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特許7391520交通誘導システム、工事用信号機及び交通誘導方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】交通誘導システム、工事用信号機及び交通誘導方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/07 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
G08G1/07 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019037210
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020140597
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 沢樹
(72)【発明者】
【氏名】大谷 洋介
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-008415(JP,A)
【文献】特開2014-010775(JP,A)
【文献】特開平09-109724(JP,A)
【文献】特開平06-195592(JP,A)
【文献】特開2009-217576(JP,A)
【文献】特開平09-231497(JP,A)
【文献】特開2019-012391(JP,A)
【文献】特開2016-134034(JP,A)
【文献】特表2014-507040(JP,A)
【文献】特開平09-223292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する道路の所定の工事区間に設置され、該工事区間を通行する車両の通行権に係る情報を呈示する工事用信号機と、該工事用信号機を制御する管理装置とを有する交通誘導システムであって、
前記工事区間への進入を待機する所定の待機位置に停車した待機車両を検知する停車検知手段と、
前記工事用信号機に設けられ、前記管理装置からの制御に基づいて前記通行権の有無を表示する表示手段と、
前記表示手段による表示が通行権無しから通行権有りに切り替わった後、前記停車検知手段による検知結果に基づいて、所定時間が経過するまで前記待機車両の発車が確認されない場合に、前記表示手段による表示が通行権無しから通行権有りに切り替わったことを前記待機車両に報知する報知手段と
を備えたことを特徴とする交通誘導システム。
【請求項2】
前記報知手段は、音の出力により前記待機車両に報知することを特徴とする請求項1に記載の交通誘導システム。
【請求項3】
前記報知手段は、前記表示手段とともに前記工事用信号機に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の交通誘導システム。
【請求項4】
前記報知手段は、前記待機車両に対する報知を行っても前記待機車両の発車が確認されない場合に、誘導員が所持する操作端末に通知することを特徴とする請求項1~3のいずれか一つの交通誘導システム。
【請求項5】
管理装置は、前記表示手段による表示が通行権無しから通行権有りに切り替わった時点で前記待機位置に停車していた待機車両が発車するまで前記通行権有りの状態を維持することを特徴とする請求項1~4のいずれか一つの交通誘導システム。
【請求項6】
車両が走行する道路の所定の工事区間に設置され、該工事区間を通行する車両の通行権に係る情報を呈示する工事用信号機であって、
前記通行権の有無を表示する表示手段と、
前記表示手段による表示が通行権無しから通行権有りに切り替わった後、外部に設けられ、かつ、前記工事区間への進入を待機する所定の待機位置に停車した待機車両を検知する停車検知部の検知結果に基づいて、所定時間が経過するまで前記待機車両の発車が確認されない場合に、前記表示手段による表示が通行権無しから通行権有りに切り替わったことを、前記工事区間への進入を待機する所定の待機位置に停車した待機車両に報知する報知手段と
を備えたことを特徴とする工事用信号機。
【請求項7】
車両が走行する道路の所定の工事区間に設置され、該工事区間を通行する車両の通行権に係る情報を呈示する工事用信号機と、該工事用信号機を制御する管理装置とを有する交通誘導システムにおける交通誘導方法であって、
前記工事区間への進入を待機する所定の待機位置に停車した待機車両を検知する停車検知ステップと、
前記工事用信号機が前記管理装置からの制御に基づいて前記通行権に係る表示を通行権無しから通行権有りに切り替える切替ステップと、
前記切替ステップにより通行権無しから通行権有りに切り替わった後、前記停車検知ステップによる検知結果に基づいて、所定時間が経過するまで前記待機車両の発車が確認されない場合に、前記通行権に係る表示が通行権無しから通行権有りに切り替わったことを前記待機車両に報知する報知ステップと
