(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】胎盤増殖因子組成物の非外科的かつ限局的な送達
(51)【国際特許分類】
A61K 35/50 20150101AFI20231128BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231128BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231128BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20231128BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231128BHJP
A61K 38/18 20060101ALN20231128BHJP
【FI】
A61K35/50
A61K47/10
A61K47/36
A61K47/42
A61P43/00 107
A61K38/18
(21)【出願番号】P 2018511469
(86)(22)【出願日】2016-09-06
(86)【国際出願番号】 US2016050382
(87)【国際公開番号】W WO2017041089
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-08-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-01
(32)【優先日】2015-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514156585
【氏名又は名称】ミメディクス グループ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クーブ,トマス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,レベッカ ジェー.シー.
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/109329(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0050788(US,A1)
【文献】特表2014-505111(JP,A)
【文献】コスメトロジー研究報告,2006年,Vol.14,pp.22-26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61L
PubMed
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患または損傷のある臓器及び身体部分の処置に十分な量の、改変胎盤組織から抽出された胎盤増殖因子を含む組成物であって、前記疾患または損傷のある臓器または身体部分に対しまたはそれに近接して適用された際に限局的な生体侵食性の塊の形態をとり、かつ約500μm~約10μmの孔径を有するシーブで濾過可能な微粒子化された胎盤組織粒子、
及び相変化
剤をさらに含
み、
前記相変化剤が、ポロクサマーPF-127であり、前記限局的な生体侵食性の塊は、30日から6ヵ月までの期間にわたって、治療量の前記胎盤増殖因子の継続的な放出を示す、組成物。
【請求項2】
限局化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記限局化剤が、ヒドロゲル、ポリマー、及びコラーゲンゲルからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記微粒子化された胎盤組織粒子が、孔径が約300μm~約10μmのシーブで濾過可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記微粒子化された胎盤組織粒子が、孔径が約250μm~約25μmのシーブで濾過可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
胎盤増殖因子の限局的送達のための組成物を調製する方法であって、孔径が約500μm~約10μmのシーブで濾過可能な微粒子化された胎盤組織粒子の水性懸濁液と、改変胎盤組織から抽出された胎盤増殖因子の水溶液と、十分な量の
、相変化剤である限局化剤とを合わせることを含み、
ここで前記相変化剤は、ポロクサマーPF-127であり、それにより前記組成物が投与時に送達部位で限局的に保持さ
れ、前記限局的に保持された組成物は、30日から6ヵ月までの期間にわたって、治療量の前記胎盤増殖因子の継続的な放出を示す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分的には、胎盤増殖因子を含む組成物及びその非外科的かつ限局的な送達方法を対象とする。一実施形態では、当該組成物は、疾患または損傷のある臓器及び/または身体部分に送達され、かつ送達部位における組成物の限局的保持を可能にする薬剤と共に共送達される。
【背景技術】
【0002】
これまで、改変胎盤組織は、疾患または損傷のある内部臓器または身体部分の処置に使用されてきた。しかし、このような使用は、利用可能な組織の量や臓器のサイズにより制約されている。一般に、所望の結果を誘発する最小量の改変胎盤組織が使用されている。例えば、一実施形態では、胎盤組織は臓器間のバリア層として癒着形成を防止するために使用されている。例えば、米国特許出願公開第2010/0104539号を参照。
【0003】
