(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】電極及び電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20231128BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20231128BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20231128BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20231128BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M4/62 Z
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2019185402
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 健作
(72)【発明者】
【氏名】今野 真
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-266473(JP,A)
【文献】特開平05-225971(JP,A)
【文献】特開平10-284055(JP,A)
【文献】特開平10-125332(JP,A)
【文献】特開2016-195044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/134
H01M 4/38
H01M 4/62
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる繊維状の支持体と、
前記支持体に保持される活物質と、
導電助剤を含有する電極であって、
前記活物質は、シリコンを含有し、
前記支持体は、銅、ステンレス、鉄及びニッケルから選択される1種又は2種以上から構成され、
前記電極は、リチウムイオン二次電池の電極として用いられることを特徴とする電極。
【請求項2】
前記支持体は、フェルト状のマット又は抄造体であることを特徴とする請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記活物質は、バインダにより前記支持体に結合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
前記支持体は、平均繊維長が30mm以上であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の電極。
【請求項5】
前記電極は、リチウムイオン二次電池の負極であることを特徴とする請求項
1~4のいずれか1項に記載の電極。
【請求項6】
前記電極は、リチウムイオン二次電池の補助電極であることを特徴とする請求項
1~4のいずれか1項に記載の電極。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の電極を備えることを特徴とする電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極及び該電極を備える電池に関し、特に、リチウムイオン二次電池用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム(Li)は、起電力の面から二次電池用負極としての活物質として優れた素材であるが、酸素や水分との反応性が高いため、金属リチウムをそのまま電極として使用するのではなく、黒鉛のようなカーボンの層間化合物や、リチウム合金として負極に使用することにより、製造段階や製品に組み込んだ段階での安全性を確保することができる。
【0003】
しかしながら、リチウムをカーボンの層間化合物や、リチウム合金とする形態で負極として使用した場合、金属リチウム自体を負極として使用した場合と比べ、電池の起電力が低下したり、電池の容量が低下するという問題がある。また、リチウム合金として広く使用されているLi-Ag-Te負極では、放電時に合金成分が電極から脱落するなどの現象が生じ、充放電の繰り返しによる劣化が早いという問題があった。
【0004】
ここで特許文献1では、このような課題を解決するため、Li又はLi合金と、カーボンとを含有する繊維によって形成される、織布又は不織布を活物質部として有するリチウムイオン二次電池用負極が開示されている。
このような構成の負極によって、活物質の材料面の観点からは、カーボン負極の特徴である比較的大きな放電容量と、Li又はLi合金負極の特徴である高い起電力を得ることができる。また、活物質の形状面の観点からは、活物質材料を繊維状に加工して作製した織布又は不織布を用いて負極の活物質部(電極層)を形成するものであるため、活物質部の総面積が充分に大きくなり、Liデンドライトの発生が抑制されながら、負極全体としての放電容量は大きいものとなることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたリチウム二次電池用負極は、活物質を含む繊維によって形成される、織布又は不織布を活物質部として使用しているため、繊維自体が、充放電時におけるリチウムの吸蔵放出に直接関与し、充放電を繰り返すことにより、当該繊維自体が劣化するようになる。このため、電極の支持体となる集電板から繊維状の活物質が剥離し、経時的な容量低下が生じやすくなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、大きな容量が得られ、繰り返し充放電しても電極から活物質が脱離しにくい、リチウムイオン二次電池用として好適な電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る電極は、下記(1)に示す構成を有する。
