(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】先端デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2019104656
(22)【出願日】2019-06-04
【審査請求日】2022-04-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸介
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/193997(WO,A1)
【文献】特表2017-510316(JP,A)
【文献】特表2014-519875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/04
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に作用する第1作用部を自身の先端側に備える第1作用部材と、生体組織に作用する第2作用部を自身の先端側に備える第2作用部材と、を有し、前記第1作用部と前記第2作用部とが接近及び離間自在に構成され、前記第1作用部と前記第2作用部との間で生体組織を挟んで把持する把持器具と、
所定方向に沿ってガスを流す流路と前記流路の端部に設けられる放出口とを備えるガス誘導路と、前記ガス誘導路内でプラズマ放電を発生させる放電部と、を有するプラズマ照射装置と、
を具備する先端デバイスであって、
前記プラズマ照射装置は、前記放出口から放出されるガスの方向が前記第1作用部と前記第2作用部とを接触させたときの接触位置又は生体組織を挟まずに最も接近させたときの最接近位置に向いて
おり、
前記プラズマ照射装置は、前記第1作用部材を取付対象として取り付けられ、且つ、複数の前記放出口を有し、
複数の前記放出口は、前記取付対象を挟んだ両側に配置される
先端デバイス。
【請求項2】
生体組織に作用する第1作用部を自身の先端側に備える第1作用部材と、生体組織に作用する第2作用部を自身の先端側に備える第2作用部材と、を有し、前記第1作用部と前記第2作用部とが接近及び離間自在に構成され、前記第1作用部と前記第2作用部との間で生体組織を挟んで把持する把持器具と、
所定方向に沿ってガスを流す流路と前記流路の端部に設けられる放出口とを備えるガス誘導路と、前記ガス誘導路内でプラズマ放電を発生させる放電部と、を有するプラズマ照射装置と、
を具備する先端デバイスであって、
前記プラズマ照射装置は、前記放出口から放出されるガスの方向が前記第1作用部と前記第2作用部とを接触させたときの接触位置又は生体組織を挟まずに最も接近させたときの最接近位置に向いており、
前記プラズマ照射装置は、前記第2作用部材を取付対象として取り付けられ、且つ、複数の前記放出口を有し、
複数の前記放出口は、前記取付対象を挟んだ両側に配置される
先端デバイス。
【請求項3】
前記プラズマ照射装置は、前記第1作用部材を取付対象として取り付けられ、
前記第1作用部と前記第2作用部とが、所定の平面方向に沿って接近及び離間する構成をなし、
前記平面方向と直交する直交方向において、前記取付対象の少なくとも一方側に前記放出口が配置される
請求項1に記載の先端デバイス。
【請求項4】
前記プラズマ照射装置は、前記第2作用部材を取付対象として取り付けられ、
前記第1作用部と前記第2作用部とが、所定の平面方向に沿って接近及び離間する構成をなし、
前記平面方向と直交する直交方向において、前記取付対象の少なくとも一方側に前記放出口が配置される
請求項2に記載の先端デバイス。
【請求項5】
前記プラズマ照射装置は、前記第2作用部材に取り付けられ、
前記放出口は、前記第1作用部と前記第2作用部とが接近及び離間する方向において前記第2作用部材の前記第1作用部材側又は前記第1作用部材とは反対側に配置される
請求項
2に記載の先端デバイス。
【請求項6】
前記第2作用部は、先端側となるにつれて前記第1作用部側に向かうように湾曲する湾曲部を有し、
前記接触位置又は前記最接近位置は、前記湾曲部における前記第1作用部側の一部位置を含み、
前記放出口は、前記第1作用部と前記第2作用部とが接近及び離間する方向において前記第2作用部材の前記第1作用部材側に配置され、
前記プラズマ照射装置は、前記放出口から放出されるガスの方向が前記一部位置に向いている
請求項
5に記載の先端デバイス。
【請求項7】
前記プラズマ照射装置は、前記第1作用部材及び前記第2作用部材のうちのいずれかを取付対象として取り付けられ、
前記第1作用部と前記第2作用部とが、所定の平面方向に沿って接近又は離間する構成をなすと共に、前記平面方向と直交する直交方向に沿って一方側に屈曲する屈曲部を有し、
前記放出口は、前記取付対象の前記一方側に配置される
請求項
1又は請求項2に記載の先端デバイス。
【請求項8】
前記プラズマ照射装置は、放電電極と接地電極と誘電体層とが前記所定方向と直交する積層方向に積層された構成をなし、
前記所定方向及び前記積層方向と直交する横方向における前記放出口の開口幅は、前記積層方向における前記放出口の開口幅よりも大きい
請求項1
から請求項7のいずれか一項に記載の先端デバイス。
【請求項9】
前記プラズマ照射装置は、前記ガス誘導路が前記放出口に向かって縮径すると共に、自身が縮径する縮径部を有する
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の先端デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図10には、先端デバイスにプラズマ照射装置が組み込まれた構成をなす手術用装置が開示されている。この先端デバイスは、生体組織に作用する作用部材に対して超音波振動を与える超音波振動部を備えており、作用部材の振動によって生体組織に対して切開作用、剥離作用または止血作用を生じさせる構成をなす。更に、先端デバイスに組み込まれたプラズマ照射装置が生体組織に向けてプラズマを照射し得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の
図10の装置は、「生体組織が存在する位置に安定的にプラズマを照射するためにガス放出口をどのように配置すべきか」という点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、把持器具が生体組織を把持する際に生体組織が存在する確実性の高い位置に向けて安定的にプラズマを照射することができる技術を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つである先端デバイスは、
生体組織に作用する第1作用部を自身の先端側に備える第1作用部材と、生体組織に作用する第2作用部を自身の先端側に備える第2作用部材と、を有し、前記第1作用部と前記第2作用部とが接近及び離間自在に構成され、前記第1作用部と前記第2作用部との間で生体組織を挟んで把持する把持器具と、
所定方向に沿ってガスを流す流路と前記流路の端部に設けられる放出口とを備えるガス誘導路と、前記ガス誘導路内でプラズマ放電を発生させる放電部と、を有するプラズマ照射装置と、
を具備する先端デバイスであって、
前記プラズマ照射装置は、前記放出口から放出されるガスの方向が前記第1作用部と前記第2作用部とを接触させたときの接触位置又は生体組織を挟まずに最も接近させたときの最接近位置に向いている。
【0007】
上記の先端デバイスは、放出口から放出されるガスの方向が「第1作用部と第2作用部とを接触させたときの接触位置」又は「第1作用部と第2作用部とを生体組織を挟まずに最も接近させたときの最接近位置」に向いている。よって、把持器具が生体組織を把持する際には、生体組織が存在する確実性の高い位置に向けて安定的にプラズマを照射することができる。ゆえに、先端デバイスを使用する使用者が把持器具を用いて生体組織を把持する際には、位置調整に大きな労力を割かずとも、生体組織において第1作用部又は第2作用部が接触する位置又はその近傍に対して容易に且つ正確にプラズマを当てることができる。
【0008】
上記のいずれかの構成の先端デバイスにおいて、プラズマ照射装置は、第1作用部材及び第2作用部材のうちのいずれかを取付対象として取り付けられ、且つ、複数の放出口を有していてもよい。そして、複数の放出口は、取付対象を挟んだ両側に配置されていてもよい。
上記の先端デバイスは、上記の接触位置又は最接近位置に向けて安定的にプラズマを照射するだけでなく、取付対象の両側に向けて広い範囲にプラズマを照射することもできる。
よって、使用者が把持器具を用いて生体組織を把持する際には、「生体組織において第1作用部又は第2作用部が接触する位置又はその近傍」だけでなく、その位置を確実に含んだ広い範囲に亘ってプラズマを容易且つ確実に照射することができる。ゆえに、使用者が先端デバイスを操作する際の操作性が一層向上する。
【0009】
上記のいずれかの構成の先端デバイスにおいて、プラズマ照射装置は、第1作用部材及び第2作用部材のうちのいずれかを取付対象として取り付けられていてもよい。そして、第1作用部と第2作用部とが、所定の平面方向に沿って接近及び離間する構成をなしていてもよい。更に、平面方向と直交する直交方向において、取付対象の少なくとも一方側に放出口が配置されていてもよい。
上記の先端デバイスは、第1作用部材又は第2作用部材における上記直交方向近傍のスペースを有効に利用し、上記の接触位置又は最接近位置により近づけて放出口を設けることができる。しかも、第1作用部材及び第2作用部材の接近動作及び離間動作に干渉しにくい形で放出口を設けることができる。
【0010】
上記のいずれかの構成の先端デバイスにおいて、プラズマ照射装置は、第2作用部材に取り付けられていてもよい。そして、放出口は、第1作用部と第2作用部とが接近及び離間する方向において第2作用部材の第1作用部材側又は第1作用部材とは反対側に配置されていてもよい。
上記の先端デバイスは、第1作用部材又は第2作用部材における上記接近・離間方向(第1作用部と第2作用部とが接近及び離間する方向)近傍のスペースを有効に利用し、上記の接触位置又は最接近位置により近づけて放出口を設けることができる。
