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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】成形機及びコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20231128BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20231128BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/17
B22D17/32 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019069423
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020163819
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石井 努
(72)【発明者】
【氏名】藤本 武
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-000725(JP,U)
【文献】特開2010-105330(JP,A)
【文献】特開平11-034137(JP,A)
【文献】特開2010-076431(JP,A)
【文献】特開2010-076432(JP,A)
【文献】特開2004-155088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 45/00 - 45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機の段取段階においてユーザーにより行われる金型取り付けに関する機械的な第1変化を生じさせる第1作業が規定通りに行われるように、前記第1作業によって前記成形機に金型取り付けに関する機械的な第1変化が生じたか否かをセンサーの出力に基づいて判定し、前記第1作業及び前記第1作業の次に行われるべき金型取り付けに関する機械的な第2変化を生じさせる第2作業が順番通りに行われるように構成される、成形機。
【請求項2】
成形機の段取段階においてユーザーにより行われる金型取り付けに関する機械的な変化を生じさせる複数の手作業が規定通りに行われるように、前記複数の手作業の各手作業によって機械的な変化が生じたか否かをセンサーの出力に基づいて判定し、
前記複数の手作業は、機械的な第1変化を生じさせる第1作業と、前記第1作業の後に行われ、かつ機械的な第2変化を生じさせる第2作業を含み、
前記第2作業に関するガイダンスをユーザーに提示する前に、前記第1作業によって前記第1変化が生じたか否か適否を判定する、成形機。
【請求項3】
前記第1作業を促す第1ガイダンスをユーザーに提示し、
前記第1作業によって前記成形機において前記第1変化が生じたか否かを前記センサーの出力に基づいて判定し、
前記第1変化が生じたことを示す前記判定結果に応じて前記第2作業をユーザーに促す第2ガイダンスをユーザーに提示するように構成される、請求項1に記載の成形機。
【請求項4】
前記第1変化が生じていないことを示す判定結果に応じて、ユーザーに対してアラートを提示するように構成される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の成形機。
【請求項5】
成形機の段取段階においてユーザーにより行われる作業が規定通りに行われるように、ユーザーに対して所定の作業を促すガイダンスを提示するガイダンスモードの開始に際して、前記ガイダンスにより促される作業の妨げになる前記成形機の状態をセンサーの出力に基づいて検知するように構成される、成形機。
【請求項6】
前記ガイダンスにより促される作業の妨げになる前記成形機の状態の検知に応じて、ユーザーに対してアラートを提示するように構成される、請求項5に記載の成形機。
【請求項7】
前記ガイダンスにより促される作業の妨げになる前記成形機の状態の検知に応じて、前記ガイダンスにより促される作業の妨げにならないように前記成形機の状態を変化させるように構成される、請求項5又は6に記載の成形機。
【請求項8】
成形機に対して金型を取り付ける作業において、金型取り付けに関する第1作業によって生じる射出成形機での金型取り付けに関する機械的な第1変化を検出するためのセンサーを有し、
前記センサーの出力に基づいて前記第1作業による適切な第1変化が前記成形機に生じたかを判定し、この判定の結果に応じて、前記第1作業及び前記第1作業の次に行われるべき金型取り付けに関する機械的な第2変化を生じさせる第2作業が順番通りに行われるように構成される、成形機。
【請求項9】
成形機の段取段階においてユーザーにより行われる金型取り付けに関する機械的な変化を生じさせる複数の手作業が規定通りに行われるように、前記複数の手作業の各手作業による機械的な変化を検出するための1以上のセンサーを有し、
前記複数の手作業は、機械的な第1変化を生じさせる第1作業と、前記第1作業の後に行われ、かつ機械的な第2変化を生じさせる第2作業を含み、
前記1以上のセンサーの出力に基づいて、前記第2作業に関するガイダンスをユーザーに提示する前に、前記第1作業によって前記第1変化が生じたか否か適否を判定する、成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成形機及びコンピュータープログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、射出成形機の型締装置における金型交換に際して、異なる厚みの金型が取り付けられても所望の型締力が得られることを可能にする型厚調整方法を開示する。
【0003】
特許文献2は、射出成形機の射出成形を支援するシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-255592号公報
【文献】特開2017-39216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
射出成形機の型締装置に対して金型を取り付ける作業は、所定の手順に従って行われるべきものであるが、その手順に不慣れな者にとっては、必ずしも容易ではない。近年、金型の構造が複雑化し、金型が高額化している。金型をより長期に亘って使用するため、型締装置に対して金型が誤って取り付けられることは回避したい。現状、射出成形機の取扱者に対する教育以外の方法での解決策は提案されていない。
【0006】
