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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20231128BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20231128BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20231128BHJP
   H01L 31/08 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H01L25/08 H
H01L31/08 S
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2019157290
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021034702
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】深谷 庸一
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/194030(WO,A1)
【文献】特表2006-517344(JP,A)
【文献】特開2013-065761(JP,A)
【文献】国際公開第2015/040798(WO,A1)
【文献】特開2009-164314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子が形成された第1基板を有する第1チップと、前記半導体素子と電気的に接続された回路の一部を含み、前記第1基板とは線膨張係数の異なる第2基板を有する第2チップと、前記第1基板との線膨張係数の差が前記第1基板と前記第2基板との線膨張係数の差よりも小さい第3基板を含む第3チップと、を有し、前記第2チップが前記第1チップと前記第3チップに挟まれた中間部材を準備する工程と、
前記中間部材を加熱して、前記第1チップと前記第2チップとを接合する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
化合物半導体を含み、半導体素子が形成された第1基板を有する第1チップと、シリコンを含み、前記半導体素子と電気的に接続された回路の一部を含む第2基板を有する第2チップと、線膨張係数が3×10-6/K以上6.5×10-6/K以下の範囲内にある第3基板を有する第3チップ、を有し、前記第2チップが前記第1チップと前記第3チップに挟まれた中間部材を準備する工程と、
前記中間部材を加熱して、前記第1チップと前記第2チップとを接合する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
中間部材を準備する工程において、常温接合された前記第2チップと前記第3チップとを準備することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記常温接合は、紫外線硬化性の接着剤による接合であることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記紫外線硬化性の接着剤は、透光性を有することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記中間部材を加熱する工程の前に、前記第3チップに接合された前記第2基板の前記第3チップの側の面に対向する面を薄化する工程を備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記薄化する工程の後の前記第2基板の厚みは、前記第1基板の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2基板の前記第3チップの側の面に対向する面を薄化する工程の後に、前記第2基板に貫通電極を形成することを特徴とする請求項6または7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体素子は、受光素子および発光素子の少なくとも一方であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記回路は、前記半導体素子の信号の読み出し回路および前記半導体素子への電位の供給を制御する制御回路の少なくとも一方であることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記接合する工程の後に、前記第3チップを除去することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1基板は、3-5族半導体を含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1チップと前記第2チップとを接合する工程において、前記半導体素子と電気的に接続され、銅を含む第1接合電極と、前記回路と電気的に接続され、銅を含む第2接合電極と、を接合することを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1チップは第1絶縁層を有し、
前記第2チップは第2絶縁層を有し、
前記第1チップと前記第2チップとを接合する工程において、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層を接合することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
化合物半導体を含み、半導体素子が形成された第1基板を有する第1チップと、
前記第1チップと接合され、前記半導体素子と電気的に接続された回路の一部を含み、前記第1基板とは線膨張係数が異なり、シリコンを含む第2基板を有する第2チップと、
前記第2チップと接合され、前記第1基板との線膨張係数の差が前記第1基板と前記第2基板との線膨張係数の差よりも小さい第3基板を含む第3チップと、が順に積層された半導体装置。
【請求項16】
化合物半導体を含み、半導体素子が形成された第1基板を有する第1チップと、
前記第1チップと接合され、前記半導体素子と電気的に接続された回路の一部を含み、シリコンを含む第2基板を有する第2チップと、
前記第2チップと接合され、線膨張係数が3×10-6/K以上6.5×10-6/K以下の範囲内にある第3基板を有する第3チップと、が順に積層された半導体装置。
【請求項17】
