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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】船舶及び船舶の設計方法
(51)【国際特許分類】
   B63G 8/00 20060101AFI20231128BHJP
   B63B 15/00 20060101ALI20231128BHJP
   B63J 99/00 20090101ALI20231128BHJP
   F16F 15/067 20060101ALI20231128BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B63G8/00 F
B63B15/00 D
B63J99/00 C
F16F15/067
F16F15/08 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019106205
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020199796
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】洲河 杏平
(72)【発明者】
【氏名】川原 佑来
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-111398(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0282954(US,A1)
【文献】実開昭62-145895(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0067692(KR,A)
【文献】特開2006-116729(JP,A)
【文献】特開2002-168286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63G 8/00
B63B 15/00
B63J 99/00
F16F 15/00- 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船幅方向両側に設けられた一対の舷側と、
一対の前記舷側を繋ぐ甲板と、
前記甲板上に配置された複数の防振部材と、
複数の前記防振部材に支持された浮床部と
前記甲板から前記浮床部に向かうように延びる複数の第一支持部と、
前記浮床部から前記甲板に向かうように延びる複数の第二支持部とを備え、
前記浮床部は、平板状をなして前記甲板を上方から覆い、前記舷側から離れて配置され、
前記浮床部は、前記甲板に対して、乗員及び装備品が配置できない間隔開けて配置され、
前記乗員及び前記装備品は、前記甲板上には配置不能であり、前記浮床部上のみに配置可能とされ
前記甲板は、平板状をなす甲板本体を有し、
前記第一支持部は、前記甲板本体から垂直に断面直線状をなして延びる第一ウェブと、前記第一ウェブの上端から断面直線状をなして前記甲板本体と平行に延びる第一フランジとを有し、
前記浮床部は、前記甲板本体と平行な平板状をなす床本体を有し、
前記第二支持部は、前記床本体から垂直に断面直線状をなして延びる第二ウェブと、前記第二ウェブの下端から断面直線状をなして前記床本体と平行に延びる第二フランジとを有し、
前記防振部材は、前記第一フランジと前記第二フランジとに挟まれて固定されている船舶。
【請求項2】
前記浮床部と前記舷側との間隔は、前記浮床部と前記甲板との間隔よりも狭い請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
幅方向両側に設けられた一対の舷側と、
一対の前記舷側を繋ぐ甲板と、
前記甲板上に配置された複数の防振部材と、
複数の前記防振部材に支持された浮床部とを備え、
前記浮床部は、平板状をなして前記甲板を上方から覆い、前記舷側から離れて配置されている船舶の設計方法であって、
衝突に対する人体への影響を及ぼす指標に基づいて、前記船舶が同じ衝撃を受けた場合でも、前記浮床部上での乗員の損傷は、仮に前記甲板上に前記乗員が乗っていた場合の損傷に比べて、軽度となるよう、前記船舶に乗船している前記乗員や収容されている装備品に対して大きな影響を及ぼさないと認められる基準を満たす前記防振部材の特性を定める船舶の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶及び船舶の設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