を含んだことを特徴とする交通誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工事区間における車両の通行を円滑化することができる交通誘導システム、工事用信号機及び交通誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、市区町村等が道路工事業者を使って道路工事を行う場合には、車両の円滑な通行を図るために交通誘導が行われる。具体的には、交通誘導を行う警備員が各車両を運転するドライバーに対して任意の協力を求め、各車両の進行を円滑に誘導することになる。
【0003】
また、かかる警備員による交通誘導のみで足りない場合には、工事用の仮設される信号機(以下、「工事用信号機」と言う)が設置される場合がある。例えば、ある工事区間において車両が片側交互通行をしなければならない道路工事が行われる場合には、この工事区間の両端に工事用信号機が設置される。この工事用信号機は、「止まれ」を意味する赤色の信号表示(以下、「赤信号」と言う)と「進む(進むことが可能)」を意味する緑色の信号表示(以下、「緑信号」と言う)とを交互に切り替える。
【0004】
ここで、この種の工事用信号機を用いる場合に、工事区間内における車両の正面衝突が起こらないようにする必要がある。このため、例えば特許文献1には、ある進行方向から工事区間の両端に工事用信号機を設置し、この工事用信号機の赤信号及び緑信号を交互に点灯制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-099508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、車両の円滑な通行が妨げられる場合があるという問題点があった。具体的に説明すると、通常、赤信号で停車した車両の運転者は、工事用信号機の視認を続け、緑信号への変化を確認して車両を発車させる。しかし、運転者が余所見をはじめるなど、工事用信号機の視認が不十分となると、緑信号への変化を見逃して、車両の発車を行うことができないケースが生ずるのである。
【0007】
そして、運転者が緑信号への変化に気づかないまま、赤信号に戻る事態となれば、次の緑信号まで発車することができず、円滑な通行が著しく阻害される。また、後続に車両があれば、後続の車両にも通行の遅延が波及する。
【0008】
緑信号の間に注意喚起用の音声出力を行うなど、視覚によらない方法で信号状態を知らせれば、運転者が余所見をしていたとしても緑信号への変化に気づくことができる。しかし、車両の通行がなくとも緑信号の度に音声出力を行うこととなると、周囲に過度の負担を強いることになり、閑静な住宅街などを含めて場所を選ばすに使用される工事用信号機で実行するのは現実的と言えない。
【0009】
これらのことから、運転者が緑信号への変化を見逃した場合であっても、車両の発車を促し、工事区間における車両の通行の円滑化を実現することが重要な課題となっている。
【0010】
本発明は、上記の従来技術の課題を解決するためになされたものであって、工事区間における車両の通行を円滑化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、車両が走行する道路の所定の工事区間に設置され、該工事区間を通行する車両の通行権に係る情報を呈示する工事用信号機と、該工事用信号機を制御する管理装置とを有する交通誘導システムであって、前記工事区間への進入を待機する所定の待機位置に停車した待機車両を検知する停車検知手段と、前記工事用信号機に設けられ、前記管理装置からの制御に基づいて前記通行権の有無を表示する表示手段と、前記表示手段による表示が通行権無しから通行権有りに切り替わった後、前記停車検知手段による検知結果に基づいて、所定時間が経過するまで前記待機車両の発車が確認されない場合に、前記表示手段による表示が通行権無しから通行権有りに切り替わったことを前記待機車両に報知する報知手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記報知手段は、音の出力により前記待機車両に報知することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記報知手段は、前記表示手段とともに前記工事用信号機に設けられることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記の発明において、前記報知手段は、前記待機車両に対する報知を行っても前記待機車両の発車が確認されない場合に、誘導員が所持する操作端末に通知することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