【0011】
上記のいずれかの構成の先端デバイスにおいて、第2作用部は、先端側となるにつれて第1作用部側に向かうように湾曲する湾曲部を有していてもよい。そして、接触位置又は最接近位置は、湾曲部における第1作用部側の一部位置を含んでいてもよい。そして、放出口は、第1作用部と第2作用部とが接近及び離間する方向において第2作用部材の第1作用部材側に配置されていてもよい。そして、プラズマ照射装置は、放出口から放出されるガスの方向が上記の一部位置に向いていてもよい。
上記の先端デバイスは、第1作用部材と第2作用部材の間の位置に配置された放出口から上記の接触位置又は最接近位置に向けてプラズマを照射することができる。よって、第1作用部及び第2作用部が生体組織を挟み込んだときに、放出口の先に生体組織が確実に位置する位置関係でプラズマを生体組織に照射することができる。特に、作用部材がプラズマの照射を阻害しにくい位置関係となるため、放出口から放出されるプラズマがより効率的に生体組織に当たりやすくなる。
しかも、第1作用部と第2作用部とが接近及び離間する方向のうち、湾曲部が湾曲する側(第1作用部側)と同じ側に配置された放出口から、湾曲部が湾曲する側(第1作用部側)と同じ側に位置する接触位置又は最接近位置(湾曲部における第1作用部側の一部位置)に向かってプラズマを照射することができる。よって、湾曲部が生体組織を挟み込んでいる際には、生体組織にプラズマを確実に当てることができる。
【0012】
上記のいずれかの構成の先端デバイスにおいて、プラズマ照射装置は、第1作用部材及び第2作用部材のうちのいずれかを取付対象として取り付けられていてもよい。そして、第1作用部と第2作用部とが、所定の平面方向に沿って接近又は離間する構成をなすと共に、平面方向と直交する直交方向に沿って一方側に屈曲する屈曲部を有していてもよい。そして、放出口は、取付対象の上記一方側に配置されていてもよい。
上記の先端デバイスは、屈曲部が屈曲する側と同じ側(上記直交方向における上記一方側)に配置された放出口から屈曲部の内側の側面(屈曲部において凹となる側の側面)に向かってプラズマを照射することができる。よって、屈曲部に挟まれた生体組織にプラズマが確実に当たりやすくなり、特に、両作用部の先端付近までプラズマが届きやすくなる。
【0013】
上記のいずれかの構成の先端デバイスにおいて、プラズマ照射装置は、放電電極と接地電極と誘電体層とが所定方向と直交する積層方向に積層された構成をなしていてもよい。そして、所定方向及び積層方向と直交する横方向における放出口の開口幅は、積層方向における放出口の開口幅よりも大きくてもよい。
上記の先端デバイスは、生体組織に対してより広い範囲にプラズマを照射しやすくなり、特に、横方向(積層方向と直交する方向)において広い範囲に亘ってプラズマを照射しやすくなる。
【0014】
上記のいずれかの構成の先端デバイスにおいて、プラズマ照射装置は、ガス誘導路が放出口に向かって縮径すると共に、自身が縮径する縮径部を有していてもよい。
上記の先端デバイスは、ガス誘導路が放出口に向かって縮径するように縮径部が設けられているため、ガスが縮径部を通過する際にガスの流速を増大させうる。よって、上記の先端デバイスは、ガス誘導路に供給するガスの流量を抑えつつ、放出口から放出するガスの流速を高めるような効率的なガス供給を行い得る。しかも、上記の先端デバイスは、縮径部が縮径する構成であるため縮径部をより細く構成することができ、ガスの方向が上記の接触位置又は最接近位置に向くように制約された形で放出口を配置する上でスペース的なメリットが大きい構成となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、把持器具が生体組織を把持する際に生体組織が存在する確実性の高い位置に向けて安定的にプラズマを照射することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態の先端デバイスを備える手術用装置を概略的に示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の先端デバイスにおける作用部付近の一部を拡大して概念的に示す拡大図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の先端デバイスのプラズマ照射装置を構成する構造体を概念的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3の構造体を第3方向(幅方向)中心位置にて第3方向と直交する方向に切断した切断面の断面構成を概略的に示す断面概略図である。
【
図6】
図6は、
図3の構造体を第1方向中心位置にて第1方向と直交する方向に切断した切断面の断面構成を概略的に示す断面概略図である。
【
図7】
図7は、
図3の構造体を第2方向(厚さ方向)中心位置にて第2方向と直交する方向に切断した切断面の断面構成を概略的に示す断面概略図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の先端デバイスにおける作用部付近の一部を拡大して概念的に示す拡大図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態の先端デバイスにおける作用部付近の一部を拡大して概念的に示す斜視図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態の先端デバイスにおける作用部付近の一部を拡大して概念的に示す斜視図である。
【
図11】
図11は、第5実施形態の先端デバイスにおける作用部付近の一部を拡大して概念的に示す斜視図である。
【
図12】
図12は、第6実施形態の先端デバイスにおける作用部付近の一部を拡大して概念的に示す斜視図である。
【
図13】
図13は、第7実施形態の先端デバイスにおける作用部付近の一部を拡大して概念的に示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第7実施形態の先端デバイスにおける第2作用部付近を第1作用部側から見た構成を概念的に示す拡大図である。
【
図15】
図15は、第8実施形態の先端デバイスにおける作用部付近の一部を拡大して概念的に示す斜視図である。
【
図16】
図16は、第8実施形態の先端デバイスのプラズマ照射装置を構成する構造体を概念的に示す斜視図である。
【
図17】
図17は、
図16の構造体を第2方向(厚さ方向)中心位置にて第2方向と直交する方向に切断した切断面の断面構成を概略的に示す断面概略図である。
【
図18】
図18は、他の実施形態の例1に係る先端デバイスにおける作用部付近の一部を拡大して概念的に示す斜視図である。
【
図19】
図19は、他の実施形態の例2に係る先端デバイスにおける構造体を第2方向(厚さ方向)中心位置にて第2方向と直交する方向に切断した切断面の断面構成を概略的に示す断面概略図である。
【
図20】
図20は、他の実施形態の例3に係る先端デバイスにおける構造体及び第2作用部付近を概念的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
1.手術用装置の全体構成
図1で示される手術用装置1は、施術対象の生体組織に対して切開、剥離又は止血を行い得る処置装置として構成されている。手術用装置1は、先端デバイス3と、超音波振動部12(駆動部)を制御する装置である制御装置5と、先端デバイス3内のガス誘導路30(
図6等参照)に対してガスを供給するガス供給装置7と、プラズマ照射装置20に対して電圧を印加し得る電源装置9とを備える。
【0018】
制御装置5は、超音波振動部12に対して超音波振動を発生させるための電気信号を与える装置である。制御装置5は、先端デバイス3と制御装置5との間に介在する図示しない可撓性の信号ケーブルを介して超音波振動部12に電気信号を与え得る構成となっている。
【0019】
ガス供給装置7は、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの不活性ガス(以下、単にガスともいう)を供給する装置である。ガス供給装置7は、例えば、先端デバイス3とガス供給装置7との間に介在する可撓性の管路(
図1では図示を省略)を介して後述するガス誘導路30に不活性ガスを供給する。ガス供給装置7は、例えばボンベ等から供給される高圧ガスを減圧するレギュレータと、流量制御を行う制御部とを含む。
【0020】
電源装置9は、後述するプラズマ照射装置20の放電電極42と接地電極44との間に所望の電圧を印加するための装置であり、接地電極44をグラウンド電位に保ちながら、放電電極42と接地電極44との間に所定周波数の交流電圧を印加する。電源装置9は、高周波数(例えば、20kHz~300kHz程度)の高電圧(例えば、振幅が0.5kV~10kVの高電圧)を生成し得る回路であれば、公知の様々な回路を採用し得る。なお、電源装置9が発生させる高電圧の周波数は、一定値に固定された周波数であってもよく、変動してもよい。また、電源装置9が接地電極44と放電電極42との間に印加する電圧は、周期的に変化する電圧であればよく、正弦波の交流電圧であってもよく、非正弦波(例えば、矩形波、三角波など)の交流電圧であってもよい。
【0021】
図1の例では、交流電圧を生成する電源装置9が先端デバイス3の外部に設けられた手術用装置が例示されているが、交流回路を生成する電源回路が先端デバイス3の内部(例えば、後述するケース体14の内部やプラズマ照射装置20の内部)に設けられていてもよい。
【0022】
先端デバイス3は、手術を行う術者によって把持されて使用される装置であり、主に、ケース体14、把持器具15、プラズマ照射装置20、超音波振動部12、などを備える。ケース体14、把持器具15、プラズマ照射装置20、及び超音波振動部12は、使用者に把持される把持ユニットとして一体的に構成されており、可撓性を有する部材を介して不活性ガスや電力が供給されるようになっている。
【0023】
