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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   F24S 20/00 20180101AFI20231128BHJP
   F24S 10/70 20180101ALI20231128BHJP
   F24S 80/30 20180101ALI20231128BHJP
   H02S 40/44 20140101ALI20231128BHJP
【FI】
F24S20/00 020
F24S10/70
F24S20/00 010
F24S80/30
H02S40/44
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019032140
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020134102
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】賀村 拓
(72)【発明者】
【氏名】吉川 宗利
(72)【発明者】
【氏名】内野 大地
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-262402(JP,A)
【文献】特開2012-186400(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0073970(KR,A)
【文献】特開2002-039631(JP,A)
【文献】特開2017-163662(JP,A)
【文献】特開2001-311564(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02262004(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0277750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24S 20/00
F24S 10/70
F24S 80/30
H02S 40/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルの太陽光を受ける受光面と反対側に設けられ、それぞれ熱媒体が流れる流路を有する複数の集熱器と、
外部から供給された熱媒体を前記複数の集熱器に分配する分配部と、
前記分配部から分配され、前記複数の集熱器の流路を通った熱媒体が合流する合流部と、
前記分配部および前記合流部と、前記複数の集熱器とを接続する配管と、
前記複数の集熱器に対し前記太陽電池パネルと反対側に設けられた断熱部材と、
前記太陽電池パネルの端部と、前記複数の集熱器とを挟み込むことで、前記太陽電池パネル及び前記複数の集熱器を支持するフレームと、を備え、
熱媒体が前記分配部から前記複数の集熱器の流路を通って前記合流部まで到達するまでのそれぞれの経路の長さが略同じであると共に、熱媒体が前記分配部から前記複数の集熱器の流路を通って前記合流部まで到達するまでのそれぞれの経路全体における圧力損失が略同じであり、
前記分配部及び前記合流部の前記受光面と平行な面における周囲が前記断熱部材により覆われることで、前記分配部、前記合流部および前記配管のそれぞれと前記フレームとの間が前記断熱部材で埋められている
ことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記複数の集熱器は、前記太陽電池パネルの受光面と反対側の面に沿って並んで配置されている、
ことを特徴とする、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記複数の集熱器は、それぞれ板状部材と、前記板状部材と溶接により接合され、前記板状部材との間に前記流路を形成する流路形成部材と、を有する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記流路形成部材は、前記板状部材と反対側に突出して設けられ、前記板状部材との間で前記流路を形成する凸状部を有し、
前記凸状部は、熱媒体が前記流路内を流れる方向に直交する断面形状が台形である、
ことを特徴とする、請求項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記複数の集熱器の流路は、互いに隣接して配置される複数の第1流路と、前記複数の第1流路のうち、隣り合う前記第1流路の一端部同士を接続する複数の第2流路と、を有し、
前記板状部材と前記流路形成部材とを溶接した溶接部が、隣り合う前記複数の第1流路の間で前記複数の第2流路を除く領域に、前記第1流路に沿って互いに間隔をあけて複数設けられている、
ことを特徴とする、請求項又はに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記溶接部は、レーザにより溶接された箇所である、
ことを特徴とする、請求項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記太陽電池パネルは、太陽光を受ける側から順に、ガラスと、太陽電池セルと、絶縁シートとが積層されることで構成されており、
少なくとも前記複数の集熱器と前記絶縁シートとの間に熱可塑性樹脂が設けられ、前記複数の集熱器と前記絶縁シートとが一体に熱溶着されている、
ことを特徴とする、請求項1ないしの何れか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記ガラスと、前記太陽電池セルと、前記絶縁シートと、前記複数の集熱器とのそれぞれの間に熱可塑性樹脂が設けられ、前記ガラスと、前記太陽電池セルと、前記絶縁シートと、前記複数の集熱器とが一体に熱溶着されている、