本願発明者は、上述の非限定の課題に鑑みて、射出成形機といった成形機の段取りを積極的に支援するという新たな課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る成形機は、成形機の段取段階においてユーザーにより行われる作業が規定通りに行われるように、前記作業によって前記成形機に生じる変化の適否を判定するように構成される。
【0008】
幾つかの実施形態では、前記成形機が型締装置を含み、前記1以上のセンサーが前記型締装置に含まれ、又は前記型締装置に取り付けられる。幾つかの実施形態では、前記1以上のセンサーは、前記型締装置に含まれる電動モータのトルクを計測するトルクセンサー又は電動モータの回転量を計測するエンコーダである。幾つかの実施形態では、前記1以上のセンサーは、イメージセンサーを含む。幾つかの実施形態では、ユーザー入力に応じて任意のタイミングでガイダンスモードから非ガイダンスモードに移行可能である。幾つかの実施形態では、前記複数のガイダンスは、前記成形機の型締装置に対する金型の取付に関する。
【0009】
本開示の別態様に係る成形機は、成形機の段取段階においてユーザーにより行われる作業が規定通りに行われるように、ユーザーに対して所定の作業を促すガイダンスを提示するガイダンスモードの開始に際して、前記ガイダンスにより促される作業の妨げになる前記成形機の状態を検知するように構成される。
【0010】
幾つかの実施形態では、前記ガイダンスにより促される作業の妨げになる前記成形機の状態を1以上のセンサーを利用して検知するように構成される。前記成形機は、射出成形機又はダイカスト成形機であり得る。
【0011】
本開示の一態様に係るコンピュータープログラムは、成形機の段取段階においてユーザーにより行われる作業が規定通りに行われるように、前記作業によって前記成形機に生じる変化の適否を判定する処理をコンピューターに実行させる。本開示の別態様に係るコンピュータープログラムは、成形機の段取段階においてユーザーにより行われる作業が規定通りに行われるように、ユーザーに対して所定の作業を促すガイダンスを提示するガイダンスモードの開始に際して、前記ガイダンスにより促される作業の妨げになる前記成形機の状態を検知する処理をコンピューターに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様によれば、成形機の段取りを積極的に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一態様に係る射出成形機の概略的な構成を示す。
図2】本開示の一態様に係る射出成形機の表示画面例を示す。
図3】本開示の一態様に係る射出成形機の概略的な動作を示す。
図4】本開示の一態様に係る型締装置に対して金型を取り付けることを模式的に示す。
図5】本開示の一態様に係る型締装置において金型が取り付けられた状態を模式的に示す。
図6】本開示の一態様に係る射出成形機の概略的な動作を示す。
図7】本開示の一態様に係る射出成形機の概略的な動作を示す。
図8】本開示の一態様に係る射出成形機の概略的な動作を示す。
図9】本開示の一態様に係る射出成形機の概略的な動作を示す。
図10】本開示の一態様に係る射出成形機が提示するガイダンス表示(図10(a))とアラート表示(図10(b))の例である。
図11】本開示の一態様に係る射出成形機が提示するガイダンス表示(図11(a))とアラート表示(図11(b))の例である。
図12】本開示の一態様に係る射出成形機が提示するガイダンス表示(図12(a))とアラート表示(図12(b))の例である。
図13】本開示の一態様に係る射出成形機が提示するガイダンス表示(図13(a))とアラート表示(図13(b))の例である。
図14】本開示の一態様に係る射出成形機が提示するガイダンス表示(図14(a))とアラート表示(図14(b))の例である。
図15】本開示の一態様に係る射出成形機の概略的な動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1乃至図15を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示された射出成形機にのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々な射出成形機にも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0015】
図1に示すように、射出成形機1は、共通又は異なるフレーム4上に実装された型締装置2及び射出装置3を有する。射出成形機1は、型締装置2に対して金型装置5が取り付けられた状態で射出成形動作(後述の可塑化・計量工程、充填工程、及び保圧工程)を行う。
【0016】
金型装置5の具体的な構成は、射出成形品の形状、大きさ、及び個数によって決定される。金型装置5は、2プレート式又は3プレート式であり得る。幾つかの形態では、金型装置5は、1以上の固定型51、1以上の可動型52、及び1以上の結合具53を有する。固定型51と可動型52が型合せされると、成形品の成形のためのキャビティーが画定される。固定型51のキャビティー部分と可動型52のキャビティー部分が合わされ、一つのキャビティーを形成する。可動型52にはキャビティーに溶融プラスチック材料を供給するためのスプルー、ランナー、及びゲートが形成されている。固定型51と可動型52が上手く型合わせされないことは、ヒケ、バリといった様々な成形不良を招くおそれがある。固定型51及び可動型52は、温度調整用の温調流路を有し、温調流体により温調される。固定型51及び可動型52の一方にガイドピンが設けられ、他方にガイド穴が設けられ、両者のアライメントが行われる。固定型51は、固定型51を固定盤21に取り付けるための固定型取付板を有する。同様、可動型52も、可動型52を可動盤22に取り付けるための可動型取付板を有する。固定型51は、固定盤21の穴に対する位置合わせのためのロケートリンクを有する。
【0017】
アンダーカットの処理のため、金型装置5は、スライドコア式又は傾斜スライド式であり得る。スライドコア式の場合、固定型51は、スライドコア、コア戻しスプリング、及びコア停止用ブロックといった複数の要素を含み得る。可動型52は、アンギュラーピン及びロッキングブロックといった複数の要素を含み得る。固定型51のスライドコアには、可動型52のアンギュラーピンを受け入れるための受け孔も設けられる。可動型52が固定型51から離れる時、アンギュラーピンによりスライドコアが押されてスライド移動する。
【0018】
可動型52は、スペーサーブロック、エジェクタプレート、エジェクタピン、及びリターンピンを含むことができる。スペーサーブロックは、可動型本体と可動型取付板の間に設けられる環状部材である。エジェクタプレートは、スペーサーブロックの内側に設けられる。エジェクタプレートに対して、異なる長さのエジェクタピン及びリターンピンが結合する。エジェクタピンは、エジェクタプレートにより押される部分であり、成形品の押出のために用いられる。リターンピンは、型閉の時、固定型51により押され、エジェクタプレートを初期位置に戻すために用いられる。