ケース体14は、円筒状に構成され所定方向に延びており、主として、基部14Bと、基部14Bと一体的に構成されるとともに所定方向に延びる円筒状の延出部14Aとを備える。基部14Bの内部には、超音波振動部12などが収容され、延出部14Aにはプラズマ照射装置20が固定又は一体化されている。
【0024】
超音波振動部12は、公知の超音波振動子として構成され、上述した制御装置5によって所定の電気信号が与えられたときに駆動して超音波振動を発生させ、後述する第1作用部材16に対して超音波振動を伝達するように動作する。超音波振動部12は、駆動部の一例に相当し、第1作用部16A付近において生体組織を切開、剥離又は熱凝固止血する作用が生じるように第1作用部材16を駆動する。
【0025】
把持部60は、先端デバイス3を使用する使用者によって把持される部分であり、公知の可動機構を採用した可動部材変位機構として構成されている。把持部60は、ケース体14の基部14Bに固定されてケース体14と一体化された固定把持部62と、固定把持部62に対して相対移動可能に取り付けられる軸状の第2作用部材64とによって構成されている。
【0026】
把持器具15は、生体組織を挟んで把持するように使用し得る器具であり、第1作用部材16と第2作用部材64とを有する。
【0027】
第1作用部材16は、軸状の部材であり、生体組織に作用する第1作用部16Aを自身の先端側に備える部材である。第1作用部16Aは、第1作用部材16の先端部付近において固定刃として機能する部位である。第1作用部材16は、第1作用部16Aと、超音波振動部12から与えられた振動を第1作用部16Aに伝達する軸部16Bとを有し、超音波振動部12で発生した振動が軸部16Bを介して第1作用部16Aに伝達されることにより第1作用部16Aが振動する。第1作用部材16は、第1作用部16Aが生体組織に接近又は接触している状態で第1作用部16Aが振動することにより生体組織に対して切開作用、剥離作用又は止血作用を生じさせるように動作する。
【0028】
第2作用部材64は、可動部材として機能する軸状の部材であり、生体組織に作用する第2作用部64Aを自身の先端側(一端側)に備える部材である。第2作用部64Aは、可動刃として機能する部位である。第2作用部材64は、自身の後端側(他端側)の端部付近に可動把持部64Cを備えている。把持器具15では、軸状の第2作用部材64が延出部14Aの先端部付近の回動軸Zを中心として回動可能とされ、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接近及び離間自在に構成されている。把持器具15は、可動把持部64Cを固定把持部62側に近づけようとする操作がなされることに応じて第2作用部64A(可動刃)が第1作用部16A(固定刃)に近づくように第2作用部材64が回動する。逆に、可動把持部64Cを固定把持部62から離間させようとする操作がなされることに応じて第2作用部64Aが第1作用部16Aから離れるように第2作用部材64が回動する。
【0029】
このように構成された先端デバイス3は、超音波振動を用いた生体組織の切開処置、剥離処置、止血処置を行いうる。例えば、第1作用部16A(固定刃)と第2作用部64Aとによって生体組織が挟み込まれたときに第1作用部16Aに超音波振動が伝達されることにより生体組織を切除することができる。また、超音波振動が伝達される第1作用部16Aを生体組織に接触させて摩擦熱を生じさせ、止血を行うこともできる。第1作用部材16に対して超音波振動を与えながら、又は与えずに、第1作用部16Aと第2作用部64Aとによって生体組織を挟持し、剥離処置を行うこともできる。このように、先端デバイス3では、超音波振動による切開、剥離又は熱凝固止血が可能となっており、更に、後述するプラズマ照射装置20からの低温プラズマの照射によって低侵襲な止血を併用することもできる。
【0030】
2.プラズマ照射装置の構成
図1に示されるように、プラズマ照射装置20は先端デバイス3の一部として組み込まれ、先端デバイス3の内部で誘電体バリア放電を生じさせる装置として構成されている。なお、
図1の例では、プラズマ照射装置20は、保持部18によって保持された構成でケース体14に固定されている。
図2に示されるように、プラズマ照射装置20の内部で発生した低温プラズマPは、第1作用部材16の先端部に設けられた第1作用部16A付近に照射される。
【0031】
図3で示されるように、プラズマ照射装置20は、所定の立体形状(例えば、板状且つ直方体状)として構成された構造体20Aを有し、構造体20Aの長手方向の端部に形成された放出口34から低温プラズマPを照射するように構成されている。
【0032】
図4にて概念的に示されるように、構造体20Aは、厚さ方向中央部に第3誘電体層53が設けられ、第3誘電体層53よりも厚さ方向一方側に第4誘電体層54が設けられている。更に、構造体20Aは、第3誘電体層53よりも厚さ方向他方側に第1誘電体層51及び第2誘電体層52が設けられている。第1誘電体層51及び第2誘電体層52によって構成された誘電体領域の内部には、放電電極42及び接地電極44が埋め込まれている。
図4では、構造体20Aが3分割された構成が分解斜視図として概念的に示されているが、実際の構成は、第1誘電体層51、第2誘電体層52、第3誘電体層53、及び第4誘電体層54の各々が、一体的な誘電体部50(
図5)の一部として構成されている。
【0033】
図5に示されるように、プラズマ照射装置20は、主に、ガス誘導路30と、沿面放電部40とを備える。
【0034】
ガス誘導路30は、ガスを導入する導入口32と、ガスを放出する放出口34と、導入口32と放出口34との間に設けられる流路36と、を有する。ガス誘導路30は、先端デバイス3の外部に設けられたガス供給装置7から供給される不活性ガスを導入口32から導入し、導入口32側から導入されたガスを流路36内の空間を通して放出口34に誘導する誘導路となっている。なお、
図5では、ガス供給装置7から供給される不活性ガスを導入口32に導くための管路7Aが二点鎖線によって概念的に示されている。
図2で示されるように、ガス誘導路30は、放出口34が第1作用部16Aに近接した位置で第1作用部16A側に向いており、流路36の空間の延長上に第1作用部16Aが位置する関係となっている。ガス誘導路30は、放出口34から第1作用部16A側にガスを放出する流路構成となっており、ガスと共に低温プラズマPを放出口34から第1作用部16A側に放出するように機能する。
【0035】
図5で示されるように、本明細書では、プラズマ照射装置20においてガス誘導路30が延びる方向が第1方向であり、第1方向と直交する方向のうち誘電体部50の厚さ方向が第2方向であり、第1方向及び第2方向と直交する方向が第3方向である。
図5の構成では、誘電体部50と放電電極42と接地電極44とが一体的に設けられた構造体20Aの長手方向が第1方向である。そして、構造体20Aを第1方向と直交する平面方向に切断した切断面での構造体20Aの短手方向が第2方向であり、この切断面の長手方向が第3方向である。第2方向は構造体20Aの幅方向であり、第3方向は構造体20Aの高さ方向又は厚さ方向である。なお、以下の説明では、第1方向において放出口34側が構造体20Aの先端側とされ、第1方向において導入口32側が構造体20Aの後端側とされる。
【0036】
図5で示されるように、構造体20Aは、所定方向(第1方向)に沿ってガスを流すようにガス誘導路30が構成され、この所定方向(第1方向)と直交する第2方向を積層方向とする構成で放電電極42と接地電極44と誘電体部50とが積層された構成をなす。そして所定方向(第1方向)及び積層方向(第2方向)と直交する横方向(第3方向)における放出口34の開口幅W3(
図3)は、積層方向(第2方向)における放出口の開口幅W2(
図3)よりも大きくなっている。
【0037】
沿面放電部40は、放電部の一例に相当し、第1誘電体層51と、第1誘電体層51を介在させて互いに対向して配置される放電電極42及び接地電極44と、を有する。沿面放電部40は、放電電極42と接地電極44との電位差に基づく電界をガス誘導路30内で発生させて沿面放電による低温プラズマ放電を発生させるように機能する。
【0038】
沿面放電部40は、放電電極42又は接地電極44の一方が直接又は他部材を介して流路36に面しつつ、周期的に変化する電圧が放電電極42に印加されることに応じて流路36内で沿面放電を発生させるものである。なお、「放電電極42又は接地電極44の一方が直接流路36に面する構成」とは、放電電極42又は接地電極44の一方が流路36内の空間に露出し当該一方が流路の内壁の一部をなすような構成が該当する。また、「放電電極42又は接地電極44の一方が他部材を介して流路36に面する構成」とは、放電電極42又は接地電極44のうちの一方が流路36に近い位置に配置されるとともに当該一方の一部又は全部が他部材によって覆われる構成が該当する。このように他部材を介する構成では、当該他部材が流路の内壁の一部をなし、上記の「一方」の主面が流路36に向いて配置される。なお、
図5、
図6で示される構成は、放電電極42が上記の「一方」に該当し、「放電電極42が他部材を介して流路36に面する構成」であるが、
図5では、他部材の一例に相当する第2誘電体層52が省略された形で示されている。
【0039】
図6で示されるように、沿面放電部40は、放電電極42が誘電体部50の一部(第2誘電体層52)を介して流路36に面している。接地電極44は、放電電極42に対して流路36とは反対側に設けられ、放電電極42よりも流路36から離れている。沿面放電部40は、接地電極44の電位を一定の基準電位(例えば、0Vのグラウンド電位)に保ちつつ、周期的に変化する電圧が放電電極42に印加されることに応じて流路36内で沿面放電を発生させ、低温プラズマを生じさせる。
【0040】