ことを特徴とする、請求項に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル及び集熱器を有する太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルを冷却すべく、内部に熱媒体を流通させる集熱器に太陽電池パネルを設置した構成が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-96451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、太陽電池パネルと集熱器とを一体とした構成で、1つの太陽電池パネルに対して1つの集熱器を組み合わせた場合、集熱器の表面積を確保すべく集熱器が大きくなってしまう。このように大きな集熱器は、内部を流れる熱媒体の流路が長くなり、熱効率を高くしにくい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルの太陽光を受ける受光面と反対側に設けられ、それぞれ熱媒体が流れる流路を有する複数の集熱器と、外部から供給された熱媒体を前記複数の集熱器に分配する分配部と、前記分配部から分配され、前記複数の集熱器の流路を通った熱媒体が合流する合流部と、前記分配部および前記合流部と、前記複数の集熱器とを接続する配管と、前記複数の集熱器に対し前記太陽電池パネルと反対側に設けられた断熱部材と、前記太陽電池パネルの端部と、前記複数の集熱器とを挟み込むことで、前記太陽電池パネル及び前記複数の集熱器を支持するフレームと、を備え、熱媒体が前記分配部から前記複数の集熱器の流路を通って前記合流部まで到達するまでのそれぞれの経路の長さが略同じであると共に、熱媒体が前記分配部から前記複数の集熱器の流路を通って前記合流部まで到達するまでのそれぞれの経路全体における圧力損失が略同じであり、前記分配部及び前記合流部の前記受光面と平行な面における周囲が前記断熱部材により覆われることで、前記分配部、前記合流部および前記配管のそれぞれと前記フレームとの間が前記断熱部材で埋められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、熱効率をより高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る太陽電池モジュールの一部を切断して、表面側から見た斜視図。
図2】実施形態に係る太陽電池モジュールの一部を切断して、裏面側から見た斜視図。
図3】実施形態に係る太陽電池モジュールの分解斜視図。
図4】実施形態に係る集熱器の(a)斜視図、(b)平面図。
図5】実施形態の変形例1に係る集熱器の(a)斜視図、(b)平面図。
図6】実施形態に係る集熱器の1つを示す平面図。
図7】(a)図6のA-A断面図、(b)(a)のB部拡大図。
図8】(a)実施形態に係る太陽電池モジュールを表面側から見た図、(b)(a)のC-C断面図。
図9図8(b)のD部拡大図。
図10】(a)実施形態の変形例2に係る太陽電池モジュールを表面側から見た図、(b)(a)のE-E断面図。
図11図10(b)のF部拡大図。
図12】太陽電池モジュールを組み込むシステムの一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態について、図1ないし図8を用いて説明する。まず、本実施形態の太陽電池モジュール100の全体構成について、図1ないし図3を用いて説明する。
【0009】
[太陽電池モジュール]
太陽電池モジュール100は、太陽電池パネル10と、集熱装置20と、断熱部材30と、耐候シート40と、フレーム50とを有する。これらは、太陽光を受ける受光面(表面)側から、太陽電池パネル10、集熱装置20、断熱部材30、耐候シート40の順で配置され、フレーム50により支持されている。
【0010】
太陽電池パネル10は、図3に示すように、太陽光を受ける側から順に、ガラス11と、太陽電池セル14と、絶縁シート16とが積層されることで構成されている。また、ガラス11と、太陽電池セル14と、絶縁シート16とのそれぞれの間に、熱可塑性樹脂である封止材13、15が配置されている。即ち、太陽電池パネル10は、太陽光を受ける表面側から順に、ガラス11、封止材13、太陽電池セル14、封止材15、絶縁シート16を有する。そして、ガラス11と、太陽電池セル14と、絶縁シート16とが熱溶着(ラミネート)されることで、太陽電池パネル10を構成している。
【0011】
太陽電池セル14は、シリコン系半導体などの発電素子であり、太陽光などの光を受けて発電する。このような太陽電池セル14は、ガラス11と集熱装置20の間に、封止材13、15、17、絶縁シート16を介して、図1に示すように複数並べて配置されている。太陽電池セル14は、両面をこれら封止材13、15により封止されることで、耐候性を高めている。
【0012】
即ち、太陽電池セル14の太陽光を受ける表面側には、封止材13を介してガラス11を配置して、太陽電池セル14の表面とガラス11とを封止材13により接着(本実施形態では熱溶着)すると共に、太陽電池セル14の表面側を封止している。一方、太陽電池セル14の表面とは反対側の裏面側には、順に、封止材15、絶縁シート16、封止材17を介して集熱装置20を配置している。そして、太陽電池セル14の裏面と集熱装置20とを封止材15、17及び絶縁シート16により接着(本実施形態では熱溶着)すると共に、封止材15により太陽電池セル14の裏面側を封止している。
【0013】
具体的には、後述する集熱装置20を構成する複数の集熱器20a、20b、20cのそれぞれの板状部材21(図7参照)が、太陽電池セル14が設置される設置面を構成し、太陽電池セル14を板状部材21に押し付けることで、封止材15、17により太陽電池セル14が板状部材21に溶着される。後述するように、板状部材21は金属製であるため、太陽電池セル14と板状部材21との間を封止材15、17及び絶縁シート16により絶縁するようにしている。なお、封止材15、17により絶縁性を確保できれば、絶縁シート16を省略しても良い。