前記半導体素子は、受光素子および発光素子の少なくとも一方であることを特徴とする請求項15または16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記第3チップは、透光性を有することを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記第3チップと前記第2基板との間に透光性の接着剤が配されていることを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記第2基板の厚みは、前記第1基板の厚みよりも薄いことを特徴とする請求項15乃至19のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記第1基板は、3-5族半導体を含むことを特徴とする請求項15乃至20のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記第1基板に前記半導体素子が複数配され、複数の前記半導体素子のそれぞれの間に素子分離溝が配されることを特徴とする請求項15乃至21のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項23】
前記素子分離溝は絶縁膜を含むことを特徴とする請求項22に記載の半導体装置。
【請求項24】
断面視において、前記回路は、複数の前記半導体素子の間に配されることを特徴とする請求項15乃至23のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項25】
前記回路は、リセットトランジスタおよび増幅トランジスタおよび選択トランジスタの少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項15乃至24のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項26】
前記第2基板は第1面と第2面を有し、前記第1面側に配線層が配され、前記第1面から前記第2面を貫通するように貫通電極が配され、前記貫通電極は、前記配線層に設けられているメタル層と接続されることを特徴とする請求項15乃至25のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項27】
前記回路は、前記配線層を介して前記貫通電極と接続されることを特徴とする請求項26に記載の半導体装置。
【請求項28】
前記第1チップに絶縁膜を含む共通電極溝が配され、前記共通電極溝内に共通電極が配されることを特徴とする請求項15乃至27のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項29】
前記第1基板は、GaAs、InAs、InP、AlP、GaAs、GaAs、AlGaN、GaNからなる群から選択される少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項15乃至28のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項30】
前記第1基板は、InP、InGaAsからなる群から選択される少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項15乃至28のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項31】
前記第3基板は、ガラスまたは3-5族半導体のいずれかを含むことを特徴とする請求項15乃至30のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項32】
請求項15または16に記載の半導体装置を備える光電変換システムであって、
前記半導体装置は、前記半導体素子として受光素子を備える光電変換装置であり、
前記光電変換装置の撮像面に像を結像する光学系と、
前記光電変換装置から出力された信号を処理する信号処理部と、
を備えることを特徴とする光電変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体材料により構成された受光素子及び発光素子の少なくとも一方含む半導体装置への関心が高まっている。化合物半導体材料としては、InP、InGaAsなどの化合物半導体材料が望まれている。これらの化合物半導体材料は、Siに比べてバンドギャップエネルギーが大きいため、Siよりも長波長の光を受光又は発光することができる。
【0003】
一方、読み出しやスイッチの機能を有する回路は、シリコンを用いて構成することが好ましい。そのため、長波長の光である赤外領域の受光素子又は発光素子を有する半導体装置は、受光素子又は発光素子を有する化合物半導体基板と回路が設けられたシリコン基板とを電気的・機械的に接合することにより製造される。
【0004】
非特許文献1には、CMOS回路が形成されたシリコン基板と、半導体素子が形成された化合物半導体基板と、を接合した半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】C. L. Chen et al., “Wafer-Scale 3D Integration of InGaAs Image Sensors with Si Readout Circuits”, IEEE International Conference on 3DSystem Integration, 2009. 3DIC 2009, pp. 1-4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、シリコン基板と化合物半導体とは常温接合により接合されるが、はんだボールやはんだめっきバンプを加熱して接合する方法の方が接合の信頼性を高めることができる。一方で、化合物半導体とシリコンとは線膨張係数が異なるため、加熱して接合するプロセスでは、基板の反りや変形による歪みが発生する。
【0007】
本発明は線膨張係数の異なる基板同士を加熱接合しても接合時の重ね合わせアライメントずれや基板やチップの反りや変形を低減できるとともに接合や実装の信頼性が高い半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、半導体素子が形成された第1基板を有する第1チップと、前記半導体素子と電気的に接続された回路の一部を含み、前記第1基板とは線膨張係数の異なる第2基板を有する第2チップと、前記第1基板との線膨張係数の差が前記第1基板と前記第2基板との線膨張係数の差よりも小さい第3基板を含む第3チップと、を有し、前記第2チップが前記第1チップと前記第3チップに挟まれた中間部材を準備する工程と、前記中間部材を加熱して、前記第1チップと前記第2チップとを接合する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の他の一観点によれば、化合物半導体を含み、半導体素子が形成された第1基板を有する第1チップと、シリコンを含み、前記半導体素子と電気的に接続された回路の一部を含む第2基板を有する第2チップと、線膨張係数が3×10-6/K以上6.5×10-6/K以下の範囲内にある第3基板を有する第3チップ、を有し、前記第2チップが前記第1チップと前記第3チップに挟まれた中間部材を準備する工程と、前記中間部材を加熱して、前記第1チップと前記第2チップとを接合する工程と、を有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の他の一観点によれば、化合物半導体を含み、半導体素子が形成された第1基板を有する第1チップと、前記第1チップと接合され、前記半導体素子と電気的に接続された回路の一部を含み、前記第1基板とは線膨張係数異なり、シリコンを含む第2基板を有する第2チップと、前記第2チップと接合され、前記第1基板との線膨張係数の差が前記第1基板と前記第2基板との線膨張係数の差よりも小さい第3基板を含む第3チップと、が順に積層された半導体装置が提供される。