記の発明において、管理装置は、前記表示手段による表示が通行権無しから通行権有りに切り替わった時点で前記待機位置に停車していた待機車両が発車するまで前記通行権有りの状態を維持することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、車両が走行する道路の所定の工事区間に設置され、該工事区間を通行する車両の通行権に係る情報を呈示する工事用信号機であって、前記通行権の有無を表示する表示手段と、前記表示手段による表示が通行権無しから通行権有りに切り替わった後、外部に設けられ、かつ、前記工事区間への進入を待機する所定の待機位置に停車した待機車両を検知する停車検知部の検知結果に基づいて、所定時間が経過するまで前記待機車両の発車が確認されない場合に、前記表示手段による表示が通行権無しから通行権有りに切り替わったことを、前記工事区間への進入を待機する所定の待機位置に停車した待機車両に報知する報知手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、車両が走行する道路の所定の工事区間に設置され、該工事区間を通行する車両の通行権に係る情報を呈示する工事用信号機と、該工事用信号機を制御する管理装置とを有する交通誘導システムにおける交通誘導方法であって、前記工事区間への進入を待機する所定の待機位置に停車した待機車両を検知する停車検知ステップと、前記工事用信号機が前記管理装置からの制御に基づいて前記通行権に係る表示を通行権無しから通行権有りに切り替える切替ステップと、前記切替ステップにより通行権無しから通行権有りに切り替わった後、前記停車検知ステップによる検知結果に基づいて、所定時間が経過するまで前記待機車両の発車が確認されない場合に、前記通行権に係る表示が通行権無しから通行権有りに切り替わったことを前記待機車両に報知する報知ステップとを含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、工事区間における車両の通行を円滑化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本実施例に係る交通誘導システムの概念を説明するための説明図である。
図2図2は、図1に示した工事用信号機の外観構成を示す図である。
図3図3は、図2に示した制御部の内部構成を示す機能ブロック図である。
図4図4は、図1に示した停車センサの構成を示す機能ブロック図である。
図5図5は、図1に示した通過検知センサの構成を示す機能ブロック図である。
図6図6は、図1に示したサーバ装置の構成を示す機能ブロック図である。
図7図7は、工事用信号機の処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、サーバ装置の処理手順を示すフローチャートである。
図9図9は、工事用信号機の処理手順の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る交通誘導システム、工事用信号機及び交通誘導方法の好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例
【0023】
<実施例に係る交通誘導システムの概念>
まず、本実施例に係る交通誘導システムの概念について説明する。図1は、本実施例に係る交通誘導システムの概念を説明するための説明図である。ここでは、片側1車線の2車線道からなる道路の図示した工事区間で道路工事が行われ、この工事区間の両端に工事用信号機10a、10b(以下、「工事用信号機10」と総称する)を、停止線の前端に停車センサ20a、20b(以下、「停車センサ20」と総称する)を、工事区間の内側両端に通過検知センサ30a、30b(以下、「通過検知センサ30」と総称する)を設置する場合を示すこととする。また、交通誘導員は操作端末50を所持していることとする。なお、図1に示した道路の上側の車線を上り車線、下側の車線を下り車線として定義しているが、他の用語を用いることもできる。
【0024】
図1に示した工事用信号機10は、工事区間を通行する車両の通行権に係る情報を呈示する信号機である。交差点に設置される信号機と同様に、この工事用信号機10には緑色の円表示(以下、単に「緑信号」と言う)又は赤色の円表示(以下、単に「赤信号」と言う)が選択的に表示され、緑信号である場合には工事区間を車両が通行できる「通行権有り」であることを意味し、赤信号である場合には車両が通行できない「通行権無し」であることを意味する。これにより、工事区間を通行しようとする車両は、工事用信号機10に呈示された緑信号にしたがって工事区間を通行、もしくは赤信号にしたがって工事区間手前の停止線において停止することとなる。なお、ここでは説明の便宜上、黄色の円表示を行う場合についての説明を省略するが、黄色の円表示(黄信号)である場合には待機状態にある車両が停止線で安全に停止できないことを条件として、周りの交通に気をつけながら工事区間を通行する。