改変胎盤組織をin vivo配置するには侵襲的プロセスが必要であり、そのため、配置には通常は手術を伴う切開が必要である。しかし最近では、胎盤組織の非侵襲的送達を提供するため、胎盤組織の懸濁液を含有する注射溶液が使用されている。このアプローチは、胎盤組織をin vivo送達部位に直接送達することを可能にするが、このように送達する胎盤組織のサイズ及び量は、注射針の幅や送達体積により制約される。
【0004】
結果として、微粒子化された胎盤組織粒子の注射形態での使用は、疾患または損傷のある組織に顕著な利益をもたらした。しかし、このような組成物は、商業的には成功したものの、in vivoの保持時間が、微粒子化された粒子から生じる非常に大きな表面積によって制約される。微粒子化された粒子よりも表面積が小さく、材料となる胎盤組織移植片よりも表面積が大きい組成物を送達または配置すれば、より長く持続する利益が患者にもたらされると考えられる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一部には、胎盤組織から形成された生体侵食性または生体分解性の塊が長期間にわたる増殖因子の持続放出を可能にするという発見に基づいている。
【0006】
また本発明は、組成物の限局的送達が、送達部位での自らの限局的保持を可能にする薬剤の溶液または懸濁液における共送達により達成され得るという発見にも基づいている。このような薬剤としては、チキソ剤、相変化剤などが挙げられる。これらの薬剤は、共送達されると粘性またはゲル様の生体侵食性または生体分解性の塊をin vivo形成し、これにより、送達部位からの輸送が制限され、形成された塊から増殖因子が一定期間にわたり拡散することが可能になる。
【0007】
したがって、本発明の一態様では、微粒子化された胎盤組織から形成された規定の表面積と、疾患または損傷のある臓器または身体部分の処置に十分な量の胎盤増殖因子とを含む組成物であって、前記疾患または損傷のある臓器または身体部分に対しまたはこれに近接して適用されると限局的な塊を形成する、組成物が提供される。
【0008】
本発明の別の態様では、当該組成物は、本明細書で定義される改変胎盤組織粒子を含有する。別の実施形態では、当該組成物は、改変胎盤組織粒子を含まない。
【0009】
別の態様では、胎盤増殖因子の限局的送達を行うための組成物を調製する方法であって、微粒子化された胎盤組織粒子から形成される多孔質の生体侵食性または生体分解性の塊を形成するステップを含む、方法が提供される。別の実施形態では、この多孔質の塊は、胎盤組織粒子の水性懸濁液または胎盤増殖因子の水溶液を、送達部位における溶液または懸濁液の限局的保持を可能にする十分な量の薬剤と合わせることにより、in situ形成することができる。このような薬剤としては、チキソ剤、相変化剤などが挙げられる。
【0010】
生体適合性のチキソ剤は、以下は例に過ぎないが、ヒアルロン酸、コラーゲン、トロンビンゲル、フィブリンゲル、及びフィブリン糊から選択される。別の実施形態では、相変化剤は、Pluronic(登録商標)などのゲル形成剤(例えば、オキシエチレン及びオキシプロピレンのコポリマー)である。好ましくは、チキソ剤または相変化剤として使用される任意のポリマーは、生体侵食性である。また別の実施形態では、身体部分は、皮膚、粘膜、歯に隣接する歯肉、骨、軟骨、腱、網膜、末梢神経、末梢神経鞘、小腸、大腸、胃、骨格筋、心臓、肝臓、肺、及び腎臓からなる群から選択される。
【0011】
チキソ組成物は、剪断の不在下では無限の粘度を有し(移動せず)、剪断の存在下では粘度が大きく低下して剪断下での送達が可能になる組成物である。チキソ組成物の一例に練り歯磨きがある。相変化組成物は、適したトリガー(例えば、温度上昇、光活性化、電磁的刺激、相変化補因子の添加(例えば、アルギン酸塩及びカルシウム))に基づいて、液体からゲルまたは固形の塊への変化を経る水性組成物である。このような組成物は、当技術分野において周知である。これらの組成物は、注射下で送達可能であることが好ましいが、必要に応じて局所的に送達してもよい。当該組成物の粘度のために従来型の注射ができない場合、当技術分野で周知の高圧シリンジを使用してもよい。このような高圧シリンジの非限定的例としては、米国特許第6,503,244号(参照によりこの全体が本明細書に組み込まれる)などに記載のものが挙げられる。
【0012】
本発明の一態様では、疾患または損傷のある臓器及び身体部分の処置に十分な量の胎盤増殖因子を含む組成物であって、前記疾患または損傷のある臓器または身体部分に対しまたはそれに近接して適用された際に限局的な生体侵食性の塊の形態をとり、かつ孔径が約500μm~約10μmのシーブで濾過可能な微粒子化された胎盤組織粒子をさらに含む、組成物が提供される。
【0013】
本発明の一態様では、胎盤増殖因子の限局的送達のための組成物を調製する方法であって、孔径が約500μm~約10μmのシーブで濾過可能な微粒子化された胎盤組織粒子の水性懸濁液と、胎盤増殖因子の水溶液と、十分な量の限局化剤とを合わせることを含み、それにより、当該組成物が投与時に送達部位で限局的に保持される、方法が提供される。
【0014】
一部の実施形態では、当該組成物は、限局化剤(例えば、チキソ剤)または相変化剤をさらに含む。一部の実施形態では、チキソ剤は、ヒアルロン酸、コラーゲン、トロンビンゲル、フィブリンゲル、及びフィブリン糊からなる群から選択される。他の実施形態では、相変化剤は、ゲル形成剤、例えば、オキシエチレン及びオキシプロピレン単位のコポリマーまたはトリポリマーからなる群から選択される。また他の実施形態では、限局化剤は、ヒドロゲル、ポリマー、及びコラーゲンゲルからなる群から選択される。
【0015】