【0019】
ロータリー式射出成形機においては可動盤上に回転テーブルが実装され、回転テーブルに対して複数の可動型52が取り付けられる場合がある。つまり、共通の固定盤に2以上の固定型51が取り付けられ、同様、共通の可動盤に2以上の可動型52が取り付けられる形態も想定される。
【0020】
結合具53は、固定型51と可動型52を結合するための任意の部材である。結合具53により固定型51と可動型52を結合させることにより金型装置5の保管がし易くなる。例えば、結合具53は、固定型51の側面に設けられた第1凸部と可動型52の側面に設けられた第2凸部に係合するように構成される。結合具53にロック機能を持たせる形態も想定される。固定型51と可動型52を結合具53により結合して一体化することにより型締装置2まで金型装置5を円滑に搬送することもできる。結合具53が固定型51又は可動型52のいずれかに対して枢動可能に固定される形態も想定される。例えば、結合具53が、固定型51の側面に回動可能に取り付けられたフックである場合、可動型52の側面の凸部にフックを掛ければ、固定型51と可動型52が固定される。結合具53が固定型51又は可動型52に対して磁着することも想定される。
【0021】
型締装置2は、固定盤21、可動盤22、トグル機構23、トグルサポート24、複数のタイバー25、型締モータ26、及び型厚調整機構27を有する。型締モータ26で生成される駆動力がトグル機構23に伝達し、タイバー25に沿って可動盤22が動かされる。これにより、固定盤21の対向面と可動盤22の対向面の間隔が変更可能である。固定盤21と可動盤22の間隔が大きい時、固定盤21と可動盤22の間の空間に金型装置5を導入することができる(図4参照)。固定盤21と可動盤22の間の空間に金型装置5が導入された状態で、固定型51を固定盤21に対して取り付け、また可動盤22に対して可動型52を取り付けることができる(図5参照)。固定型51(つまり、固定型取付板)を固定盤21に取り付けた後、可動型52(つまり、可動型取付板)を可動盤22に取り付けても良く、反対に、可動型52を可動盤22に取り付けた後、固定型51を固定盤21に取り付けても良い。
【0022】
型締装置2に対して金型装置5が取り付けられた状態において、上述と同様に可動盤22が動かされ、これにより、金型装置5の型閉、型締、及び型開が行われる。型閉は、固定型51の対向面と可動型52の対向面が接触して固定型51のキャビティー部分と可動型52のキャビティー部分が空間的に連通した状態である。型締は、射出装置3から材料の射出圧に耐えるべく、可動型52が固定型51により強く押し付けられた状態である。型開は、固定型51の対向面と可動型52の対向面が接触せず、両者の間に間隔が空けられた状態である。当業者には明らかなように、型締装置2は、型閉、型締、及び型開のループを繰り返すように構成される。
【0023】
型締装置2は、金型装置5から成形品を排出するためのエジェクタ装置を含むことができる。エジェクタ装置は、例えば、可動盤22の後方に取り付けられる。エジェクタ装置は、エジェクタロッドと、エジェクタロッドを作動させるための駆動源を含む。エジェクタロッドを前進させると、これにより金型装置5のエジェクタプレートが押される。エジェクタピンにより固定型51の成形品が押され、金型装置5から排出される。射出成形機1は、型開に同調してエジェクタ装置を作動させる。
【0024】
トグル機構23は、型締モータ26からの駆動力を受けるクロスヘッド23a、トグルサポート24と可動盤22の間で回転自在に結合した第1及び第2リンク23b,23c、クロスヘッド23aと第1リンク23bの間を結合する第3リンク23dを有する。型締モータ26で生成される回転力は、ボールねじといった変換装置によって直線力に変換され、クロスヘッド23aに付与される。例えば、型締モータ26の正回転に応じてクロスヘッド23aが固定盤21に向けて直進し、第1リンク23bと第2リンク23cのなす角θ(図4参照)が大きくなり、可動盤22が固定盤21に向けて直進する。可動盤22に対して可動型52が取り付けられていれば可動型52も直進する。型締モータ26の逆回転に応じてクロスヘッド23aが固定盤21から離間する方向に動かされ、第1リンク23bと第2リンク23cのなす角θが小さくなり、可動盤22が固定盤21から離れる方向に直進する。可動盤22に対して可動型52が取り付けられていれば可動型52も同方向に直進する。なお、型締装置2において可動盤22及びそこに取り付けられた可動型52が固定盤21及びそこに取り付けられた固定型51に向けて移動する方向を前方と定義し、この反対方向を後方と定義することもできる。
【0025】
トグル機構23は、型締モータ26の駆動力を増幅して可動盤22に伝達する。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク23bと第2リンク23cとのなす角θに応じて変化する。角度θとクロスヘッド23aの位置が相関する。従って、角度θをクロスヘッド23aの位置から求めることができる。角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。トグル機構23を採用せず、可動盤22の移動のために油圧シリンダーを採用する形態も想定される。
【0026】
型厚調整機構27は、固定盤21に対するトグルサポート24の位置(両者の前後間隔、言わば、型厚)を調整するように構成される。型厚調整機構27は、型厚調整モータ27aを含む。型厚調整モータ27aの回転力が、タイバー25の後端部のネジ軸27bに螺合したナット27cに伝達し、タイバー25沿いのトグルサポート24の位置が変更され、固定盤21に対するトグルサポート24の位置(即ち、両者の間隔)が変更される。型厚調整モータ27aの回転力は、ベルト及び歯車といった伝達要素を介して、又は直接的にナット27cに伝達される。
【0027】
射出装置3は、型締装置2に取り付けられた金型装置5に対して溶融プラスチック材料を供給する。射出装置3は、型締装置2と同一又は異なるフレーム4上において移動可能であり、型締装置2、例えば、その固定盤21に対して接近し、またそこから離間するように動かされる。例えば、射出装置3をレール上に載せ、油圧シリンダーの伸縮に基づいて固定盤21に対して射出装置3を近づけ及び離すことができる。固定盤21に対して相対的に射出装置3を動かすための他の様々な追加又は代替の機構を採用することができる。
【0028】
