(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/60 20230101AFI20231128BHJP
H10K 71/10 20230101ALI20231128BHJP
H10K 59/179 20230101ALI20231128BHJP
【FI】
H10K71/60
H10K71/10
H10K59/179
(21)【出願番号】P 2019110848
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】大田 悟
【審査官】加藤 範久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-094524(JP,A)
【文献】特開2008-098130(JP,A)
【文献】特開2010-080086(JP,A)
【文献】特開2002-324662(JP,A)
【文献】特開2005-093691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0185301(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0158568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00-99/00
H05B 33/00-28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板上に設けられた撥液性を有する第1層の一部分に光を照射して、前記第1層の前記一部分を第1親液部に変化させる工程と、
(b)前記第1親液部上に位置する第1導電部を形成する工程と、
(c)前記第1導電部に電気的に接続された有機EL素子を形成する工程と、
(d)前記第1導電部に電気的に接続され、一断面において前記第1親液部の端を覆う部分を有する第2導電部を形成する工程と、
を含む発光装置の製造方法であって、
前記発光装置において前記基板と前記有機EL素子との間で前記第1親液部と前記第1導電部とが接しており、
前記発光装置において前記第1親液部の厚さは、前記第1層のうち前記第1親液部に変化していない部分の厚さより薄い
発光装置の製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の発光装置の製造方法において、
前記工程(c)は、
(c1)前記第1導電部上に位置する第1電極を形成する工程と、
(c2)前記第1電極上に位置し、発光層を含む有機層を形成する工程と、
(c3)前記有機層上に位置する第2電極を形成する工程と、
を含み、
前記工程(c3)の前記第2電極と、前記工程(d)の前記第2導電部と、は、同一工程内において形成される、発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及び発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を有する発光装置の配線を形成する技術として、プリンテッドエレクトロニクスが注目されている。プリンテッドエレクトロニクスでは、金属を含む溶液を選択的に塗布して、配線を形成する。
【0003】
特許文献1には、プリンテッドエレクトロニクスの一例について記載されている。この例では、まず、絶縁層を形成する。絶縁層は、紫外線照射によって親液性を呈する感光性撥液性組成物を含んでいる。次いで、この絶縁層に選択的に紫外線を照射する。絶縁層のうちの紫外線照射領域は親液部となり、絶縁層のうちの紫外線非照射領域は撥液部となる。次いで、金属を含む溶液をこの絶縁層上に塗布する。これによって、親液部上に配線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
親液部上に配線を形成した場合、新液部を有する層を経由して水分が有機EL素子に向けて侵入し得ることを、本発明者は新規に見出した。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、親液部を有する層を経由しての水分の侵入を低減することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
基板と、
前記基板の第1部分上に位置する第1親液部と、
前記第1親液部上に位置する第1導電部と、
前記第1導電部に電気的に接続された有機EL素子と、
前記第1導電部に電気的に接続され、一断面において前記第1親液部の端を覆う部分を有する第2導電部と、
を備える発光装置である。
【0008】
請求項9に記載の発明は、
基板と、
前記基板の第1部分上に位置する第1親液部を有する第1層と、
前記第1層の前記第1親液部上に位置する第1導電部と、