【0014】
封止材13、15、17は、それぞれEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)など周知の樹脂を用いることができる。封止材13、15、17は、光を透過させるため透明としている。但し、封止材17は、透明でなくても良い。なお、裏面側の封止材15、17は、十分な厚さを確保することが好ましい。このように封止材15、17の厚さを確保するのは、絶縁性を確保すると共に、板状部材21の表面の凹凸を埋めて、太陽電池セル14側の表面の平面性を高めるためである。本実施形態では、封止材15、17の厚さが、それぞれ0.6mmで合計1.2mm、絶縁シートの厚さを0.2mmとしている。
【0015】
本実施形態では、上述のように、ガラス11と、太陽電池セル14と、絶縁シート16と、複数の集熱器20a、20b、20cとのそれぞれの間に封止材13、15、17が設けられている。そして、製造時には、ガラス11と、太陽電池セル14と、絶縁シート16と、複数の集熱器20a、20b、20cとを一体に熱溶着(ラミネート)している。これにより、太陽電池パネル10と複数の集熱器20a、20b、20cとの固定を容易に行え、生産性を向上させることができると共に、ガラス11、太陽電池セル14、複数の集熱器20a、20b、20cの密着性を高めて、集熱器20a、20b、20cによる集熱性を高めることができる。
【0016】
但し、少なくとも複数の集熱器20a、20b、20cと絶縁シート16とを一体に熱溶着し、別途製造された太陽電池パネルを、これに熱溶着や接着などにより固定するようにしても良い。即ち、別途、ガラス11と太陽電池セル14とを組み合わせることで製造された太陽電池パネルがある場合には、絶縁シート16と集熱器20a、20b、20cとを熱溶着したものを、この太陽電池パネルと組み合わせるようにしても良い。
【0017】
太陽電池セル14の表面側に配置されたガラス11は、太陽電池セル14の表面を保護する。また、太陽電池モジュール100の太陽光を受ける最表面側に設けられたガラス11の太陽光を受ける表面には、親水性のコート層11aが形成されている。これにより、雨などによりガラス11の表面が汚れにくくなり、ガラス11の太陽光の透過性を維持し易くなる。この結果、太陽電池セル14の発電効率及び後述する集熱装置20の集熱効率が維持し易くなる。
【0018】
絶縁シート16は、黒色で、熱伝導性に優れ、粘着性を有するシートである。ここで、太陽電池セル14は、上述のように複数並べて配置されている。そして、複数の太陽電池セル14の間には隙間を有する。太陽電池セル14に照射された太陽光などの光は、この隙間を介して絶縁シート16に到達する。絶縁シート16は、黒色であるため、太陽光の照射による集熱性を高めることができ、後述する集熱装置20内を流れる熱媒体の温度をより上昇させ易くできる。絶縁シート16としては、一例として、黒色で且つ熱伝導性が高い微粒子(例えばカーボンブラック等)を練り込んだ黒色のシートを用いて構成される。
【0019】
なお、絶縁シート16とは別に、板状部材21と太陽電池セル14との間に黒色のシートを設けても良い。例えば、封止材17を黒色としても良い。或いは、板状部材21の太陽電池セル側の表面に黒色の膜をコートしても良い。例えば、板状部材21の表面に熱伝導性を有する黒い塗料を塗っても良い。また、このような黒色のシートや膜は、上述のように複数の太陽電池セル14の隙間を介して照射される部分にのみ設けても良い。
【0020】
太陽電池セル14の裏面側に配置された集熱装置20を構成する複数の集熱器20a、20b、20cのそれぞれの板状部材21は、太陽電池パネル10の裏側に位置し、太陽電池セル14を保護する。即ち、各板状部材21は、太陽電池セル14の裏面側に設けられて太陽電池セル14の設置面を構成しており、更に太陽電池セル14が割れたりすることを防止している。
【0021】
集熱装置20は、図4(a)、(b)に示すように、複数の集熱器20a、20b、20c、入口側ヘッダ25、出口側ヘッダ26、配管27a~27c、28a~28cを有する。集熱器20a、20b、20cは、それぞれ熱媒体が流れる流路23を有する。即ち、本実施形態では、集熱装置20の流路23は、集熱器20a、20b、20cにより複数に分割されている。図6は、1つの集熱器20a(20b、20c)を裏側から見た図である。
【0022】
それぞれの集熱器20a、20b、20cは、図7(a)、(b)に示すように、上述の板状部材21と、流路形成部材としての流路パネル22とを組み合わせることで形成されている。詳しくは後述するように、流路パネル22は、板状部材21の太陽電池セル14側と反対側の裏面上に溶接により接合され、板状部材21との間に流路23を形成する。このために流路パネル22は、板状部材21と反対側に突出して設けられた凸状部24を有する。凸状部24は、板状部材21との間で流路23を形成する。流路23を流れる熱媒体は、例えば、エチレングリコールやプロピレングリコールの水溶液などの不凍液や水などである。
【0023】
このような集熱器20a、20b、20cは、図3に示すように、太陽電池パネル10の受光面と反対側(裏側)の面に沿って並んで配置されている。即ち、1つの太陽電池パネル10に対して複数(本実施形態では3つ)の集熱器20a、20b、20cを組み合わせ、上述のように板状部材21が太陽電池パネル10の設置面となるように各集熱器20a、20b、20cを並べて配置している。
【0024】
