが発生することを低減させることが可能となる。また、凹部5および第1膜6が隣り合う実装領域4(電子素子実装用基板1)で連続していることで、実装領域4(電子素子実装用基板1)が小型化した場合においても一定の大きさを保つことが可能となる。よって、凹部5および第1膜6を設ける工程において工程不可を軽減することが可能となる。また、第1膜6をダイシングマークまたはアライメントマークとして使用する場合において、第1膜6が小さすぎる、または凹部5が小さく、画像認識機で認識できない等の不具合を低減させることが可能となる。
【0100】
図10に示す例では、基板領域52aは平面視において矩形状であり、第1膜6は、平面視において基板領域52aの境界と平行に位置しており、十字状であってもよい。このことで、X軸およびY軸のどちらの方向にも第1膜6が伸びていることで、ダイシングマークとして使用が容易となる。また、第1膜6が十字状であることで、第1膜6の中心と各実装領域4(電子素子実装用基板1)の角部の中心とが重なるように位置することが可能となる。よって、第1膜6をダイシングマークとして使用する際に、画像認識機で切断が必要なポイントを確認しやすく、より精度よく切断することが可能となる。
【0101】
なお、
図10に示す例では、第1膜6は十字箇所が金属膜または絶縁膜で形成されているが、その逆であってもよい。言い換えると、凹部5の底面に十字またはその他の所定の形状以外の箇所に金属膜または絶縁膜からなる第1膜6が位置していてもよい。
【0102】
<電子素子実装用母基板の製造方法>
次に、本実施形態の電子素子実装用母基板51の製造方法の一例について説明する。
【0103】
(1)まず、電子素子実装用母基板51を構成するセラミックグリーンシートを形成する。例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)質焼結体である基板2を得る場合には、Al2O3の粉末に焼結助材としてシリカ(SiO2)、マグネシア(MgO)またはカルシア(CaO)等の粉末を添加し、さらに適当なバインダー、溶剤および可塑剤を添加し、次にこれらの混合物を混錬してスラリー状となす。その後、ドクターブレード法またはカレンダーロール法等の成形方法によって多数個取り用のセラミックグリーンシートを得る。
【0104】
なお、電子素子実装用母基板51が、例えば樹脂から成る場合は、所定の形状に成形できるような金型を用いて、トランスファーモールド法またはインジェクションモールド法、複数層の場合にはビルドアップ法等で成形することによって電子素子実装用母基板51を形成することができる。また、電子素子実装用母基板51は、例えばガラスエポキシ樹脂のように、ガラス繊維から成る基材に樹脂を含浸させたものであってもよい。この場合には、ガラス繊維から成る基材にエポキシ樹脂の前駆体を含浸させ、このエポキシ樹脂前駆体を所定の温度で熱硬化させることによって電子素子実装用母基板51を形成できる。
【0105】
(2)次に、スクリーン印刷法等によって、上記(1)の工程で得られたセラミックグリーンシートに電極パッド3、外部回路接続用電極、内部配線導体および貫通導体となる部分に、金属ペーストを塗布または充填する。この金属ペーストは、前述した金属材料から成る金属粉末に適当な溶剤およびバインダーを加えて混練することによって、適度な粘度に調整して作製される。なお、金属ペーストは、電子素子実装用母基板51との接合強度を高めるために、ガラスまたはセラミックスを含んでいても構わない。
【0106】
また、電子素子実装用母基板51が樹脂から成る場合には、電極パッド3、外部回路接続用電極、内部配線導体および貫通導体は、スパッタ法、蒸着法等によって作製することもできる。また、表面に金属膜を設けた後に、めっき法を用いて作製してもよい。
【0107】
なおこの工程において、凹部5の底面となる箇所に第1膜6となる金属ペーストまたは絶縁ペーストを塗布または充填することが可能となる。
【0108】
(3)次に、前述のグリーンシートを金型等によって加工する。ここで基板2となるグリーンシートの所定の箇所に、金型、パンチング、またはレーザー等を用いて凹部5を設けてもよい。