前記第1導電部に電気的に接続された有機EL素子と、
前記有機EL素子を封止する封止部と、
を備え、
平面視において、前記第1層の端の少なくとも一部分は、前記封止部の端より内側に位置する、発光装置。
【0009】
請求項11に記載の発明は、
(a)撥液性を有する第1層の一部分に光を照射して、前記第1層の前記一部分を第1親液部に変化させる工程と、
(b)前記第1親液部上に位置する第1導電部を形成する工程と、
(c)前記第1導電部に電気的に接続された有機EL素子を形成する工程と、
(d)前記第1導電部に電気的に接続され、一断面において前記第1親液部の端を覆う部分を有する第2導電部を形成する工程と、
を含む、発光装置の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図1及び
図2に示した発光装置の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図4】
図1及び
図2に示した発光装置の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図5】
図1及び
図2に示した発光装置の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図6】
図1及び
図2に示した発光装置の製造方法の一例を説明するための図である。
【
図7】
図1及び
図2に示した発光装置の製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において「AがB上に位置する」という表現は、例えば、AとBの間に他の要素(例えば、層)が位置せずにAがB上に直接位置することを意味してもよいし、又はAとBの間に他の要素(例えば、層)が部分的又は全面的に位置することを意味してもよい。さらに、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」及び「後ろ」等の向きを示す表現は、基本的に図面の向きと合わせて用いるものであって、例えば本明細書に記載された発明品の使用する向きに限定して解釈されるものではない。
【0012】
本明細書において「A及びBが重なる」という表現は、特に断らない限り、ある方向からの投影像において、Aの少なくとも一部がBの少なくとも一部と同じ場所にあることを意味する。このとき複数の要素同士は直接接していてもよいし、又は離間していてもよい。
【0013】
本明細書において「Aの外側」という表現は、特に断らない限り、Aの縁を境にAが位置しない側の部分のことを意味する。
【0014】
本明細書中における陽極とは、発光材料を含む層(例えば有機層)に正孔を注入する電極のことを示し、陰極とは、発光材料を含む層に電子を注入する電極のことを示す。また、「陽極」及び「陰極」という表現は、「正孔注入電極」及び「電子注入電極」又は「正極」及び「負極」等の他の文言を意味することもある。
【0015】
本明細書において「Aの端」という表現は、一方向から見たときのAとその他の要素との境界を意味し、「Aの端部」という表現は、当該境界を含むAの一部の領域を意味し、「Aの端点」という表現は、当該境界のある一点を意味する。
【0016】
本明細書における「発光装置」とは、ディスプレイや照明等の発光素子を有するデバイスを含む。また、発光素子と直接的、間接的又は電気的に接続された配線、IC(集積回路)又は筐体等も「発光装置」に含む場合もある。
【0017】
本明細書において、特に断らない限り、「膜」という表現と「層」という表現とは、状況及び場合に応じて適宜置換することが可能である。例えば、「絶縁膜」という文言は、「絶縁層」という文言に置換することが可能である。
【0018】
本明細書において「接続」とは、複数の要素が直接的又は間接的を問わずに接続している状態を表す。例えば、複数の要素の間に接着剤又は接合部材が介して接続している場合も単に「複数の要素は接続している」と表現することがある。また、複数の要素の間に、電流、電圧又は電位を供給可能又は伝送可能な部材が存在しており、「複数の要素が電気的に接続している」場合も単に「複数の要素は接続している」と表現することがある。
【0019】
本明細書において、特に断りがない限り「第1、第2、A、B、(a)、(b)」等の表現は要素を区別するためのものであり、その表現により該当要素の本質、順番、順序又は個数等が限定されるものではない。
【0020】
本明細書において、各部材及び各要素は単数であってもよいし、又は複数であってもよい。ただし、文脈上、「単数」又は「複数」が明確になっている場合はこれに限らない。
【0021】
本明細書において、「AがBを含む」という表現は、特に断らない限り、AがBのみによって構成されていることに限定されず、AがB以外の要素によって構成され得ることを意味する。