具体的には、各集熱器20a、20b、20cは、それぞれの板状部材21が略単一平面となるように並べて配置されている。また、各集熱器20a、20b、20cは、図6に示すように、それぞれ同じ構成を有している。即ち、それぞれの形状、表面積、流路23の長さを同一としている。但し、組み合わせる太陽電池パネル10の形状や構成、更には、設置場所の制約などによっては、形状などを異ならせるようにしても良い。
【0025】
また、各集熱器20a、20b、20cは、太陽電池パネル10の長手方向に並んで配置されている。即ち、各集熱器20a、20b、20cの長手方向が太陽電池パネル10の短手方向に、各集熱器20a、20b、20cの短手方向が複数並べられることで太陽電池パネル10の長手方向に、それぞれ沿うように各集熱器20a、20b、20cを配置している。但し、集熱器20a、20b、20cの配置はこれに限らない。例えば、長手方向と短手方向の関係を本実施形態と逆にしても良いし、集熱器を太陽電池パネル10の長手方向にも短手方向にも複数並べるように配置しても良い。要は、太陽電池パネル10の形状及び大きさと、集熱器の形状、大きさ、数などを考慮して、集熱器の配置を設定すれば良い。
【0026】
また、集熱装置20は、図4(a)、(b)に示すように、分配部としての入口側ヘッダ25と、合流部としての出口側ヘッダ26とを有する。入口側ヘッダ25は、外部から供給された熱媒体を複数の集熱器20a、20b、20cに分配する。出口側ヘッダ26は、入口側ヘッダ25から分配され、複数の集熱器20a、20b、20cの流路23を通った熱媒体が合流する。入口側ヘッダ25及び出口側ヘッダ26は、フレーム50よりも内側に配置している(図2、3参照)。そして、後述するように、入口側ヘッダ25及び出口側ヘッダ26を、それぞれ断熱部材30により覆うようにしている。これにより、フレーム50の外側の外気の影響が入口側ヘッダ25及び出口側ヘッダ26に及ぶことを抑制している。
【0027】
また、入口側ヘッダ25と各集熱器20a、20b、20cとは、配管27a、27b、27cによりそれぞれ接続されている。また、出口側ヘッダ26と各集熱器20a、20b、20cとは、配管28a、28b、28cによりそれぞれ接続されている。本実施形態においては、配管27a、27b、27c、28a、28b、28cは、銅によって形成されているが、架橋ポリエチレンなどのプラスチック材料を用いても良い。
【0028】
本実施形態では、熱媒体が入口側ヘッダ25から複数の集熱器20a、20b、20cの流路23を通って出口側ヘッダ26まで到達するまでのそれぞれの経路の長さ及び断面積が略同じとなるようにしている。具体的には、各集熱器20a、20b、20cの流路23の経路の長さをそれぞれ同じとしている。また、配管27aと配管28cの長さ及び断面積を同じとし、配管27bと配管28bの長さ及び断面積を同じとし、配管27cと配管28aの長さ及び断面積を同じとしている。これにより、熱媒体が入口側ヘッダ25から複数の集熱器20a、20b、20cの流路23を通って出口側ヘッダ26まで到達するまでのそれぞれの経路全体における圧力損失を略同じとし、それぞれの集熱器20a、20b、20cを流れる熱媒体の流量を略同じとしている。この結果、各集熱器20a、20b、20cの集熱効率を略同じとし、太陽電池パネル10の背面側における温度ムラを低減している。
【0029】
また、上述のように各配管の長さを設定することで、入口側のヘッダ及び配管と、出口側のヘッダ及び配管を共通化できる。なお、入口側ヘッダ25から集熱器20aまでの配管27aの経路の長さと、集熱器20aから出口側ヘッダ26までの配管28aの経路の長さとを足した長さをα、入口側ヘッダ25から集熱器20bまでの配管27bの経路の長さと、集熱器20bから出口側ヘッダ26までの配管28bの経路の長さとを足した長さをβ、入口側ヘッダ25から集熱器20cまでの配管27cの経路の長さと、集熱器20cから出口側ヘッダ26までの配管28cの経路の長さとを足した長さをγとした場合に、α≒β≒γを満たせば、各配管の長さは適宜設定可能である。
【0030】
また、各集熱器20a、20b、20cのそれぞれの流路23の経路の長さが異なる場合には、各配管の長さを調整することで、熱媒体が入口側ヘッダ25から複数の集熱器20a、20b、20cの流路23を通って出口側ヘッダ26まで到達するまでのそれぞれの経路の長さが略同じとなるようにすることが好ましい。但し、各経路の長さは同じでなくても良く。例えば、図5(a)、(b)に示す変形例1のように、一部の配管を折り曲げるなどして、各経路の圧力損失が同じとなるように調整しても良い。
【0031】
図5(a)、(b)の構成では、入口側ヘッダ25と各集熱器20a、20b、20cとは、配管27a1、27b1、27c1によりそれぞれ接続されている。また、出口側ヘッダ26と各集熱器20a、20b、20cとは、配管28a1、28b1、28c1によりそれぞれ接続されている。そして、配管27c1、28a1の一部を折り曲げることで、熱媒体が入口側ヘッダ25から複数の集熱器20a、20b、20cの流路23を通って出口側ヘッダ26まで到達するまでのそれぞれの経路全体における圧力損失を略同じとしている。なお、図3及び後述する図8は、図5(a)、(b)の構成で示しているが、配管以外は、図4(a)、(b)の構成と同じである。
【0032】
上述のように本実施形態では、入口側ヘッダ25と出口側ヘッダ26とを設けることで、複数の集熱器20a、20b、20cを有する構成であっても、太陽電池モジュール100の設置性を向上させることができる。即ち、太陽電池モジュールの設置時に外部にある装置(例えば熱交換器)と複数の集熱器とをそれぞれ配管で接続すると、集熱器の数だけ接続箇所があり、設置作業の手間がかかる。これに対し本実施形態の場合、集熱器の数に拘らず、外部の装置とヘッダとを接続すれば良いだけであるため、設置作業を容易に行える。また、外部の装置と入口側ヘッダ25及び出口側ヘッダ26を、例えばそれぞれ1本の配管で接続することができ、外部の装置と各集熱器とをそれぞれ配管で接続する場合よりも配管の長さを短くできる。