【0109】
(4)次に、各絶縁層となるセラミックグリーンシートを積層して加圧する。このこと
により各絶縁層となるグリーンシートを積層し、電子素子実装用母基板51となるセラミックグリーンシート積層体を作製してもよい。また、この時、複数層を積層したセラミックグリーンシートを所定の位置に、金型、パンチング、またはレーザー等を用いて凹部5とを設けてもよい。もしくは、凹部5となる位置に貫通孔を有する複数のセラミックグリーンシートを準備し、それぞれを積層して複数の層からなる基板2としてもよい。
【0110】
(5)次に、このセラミックグリーンシート積層体を約1500℃~1800℃の温度で焼成して、電子素子実装用母基板51を得る。なお、この工程によって、前述した金属ペーストは、電子素子実装用母基板51となるセラミックグリーンシートと同時に焼成され、電極パッド3、外部回路接続用電極、内部配線導体および貫通導体となる。
【0111】
(6)次に、電子素子実装用母基板51に、それぞれ電解または無電解めっき法を用いて、電極パッド3、外部接続用パッドおよび露出した配線導体にめっきを被着させてもよい。
【0112】
(第6の実施形態)
図11~
図13を参照して本発明の第6の実施形態における電子素子実装用母基板51について説明する。なお、本実施形態では
図11および
図12で電子素子実装用母基板51を示している。また、
図13に電子素子実装用母基板51の要部Cの拡大平面図を示す。
図13において、基板領域52aの境界の仮想延長線αおよびβは点線で表している。
【0113】
電子素子実装用母基板51は、上面に電子素子10が実装される実装領域4を有する複数の基板領域52aを有している。電子素子実装用母基板51は、複数の基板領域52aを囲んで、複数の基板領域52aと連続して位置したダミー領域52bを有している。電子素子実装用母基板51は、ダミー領域52bの上面に位置した凹部を有している。電子素子実装用母基板51は凹部5に位置した第1膜6を有している。
【0114】
ここで、電子素子実装用母基板51の基本的な構造並びに電子素子実装用母基板51を構成する絶縁層、電極パッド3、凹部5と、第1膜6およびその他、電子素子実装用母基板51の基本的な材料/条件/構成/製造方法は第5の実施形態と類似であるため説明は省略する。以下、第6の実施形態における特徴部分のみ説明をする。
【0115】
電子素子実装用母基板51は、複数の基板領域52aを囲んで、複数の基板領域52aと連続して位置したダミー領域52bを有している。ここで、ダミー領域52bとは複数の基板領域52a以外の領域のことであり、電解メッキ用の導通パターン(メッキダイバー)等、変形防止用のメタライズパターンまたはスリット等を有していてもよい。
【0116】
電子素子実装用母基板51は、ダミー領域52bの上面に位置した凹部を有している。電子素子実装用母基板51は凹部5に位置した第1膜6を有している。
【0117】
一般的に、電子素子10を実装する工程の一つに電子素子実装用母基板51に電子素子10を実装し、その後に各電子素子実装用基板1を得るために切断する場合がある。この時、切断を行う位置を定める方法として例えば電子素子実装用母基板51のダミー領域52bにダイシングマークを設けることがある。また、電子素子10を実装する際にその位置を定める方法としてアライメントマークを設ける場合がある。
【0118】
電子素子実装用母基板51の表面は、塵等の付着が生じる場合がある。また、搬送時に搬送容器等と電子素子実装用母基板51との接触、冶具等と電子素子実装用母基板51との接触等において傷が生じる場合があった。これらの要因により、ダイシングマークを画像認識で認識する際において、これら塵または傷をダイシングマークと誤認識し、または
検出できず、電子素子実装用母基板51を切断する工程において切断位置がずれる、切断機が停止してしまうなどの不具合があった。
【0119】