【0022】
本明細書において「平面視」とは、画素や発光材料等が位置した面を実質的に直上から見たときを意味する。また、「実質的に直上」とは計測上の誤差を含んでいてもよい。
【0023】
本明細書において「断面」とは、特に断らない限り、発光装置を画素や発光材料等が積層した方向に切断したときに現れる面を意味する。
【0024】
本明細書において「有さない」、「含まない」、「位置しない」等の表現は、ある要素が完全に排除されていることを意味してもよいし、又はある要素が技術的な効果を有さない程度に存在していることを意味してもよい。
【0025】
本明細書において、「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」等の時間的前後関係を説明する表現は、相対的な時間関係を表しているものであり、時間的前後関係が用いられた各要素が必ずしも連続しているとは限らない。各要素が連続していることを表現する場合、「直ちに」又は「直接」等の表現を用いることがある。
【0026】
本明細書において「Aを加熱する」という表現は、Aに熱が加わることを意味しており、Aのみを加熱することに限定されない。当該表現は、例えば、Aを含む要素が加熱されることを意味してもよい。また、「加熱する」とは故意的又は人為的に熱を加えることを意味し、Aの周囲の雰囲気の単なる温度変化は含まない。
【0027】
本明細書において「AがBを覆う」 という表現は、特に断らない限り、AとBの間に他の要素(例えば、層)が位置せずにAがBに接触することを意味してもよいし、又はAとBの間に他の要素(例えば、層)が部分的又は全面的に位置することを意味してもよい。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0029】
図1は、実施形態に係る発光装置10の平面図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。
【0030】
図2を用いて、発光装置10の概要を説明する。発光装置10は、基板100、第1親液部210、第1導電部300、有機EL素子140及び第2導電部400を備えている。第1親液部210は、基板100の第1部分上に位置している。第1導電部300は、第1親液部210上に位置している。有機EL素子140は、第1導電部300に電気的に接続されている。第2導電部400は、第1導電部300に電気的に接続されている。一断面(例えば、
図2に示す断面)において、第2導電部400は、第1親液部210の端を覆う部分を有している。
【0031】
本実施形態によれば、第1親液部210を有する第1層200を経由しての水分の侵入を低減することができる。具体的には、本実施形態においては、第1親液部210の端が第2導電部400によって覆われている。すなわち、第1親液部210の端は、外気に露出されていない。したがって、第1親液部210の端からの水分の侵入を低減することができる。
【0032】
本実施形態において、
図1に示すように、発光装置10は、封止部150をさらに備えている。封止部150は、有機EL素子140を封止している。平面視において、第1層200の端の少なくとも一部分は、封止部150の端より内側に位置している。この場合、封止部150によって、第1層200を経由しての水分の侵入を低減することができる。
図1に示すように、平面視において、第1層200の端の全体が封止部150の端より内側に位置していてもよい。或いは、平面視において、第1層200の端の一部分が封止部150の端より外側に位置していてもよい。この場合においても、第1層200のうちの封止部150からの露出部分を第2導電部400によって覆うことで、第1層200を経由しての水分の侵入を低減することができる。
【0033】
図1を用いて、発光装置10の平面レイアウトを説明する。
【0034】
発光装置10は、基板100、有機EL素子140、封止部150、第1層200及び複数の第2導電部400を備えている。
【0035】
平面視において、基板100は、実質的に矩形形状を有している。この矩形は、厳密な矩形でなくてもよく、例えば、丸まった角を有していてもよい。平面視において、基板100は、非矩形形状(例えば、円、星、ハート、環等の形状)を有していてもよい。
【0036】
平面視において、有機EL素子140は、実質的に矩形形状を有している。この矩形は、厳密な矩形でなくてもよく、例えば、丸まった角を有していてもよい。平面視において、有機EL素子140は、非矩形形状(例えば、円、星、ハート、環等の形状)を有していてもよい。平面視において、有機EL素子140の面積は、基板100の面積より小さくなっている。
【0037】
平面視において、封止部150の面積は、有機EL素子140の面積及び第1層200の面積のそれぞれより大きくなっている。