図6で示されるように、誘電体部50は、第1誘電体層51、第2誘電体層52、第3誘電体層53、第4誘電体層54を備え、全体として中空状に構成されている。第1誘電体層51は、流路36の空間よりも第2方向(厚さ方向)一方側に配置されるとともに接地電極44が埋め込まれるように構成される。つまり、第1誘電体層51を介して放電電極42及び接地電極44が対向している。第2誘電体層52は、セラミック材料によって放電電極42を覆うように構成されたセラミック保護層であり、第1誘電体層51よりも流路空間側において放電電極42を覆うように配置される。第1誘電体層51及び第2誘電体層52は、流路36における第2方向一方側の内壁部を構成する。第4誘電体層54は、流路36の空間よりも第2方向(厚さ方向)他方側に配置され、流路36における第2方向他方側の内壁部を構成する。第3誘電体層53は、第2方向において第1誘電体層51と第4誘電体層54との間に配置され、流路36における第3方向一方側の側壁部及び第3方向他方側の側壁部を構成する。つまり、流路36は、第1誘電体層51、第2誘電体層52、第3誘電体層53、及び第4誘電体層54により画成されている。第1誘電体層51、第2誘電体層52、第3誘電体層53、及び第4誘電体層54の材料は、例えばアルミナなどのセラミック、ガラス材料や樹脂材料を好適に用いることができる。なお、機械的強度が高いアルミナを誘電体として用いることで、沿面放電部40の小型化を図りやすくなる。
【0041】
図7で示されるように、流路36は、第2方向両側及び第3方向両側が囲まれた空間が第1方向に続くように構成され、第1方向に沿って延びる第1流路36Aと、第1流路36Aの下流側に設けられる第2流路36Bとを備える。第1流路36Aは、構造体20Aにおいて第1方向の第1領域AR1に設けられている。第2流路36Bは、構造体20Aにおける第1方向の第2領域AR2に設けられている。
図7では、第1方向において第1流路36Aが設けられる範囲が第1領域AR1として表され、第1方向において第2流路36Bが設けられる範囲が第2領域AR2として表されている。
【0042】
第1流路36Aは、第1方向と直交する方向に切断した切断面での内壁部の形状が長方形状に構成された流路である(
図6参照)。
図7で示されるように、第1流路36Aは、第1方向の第1領域AR1にわたって内壁面の幅が一定の幅となっており且つ第1方向の第1領域AR1にわたって内壁面の高さが一定の高さとなっている。
【0043】
図7で示されるように、第2流路36Bは,第1方向において第1流路36Aよりも放出口34側(下流側)に配置され、第1流路36Aよりも狭い幅で構成されている。第2流路36Bは、縮幅流路36Cと一定流路36Dとを備える。縮幅流路36Cは、第1方向において第2領域AR2の一部領域AR21にわたって設けられ、放出口34側に近づくにつれて内壁面の幅が次第に狭くなっている。縮幅流路36Cの高さは、領域AR21の全範囲にわたって一定である。一定流路36Dは、第1方向において第2領域AR2の一部領域AR22にわたって設けられ、領域AR22の全範囲にわたって内壁面の幅及び高さが一定となっている。
【0044】
図7で示されるように、構造体20Aは、第1方向の所定範囲にわたって第1方向と直交する切断面の外形形状が一定形状となる第1定形部22及び第2定形部26を有する。更に、構造体20Aは、第1方向と直交する切断面の外形形状が先端側となるにつれて小さくなるように自身が縮径する縮径部24を有する(
図3も参照)。第1定形部22の先端側に縮径部24が続き、縮径部24の先端側に第2定形部26が続く構成で設けられている。第1定形部22の先端位置は縮径部24の後端位置であり、縮径部24の先端位置は第2定形部26の後端位置である。第1定形部22は、第1領域AR1に設けられ、外壁面の幅(第3方向の長さ)及び外壁面の高さ(第1方向の長さ)が一定となっている。縮径部24は、第2領域AR2の一部領域AR21に設けられ、外壁面の高さ(第2方向の長さ)が一定であり、外壁面の幅(第3方向の長さ)が先端側となるにつれて小さくなるように縮径する形状をなす。第2定形部26は、第2領域AR2の一部領域AR22に設けられ、外壁面の幅(第3方向の長さ)及び外壁面の高さ(第2方向の長さ)が一定となっている。第1定形部22、縮径部24、第2定形部26はいずれも外壁面の高さが同一の所定高さとなっている。一方、第1定形部22の外壁面の幅は、第2定形部26の外壁面の幅よりも大きく、縮径部24の外壁面の最大幅(後端の幅)と同一となっている。第2定形部26の外壁面の幅は、縮径部24の外壁面の最小幅(先端の幅)と同一となっている。
【0045】
ガス誘導路30は、第1定形部22に第1流路36Aが設けられ、縮径部24に縮幅流路36Cが設けられ、第2定形部26に一定流路36Dが設けられている。つまり、縮径部24においてガス誘導路30が放出口34に向かって縮径している。縮径部24の流路(縮幅流路36C)は後端において最大幅となっており、この最大幅は第1流路36Aの幅と一致している。縮径部24の流路(縮幅流路36C)は先端において最小幅となっており、この最小幅は一定流路36Dの幅と一致している。
【0046】
図7で示されるように、接地電極44は、流路36に沿うように第1方向に直線状に延びており、例えば、一定の幅且つ一定の厚さで第1方向の所定領域に配置されている。接地電極44は、自身の先端側の一部が放電電極42よりも放出口34側に配置されている。接地電極44の一部は、第1方向において第2流路36Bの配置領域AR2に位置しており、
図7の例では、接地電極44の先端が縮幅流路36Cの先端(一定流路36Dの後端)よりも先端側に位置している。つまり、接地電極44の一部は、第1方向において一定流路36Dの配置領域AR22に位置している。接地電極44の後端は、第1流路36Aの先端よりも後端側に位置し、放電電極42の先端よりも後端側且つ放電電極42の後端よりも先端側に位置している。接地電極44は、第3方向において第1流路36Aの配置領域AR3内に自身の少なくとも一部(
図7では自身の全部)が位置する。具体的には、接地電極44は、第3方向において一定流路36Dの配置領域AR4内に自身の少なくとも一部(
図7では自身の一部)が位置し、第3方向において放出口34の形成領域内に自身の少なくとも一部(
図7では自身の一部)が位置する。
【0047】
放電電極42は、流路36に沿うように第1方向に直線状に延びており、例えば、一定の幅且つ一定の厚さで第1方向の所定領域に配置されている。具体的には、放電電極42は、第1方向において第1流路36Aの配置領域にのみ位置する。つまり、放電電極42は、第1領域AR1及び第2領域AR2のうちの第1領域AR1にのみ位置する。放電電極42の先端は、第1流路36Aの先端よりも後端側に位置し、放電電極42の後端は第1流路36Aの後端よりも先端側に位置する。更に、放電電極42の幅(第3方向の長さ)は、接地電極44の幅(第3方向の長さ)よりも小さくなっている。
図7の例では、放電電極42は、第3方向において第1流路36Aの配置領域AR3内に収まっている。具体的には、放電電極42は、第3方向において一定流路36Dの配置領域AR4内に収まっており、第3方向において放出口34の形成領域内に収まっている。より具体的には、放電電極42は、第3方向において接地電極44の配置領域AR5内に収まっている。放電電極42の第3方向一方側の端は、接地電極44の第3方向一方側の端よりも第3方向他方側に位置し、放電電極42の第3方向他方側の端は、接地電極44の第3方向他方側の端よりも第3方向一方側に位置する。
【0048】
3.ガスの方向と把持器具15との関係
図2では、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するときの第2作用部材64の位置が二点鎖線によって概念的に示されている。
図2で示されるように、プラズマ照射装置20は、放出口34から放出されるガスの方向が第1作用部16Aと第2作用部64Aとを接触させたときの接触位置に向いている。このように構成されるため、
図2のように第1作用部16Aと第2作用部64Aとが生体組織を挟まずに接触しているときには、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触する接触位置及び接触位置の境界に放出口34から放出されるガスが届く。
【0049】
なお、第1作用部16Aと第2作用部64Aとの「接触位置」とは、第1作用部16Aの表面のうちの第2作用部64Aに接触する領域(第1接触領域)及び第2作用部64Aの表面のうちの第1作用部16Aに接触する領域(第2接触領域)を意味する。つまり、
図2の構成では、放出口34から放出されるガスが、上記第1接触領域及び上記第2接触領域のうちの少なくともいずれかの領域に当たるようになっている。また、第1作用部16Aと第2作用部64Aとの接触位置の境界とは、上記第1接触領域及び上記第2接触領域の外縁を意味する。つまり、
図2の構成では、放出口34から放出されるガスがこの外縁にも当たるようになっている。なお、
図2では、上記「接触位置」の範囲が符号ARによって概念的に示されている。
【0050】
具体的には、放出口34の開口領域(放出口34の内側の空間をなす領域)を第1方向に平行移動したときの移動軌跡上に上記「接触位置」が位置している。なお、
図2、
図3では、放出口34の開口領域を第1方向に平行移動したときの移動軌跡(開口領域が移動する領域)が二点鎖線Vtによって概念的に示されている。
【0051】
このように構成されたプラズマ照射装置20を動作させる場合、流路36内の空間を不活性ガスが流れるように不活性ガスが供給される。そして、放電電極42と接地電極44との間には、電源装置9によって所定周波数の交流電圧が印加される。電源装置9は、例えば接地電極44をグラウンド電位に保ち、放電電極42の電位を、接地電極44の電位を中心として、この電位よりも一定程度高い電位である+A(V)から一定程度低い電位である-A(V)までの範囲で振動させるように交流電圧を加える。なお、「A」は、正の値である。このように交流電圧が印加されると、誘電体部50によるバリアが構成された形で、電極間で電界の変化が生じ、ガス誘導路30内の空間で誘電体バリア放電(具体的には沿面放電)が生じる。ガス誘導路30では、放出口34に向けて不活性ガスが流れるようになっており、放出口34から排出される不活性ガスは上記接触位置又は作用部間に挟まれる物体に向かうようになっている。つまり、沿面放電によって生じた低温プラズマは、第1作用部16Aと第2作用部64Aが互いに接触した状態ではこれらの接触位置に向かって放出され、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが生体組織を挟んでいるときにはこの生体組織に向って放出される。