【0033】
また、入口側ヘッダ25及び出口側ヘッダ26を設けることで、各集熱器を熱媒体が通る経路の長さや圧力損失を略同一にし易い。即ち、外部の装置と複数の集熱器とをそれぞれ配管で接続しようとすると、設置箇所の制約などにより各配管の長さを略同一にしにくい。これに対して本実施形態では、入口側ヘッダ25及び出口側ヘッダ26と各集熱器20a、20b、20cとの配管の経路が予め決まっているため、入口側ヘッダ25及び出口側ヘッダ26と外部の装置との配管の長さに拘らず、各集熱器を熱媒体が通る経路の長さや圧力損失を略同一にし易い。
【0034】
このような各集熱器20a、20b、20cは、上述したように、太陽電池パネル10と積層される。これにより、集熱器20a、20b、20cは、太陽電池セル14で発生した熱や太陽熱を吸収し、内部を流れる熱媒体の温度を上昇させる。また、このように太陽電池セル14の熱を吸収することで太陽電池セル14を冷却して、太陽電池セル14の発電効率の低下を抑制している。各集熱器20a、20b、20cの詳しい構成については後述する。
【0035】
断熱部材30は、集熱装置20に対し太陽電池パネル10と反対側(裏側)に設けられている。具体的には、流路パネル22における板状部材21と反対側に断熱部材30が設けられている。断熱部材30は、発泡フェノール系樹脂により板状に形成されている。発泡フェノール系樹脂は、耐水性、耐熱性に優れ、集熱装置20が配置される空間内でも好適に使用できる。本実施形態では、断熱部材30として、発泡フェノール系樹脂を板状に成型したフェノールフォームを用いている。なお、太陽電池モジュール100内は、集熱装置20の熱などにより加熱された空気が結露する可能性があるため、断熱部材30として、耐水性に優れることが好ましい。このように、集熱装置20の裏側に断熱部材30を設けることで、集熱装置20の裏側から熱が拡散することを抑制して、集熱装置20の集熱効率を高めることができる。
【0036】
また、断熱部材30は、集熱装置20の入口側ヘッダ25及び出口側ヘッダ26をそれぞれ収容可能なヘッダ収容部31と、配管27a、27b、27c、28a、28b、28cをそれぞれ収容可能な配管収容部32とを有する。ヘッダ収容部31は、断熱部材30を集熱装置20の裏側に配置した状態で、入口側ヘッダ25及び出口側ヘッダ26が位置する部分にそれぞれ形成された凹部又は貫通孔であり、入口側ヘッダ25及び出口側ヘッダ26をそれぞれ収容可能である。また、配管収容部32は、断熱部材30を集熱装置20の裏側に配置した状態で、配管27a、27b、27c、28a、28b、28cが位置する部分にそれぞれ形成された凹部又は貫通孔であり、配管27a、27b、27c、28a、28b、28cをそれぞれ収容可能である。
【0037】
これにより、断熱部材30を集熱装置20の裏側に配置した状態で、入口側ヘッダ25、出口側ヘッダ26、配管27a、27b、27c、28a、28b、28cのそれぞれの周囲が断熱部材30により覆われる。特に、入口側ヘッダ25、出口側ヘッダ26、配管27a、27b、27c、28a、28b、28cの受光面と平行な面における周囲を、断熱部材30により覆うようにしている。この結果、入口側ヘッダ25、出口側ヘッダ26、配管27a、27b、27c、28a、28b、28cと外部との熱の出入りを抑制して、集熱装置20の集熱効率を向上させることができる。特に、断熱部材30によって、入口側ヘッダ25、出口側ヘッダ26、配管27a、27b、27c、28a、28b、28cのそれぞれとフレーム50との間を埋めることができ、フレーム50との間の熱の出入りを抑制することができる。例えば、集熱装置20で集熱した熱が、外気の影響で低温になったフレーム50から放出してしまうことを低減することができる。
【0038】
耐候シート40は、アクリル板により構成され、太陽電池モジュール100の太陽光を受ける側と反対側から雨などの湿気や異物が太陽電池モジュール100内に侵入することを防止している。耐候シート40は、アクリル板以外に、他の樹脂製の板、或いは、ステンレス鋼などの金属板であっても良い。
【0039】
フレーム50は、図8(b)及び図9に示すように、太陽電池パネル10及び複数の集熱器20a(20b、20c)を支持する。図8(b)は、太陽電池モジュール100の短手方向の断面図である。フレーム50は、図8(a)に示すように、太陽電池パネル10及び複数の集熱器20a(20b、20c)の周囲を囲むように配置されている。なお、図8(b)及び図9では、集熱器20aの支持構造のみを示しているが、他の集熱器20b、20cも同様である。また、便宜上、図8(b)及び図9の上側を上、下側を下とするが、太陽電池モジュール100を実際に設置する場合には、図9の状態から傾けて設置される場合が多い。例えば、家の屋根の上に設置される場合、屋根の傾斜に沿って水平方向に傾けて設置される。
【0040】
フレーム50は、支持溝51を有し、支持溝51内に太陽電池パネル10の端部と、集熱器20aの板状部材21の端部とを挟み込むことで、太陽電池パネル10及び集熱器20aを支持している。具体的には、支持溝51内にガラス11から板状部材21までの端部がシール材52を介して挿入されている。本実施形態では、集熱器20aの流路パネル22については、支持溝51内に挟み込んでないが、流路パネル22も挟み込むようにしても良い。
【0041】