【0025】
また、工事区間の周辺に設けられた工事用信号機10、停車センサ20、通過検知センサ30及び操作端末50は、サーバ装置40と通信可能に構成される。本実施例では、工事用信号機10、停車センサ20、通過検知センサ30及び操作端末50は、サーバ装置40との間で無線通信が可能であるものとする。なお、かかるサーバ装置40は、工事区間の両端に設けられた工事用信号機10を制御する装置である。
【0026】
ここで、従来の交通誘導システムには、本実施例と同様に工事用信号機10及びサーバ装置40を設けるものが存在するが、かかる従来技術のものは、信号機の状態変化に気づかない車両に注意喚起できないため、緑信号であるにもかかわらず発車しない車両が生起する場合があり、円滑な交通誘導の面で問題がある。
【0027】
そこで、本実施例に係る交通誘導システムでは、工事用信号機10が表示した緑信号に気づかない車両に対して、発車を促進する音声出力を行う。図1では、工事用信号機10aが緑信号を表示し、工事用信号機10bが赤信号を表示している。そして、工事用信号機10aが緑信号になったにもかかわらず、停止線で停止したままの車両に対して工事用信号機10aが「青です」(「青」は緑信号を意味する。)との音声出力を行っている。
【0028】
工事用信号機10が緑信号を表示した後、サーバ装置40は、通過検知センサ30を用いて、工事区間における車両の通過状況を確認する。これにより、工事区間に設けられる工事用信号機10、停車センサ20及び通過検知センサ30を用いて交通誘導を行う場合に、緑信号に気づかない車両に発車を促すとともに発車した車両の通過状況を確認することによって、車両を円滑に交通誘導することが可能となる。
【0029】
<工事用信号機10の外観構成>
次に、図1に示した工事用信号機10の外観構成について説明する。図2は、図1に示した工事用信号機10の外観構成を示す図である。同図に示すように、この工事用信号機10は、表示部11、音声出力部12及び制御部13を有する。
【0030】
表示部11は、液晶パネルなどの表示デバイスで構成される。この表示部11には、緑信号と赤信号が交互に表示制御される。また、緑信号を表示制御する場合に、「徐行してください」「進め」、「青です」等のメッセージを表示することも可能である。また、緑信号である場合に、緑信号の残存時間を示すグラフ等を併せて表示することもできる。
【0031】
音声出力部12は、表示部11において緑信号が表示制御された後も車両が発車しない場合に、発車を促す音声の出力を行う。発車を促す音声としては、「青です」、「信号が青になりましたので車を発進して下さい」等の音声を用いればよい。
【0032】
<制御部13の構成>
次に、図2に示した制御部13の内部構成について説明する。図3は、図2に示した制御部13の内部構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、工事用信号機10には、制御部13、通信I/F部14及び記憶部15が設けられる。通信I/F部14は、周知技術である無線LAN又はLTE(Long Term Evolution)通信等を用いてサーバ装置40及び停車センサ20との間で無線通信を行うための通信インターフェース部である。
【0033】
記憶部15は、ハードディスク装置又は不揮発性メモリなどからなる記憶デバイスであり、この記憶部15には、音声出力部12の音声出力に関する設定データが格納される。設定データには、緑信号を表示してから音声を出力するまでの待ち時間(例えば10秒)を示す報知猶予閾値、出力対象となる音声データ等が含まれる。
【0034】
制御部13は、工事用信号機10の全体制御を行う制御部であり、表示制御部13a及び音声制御部13bを有する。なお、実際には、表示制御部13a及び音声制御部13bに対応するプログラムをCPU(central processing unit)上にロードして実行することで、表示制御部13a及び音声制御部13bの機能を発揮させることになる。
【0035】
表示制御部13aは、表示部11に対して緑信号又は赤信号を選択的に表示制御するとともに、記憶部15に設定されたメッセージについて表示制御する。ここで、本実施例1では、表示部11における緑信号と赤信号の切替は、サーバ装置40からの切替指示に基づいて行われることとするが、交通誘導員の操作端末50からの切替指示に基づいて行うこともできる。
【0036】
音声制御部13bは、音声出力部12に対して、記憶部15に設定された報知猶予閾値と、停車センサ20から送信された検知結果(停止線で停止していた車両が発車したか否か)に基づいて、出力対象となる音声データについて出力制御する。
【0037】