一部の実施形態では、微粒子化された胎盤組織粒子は、孔径が約300μm~約10μm、または約250μm~約25μmのシーブで濾過可能である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を開示及び説明する前に、以下に説明する諸態様は、特定の組成物、合成方法、または使用に限定するものではなく、これら自体は当然ながら様々であり得ることを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、特定の態様を説明するためのものに過ぎず、こうした用語が限定的であるようには意図されていないことも理解されたい。
【0017】
本発明は、一部には、増殖因子の限局的送達が、このような増殖因子の溶液を用いて、または十分な量の改変胎盤組織と疾患または損傷のある身体部分を処置するための増殖因子デポーを提供できる程度に十分なレベルのin vivo凝固をもたらす薬剤との組み合わせを用いて、達成され得るという発見に基づいている。
【0018】
本明細書及びその後の請求項において複数の用語への言及がなされるが、これらの用語は以下の意味を有するように定義される。
【0019】
本明細書及び付属の請求項で使用する単数形「a(1つの)」、「an(1つの)」、及び「the(その)」は、文脈による別段の明確な定めがない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。したがって、例えば「生体活性剤(a bioactive agent)」と言及した場合、このような薬剤の2種以上の混合物などが含まれる。
【0020】
「任意選択の」または「任意選択により」とは、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、またその記載が、当該事象または状況が生じる場合と生じない場合とを含むことを意味する。例えば、「任意選択による洗浄ステップ」という表現は、洗浄ステップが実施されてもされなくてもよいことを意味する。
【0021】
本明細書で使用する「対象」または「患者」という用語は、以下に限定するものではないが、ヒト、家畜、飼い慣らされたペットなどの哺乳類対象を指す。
【0022】
本明細書で使用する「羊膜」という用語は、中間組織層がインタクトであるか、または実質的に除去された羊水の膜を含む。
【0023】
「外面」という用語は、改変胎盤組織の一方または両方の表面であって、組織を適用する患者の臓器に接触することになる表面を指す。
【0024】
本明細書で使用する「臓器」という用語は、当技術分野における通常の意味で使用され、一般に動物の内臓を構成する臓器を指す。
【0025】
本明細書で使用する「疾患のある(diseased)」という用語は、胎盤増殖因子による処置を適用可能な疾患状態にある、または疾患状態になりやすいとして特徴づけられる臓器及び/または身体部分を指す。
【0026】
本明細書で使用する「損傷のある(injured)」という用語は、当技術分野における通常の意味で使用され、胎盤増殖因子による処置を適用可能なあらゆるタイプの臓器及び/または身体部分に対する損傷を含む。
【0027】
本明細書で使用する「生体適合性」という用語は、対象への移植または注射に適した材料を指す。様々な態様において、生体適合性の材料は、対象に移植してときに毒性作用や有害作用を引き起こさない。
【0028】
「改変胎盤組織」という用語は、組織の洗浄、消毒、及び/または分割により改変した全胎盤組織を含めた胎盤組織のあらゆる構成要素、ならびに分離された胎盤組織の構成要素、例えば、羊膜、絨毛膜、臍帯などを指す。改変組織は、上皮層及び/または線維芽細胞層などの細胞層を維持することができる。改変胎盤組織は、胎盤組織の1つ以上の層の積層、胎盤組織の微粒子化、小分子、タンパク質(例えば、増殖因子、抗体)、核酸(例えば、アプタマー)、ポリマー、または他の物質の化学吸着または物理吸着、などのさらなる改変を含み得る。
【0029】
「改変胎盤組織粒子」という用語は、シリンジ注射に適した懸濁液を形成できる程度に十分小さな粒子となるように作製された、改変胎盤組織粒子を指す。このような粒子は、好ましくはサイズが約300ミクロン以下、好ましくは約250ミクロン未満、約200ミクロン未満、約150ミクロン未満、約100ミクロン未満、または約50ミクロン未満である。
【0030】
「胎盤増殖因子」という用語は、改変胎盤組織から取得可能な一連の増殖因子を指す。このような増殖因子を取得する様式は本発明にとって特に重要なものではなく、以下は単なる例に過ぎないが、胎盤からの水抽出、このような増殖因子を発現する胎盤細胞の培養などが挙げられる。抽出された増殖因子の濃度は、増殖因子の抽出に使用する水、食塩水、または緩衝液の体積を減らすことや、胎盤細胞の培養液から精製した増殖因子を添加することなどにより、増加させることができる。
【0031】
「十分な量」または「治療量」という用語は、損傷または疾患のある臓器または身体部分の処置に十分な胎盤増殖因子の量を指す。「十分な量」は、例えば以下に限定するものではないが、使用する胎盤組織のタイプ及び/または量、処置が意図される臓器及び/または身体部分のタイプ及び/またはサイズ、処置する臓器及び/または身体部分に対する疾患または損傷の重症度、ならびに投与経路などの様々な因子に応じて変動することになる。「十分な量」の決定は、当業者により、本明細書で提供される開示に基づいて行うことができる。
【0032】
本明細書で使用する「~に近接して(proximate to)」という用語は、胎盤増殖因子が所望の効果を発揮するように、身体部分に隣接または接することを意味する。概して、「~に近接して」は、一般に当業者の技能範囲内の距離を意味するが、好ましくは臓器もしくは身体部分から約3cm、約2cm、約1cm以内の距離、または臓器もしくは身体部分に接するかその内部にあることを意味する。