艦艇などの船舶では、水中で生じた衝撃に対して、船体に配置された装備品を保護することが求められている。そのため、装備品は、船体との間に防振装置を介して固定されることがある。例えば、特許文献1には、船体内に配置された原動機から船体への振動を抑制する防振装置が記載されている。この防振装置は、コイルばねを伸縮させて鉛直方向に振動するアッパー部を有する本体部と、コイルばねの軸に対して垂直な方向への振れ幅を制限するガイド部と、振動を減衰させるダンパ部とを備えている。このような防振装置を用いることで、原動機から船体への振動を抑制するとともに、船体に生じた衝撃を原動機に伝わるまでに低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-196441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のような防振装置は、船体に固定される装備品を対象としている。そのため、船舶に対して固定されていない物体や船舶内を自由に移動する乗員に対する耐衝撃性を確保することはできない。このように、船舶に対して固定されていない物体及び乗員に対する耐衝撃性を確保することが望まれている。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、船舶に対して固定されていない物体及び乗員に対する耐衝撃性を確保することが可能な船舶及び船舶の設計方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明の第一態様に係る船舶は、船幅方向両側に設けられた一対の舷側と、一対の前記舷側を繋ぐ甲板と、前記甲板上に配置された複数の防振部材と、複数の前記防振部材に支持された浮床部と、前記甲板から前記浮床部に向かうように延びる複数の第一支持部と、前記浮床部から前記甲板に向かうように延びる複数の第二支持部とを備え、前記浮床部は、平板状をなして前記甲板を上方から覆い、前記舷側から離れて配置され、前記浮床部は、前記甲板に対して、乗員及び装備品が配置できない間隔開けて配置され、前記乗員及び前記装備品は、前記甲板上には配置不能であり、前記浮床部上のみに配置可能とされ、前記甲板は、平板状をなす甲板本体を有し、前記第一支持部は、前記甲板本体から垂直に断面直線状をなして延びる第一ウェブと、前記第一ウェブの上端から断面直線状をなして前記甲板本体と平行に延びる第一フランジとを有し、前記浮床部は、前記甲板本体と平行な平板状をなす床本体を有し、前記第二支持部は、前記床本体から垂直に断面直線状をなして延びる第二ウェブと、前記第二ウェブの下端から断面直線状をなして前記床本体と平行に延びる第二フランジとを有し、前記防振部材は、前記第一フランジと前記第二フランジとに挟まれて固定されている
【0007】
このような構成によれば、水中で衝撃が生じ、船体に対して衝撃が負荷されたとしても、浮床部に伝わる衝撃加速度は、防振部材によって低減される。したがって、浮床部上にいる乗員や装備品等の物体が受ける衝撃は、船体が受ける衝撃に比べて小さくなる。つまり、物体及び乗員に対して個別に衝撃を低減するための装置を用意することなく、浮床部上の物体及び乗員が受ける衝撃を低減できる。
【0009】
このような構成とすることで、甲板と浮床部との間にスペースを確保した状態で、防振部材を設置できる。したがって、甲板と浮床部との間に、船舶自体に使用されるケーブル等を収容することができる。さらに、複数の第一支持部が補強部材の役割を果たすため、甲板の強度が向上する。したがって、甲板の下方に、甲板の強度を向上させるための補強部材を設けることなく、甲板の強度を確保することができる。したがって、甲板の下方の空間を有効に利用することができる。同様に、複数の第二支持部が補強部材の役割を果たすため、浮床部の強度が向上する。したがって、浮床部の上方に、浮床部の強度を向上させるための補強部材を設けることなく、浮床部の強度を確保することができる。したがって、浮床部の上方の空間を有効に利用することができる。
【0010】
また、本発明の第三態様に係る船舶では、第一態様又は第二態様において、前記浮床部と前記舷側との間隔は、前記浮床部と前記甲板との間隔よりも狭くてもよい。
【0011】
また、本発明の第四態様に係る船舶の設計方法は、幅方向両側に設けられた一対の舷側と、一対の前記舷側を繋ぐ甲板と、前記甲板上に配置された複数の防振部材と、複数の前記防振部材に支持された浮床部とを備え、前記浮床部は、平板状をなして前記甲板を上方から覆い、前記舷側から離れて配置されている船舶の設計方法であって、衝突に対する人体への影響を及ぼす指標に基づいて、前記船舶が同じ衝撃を受けた場合でも、前記浮床部上での乗員の損傷は、仮に前記甲板上に前記乗員が乗っていた場合の損傷に比べて、軽度となるよう、前記船舶に乗船している前記乗員や収容されている装備品に対して大きな影響を及ぼさないと認められる基準を満たす前記防振部材の特性を定める。