また、図8(b)及び図9は、太陽電池パネル10の短手方向及び集熱器20aの板状部材21の長手方向の端部を支持する構成を示している。ここで、太陽電池パネル10の長手方向及び集熱器20aの板状部材21の短手方向の端部についても、図8(b)及び図9に示した支持構造と同様の構造としても良い。即ち、太陽電池パネル10及び全ての板状部材21を1組とした場合の全周を支持溝51内に挟み込むようにしても良い。但し、図10(b)及び図11に示す変形例2と同様に、板状部材21の短手方向の端部については支持溝51内に挟み込まず、太陽電池パネル10の長手方向端部のみを支持溝51内に挟み込むようにしても良い。何れにしても、板状部材21の少なくとも長手方向の両端部を支持溝51内に挟み込むことで、太陽電池モジュール100の強度を向上させることできる。
【0042】
なお、図10(b)及び図11に示す変形例2では、太陽電池パネル10の端部のみをフレーム50aの支持溝51a内に挟み込んだ構成を示している。図示の例では、長手方向端部の支持構成を示しているが、短手方向の端部も同様である。即ち、図10(a)に示すように、フレーム50aは、太陽電池パネル10及び複数の集熱器20a(20b、20c)の周囲を囲むように配置されている。但し、支持溝51aは、集熱器20a(20b、20c)の端部を挟み込まず、太陽電池パネル10の端部のみを挟み込むことで、太陽電池パネル10及び集熱器20aを支持している。この構成では、集熱器20a(20b、20c)が溶着により太陽電池パネル10に固定されているため、集熱器20a(20b、20c)は、太陽電池パネル10を介してフレーム50aに支持される。
【0043】
このように、集熱器20a(20b、20c)を支持溝51a内に挟み込まない構成とすることで、フレーム50aと集熱器20a(20b、20c)とを離すことができ、フレーム50aと集熱器20a(20b、20c)との間の熱の出入りを抑制できる。この結果、集熱器20a(20b、20c)の集熱性を向上させることができる。
【0044】
何れの構成であって、太陽電池パネル10及び集熱器20aがフレーム50又は50aに支持された状態で、太陽電池パネル10の下方から断熱部材30をフレーム50又は50a内に挿入する。この際、図9では、断熱部材30は、フレーム50の下部に設けられた突出部53により、耐候シート40を介して端部下面が支持され、断熱部材30が落下することが防止される。一方、図11では、断熱部材30は、突出部53により端部下面が支持されており、耐候シート40は、下側パネル54により支持されている。下側パネル54は、フレーム50aの下面にビス55により固定されている。なお、断熱部材30と耐候シート40のフレーム50、50aに対する支持構造は、図9図11とで入れ替えても良いし、他の支持構成であっても良い。また、断熱部材30は、流路パネル22の凸状部24に当接させても良いし、流路パネル22との間に隙間を設けて配置しても良い。
【0045】
[集熱器]
次に、本実施形態の複数の集熱器20a、20b、20cについて、図4ないし図7を用いて詳しく説明する。上述のように、集熱器20a、20b、20cは、太陽電池セル14が設置される板状部材21と、流路形成部材としての流路パネル22とで構成される。板状部材21は、ステンレス鋼、鉄、アルミニウムなどの金属製の略長方形の板状部材である。板状部材21は、太陽電池セル14で発生した熱や太陽熱を集熱器20a、20b、20c内部の熱媒体に効率良く伝えるべく、熱伝導性が高いものが好ましい。このために、本実施形態では、板状部材21を金属製としている。一例として、熱伝導性や熱膨張率、および加工性などを考慮し、ステンレス鋼であるSUS304、SUS430J1L、SUS444が好適に用いられる。
【0046】
流路パネル22は、金属製の略長方形の板状の部材の一部を、板状部材21と反対側に突出するように変形させた凸状部24を有する。例えば、板状の部材をプレス加工することによりこの部材の一部を膨出させ、凸状部24を形成する。そして、板状部材21と凸状部24との間で流路23を形成している。
【0047】
このような流路パネル22は、板状部材21と同様に、ステンレス鋼、鉄、アルミニウムなどの金属製としており、ステンレス鋼であるSUS304、SUS430J1L、SUS444が好適に用いられる。また、板状部材21と流路パネル22は、同一材料とすることが好ましい。なお、流路パネル22は、板状部材21と溶接により接合できれば、板状部材21と同じ材料であっても良いし異なった材料であっても良い。但し、板状部材21が流路パネル22よりも剛性が高くなるようにすることが好ましい。例えば、板状部材21と流路パネル22を異なる金属材料により形成したり、厚さを変えたりして、板状部材21の方が流路パネル22よりも剛性が高くなるようにする。
【0048】
例えば、図7(b)に示すように、板状部材21と流路パネル22を同一材料(例えば、両方ともステンレス鋼)で形成した場合、板状部材21の板厚を流路パネル22の板厚よりも厚くする。これにより、板状部材21の方が流路パネル22よりも剛性が高くなる。本実施形態では、板状部材21と流路パネル22は、共にSUS430J1L製とし、板状部材21の板厚を1.0mm、流路パネル22の板厚を0.5mmとしている。なお、板状部材21と流路パネル22を、共にSUS430J1L製とすることで、後述する溶接部29aの耐食性を向上させられる。
【0049】
このように板状部材21の剛性を流路パネル22の剛性よりも高くするのは、板状部材21の変形を小さくして、板状部材21の平面性を良好にするためである。板状部材21は、上述のように太陽電池セル14が樹脂部材としての封止材15、17及び絶縁シート16を介して設置されるため、太陽電池セル14側の表面の平面性が高いことが好ましい。即ち、板状部材21の反りが小さいことが好ましい。板状部材21に対する流路パネル22の接合の一例として、後述するレーザ溶接を用いることによって、溶接時に板状部材21に発生する反りを抑えることができるが、更に板状部材21側の剛性を高くすることによって、溶接による反りを小さくして、板状部材21の平面性を高めることができる。
【0050】