【0033】
本明細書で使用する「生体侵食性(bioerodible)」という用語は、「生体分解性(biodegradable)」という用語と互換的に使用され、この材料が通常の生存条件下で生物に無害であるように、次第にin situ分解、溶解、加水分解、及び/もしくは侵食する、または長期間にわたり、例えば数日もしくは数ヶ月にわたり、生物内でより小さな構成要素もしくは分子に分解されやすい、生体適合性材料を指す。概して、本明細書における「生体侵食性」ポリマーは、加水分解性であり、主に加水分解を通じてin situ生体侵食するポリマーである。より小さい構成要素または分子が患者に対し生体適合性であることが好ましい。
【0034】
当業者であれば理解するであろうが、材料が分解することで、材料に組み込まれた治療量の胎盤増殖因子が、長期間にわたり、例えば約3日、約5日、約10日、約15日、約20日、約25日、約30日、約2ヵ月、約3ヵ月、約4ヵ月、約5ヵ月、または約6ヵ月にわたり、継続的に放出される。所望の放出速度は、生体侵食性または生体分解性の塊に組み込まれた増殖因子の初期濃度及び塊の分解速度を調整することにより、決定及び/または達成することができる。
【0035】
生体侵食性または生体分解性の塊は、注射部位におけるまたはその近接領域での限局的保持という利点を有する。加えて、生体侵食性または生体分解性の塊の配置は、塊を形成する微粒子化された胎盤組織の構成要素に見いだされる表面積の実質的部分を保持するように構成される。例えば、当該塊は、ハニカム形状に構成することができ、それにより孔がかなりの表面積保持をもたらす。オス及びメス両方の半鋳型に複数のスパイク、歯、プロングなどを含む鋳型は、かなりの量の表面積を有する多孔質の生体侵食性または生体分解性の塊をもたらすことになる。塊にレーザードリル加工を行うことにより、さらなる表面積を作り出すことができる。多孔質の塊を形成するための他の手段は、当技術分野において周知である。上記で論じた生体侵食性または生体分解性の塊は、その表面積の実質的部分を保持する。例えば、生体侵食性または生体分解性の塊は、その表面積の約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、または約50%を、ある期間、例えば、約3日、約5日、約10日、約15日、約20日、約25日、約30日、約2ヵ月、約3ヵ月、約4ヵ月、約5ヵ月、または約6ヵ月、保持することができる。全ての場合において、これは胎盤組織移植片よりも著しく大きい。当然ながら、分解速度はin vivoで曝露される表面積の量に依存することになり、曝露表面積が大きいほど分解速度は速くなる。
【0036】
生体侵食性または生体分解性の塊からの増殖因子の徐放期間は、前記塊がin vivo注射または移植の際に生理的体液に曝露される表面積に関係がある。本明細書で提供する情報に基づけば、当業者は塊のサイズ及び塊の表面積に直接、少なくとも部分的に基づいて、徐放の持続期間を日常的に評価することができる。このようなパラメーターを用いて、当業者は、シンプルな相関により、所定の徐放期間を有する適した塊を形成することができる。
【0037】
本明細書においてタイトルまたはサブタイトルが読者の便宜のために使用され得るが、本発明の範囲に影響を及ぼすようには意図されていない。加えて、本明細書で使用するいくつかの用語は、以下でより具体的に定義される。
【0038】
一実施形態では、胎盤組織は、米国仮特許出願第61/683,698号に記載のように、洗浄、羊膜及び絨毛膜の分離、上皮細胞層の除去または維持、汚染除去、ならびに脱水を含めて、改変され得る。脱水は、米国仮特許出願第61/683,698号に記載される乾燥装置を用いて遂行することができる。両出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。このプロセスの各態様は、単独で使用しても組み合わせて使用しても、本発明のための改変胎盤組織をもたらす。しかし、胎盤組織の改変は、少なくとも洗浄及び汚染除去のステップを含むことが好ましい。そのため、改変胎盤組織は、好ましくは、洗浄及び汚染除去された胎盤組織を含み、さらに、羊膜及び絨毛膜の分離、上皮細胞層の除去、及び脱水のうちの1つ以上を経た胎盤組織も含む。
【0039】
本発明技術の一部の実施形態では、改変胎盤組織は、羊膜、絨毛膜、または羊膜及び絨毛膜の両方、から選択される。例示的な実施形態では、改変胎盤組織は臍帯を含まない。
【0040】
改変胎盤組織は複数の層に形成することもでき、これらは別々に乾燥し共に積層するか、または共に乾燥して複数層の積層体を形成することができる。
【0041】
本明細書では、微粒子化された胎盤組織構成要素及びその医薬組成物から構成される組成物について記載する。一態様では、当該組成物は、(a)微粒子化された羊膜、絨毛膜、中間組織層、またはこれらの任意の組み合わせと、(b)医薬的に許容される担体とを含む。一態様では、当該組成物は、微粒子化された羊膜及び中間組織層を含む。別の態様では、当該組成物は、微粒子化された羊膜及び中絨毛膜を含む。微粒子化された胎盤組織は、複数層の積層体の1つ以上の層の間に挟まれていても、積層体の上部にあってもよい。また、微粒子化された胎盤組織は、改変胎盤組織の単層に添加してもよい。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/683,700号を参照。
【0042】