【0038】
平面視において、第1層200の面積は、有機EL素子140の面積より大きくなっている。
【0039】
複数の第2導電部400のうちの一部の第2導電部400は、有機EL素子140の第1電極110(
図2)に電気的に接続しており、複数の第2導電部400のうちの他の一部の第2導電部400は、有機EL素子140の第2電極130(
図2)に電気的に接続されている。したがって、発光装置10の外側から第2導電部400を介して有機EL素子140に駆動電圧を供給することができる。
図1に示す例では、例えば、有機EL素子140の両側のうち一方の側に位置する第2導電部400が有機EL素子140の第1電極110に電気的に接続され、有機EL素子140の両側のうちの他方の側に位置する第2導電部400は有機EL素子140の第2電極130に電気的に接続されていてもよい。
【0040】
【0041】
発光装置10は、基板100、有機EL素子140、封止部150、第1層200(第1親液部210)、第1導電部300及び第2導電部400を備えている。
【0042】
基板100は、第1面102及び第2面104を有している。有機EL素子140、封止部150、第1層200、第1導電部300及び第2導電部400は、基板100の第1面102側に位置している。第2面104は、第1面102の反対側にある。
【0043】
基板100は、有機EL素子140(第1電極110、有機層120及び第2電極130)、封止部150、第1層200、第1導電部300及び第2導電部400を形成するための支持体として機能することができる。基板100は、透光性及び可撓性を有していてもよい。基板100は、単層であってもよいし、又は複数層であってもよい。一例において、基板100は、ガラス基板である。他の例において、基板100は、樹脂基板であってもよく、有機材料(例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)又はポリイミド)を含んでいてもよい。基板100が樹脂基板である場合、基板100の第1面102及び第2面104の少なくとも一方は、無機バリア層(例えば、SiN又はSiON)を有していてもよい。基板100と第1電極110との間には、第1電極110よりも広い領域に、平坦化又は密着性を向上させるため1層以上の有機材料を含む層が存在していてもよい。
【0044】
図4を用いて後述するように、第1層200は、第1親液部210及び撥液部220を有している。第1層200は、例えば、絶縁層である。
図2は、第1層200のうちの第1親液部210の断面を示している。第1導電部300は、第1親液部210上に選択的に位置している。すなわち、第1導電部300は、第1親液部210上に位置する一方で、撥液部220上にはほとんど広がっていない。第1導電部300の位置は、第1親液部210の親液性及び撥液部220の撥液性によって制御することができる。
【0045】
有機EL素子140は、第1電極110、有機層120及び第2電極130を有している。第1電極110は、第1導電部300上に位置している。有機層120は、第1電極110上に位置している。第2電極130は、有機層120上に位置している。第1電極110は、第1導電部300に電気的に接続されている。
【0046】
第1電極110は、陽極として機能することができる。一例において、第1電極110は、金属又は合金を含んでいてもよい。金属又は合金は、例えば、銀又は銀合金である。この例において、第1電極110の厚さは、例えば、5nm以上50nm以下にしてもよい。第1電極110の厚さが上記下限以上である場合、第1電極110の電気抵抗を低くすることができ、第1電極110の厚さが上記上限以下である場合、第1電極110の透過率を高くすることができる。他の例において、第1電極110は、酸化物半導体を含んでいてもよい。酸化物半導体は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)又はIGZO(Indium Galium Zinc Oxide)である。
【0047】
有機層120は、発光層(EML)を含んでおり、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子輸送層(ETL)及び電子注入層(EIL)のうちの少なくとも一を適宜さらに含んでいてもよい。有機層120においては、正孔が第1電極110からEMLに注入され、電子が第2電極130からEMLに注入され、EMLにおける正孔及び電子の再結合によって光が発せられる。
【0048】
第2電極130は、陰極として機能することができる。一例において、第2電極130は、金属又は合金を含んでいてもよい。金属又は合金は、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn及びInからなる群の中から選択される少なくとも1つの金属又はこの群から選択される金属の合金である。
