(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】非発酵ビールテイスト飲料、及び、非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20231128BHJP
C12G 3/04 20190101ALI20231128BHJP
【FI】
A23L2/00 B
C12G3/04
(21)【出願番号】P 2019159564
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 英二
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/079643(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/079778(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチオナールの含有量が4ppb以上28ppb以下であり、
アセトアルデヒドの含有量が5ppm以上17ppm以下であ
り、
前記メチオナールの含有量をXppbとし、前記アセトアルデヒドの含有量をYppmとした場合に、
Y≧-1.8X+23.5、
Y≧0.6X-3、
を満たす非発酵ビールテイスト飲料。
【請求項2】
前記メチオナールの含有量が7ppb以上25ppb以下であり、
前記アセトアルデヒドの含有量が6ppm以上15ppm以下である請求項1に記載の非発酵ビールテイスト飲料。
【請求項3】
非発酵ビールテイスト飲料のビールらしい香味を増強させるとともに、嫌な甘さを抑制しつつ、味の厚みを増強させる香味向上方法であって、
前記非発酵ビールテイスト飲料のメチオナールの含有量を4ppb以上28ppb以下とし、アセトアルデヒドの含有量を5ppm以上17ppm以下と
するとともに、
前記メチオナールの含有量をXppbとし、前記アセトアルデヒドの含有量をYppmとした場合に、
Y≧-1.8X+23.5、
Y≧0.6X-3、
を満たすようにする非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非発酵ビールテイスト飲料、及び、非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、消費者の多様な嗜好に応えるべく、多くの種類のビールテイスト飲料やその製造方法が提案されている。
そして、ビールテイスト飲料の中でも発酵工程を経ることなく製造することができる非発酵ビールテイスト飲料は、各原料の量を調製することによって様々な香味の飲料を創出できることから、研究開発が着々と進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アラニン含有量が10ppm以上であり、プロリン含有量/アラニン含有量比が1~6である、非発酵ビールテイスト飲料が開示されている。
そして、特許文献1では、この非発酵ビールテイスト飲料は、コクが付与され、後渋味が低減され、ビールらしい飲み応えが付与されていると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非発酵ビールテイスト飲料は、ビールテイストである以上、最も重要な香味の評価項目は「ビールらしい香味」であると考えられ、このビールらしい香味を増強できれば、非発酵ビールテイスト飲料の商品価値を大幅に向上させることができる。
ただ、ビールらしい香味を増強させるにあたり、非発酵ビールテイスト飲料の香味にふさわしくない「嫌な甘さ」の発生は極力抑制する必要がある。
【0006】
また、非発酵ビールテイスト飲料は、発酵工程を経ることなく製造されることから、味の厚みが乏しくなる可能性が高い。よって、非発酵ビールテイスト飲料の商品価値をさらに向上すべく、「味の厚み」を増強させる必要もある。
【0007】
そこで、本発明は、ビールらしい香味が増強され、嫌な甘さが抑制されつつ、味の厚みが増強された非発酵ビールテイスト飲料、及び、非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
[1]メチオナールの含有量が4ppb以上28ppb以下であり、アセトアルデヒドの含有量が5ppm以上17ppm以下であり、前記メチオナールの含有量をXppbとし、前記アセトアルデヒドの含有量をYppmとした場合に、Y≧-1.8X+23.5、Y≧0.6X-3、を満たす非発酵ビールテイスト飲料。
[2]前記メチオナールの含有量が7ppb以上25ppb以下であり、前記アセトアルデヒドの含有量が6ppm以上15ppm以下である前記1に記載の非発酵ビールテイスト飲料。