羊膜、絨毛膜、及び/または中間組織層が個別にまたは組織移植片の形態で脱水されると、脱水された組織は微粒子化される。微粒子化された組成物は、当技術分野で公知の機器を用いて生成することができる。例えば、Retsch Oscillating Mill MM400は、本明細書に記載の微粒子化された組成物の生成に使用することができる。微粒子化された組成物における材料の粒子サイズは、微粒子化された組成物の用途に応じて変動し得る。一態様では、微粒子化された組成物の粒子は、500μm未満、400μm未満、300μm未満、または25μm~300μm、25μm~200μm、または25μm~150μmである。あるいくつかの態様では、直径がより大きい(例えば、150μm~350μm)粒子が望ましい。
【0043】
サイズによる粒子の分離は、例えば、遠心分離、沈殿、シーブ技法を含めた、当業者に知られている任意の方法を使用することができる。一実施形態では、シーブを使用して粒子をサイズにより分離する。シーブのサイズ(すなわち、シーブの孔開口部)は、、約500μm~約10μm、約400μm~約20μm、約350μm~約25μm、約300μm~約35μm、約300μm~約45μm、約250μm~約50μm、約210μm~約60μm、約175μm~約75μm、約150μm~約80μm、約125μm~約100μm、またはこれらのうちの任意の範囲である。一部の実施形態では、シーブのサイズ(すなわち、開口部)は、約500μm、約400μm、約350μm、約300μm、約250μm、約210μm、約175μm、約150μm、約125μm、約100μm、約80μm、約75μm、約60μm、約50μm、約45μm、約35μm、約25μm、約20μm、約10μmである。
【0044】
当業者であれば、シーブを用いて粒子を分離する場合、少なくとも粒子の一部の直径が使用するシーブの開口部よりも大きくてもよいことを理解する。別の言い方をすれば、粒子の形状がロッドの形状に似ている場合、長軸は短軸より約25%長くてもよく、したがって短軸が75μm未満で長軸が約100μmの粒子であっても75μmのシーブを用いて収集することができる。一部の実施形態では、微粒子化された胎盤粒子の長軸は、短軸より約30%長くても、短軸より約25%長くても、短軸より約20%長くても、短軸より約15%長くても、短軸より約10%長くても、短軸より約5%長くても、短軸より約1%長くてもよい。
【0045】
一態様では、微粒子化は機械的粉砕または細断により実施される。別の態様では、微粒子化は低温粉砕により実施される。この態様では、組織を収容する粉砕ジャーは、粉砕プロセスの前及び最中に、統合型冷却システムからの液体窒素で継続的に冷却される。このようにして、試料を脆化し、揮発性の構成要素を保存する。さらに、羊膜、中間組織層、及び/または絨毛膜のタンパク質の変性を最小限に抑えるかまたは防止する。一態様では、Retsch製のCryoMillをこの態様で使用することができる。
【0046】
本明細書に記載の微粒子化された構成要素の作製に使用する構成要素の選択は、組成物の最終使用に応じて変動し得る。例えば、個別の構成要素としての羊膜、絨毛膜、中間組織層またはこれらの任意の組み合わせは、互いに混ぜ合わせてから微粒子化してもよい。別の態様では、1つ以上の羊膜、絨毛膜、中間組織層、またはこれらの任意の組み合わせ(すなわち、積層体)から構成される1種以上の組織移植片が微粒子化され得る。さらなる態様では、1つ以上の羊膜、絨毛膜、中間組織層、または任意の組み合わせから構成される1種以上の組織移植片は、個別の構成要素としての羊膜、絨毛膜、中間組織層、またはこれらの任意の組み合わせと混ぜ合わせてから微粒子化され得る。
【0047】
本明細書に記載の微粒子化された組成物の作製に使用する種々の構成要素の量は、組成物の用途に応じて変動し得る。一態様では、微粒子化された組成物が羊膜(中間組織層有りまたは無し)及び中間組織層から構成される場合、羊膜:中間組織層の重量比は、10:1~1:10、9:1~1:1、8:1~1:1、7:1~1:1、6:1~1:1、5:1~1:1、4:1~1:1、3:1~1:1、2:1~1:1、または約1:1である。別の態様では、微粒子化された組成物が羊膜(中間組織層有りまたは無し)及び絨毛膜から構成される場合、絨毛膜:羊膜の重量比は、10:1~1:10、9:1~1:1、8:1~1:1、7:1~1:1、6:1~1:1、5:1~1:1、4:1~1:1、3:1~1:1、2:1~1:1、または約1:1である。
【0048】
羊膜、中間組織層、及び絨毛膜に加えて、微粒子化の前及び/または後に、追加的な構成要素を組成物に添加してもよい。一態様では、充填剤を添加することができる。充填剤の例としては、以下に限定するものではないが、同種異系移植心膜、同種異系移植無細胞真皮、血管構造(すなわち、臍帯静脈及び動脈)及び周辺の膜から分離させたワルトンゼリー、精製異種移植片1型コラーゲン、バイオセルロースポリマーもしくはコポリマー、生体適合性合成ポリマーもしくはコポリマーフィルム、精製小腸粘膜下組織、膀胱無細胞マトリックス、死体筋膜、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0049】
別の態様では、微粒子化の前及び/または後に、生体活性剤を組成物に添加することができる。生体活性剤の例としては、以下に限定するものではないが、自己採血及び分離生成物のいずれかを用いた血小板濃縮物、または期限切れの保存血を供与源とする血小板濃縮物、を供与源とする天然存在の増殖因子;骨髄吸引液;濃縮ヒト胎盤臍帯血幹細胞に由来する幹細胞、濃縮羊水幹細胞、またはバイオリアクターで増殖させた幹細胞;あるいは抗生剤、が挙げられる。生体活性剤を含む微粒子化された組成物を対象領域に適用すると、生体活性剤は経時的にその領域に送達される。したがって、本明細書に記載の微粒子化された粒子は、対象に投与する際に、生体活性剤及び他の医薬薬剤の送達デバイスとして有用である。放出プロファイルは、特に、微粒子化された組成物の作製に使用する構成要素の選択、及び粒子のサイズに基づいて修正することができる。