【0012】
このような構成とすることで、浮床部上に配置される物の中でも乗員に生じる影響を確実に低減させるように、防振部材を選定し、適切な位置に設置できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、船舶に対して固定されていない物体及び乗員に対する耐衝撃性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態における船舶の概略構成を示す構成図である。
図2】本実施形態におけるにおける船舶の船体の断面図である。
図3】本発明の実施形態における船舶の設計方法のフロー図である。
図4】衝撃に対する人体の損傷レベルが低減されることを説明する作用加速度と作用時間との関係を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態における船舶1を図面に基づき説明する。この実施形態では、船舶1が艦艇である場合を一例に説明するが、船舶1であれば艦艇に限られず商船等であってもよい。
【0016】
図1は、本発明の実施形態における船舶1の概略構成を示す構成図である。図2は、本発明の実施形態における船舶1の船体2の断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態における船舶1は、護衛艦等の艦艇である。船舶1は、船体(船殻とも言う)2と、上部構造3と、を有している。
【0018】
図2に示すように、船体2は、船幅方向Dw両側に設けられた一対の舷側4と、船底5と、甲板6と、防振部材7と、浮床部8とを備えている。
【0019】
甲板6は、上下方向に間隔をあけて複数設けられている。各甲板6は、一対の舷側4の間で、船首尾方向に延びる板状に形成されている。複数の甲板6は、舷側4及び船底5により形成された内部空間を上下に区画している。複数の甲板6により、船体2の内部に複数の階層が形成されている。
【0020】
図1に示すように、上部構造3は、第一甲板(上甲板)61上に形成されている。第一甲板61は、複数の甲板6のうち最も上方に配置された全通甲板である。第一甲板61は、船舶1が水上に位置している場合に、水面より上に配置されている。この実施形態における船舶1の上部構造3は、船首尾方向の中央部付近に配置され、艦橋3aや居住区等を備えている。
【0021】
図2に示すように、第一甲板61は、甲板本体65と、複数の第一支持部66とを有している。
【0022】
甲板本体65は、平板状をなして船首尾方向及び船幅方向Dwに広がるように水平に延びている。甲板本体65の船幅方向Dwの端部は、一対の舷側4にそれぞれ繋がっている。
【0023】
複数の第一支持部66は、第一甲板61から後述する浮床部8に向かうように延びている。複数の第一支持部66は、甲板本体65から上方に向かって延びている。第一支持部66は、断面T字状をなす梁部材である。複数の第一支持部66は、互いに離れて配置されている。第一支持部66は、第一ウェブ661と、第一フランジ662とを有している。
【0024】
第一ウェブ661は、第一甲板61から上方に断面直線状をなして延びている。第一ウェブ661は、第一甲板61に対して垂直に延びている。
【0025】
第一フランジ662は、第一ウェブ661の上端から垂直に広がるように、断面直線状をなして延びている。即ち、第一フランジ662は、第一甲板61と平行に延びている。第一フランジ662の上方を向く面には、防振部材7が固定されている。
【0026】
防振部材7は、第一甲板61上に複数配置されている。複数の防振部材7は、第一甲板61の全域に対して均等に離れて配置されている。本実施形態の防振部材7は、第一フランジ662上に固定されている。防振部材7は、船底5から艦橋3aへ向かう方向への衝撃エネルギーを減衰可能な部材である。本実施形態の防振部材7は、例えば、反発弾性が低く振動減衰の大きい円柱状のゴム部材である。
【0027】
なお、防振部材7は、衝撃エネルギーを低減可能な部材であればよく、例えば、コイルばね等のばね部材や衝撃吸収するゲル状部材であってもよい。
【0028】
浮床部8は、複数の防振部材7に支持されている。浮床部8は、第一甲板61に対して上方に離れて配置されている。本実施形態では、乗員や装備品等の大型の物品は、第一甲板61上には配置不能であり、浮床部8上のみに配置可能とされている。つまり、本実施形態の浮床部8は、第一甲板61に対して、大型の物品が配置できない程度の間隔開けて配置されている。浮床部8は、舷側4から離れて配置されている。浮床部8は、第一甲板61を覆いつつ、舷側4とは離間可能な形状をなしている。本実施形態の浮床部8は、床本体85と、複数の第二支持部86とを有している。