[3]非発酵ビールテイスト飲料のビールらしい香味を増強させるとともに、嫌な甘さを抑制しつつ、味の厚みを増強させる香味向上方法であって、前記非発酵ビールテイスト飲料のメチオナールの含有量を4ppb以上28ppb以下とするとともに、前記メチオナールの含有量をXppbとし、前記アセトアルデヒドの含有量をYppmとした場合に、Y≧-1.8X+23.5、Y≧0.6X-3、を満たすようにする非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料によると、ビールらしい香味が増強し、嫌な甘さが抑制され、味の厚みが増強している。
本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法によると、非発酵ビールテイスト飲料のビールらしい香味を増強させるとともに、嫌な甘さを抑制しつつ、味の厚みを増強させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】メチオナールの含有量とアセトアルデヒドの含有量とを変化させたサンプルの総合評価の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る非発酵ビールテイスト飲料、及び、非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法を実施するための形態(本実施形態)について説明する。
【0012】
[非発酵ビールテイスト飲料]
本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料は、メチオナールとアセトアルデヒドとの含有量が其々、所定範囲内となる飲料である。
ここで、非発酵ビールテイスト飲料とは、非発酵ビール様(風)飲料とも呼ばれ、ビール様の香味を奏する飲料、言い換えると、ビール様の香味を奏するように調製された飲料である。また、非発酵ビールテイスト飲料とは、発酵工程を経ることなく製造されたビールテイスト飲料である。なお、発酵工程とは、酵母などの微生物が有機化合物を分解して、アルコール、有機酸、二酸化炭素などを生じさせる工程である。
そして、非発酵ビールテイスト飲料には、アルコールを含有しない非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料と、アルコールを含有する非発酵アルコールビールテイスト飲料とが含まれる。
【0013】
(メチオナール)
メチオナール(methional)は、分子式C4H8OSで表される有機化合物であり、3-メチルチオ-プロパナールとも呼ばれる。
そして、メチオナールは、一般的には、醤油に含まれる香気成分であってジャガイモのような香りを呈すると知られているものの、非発酵ビールテイスト飲料において後記するアセトアルデヒドと併存させ、かつ、2つの成分の含有量を精緻に特定することによって、「ビールらしい香味」の増強、「嫌な甘さ」の抑制、「味の厚み」の増強、という効果を発揮することができる。
【0014】
ここで、「ビールらしい香味」とは、詳細には、一般的なビールが呈する香ばしい穀物的な麦芽様の香味である。そして、「ビールらしい香味」の増強効果は、対象となる非発酵ビールテイスト飲料が僅かでもビール様の香味を奏するように調製されていれば、メチオナールとアセトアルデヒドの含有量を調製することによって当該効果を奏することができる。また、「嫌な甘さ」とは、メチオナールとアセトアルデヒドに起因する甘さであって、ビールテイストには適合しない甘さである。
つまり、本発明の効果は、メチオナールとアセトアルデヒドに起因する「嫌な甘さ」の発生を抑制しながらも、メチオナールとアセトアルデヒドを用いて「ビールらしい香味」と「味の厚み」とを増強させるという効果である、と説明することもできる。
【0015】
メチオナールの含有量は、4ppb(μg/L)以上が好ましく、5ppb以上、7ppb以上、8ppb以上、9ppb以上、10ppb以上がより好ましい。メチオナールの含有量が所定値以上であることによって、ビールらしい香味を増強させるとともに、嫌な甘さを抑制し、味の厚みを増強させることができる。
メチオナールの含有量は、28ppb以下が好ましく、26ppb以下、25ppb以下、22ppb以下、18ppb以下、16ppb以下がより好ましい。メチオナールの含有量が所定値以下であることによって、本発明の効果(ビールらしい香味の増強、嫌な甘味の抑制、味の厚みの増強)をしっかりと発揮させることができる。
【0016】
(アセトアルデヒド)
アセトアルデヒド(acetaldehyde)は、分子式C2H4Oで表されるアルデヒドの一つであり、エタナールとも呼ばれる。
このアセトアルデヒドは、刺激的で青臭いネガティブな香りを呈すると知られているものの、前記のとおり、非発酵ビールテイスト飲料においてメチオナールと併存させ、かつ、2つの成分の含有量を精緻に特定することによって、「ビールらしい香味」の増強、「嫌な甘さ」の抑制、「味の厚み」の増強、という効果を発揮することができる。