【0050】
さらなる態様では、羊膜は中間組織層、絨毛膜、または第2の羊膜組織と架橋させることができる。例えば、架橋剤は、微粒子化の前及び/または後に、当該組成物(例えば、羊膜、絨毛膜、中間組織層、または個別の構成要素としての及び/もしくは組織移植片としてのこれらの任意の組み合わせ)に添加することができる。概して、架橋剤は無毒かつ非免疫原性である。羊膜、中間組織層、及び/または絨毛膜(またはこれらの組織移植片)は架橋剤で処理するが、この架橋剤は同じであっても異なっていてもよい。一態様では、羊膜、中間組織層、及び絨毛膜は、別々に架橋剤で処理することができ、あるいは代替方法として、羊膜、中間組織層、及び絨毛膜は、同じ架橋剤で一緒に処理することができる。あるいくつかの態様では、羊膜、中間組織層、及び絨毛膜は、2種以上の異なる架橋剤で処理することができる。羊膜、中間組織層、及び絨毛膜を処理する条件は変動し得る。他の態様では、羊膜、中間組織層、及び/または絨毛膜を微粒子化し、次に微粒子化された組成物を架橋剤で処理することができる。一態様では、架橋剤の濃度は、0.1M~5M、0.1M~4M、0.1M~3M、0.1M~2M、または0.1M~1Mである。
【0051】
概して、架橋剤は、タンパク質に反応して共有結合をもたらすことができる2種以上の官能基を所持する。一態様では、架橋剤は、タンパク質上に存在するアミノ基に反応することができる基を所持する。このような官能基の例としては、以下に限定するものではないが、置換または非置換のアミノ基、カルボキシル基、及びアルデヒド基が挙げられる。一態様では、架橋剤は、例えばグルタルアルデヒドなどのジアルデヒドとすることができる。別の態様では、架橋剤は、例えば(N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチル-カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミドとすることができる。他の態様では、架橋剤は、酸化デキストラン、p-アジドベンゾイルヒドラジド、N-[α-マレイミドアセトキシル]スクシンイミドエステル、p-アジドフェニルグリオキサール一水和物、ビス-[β-(4-アジドサリチルアミド)エチル]ジスルフィド、ビス-[スルホスクシンイミジル]スベレート、ジチオビス[スクシンイミジル]プロピオネート、ジスクシンイミジルスベレート、及び1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩、二官能性オキシラン(OXR)、またはエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)とすることができる。
【0052】
一態様では、糖は、羊膜、中間組織層、及び絨毛膜中に存在するタンパク質と反応して共有結合を形成することができる架橋剤である。例えば、糖は、還元糖によるタンパク質上のアミノ基の非酵素的グリコシル化により開始し次に共有結合の形成をもたらすメイラード反応により、タンパク質と反応することができる。架橋剤として有用な糖の例としては、以下に限定するものではないが、D-リボース、グリセロース、アルトロース、タロース、エルテオース(ertheose)、グルコース、リキソース、マンノース、キシロース、グロース、アラビノース、イドース、アロース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、スクロース、セリビオース(cellibiose)、ゲンチビオース(gentibiose)、メリビオース、ツラノース、トレハロース、イソマルトース、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0053】
あるいくつかの態様では、微粒子化された組成物は、3次元コンストラクトの形成に使用することができる。例えば、微粒子化された粒子を上述の架橋剤で処理し、次に特定の寸法の鋳型に入れることができる。代替方法として、微粒子化された粒子を鋳型に入れてから架橋剤で処理してもよい。一態様では、架橋した粒子は、手作業で任意の所望の形状に形成することができる。他の態様では、鋳型に導入する前に1種以上の接着剤をある接着剤と混ぜ合わせることができる。このような接着剤の例としては、以下に限定するものではないが、フィブリンシーラント、シアノアクリレート、ゼラチン及びトロンビン生成物、ポリエチレングリコールポリマー、アルブミン、ならびにグルタルアルデヒド生成物が挙げられる。いかなる理論にも拘泥することは望まないが、微粒子化された粒子から構成された3次元コンストラクトは、粒子が小さいほど、機械負荷に耐えられる、より高密度の生成物をもたらすことになる。一方、微粒子化された粒子が大きいほど、密度が低く圧縮特性を所持するコンストラクトをもたらすことになる。この特徴は、無負荷間隙充填(non-load void filling)において、特に不規則形状に適合する生成物を有することが望ましい場合に、有用であり得る。3次元コンストラクトは、本明細書に記載の1種以上の生体活性剤を含むことができる。
【0054】
上述の鋳型により形成された生体侵食性または生体分解性の塊は、表面積を増加させるというさらなる利点を有し得る。加えて、鋳型は多数の押込、起伏などを表面及び塊内に作り出して表面積をさらに増加させることができる。生体侵食性または生体分解性の塊の表面積を減少させると、分解の速度が遅くなって塊の分解、溶解、加水分解、及び/または侵食に、例えば2倍、3倍、4倍、5倍以上かけられるようになる。限局化されたままのゆっくり分解する生体侵食性または生体分解性の塊は、長期の処置レジメンが必要な創傷、または疾患もしくは損傷のある組織の処置に特に有益である。