【0052】
4.本構成の効果の例示
上記の先端デバイス3は、放出口34から放出されるガスの方向が「第1作用部16Aと第2作用部64Aとを接触させたときの接触位置」に向いている。よって、把持器具15が生体組織を把持するとき、即ち、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが生体組織を挟んでいるときには、生体組織が存在する確実性の高い位置に向けて安定的にプラズマを照射することができる。ゆえに、使用者が把持器具15を用いて生体組織を把持する際には、位置調整に大きな労力を割かずとも、生体組織において第1作用部16A又は第2作用部64Aが接触する位置又はその近傍に対して容易に且つ正確にプラズマを当てることができる。
【0053】
また、先端デバイス3において、プラズマ照射装置20は、放電電極42と接地電極44と誘電体部50とが所定方向(第1方向)と直交する積層方向(第2方向)に積層された構成をなす。そして、所定方向(第1方向)及び積層方向(第2方向)と直交する横方向(第3方向)における放出口34の開口幅W3は、積層方向(第2方向)における放出口34の開口幅W2よりも大きい。よって、先端デバイス3は、生体組織に対してより広い範囲にプラズマを照射しやすくなり、特に、横方向(積層方向と直交する方向)において広い範囲に亘ってプラズマを照射しやすくなる。
【0054】
また、プラズマ照射装置20は、ガス誘導路30が放出口34に向かって縮径すると共に、自身が縮径する縮径部24を有する。このように、先端デバイス3は、ガス誘導路30が放出口34に向かって縮径するように縮径部24が設けられているため、ガスが縮径部24を通過する際にガスの流速を増大させうる。よって、先端デバイス3は、ガス誘導路30に供給するガスの流量を抑えつつ、放出口34から放出するガスの流速を高めるような効率的なガス供給を行い得る。しかも、先端デバイス3は、縮径部24が縮径する構成であるため縮径部24をより細く構成することができ、ガスの方向が上記の接触位置に向くように制約された形で放出口34を配置する上でスペース的なメリットが大きい構成となる。
【0055】
<第2実施形態>
次に、
図8等を参照し第2実施形態の先端デバイス203について説明する。
なお、以下の説明では、第2実施形態の先端デバイス203において第1実施形態の先端デバイス3(
図1等)と同様の構成をなす部分については、先端デバイス3の該当部分と同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。例えば、先端デバイス203においてプラズマ照射装置20は、第1実施形態の先端デバイス3に設けられたプラズマ照射装置20と同一の構成をなし、同一の機能を有する。また、先端デバイス203は、
図1で示す先端デバイス3と同様に手術用装置1に用いることができる。つまり、
図1の手術用装置1において先端デバイス3に代えて先端デバイス203を設けることができる。
【0056】
先端デバイス203は、把持器具15のみが先端デバイス3と異なり、その他の構成及び機能は先端デバイス3と同一である。具体的には、先端デバイス203は、第1作用部16Aと第2作用部64Aとを生体組織を挟まずに最も接近させたときに第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しない点のみが第1実施形態と異なり、その他の構成及び機能は先端デバイス3と同一である。先端デバイス203を備えた手術用装置も、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しない点のみが
図1の手術用装置1と異なりその他の点は
図1の手術用装置1と同一である。
【0057】
図8では、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが間に物体を介在させずに最も接近したときの第2作用部材64の位置が二点鎖線によって概念的に示されている。
図8で示されるように、プラズマ照射装置20は、放出口34から放出されるガスの方向が「第1作用部と第2作用部とを物体(具体的には生体組織)を挟まずに最も接近させたときの最接近位置」に向いている。このように構成されるため、
図8のように第1作用部16Aと第2作用部64Aとが物体を挟まずに最も接近しているときには、「第1作用部16Aの表面において第2作用部64Aに最も近い領域である第1最接近領域」に放出口34から放出されるガスが届く。更に、「第2作用部64Aの表面において第1作用部16Aに最も近い領域である第2最接近領域」にも放出口34から放出されるガスが届く。そして、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが物体を挟まずに最も接近しているときには、第1最接近領域と第2最接近領域との間に放出口34から放出されるガスが入り込むようになっている。
【0058】
具体的には、
図8のように、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが物体を挟まずに最も接近している状態において、放出口34の開口領域(放出口34の内側の空間をなす領域)を第1方向に平行移動したときの移動軌跡上に上記「最接近位置」が位置している。具体的には、
図8のような状態において、上記の移動軌跡上に上記第1最接近領域及び上記第2最接近領域がいずれも位置しており、第1最接近領域と第2最接近領域の間の空間も上記移動軌跡上に位置している。なお、
図8では、放出口34の開口領域を第1方向に平行移動したときの移動軌跡(開口領域が移動する領域)が二点鎖線Vtによって概念的に示されている。また、
図8では、第1最接近領域と第2最接近領域とが対向する範囲が符号ARによって概念的に示されている。
【0059】
以上のような第2実施形態の構成でも、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0060】
<第3実施形態>
次に、
図9等を参照し第3実施形態の先端デバイス303について説明する。
先端デバイス303は、プラズマ照射装置20の構成及び配置及び第1作用部材16及び第2作用部材64の具体的形状のみが第1実施形態の先端デバイス3(
図1等)と異なり、その他の構成及び機能は先端デバイス3と同一である。よって、第1実施形態と同一の点については、詳細な説明は省略する。例えば、先端デバイス303において、各々の構造体20Aは、第1実施形態の先端デバイス3に設けられた構造体20Aと同一の構成をなし、同一の機能を有する。また、先端デバイス303は、
図1で示す先端デバイス3と同様に手術用装置1に用いることができる。つまり、
図1の手術用装置1において先端デバイス3に代えて先端デバイス303を設けることができる。
【0061】
なお、先端デバイス303では、第1実施形態と同様に第1作用部材16に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよく、第2作用部材64に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよい。また、
図9の例では第1作用部材16及び第2作用部材64の具体的形状を第1実施形態と異ならせているが、第1実施形態と同様であってもよい。
【0062】
図9に示されるように、先端デバイス303は、複数(具体的には2つ)の構造体20Aによってプラズマ照射装置320が構成されている。そして、第2作用部材64を取付対象として複数の構造体20Aが取り付けられ、複数(具体的には2つ)の放出口34を有する。そして、複数の放出口34は、取付対象となる第2作用部材64を挟んだ両側に配置されている。
図9の構成では、第2作用部材64において第2作用部64Aよりも基端側(後端側)に軸部64Bが設けられており、この軸部64Bに2つの構造体20Aが取り付けられている。
【0063】
先端デバイス303では、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが、所定の平面方向に沿って接近及び離間する構成をなしている。具体的には、第1作用部材16に対して第2作用部材64が回動するときの回動軸と直交する方向が上記平面方向となっており、第1作用部材16及び第2作用部材64が上記平面方向に沿って延びている。そして、第1作用部16Aの先端と第2作用部64Aの先端とが、上記平面方向のうちの1つの方向(接近・離間方向)に沿って接近及び離間する構成をなしている。
図9のプラズマ照射装置320は、上記平面方向と直交する方向(以下、直交方向ともいう)において、取付対象となる第2作用部材64の少なくとも一方側(具体的には両側)に放出口34が配置されている。具体的には、上記直交方向における第2作用部材64の両側において、第2作用部材64を挟む形で2つの構造体20Aがそれぞれ設けられ、2つの構造体20Aに設けられた2つの放出口34は、上記の「直交方向」に沿って並んでいる。
【0064】
先端デバイス303でも、第1実施形態と同様に第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されていてもよい。或いは、第2実施形態と同様に、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されていてもよい。第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されている場合、プラズマ照射装置320は、放出口34から放出されるガスの方向が第1作用部16Aと第2作用部64Aとを接触させたときの接触位置に向いていることが望ましい。また、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されている場合、プラズマ照射装置320は、放出口34から放出されるガスの方向が「最接近位置」に向いていることが望ましい。この場合、「最接近位置」は、第1作用部16Aと第2作用部64Aとを物体(具体的には生体組織)を挟まずに最も接近させたときの位置であり、この「最接近位置」の概念及び「最接近位置にガスを当てる概念」は第2実施形態と同様である。なお、