集熱器20a(20b、20c)の流路23は、図6に示すように、複数の第1流路23aと、複数の第2流路23bとを有する。複数の第1流路23aは、互いに隣接して配置されている。本実施形態では、複数の第1流路23aは、それぞれ集熱器20a(20b、20c)の長手方向に沿って連続するように形成され、且つ、長手方向と直交する短手方向に間隔をあけて互いに隣接するように配置されている。このような複数の第1流路23aの本数は3以上の奇数(本実施形態では11本)としている。
【0051】
複数の第2流路23bは、複数の第1流路23aのうち、隣り合う第1流路23aの一端部同士を接続する。具体的には、図6の最も右側の第1流路23aと、右側から2番目の第1流路23aの上端同士を第2流路23bにより接続し、右側から2番目の第1流路23aと、右側から3番目の第1流路23aの下端同士を第2流路23bにより接続している。このように隣り合う第1流路23aの上端及び下端同士を交互に第2流路23bにより接続し、複数の第1流路23a及び複数の第2流路23bにより1本の流路23を構成している。
【0052】
このように構成される流路23の熱媒体の流れ方向上流端部には入口側接続部231が、同じく下流端部には出口側接続部232がそれぞれ設けられている。入口側接続部231には、入口側ヘッダ25に接続された配管27a(27b、27c)が接続され、出口側接続部232には、出口側ヘッダ26に接続された配管28a(28b、28c)が接続される。
【0053】
また、このような流路23を形成する凸状部24は、図7(b)に示すように、熱媒体が流路23内(流路内)を流れる方向に直交する断面形状が台形である。即ち、凸状部24は、板状部材21側の長さが反対側の長さよりも長い台形状としている。このように、凸状部24の断面形状を台形とすることで、流路パネル22の剛性を、例えば、断面形状を三角形とした場合よりも高くでき、後述する溶接による集熱器の反りを抑制できる。また、凸状部24をプレス加工により形成する場合に、プレス加工がし易く、また、使用する金型を製造し易い。なお、凸状部24の断面形状は、この形状に限らず、三角形状、矩形状、円弧状など他の形状であっても良い。
【0054】
上述したように、板状部材21と流路パネル22とは溶接により接合されることで集熱器20a(20b、20c)を構成する。本実施形態では、図6に示すように、板状部材21と流路パネル22とを溶接した溶接部29aは、隣り合う複数の第1流路23aの間で複数の第2流路23bを除く領域に、第1流路23aに沿って互いに間隔をあけて複数設けられている。即ち、複数の第1流路23aの間の溶接部29aは、連続しておらず、間欠的に設けられている。本実施形態では、レーザ溶接により溶接を行っており、溶接部29aは、レーザにより溶接された箇所である。
【0055】
即ち、図6及び図7(b)に示すように、流路パネル22のうち、隣り合う複数の凸状部24の間には、板状部材21との接合部である平板部24aが存在する。そして、複数の平板部24aと板状部材21とを当接させ、スポット溶接やシーム溶接により金属接合している。本実施形態では、レーザによるスポット溶接としている。
【0056】
特に、本実施形態では、第1流路23aに沿った方向において、溶接部29aの長さよりも溶接されていない箇所の長さが長くなるように、溶接部29aを間欠的に設けている。例えば、10mmの長さの溶接部29aを30mmピッチで設けている。なお、ピッチは50mm以下とすることが好ましい。このように、溶接部29aを形成することで、溶接により集熱器20a(20b、20c)に加わる熱量を下げることができ、集熱器20a(20b、20c)の反りを低減できる。
【0057】
なお、隣り合う複数の第1流路23aの間部分は、仮にシール性が低くても隣の第1流路23aに熱媒体が漏れるだけである。このため、この部分のシール性は高くなくても良いため、本実施形態では、間欠的に溶接を行っている。これに対して、図6に示すように、板状部材21と流路パネル22の周縁部は、全周に亙って溶接(例えばレーザ溶接やシーム溶接)している。即ち、溶接部29bは、集熱器20a(20b、20c)の周縁部の全周に亙って連続している。これにより、周縁部をシールして熱媒体が外部に漏れることを抑制している。
【0058】
このように板状部材21と流路パネル22とを溶接により接合することで構成される集熱器20a、20b、20cは、入口側ヘッダ25から配管27a、27b、27cを介して入口側接続部231から熱媒体が流入する。入口側接続部231から流入した熱媒体は、流路23を流れ、出口側接続部232から配管28a、28b、28cを介して出口側ヘッダ26に集まり、外部に排出される。そして、熱媒体は、このように入口側ヘッダ25から配管27a、27b、27c、流路23及び配管28a、28b、28cを介して出口側ヘッダ26まで流れる間に、太陽光や太陽電池セル14の熱により温度上昇し、外部に排出される。なお、太陽電池モジュール100は、例えば、流路23を流れる熱媒体が重力方向下方から上方に向かう方向に流れるように設置される。
【0059】
特に本実施形態の場合、集熱装置20を複数の集熱器20a、20b、20cにより構成しているため、熱効率をより高くできる。即ち、1つの太陽電池パネルに対して1つの集熱器を組み合わせた場合、集熱器の表面積を確保すべく集熱器が大きくなってしまう。このように大きな集熱器は、内部を流れる熱媒体の流路が長くなり、熱効率を高くしにくい。上述のように、集熱器の内部を流れる熱媒体は、流路を流れていく過程で温度が上昇するが、例えば、大きな集熱器で1つの流路とした場合、流路の前半で温度上昇した熱媒体は、流路の後半では温度上昇しにくくなる。このため、集熱器の熱効率を高くしにくい。これに対して本実施形態では、複数の集熱器20a、20b、20cにより集熱装置20を構成することで、それぞれの集熱器20a、20b、20cの流路23を短くでき、各集熱器20a、20b、20cの熱効率をより高くできる。