【0055】
他の態様では、本明細書に記載の微粒子化された組成物を、生体システムまたは実体が認容し得る賦形剤中に配合して医薬組成物を生成することができる。このような賦形剤の例としては、以下に限定するものではないが、水、水性ヒアルロン酸、食塩水、リンゲル液、ブドウ糖液、ハンクス液、及び他の水性の生理的平衡塩類溶液が挙げられる。非水性のビヒクル、例えば、固定油、植物油(例えば、オリーブ油及びゴマ油)、トリグリセリド、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルも使用することができる。他の有用な配合物としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの粘度強化剤を含有する懸濁液が挙げられる。賦形剤は、少量の添加物、例えば等張性及び化学的安定性を強化する物質、を含有してもよい。緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液及びトリス緩衝液が挙げられ、一方保存料の例としては、チメロサール、クレゾール、ホルマリン、及びベンジルアルコールが挙げられる。あるいくつかの態様では、pHは投与方式に応じて修正することができる。さらに、医薬組成物は、本明細書に記載の化合物に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、保存料、界面活性剤などを含んでもよい。
【0056】
医薬組成物は、当技術分野で公知の技法を用いて調製することができる。一態様では、組成物は、本明細書に記載の微粒子化された組成物を医薬的に許容される化合物及び/または担体と混ぜ合わせることにより調製される。「混ぜ合わせる(admixing)」という用語は、2種の構成要素を化学反応も物理的相互作用も生じないように一緒に混合することとして定義される。また、「混ぜ合わせる」という用語は、化合物と医薬的に許容される化合物との間の化学反応または物理的相互作用も含む。
【0057】
微粒子化された組成物における特定の場合での実際の好ましい量は、利用する具体的化合物、配合する特定の組成物、適用方式、ならびに処置される特定の位置及び対象に応じて変動することになると理解されよう。所与の宿主に対する投与量は、従来の考慮事項を用いて、例えば、主題化合物の活性と既知の薬剤との区別的な活性を、例えば適切な従来型の薬理学プロトコルを用いて、通例のやり方で比較することにより、決定することができる。医薬化合物の用量を決定する当業者である医師及び製剤者は、何の問題もなく標準的勧告(Physician's Desk Reference, Barnhart Publishing (1999))に従って用量を決定することになる。
【0058】
本明細書に記載の医薬組成物は、限局的処置が望ましいのか、それとも全身的処置が望ましいのかに応じて、また処置すべき領域に応じて、複数の方法で投与することができる。一態様では、投与は注射により行うことができ、この場合、微粒子化された組成物は液体またはゲルになるよう配合される。他の態様では、微粒子化された組成物は、対象の体内に適用するように配合され得る。他の態様では、微粒子化された組成物は、局所的に(経眼、経膣、直腸、鼻腔内、経口、または皮膚に直接を含む)適用され得る。
【0059】
一態様では、微粒子化された組成物は、皮膚に直接適用する局所用組成物として配合され得る。局所投与用の配合物としては、エマルジョン、クリーム、水溶液、油、軟膏、ペースト、ジェル、ローション、ミルク、フォーム、懸濁液、及び粉末が挙げられ得る。一態様では、局所用組成物には1種以上の界面活性剤及び/または乳化剤が含まれ得る。
【0060】
一部の実施形態では、チキソ剤、相変化剤などのような限局化剤としては、以下に限定するものではないが、ヒドロゲル、生体侵食性、生体適合性ポリマー、及びコラーゲンゲルが挙げられ得る。本発明の組成物中に1種以上の限局化剤が存在することにより、当該組成物は、投与または注射されると、ある期間の間、限局的に保持されるように一定の粘度を有することができる。当該組成物における適した粘度を決定することは、当業者の権限範囲内にある。一部の態様では、当該組成物の粘度は、25℃において、約5cP~約1×108cP、または約5cP~約1×106cP、または約5cP~約1×105cP、または約5cP~約1×104cP、または約5cP~約1×103cP、または約6cP~約9500cPである。
【0061】
本発明の組成物に有用なヒドロゲルは、化学的かつ/または物理的に架橋したヒドロゲルである。in situの化学的架橋は、例えば、好ましくは共有結合形成を伴う光開始、レドックス開始、またはマイケル型付加重合を介して得られる。物理的に架橋したヒドロゲルは外部刺激下で自己組織化し、共有結合形成に依存しない。温度、pH、イオン濃度、及び疎水的相互作用は、このような自己組織化及びこのようなヒドロゲルの固定化に有用な外部刺激の一部である。
【0062】
本発明の組成物に使用するのに適した例示的なポリマーとしては、ポリラクチド、ポリグリコシド、ポリ(カプロラクトン)、ポリ無水物、ポリアミン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリホスホエステル、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、スクシネート、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、ポリホスホエステル、多糖、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、ならびにこれらのコポリマー、ターポリマー、及び混合物が挙げられる。