図9では、第1作用部16Aと第2作用部64Aとの距離が最も小さくなったときの第2作用部64Aに対する第1作用部16Aの相対位置を二点鎖線16Zによって概念的に示している。
【0065】
このように構成された先端デバイス303は、上記の接触位置又は上記の最接近位置に向けて安定的にプラズマを照射するだけでなく、取付対象の両側に向けて広い範囲にプラズマを照射することもできる。よって、使用者が把持器具15を用いて生体組織を把持する際には、「生体組織において第1作用部16A又は第2作用部64Aが接触する位置又はその近傍」だけでなく、その位置を確実に含んだ広い範囲に亘ってプラズマを容易且つ確実に照射することができる。ゆえに、使用者が先端デバイス303を操作する際の操作性が一層向上する。
【0066】
また、先端デバイス303は、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが、所定の平面方向に沿って接近及び離間する構成をなし、平面方向と直交する直交方向において、取付対象の両側に放出口34が配置されている。この先端デバイス303は、第2作用部材64における上記直交方向近傍のスペースを有効に利用し、上記の接触位置又は上記の最接近位置により近づけて放出口34を設けることができる。しかも、第1作用部材16及び第2作用部材64の接近動作及び離間動作に干渉しにくい形で放出口34を設けることができる。
【0067】
<第4実施形態>
次に、
図10等を参照し第4実施形態の先端デバイス403について説明する。
先端デバイス403は、プラズマ照射装置20の配置及び第1作用部材16及び第2作用部材64の具体的形状のみが第1実施形態の先端デバイス3(
図1等)と異なり、その他の構成及び機能は先端デバイス3と同一である。よって、第1実施形態と同一の点については、詳細な説明は省略する。例えば、先端デバイス403において、プラズマ照射装置20は、第1実施形態の先端デバイス3に設けられたプラズマ照射装置20と同一の構成をなし、同一の機能を有する。また、先端デバイス403は、
図1で示す先端デバイス3と同様に手術用装置1に用いることができる。つまり、
図1の手術用装置1において先端デバイス3に代えて先端デバイス403を設けることができる。
【0068】
なお、先端デバイス403では、第1実施形態と同様に第1作用部材16に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよく、第2作用部材64に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよい。また、
図10の例では第1作用部材16及び第2作用部材64の具体的形状を第1実施形態と異ならせているが、第1実施形態と同様であってもよい。
【0069】
先端デバイス403では、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが、所定の平面方向に沿って接近及び離間する構成をなしている。具体的には、第1作用部材16に対して第2作用部材64が回動するときの回動軸と直交する方向が上記平面方向となっており、第1作用部材16及び第2作用部材64が上記平面方向に沿って延びている。そして、第1作用部16Aの先端と第2作用部64Aの先端とが、上記平面方向のうちの1つの方向(接近・離間方向)に沿って接近及び離間する構成をなしている。
【0070】
先端デバイス403では、第1実施形態と同様のプラズマ照射装置20が第2作用部材64に取り付けられている。具体的には、上述の接近・離間方向(第1作用部16Aの先端と第2作用部64Aの先端とが接近及び離間する方向)において、第2作用部材64の第1作用部材16側にプラズマ照射装置20が設けられている。つまり、上述の接近・離間方向において第1作用部材16と第2作用部材64との間にプラズマ照射装置20を配置した構成となっている。従って、放出口34も、上述の接近・離間方向において第2作用部材64の第1作用部材16側に配置されている。
【0071】
先端デバイス403でも、第1実施形態と同様に第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されていてもよい。或いは、第2実施形態と同様に、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されていてもよい。第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されている場合、プラズマ照射装置20は、放出口34から放出されるガスの方向が第1作用部16Aと第2作用部64Aとを接触させたときの接触位置に向いていることが望ましい。第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されている場合、プラズマ照射装置20は、放出口34から放出されるガスの方向が「最接近位置」に向いていることが望ましい。この場合、「最接近位置」は、第1作用部16Aと第2作用部64Aとを物体(具体的には生体組織)を挟まずに最も接近させたときの位置であり、この「最接近位置」の概念及び「最接近位置にガスを当てる概念」は第2実施形態と同様である。
【0072】
このように構成された先端デバイス403は、第2作用部材64における上記接近・離間方向(第1作用部16Aの先端と第2作用部64Aの先端とが接近及び離間する方向)近傍のスペースを有効に利用することができる。そして、先端デバイス403では、上記の接触位置又は上記の最接近位置により近づけて放出口34を設けることができる。
【0073】
<第5実施形態>
次に、
図11等を参照し第5実施形態の先端デバイス503について説明する。
先端デバイス503は、プラズマ照射装置20の配置及び第1作用部材16及び第2作用部材64の具体的形状のみが第1実施形態の先端デバイス3(
図1等)と異なり、その他の構成及び機能は先端デバイス3と同一である。よって、第1実施形態と同一の点については、詳細な説明は省略する。例えば、先端デバイス503において、プラズマ照射装置20は、第1実施形態の先端デバイス3に設けられたプラズマ照射装置20と同一の構成をなし、同一の機能を有する。また、先端デバイス503は、
図1で示す先端デバイス3と同様に手術用装置1に用いることができる。つまり、
図1の手術用装置1において先端デバイス3に代えて先端デバイス503を設けることができる。
【0074】
なお、先端デバイス503では、第1実施形態と同様に第1作用部材16に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよく、第2作用部材64に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよい。
【0075】
先端デバイス503は、第1作用部16A及び第2作用部64Aの形状以外は第4実施形態の先端デバイス403と同一の構成及び機能を有する。先端デバイス503では、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが、所定の平面方向に沿って接近及び離間する構成をなしている。具体的には、第1作用部材16に対して第2作用部材64が回動するときの回動軸と直交する方向が上記平面方向となっており、第1作用部材16及び第2作用部材64が上記平面方向に沿って延びている。そして第1作用部16Aの先端と第2作用部64Aの先端とが、上記平面方向のうちの1つの方向(接近・離間方向)に沿って接近及び離間する構成をなしている。そして、先端デバイス503では、プラズマ照射装置20が第2作用部材64に取り付けられている。具体的には、上述の接近・離間方向(第1作用部16Aの先端と第2作用部64Aの先端とが接近及び離間する方向)において、第2作用部材64の第1作用部材16側にプラズマ照射装置20が設けられている。従って、放出口34も、上述の接近・離間方向において第2作用部材64の第1作用部材16側に配置されている。
【0076】
先端デバイス503でも、第1実施形態と同様に第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されていてもよい。或いは、第2実施形態と同様に、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されていてもよい。第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されている場合、プラズマ照射装置20は、放出口34から放出されるガスの方向が第1作用部16Aと第2作用部64Aとを接触させたときの接触位置に向いていることが望ましい。第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されている場合、プラズマ照射装置20は、放出口34から放出されるガスの方向が「最接近位置」に向いていることが望ましい。この場合、「最接近位置」は、第1作用部16Aと第2作用部64Aとを物体(具体的には生体組織)を挟まずに最も接近させたときの位置であり、この「最接近位置」の概念及び「最接近位置にガスを当てる概念」は第2実施形態と同様である。なお、
図11では、第1作用部16Aと第2作用部64Aとの距離が最も小さくなったときの第2作用部64Aに対する第1作用部16Aの相対位置を二点鎖線16Zによって概念的に示している。
【0077】
更に、第2作用部64Aは、先端側となるにつれて第1作用部16A側に向かうように湾曲する湾曲部564Aとして構成されている。