【0009】
(1)金属からなる繊維状の支持体と、
前記支持体に保持される活物質と、を有することを特徴とする電極。
【0010】
本発明に係る電極によれば、リチウムなどの金属を吸蔵放出する活物質を、金属からなる繊維状の支持体で保持しているので、リチウムなどの金属の吸蔵放出によって発生する電極の膨張が抑制され、電極自体の集電体からの剥離や、活物質の脱落を防止することができる。
【0011】
また、本発明に係る電極は、下記(2)~(10)の態様であることが好ましい。
【0012】
(2)前記支持体は、フェルト状のマット又は抄造体である。
【0013】
フェルト状のマットや抄造体は、活物質を保持するための空間を多く有する形態であるため、活物質の保持性が高まるとともに、支持体の体積変化を抑える。
【0014】
(3)前記活物質は、バインダにより前記支持体に結合されている。
【0015】
活物質がバインダを介して金属繊維からなる繊維状の支持体に結合されていると、リチウムなどの金属の吸蔵放出により活物質が膨張しても、バインダに包まれるとともに、繊維状の支持体に結合されていることで、支持体から脱落しにくくなる。
【0016】
(4)前記電極は、導電助剤を含有する。
【0017】
電極が導電助剤を含有することにより、活物質と金属からなる繊維状の支持体との電気の流れをスムーズにできるため、電極内の内部抵抗を減少させることができる。
【0018】
(5)前記活物質は、シリコンを含有する。
【0019】
シリコンは、アルカリ金属やアルカリ土類金属と合金化し、安全性を確保しつつ、負極の容量を大きくすることができる。
【0020】
(6)前記支持体は、銅、ステンレス、鉄及びニッケルから選択される1種又は2種以上から構成される。
【0021】
これらの金属は、リチウムと合金化しにくく、金属からなる繊維状の支持体として好適に使用できる。
【0022】
(7)前記支持体は、平均繊維長が30mm以上である。
【0023】
平均繊維長が30mm以上であると、支持体全体の金属繊維の末端の数を少なくすることができる。金属繊維は導電性を有する上に、その末端は尖っているため、電池の短絡の原因となったり、電荷が集中しやすく、充放電に関する金属がデンドライトとして析出しやすくなるものの、金属繊維の末端の数を少なくすることができるので、二次電池の信頼性を高めることができる。また、金属繊維が長いことから、絡まりやすく面方向に配向しにくくなりフェルト状のマットとなって、活物質の保持性にも優れる。
【0024】
(8)前記電極は、リチウムイオン二次電池の電極として用いられる。
【0025】
当該電極を、リチウムイオン二次電池の電極として使用すると、電極の活物質を有効に活用することができ、大容量のリチウムイオン用負極を得ることができる。
【0026】
(9)前記電極は、リチウムイオン二次電池の負極である。
【0027】
当該電極を、リチウムイオン二次電池の負極として使用すると、特に膨張収縮の大きい電極の活物質を有効に活用することができ、大容量のリチウムイオン用負極を得ることができる。
【0028】
(10)前記電極は、リチウムイオン二次電池の補助電極である。
【0029】
補助電極は、充放電に関与する金属の減少を補償するために用いられている。正極又は負極と補助電極との間に電流を流し、所定量の金属を正極又は負極に導入(ドープ)することによって金属の減少を補うことができる。そして、当該電極を、リチウムイオン二次電池の補助電極として使用すると、電極の活物質を有効に活用することができ、大容量のリチウムイオン二次電池用補助電極を得ることができる。
【0030】
また、本発明に係る電池は、下記(11)に示す構成を有する。
【0031】
(11)上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の電極を備えることを特徴とする電池。
【0032】
上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の電極を備えた電池によれば、大容量で、信頼性の高い電池となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る電極によれば、リチウムなどの金属を吸蔵放出する活物質を、金属からなる繊維状の支持体で保持しているので、支持体自体はリチウムなどの金属の吸蔵放出によって発生する電極の膨張が抑制されるので、電極自体の集電体からの剥離や、活物質の脱落を防止することができる。また、本発明に係る電池は、大容量で、信頼性の高い電池となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る電極の電極層を拡大して示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の電極を示す模式図であり、(a)は、電極層表面の全面に集電体を接合させた例、(b)は、電極層表面の一部に集電体を接合させた例、(c)は、電極層における厚み方向の端面の任意の位置(例えば厚さ方向の中央部)に集電体を接合させた例である。
【
図3】
図3は、本発明の電池を示す模式図であり、(a)は、本実施形態に係る電極をリチウムイオン二次電池の負極に適用した例、(b)は、本実施形態に係る電極をリチウムイオン二次電池の補助電極に適用した例である。