射出装置は、インラインスクリュー式又はプリプラ式であり得る。本明細書では、射出装置がインラインスクリュー式であるものとして説明するが、これに限られるべきものではない。射出装置3は、シリンダー31、スクリュー32、ヒーター33、及び駆動部34を有する。シリンダー31は、スクリュー32を収容する金属製の筒材であり、シリンダー胴部31aとノズル部31bを有する。シリンダー胴部31aは、スクリュー32を収容する。ノズル部31bは、シリンダー胴部31aの流路径に比べて小さい流路径を持つ直線流路を有し、またシリンダー胴部31aから供給される溶融プラスチック材料を吐出する吐出口31dを有する。シリンダー胴部31aは、ホッパー35から供給されるプラスチック材料、例えば、ペレットを受け入れる材料供給口31cを有する。ペレットは、シリンダー胴部31aを介してヒーター33から伝達する熱に応じて溶融し、またスクリュー32の回転に応じて前側、即ち、ノズル部31bの吐出口31dに向けて搬送される。なお、後述の説明から分かるように、充填時のスクリュー32の移動方向が前側であり、計量時のスクリュー32の移動方向が後側である。
【0029】
スクリュー32は、軸部32aと軸部32aの外周に螺旋状に設けられたフライト32bを有し、その回転に応じて固体及び溶融状態のプラスチック材料をシリンダー31の前側に搬送することができる。スクリュー32は、駆動部34に含まれる第1モータ34aからの回転力を受けて回転することができる。また、スクリュー32は、駆動部34に含まれる第2モータ34bからの駆動力を受けて静止中のシリンダー31内において前側(ノズル部31bに接近する側)及び後側(ノズル部31bから離れる側)に動くことができる。スクリュー32の先端(前端)には逆流防止リング36が取り付けられる。逆流防止リング36は、スクリュー32が静止中のシリンダー31内においてノズル部31b側に動かされる時、貯留空間31eに貯留した溶融プラスチック材料が後側に流入することが抑制される。
【0030】
ヒーター33は、シリンダー31の外周に取り付けられ、例えば、フィードバック制御された通電により発熱する。ヒーター33は、シリンダー胴部31a及び/又はノズル部31bの外周に任意の態様で取り付けられる。
【0031】
駆動部34の第1モータ34aで生成される回転力は、直接的にスクリュー32に対して供給され、又は減速機といった中継装置を介してスクリュー32に対して供給される。第1モータ34aが減速機を内蔵する形態も想定される。駆動部34の第2モータ34bで生成される回転力は、ボールねじといった変換装置により直線力に変換されてスクリュー32に伝達される。駆動部34の機械的な構成は、様々であるが、例えば、スクリュー32と第1モータ34aが同軸上に連結され、この連結ユニットがボールねじのナットに対して固定される。第2モータ34bの代替としてシリンダー、例えば、油圧シリンダーを採用することもできる。
【0032】
射出装置3の動作の概要について述べれば、ヒーター33からシリンダー31に対して熱を与え、ホッパー35を介してシリンダー胴部31a内に供給されるペレットが溶融される。第1モータ34aからの回転力に応じてシリンダー胴部31a内でスクリュー32が回転し、スクリュー32の螺旋状の溝に沿ってプラスチック材料が前側に送られ、この過程でプラスチック材料が徐々に溶融される。スクリュー32の前側に溶融プラスチック材料が供給されるに応じてスクリュー32が後退され、溶融プラスチック材料が貯留空間31eに貯留される(「可塑化・計量工程」と呼ばれる)。スクリュー32の回転数は、第1モータ34aのエンコーダを用いて検出する。計量工程では、スクリュー32の急激な後退を制限すべく、第2モータ34bを駆動してスクリュー32に対して設定背圧を加えてよい。スクリュー32に対する背圧は、例えば圧力検出器を用いて検出する。スクリュー32が計量完了位置まで後退し、スクリュー32の前方の貯留空間31eに所定量の溶融プラスチック材料が蓄積され、計量工程が完了する。
【0033】
可塑化・計量工程に続いて、第2モータ34bからの駆動力に応じてスクリュー32がノズル部31bに向けて充填開始位置から充填完了位置まで動き、貯留空間31eに貯留された溶融プラスチック材料がノズル部31bの吐出口31dを介して金型装置5内に供給される(「充填工程」と呼ばれる)。スクリュー32の位置や速度は、例えば第2モータ34bのエンコーダを用いて検出する。スクリュー32の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュー32の設定速度は、スクリュー32の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0034】
充填工程においてスクリュー32の位置が設定位置に達した時、その設定位置にスクリュー32を一時停止させ、その後にV/P切替を行ってもよい。V/P切替の直前において、スクリュー32の停止の代わりに、スクリュー32の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュー32の位置を検出するスクリュー位置検出器、およびスクリュー32の速度を検出するスクリュー速度検出器は、第2モータ34bのエンコーダに限定されず、他の種類の検出器を使用できる。
【0035】
充填工程に続いて、スクリュー32の前側移動に応じてスクリュー32の前方のプラスチック材料の保持圧が設定圧に維持され、残存するプラスチック材料が金型装置5に押し出される(「保圧工程」と呼ばれる)。金型装置5内での冷却収縮による不足分のプラスチック材料を補充できる。保持圧は、例えば圧力検出器を用いて検出する。保持圧の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間に応じて変更されてもよい。保圧工程では金型装置5内のキャビティーのプラスチック材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティーの入口が固化したプラスチック材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティーからのプラスチック材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティーのプラスチック材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0036】
保圧工程に続いて、上述の可塑化・計量工程が行われる。
【0037】