具体的には、音声制御部13bは、緑信号を表示した後、停止線で停止している車両が発車することなく報知猶予閾値以上の時間が経過した場合に、音声データを出力することによって、停止線で停止している車両の運転者に発車を促す報知を実行する。
【0038】
<停車センサ20の構成>
次に、図1に示した停車センサ20の構成について説明する。図4は、図1に示した停車センサ20の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この停車センサ20は、操作部21、表示部22、通信I/F部23、センサ部24及び制御部25を有する。
【0039】
操作部21は、ボタン及び液晶タッチパネル等の操作デバイスであり、表示部22は、LED又は液晶パネル等の表示デバイスである。通信I/F部23は、周知技術である無線LAN又はLTE(Long Term Evolution)通信等を用いて工事用信号機10及びサーバ装置40との間で無線通信を行うための通信インターフェース部である。センサ部24は、停止線前の道路に対してレーザ光を照射し、その反射光を検知して反射対象物との距離を計測するデバイスである。
【0040】
制御部25は、停車センサ20の全体制御を行う制御部であり、停車発車判定部25aを有する。なお、実際には、停車発車判定部25aに対応するプログラムをCPU上にロードして実行することで、停車発車判定部25aの機能を発揮させることになる。
【0041】
停車発車判定部25aは、センサ部24で検知した対象物との距離の変化に基づいて、停止線で停車した車両の有無を判断する処理部である。例えば、車両が停止していない場合には、レーザ光は道路に反射して返ってくるが、車両が停車した場合は該車両に反射されるため、計測結果が変化する。停車発車判定部25aは、計測結果の変化を検知して車両の停車及び発車を判定し、判定結果をサーバ装置40及び工事用信号機10に送信する。
【0042】
<通過検知センサ30の構成>
次に、図1に示した通過検知センサ30の構成について説明する。図5は、図1に示した通過検知センサ30の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、この通過検知センサ30は、操作部31、表示部32、通信I/F部33、センサ部34及び制御部35を有する。
【0043】
操作部31は、ボタン及び液晶タッチパネル等の操作デバイスであり、表示部32は、LED又は液晶パネル等の表示デバイスである。通信I/F部33は、周知技術である無線LAN又はLTE(Long Term Evolution)通信等を用いてサーバ装置40との間で無線通信を行うための通信インターフェース部である。センサ部34は、工事区間の道路に対してレーザ光を照射し、その反射光を検知して反射対象物との距離及び該反射対象物の移動方向を計測するデバイスである。
【0044】
制御部35は、通過検知センサ30の全体制御を行う制御部であり、通過判定部35aを有する。なお、実際には、通過判定部35aに対応するプログラムをCPU上にロードして実行することで、通過判定部35aの機能を発揮させることになる。
【0045】
通過判定部35aは、センサ部34で検知した反射対象物との距離と移動方向の変化に基づいて、工事区間を通過する車両の有無及び移動方向を判断する処理部である。例えば、車両が通過していない場合には、レーザ光は道路に反射して返ってくるが、車両が通過した場合は該車両に反射されるため計測結果が変化する。通過判定部35aは、計測結果の変化を検知して、通過車両の有無及び通過方向を判定し、判定結果をサーバ装置40に送信する。
【0046】
<サーバ装置40の構成>
次に、図1に示したサーバ装置40の構成について説明する。図6は、図1に示したサーバ装置40の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、このサーバ装置40は、操作部41、表示部42、通信I/F部43、記憶部44及び制御部45を有する。
【0047】
操作部41は、キーボード及びマウス等の入力デバイスであり、表示部42は、液晶パネル又はCRT等の表示デバイスである。通信I/F部43は、周知技術である無線LAN又はLTE(Long Term Evolution)通信等を用いて工事用信号機10等との間で無線通信を行うための通信インターフェース部である。記憶部44は、ハードディスク装置又は不揮発性メモリなどからなる記憶デバイスであり、信号の切り替え時間に係るデータ等が記憶される。具体的には、記憶部44は、緑信号を継続させる時間を緑信号継続時間として記憶する。
【0048】
制御部45は、サーバ装置40の全体制御を行う制御部であり、車両状態判定部45a及び信号切替指示部45bを有する。なお、実際には、車両状態判定部45a及び信号切替指示部45bに対応するプログラムをCPU上にロードして実行することで、車両状態判定部45a及び信号切替指示部45bの機能を発揮させることになる。