これに対し、本実施形態において、電子素子実装用母基板51は凹部5を有しており、凹部5に位置した第1膜6を有している。ここで。第1膜6をダイシングマークとして機能させることで、上述した塵または傷がダイシングマーク(第1膜6)近傍に生じることを低減させることが可能となる。よって、ダイシングマーク(第1膜6)を画像認識で認識する際において、これら塵または傷をダイシングマーク(第1膜6)と誤認識し、またはダイシングマーク(第1膜6)を検出できず、電子素子実装用母基板51を切断する工程において切断ズレなどの不具合を低減させることが可能となる。
【0120】
また、近年の電子素子実装用基板1の小型化の要求により電子素子実装用基板1の外辺と実装される電子素子10との実装位置の精度は厳しくなっている。また電子素子10を実装する電極パッド3若しくは電子素子実装用基板1の内部配線等は電子素子実装用基板1の外辺とのクリアランス(距離)がより小さくなっている。ダイシングマークが工程誤差等の影響で位置がずれると、切断する位置がずれてしまう場合がある。切断位置がずれることで、外辺基準で電子素子10を実装する場合、電子素子の実装位置がずれてセンシングの不具合が発生する懸念、実装不良が起きる懸念がある。また、電子素子を実装するパッド若しくは内部配線等が切断され、電子素子を実装できないまたは電気的に不具合が起きる懸念がある。
【0121】
これに対し、本実施形態では、電子素子実装用母基板51は凹部5を有しており、凹部5に位置した第1膜6を有している。このことで、第1膜6を設ける位置により、ダイシングマークが工程誤差等の影響で位置がずれることを低減させることが可能となる。よって、切断位置のずれで、電子素子10の実装位置がずれてセンシングの不具合が発生すること、電子素子10の実装不良が発生すること、また電子素子を実装するパッド若しくは内部配線等が切断され、電子素子を実装できないまたは電気的に不具合が発生する事を低減させることが可能となる。ここで、第1膜6の位置としては、例えば電子素子10の実装領域4と同一平面上に第1膜6が位置することで、電子素子10の実装位置がずれてセンシングの不具合が発生することを低減させることが可能となる。また、例えば電子素子10を接続する電極パッド3と同一平面上に第1膜6が位置することで電子素子10の実装不良が発生することを低減させることが可能となる。また、電子素子実装用基板1の外辺から距離が小さい内部配線(または電極パッド3)が多い層と同一平面上であることで、電子素子を実装するパッド若しくは内部配線等が切断され、電子素子を実装できないまたは電気的に不具合が発生する事を低減させることが可能となる。
【0122】
電子素子実装用母基板51の第1膜6は、内部配線導体または貫通導体によって、電極パッド3または/および外部回路接続用電極等はそれぞれ電気的に接続されていてもよい。第1膜6は、電子素子実装用母基板51が電気絶縁性セラミックスから成る場合には、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銀(Ag)若しくは銅(Cu)またはこれらから選ばれる少なくとも1種以上の金属材料を含有する合金等が含まれる。また、銅からなっていてもよい。また、第1膜6は、電子素子実装用母基板51が樹脂から成る場合には、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)若しくはチタン(Ti)またはこれらから選ばれる少なくとも1種以上の金属材料を含有する合金等が含まれる。第1膜6の露出表面に、めっき層を有していてもよい。この構成によれば、第1膜6の露出表面を保護して酸化を低減することができる。めっき層は、例えば、厚さ0.5μm~10μmのNiめっき層を被着させるか、またはこのNiめっき層および厚さ0.5μm~3μmの金(Au)めっき層を順次被着させてもよい。
【0123】
第1膜6は、絶縁膜から成っていてもよい。これにより、第1膜6が金属材料から成るときと同様の効果を奏することが可能となる。また、基板2が電気絶縁性セラミックスからなる場合、第1膜6が同種の絶縁膜であることで、焼結し一体化することが可能となる。よって第1膜6が剥離することを低減させることが可能となる。
【0124】
図11に示す例のように、ダミー領域52bに位置する凹部5および第1膜6は複数の基板領域52aの近傍に位置していてもよいし、