射出成形機1は、型締装置2と射出装置3の協調的な動作に基づいて成形品を連続的に製造する。射出成形機1は、型締装置2及び射出装置3を制御するための制御部100を有する。制御部100は、例えば、型締モータ26、型厚調整モータ27a、第1モータ34a、及び第2モータ34bをシーケンス制御する。制御部100は、型締モータ26の制御に基づいて、型閉、型締、及び型開を行う。制御部100は、第1及び第2モータ34a,34bの制御に基づいて、可塑化・計量、充填、保圧を行う。制御部100は、上述の制御に加えて、ヒーター33の発熱、金型装置5の冷却、エジェクタ装置の作動、型締装置2に対する射出装置3の位置も制御することができる。例えば、制御部100は、金型装置5の型締の間、可塑化・計量、充填、及び保圧を連続的に行う。続いて、制御部100は、金型装置5を冷却のために冷却装置を作動させる。続いて、制御部100は、型締モータ26の制御により固定型51から可動型52を離し、エジェクタ装置を作動させる。
【0038】
射出成形機1は、複数のセンサー90を含む。センサー90は、例えば、エンコーダ91、接触センサー92、歪センサー93、圧力センサー94、距離計95、及びイメージセンサー96、及びトルクセンサー97から選択される1以上のものである。エンコーダ91の例は、ロータリーエンコーダ又はリニアエンコーダである。インクリメント型又はアブソリュート型のいずれか又は両方が採用され得る。典型的には、エンコーダ91は、型締モータ26、型厚調整モータ27a、第1モータ34a、及び第2モータ34bといった電動モータの回転量を検出する。型締モータ26の回転量を計測するエンコーダの出力信号が制御部100に伝達され、可動型52の位置が高精度に制御され、型閉、型締、及び型開の状態変化が達成される。型厚調整モータ27aの回転量を計測するエンコーダの出力信号が制御部100に伝達され、固定盤21に対するトグルサポート24の位置(即ち、両者の間隔)が調整される。第1モータ34aの回転量を計測するエンコーダの出力信号が制御部100に伝達され、スクリュー32の回転量が高精度に制御される(即ち、計量工程が高精度に制御される)。第2モータ34bの回転量を計測するエンコーダの出力信号が制御部100に伝達され、シリンダー31内におけるスクリュー32の位置が高精度に制御される(即ち、充填及び保圧工程が高精度に制御される)。
【0039】
センサー90は、接触/近接センサー92、歪センサー93、圧力センサー94、距離計95、イメージセンサー96、トルクセンサー97及びこれ以外の種類のセンサーといった複数の種類のセンサーを含み得る。接触/近接センサー92は、射出成形機1の構成要素、例えば、金型装置5やシリンダー31が目標位置/姿勢にあるか否かを判定するために用いることができる。接触センサーは、釦式スイッチ、歪ゲージが例示される。近接センサーは、例えば、変位物の接近によって誘起される電磁誘導に応じた誘導電流を検出するセンサーであるが、この原理の種類に限られない。歪センサー93は、射出成形機1の構成要素、例えば、タイバー25の歪を検出し、金型装置5の取付状態を判定するために用いることができる。距離計95は、接触/近接センサー92の追加又は代替として、射出成形機1の構成要素、例えば、金型装置5やシリンダー31が目標位置/姿勢にあるか否かを判定するために用いることができる。距離計95は、例えば、光学式であり、TOF(Time Of FLight)に基づいて光学的に対象物までの距離を測定するが、この原理に限られない。イメージセンサー96は、射出成形機1の状態判定用の画像を取得することに用いることができる。イメージセンサー96は、CCD,CMOS又はこれら以外の種類の任意の画像取得装置である。イメージセンサー96は、画像処理回路を含むことができる。トルクセンサー97は、後述の型締モータ26や型厚調整モータ27aといった電動モータのトルクを計測する。トルクセンサー97は、例えば、型締モータ26の出力軸とぼーるネジのねじ軸の間に設けられる。
【0040】
異なる目的のために同一の種類のセンサーが用いられることも想定される。例えば、歪ゲージは、歪の有無に加えて、歪量の計測にも用いることができる。従って、歪ゲージは、接触センサーとして用いることもでき、また歪センサーとして用いることもできる。同様、距離計95は、距離の計測に限らず、対象物の有無も検出することができる。同様、イメージセンサー96は、様々な目的のために利用することができる。例えば、制御部100は、マスター画像と取得画像の比較に基づいて射出成形機1の現在の状態が意図された状態になっているか判断することができる。取得画像に対する二値化処理、エッジ抽出処理、特徴点抽出処理といった様々な画像処理技術を活用することができる。
【0041】
制御部100は、1以上のコンピューターから構成される。制御部100は、型締装置2及び射出装置3の近くに配置される必要はない。制御部100は、型締装置2及び射出装置3に組み込まれた又は取り付けられたセンサー90と通信できる限りにおいて型締装置2及び射出装置3からリモートに配置され得る。制御部100は、所謂、コンピューターであり、1以上のCPU(Central Processing Unit)110、及び1以上のメモリー120を含む。制御部100には、入出力及び表示装置の一例の1以上のタッチパネル130が有線又は無線で接続される。制御部100のコンピューターに対してリモートなコンピューター(例えば、スマートフォン)のタッチパネルをタッチパネル130として用いる形態も想定される。
【0042】
CPU110は、メモリー120に記憶されたプログラムを実行し、射出成形機1に対する所望の制御を実現する。メモリー120は、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)、半導体メモリー(DRAM,SRAM)といった情報記憶部である。メモリー120は、CPU110に内蔵されたメモリー領域を含み得る。タッチパネル130は、液晶又は有機ELパネルといった表示パネルと、表示パネルに組み込まれたタッチセンサー群を含む。表示パネル上における指のタッチ位置がタッチセンサーにより検出される。
【0043】
ユーザーは、タッチパネル130のアイコンをタッチして選択し、射出成形機1を制御することができる。例えば、図2に示すタッチパネル130上のアイコンAから展開された一つのオプションである「型閉」アイコンがタッチされると、CPU110が、型閉を実行するように型締モータ26を制御する。なお、タッチパネル130には射出成形機1に組み込まれた又は取り付けられたセンサーの計測値等も表示される。「型閉」アイコン、「型開」アイコン、「型締」アイコンが初期画面に表示されていても構わない。「可塑化・計量」アイコン、「充填」アイコン、「保圧」アイコン、「型厚変更」アイコン、「型締力変更」アイコン、「温度変更」アイコンも同様である。
【0044】
