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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】プリント装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/00 20060101AFI20231128BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20231128BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B41J29/00 C
B41J29/00 E
B41J29/38
B41J29/38 102
B41J29/38 103
G06K19/077 220
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019145790
(22)【出願日】2019-08-07
(62)【分割の表示】P 2015119693の分割
【原出願日】2015-06-12
(65)【公開番号】P2020001394
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2019-08-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 仁
【合議体】
【審判長】藤本 義仁
【審判官】古屋野 浩志
【審判官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-27788(JP,A)
【文献】特開2015-66803(JP,A)
【文献】特開2016-187895(JP,A)
【文献】特開2013-186506(JP,A)
【文献】特開2013-186504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00-29/38
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字媒体に印字を行うプリント装置であって、
前記プリント装置の電源がOFFの間に通信端末から印字設定情報を書き込み可能な通信タグと、
前記プリント装置の電源がONになると、電源OFFの間に前記通信タグに書き込まれた前記印字設定情報を取得して保存する記憶部と、
を備え、
前記印字設定情報に基づいて前記プリント装置を動作させ、
前記印字設定情報は、前記印字媒体の種類を問わず、印字濃度又は印字速度の設定を行うための情報であり、
電源ONから電源OFFになる際に、前記記憶部に記憶された前記印字設定情報を前記通信タグに書き込む、
ことを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント装置であって、
前記通信タグから取得した前記印字設定情報に電源OFFになる前に前記記憶部に記憶した設定と異なる設定が含まれる場合は、前記プリント装置の設定を、前記通信タグから取得した前記印字設定情報に基づく設定に変更する、
ことを特徴とするプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字媒体に文字、図形等を印字するプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、NFC(Near Field Communication)用の通信タグが前面に設けられたプリント装置が開示されている。
【0003】
上記の通信タグは、プリント装置とスマートフォン等とのペアリングや、プリント装置とスマートフォン等との無線LAN(Local Area Network)による相互接続を確立させるために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-96717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のプリント装置では、その電源をONにすると、プリント装置の設定を変更するための作業を行うことができる。