【0011】
本発明の他の一観点によれば、化合物半導体を含み、半導体素子が形成された第1基板を有する第1チップと、前記第1チップと接合され、前記半導体素子と電気的に接続された回路の一部を含み、シリコンを含む第2基板を有する第2チップと、前記第2チップと接合され、線膨張係数が3×10-6/K以上6.5×10-6/K以下の範囲内にある第3基板を有する第3チップと、が順に積層された半導体装置が提供される。また、本発明の他の一観点によれば、化合物半導体を含み、半導体素子が形成された第1基板を有する第1チップと、前記第1チップと接合され、前記半導体素子と電気的に接続された回路の一部を含み、シリコンを含む第2基板を有する第2チップと、が積層され、前記回路は、前記半導体素子からの信号を読み出す読み出し回路および前記半導体素子への電位の供給を制御する制御回路の少なくとも一方であり、前記第1チップは、第1接合電極と第1絶縁層とを有し、前記第2チップは、第2接合電極と第2絶縁層とを有し、前記第1接合電極と前記第2接合電極、および、前記第1絶縁層と前記第2絶縁層とがそれぞれ接合されていることを特徴とする半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、線膨張係数の異なる材料で構成された複数の基板を加熱接合しても、基板の反りの発生を低減できるとともに、接合アライメントずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態の半導体装置を示す断面図である。
図2】第1の実施形態の半導体装置を示す平面図である。
図3】第1の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図4】第2の実施形態の半導体装置を示す断面図である。
図5】第3の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図6】第4の実施形態の光電変換システムの構成を示すブロック図である。
図7】第5の実施形態による光電変換システムおよび移動体の概略図である。
図8】第5の実施形態による光電変換システムの動作を示すフロー図である。
図9】第6の実施形態による照明装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、本発明を限定するものではない。各図面が示す部材の大きさや位置関係は、説明を明確にするために誇張していることがある。以下の説明において、同一の構成については同一の番号を付して説明を省略することがある。
【0015】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置について、図1を参照しながら説明する。図1は第1の実施形態に係る半導体装置の断面図である。半導体装置は、第1チップ10と、第2チップ20と、第3チップ30と、が順に積層されて構成されている。第1チップ10は、化合物半導体により構成される第1基板110と、第1基板110に形成された半導体素子120を含む。半導体素子120は、化合物半導体により構成される。第2チップ20は、シリコンを含み、半導体素子120と電気的に接続された回路を含む。第3チップ30は、第1チップ10との線膨張係数の差が第1チップ10と第2チップ20との線膨張係数の差よりも小さい第3基板を含む。図1では、第3基板により第3チップ30が構成されている。
【0016】
以下では、半導体素子120が受光素子である場合について説明する。この場合は、回路130とは、例えば、受光素子からの信号を読み出す読み出し回路である。なお、半導体素子120は受光素子に限られず、発光素子でもよい。半導体素子120が発光素子である場合の回路130とは、例えば、発光素子の発光のオンオフを制御する制御回路である。つまり、発光素子への電位の供給を制御する制御回路である。他の実施形態についても同様である。
【0017】
第2チップ20に含まれる第2基板102には、読み出し回路を設ける観点から、ウェハプロセス技術や集積化技術に蓄積のあるシリコン基板が好適に用いられる。第2基板102とは別の第1基板110に半導体素子120を搭載している主たる理由は、回路130の一部を含むシリコンとは光吸収特性の異なる材料の基板を用いるためである。かかる観点から、第1チップ10に含まれる第1基板110の材料には、シリコンとは異なる材料、例えば化合物半導体が好適に用いられる。
【0018】
第1基板110に含まれる化合物半導体とは、例えば、3-5族半導体を含む。例えば、GaAs、InAs、InP、AlP、GaAs、GaAs、AlGaN、GaNからなる群から選択される少なくともいずれか1つを含む。なお、3元以上の混晶の化合物半導体であってもよい。これらの材料は、Siのバンドギャップよりも広いバンドギャップを有する。したがって、Siでは吸収できない波長の光に対応することができ、化合物半導体とSiとの双方の基板を使う必要性が出てくる。好ましくはInP、InGaAsからなる群から選択される少なくともいずれか1つを用いる。
【0019】
具体的には、第1チップ10は、第1基板110を構成する化合物半導体基板(成長基板)、第1導電型の半導体層111、活性層112、第2導電型の半導体層113を含む。上述の通り、第1基板110の化合物半導体としては、InP基板、GaAs基板等が好ましい。InP基板やGaAs基板上に結晶成長可能な、InGaAs,GaAsSb,AlGaInAsP系などの材料が持つ吸収波長帯域は、単結晶シリコンの吸収波長帯域よりも長波長側である。第1チップ10は、サファイア基板などの別の基板上にInP層等の化合物半導体層が設けられたものでもよい。本実施形態では、第2チップ20の材料としてシリコン基板を、第1チップ10の材料としてInP基板を用いた例を説明するが、各基板の材料は必要に応じて適宜選択することができる。
【0020】
半導体素子120は、第1基板110に形成されている。半導体素子120は、少なくとも、第1導電型(例えばn型)の半導体層111と、第2導電型(例えばp型)の半導体層113と、半導体層111と半導体層113との間に形成された活性層112とを有する。
【0021】
図1では、第1基板110に複数の半導体素子120が形成され、各半導体素子120間に素子分離溝103が形成されている。共通電極溝104は、複数の半導体素子120が設けられる領域とそれ以外の領域と分離して形成している。半導体素子120が受光素子の場合は、複数の半導体素子120が設けられる領域とは画素領域を指す。
【0022】
第1チップ10の半導体素子120が形成されている側の面と第2チップ20の回路130が形成されている側の面とが接合されており、半導体素子120と回路130とは電気的に接続されている。半導体素子120と回路130とにより画素が構成されている。
【0023】