【0035】
(発明の詳細な説明)
以下、本実施形態に係る電極及び電池について詳細に説明する。
【0036】
リチウムイオン二次電池など、アルカリ金属やアルカリ土類金属を使用した非水系の二次電池は、電解液の分解が起きにくいので大きな起電力を得ることができる特徴がある一方、負極では、反応性の高い金属が生成するので、充放電に関与する金属を黒鉛などの結晶の層間に層間化合物として吸蔵したり、合金を形成する金属を活物質として使用し、合金化することにより安全性を確保して、大容量の二次電池が得られている。
【0037】
しかしながら、黒鉛の結晶の層間にアルカリ金属やアルカリ土類金属を吸蔵する場合、黒鉛内でこれら金属を吸蔵できるサイトが限られているため、大きな容量が得られにくい。一方、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属と合金を形成する場合、大きな容量が得られやすいが、合金化する際の体積変化によって活物質が脆くなり、電極から脱落しやすくなる。
また、負極用の活物質に限らず正極においても、マンガン系酸化物などの正極用の活物質が充放電によって活物質が電極から脱落しやすくなる。
【0038】
これに対し本発明の実施形態に係る電極では、
図1に拡大して模式的に示すように、電極層10は、リチウムなどの金属を吸蔵する活物質2を、金属からなる繊維状の支持体1で保持して構成されている。そのため、支持体1自体は、リチウムなどの金属の吸蔵放出によって発生する電極の膨張が抑制されるので、電極層10自体の集電体からの剥離や、活物質2の脱落を防止することができる。なお、活物質2の脱落を効果的に防止するためには、支持体1として用いられる金属繊維は、電極層10の表面に露出していることが好ましい。金属繊維が電極層の表面に露出していることにより、電極層全体にわたって剥離を防止することができる。
【0039】
支持体1は、活物質2を保持できるものであればどのような形態であってもよく、特に限定されないが、例えばフェルト状のマット又は抄造体のように、活物質2を保持するための空間を多く有する形態であることが好ましい。これにより、活物質の保持性が高まるとともに、支持体の体積変化を抑える。
フェルト状のマットは、厚み方向に配向した繊維が多く存在する程度に長い繊維を用い、厚み方向の弾力性を有しているのに対し、抄造体は、短い繊維を抄造して得られるので厚み方向に配向した繊維がほとんどなく、厚み方向の弾力性は小さい。
【0040】
また、本実施形態に係る電極を用いた二次電池は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の吸蔵放出によって大きく体積変化する材料(以下で詳述する)を活物質2として使用しているため、活物質2を含んだ電極層10自体も大きく体積変化する。そこで、活物質2の体積変化に追随しやすいように、繊維の配向が少ないフェルト状のマットの形態による支持体1を用いることが好ましい。
【0041】
支持体1は、単一の金属繊維で構成されていてもよいが、複数形態の金属繊維で構成されていてもよい。例えば、金属繊維のフェルト状のマットを、金属繊維の抄造体で包囲した形態の支持体1であってもよい。
【0042】
活物質2は、そのままの状態で金属繊維の支持体1に保持されていてもよいが、バインダを介して金属繊維からなる支持体1に結合されていてもよい。活物質2がバインダを介して金属繊維の支持体1に結合されていると、リチウムなどの金属の吸蔵放出により活物質2が微細化しても、バインダに包まれるとともに、繊維状の支持体1に結合されていることで、支持体1から脱落しにくくなる。
【0043】
なお、バインダの種類としては、特に限定されないが、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。これらの中では、ポリイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド樹脂は高強度なので、金属イオン吸蔵物質の体積が膨張することを抑えることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る電極は、電極層10内に導電助剤を含有することが好ましい。電極層10が導電助剤を含有することにより、活物質2と金属からなる繊維状の支持体1との電気の流れをスムーズにできるため、電極層10内の内部抵抗を減少させることができる。
【0045】
なお、導電助剤の種類としては、特に限定されないが、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0046】
また、活物質2は、シリコンを含有することが好ましい。シリコンは、アルカリ金属やアルカリ土類金属と合金化し、安全性を確保しつつ、負極の容量を大きくすることができる。例えば、シリコンは、4200mAh/gまで吸蔵することができる。これは黒鉛の372mAh/gの約10倍である。なお、活物質2は、シリコンのみで構成されていても、シリコンを含む合金であってもよい。シリコンと合金化する金属としては、Sn、Tiなどが例として挙げられる。
【0047】
活物質2の平均粒子径は、特に限定されないが1~10μmであることが好ましい。活物質2の平均粒子径が1μm以上であれば、活物質の平均粒子径を容易に調整することができる。活物質2の平均粒子径が10μm以下であれば、比表面積が充分に大きいので、後述するドープに要する時間を短くすることができる。
【0048】