【0049】
図2に示す例において、封止部150は封止膜である。封止膜は、例えば、無機絶縁膜であり、例えば、シリコン酸化物(SiO
2)、アルミニウム酸化物(Al
2O
3)、ジルコニア酸化物(ZrO
2)、チタン酸化物(TiO
2)及びニオブ酸化物(Nb
2O
5)のうちの少なくとも一を含んでいる。封止部150は、封止膜でなくてもよく、例えば、封止缶又は封止基板であってもよい。
【0050】
第2導電部400は、水蒸気バリア性を有する材料、例えば、金属(例えば、銀又はアルミニウム)を含んでいる。第2導電部400は、基板100の第1面102に沿って第1親液部210と並んでいる。第1親液部210の端は、第2導電部400によって覆われている。第2導電部400は、第1導電部300と異なる材料を含んでいてもよいし、又は第1導電部300と同じ材料を含んでいてもよい。
【0051】
第1親液部210の端を第2導電部400によって覆うため、第1親液部210の厚さは、基板100(第1面102)に垂直な方向において、第2導電部400の厚さより小さいことが好ましい。第2導電部400の厚さは、例えば第2導電部400の製造条件の制約から、上限限界を有することがある。この場合、第1親液部210の厚さは、第2導電部400の厚さの上限限界以下であることが好ましい。このような観点から、第1親液部210の厚さは、基板100(第1面102)に垂直な方向において、例えば、1μm以下、好ましくは500nm以下である。さらに、第1親液部210の製造条件から決定される下限限界の観点から、第1親液部210の厚さは、基板100(第1面102)に垂直な方向において、例えば、50μm以上である。
【0052】
第2導電部400の一部分は、封止部150によって覆われており、第2導電部400の他の一部分は、封止部150から露出されている。したがって、発光装置10の外側からの電圧は、第2導電部400の当該他の一部分を経由して、供給させることができる。
【0053】
図3から
図7は、
図1及び
図2に示した発光装置10の製造方法の一例を説明するための図である。
図3及び
図4は、
図1と同様にして、平面図であり、
図5から
図7は、
図3及び
図4に示したA-A断面に相当する位置における断面図である。
【0054】
図3から
図7を用いて、発光装置10の製造方法の概要を説明する。発光装置10の製造方法は、以下の工程を含んでいる。
(a)撥液性を有する第1層200の一部分に光を照射して、第1層200の当該一部分を第1親液部210に変化させる工程(
図3及び
図4)
(b)第1親液部210上に位置する第1導電部300を形成する工程(
図5)
(c)第1導電部300に電気的に接続された有機EL素子140を形成する工程(
図6及び
図7)
(d)第1導電部300に電気的に接続され、一断面において第1導電部300の端を覆う部分を有する第2導電部400を形成する工程(
図7)
【0055】
工程(c)は、以下の工程を含んでいる。
(c1)第1導電部300上に位置する第1電極110を形成する工程(
図6)
(c2)第1電極110上に位置し、EMLを含む有機層120を形成する工程(
図6)
(c3)有機層120上に位置する第2電極130を形成する工程(
図7)
【0056】
図3から
図7を用いて、発光装置10の製造方法の詳細を説明する。
【0057】
まず、
図3に示すように、基板100上に第1層200を形成する。具体的には、光照射によって親液性を呈する感光性撥液性組成物を含む溶液を基板100上にスピンコートする。次いで、基板100を加熱して溶液を乾燥させる。この段階において、第1層200は、感光性撥液性組成物によって撥液性を呈する。
【0058】
次いで、
図4に示すように、第1層200に選択的に光を照射する(工程(a))。第1層200のうちの光照射領域は第1親液部210となり、第1層200のうちの光非照射領域は撥液部220となる。例えばフォトマスクを用いて、第1層200に選択的に光を照射することができる。光は、例えば、紫外線又は可視光であり、好ましくは波長365nmの紫外線である。
【0059】
感光性撥液性組成物は、例えば、酸解離性基を有する化合物と、酸発生剤と、を含んでいてもよい。この例においては、光照射によって、酸解離性基が酸発生剤により脱離して揮発する。この場合、第1親液部210(光照射領域)の厚さを、撥液部220(光非照射領域)の厚さより、薄くすることができる。すなわち、第1層200の表面には、凹部を形成することができる。
【0060】
次いで、