しかしながら、プリント装置の電源をOFFにすると、プリント装置の設定を変更するための作業を行うことができないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、電源をONにすることなく、設定を変更するための作業を行うことができるプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、印字媒体に印字を行うプリント装置であって、前記プリント装置の電源がOFFの間に通信端末から印字設定情報を書き込み可能な通信タグと、前記プリント装置の電源がONになると、電源OFFの間に前記通信タグに書き込まれた前記印字設定情報を取得して保存する記憶部と、を備え、前記印字設定情報に基づいて前記プリント装置を動作させ、前記印字設定情報は、前記印字媒体の種類を問わず、印字濃度又は印字速度の設定を行うための情報であり、電源ONから電源OFFになる際に、前記記憶部に記憶された前記印字設定情報を前記通信タグに書き込む、ことを特徴とするプリント装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記の態様によれば、プリント装置の電源をONにすることなく、プリント装置の設定を変更するための作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るプリント装置の斜視図である。
図2】通信タグ周辺を前面カバー側から見た図である。
図3】プリント装置における通信タグ周辺の断面を示す模式図である。
図4】プリント装置が梱包箱に収容された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るプリント装置100の斜視図である。
【0012】
プリント装置100は、インクリボン(図示せず)を熱してインクリボンのインクを印字媒体としてのラベル(図示せず)に転写することで印字を行う熱転写方式のプリント装置である。なお、プリント装置100は、例えば、インクジェット方式、感熱方式等により印字を行うプリント装置としてもよい。
【0013】
プリント装置100は、ラベルの移送と印字とを行う印字機構(図示せず)等の内部機構をケース10内に収容して構成される。
【0014】
ケース10は、内部機構の少なくとも一部を覆う複数のカバーをフレーム(図示せず)に固定して構成される。具体的には、ケース10は、フレームと、前面カバー11、12と、側面カバー13、14、15と、背面カバー16と、を備える。前面カバー11、12及び背面カバー16は樹脂製であり、側面カバー13、14、15は金属製である。
【0015】
前面カバー11、12は、板厚が略均一となるように形成される。前面カバー11、12の上部には、プリント装置100の内側に傾斜する傾斜部11a、12aがそれぞれ形成される。傾斜部11a、12aは、プリント装置100を側面から見たときに、プリント装置100の上面の長さが下面の長さより短くなるように傾斜している。
【0016】
前面カバー11の傾斜部11aには、プリント装置100のON/OFFを切り換えるための入力部としての電源ボタン17が設けられる。また、傾斜部11aの内側(プリント装置100内)には、近距離無線通信用の通信タグ18が設けられる。
【0017】
通信タグ18は、例えば、NFC(Near Field Communication)タグ等のRF(Radio Frequency)タグであって、通信タグ18に書き込まれた情報の読み取り及び通信タグ18への情報の書き込みを、スマートフォン等の通信端末から行うことができるようになっている。
【0018】
通信タグ18は、例えば、プリント装置100とスマートフォン等の通信端末とのペアリングや、プリント装置100と通信端末との無線LAN(Local Area Network)による相互接続を確立させるために使用される。
【0019】
また、前面カバー11の中央部には、プリント装置100を操作するための操作ユニット19が設けられる。操作ユニット19は、入力部としての各種操作ボタンで構成される操作ボタン群19a及び各種情報を表示する出力部としてのディスプレイ19bを備える。
【0020】
前面カバー12には、印字されたラベルをプリント装置100の外部に排出するための排出口12bが設けられる。
【0021】
側面カバー14は、側面カバー13側の端部がヒンジを介してフレームに支持されており、ヒンジを中心にして回動させることで開閉することができる。側面カバー14を開いた状態にすることで、インクリボンやラベルの交換、内部機構のメンテナンス等を行うことができる。
【0022】
続いて、図2図3を参照しながら通信タグ18周辺の構造について説明する。
【0023】
図2は、通信タグ18周辺を前面カバー11側から見た斜視図である。図3は、プリント装置100における通信タグ18周辺の断面を示す模式図である。なお、図3に示す断面は、電源ボタン17の中心を通る断面である。
【0024】
通信タグ18は、図2に示すように、通信回路18aと、ループアンテナ18bと、基板18cと、を備える。基板18cの中央部には矩形の孔18dが形成されており、ループアンテナ18bは、基板18cにおける孔18dの周囲に設けられる。通信回路18aは、図3に示すように、ケース10内に収容された制御ユニット20に接続されており、通信タグ18に書き込まれた情報の読み取り及び通信タグ18への情報の書き込みを、制御ユニット20から行うことができるようになっている。
【0025】
通信タグ18の前面カバー11と反対側には、側面からみた形状が三角形のブラケット21が設けられる。