本実施形態においては、射出成形機1は、射出成形機1の段取段階においてユーザーにより行われる複数の作業が所定の順番で行われるように、各ガイダンスがユーザーに対して所定の作業を促す複数のガイダンスを所定の順番で提示するように構成される。図2に示すように、タッチパネル130には、「金型取付ガイダンス」アイコンと、「射出装置構築ガイダンス」アイコンが表示されている。ユーザーが「金型取付ガイダンス」及び「射出装置構築ガイダンス」のいずれかのアイコンをタッチして選択することにより射出成形機1は通常モード(非ガイダンスモード)からいずれかのガイダンスモードに変化する。これにより射出成形機1の構築ミスを抑制することが促進され、また射出成形機1の構築に不慣れなユーザーにおいてもその構築時間の短縮化が促進される。
【0045】
射出成形機1によるガイダンスの提示は、様々な媒体、例えば、音、光、振動、画像、及び映像により達成可能である。典型的には、制御部100が、タッチパネル130に画像ガイダンスを表示させるが、スピーカーといった音出力装置に対して音声ガイダンスを出力させても良く、画像及び音ガイダンスの両方を実行することも可能である。なお、画像ガイダンスの追加又は代替として映像ガイダンスを用いることもできる。ガイダンスは、画像ガイダンス、映像ガイダンス、及び音声ガイダンスから選択される2つ以上の組み合わせであり得る。
【0046】
本実施形態では、射出成形機1の段取段階においてユーザーにより行われる作業が規定通りに行われるように、その作業によって射出成形機1に生じる変化の適否を判定するように構成される。幾つかの場合、射出成形機1は、その作業によって射出成形機1に生じる変化の適否を1以上のセンサーの出力に基づいて判定するように構成される。必ずしもこの限りではないが、射出成形機1は、連続的なガイダンスの提示、即ち、図3に示す第1ガイダンスの提示と第2ガイダンスの提示の間において判定を行う。
【0047】
図3に示すように、射出成形機1は、第1作業を促す第1ガイダンスをユーザーに提示し(S00)、第1作業によって射出成形機において第1変化が生じたか否かを1以上のセンサーの出力に基づいて判定し(S01)、第1変化が生じたことを示す判定結果に応じて、第1作業の次に行われるべき第2作業をユーザーに促す第2ガイダンスをユーザーに提示する(S02)。これにより、第1作業が実際に行われたか、或いは、第1作業によって射出成形機に適切な機械構造/構成上の変化が生じたか確認することができる。判定を行わない場合に生じ得る原因究明負担も低減され得る。即ち、判定を行わない場合、どの作業に起因してどのようなミスが生じたかを特定することは容易ではない。例えば、射出成形機1の型締装置2に対して金型装置5を取り付けた後、所望の型締力が得られない場合、型締装置2に対して金型装置5を取り付ける段階の間で1以上の判定を行うことにより、どの作業が影響して所望の型締力が得られなかったのか原因を特定することが容易になる。
【0048】
ユーザーは、タッチパネル130の「作業完了」アイコンをタッチして選択するといった方法で、第1ガイダンスに促された第1作業を完了した事実を射出成形機1の制御部100に伝達することができる。制御部100は、この入力に応じて判定を行う(S01)。代替的に、制御部100は、第1ガイダンスの提示(S00)から所定時間経過後に自動的に判定を行う。制御部100が、所定の時間間隔で判定することを繰り返すことも想定される。
【0049】
オプションとして、射出成形機1は、第1変化が生じていないことを示す判定結果に応じて、ユーザーに対してアラートを提示する(S03)。例えば、固定盤21に対して適切な位置又は配向で固定型51が取り付けられていない旨のアラートが提示される。「ガイダンス」の提示と同様、「アラート」の提示は、様々な媒体、例えば、音、光、振動、画像、及び映像により達成可能である。典型的には、制御部100が、タッチパネル130に画像アラートを表示させるが、スピーカーといった音出力装置に対して音声アラートを出力させても良く、画像及び音アラートの両方を実行することも可能である。なお、画像アラートの追加又は代替として映像アラートを用いることもできる。アラートは、画像アラート、映像アラート、及び音声アラートから選択される2つ以上の組み合わせであり得る。
【0050】
オプションとして、射出成形機1は、第1ガイダンスにより第1作業がユーザーに促されている時、第1ガイダンス以降に提示されるガイダンスにより促される作業に関する射出成形機1への指令の入力を無効化するように構成される。無効化は、その指令の入力を禁止すること、入力されたその指令を無視することを含む。例えば、型閉を促すガイダンスを提示する時、型締アイコンがタッチされて選択されても、制御部100は、その入力を無視し、誤った入力が為されたことをユーザーにアラートで提示する。
【0051】
射出成形機1のガイダンスモードの非限定の一例について図4乃至図14を参照して更に説明する。なお、図6乃至図9で示される多数の判定の全てを行うことは必須ではない。いずれか一つの判定を行うことにより射出成形機1の構築ミスを抑制することが促進され、また射出成形機1の構築に不慣れなユーザーにおいてもその構築時間の短縮化が促進される。図4及び図5は、射出成形機1の構築のために型締装置2に対して金型装置5を取り付けることを模式的に示す。図6に示すように、まず、ユーザーは、ガイダンスモードを選択する(S10)。ガイダンスモードの選択は、タッチパネル130上のアイコンをタッチして選択することに限らず、「ガイダンスモードを開始せよ」といったユーザーの音声メッセージにより為すこともできる。この点は、制御部100に対してユーザーが行う他の様々な指令の入力についても同様である。幾つかの形態では、「ガイダンスモード中止」アイコンの選択や「ガイダンスモード中止」音声といったユーザー入力によりガイダンスモードから非ガイダンスモードに移行できる。
【0052】
次に、射出成形機1の制御部100は、ガイダンスモードを開始して良いか否か判定する(S11)。ガイダンスモードを開始してはいけない特定の条件をプログラムに記述することができる。制御部100は、1以上のセンサー90からの出力に応じてガイダンスモードの開始の是非を判断することもできる。S11でNG判定の場合、制御部100は、ユーザーに対してアラートを提示する(S12)。必ずしもこの限りではないが、アラートは、ガイダンスモードに入ることができない理由をユーザーに示し、ガイダンスモードに入るために必要な措置をユーザーに提示し得る。
【0053】
例えば、射出成形機1は、固定盤21に対して固定型51をクランプするためのクランプ機構の状態を検知する(S11)。射出成形機1は、クランプ機構がクランプ姿勢/位置にあることを検知する時、クランプ機構を非クランプ姿勢/位置に変化させるようにユーザーに対してアラートを提示する(S12)。追加又は代替として、射出成形機1は、クランプ機構がクランプ姿勢/位置にあることを検知する時、クランプ機構を非クランプ姿勢/位置に変化させるための指令を生成し、これに応じて、クランプ機構が、クランプ姿勢/位置から非クランプ姿勢/位置に変化する。
【0054】