【0029】
床本体85は、船首尾方向及び船幅方向Dwに広がるように水平に延びている。つまり、床本体85は、甲板本体65と平行な平板状をなしている。床本体85は、複数の乗員や装備品等の大型の物体を配置可能な大きさで形成されている。床本体85は、舷側4とは離れている。床本体85と舷側4との間隔は、床本体85と甲板本体65との間隔よりも狭くされている。
【0030】
複数の第二支持部86は、床本体85から第一甲板61に向かうように延びている。複数の第二支持部86は、床本体85から下方に向かって延びている。第二支持部86は、第一支持部66とは対称な断面T字状をなす梁部材である。複数の第二支持部86は、互いに離れて配置されている。第一甲板61から浮床部8を見た際に、各第二支持部86は、各第一支持部66と重なる位置に配置されている。第二支持部86は、第二ウェブ861と、第二フランジ862とを有している。
【0031】
第二ウェブ861は、床本体85から下方に断面直線状をなして延びている。第二ウェブ861は、床本体85に対して垂直に延びている。
【0032】
第二フランジ862は、第二ウェブ861の下端から垂直に広がるように、断面直線状をなして延びている。即ち、第二フランジ862は、床本体85と平行に延びている。第二フランジ862の下方を向く面には、防振部材7が固定されている。即ち、防振部材7は、第一フランジ662と第二フランジ862とに上下から挟まれて固定されている。
【0033】
次に、このような船舶1に用いられる防振部材7を選定する船舶の設計方法S1を図3に基づいて説明する。図3は、本発明の実施形態における船舶の設計方法S1のフロー図である。船舶の設計方法S1では、衝突に対する人体への影響を及ぼす指標に基づいて、防振部材7の特性が定められる。具体的には、本実施形態の船舶の設計方法S1は、図3に示すように、浮床部範囲設定工程S10と、衝撃想定工程S20と、防振部材特性設定工程S30と、評価工程S40とを有している。
【0034】
浮床部範囲設定工程S10では、第一甲板61に対して浮床部8を設置する範囲(区画)が決定される。つまり、浮床部範囲設定工程S10では、第一甲板61に対する浮床部8の大きさ(甲板本体65に対する床本体85の面積の割合など)、及び第一甲板61に対する浮床部8の位置が定められる。これにより、浮床部8の設置範囲が設定される。
【0035】
衝撃想定工程S20では、船舶1に対して生じ得る衝撃の規模及び衝撃を受ける位置が想定されて設定される。したがって、衝撃想定工程S20では、船舶1が受ける船底5から艦橋3aへ向かう方向への衝撃エネルギーの大きさ及び位置が設定される。
【0036】
防振部材特性設定工程S30では、浮床部範囲設定工程S10で設定された浮床部8の設置範囲と、衝撃想定工程S20で設定された衝撃エネルギーの大きさ及び位置と、衝突に対する人体への影響を及ぼす指標とに基づいて、防振部材7の特性が設定される。人体への影響とは、例えば、人体への障害程度である。本実施形態の防振部材特性設定工程S30において、衝突に対する人体への障害程度を示す指標としては、例えば、J-AIS(Japan Abbreviated Injury Scale)コードによる分類が挙げられる。J-AISコードは、衝突に対する人間の生存限界を示す指標に基づいて、国土交通省によって作成された自動車衝突基準である。J-AISコードでは、段階的な障害程度の指針が定められている。また、防振部材特性設定工程S30で設定される防振部材7の特性とは、例えば、弾性率や設置位置である。
【0037】
図4は、衝撃に対する人体の損傷レベルが低減されることを説明する作用加速度と作用時間との関係を示すグラフの一例である。図4のような作用加速度と作用時間との関係を示すグラフでは、人体の損傷度合に応じて、損傷の程度が大きい重傷域、損傷の程度が中程度の中傷域、損傷の程度の小さい軽傷域を表すことができる。例えば、重傷域は、J-AISコードの3.0に相当する障害を負う領域である。防振部材特性設定工程S30では、例えば、J-AISコードに基づいて、第一甲板61上で受ける衝撃(作用加速度)が仮に中傷域の点P1である場合には、防振部材7を介して浮床部8上で受ける衝撃(作用加速度)が軽傷域の点P2になるように、防振部材7の特性が決定される。これにより、船舶1が同じ衝撃を受けた場合でも、浮床部8上での乗員の損傷は、仮に第一甲板61上に乗員が乗っていた場合の損傷に比べて、軽度となる。
【0038】
なお、図4に示された重傷域、中傷域、及び軽傷域は、防振部材特性設定工程S30を説明するための一例である。
【0039】