【0017】
アセトアルデヒドの含有量は、5ppm(mg/L)以上が好ましく、6ppm以上、7ppm以上、8ppm以上、9ppm以上がより好ましい。アセトアルデヒドの含有量が所定値以上であることによって、ビールらしい香味を増強させるとともに、嫌な甘さを抑制し、味の厚みを増強させることができる。
アセトアルデヒドの含有量は、17ppm以下が好ましく、16ppm以下、15ppm以下、14ppm以下、13ppm以下、12ppm以下がより好ましい。アセトアルデヒドの含有量が所定値以下であることによって、本発明の効果(ビールらしい香味の増強、嫌な甘味の抑制、味の厚みの増強)をしっかりと発揮させることができる。
【0018】
(メチオナールの含有量とアセトアルデヒドの含有量との関係式)
メチオナールの含有量とアセトアルデヒドの含有量とを前記したように其々所定範囲内に特定することによって、本発明の効果が発揮されるものの、2つの成分の含有量は、以下のような関係式を満たすのがより好ましい。
メチオナールの含有量をXppbとし、アセトアルデヒドの含有量をYppmとした場合に、(1)Y≧-1.8X+23.5、(2)Y≧0.6X-3を満たすのが好ましい。2つの関係式を満たすことによって、本発明の効果(ビールらしい香味の増強、嫌な甘味の抑制、味の厚みの増強)をより確実に発揮させることができる。
【0019】
図1を用いて2つの関係式を説明すると、(1)Y≧-1.8X+23.5の関係式は、
図1における一点鎖線から右上に広がる領域を示し、(2)Y≧0.6X-3の関係式は、
図1における二点鎖線から左上に広がる領域を示すこととなる。
なお、関係式(1)の傾きは、実施例で示すサンプルA-5とA-6、関係式(2)の傾きは、実施例で示すサンプルA-6とA-7に基づいて算出した。
そして、(1)Y≧-1.8X+23.5の関係式は、Y≧-1.8X+24.5、Y≧-1.8X+25であるのがより好ましい。また、(2)Y≧0.6X-3の関係式は、Y≧0.6X-2.75、Y≧0.6X、Y≧0.6X+1であるのがより好ましい。
【0020】
非発酵ビールテイスト飲料におけるメチオナール、及び、アセトアルデヒドの含有量は、例えば、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で既知の方法により測定することができる。
【0021】
(アルコール度数)
本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料はアルコールを含有しても、含有しなくともよいが、含有させる場合は、蒸留アルコールを添加すればよい。
蒸留アルコールとしては、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられる。蒸留アルコールは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本明細書において「スピリッツ」とは、蒸留酒であるスピリッツを指し、酒税法上のスピリッツとは異なる場合もある。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。そして、ビールテイスト飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
【0022】
本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料がアルコールを含有する場合、アルコール度数は、例えば、1%(v/v%)以上、3%以上、5%以上、7%以上、8%以上、9%以上であり、23%以下、20%以下、15%以下、12%以下、10%以下である。
なお、本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料がノンアルコール飲料の場合、アルコール度数は、1%未満である。
【0023】
(発泡性)
本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料は、発泡性の飲料である。
ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2以上であることをいうが、2.0kg/cm2以上が好ましく、2.2kg/cm2以上、2.3kg/cm2以上、2.4kg/cm2以上がより好ましい。また、20℃におけるガス圧は、5.0kg/cm2以下が好ましく、4.0kg/cm2以下、3.0kg/cm2以下がより好ましい。
【0024】
(その他)
本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0025】
(容器詰め非発酵ビールテイスト飲料)