図1では、第1チップ10と第2チップ20との間には、絶縁層119が配されている。これにより、半導体素子間の電流リークを抑制している。絶縁層119は、例えば、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜の少なくとも一方を含んで構成することができる。
【0024】
第2チップ20は、シリコンにより構成される第2基板102と、配線層116とを含む。配線層116はメタル層107を含む。第2チップ20の回路130は、貫通電極105aを介して、配線層116に形成されたメタル層107と接続されている。また、貫通電極105aとメタル層107を通じて、半導体素子120のトランジスタとコンタクト106とは電気的に接続されている。配線層116は、第2基板102と第3チップ30との間に配されている。
【0025】
第3チップ30と第2チップ20とは、例えば、紫外線硬化性の接着剤により接合される。これに限らず、第3チップ30と第2チップ20とは、酸化膜や薄金属膜を介して接合されていてもよい。第3チップ30と第2チップ20とは、反り抑制の観点から、常温で接合されることが好ましい。
【0026】
第3チップ30は、線膨張係数が第1基板110と近ければ近いほど良い。これにより、基板の反りを低減することができる。第1基板110が、3-5族半導体を含む場合は、第3チップ30は、線膨張係数が3×10-6/K以上6.5×10-6/K以下の範囲内にあることが好ましい。具体的には、線膨張係数が第1基板110に近いガラスや、第1基板110と同じ線膨張係数の3-5族半導体を用いることができる。線膨張係数が第1基板110に近いガラスとは、例えば、線膨張係数が4×10-6/K以上5.5×10-6/K以下の範囲内にあるガラスである。
【0027】
第3チップ30の厚みは第1基板110と同じ厚みであることが好ましい。半導体素子120が受光素子および発光素子の少なくとも一方である場合において、第3チップ30側から光を入射または出射させる場合には、使用する波長に対して透光性を有する材料を選択することが好ましい。透光性を有するとは、例えば、使用する波長の光に対して70%以上の透過率を有することをいう。なお、光は第1チップ10の第1基板110側から入射または出射してもよい。この場合は、第3チップ30の材料は透光性を有している必要はない。
【0028】
半導体素子120の半導体層113上に接合電極108bが配され、第2チップ20の回路と電気的に接続された接合電極108aと接続されている。接合電極108a、108bとしては、例えば、銅などの金属を用いることができる。
【0029】
共通電極109は、第1導電型の半導体層111と接合電極108bとを接続し、貫通電極105bと接続した接合電極108aと電気的に接続している。このようにして半導体素子120を構成する受光素子で発生したキャリアを、第2チップ20の回路に伝達することができる。
【0030】
図2は、第1の実施形態に係る半導体装置の接合面近傍を示す平面図である。図2は、2行2列の行列状に配された4つの画素を示している。なお、図1と同じ機能を有する部分には同じ符号を付してある。
【0031】
前述の通り、第2チップ20は、回路130の一部を含む。図2では、回路130は、複数のCMOSトランジスタから構成される画素トランジスタである。第2基板102には、CMOSトランジスタのソース領域およびドレイン領域などの、各種の半導体領域が配される。画素トランジスタとは、具体的には、リセットトランジスタ205、増幅トランジスタ206、選択トランジスタ207の少なくともいずれかを含む。第2チップ20には、画素トランジスタのゲート電極が配され、配線層116には、導電部材を含む複数の配線が配される。各画素には駆動信号を伝達する配線が配され、リセット線201、電源線202、セレクト線203、出力線204で構成されている。リセット線201から来た信号はリセットトランジスタ205を駆動する。セレクト線203から選択トランジスタ207を駆動して、増幅トランジスタ206で増幅された信号を出力線204に出力する。リセットトランジスタ205と増幅トランジスタ206につながる配線にコンタクト106を接続する。
【0032】
貫通電極105aは、半導体素子120の半導体層113のある部分に形成される。素子分離溝103は、平面視で半導体素子120を取り囲んで形成される。素子分離溝103を跨ぐようにメタル層107を配置し、コンタクト106と貫通電極105bを接続する。上記の構成で、半導体素子の内部の信号を増幅トランジスタ206に取り出すことができる。増幅トランジスタ206では、半導体素子の内部の信号の大きさに応じて、信号が増幅され、出力線204に出力することができる。
【0033】
次に、本実施形態の効果について説明する。比較例は、第3チップを有さない半導体装置である。
【0034】
本実施形態では、第1チップ10の共通電極109および半導体素子120と接続する接合電極108bと、第2基板に配された貫通電極105a、105bと接続する接合電極108bとは電気的に接続されていなくてはならない。例えば、InP基板とシリコン基板は、それぞれ線膨張係数が4.5×10-6/Kと2.4×10-6/Kである。したがって、比較例において、加熱温度175℃で基板接合した場合は、距離75mmにおける寸法変化の差は、約27μmとなる。これは、接合時の重ね合わせアライメントずれが、数μmの画素サイズに対して非常に大きいことになる。重ね合わせアライメントずれのマージンを考慮すると接合電極が大きくなり、画素の狭ピッチ化が難しくなる。
【0035】
これに対して、本実施形態では、第1チップ10の第1基板110と線膨張係数の近い基板を第3チップとして用い、第2チップの第2基板102が間に位置するように積層している。つまり、線膨張係数が実質的に等しい第1基板110と第3チップ30とで第2基板102を挟んで加熱接合している。これにより、上下の第1基板110と第3チップ30に追従して、第2基板102が伸び、アライメントずれを低減することができる。これにより、第1基板110と第2基板102との間で線膨張係数の違いがあるとしても、第3チップ30があることにより反りを生じにくくすることができる。具体的には、線膨張係数の違う第2基板102を第1基板110と第3チップ30とで挟むことで、反りの発生を打ち消すことができる。したがって、第1チップ10に含まれる第1基板110と第2チップ20に含まれる第2基板102とのアライメントずれを小さくできる。また、第2基板102の厚みが第1基板110よりも薄い方がずれを低減する効果が大きく、狭ピッチの画素のデバイスを提供することができる。また、同様に加熱接合や加熱実装の際に生じる基板の反りや変形を低減することができ、基板の反りによる剥がれや実装不良が発生しないため、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0036】
次に、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図1図3(a)~(f)を参照しながら説明する。上述の説明と同じ構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0037】