このように、射出成形機1は、ガイダンスモードの開始に際して、ガイダンスにより促される作業の妨げになる射出成形機の状態を検知する。射出成形機1は、この検知に応じて、ユーザーに対してアラートを提示し、又は、その作業の妨げにならないように射出成形機1の状態を変化させる。これにより、ユーザーによって複数の作業が規定通りに行われることが促進される。射出成形機1は、ガイダンスにより促される作業の妨げになる射出成形機の状態を1以上のセンサーを利用して検知しても良い。射出成形機1は、クランプ機構がクランプ姿勢及び非クランプ姿勢のいずれにあるかをクランプ機構の出力、例えば、クランプ機構に内蔵の駆動モータのエンコーダの出力値に基づいて検知できる。もちろん、射出成形機1は、クランプ機構外に設けられたセンサーの出力によってクランプ機構の状態を検知することもできる。ガイダンスモードの開始条件は、ガイダンスの種類によって大きく異なり得る。クランプ機構の状態確認は、単なる一例であるものと理解される。
【0055】
S11でOK判定の場合、射出成形機1は、固定盤21から可動盤22を離すガイダンスをユーザーに提示する。ユーザーは、ガイダンスに従って、タッチパネル130の「型開」アイコンをタッチして選択する(S14)。射出成形機1は、その入力に応じて固定盤21から可動盤22を離すべく型締モータ26を作動させる(S15)。次に、射出成形機1は、固定盤21から可動盤22が適切な位置まで離れたか否か判定する(S16)。この判定のため、タイバー25沿いの可動盤22の位置を計測するセンサー、例えば、距離計95を用いることができる。制御部100は、測定距離が目標距離の範囲内に入る時、OK判定し、それ以外の時、NG判定する。代替として、接触センサー92を適切な位置に設け、可動盤22が目標とする位置まで動いたかどうか判定することができる。
【0056】
S16でNG判定の時、射出成形機1は、アラートを提示し得る(S17)。なお、固定盤21から可動盤22が十分に離されていない場合、金型装置5が固定盤21と可動盤22のいずれかに接触してしまうリスクがある。射出成形機1よりも金型装置5のほうが高額な場合があり、金型装置5の安全性を高めることができる。
【0057】
S16でOK判定の場合、射出成形機1は、固定盤21と可動盤22の間の空間に金型装置5を配置するガイダンスをユーザーに提示する(S21)。図10(a)に示すように画像ガイダンスは、これにより促される作業を画像で表すことができる。ユーザーは、ガイダンスに従って、任意の方法で、例えば、クレーン(不図示)を用いて、ある場所、例えば、金型置き場から固定盤21と可動盤22の間の空間まで金型装置5を移動させる(S22)。ローラーコンベヤー、ベルトコンベヤーといったコンベヤを用いて固定盤21と可動盤22の間の空間まで金型装置5を搬送する形態も想定される。固定盤21と可動盤22の間の空間まで金型装置5を自動的に搬送する自動化搬送装置が用いられる形態も想定される。この形態では、ユーザーは、その自動化搬送装置に対して金型装置5の搬送を指示する。
【0058】
次に、射出成形機1は、固定盤21と可動盤22の間の空間に金型装置5が適切に配置されたか否か判定する(S23)。この判定のため、可動盤22と固定盤21の間の金型装置5の有無を検出することができるセンサー、例えば、距離計95を用いることができる。固定盤21と可動盤22の間に金型装置5が配置される時、距離計95の計測値が小さくなる。従って、制御部100は、計測値と閾値の比較に基づいて固定盤21と可動盤22の間の金型装置5の存在を判定することができる。距離計を固定する場所は、固定盤21や可動盤22に限られず、フレーム4でも良い。距離計の追加又は代替として近接センサーを用いることもできる。S23でNG判定の時、射出成形機1は、アラートを提示し得る(S24)。図10(b)に示すように画像アラートは、これにより警告される内容を文字で表すことができる。
【0059】
S23でOK判定の場合、射出成形機1は、固定盤21に対して固定型51を取り付けるガイダンスをユーザーに提示する(S25)。図11(a)に示すように画像ガイダンスは、これにより促される作業を画像で表すことができる。ユーザーは、ガイダンスに従って、任意の方法で、例えば、ボルトといった締結具を用いて、固定盤21に対して固定型51を取り付ける(S26)。金型装置5の交換が頻繁に行われることが予定されている射出成形機1において固定盤21に対して固定型51を固定するためのクランプ機構が型締装置2に実装される。この形態では、ユーザーは、ガイダンスに従って、タッチパネル130に指令を入力してクランプ機構を作動させる(S26)。
【0060】
次に、射出成形機1は、固定盤21に対して固定型51が適切に取り付けられたか否か判定する(S27)。この判定のため、固定盤21上における固定型51の位置を計測する距離計95を用いることができる。追加又は代替として、1以上の接触/近接センサー92を固定盤21に設けることができる。固定型51が長方形の外周形状を有する時、その長辺が鉛直方向上側に配されるように固定型51を固定盤21に取り付けるのか、その短辺が鉛直方向上側に配されるように固定型51を固定盤21に取り付けるのかによって固定盤21に対する固定型51の取り付け状態が異なる。上述の判定(S27)により固定盤21に対する誤った固定型51の取り付けを回避又は抑制することができる。S27でNG判定の時、射出成形機1は、アラートを提示し得る(S28)。図11(b)に示すように画像アラートは、これにより警告される内容を文字で表すことができる。
【0061】
S27でOK判定の場合、射出成形機1は、固定盤21に向けて可動盤22を接近させるガイダンスをユーザーに提示する(S31)。図12(a)に示すように画像ガイダンスは、これにより促される作業を画像で表すことができる。ユーザーは、ガイダンスに従って、タッチパネル130の「型閉」アイコンをタッチして選択する(S32)。射出成形機1は、その入力に応じて固定盤21に向けて可動盤22を接近させるべく型締モータ26を作動させる(S33)。次に、射出成形機1は、可動盤22が可動型52に接触したか否か判定する(S34)。この目的のため、接触/近接センサー92、距離計95、エンコーダ91、及びトルクセンサー97といった様々なセンサーを用いることができる。例えば、可動盤22の凹部に接触センサーを配置し、可動盤22と可動型52の面接触を検出することができる。制御部100は、距離計95の計測値を参照して、可動盤22が目標とする型厚が得られる目標位置まで移動したか否かを判定しても良い。制御部100は、型締モータ26の回転量を計測するエンコーダ91の出力を参照して、可動盤22が目標位置まで移動したか否か判定しても良い。制御部100は、型締モータ26のトルクを計測するトルクセンサー97の出力を参照して、可動型52が固定型51に接触したタイミングを検出して型締モータ26の回転を停止させても良い。S34でNG判定の時、射出成形機1は、アラートを提示し得る(S35)。図12(b)に示すように画像アラートは、これにより警告される内容を文字で表すことができる。