図12に示す例のように離れて位置していてもよい。ダミー領域52bに位置する凹部5および第1膜6が複数の基板領域52aの近傍に位置していることで、複数の基板領域52aを切断する工程において、切断を開始する箇所(第1膜6)と切断箇所(基板領域52a)との距離が小さいため、誤差が生じ辛くより切断の精度を向上させることが可能となる。また、凹部5および第1膜6が複数の基板領域52aから離れて位置していると、切断刃が接触する時の応力が基板領域52aに伝わることを低減することができ、基板領域52aにクラックまたは割れが発生することを低減させることが可能となる。また、凹部5を設ける工程における応力により、基板領域52aにクラックまたは割れが発生することを低減させることが可能となる。
【0125】
図11および
図12ではダミー領域52bにのみ凹部5および第1膜6が設けられているが、複数の基板領域52aの端部それぞれにも凹部5および第1膜6は設けられていてもよい。電子素子実装用母基板51が、ダミー領域52bのみに凹部5および第1膜6を有していることで、凹部5の個数が少なくなり凹部5を作製する金型等の経費の削減および工程の不可を低減させることが可能となる。また、凹部5の個数を少なくすることで、例えば電子素子実装用母基板51が電気絶縁性セラミックスからなるとき、電子素子実装用母基板51の全体の変形を低減させることが可能となる。電子素子実装用母基板51が、ダミー領域52bおよび複数の基板領域52aの端部それぞれにも凹部5および第1膜6を有していることで、複数の凹部5および第1膜6間の距離を小さくすることが可能となるため細かい軌道修正が可能となり、第1膜6をダイシングマークとして使用した場合の切断の位置精度をより向上させることが可能となる。
【0126】
図13に、電子素子実装用母基板51の要部Cの拡大図を示す。
図13に示す例のように、平面視において、基板領域52aの境界の延長線(αおよびβ)上に凹部5が位置している。これにより、第1膜6をダイシングマークとして機能させることができる。よって、電子素子実装用母基板51を切断する工程において切断ズレなどの不具合を低減させることが可能となる。
【0127】
基板領域52aの境界の延長線(αおよびβ)は第1膜6の中心近傍を通っていて見よい。これにより、第1膜6をダイシングマークとして機能させる際に、第1膜6の中心から切断をすることになる。よって、電子素子実装用母基板51を切断する工程において切断位置の設定などの工程不可を低減させることが可能となる。
【0128】
図13に示す例では第1膜6は十字状であるが、それ以外の形状であってもよい。例えば、X軸方向またはY軸方向の何れかの方向に延びている矩形状の形状であってもよい。
【0129】
なお、本発明は上述の実施形態の例に限定されるものではなく、本発明に係る各実施形態、その内容に矛盾をきたさない限り、すべてにおいて組合せ可能である。数値などの種々の変形は可能である。また、例えば、凹部5および第1膜6の形状は、
図1~
図13に示す例以外の形状(円形状、矩形状、楕円状等)であっても構わない。また、複数の、凹部5および第1膜6のそれぞれの平面視における大きさが異なっていても同じでも構わない。第1膜6があることによって、目印となり、電子素子の実装性が向上する。また、例えば、
図1~
図13に示す例では、電極パッド3の形状は上面視において四角形状であるが、円形状やその他の多角形状であってもかまわない。また、本実施形態における電極パッド3、凹部5および第1膜6の配置、数、形状および電子素子の実装方法などは指定されない。
【符号の説明】
【0130】
1・・・・電子素子実装用基板
2・・・・基板
3・・・・電極パッド
4・・・・実装領域
5・・・・凹部
6・・・・第1膜
10・・・電子素子
12・・・蓋体
13・・・電子素子接合材
14・・・蓋体接合材
21・・・電子装置
31・・・電子モジュール
32・・・筐体
51・・・電子素子実装用母基板
52a・・基板領域
52b・・ダミー領域
α・・・・基板領域の境界の仮想線
β・・・・基板領域の境界の仮想線