まず、図3(a)に示すように、第1チップ10を準備する。具体的には、第1基板110を構成するInP基板上に、半導体層111を構成するn型InPバッファ層、活性層112を構成するInGaAs層、半導体層113を構成するInP層の順でエピタキシャル成長する。これにより、第1基板110に半導体素子120が形成される。第1基板110の厚みは、例えば625μmである。InGaAs層のInおよびGaの組成は、第1基板110に格子整合する組成とする。次に、第1チップ10に、半導体素子120ごとに分離するための素子分離溝103と共通電極溝104を形成する。素子分離溝103および共通電極溝104は、第1チップ10の第2導電型の半導体層113側の面から第1導電型の半導体層111に達する深さまで形成する。素子分離溝103と共通電極溝104は、ドライエッチングまたはウェットエッチングによって形成する。
【0038】
半導体素子120内に、接合電極108bを、共通電極溝104内に共通電極109を形成する。共通電極109は、活性層112と第2導電型の半導体層113とは絶縁されており、第1導電型の半導体層11と電気的につながっている。電極材料としてはAu/Tiなど、第2導電型の半導体層113と良好に導通する材料であれば良く、スパッタや蒸着などの成膜方法で形成する。次に、接合電極108b以外の第1チップ10の表面には、絶縁層119bを形成する。第1チップ10と第2チップ20の接合強度を上げるには、素子分離溝103および共通電極溝104に絶縁層を埋め込み、CMP(Chemical Mechanical Polish)などによって表面を平滑にする。これにより、溝に相当する部分も接合面とすることができるため、接触面積を増やすことができる。
【0039】
次に、図3(b)で示すように、第2チップ20を準備する。第2チップ20の第2基板102の表面には、MOSトランジスタが形成されている。そして、第2基板102のMOSトランジスタが形成されている側の面に、配線層116を形成する。
【0040】
次に、図3(c)で示すように、第2チップ20の表面に形成された配線層116と、第3チップ30と、を接合する。接合は、紫外線照射で硬化する紫外線硬化樹脂を用いた接合、酸化膜をプラズマ活性化させた接合、薄い金属層を介した拡散接合などの方法を用いることができる。いずれの接合方法においても、線膨張係数の違いを考慮すると、各半導体基板自体を加熱することなく、常温接合するのが好ましい。なお、第3チップ30として、加熱しても反りが生じない材料を用いる場合は、第3チップ30および第2基板102に反りが生じない程度に加熱して接合してもよい。
【0041】
次に、図3(d)で示すように、第2チップ20と第3チップ30とを接合した状態で、第2チップ20の配線層116が形成されている側の面に対向する面を研削して薄化する。研削は、例えば、バックグラインド装置で行う。研削後の第2チップ20の厚みが10μmになるまで薄化する。次に、バックグラインド装置による基板の切削キズをCMP研磨装置で除去する。第2チップ20を選択比が異なる材料で構成することで、第2チップ20における基板厚さの面内均一性を高くすることができる。例えば、第2チップ20として、シリコン基板とシリコン基板の間にシリコン酸化膜を挿入したSOI基板を用いる場合を想定する。この場合において、シリコンのドライエッチングプロセスはシリコン酸化膜との選択比が100程度と大きく、シリコン酸化膜をエッチングストップ層として機能させることができる。あるいは、不純物濃度が大きく異なるシリコン基板を用いる方法がある。p型シリコンとn型シリコンでエッチング速度が異なる薬液として、フッ化水素酸と硝酸、酢酸の混合液を用いることで、面内均一性の高い基板厚さを実現することができる。
【0042】
次に、図3(e)で示すように、第2チップ20を薄く研磨した面に絶縁層119aを形成する。図3(d)と図3(e)とは反転している。絶縁層119aの第2チップ20側とは反対側の面から貫通電極105a、105bを形成する。貫通電極105a、105bは、絶縁層119a、第2チップ20を貫通し、配線層116に含まれるメタル層107まで到達する。図3(e)では、異なる高さの貫通電極105a、105bを形成しているが、必須ではなく、同じ高さの貫通電極が形成されていてもよい。そして、貫通電極105a、105bの上部に、接合電極108aをそれぞれ形成する。絶縁層119aは、接合電極108aの周囲に形成されている。絶縁層119aは例えばプラズマCVD法により形成する。貫通電極105a、105bは一般的な半導体プロセスを用いて作製することができる。
【0043】
次に、図3(f)で示すように、第1チップ10、第2チップ20、第3チップ30を順に積層する。これにより、接合前の第1チップ10、第2チップ20、及び第3チップ30が順に積層された中間部材ができる。第1チップ10の接合電極108aと第2チップ20の接合電極108bとが電気的に接続されるように、第1チップ10と第2チップ20とを接合する。接合強度を確保するためには、加熱して接合する方法を用いる。
【0044】
図示していないが、図3(f)の工程の後に、第1チップ10の第1基板110側、または第3チップ側から実装に必要な貫通電極およびパッドなどを形成することもできる。
【0045】
以上説明した通り、本実施形態では、線膨張係数のほぼ等しい第1基板110と第3チップ30とで、それらとは異なる線膨張係数の第2基板102を挟んで加熱接合している。これにより、第1基板110および第3チップ30に追従して第2基板102が伸びるため、アライメントずれを低減でき、狭ピッチの画素のデバイスを提供することができる。また、同様に加熱接合や加熱実装の際に生じる基板の反りや変形を低減することができ、基板の反りによる剥がれや実装不良が発生しないため、信頼性の高いデバイスを提供することができる。
【0046】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図4を用いて説明する。本実施形態は、第1の実施形態で説明した半導体装置を不図示の実装基板に実装した後に、第3チップ30および接着剤117を取り除く点で第1の実施形態と異なる。以下で説明する事項以外は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0047】
図4は、第1の実施形態の図3(a)~(f)までと同様に作製した後で、実装基板に接着剤で実装する。その後、第3チップ30および接着剤117を除去する。半導体装置の信頼性試験を行う場合は、信頼性試験を行った後に第3チップ30および接着剤117の除去を行うことが好ましい。第3チップ30および接着剤117は、例えば、有機溶剤により接着剤117を剥離して除去することができる。
【0048】