【0062】
S34でOK判定の場合、射出成形機1は、可動盤22に対して可動型52を取り付けるガイダンスをユーザーに提示する(S36)。図13(a)に示すように画像ガイダンスは、これにより促される作業を画像で表すことができる。ユーザーは、ガイダンスに従って、任意の方法で、例えば、ボルトといった締結具を用いて、可動盤22に対して可動型52を取り付ける(S37)。クランプ機構が型締装置2に実装される形態では、ユーザーは、ガイダンスに従って、タッチパネル130に指令を入力してクランプ機構を作動させる(S37)。
【0063】
次に、射出成形機1は、可動盤22に対して可動型52が適切に取り付けられたか否か判定する(S38)。この判定のため、可動盤22上における可動型52の位置を計測する距離計95を用いることができる。追加又は代替として、1以上の接触/近接センサー92を可動盤22に設けることができる。S38でNG判定の時、射出成形機1は、アラートを提示し得る(S39)。図13(b)に示すように画像アラートは、これにより警告される内容を文字で表すことができる。
【0064】
S38でOK判定の場合、射出成形機1は、固定型51と可動型52の結合を解除するガイダンスをユーザーに提示する(S41)。図14(a)に示すように画像ガイダンスは、これにより促される作業を画像で表すことができる。ユーザーは、ガイダンスに従って、任意の方法で、例えば、手作業で結合具53を取り外す(S42)。結合具53を取り外す装置が用いられる場合、ユーザーは、その装置に対して取り外しの指令を入力する。次に、射出成形機1は、固定型51と可動型52の結合が解除されたか否か判定する(S43)。この判定のため、距離計95又はイメージセンサー96を用いることができる。距離計95は、結合具53が取り外される前の距離と、結合具53が取り外された後の距離を計測することができる。制御部100は、両者の距離を比較することに基づいて結合具53が取り外されたことを検出することができる。制御部100は、異なる時間で取得された距離の比較に基づいて、又は目標距離と取得距離の比較に基づいて、結合具53の取り外しの有無を判定することができる。イメージセンサー96は、結合具53が取り外される前の画像と結合具53が取り外された後の画像を取得することができる。制御部100は、各画像の比較に基づいて結合具53が取り外されたことを検出することができる。制御部100は、異なる時間で取得された画像の比較に基づいて、又は取得画像における結合具53を示す特徴の検出の有無に基づいて、結合具53の取り外しの有無を判定することができる。図14(b)に示すように画像アラートは、これにより警告される内容を文字で表すことができる。
【0065】
S43でOK判定の場合、射出成形機1は、型締のガイダンスをユーザーに提示する(S45)。ユーザーは、ガイダンスに従って、タッチパネル130の「型締」アイコンをタッチして選択する(S46)。射出成形機1は、その入力に応じて型締モータ26を作動させる(S47)。次に、射出成形機1は、所望の型締力が得られた否か判定する(S48)。型締力の検出のために、歪センサー93又はトルクセンサー97を用いることができる。例えば、歪センサー93がタイバー25に対して取り付けられ、型締時にタイバー25に生じる歪みが測定される。制御部100は、歪センサー93の出力値が閾値を超えるか否か比較することにより、所望の型締力が得られるか否か判定することができる(S48)。追加又は代替として、制御部100は、型締モータ26のトルクを計測するトルクセンサー97の出力値が閾値を超えるか否か比較することにより、所望の型締力が得られるか否か判定することができる(S48)。なお、S48でNG判定の場合、制御部100は、何らかの不具合があることをユーザーにアラートにより提示することができる(S49)。S48でOK判定の場合、ガイダンスモードを終了する。オプションとして、S48でOK判定の場合、型締装置2の固定盤21に対して射出装置3のシリンダー31を接近させる作業についてもガイダンスを提示し、シリンダー31の位置を判定することもできる。
【0066】
射出成形機1を構築することは型締装置2に対して金型装置5を取り付けることに限られない。射出成形機1を構築することは、図15に示すように、射出装置3の保守作業において、スクリュー32を駆動部34の出力軸、例えば、第1モータ34aの出力軸に取り付け、続いて、シリンダー31を駆動部34の筐体に対して固定する構築作業も包含する。ガイダンスの提示、判定の方法、及びアラートの提示は、上述の記述に倣って実施することができ、図16に関する詳細な説明は省略する。
【0067】
上述の教示を踏まえ、当業者は、各実施形態及び各特徴に対して様々な変更を加えることができる。本明細書に開示の特徴は、射出成形機に限らず、ダイカスト成形機といった成形機にも流用することができる。また、本明細書の開示に照らせば、次の付記1に記載のコンピュータープログラムも開示されている。
【0068】
-付記1-
成形機の段取段階においてユーザーにより行われる複数の作業が所定の順番で行われるように、各ガイダンスがユーザーに対して所定の作業を促す複数のガイダンスを所定の順番で提示する処理をコンピューターに実行させる、プログラム。
【0069】
-付記2-
前記複数の作業に含まれる第1作業を促す第1ガイダンスをユーザーに提示する処理、
前記第1作業によって前記射出成形機において第1変化が生じたか否かを1以上のセンサーの出力に基づいて判定する処理、及び
前記第1変化が生じたことを示す判定結果に応じて、前記第1作業の次に行われるべき第2作業をユーザーに促す第2ガイダンスをユーザーに提示する処理をコンピューターに実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0070】
プログラムがCPUにより実行させられ、例えば、タッチパネル130に第1ガイダンスが表示され、続いて、制御部100により判定が行われ、OK判定の時、タッチパネル130に第2ガイダンスが表示される。ガイダンスは、静止画像に限らず、映像又は音声であり得る。成形機の段取段階は、典型的には、成形機に対して金型を取り付ける段階であるが、これに限られない。コンピュータープログラムは、光学ディスク、磁気ディスク、任意の種類のメモリーといった非一時的な情報記録媒体に担持され得る。
【符号の説明】
【0071】
2 押出機
10 スクリュー
11 前端部
20 収容器
30 軸支部材、整流部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15