【0026】
ブラケット21は、前面パネル21aと、前面パネル21aの両側に設けられる側面パネル21b、21cと、有する。前面パネル21aの中央部には矩形の孔21d(図3参照)が形成される。
【0027】
前面パネル21aにおける上辺部21e(図3参照)には、2つのフック21fが形成され、下辺部21gには、2つのフック21hが形成される。また、側面パネル21b、21cには、ブラケット21を前面カバー11にねじ(図示せず)で固定するための取付部21i、21jがそれぞれ形成される。
【0028】
前面カバー11の内側には、ブラケット21の取付部21i、21jに対応する位置に、先端にねじ穴が形成された円柱部(図示せず)が形成される。ブラケット21は、取付部21i、21jにそれぞれ形成された孔21k、21lに通信タグ18と反対側からねじ(図示せず)を挿通させて円柱部のねじ穴に締結することで、前面カバー11に固定される。
【0029】
ブラケット21は、図3に示すように、前面カバー11に固定したときに前面パネル21aと前面カバー11の傾斜部11aとが平行となるように形成されている。
【0030】
通信タグ18は、孔18dが2つのフック21fに支持されるとともに外周が2つのフック21hに支持された状態で、ブラケット21の前面パネル21aに載置される。
【0031】
通信タグ18及びブラケット21を前面カバー11に組み付けると、図3に示すように、通信タグ18が前面カバー11における傾斜部11aの内側に沿って配設される。なお、上述したように、前面カバー11は樹脂製である。これによれば、ループアンテナ18bが作る磁界が弱くならないので、通信タグ18の通信性能が低下することを抑制できる。
【0032】
電源ボタン17は、樹脂製であって、前面カバー11の傾斜部11aに形成された孔11bから外部に露出する本体17aと、本体17aから上方に延出するアーム17bと、を有する。アーム17bの上部には、孔17c、17dが形成される。
【0033】
前面カバー11の内側には、電源ボタン17の孔17c、17dに対応する位置に、先端にねじ穴が形成された円柱部11cがそれぞれ形成される。電源ボタン17は、孔17c、17dに前面カバー11と反対側からねじ22を挿通させて円柱部11cのねじ穴に締結することで、前面カバー11に固定される。
【0034】
電源ボタン17は、通信タグ18の孔18d及びブラケット21の孔21dの内側に位置している。言い換えると、通信タグ18は、電源ボタン17の周囲を囲むように配設されている。なお、上述したように、電源ボタン17は樹脂製である。これによれば、ループアンテナ18bが作る磁界が弱くならないので、通信タグ18の通信性能が低下することを抑制できる。
【0035】
ユーザが電源ボタン17を押すと、アーム17bが撓んで本体17aが後方に移動し、制御ユニット20に設けられた電源スイッチ20aが本体17aに押される。これにより、プリント装置100の電源ON/OFFが切り換わるようになっている。
【0036】
なお、通信タグ18は、プリント装置100の電源がOFFであっても、通信端末との間で近距離無線通信を行うことができる。
【0037】
ここで、通信タグ18に書き込み可能な情報としては、例えば、印字濃度や印字速度等の設定、ファームウェアのバージョン、MACアドレス等がある。
【0038】
プリント装置100は、電源OFFの間に新たな設定を通信端末から通信タグ18に書き込んでおくことで、電源ON時に設定を自動的に変更できるようになっている。
【0039】
具体的には、プリント装置100の制御ユニット20は、プリント装置100の電源がONになると、通信タグ18に書き込まれた各種情報を取得し、記憶部20bに保存する。そして、通信タグ18から取得した情報に前回稼働時(電源がOFFになる前)に内部メモリ(図示せず)に記憶(保存)した設定と異なる設定が含まれる場合は、プリント装置100の設定を通信タグ18から取得した設定に変更する。
【0040】
これによれば、プリント装置100の電源をONにすることなく、プリント装置100の設定を変更するための作業を行うことができる。よって、例えば、工場等で多数のプリント装置の設定を変更する場合には、多数のプリント装置の電源をONにする必要がなく、作業性が向上する。
【0041】
また、プリント装置100は、電源ONから電源OFFになる際に、制御ユニット20から通信タグ18にプリント装置100の設定等の情報を書き込むことができる。具体的には、プリント装置100は、現在の設定を内部メモリに記憶した後に、電源OFFになる。これによれば、通信端末により通信タグ18に書き込まれた情報を読み出すことで、プリント装置100の電源をONにすることなく、プリント装置100の設定等の情報を確認することができる。
【0042】
続いて、プリント装置100を上記のように構成することによる作用効果について説明する。