本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に非発酵ビールテイスト飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分、及び、光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料は、メチオナールとアセトアルデヒドとの含有量が其々所定範囲内であることから、ビールらしい香味が増強し、嫌な甘さが抑制され、味の厚みが増強している。
【0027】
[非発酵ビールテイスト飲料の製造方法]
次に、本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料の製造方法について説明する。
本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料の製造方法は、メチオナールとアセトアルデヒドとの含有量を其々所定範囲内とする工程を含む。そして、詳細には、本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料の製造方法は、発酵工程を経ないで製造する方法であり、混合工程と後処理工程とを含む。
【0028】
(混合工程)
混合工程では、混合タンクに、水、メチオナール、アセトアルデヒド、添加剤、ビールフレーバー、麦芽エキス、蒸留アルコールなどの原料を適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、各成分の含有量等が前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0029】
(後処理工程)
後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料の製造方法は、メチオナールとアセトアルデヒドとの含有量を其々所定範囲内とする工程を含むことから、ビールらしい香味が増強され、嫌な甘さが抑制され、味の厚みが増強された非発酵ビールテイスト飲料を製造することができる。
【0031】
[非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法]
次に、本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法は、非発酵ビールテイスト飲料のビールらしい香味を増強させるとともに、嫌な甘さを抑制しつつ、味の厚みを増強させる香味向上方法であって、非発酵ビールテイスト飲料のメチオナールとアセトアルデヒドとの含有量を其々所定範囲内とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「非発酵ビールテイスト飲料」において説明した値と同じである。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る非発酵ビールテイスト飲料の香味向上方法は、メチオナールとアセトアルデヒドとの含有量を其々所定範囲内とすることから、非発酵ビールテイスト飲料のビールらしい香味を増強させるとともに、嫌な甘さを抑制しつつ、味の厚みを増強させることができる。
【実施例】
【0033】
[実施例1]
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0034】
[サンプルの準備]
表1、2に示す値となるように、メチオナール、アセトアルデヒド、ビールフレーバー、カラメル、水、炭酸水を適宜配合してサンプルを準備した。
なお、表1のサンプルは、ノンアルコール飲料に関するサンプルであったためスピリッツは配合していないものの、表2のサンプルは、アルコール飲料に関するサンプルであったためスピリッツを配合し、表2に示すアルコール度数とした。また、表2のサンプルB-2には、苦味剤としてホップ抽出物、サンプルB-3には、苦味剤としてキハダ抽出物を添加した。
なお、各サンプルのビールフレーバー、カラメルの含有量は、各サンプル間において一定量に揃えた。また、使用したビールフレーバーには、メチオナールとアセトアルデヒドは含まれていなかった。
そして、各サンプルの20℃におけるガス圧は約2.2kg/cm2であった。
【0035】
[試験内容]
前記方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル3名が下記評価基準に則って「ビールらしい香味」、「嫌な甘さ」、「味の厚み」について、0~5点の6段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。そして、これらの評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0036】
(ビールらしい香味)