【0049】
車両状態判定部45aは、工事区間の通行に係る車両の状態を判定する処理部である。具体的には、車両状態判定部45aは、停車センサ20からの出力に基づいて、各車線における待機車両の有無と、待機車両の発車を判定する。停車センサ20からの出力が車両の停車を示していれば、車両状態判定部45aは、対応する車線で待機車両有りと判定することになる。ここで、停車センサ20の出力で示されるのは、停止線で停車した車両、すなわち、信号待ちをしている待機車両のうち、先頭に位置する車両である。また、待機車両有りと判定した車線を緑信号に切り替えた後、停車センサ20の出力が車両の不在を示したならば、車両状態判定部45aは先頭の待機車両が発車したと判定する。
【0050】
さらに、車両状態判定部45aは、通過検知センサ30からの出力に基づいて、工事区間内に所在する車両の数を区間内車両数として算定する。具体的には、車両状態判定部45aは、工事区間に入る方向の車両の通過が発生した場合に、区間内車両数を1加算し、工事区間から出る方向の車両の通過が発生した場合に、区間内車両数を1減算する。
【0051】
信号切替指示部45bは、工事用信号機10に信号切替指示を送信して信号表示を切り替えさせることで、工事区間の通行権を制御する処理部である。信号切替指示部45bは、初期状態として全ての工事用信号機10に赤信号を表示させる。
【0052】
初期状態でいずれかの車線が待機車両有りとなったならば、信号切替指示部45bは、対応する工事用信号機10に緑信号切替指示を送信して、赤信号から緑信号への切替を行わせる。工事用信号機10は、緑信号への切替を行わせた後、緑信号継続時間が経過したならば、赤信号切替指示を送信して、赤信号から緑信号への切替を行わせる。その後、区間内車両数が「0」となるのを待機し、区間内車両数が「0」となったならば、他の工事用信号機10を緑信号に切り替え可能とする。
【0053】
<処理の説明>
次に、工事用信号機10の処理手順について説明する。図7は、図2及び図3に示した工事用信号機10の処理手順を示すフローチャートである。工事用信号機10の表示制御部13aは、初期状態において赤信号を表示している(ステップS101)。
【0054】
表示制御部13aは、サーバ装置40から緑信号切替指示を受信したか否かを判定し(ステップS102)、緑信号切替指示を受信していなければ(ステップS102;No)、赤信号の表示を継続する(ステップS101)。
【0055】
表示制御部13aは、緑信号切替指示を受信したならば(ステップS102;Yes)、赤信号を消して緑信号の表示を行う(ステップS103)。音声制御部13bは、緑信号の表示が開始されたならば、発車待ちタイマーT1の計時をスタートする(ステップS104)。
【0056】
音声制御部13bは、先頭の待機車両の発車が確認されたか否かを判定する(ステップS105)。具体的には、緑信号への切替時点で停車センサ20の出力が車両の停車を示しており、緑信号に切り替えた後、停車センサ20の出力が車両の不在を示したならば、先頭の待機車両の発車が確認されたことになる。
【0057】
先頭の待機車両の発車が確認されなければ(ステップS105;No)、音声制御部13bは、発車待ちタイマーT1の値が報知猶予閾値以上となったか否かを判定する(ステップS106)。なお、報知猶予閾値は、緑信号継続時間よりも短い。発車待ちタイマーT1の値が報知猶予閾値未満であれば(ステップS106;No)、音声制御部13bは、ステップS105に移行する。
【0058】
発車待ちタイマーT1の値が報知猶予閾値以上となったならば(ステップS106;Yes)、音声制御部13bは、先頭の待機車両に対して発車を促す音声を出力する音声報知を行う(ステップS107)。
【0059】
ステップS107の後、もしくは先頭待機車両の発車を確認した場合(ステップS105;Yes)、表示制御部13aは、サーバ装置40から赤信号切替指示を受信したか否かを判定し(ステップS108)、赤信号切替指示を受信していなければ(ステップS108;No)、緑信号の表示を継続してステップS108の処理を繰り返す。
【0060】
表示制御部13aは、赤信号切替指示を受信したならば(ステップS108;Yes)、緑信号を消して赤信号の表示を行い(ステップS109)、処理を終了する。
【0061】
図8は、サーバ装置40の処理手順を示すフローチャートである。まず、サーバ装置40の信号切替指示部45bは、初期状態として全ての工事用信号機10に赤信号を表示させる(ステップS201)。
【0062】
車両状態判定部45aは、いずれかの車線が待機車両有りであるか否かを判定する(ステップS202)。いずれの車線も待機車両無しであれば(ステップS202;No)、車両状態判定部45aは、ステップS202を繰り返す。
【0063】