本実施形態でも、第1の実施形態と同様の効果がある。また、実装基板への実装工程における加熱プロセスや、信頼性試験における加熱サイクルで生じる基板の反りや変形を低減することができ、基板の反りによる剥がれや実装不良が発生しにくい。したがって、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【0049】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態の製造方法について、図5(a)~(e)を用いて説明する。本実施形態は、素子分離溝103および共通電極溝104に絶縁層を埋め込まない点が第1の実施形態と異なる。以下で説明する事項以外は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0050】
まず、図5(a)に示すように、第1基板110に半導体素子120を形成し、素子分離溝103および共通電極溝104を形成する。ここまでは、図3(a)を用いて説明した事項と同様である。その後、素子分離溝103および共通電極溝104には絶縁層を埋め込まずに工程を進める。したがって、半導体素子120の周囲には絶縁材料等が埋め込まれていない凹部が形成されることになる。
【0051】
次に、図5(b)~(d)では、図3(b)~(d)と同様に、第2チップ20の回路を形成する工程と、第2チップ20と第3チップ30とを接合する工程と、第2チップ20を薄化する工程と、を実施する。第2チップ20を薄化する工程の後に、図5(d)に示すように、表面保護層として、水素を含む絶縁層119aを形成する。絶縁層119aの材料として、シリコン酸化膜またはシリコン窒化膜などの絶縁膜を用いることができる。絶縁層119aは、プラズマCVD法などにより成膜することができる。
【0052】
次に、図5(e)で示すように、第1チップ10の上部に形成された絶縁層119bと第2チップ20に形成された絶縁層119aとが接着剤121を介して接合される。素子分離溝103や、共通電極溝104には、接着剤121が充填される。接合強度を上げるためには、熱硬化型の接着剤で加熱しながら接合する方法が好ましい。本実施形態においてもアライメントずれを低減することができるため、狭ピッチ画素の半導体装置を作製することができる。さらに接合時の加熱プロセスにおいて生じる基板の反りや変形を低減することができる。
【0053】
次に図5(f)で示すように、第3チップ30および接着剤117を除去する。第3チップ30および接着剤117を除去した後に、配線層116、第2チップ20、絶縁層119a、接着剤121を貫通し接合電極108bに達する深さまで溝を形成する。そして、貫通電極105a、105bを形成する。そして、配線層116の一部を貫通し、配線層116に含まれるメタル層107に接続された貫通電極105cを形成する。貫通電極105a、105b、105cは同時に形成してもよい。各貫通電極105a、105b、105cは一般的な半導体プロセスを用いて作製することができる。さらに、貫通電極105aと貫通電極105cおよび、貫通電極105bと貫通電極105cを接続するメタル層122を形成する。メタル層122は、アルミニウム、チタン、及び銅の少なくともいずれかを含む。メタル層122は、アルミニウム、チタン、及び銅の少なくともいずれかを含む金属膜を成膜し、フォトリソグラフィにより配線として機能させたい部分に金属膜を残存させることにより形成する。
【0054】
次に、図5(g)で示すように、第2基板102に形成された配線層116と、第3チップ30とを接着剤117で接合する。接着剤による接合の他に、酸化膜表面を介したプラズマ活性化接合、薄い金属層を介した拡散接合などの方法を用いて接合することができる。常温で接合するのが好ましいが、加熱して接合してもよい。図5(g)では、第1チップ10と第2チップ20とが接合されているため、第3チップ30と第2チップ20との接合に加熱接合を用いたとしても、第2基板102の反りを抑制することができる。第3チップ30としては、図5(f)で示す第3チップ30の除去の工程において除去した第3チップ30を用いてもよいし、新たに別の基板を用いてもよい。いずれにせよ、第2チップ20に接合する第3チップ30としては、第1基板110との線膨張係数の差が第1基板110と第2基板102との線膨張係数の差よりも小さい基板を用いる。つまり、第1基板110の線膨張係数に近い基板を第3チップ30として用いる。
【0055】
本実施形態においても、加熱接合や加熱実装の際に生じる基板の反りや変形を低減することができ、基板の反りによる剥がれや実装不良が発生しない。したがって、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0056】
なお、図5(g)の第3チップ30の接合工程は必須ではない。図5(g)に示す第2チップ20と第1チップ10との接合工程において、不図示の実装基板に第1チップ10と第2チップ20の接合体を実装する場合は、その後の工程で加熱実装を行う必要がなくなる。したがって、メタル層122を形成した後に第3チップ30を接合する必要はなくなる。ただし、信頼性試験における加熱サイクルで生じ得る基板の反りを考慮すると、第3チップ30を接合することが好ましい。
【0057】
(第4の実施形態)
図6は、本実施形態に係る光電変換システム1200の構成を示すブロック図である。本実施形態の光電変換システム1200は、光電変換装置1204を含む。ここで、光電変換装置1204は、上述の実施形態で述べた半導体装置のいずれかを適用することができる。光電変換システム1200は例えば、撮像システムとして用いることができる。撮像システムの具体例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダー、監視カメラ等が挙げられる。図6では、光電変換システム1200としてデジタルスチルカメラの例を示している。
【0058】
図6に示す光電変換システム1200は、光電変換装置1204、被写体の光学像を光電変換装置1204に結像させるレンズ1202、レンズ1202を通過する光量を可変にするための絞り1203、レンズ1202の保護のためのバリア1201を有する。レンズ1202および絞り1203は、光電変換装置1204に光を集光する光学系である。
【0059】
光電変換システム1200は、光電変換装置1204から出力される出力信号の処理を行う信号処理部1205を有する。信号処理部1205は、必要に応じて入力信号に対して各種の補正、圧縮を行って出力する信号処理の動作を行う。光電変換システム1200は、更に、画像データを一時的に記憶するためのバッファメモリ部1206、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)1209を有する。更に光電変換システム1200は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体1211、記録媒体1211に記録または読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)1210を有する。記録媒体1211は、光電変換システム1200に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。また、記録媒体制御I/F部1210から記録媒体1211との通信や外部I/F部1209からの通信は無線によってなされてもよい。
【0060】