ビールらしい香味の評価については、サンプルA-1の1点を基準とし、「ビールらしい香味がA-1と比較して非常に大幅に増強されている」場合を5点、「ビールらしい香味がA-1と比較して大幅に増強されている」場合を4点、「ビールらしい香味がA-1と比較して増強されている」場合を3点、「ビールらしい香味がA-1と比較して若干増強されている」場合を2点、「ビールらしい香味がA-1と同程度である」場合を1点、「ビールらしい香味がA-1よりも低減している」場合を0点として、6段階で評価した。そして、ビールらしい香味の評価は点数が高いほど好ましいと判断できる。
なお、「ビールらしい香味」とは、具体的には、一般的なビールが呈する香ばしい穀物的な麦芽様の香味である。
【0037】
(嫌な甘さ)
嫌な甘さの評価については、サンプルA-1の5点を基準とし、「嫌な甘さを全く感じない(A-1と同じレベルで嫌な甘さを感じない)」場合を5点、「嫌な甘さを僅かに感じる」場合を4点、「嫌な甘さを感じる」場合を3点、「嫌な甘さを強く感じる」場合を2点、「嫌な甘さを非常に強く感じる」場合を1点、「嫌な甘さを極めて強く感じる」場合を0点として、6段階で評価した。そして、嫌な甘さの評価は点数が高いほど好ましいと判断できる。
なお、「嫌な甘さ」とは、具体的には、メチオナールとアセトアルデヒドに起因する甘さであって、ビールテイストには適合しない甘さである。
【0038】
(味の厚み)
味の厚みの評価については、サンプルA-1の0点を基準とし、「味の厚みがA-1と比較して極めて大幅に増強されている」場合を5点、「味の厚みがA-1と比較して非常に大幅に増強されている」場合を4点、「味の厚みがA-1と比較して大幅に増強されている」場合を3点、「味の厚みがA-1と比較して増強されている」場合を2点、「味の厚みがA-1と比較して若干増強されている」場合を1点、「味の厚みがサンプルA-1と同程度である」場合を0点として、6段階で評価した。そして、味の厚みの評価は点数が高いほど好ましいと判断できる。
【0039】
(総合評価)
総合評価を確認するため、「ビールらしい香味」、「嫌な甘さ」、「味の厚み」の各評価点数を足し合わせた合計点数を算出した。
この合計点数について、9.5点未満のものを「×」、9.5点以上12点未満のものを「〇」、12点以上のものを「◎」と評価した。
そして、
図1として、横軸をメチオナールの含有量(ppb)、縦軸をアセトアルデヒドの含有量(ppm)とし、各サンプルの総合評価の評価結果をプロットしたグラフを示す。
【0040】
表に、各サンプルの各評価結果を示す。そして、表における「メチオナール」、「アセトアルデヒド」は、最終製品中の含有量である。
【0041】
【0042】
【0043】
(結果の検討)
表1の結果は、非発酵ビールテイスト飲料の中でもノンアルコール飲料に関するサンプルの結果である。
表1の結果から、メチオナールの含有量とアセトアルデヒドの含有量の両方が所定範囲内となる(さらには、所定の関係式を満たす)サンプルA-5~A-7、A-10、A-12は、総合評価の評価結果が〇又は◎であった。そして、これらのサンプルは、「ビールらしい香味」が3点以上、「嫌な甘さ」が2.5点以上、「味の厚み」が2.5点以上であった。つまり、これらのサンプルは、「ビールらしい香味」が増強され、「嫌な甘さ」が抑制され、「味の厚み」が増強されていることが確認できた。
【0044】
表1の「ビールらしい香味」の評価のみに着目すると、サンプルA-5~A-7、A-10~A-12が3.0点以上であった。
表1の「嫌な甘さ」の評価のみに着目すると、サンプルA-1~A-8、A-10が3.0点以上であった。
表1の「味の厚み」の評価のみに着目すると、サンプルA-6、A-7、A-10~A-14が3.0点以上であった。
【0045】
表2の結果は、非発酵ビールテイスト飲料の中でもアルコール飲料に関するサンプルの結果である。
表2の結果から、ノンアルコール飲料の結果と同様、メチオナールの含有量とアセトアルデヒドの含有量の両方が所定範囲内となる(さらには、所定の関係式を満たす)サンプルB-1~B-3は、総合評価の評価結果が◎であり、アルコールを含有しても、本発明の効果(ビールらしい香味の増強、嫌な甘味の抑制、味の厚みの増強)が得られることが確認できた。
なお、表2のサンプルはアルコールを含有していたことから、表1のサンプルよりもビールらしい香味の点数が高い傾向となることが確認できた。
【0046】
また、表2のサンプルB-1~B-3を比較すると明らかなように、苦味剤の存在、及び、苦味剤の種類は、本発明の効果(ビールらしい香味の増強、嫌な甘味の抑制、味の厚みの増強)に大きな影響を与えないことが確認できた。
【0047】
図1は、各サンプルの総合評価の評価結果を示すグラフである。
図1の結果から、メチオナールの含有量とアセトアルデヒドの含有量の両方が所定範囲内となる(さらには、所定の関係式を満たす)サンプルは、総合評価の評価結果が〇又は◎となることが確認できた。