【0043】
上述したように、プリント装置100は、NFC等の近距離無線通信用の通信タグ18を備える。ここで、近距離無線通信用の通信タグは、作業者が操作するインターフェースとして用いられるので、作業者が利用しやすい位置に設けることが好ましい。
【0044】
しかしながら、作業者が利用しやすい位置には、作業者がプリント装置を操作するための操作ユニット等が配設されるため、通信タグを配設するためのスペースを確保できない場合がある。この場合は、通信タグを配設するための専用のスペースを別途設けなければならず、プリント装置が大型化するという問題がある。また、プリント装置の大きさに影響を与えない小型の通信タグを設けることも考えられるが、この場合は、必要な通信距離を確保することが難しい。
【0045】
これに対して、本実施形態の通信タグ18は、印字機構や制御ユニット20等の内部機構の少なくとも一部を覆う前面カバー11の周辺に設けられた電源ボタン17を囲むように配設される。
【0046】
これによれば、電源ボタン17の周囲に存在する空きスペースを利用して通信タグ18を配設できるので、通信タグ18を配設するための専用のスペースを別途設ける必要がない。このように、カバーの周辺に設けられた部品を囲むように通信タグを配設することで、プリント装置の大型化を招くことなく通信タグを設けることができる。また、これによれば、通信タグのループアンテナを大きくできるので、必要な通信距離を確保できる。
【0047】
特に、電源ボタン17等の入力部及びディスプレイ19b等の出力部の周辺には、他の部品を配設することができない小さなスペースが存在することが多い。このため、入力部又は出力部周辺の空きスペースを利用することで、効率よく通信タグを設けることができる。
【0048】
また、近距離無線通信用の通信タグを備えたプリント装置においては、プリント装置を梱包箱に収容したまま、梱包箱の外側から通信タグに対して情報の書き込み又は読み出しを行うことが考えられる。
【0049】
しかしながら、通信タグの通信可能距離が短く梱包箱の外側からの通信ができない場合は、プリント装置を梱包箱から出して作業をする必要がある。
【0050】
これに対して、本実施形態では、前面カバー11の上部にプリント装置100の内側に傾斜する傾斜部11aが形成され、通信タグ18は、傾斜部11aの内側に沿って配設される。
【0051】
このようなプリント装置100は、出荷時等に、直方体状に形成された梱包箱に梱包される。その際、プリント装置100に形成された傾斜部11aと梱包箱との間には、図4に示すように、スペースSが形成される。このため、通信タグ18の通信可能距離が短く、梱包箱の外側からでは通信端末との通信ができない場合であっても、図4に示すように、梱包箱の上面を開梱するだけで、通信端末を通信タグ18との通信が可能な距離まで近づけることができる。よって、プリント装置100全体を梱包箱から出すことなく作業を行うことができ、作業性が向上する。
【0052】
また、本実施形態では、通信タグ18が囲む部品は樹脂製の電源ボタン17である。
【0053】
これによれば、ループアンテナ18bが作る磁界が弱くならないので、通信タグ18の通信性能が低下することを抑制できる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0055】
例えば、上記実施形態では、通信タグ18が、前面カバー11の傾斜部11aの内側に配設されている。しかしながら、通信タグ18は、樹脂製の前面カバー11、12、及び背面カバー16の内側に沿っていれば、プリント装置100内のどの位置に配設してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、通信タグ18を、電源ボタン17を囲むように配設しているが、他の部品を囲むように配設してもよい。
【符号の説明】
【0057】
100 プリント装置
10 ケース
11 前面カバー(樹脂製のカバー)
11a 傾斜部
11b 孔
11c 円柱部
12 前面カバー(樹脂製のカバー)
12a 傾斜部
12b 排出口
13 側面カバー
14 側面カバー
15 側面カバー
16 背面カバー(樹脂製のカバー)
17 電源ボタン(部品、入力部)
17a 本体
17b アーム
17c 孔
17d 孔
18 通信タグ
18a 通信回路
18b ループアンテナ
18c 基板
18d 孔
19 操作ユニット
19a 操作ボタン群(部品、入力部)
19b ディスプレイ(部品、出力部)
20 制御ユニット(内部機構)
20a 電源スイッチ
20b 記憶部
21 ブラケット
21a 前面パネル
21b 側面パネル
21c 側面パネル
21d 孔
21e 上辺部
21f フック
21g 下辺部
21h フック
21i 取付部
21j 取付部
21k 孔
21l 孔
22 ねじ
図1
図2
図3
図4