【0060】
また、本実施形態では、熱媒体が入口側ヘッダ25から複数の集熱器20a、20b、20cの流路23を通って出口側ヘッダ26まで到達するまでのそれぞれの経路の長さや圧力損失が略同じとなるようにしている。このため、各集熱器20a、20b、20cのそれぞれの熱効率を略同じとすることができる。ここで、各集熱器で熱効率が大きく異なると、一部の集熱器で熱媒体の温度が上昇しても、他の集熱器で熱媒体の温度上昇が低ければ、出口側ヘッダ26で合流した際に熱媒体の温度が下がってしまい、結果として全体の熱効率が下がってしまう可能性がある。また、一部の集熱器の入口側ヘッダ25から出口側ヘッダ26までの流路の長さが他の集熱器よりも長い場合、この一部の集熱器において、例えば、流路の後半で温度上昇しにくくなり、熱効率が低下する可能性もある。これに対して本実施形態のように構成すれば、各集熱器における熱媒体の温度上昇も略同じとなり、また、一部の集熱器で熱効率が低下してしまうことを抑制できるため、全体として熱効率を高めることができる。
【0061】
また、1つの太陽電池パネルに対して1つの集熱器を組み合わせる構成のように、集熱器を一体として大きくした場合、板状部材と流路パネルとを溶接により接合する際に、集熱器の反りが大きくなり易い。集熱器の反りが大きくなると、太陽電池パネルへの負荷が大きくなったり、更には、フレームに組み込みにくくなる。また、大きな集熱器を、反りを小さくすべく精度良く製造しようとするとコストが高くなる。これに対して本実施形態では、集熱器を複数に分割しているため、1つの集熱器の大きさが小さくなり、溶接による反りも小さくできる。また、このように反りを小さくし易いため、集熱器の製造コストを抑制できる。
【0062】
また、板状部材21と流路パネル22との溶接をレーザによるスポット溶接としているため、溶接時に板状部材21及び流路パネル22に加わる熱量を抑制でき、集熱器20a、20b、20cの反りをより低減できる。更に、流路パネル22の凸状部24の断面形状を台形とすることで、流路パネル22の剛性を高めることができ、この点からも集熱器20a、20b、20cの反りを抑制できる。このように本実施形態では、集熱器20a、20b、20cの反りを低減しているため、太陽電池パネル10への負荷を小さくでき、フレーム50、50aへの組み込み性を向上させられる。
【0063】
[他の実施形態]
なお、本実施形態では、集熱装置20を互いに別体の複数の集熱器20a、20b、20cにより構成したが、これらの集熱器は一体に構成されていても良い。この場合に、流路を複数に分割して、上述の集熱器20a、20b、20cのように構成することが好ましい。
【0064】
また、このように集熱器を一体に構成したものにおいて、本実施形態と同様に、太陽電池パネルや絶縁シートと集熱器とを一体に熱溶着(ラミネート)することが好ましい。即ち、太陽電池パネルは、太陽光を受ける側から順に、ガラスと、太陽電池セルと、絶縁シートとが積層されることで構成されており、少なくとも集熱器と絶縁シートとの間に熱可塑性樹脂を設け、集熱器と絶縁シートとを一体に熱溶着する。
【0065】
或いは、ガラスと、太陽電池セルと、絶縁シートと、集熱器とのそれぞれの間に熱可塑性樹脂が設けられ、ガラスと、太陽電池セルと、絶縁シートと、集熱器とを一体に熱溶着する。
【0066】
[太陽電池モジュールを組み込むシステムの一例]
次に、上述した太陽電池モジュール100を組み込むシステムの一例について、図12を用いて説明する。本例のシステム1000は、太陽電池モジュール100を家庭用の温水及び発電用のシステムに適用した場合を示している。
【0067】
システム1000は、太陽電池モジュール100、集熱系システム200、発電系システム300を有する。発電系システム300は、太陽電池モジュール100の太陽電池パネル10(図1参照)により発電した電力を家庭内に送るためのシステムである。
【0068】
集熱系システム200は、太陽電池モジュール100の集熱装置20(図2など参照)により温度上昇した熱媒体を利用して温水を作るシステムである。このために集熱系システム200は、熱交換器201、貯湯槽202、循環ポンプ203、204、制御部205を有する。熱交換器201は、太陽電池モジュール100により温度上昇した熱媒体により、例えば水道水を加熱して温水を生成する。生成された温水は、貯湯槽202に貯められる。また、熱交換器201を通って温度が下降した熱媒体は、再度、太陽電池モジュール100に送られて加熱される。
【0069】
このような熱媒体の流通、及び、水道水或いは温水の流通は、循環ポンプ203、204により行われる。循環ポンプ203、204は、制御部205により制御され、制御部205は、例えば、貯湯槽202の温度を検知してこれらを制御する。貯湯槽202で貯められた温水は、温度が十分に高くない場合があるため、この場合には、ボイラなどの補助熱源210により加熱され、家庭内に送られる。このような集熱系システム200及び発電系システム300の運転状態などは、表示器110に表示される。
【符号の説明】
【0070】
10・・・太陽電池パネル/11・・・ガラス/13、15、17・・・封止材(熱可塑性樹脂)/14・・・太陽電池セル/16・・・絶縁シート/20・・・集熱装置/20a、20b、20c・・・集熱器/21・・・板状部材/22・・・流路パネル(流路形成部材)/23・・・流路/23a・・・第1流路/23b・・・第2流路/24・・・凸状部/25・・・入口側ヘッダ(分配部)/26・・・出口側ヘッダ(合流部)/29a・・・溶接部/30・・・断熱部材/50、50a・・・フレーム/51、51a・・・支持溝/100・・・太陽電池モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12