いずれかの車線が待機車両有りとなったならば(ステップS202;Yes)、信号切替指示部45bは、制御対象の工事用信号機10を選択する(ステップS203)。この制御対象の工事用信号機10は、待機車両有りの車線の工事用信号機10から選ばれる。したがって、いずれかの車線が先に待機車両有りとなったならば、その車線の工事用信号機10が制御対象に選択される。2つの車線が同時に待機車両有りとなったならば、無作為の選択などで制御対象の工事用信号機10を選択すればよい。
【0064】
信号切替指示部45bは、制御対象に選択した工事用信号機10に緑信号切替指示を送信して(ステップS204)、赤信号から緑信号への切替を行わせ、緑信号継続タイマーT2による計時をスタートする(ステップS205)。また、車両状態判定部45aは、区間内車両数の算定を開始する(ステップS206)。
【0065】
信号切替指示部45bは、緑信号継続タイマーT2の値が緑信号継続時間以上となったか否かを判定し(ステップS207)、緑信号継続タイマーT2の値が緑信号継続時間未満であれば(ステップS207;No)、ステップS207を繰り返す。
【0066】
信号切替指示部45bは、緑信号継続タイマーT2の値が緑信号継続時間以上となったならば(ステップS207;Yes)、制御対象の工事用信号機10に赤信号切替指示を送信する(ステップS208)。
【0067】
その後、信号切替指示部45bは、区間内車両数が「0」となったか否かを判定し(ステップS209)、区間内車両数が「0」でなければ(ステップS209;No)、ステップS209を繰り返す。
【0068】
区間内車両数が「0」となったならば(ステップS209;Yes)、信号切替指示部45bは、制御対象ではない他の工事用信号機10で待機車両有りとなっているか否かを判定する(ステップS210)。他の工事用信号機10で待機車両有りとなっているならば(ステップS210;Yes)、ステップS203に移行し、制御対象の工事用信号機10を選択する。
【0069】
他の工事用信号機10で待機車両有りとなっていなければ(ステップS210;No)、処理を終了する。このとき、全ての工事用信号機10が赤信号を表示した初期状態であり、ステップS201からの処理を繰り返すことができる。
【0070】
なお、図8では、待機車両を検知し、待機車両が発生した車線の工事用信号機10を緑信号に切り替える場合を示したが、車両の有無に関わらず2つの車線の工事用信号機10を交互に緑信号に切り替える構成であってもよい。この場合には、ステップS203からステップS209までの処理を繰り返して実行すればよい。
【0071】
また、先頭の待機車両が発車するまで緑信号が継続されるよう制御することもできる。この場合には、緑信号切替指示の送信後、停車センサ20の出力によって先頭の待機車両の発車が示された場合に、緑信号継続タイマーT2の計時をスタートすればよい。
【0072】
次に、工事用信号機10の動作の変形例について説明する。図7では、緑信号への切替後、経過時間が報知猶予閾値以上となった場合に音声出力を行う場合を示したが、緑信号への切替時点で音声出力を行うことも可能である。また、音声出力は、先頭の待機車両が発車するまで継続させてもよい。また、音声出力により発車を促したにも関わらず、先頭の待機車両が発車しない場合に、交通誘導員の持つ操作端末50に警報を出力することも可能である。
【0073】
図9は、工事用信号機10の処理手順の変形例を示すフローチャートである。図9では、工事用信号機10の表示制御部13aは、初期状態において赤信号を表示している(ステップS301)。
【0074】
表示制御部13aは、サーバ装置40から緑信号切替指示を受信したか否かを判定し(ステップS302)、緑信号切替指示を受信していなければ(ステップS302;No)、赤信号の表示を継続する(ステップS301)。
【0075】
表示制御部13aは、緑信号切替指示を受信したならば(ステップS302;Yes)、赤信号を消して緑信号の表示を行う(ステップS303)。音声制御部13bは、緑信号の表示が開始されたならば、発車待ちタイマーT1の計時をスタートする(ステップS304)。
【0076】
また、音声制御部13bは、先頭の待機車両に対して発車を促す音声を出力する音声報知を開始する(ステップS305)。その後、音声制御部13bは、先頭の待機車両の発車が確認されたか否かを判定する(ステップS306)。具体的には、緑信号への切替時点で停車センサ20の出力が車両の停車を示しており、緑信号に切り替えた後、停車センサ20の出力が車両の不在を示したならば、先頭の待機車両の発車が確認されたことになる。先頭の待機車両の発車が確認されたならば(ステップS306;Yes)、音声制御部13bは音声報知を終了する(ステップS309)。
【0077】