【0063】
本発明に有用なコラーゲンとしては、I型、III型、またはI+III型コラーゲン、例えば様々な動物から抽出した不溶性コラーゲンのアルカリ処理、またはペプシン、トリプシン、キモトリプシン、パピン(papin)、もしくはプロナーゼなどの酵素での処理によるものが挙げられる。コラーゲンの由来に特定の制限はなく、典型的には鳥類または動物の皮膚、骨、軟骨、腱、または臓器などから得られるコラーゲンを使用することができる。コラーゲンは加熱することなく適した軟度を得ることが可能であるため、ゲル化させる場合に容易に調製を行うことができる。加えて、コラーゲンは高分子量を有し、生体組織にいっそう似ており、かなりの生理的活性を有するため、創傷に使用する場合に治癒を促進し、改変胎盤組織と組み合わせてさらなる治療効果をもたらす。コラーゲンは硬化後も柔軟性を有することができ、また架橋にわずかな時間しか要しない。言い換えれば、ゲル化に短い時間しか要しない。また、コラーゲン溶液は、生体に無毒な溶媒に溶解することにより作製することもでき、溶媒の例としては、水、生理食塩水、ホウ酸塩緩衝液などの緩衝液、または塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、及び臭化カリウムなどの塩、もしくはタンパク質、糖もしくは脂質などを含有する水溶液が挙げられる。
【0064】
また、コラーゲンは、血液または体液におけるような水分の存在下であってもゲルを形成することもでき、また生体組織に対し高度な接着性を示すことができる。本発明で使用するコラーゲン溶液は、注射用に様々な濃度で作製し、中和し、調製することができる。様々な態様では、溶液中0.2mg/mL、0.5mg/mL、0.75mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、10mg/mL、20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、及び50mg/mLのコラーゲンを注射用に使用することができる。臓器に注射すると、冷やされたコラーゲンゲルは体温、すなわち約37℃に到達するに伴いサーモゲルになり得る。
【0065】
本発明の他の実施形態及び使用は、本明細書の考察及び本明細書で開示する本発明の実施から、当業者には明らかであろう。明細書及び以下の実施例は、例示に過ぎないものとしてみなすべきである。
実施例
【0066】
以下の実施例は、本明細書で説明し特許請求する化合物、組成物、及び方法がどのように作製され評価されるかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために示されるものであり、単に例示的なものであるように意図され、発明者らが発明としてみなす範囲を限定するようには意図されていない。数字(例えば、量、温度など)に関する正確さを保証するように努力を払ったが、ある程度の誤差及び偏差は考慮されるべきである。別段の指示がない限り、部は重量部であり、温度は℃で示すか周囲温度であり、圧力は大気圧前後である。反応条件、例えば、構成要素濃度、所望の溶媒、溶媒混合物、温度、圧力、及び他の反応範囲及び条件について、多数の変形形態及び組み合わせが存在し、これらは記載のプロセスから得られる生成物の純度及び収率を最適化するために使用され得る。このようなプロセス条件を最適化するために必要となるのは、合理的かつ通例的な実験のみである。
実施例1 胎盤増殖因子の抽出
【0067】
予め洗浄してある所望量の改変胎盤組織を、4℃の1M NaCL溶液に、溶液:改変胎盤組織の比10:1(w/w)にて24時間抽出する。任意選択により、この抽出はロッカープラットフォームを用いて攪拌下で行う。抽出後、遠心分離により残渣から上清を分離する。次に、収集した上清を水に対し透析し、それから胎盤増殖因子を含有する溶液を凍結乾燥する。投与の際は、凍結乾燥した胎盤増殖因子を注射用に所定の濃度にて水中で再構成することができる。
実施例2 固定化した組成物の調製
【0068】
改変胎盤組織粒子の懸濁液を含有する5mLのEpiFix(登録商標)注射用液(MiMedx Group Inc., Kennesaw, GA, USAから入手可能)を5℃に冷却する。この溶液に、およそ20% w/wのポロクサマーPF-127を添加する。これは、一般式E106 P70 E106、平均モル質量が13,000(25、26)の市販のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーである。得られた組成物は、5℃でその液体特性を保持するが、およそ20℃でゼラチン化する。
【0069】
冷たい溶液を10mLシリンジに装填し、直ちにこの溶液を、軟骨の部分的裂傷を示す患者の膝関節への注射に使用する。注射すると、体温により生体侵食性ゲルに相間移動が生じ、侵食の間、増殖因子を溶出する。
【0070】
本発明の全体にわたり、様々な刊行物が引用されている。これらの刊行物の開示内容は、本明細書に記載の化合物、組成物、及び方法をより十分に説明するために、その全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0071】
本明細書に記載の化合物、組成物、及び方法に対し、様々な修正及び変形を行うことができる。本明細書に記載の化合物、組成物、及び方法における他の態様は、本明細書で開示する化合物、組成物、及び方法の仕様及び実施を考慮すれば明らかとなる。明細書及び実施例は、例示的なものとしてみなされることが意図されている。