更に光電変換システム1200は、各種演算を行うとともにデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部1208、光電変換装置1204と信号処理部1205に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部1207を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、光電変換システム1200は、少なくとも光電変換装置1204と、光電変換装置1204から出力された出力信号を処理する信号処理部1205とを有すればよい。第4の実施形態にて説明したようにタイミング発生部1207は光電変換装置に搭載されていてもよい。全体制御・演算部1208およびタイミング発生部1207は、光電変換装置1204の制御機能の一部または全部を実施するように構成してもよい。
【0061】
光電変換装置1204は、画像用信号を信号処理部1205に出力する。信号処理部1205は、光電変換装置1204から出力される画像用信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。また、信号処理部1205は、画像用信号を用いて、画像を生成する。また、信号処理部1205は、光電変換装置1204から出力される信号に対して測距演算を行ってもよい。なお、信号処理部1205やタイミング発生部1207は、光電変換装置に搭載されていてもよい。つまり、信号処理部1205やタイミング発生部1207は、画素が配された基板に設けられていてもよく、第5の実施形態に記載したような別の基板に設けられている構成であってもよい。上述した各実施形態の半導体装置を用いて撮像システムを構成することにより、より良質の画像が取得可能な撮像システムを実現することができる。
【0062】
(第5の実施形態)
本実施形態の光電変換システム及び移動体について、図7および図8を用いて説明する。図7は、本実施形態による光電変換システム及び移動体の構成例を示す概略図である。図8は、本実施形態による光電変換システムの動作を示すフロー図である。本実施形態では、光電変換システムとして、車載カメラの一例を示す。
【0063】
図7は、車両システムとこれに搭載される撮像を行う光電変換システムの一例を示したものである。光電変換システム1301は、光電変換装置1302、画像前処理部1315、集積回路1303、光学系1314を含む。光学系1314は、光電変換装置1302に被写体の光学像を結像する。光電変換装置1302は、光学系1314により結像された被写体の光学像を電気信号に変換する。光電変換装置1302は、上述の各実施形態のいずれかの半導体装置である。画像前処理部1315は、光電変換装置1302から出力された信号に対して所定の信号処理を行う。画像前処理部1315の機能は、光電変換装置1302内に組み込まれていてもよい。光電変換システム1301には、光学系1314、光電変換装置1302及び画像前処理部1315が、少なくとも2組設けられており、各組の画像前処理部1315からの出力が集積回路1303に入力されるようになっている。
【0064】
集積回路1303は、撮像システム用途向けの集積回路であり、メモリ1305を含む画像処理部1304、光学測距部1306、測距演算部1307、物体認知部1308、異常検出部1309を含む。画像処理部1304は、画像前処理部1315の出力信号に対して、現像処理や欠陥補正等の画像処理を行う。メモリ1305は、撮像画像の一次記憶、撮像画素の欠陥位置を格納する。光学測距部1306は、被写体の合焦や、測距を行う。測距演算部1307は、複数の光電変換装置1302により取得された複数の画像データから測距情報の算出を行う。物体認知部1308は、車、道、標識、人等の被写体の認知を行う。異常検出部1309は、光電変換装置1302の異常を検出すると、主制御部1313に異常を発報する。
【0065】
集積回路1303は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0066】
主制御部1313は、光電変換システム1301、車両センサ1310、制御ユニット1320等の動作を統括・制御する。主制御部1313を持たず、光電変換システム1301、車両センサ1310、制御ユニット1320が個別に通信インターフェースを有して、それぞれが通信ネットワークを介して制御信号の送受を行う(例えばCAN規格)方法も取り得る。
【0067】
集積回路1303は、主制御部1313からの制御信号を受け或いは自身の制御部によって、光電変換装置1302へ制御信号や設定値を送信する機能を有する。
【0068】
光電変換システム1301は、車両センサ1310に接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの自車両走行状態及び自車外環境や他車・障害物の状態を検出することができる。車両センサ1310は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段でもある。また、光電変換システム1301は、自動操舵、自動巡行、衝突防止機能等の種々の運転支援を行う運転支援制御部1311に接続されている。特に、衝突判定機能に関しては、光電変換システム1301や車両センサ1310の検出結果を基に他車・障害物との衝突推定・衝突有無を判定する。これにより、衝突が推定される場合の回避制御、衝突時の安全装置起動を行う。
【0069】
また、光電変換システム1301は、衝突判定部での判定結果に基づいて、ドライバーに警報を発する警報装置1312にも接続されている。例えば、衝突判定部の判定結果として衝突可能性が高い場合、主制御部1313は、ブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして、衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置1312は、音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムやメーターパネルなどの表示部画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0070】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を光電変換システム1301で撮影する。図7(b)に、車両前方を光電変換システム1301で撮像する場合の光電変換システム1301の配置例を示す。
【0071】
2つの光電変換装置1302は、車両1300の前方に配置される。具体的には、車両1300の進退方位又は外形(例えば車幅)に対する中心線を対称軸に見立て、その対称軸に対して2つの光電変換装置1302が線対称に配置されると、車両1300と被写対象物との間の距離情報の取得や衝突可能性の判定を行う上で好ましい。また、光電変換装置1302は、運転者が運転席から車両1300の外の状況を視認する際に運転者の視野を妨げない配置が好ましい。警報装置1312は、運転者の視野に入りやすい配置が好ましい。
【0072】