図5に示すように、第1親液部210上に第1導電部300を形成する(工程(b))。具体的には、まず、導電材料を含む溶液を第1親液部210上に塗布する。導電材料は、例えば金属、より具体的には、例えば銀である。溶液の塗布は、例えばインクジェットによって実施される。この例においては、インクジェットヘッドから溶液を第1親液部210に向けて選択的に塗布することができる。第1親液部210の親液性及び撥液部220の撥液性によって、溶液は、撥液部220上には広がりにくくなっており、第1親液部210上に選択的に位置しやすくなっている。次いで、基板100を加熱して、溶液を乾燥させる。このようにして、第1導電部300が形成される。
【0061】
次いで、
図6に示すように、第1導電部300上に第1電極110を形成し(工程(c1))、第1電極110上に有機層120を形成する(工程(c2))。第1電極110は、例えば、導電材料(例えば、金属)を蒸着して形成される。有機層120は、例えば、蒸着又は塗布プロセス(例えば、インクジェット)によって形成される。
【0062】
次いで、
図7に示すように、有機層120上に第2電極130を形成し(工程(c3))、基板100の第1面102上に第2導電部400を形成する(工程(d))。
図7に示す例では、工程(c3)の第2電極130と、工程(d)の第2導電部400とは、同一工程において形成されている。したがって、第2導電部400は、第2電極130と同じ材料を含み、第2導電部400の厚さは、基板100(第1面102)に垂直な方向において、第2電極130の厚さと実質的に等しくなり、例えば、第2電極130の厚さの95%以上105%以下である。この場合、発光装置10の製造プロセスを簡易にすることができる。工程(c3)の第2電極130と、工程(d)の第2導電部400とは、異なる工程において形成されてもよい。
【0063】
次いで、基板100の第1面102上に封止部150を形成する。封止部150は、例えば、原子層堆積(ALD)によって形成される。
【0064】
このようにして、発光装置10が製造される。
【0065】
(変形例1)
図8は、変形例1に係る発光装置10の断面図であり、実施形態の
図2に対応する。変形例1に係る発光装置10は、以下の点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様である。
【0066】
発光装置10は、第2親液部212及び第3導電部302をさらに備えている。第2親液部212は、基板100の第2部分上に位置しており、第1親液部210から離間している。第3導電部302は、第2親液部212上に位置しており、第1導電部300から離間している。第2導電部400は、第1親液部210と第2親液部212の間に位置しており、第1導電部300及び第3導電部302の双方に電気的に接続されており(言い換えると、第3導電部302は、第2導電部400を介して第1導電部300に電気的に接続されている。)、封止部150によって覆われている。第3導電部302の一部分は、封止部150によって覆われている。第3導電部302の他の一部分は、封止部150から露出されている。本変形例においては、発光装置10の外側からの電圧を、第3導電部302、第2導電部400及び第1導電部300を介して、有機EL素子140に供給することができる。
【0067】
本変形例においても、第1親液部210を経由しての水分の侵入を低減することができる。具体的には、本変形例においても、第1親液部210の端が第2導電部400によって覆われている。したがって、第2親液部212を経由して水分が侵入しても、この水分の第1親液部210への侵入を第2導電部400によって遮断することができる。
【0068】
(変形例2)
図9は、変形例2に係る発光装置10の断面図であり、実施形態の
図2に対応する。変形例2に係る発光装置10は、以下の点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様である。
【0069】
第2導電部400は、第1親液部210の一部分(端部)及び第1導電部300の一部分(端部)と重なっている。このため、第2導電部400は、第1親液部210の端だけでなく、第1導電部300の端及び第1導電部300の上面の一部も覆っている。したがって、第1導電部300と第2導電部400との間の接触面積を大きくすることができ、第1導電部300と第2導電部400との間の接触抵抗を低減することができる。
【0070】
(変形例3)
図10は、変形例3に係る発光装置10の断面図であり、実施形態の
図2に対応する。変形例3に係る発光装置10は、以下の点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様である。
【0071】
第1親液部210の端は、第1導電部300の端より、有機EL素子140に対して外側に位置していてもよい。