先頭の待機車両の発車が確認されなければ(ステップS306;No)、音声制御部13bは、発車待ちタイマーT1の値が警報猶予閾値以上となったか否かを判定する(ステップS307)。なお、警報猶予閾値は、緑信号継続時間よりも短い。発車待ちタイマーT1の値が報知猶予閾値未満であれば(ステップS307;No)、音声制御部13bは、ステップS306に移行する。
【0078】
発車待ちタイマーT1の値が警報猶予閾値以上となったならば(ステップS307;Yes)、音声制御部13bは、交通誘導員の操作端末50に警報を出力する(ステップS308)。
【0079】
ステップS308又はステップS309の後、表示制御部13aは、サーバ装置40から赤信号切替指示を受信したか否かを判定し(ステップS310)、赤信号切替指示を受信していなければ(ステップS310;No)、緑信号の表示を継続してステップS310の処理を繰り返す。
【0080】
表示制御部13aは、赤信号切替指示を受信したならば(ステップS310;Yes)、緑信号を消して赤信号の表示を行い(ステップS311)、処理を終了する。
【0081】
上述してきたように、本実施例によれば、工事区間への進入を待機する所定の待機位置に停車した待機車両を停車センサ20により検知し、工事用信号機10に設けられた表示部11が管理装置であるサーバ装置40からの制御に基づいて通行権の有無を表示し、表示が通行権無し(赤信号)から通行権有り(緑信号)に切り替わったことを待機車両に報知する。かかる構成により、運転者が緑信号への変化を見逃した場合であっても、車両の発車を促すことができ、工事区間における車両の通行の円滑化が実現される。
【0082】
なお、本実施例では、表示が通行権無しから通行権有りに切り替わった後、所定時間が経過するまで待機車両の発車が確認されない場合に、待機車両への報知を行う構成を中心に説明を行ったが、表示が通行権無しから通行権有りに切り替わった時点で待機車両への報知を行うこともできる。
【0083】
また、本実施例によれば、待機車両に対する報知を行っても待機車両の発車が確認されない場合に、誘導員が所持する操作端末50に警報などの通知を行うことができる。
【0084】
また、本実施例によれば、サーバ装置40は、表示が通行権無しから通行権有りに切り替わった時点で待機位置に停車していた待機車両が発車するまで通行権有りの状態を維持することができる。
【0085】
なお、本実施例では、発車を促す報知に音声出力を用いる場合を例に説明を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、任意の方法で発車を促す報知を行うことができる。例えば、警報音などの音声外の音を利用してもよいし、フラッシュや回転灯等の光を利用してもよい。また、待機車両と通信して報知の依頼を行ってもよい。
【0086】
また、本実施例では、工事区間に設置した通過検知センサ30を用いて工事区間に進入する車両数及び工事区間から退出する車両数を算出する場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ETC(登録商標)等の路車間通信技術を用いて工事区間の入口にて電子チケットを発給するとともに、出口にて電子チケットの照合を行って、工事区間に進入する車両数及び工事区間から退出する車両数を算出することもできる。
【0087】
また、本実施例では、上り一車線、下り一車線からなる2車線道に本発明を適用した場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、三叉路や枝道路などに適用することもできる。この場合には工事用信号機10、停車センサ20及び通過検知センサ30がそれぞれ3台以上設置されることになるが、本実施例と同様に処理することができる。
【0088】
また、本実施例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【0089】
例えば、音声出力部は工事用信号機10ではなく、停車センサ20に設けてもよいし、音声出力用の装置を別途配置する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明に係る交通誘導システム、工事用信号機及び交通誘導方法は、工事区間における車両の通行を円滑化することに適している。
【符号の説明】
【0091】
10、10a、10b 工事用信号機
11、22、32、42 表示部
12 音声出力部
13、25、35 制御部
13a 表示制御部
13b 音声制御部
14、23、33、43 通信I/F部
15、44 記憶部
20、20a、20b 停車センサ
21、31、41 操作部
24、34 センサ部
25a 停車発車判定部
30、30a、30b 通過検知センサ
35a 通過判定部
40 管理サーバ
45a 車両状態判定部
45b 信号切替指示部
50 操作端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9