次に、光電変換システム1301における光電変換装置1302の故障検出動作について、図8を用いて説明する。光電変換装置1302の故障検出動作は、図8に示すステップS1410~S1480に従って実施される。
【0073】
ステップS1410は、光電変換装置1302のスタートアップ時の設定を行うステップである。すなわち、光電変換システム1301の外部(例えば主制御部1313)又は光電変換システム1301の内部から、光電変換装置1302の動作のための設定を送信し、光電変換装置1302の撮像動作及び故障検出動作を開始する。
【0074】
次いで、ステップS1420において、有効画素から画素信号を取得する。また、ステップS1430において、故障検出用に設けた故障検出画素からの出力値を取得する。この故障検出画素は、有効画素と同じく光電変換部を備える。この光電変換部には、所定の電圧が書き込まれる。故障検出用画素は、この光電変換部に書き込まれた電圧に対応する信号を出力する。なお、ステップS1420とステップS1430とは逆でもよい。
【0075】
次いで、ステップS1440において、故障検出画素の出力期待値と、実際の故障検出画素からの出力値との該非判定を行う。ステップS1440における該非判定の結果、出力期待値と実際の出力値とが一致している場合は、ステップS1450に移行し、撮像動作が正常に行われていると判定し、処理ステップがステップS1460へと移行する。ステップS1460では、走査行の画素信号をメモリ1305に送信して一次保存する。そののち、ステップS1420に戻り、故障検出動作を継続する。一方、ステップS1440における該非判定の結果、出力期待値と実際の出力値とが一致していない場合は、処理ステップはステップS1470に移行する。ステップS1470において、撮像動作に異常があると判定し、主制御部1313、又は警報装置1312に警報を発報する。警報装置1312は、表示部に異常が検出されたことを表示させる。その後、ステップS1480において光電変換装置1302を停止し、光電変換システム1301の動作を終了する。
【0076】
なお、本実施形態では、1行毎にフローチャートをループさせる例を例示したが、複数行毎にフローチャートをループさせてもよいし、1フレーム毎に故障検出動作を行ってもよい。ステップS1470の警報の発報は、無線ネットワークを介して、車両の外部に通知するようにしてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、他の車両と衝突しない制御を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。さらに、光電変換システム1301は、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機或いは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0078】
(第6の実施形態)
本実施形態の表示装置について図9を用いて説明する。表示装置は、第1の実施形態から第3の実施形態のいずれかに記載の半導体装置を含む。本実施形態において半導体装置に含まれる半導体素子は発光素子である。表示装置や照明装置の他にも、電子写真方式の画像形成装置の露光光源や液晶表示装置のバックライト、白色光源にカラーフィルタを有する発光装置等の用途がある。
【0079】
表示装置は、エリアCCD、リニアCCD、メモリーカード等からの画像情報を入力する画像入力部を有し、入力された情報を処理する情報処理部を有し、入力された画像を表示部に表示する画像情報処理装置でもよい。
【0080】
また、撮像装置やインクジェットプリンタが有する表示部は、タッチパネル機能を有していてもよい。このタッチパネル機能の駆動方式は、赤外線方式でも、静電容量方式でも、抵抗膜方式であっても、電磁誘導方式であってもよく、特に限定されない。また表示装置はマルチファンクションプリンタの表示部に用いられてもよい。
【0081】
本実施形態に係る表示装置は、携帯端末の表示部に用いられてもよい。その際には、表示機能と操作機能との双方を有してもよい。携帯端末としては、スマートフォン等の携帯電話、タブレット、ヘッドマウントディスプレイ等が挙げられる。
【0082】
本実施形態に係る表示装置は、複数のレンズを有する光学部と、当該光学部を通過した光を受光する撮像素子とを有する撮像装置の表示部に用いられてよい。撮像装置は、撮像素子が取得した情報を表示する表示部を有してよい。また、表示部は、撮像装置の外部に露出した表示部であっても、ファインダ内に配置された表示部であってもよい。撮像装置は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラであってよい。
【0083】
図9(a)は、本実施形態に係る撮像装置の一例を表す模式図である。撮像装置1100は、ビューファインダ1101、背面ディスプレイ1102、操作部1103、筐体1104を有してよい。ビューファインダ1101は、本実施形態に係る表示装置を有してよい。その場合、表示装置は、撮像する画像のみならず、環境情報、撮像指示等を表示してよい。環境情報には、外光の強度、外光の向き、被写体の動く速度、被写体が遮蔽物に遮蔽される可能性等であってよい。
【0084】
図9(b)は、本実施形態に係る電子機器の一例を表す模式図である。電子機器1400は、表示部1401と、操作部1402と、筐体1403を有する。筐体1403には、回路、当該回路を有するプリント基板、バッテリー、通信部、を有してよい。操作部1402は、ボタンであってもよいし、タッチパネル方式の反応部であってもよい。操作部は、指紋を認識してロックの解除等を行う、生体認識部であってもよい。通信部を有する電子機器は通信機器ということもできる。電子機器は、レンズと、撮像素子とを備えることでカメラ機能をさらに有してよい。カメラ機能により撮像された画像が表示部に映される。電子機器としては、スマートフォン、ノートパソコン等があげられる。
【0085】
半導体素子が近赤外領域の発光素子である場合は、撮像装置からの照明光として半導体素子から近赤外線を発して受光してもよい。例えば、食品検査や、コンクリートの劣化度合の検査に利用することができる。
【0086】
本発明の半導体装置は、更に、カラーフィルタやマイクロレンズを有する構成であってもよく、距離情報など各種情報を取得可能な構成であってもよい。また、増幅トランジスタはソースフォロワ回路の一部であるが、AD変換器の一部を構成していてもよい。具体的には、AD変換器が含む比較器の一部を増幅トランジスタが構成していてもよい。また、比較器の一部の構成が別の半導体基板に設けられている構成であってもよい。
【0087】
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0088】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 第1チップ
20 第2チップ
30 第3チップ
101 第1基板
102 第2基板
120 半導体素子
130 回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9