図10に示す例では、第1層200の表面に凹部が形成されており、第1導電部300の一部分は、第1層200の凹部に埋め込まれている。第1層200の凹部は、例えば、上述したように、感光性撥液性組成物に含まれる酸解離性基を有する化合物と、酸発生剤と、によって形成される。本変形例においては、第1親液部210が位置する領域から第1導電部300を漏れにくくすること(第1導電部300が第1親液部210の端から食み出しにくくすること)ができる。
【0072】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 基板と、
前記基板の第1部分上に位置する第1親液部と、
前記第1親液部上に位置する第1導電部と、
前記第1導電部に電気的に接続された有機EL素子と、
前記第1導電部に電気的に接続され、一断面において前記第1親液部の端を覆う部分を有する第2導電部と、
を備える発光装置。
2. 1.に記載の発光装置において、
前記有機EL素子を封止する封止部をさらに備え、
前記第2導電部の一部分は、前記封止部によって覆われ、前記第2導電部の他の一部分は、前記封止部から露出されている、発光装置。
3. 1.に記載の発光装置において、
前記基板の第2部分上に位置し、前記第1親液部から離間した第2親液部と、
前記第2親液部上に位置し、前記第1導電部から離間した第3導電部と、
前記有機EL素子を封止する封止部と、
をさらに備え、
前記第2導電部は、前記第1親液部と前記第2親液部の間に位置し、前記第1導電部及び前記第3導電部の双方に電気的に接続され、前記封止部によって覆われており、
前記第3導電部の一部分は、前記封止部によって覆われ、前記第3導電部の他の一部分は、前記封止部から露出されている、発光装置。
4. 1.から3までのいずれか一つに記載の発光装置において、
前記第2導電部は、前記第1親液部の一部分と重なっている、発光装置。
5. 1.から4までのいずれか一つに記載の発光装置において、
前記第1導電部及び前記第2導電部は、互いに異なる材料を含む、発光装置。
6. 1.から5までのいずれか一つに記載の発光装置において、
前記有機EL素子は、前記基板上に位置する第1電極と、前記第1電極上に位置し、発光層を含む有機層と、前記有機層上に位置する第2電極と、を有し、
前記第2導電部及び前記第2電極は、互いに同一の材料を含む、発光装置。
7. 1.から6までのいずれか一つに記載の発光装置において、
前記第1親液部の厚さは、前記基板に垂直な方向において1μm以下である、発光装置。
8. 7.に記載の発光装置において、
前記第1親液部の厚さは、前記基板に垂直な方向において500nm以下である、発光装置。
9. 基板と、
前記基板の第1部分上に位置する第1親液部を有する第1層と、
前記第1層の前記第1親液部上に位置する第1導電部と、
前記第1導電部に電気的に接続された有機EL素子と、
前記有機EL素子を封止する封止部と、
を備え、
平面視において、前記第1層の端の少なくとも一部分は、前記封止部の端より内側に位置する、発光装置。
10. 9.に記載の発光装置において、
前記基板の第2部分上に位置し、前記第1親液部から離間した第2親液部と、
前記第1親液部と前記第2親液部の間に位置する第2導電部と、
前記第2親液部上に位置し、前記第1導電部から離間しており、前記第2導電部を介して前記第1導電部に電気的に接続された第3導電部と、
をさらに備え、
前記第3導電部の一部分は、前記封止部によって覆われ、前記第3導電部の他の一部分は、前記封止部から露出されている、発光装置。
11. (a)撥液性を有する第1層の一部分に光を照射して、前記第1層の前記一部分を第1親液部に変化させる工程と、
(b)前記第1親液部上に位置する第1導電部を形成する工程と、
(c)前記第1導電部に電気的に接続された有機EL素子を形成する工程と、
(d)前記第1導電部に電気的に接続され、一断面において前記第1親液部の端を覆う部分を有する第2導電部を形成する工程と、
を含む、発光装置の製造方法。
12. 11.に記載の発光装置の製造方法において、
前記工程(c)は、
(c1)前記第1導電部上に位置する第1電極を形成する工程と、
(c2)前記第1電極上に位置し、発光層を含む有機層を形成する工程と、
(c3)前記有機層上に位置する第2電極を形成する工程と、
を含み、
前記工程(c3)の前記第2電極と、前記工程(d)の前記第2導電部と、は、同一工程内において形成される、発光装置の製造方法。
【符号の説明】
【0073】
10 発光装置
100 基板
102 第1面
104 第2面
110 第1電極
120 有機層
130 第2電極
140 有機EL素子
150 封止部
200 第1層
210 第1親液部
212 第2親液部
220 撥液部
300 第1導電部
302 第3導電部
400 第2導電部