図11の構成において、第2作用部64A(湾曲部564A)は、上述の平面方向に沿うように湾曲し、第1作用部16A側とは反対側に凸となるように湾曲している。第1作用部16Aも、上述の平面方向に沿うように湾曲している。第1作用部16Aは、第2作用部64A側に凸となるように湾曲している。そして、上述の接触位置又は上述の最接近位置は、第2作用部64A(湾曲部564A)における第1作用部16A側の一部位置を含んでいる。
【0078】
このような構成において、放出口34は、上述の接近・離間方向(第1作用部16Aの先端と第2作用部64Aの先端とが接近及び離間する方向)において第2作用部材64の第1作用部材16側に配置されている。そして、放出口34から放出されるガスの方向が上記の一部位置に向くようになっている。つまり、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されている場合、放出口34から放出されるガスの方向は、「第2作用部64Aの表面における第1作用部16Aに接触する領域」に向いている。また、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されている場合、放出口34から放出されるガスの方向は、「第2作用部64Aの表面における第1作用部16Aに最も近接する領域」に向いている。
【0079】
このように構成された先端デバイス503は、第1作用部材16と第2作用部材64の間の位置に配置された放出口34から上記の接触位置又は最接近位置に向けてプラズマを照射することができる。よって、第1作用部16A及び第2作用部64Aが生体組織を挟み込んだときに、放出口34の先に生体組織が確実に位置する位置関係でプラズマを生体組織に照射することができる。特に、作用部材がプラズマの照射を阻害しにくい位置関係となるため、放出口34から放出されるプラズマがより効率的に生体組織に当たりやすくなる。
【0080】
しかも、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接近及び離間する方向のうち、第2作用部64A(湾曲部)が湾曲する側(即ち、第2作用部64Aの先端側が近づく側である第1作用部16A側)と同じ側に放出口34が配置されている。そして、この放出口34から、第2作用部64A(湾曲部)が湾曲する側と同じ側に位置する接触位置又は最接近位置(湾曲部における第1作用部16A側の一部位置)に向かってプラズマを照射することができる。よって、第2作用部64A(湾曲部)が生体組織を挟み込んでいる際には、生体組織にプラズマを確実に当てることができる。
【0081】
<第6実施形態>
次に、
図12等を参照し第6実施形態の先端デバイス603について説明する。
先端デバイス603は、プラズマ照射装置20に代えて第3実施形態と同様のプラズマ照射装置320を用い、このプラズマ照射装置320を第3実施形態と同様に配置した点のみが第5実施形態と異なり、その他の点は第5実施形態と同様である。
【0082】
先端デバイス603でも、第1実施形態と同様に第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されていてもよい。或いは、第2実施形態と同様に、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されていてもよい。また、先端デバイス603でも、第1実施形態と同様に第1作用部材16に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよく、第2作用部材64に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよい。
【0083】
図12の先端デバイス603では、上述の平面方向に沿って第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接近及び離間する構成をなしている。そして、上記平面方向と直交する方向(直交方向)における第2作用部材64の両側において、第2作用部材64を挟む形で2つの構造体20Aがそれぞれ設けられ、2つの構造体20Aに設けられた2つの放出口34が上記「直交方向」に沿って並んでいる。この構成でも、第2作用部64Aが湾曲部として構成され、先端側となるにつれて第1作用部16A側に向かうように湾曲しており、上記接触位置又は上記最接近位置は、第2作用部64A(湾曲部)における第1作用部16A側の一部位置を含んでいる。例えば、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されている場合、放出口34から放出されるガスの方向は、「第2作用部64Aの表面における第1作用部16Aに接触する領域」に向いている。また、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されている場合、放出口34から放出されるガスの方向は、「第2作用部64Aの表面における第1作用部16Aに最も近接する領域」に向いている。
【0084】
<第7実施形態>
次に、
図13等を参照し第7実施形態の先端デバイス703について説明する。
先端デバイス703は、プラズマ照射装置320の構成、配置及び第1作用部材16及び第2作用部材64の具体的形状のみが第1実施形態の先端デバイス3(
図1等)と異なり、その他の構成及び機能は先端デバイス3と同一である。よって、第1実施形態と同一の点については、詳細な説明は省略する。また、先端デバイス703は、
図1で示す先端デバイス3と同様に手術用装置1に用いることができる。つまり、
図1の手術用装置1において先端デバイス3に代えて先端デバイス703を設けることができる。
【0085】
なお、先端デバイス703では、第1実施形態と同様に第1作用部材16に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよく、第2作用部材64に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよい。
【0086】
先端デバイス703において、プラズマ照射装置320は、第3実施形態の先端デバイス3に設けられたプラズマ照射装置320と同一の構成をなし、同一の機能を有する。先端デバイス703は、第1作用部16A及び第2作用部64Aの具体的な形状のみが第3実施形態と異なり、その他の点は第3実施形態と同一である。
【0087】
図13で示されるように、第7実施形態の先端デバイス703では、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが、所定の平面方向に沿って接近又は離間する構成をなしている。具体的には、第1作用部材16に対して第2作用部材64が回動するときの回動軸と直交する方向が上記平面方向となっており、第1作用部材16及び第2作用部材64が上記平面方向に沿って延びている。そして、第1作用部16Aの先端と第2作用部64Aの先端とが、上記平面方向のうちの1つの方向(接近・離間方向)に沿って接近及び離間する構成をなしている。
図13の構成では、プラズマ照射装置320は、上記平面方向と直交する方向(直交方向)における取付対象となる第2作用部材64の両側において、第2作用部材64を挟む形で2つの構造体20Aがそれぞれ設けられている。そして、2つの構造体20Aに設けられた2つの放出口34は、上記の「直交方向」に沿って並んでいる。
図13の構成でも、第2作用部材64において第2作用部64Aよりも基端側(後端側)に軸部64Bが設けられており、この軸部64Bに2つの構造体20Aが取り付けられている。
【0088】
更に、本構成では、第1作用部16A及び第2作用部64Aのいずれもが上記平面方向と直交する上記直交方向に沿って一方側に屈曲する屈曲部を有している。具体的には、第1作用部16A及び第2作用部64Aのそれぞれの全体が屈曲部として構成されており、いずれもが上記直交方向の一方側に屈曲している。例えば、第2作用部64Aは屈曲部764Aとして構成され、上記の接近・離間方向と直交する仮想平面の方向に沿うように屈曲しており、先端側が上記一方側に向かって曲がるように且つ上記一方側とは反対側が凸となる湾曲となるように屈曲している。同様に、第1作用部16Aは屈曲部716Aとして構成され、上記の接近・離間方向と直交する仮想平面の方向に沿うように屈曲しており、先端側が上記一方側に向かって曲がるように且つ上記一方側とは反対側が凸となる湾曲となるように屈曲している。
【0089】
このような構成において、2つの構造体20Aは、取付対象となる第2作用部材64に対して上記直交方向の両側に配置されており、2つの放出口34も、第2作用部材64に対して上記直交方向の両側に配置されている(
図14も参照)。
【0090】
先端デバイス703でも、第1実施形態と同様に第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されていてもよい。或いは、第2実施形態と同様に、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されていてもよい。第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されている場合、プラズマ照射装置320は、放出口34から放出されるガスの方向が第1作用部16Aと第2作用部64Aとを接触させたときの接触位置に向いていることが望ましい。第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されている場合、プラズマ照射装置320は、放出口34から放出されるガスの方向が「最接近位置」に向いていることが望ましい。この場合、「最接近位置」は、第1作用部16Aと第2作用部64Aとを物体(具体的には生体組織)を挟まずに最も接近させたときの位置であり、この「最接近位置」の概念及び「最接近位置にガスを当てる概念」は第2実施形態と同様である。なお、
図13では、第1作用部16Aと第2作用部64Aとの距離が最も小さくなったときの第2作用部64Aに対する第1作用部16Aの相対位置を二点鎖線16Zによって概念的に示している。
【0091】