なお、J-AIS以外の指標としては、例えば、HIC(Head Injury Criteria)が挙げられる。HICは、衝撃から生じる頭部外傷の程度を示す尺度である。 HICは、車両、個人用保護具、及びスポーツ用品に関連する安全性の評価に使用される。
【0040】
評価工程S40では、防振部材特性設定工程S30で特性が設定された防振部材7に対して、振動応答特性や衝撃応答特性が予め定めた基準を満たしているか否かを評価する。具体的には、評価工程S40では、防振部材7に対して振動応答解析や衝撃応答解析が行われる。解析結果が、船舶1に乗船している乗員や収容されている装備品に対して大きな影響を及ぼさないと認められる基準を満たしているかを評価する。基準を満たしていないと判断された場合には、再び防振部材特性設定工程S30が行われ、特性が再設定される。
【0041】
上記のような船舶1によれば、防振部材7によって浮床部8が第一甲板61上に支持されている。そのため、水中で衝撃が生じ、船体2に対して船底5から艦橋3aへ向かう方向へ衝撃が負荷されたとしても、浮床部8に伝わる衝撃加速度は、防振部材7によって低減される。したがって、浮床部8上にいる乗員や装備品等の物体が受ける衝撃は、船体2が受ける衝撃に比べて小さくなる。つまり、物体及び乗員に対して個別に衝撃を低減するための装置を用意することなく、浮床部8上の物体及び乗員が受ける衝撃を低減できる。これにより、船舶1に対して固定されていない物体及び乗員に対する耐衝撃性を確保することができる。
【0042】
また、第一甲板61上に対して浮床部8が取り付けされていることで、第一甲板61が無く、浮床部8が防振部材7を介して舷側4に対して取り付けられている場合に比べて、船体2としての強度を向上させることができる。これにより、艦艇のような大型の船舶1であっても、船22としての強度を確保しつつ、浮床部8を設置することができる。
【0043】
さらに、一つのみの防振部材7ではなく、複数の防振部材7が第一甲板61と浮床部8との間に配置されている。そのため、一つ一つの防振部材7に係る耐荷重が低減される。そのため、大型の部材等を用いることなく、耐衝撃性を確保することができる。これにより、防振部材7の設置コストを低減するとともに、防振部材7を船舶1に対して柔軟に設置することができる。
【0044】
また、防振部材7が第一フランジ662と第二フランジ862とによって挟まれた状態で固定されている。そのため、甲板本体65と床本体85との間にスペースを確保した状態で、防振部材7を設置できる。したがって、甲板本体65と床本体85との間に、船舶1自体に使用されるケーブル等を収容することができる。
【0045】
さらに、甲板本体65から上方に延びている複数の第一支持部66が補強部材の役割を果たすため、甲板本体65の強度が向上する。したがって、甲板本体65の下方に、甲板本体65の強度を向上させるための補強部材を設けることなく甲板本体65の強度を確保することができる。したがって、甲板本体65の下方の空間を有効に利用することができる。
【0046】
同様に、床本体85から下方に延びている複数の第二支持部86が補強部材の役割を果たすため、床本体85の強度が向上する。したがって、床本体85の上方に、床本体85の強度を向上させるための補強部材を設けることなく床本体85の強度を確保することができる。したがって、床本体85の上方の空間を有効に利用することができる。
【0047】
また、防振部材7の特性が、J-AISコード等の衝突に対する人体への障害程度を示す指標に基づいて決定されている。そのため、床本体85上に配置される物の中でも乗員に生じる影響を確実に低減させるように、防振部材7を選定し、適切な位置に設置できる。
【0048】
(実施形態の他の変形例)
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0049】
例えば、上記実施形態においては、甲板6を上下方向に複数備えるようにしたが、甲板6の数については、何ら限定するものではなく、一つであってもよい。
【0050】
また、上述した実施形態においては、最も上方に配置された上甲板である第一甲板61に対して浮床部8が配置されるとして説明した。しかしながら、浮床部8は、最も上方に配置された甲板6に対して設けられることに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 船舶
2 船体
3 上部構造
3a 艦橋
4 舷側
5 船底
6 甲板
61 第一甲板
65 甲板本体
66 第一支持部
661 第一ウェブ
662 第一フランジ
7 防振部材
8 浮床部
85 床本体
86 第二支持部
861 第二ウェブ
862 第二フランジ
Dw 船幅方向
S1 船舶の設計方法
S10 浮床部範囲設定工程
S20 衝撃想定工程
S30 防振部材特性設定工程
S40 評価工程
図1
図2
図3
図4