上記の先端デバイス703は、第1作用部16A(屈曲部716A)及び第2作用部64A(屈曲部764A)が屈曲する側と同じ側(上記直交方向における上記一方側)に放出口34が配置されている。そして、このように同じ側に配置された放出口34から屈曲部716A,764Aの内側の側面(屈曲部716A,764Aにおいて凹となる側の側面)に向かってプラズマを照射することができる。よって、屈曲部716A,764Aに挟まれた生体組織にプラズマが確実に当たりやすくなり、特に、両作用部の先端付近までプラズマが届きやすくなる。
【0092】
<第8実施形態>
次に、
図15等を参照し第8実施形態の先端デバイス803について説明する。
先端デバイス803は、プラズマ照射装置320に代えてプラズマ照射装置820を用いた点のみが第3実施形態と異なり、その他の点は第3実施形態と同様である。具体的には、各々の構造体20Aを各々の構造体320Aに変更した点のみが第3実施形態と異なる。
【0093】
なお、先端デバイス803でも、第1実施形態と同様に第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触するように構成されていてもよい。或いは、第2実施形態と同様に、第1作用部16Aと第2作用部64Aとが接触しないように構成されていてもよい。また、先端デバイス803では、第1実施形態と同様に第1作用部材16に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよく、第2作用部材64に対して超音波振動部12からの超音波振動が与えられるようになっていてもよい。
【0094】
図15の構成でも、上記直交方向における第2作用部材64の両側において、第2作用部材64を挟む形で2つの構造体820Aがそれぞれ設けられ、2つの構造体820Aが上記の「直交する方向」に沿って並んでいる。
【0095】
図16のように、各構造体820Aは、2つの放出口34を有しており、2つの放出口34からプラズマを放出し得る構成をなしている。
図17のように、構造体820Aは、第1実施形態の先端デバイス3で用いられる構造体20A(
図7等)を2つ備えた構成をなし、2つの構造体20Aを一体化させた構成をなしている。
図17の例では、構造体820Aの第2方向中間位置を一点鎖線Cで示しており、一点鎖線Cよりも一方側の領域及び他方側の領域がそれぞれ構造体20Aと同様の構成をなしている。なお、
図17では、接地電極44(
図7)に相当する電極を省略しているが、接地電極は、
図7と同様に各放電電極42に対向させてそれぞれ設けてもよく、両放電電極42に跨るように共通の接地電極を設けてもよい。なお、
図16、
図17で示す構造体820Aの外形はあくまで一例であり、外形については様々な形状とすることができる。
【0096】
図15の構成では、
図16、
図17のように構成された構造体820Aを、第2作用部材64に対して上記直交方向の両側にそれぞれ配置し、各構造体820Aにおいては、複数(
図15の例では2つ)の放出口34を上記平面方向に沿って並べている。具体的には、各構造体820Aにおいて2つの放出口34が上記接近・離間方向に沿って並んでいる。
【0097】
このような先端デバイス803でも、第1実施形態又は第2実施形態と同様の効果、及び第3実施形態と同様の効果が得られる。更に、2つの放出口34が上記接近・離間方向に沿って並んでいるため、上記接近・離間方向においてより広い範囲にプラズマを照射することができる。
【0098】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態の各態様に限定されるものではなく、例えば、矛盾しない範囲で、複数の実施形態の特徴を組み合わせることが可能である。また、次のような例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0099】
上記実施形態では、2つの作用部材のうちの一方を第1作用部材16とし他方を第2作用部材64とし、第2作用部材64又は第2作用部材64の近傍にプラズマ照射装置を取り付けた例として説明したが、逆にしてもよい。つまり、第1作用部材16とされていた作用部材を第2作用部材とし、第2作用部材64とされていた作用部材を第1作用部材としてもよい。この場合、第1作用部材又は第1作用部材の近傍にプラズマ照射装置が取り付けられるものとなる。
【0100】
図9~
図20の構成では、第2作用部材64にプラズマ照射装置を取り付けた例を示したが、
図9~
図20のいずれの構成のものでも、第1作用部材16にプラズマ照射装置を取り付けてもよい。
【0101】
第3、第6、第7、第8実施形態では、上記平面方向と直交する直交方向において取付対象の両側に放出口34が配置される例を示したが、取付対象の一方側のみに放出口34が配置されてもよい。例えば、
図9の構成において、いずれか一方の構造体20Aを省略してもよい。
【0102】
第4実施形態では、上述の接近・離間方向(第1作用部16Aの先端と第2作用部64Aの先端とが接近及び離間する方向)において、第2作用部材64の第1作用部材16側に放出口34が配置された構成を例示したがこの構成に限定されない。例えば、上述の接近・離間方向において、第2作用部材における第1作用部材とは反対側に放出口が配置されていてもよい。例えば、放出口と第1作用部材との間に第2作用部材が介在する構成となっていてもよい。
【0103】
第5、第6実施形態では、第2作用部の全体が湾曲部として構成された例を示したが、第2作用部の一部のみが湾曲部として構成されていてもよい。
【0104】
第7実施形態では、取付対象となる第2作用部材64に対して上述の「直交方向」の両側に放出口34が配置された例を示したが、取付対象に対して「直交方向」の一方側のみに放出口が配置されていてもよい。例えば、
図13の構成において、屈曲側とは反対側に配置された放出口34を省略してもよい。
【0105】
上記実施形態では、第1作用部材及び第2作用部材の各形状について一例を示したが、いずれの作用部材も様々な形状に変更することができる。例えば、
図10の構成において第2作用部材の形状を変更し、
図18のような先端デバイス903としてもよい。また、このような作用部材の形状の変更は、いずれの実施形態に適用してもよい。
【0106】
第8実施形態では、第3実施形態の先端デバイス303の構造体20Aを構造体820Aに変更した例を示したが、いずれの実施形態の構造体も構造体820Aに変更することができる。いずれの実施形態に構造体820Aを適用する場合でも、構造体820Aの配置は、自身に設けられた複数の放出口が上述の接近・離間方向に並ぶように配置してもよく、上述の直交方向に並ぶように配置してもよい。また、いずれの実施形態に構造体820Aを適用する場合でも、放出口の数は3以上としてもよい。
【0107】
第8実施形態では、複数の放出口34を備えた構造体820Aを一例として示し、各々の放出口34から第1方向(構造体820Aの長手方向)に沿ってプラズマが放出される例を示したが、放出口34から放出されるプラズマの方向はこの例に限定されない。例えば、
図19のように、第1方向に対して傾斜した方向にプラズマが照射されてもよい。
図19の構造体820Aでは、各放出口34付近の流路が第1方向に対して傾斜した傾斜流路となっている。そして、構造体820Aは、第3方向一方側の放出口34から放出されたプラズマが、第1方向一方側且つ第3方向他方側へと向かうように構成されている。更に、構造体820Aは、第3方向他方側の放出口34から放出されたプラズマが、第1方向一方側且つ第3方向一方側へと向かうように構成されている。なお、第8実施形態以外の構成でも、第1方向に対して傾斜した方向にプラズマが照射されるようになっていてもよい。
【0108】
上述した実施形態では、プラズマ照射装置を構成する構造体20A又は構造体820Aが直線状に形成された例を示したが、プラズマ照射装置を構成する構造体は、取付対象の形状に合わせてもよい。例えば、第1作用部材又は第2作用部材若しくはいずれかの作用部材に近接する部材が湾曲面や屈曲面などの外面を有している場合に、この外面に合わせた外形形状で構造体を構成してもよい。具体的には、例えば、作用部材付近の構成を
図20のようにしてもよい。
図20の構成は、第2作用部材64の軸部64Bの外面が部分的に屈曲する屈曲面となっており、この屈曲面に合わせた形状で構造体20Aを構成している。
【0109】
上述した実施形態では、超音波振動を行い得る先端デバイスにプラズマ照射装置が組み込まれた構成を例示したが、他の電気的機能を有する先端デバイスに上述したいずれかの構成のプラズマ照射装置が組み込まれた構成であってもよい。或いは、電気的な機能を有さない既知の手術用器具(例えば、鉗子等)として構成される先端デバイスに上述したいずれかの構成のプラズマ照射装置が組み込まれた構成であってもよい。
【0110】
上述した実施形態では、駆動部が先端デバイスの一部を構成するケース体(作用部材が組み込まれるケース体)の内部に配置される例を示したが、駆動部がケース体の外部に配置されていてもよい。このように駆動部がケース体の外部に配置される場合、駆動部を先端デバイスの一部とみなしてもよく、駆動部を先端デバイスの一部とみなさなくてもよい。
【0111】
特許請求の範囲、及び明細書において、「生体組織に作用する」とは、作用部材が生体組織に影響を及ぼし、切開と剥離と止血との少なくとも1つを為すことを意味する。上述した実施形態で例示された作用部材はあくまで一例であり、作用部材が生体組織に影響を及ぼし、切開、剥離、止血の少なくとも1つを行い得るようになっていれば、上述した実施形態以外の様々な構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0112】
3,203,303,403,503,603,703,803,903…先端デバイス
15…把持器具
16…第1作用部材
16A…第1作用部
20,320,820…プラズマ照射装置
24…縮径部
30…ガス誘導路
32…導入口
34…放出口
36…流路
40…沿面放電部(放電部)
64…第2作用部材
64A…第2作用部
564A…湾曲部
716A,764A…屈曲部