支持体1として用いられる金属繊維は、高容量を発揮し得る活物質として好ましいシリコンと合金を形成しにくいものであれば特に限定されない。例えば銅、ステンレス(SUS)、鉄、ニッケルなどを好適に利用することができる。また、これらの金属繊維を単独で用いてもよいし、複数で用いてもよい。また、金属繊維に限らず、有機繊維を使用してもよいが、有機繊維を使用する場合、電子の移動を促進するための観点から、金属繊維とともに使用することが好ましい。なお、有機繊維を併用することにより、支持体の柔軟性を高められるメリットがある。有機繊維を併用する場合、金属繊維と有機繊維の質量比は、70:30~95:5とすることが好ましい。また、有機繊維としては、ポリプロピレン、アラミド繊維などが例として挙げられる。
【0049】
金属繊維は、平均繊維長が30mm以上であることが好ましい。平均繊維長が30mm以上であると、支持体全体の金属繊維の末端の数を少なくすることができる。金属繊維は導電性を有する上に、その末端は尖っているため、電池の短絡の原因となったり、電荷が集中しやすく、充放電に関する金属がデンドライトとして析出しやすくなるものの、金属繊維の末端の数を少なくすることができるので、二次電池の信頼性を高めることができる。また、金属繊維が長いことから、絡まりやすく面方向に配向しにくくなり、フェルト状のマットとなって、活物質の保持性にも優れる。また、金属繊維は、平均繊維長が100mm以上であることがさらに好ましい。
なお、平均繊維長の上限には特に制限はないが、製造のしやすさの観点を考慮すると10m以下が好ましい。
平均繊維長は、任意に抽出した繊維全体をほぐし、すべての繊維の長さの和を本数で割ることにより算出する。
【0050】
また、金属繊維の平均繊維径(太さ)には特に制限はないが、太くなりすぎると柔軟性が低下して活物質の保持性が悪くなるため、平均繊維径は0.1~100μmが好ましい。
【0051】
活物質2は、正極用及び負極用のいずれでもよいが、負極では活物質2の体積変化の影響を大きく受けるため、本実施形態に係る電極は、負極への適用が特に有効である。
【0052】
本実施形態に係る電極における支持体1と活物質2の質量比は、1:99~30:70とすることが好ましい。支持体1の割合が多くなるほど電池の容量が少なくなる一方で、活物質2の割合が多くなるほど、支持体1が少なくなることで活物質2の保持性が低下する。より好ましくは、支持体1と活物質2の質量比で、5:95~20:80である。
【0053】
続いて、上記電極層10は、集電体20と一体化されて電極50を構成する。その際、
図2(a)に示すように、電極層10の一表面の全面を集電体20に接合させて電極50を構成してもよいし、同図(b)に示すように、電極層10の一表面の一部を集電体20に接合させて電極50を構成してもよいし、同図(c)に示すように、電極層10における厚み方向の端面の任意の位置(例えば厚さ方向の中央部)に集電体20を接合させて電極50を構成してもよい。
ここで、通常の電極50にあっては、電極で発生する電気を取り出すための集電体を電極層10と広い面積で接触させる必要があるが、本実施形態に係る電極50は、電極層10の構成要素として金属からなる支持体1を有しているので、同図(b)や(c)のような集電体20のよりコンパクトにすることができる。
なお、集電体20は、リード線30を介して外部機器(図示せず)と接続される。
【0054】
集電体を構成する材料としては公知のものを使用できるが、負極集電体の場合は、耐食性に優れ、かつ、リチウムと合金を形成しないものであることが好ましく、例えば、銅、ニッケル等が挙げられ、製造コストの観点から、銅であることが好ましい。
【0055】
上記の電極50を得るには、例えば次のようにする。
【0056】
まず、金属繊維、必要に応じて有機繊維を併用して集成し、所定の形状に成形してマット状の支持体1を作製する。なお、支持体1の厚さには制限はないが、0.1~2mmとするのが適当である。そして、支持体1を、活物質2を含有する溶液に浸漬して、支持体1の繊維間に活物質2を十分に浸透させた後、該支持体1を引き上げ、溶剤を蒸発させることにより、電極層10が得られる。
【0057】
例えば、負極を作製する場合、活物質としてシリコンを75質量%、バインダとしてポリイミドを20質量%、導電助剤としてカーボンブラックを5質量%で含有する溶液を用いる。なお、溶剤としては乾燥しやすいように、アルコール系有機溶剤が好ましい。そして、
図2(a)~
図2(c)に示すように電極層と集電体とを一体化して、電極50を得る。
【0058】
本実施形態に係る電極50は、上記のように構成されるが、電極50は、
図3(a)に示すように、正極52及び負極54を有するリチウムイオン二次電池100の負極54として用いることができる。当該電極50を、リチウムイオン二次電池100の負極54として使用すると、電極50の活物質2を有効に活用することができ、大容量のリチウムイオン用負極54を得ることができる。
【0059】
また、本実施形態に係る電極50は、
図3(b)に示すように、正極52、負極54及び補助電極56を有するリチウムイオン二次電池100の補助電極56として用いることもできる。ここで、電池を長期間使用した場合や、最初の充放電を実施した場合において、充放電に関与する金属がSEI膜として電極表面に固定化されることで、充放電に関与する金属は、正極52及び負極54における活物質2内に吸蔵可能な量より少なくなる。補助電極56は、充放電に関与する金属の減少を補償するために用いられている。正極52又は負極54と補助電極56との間に電流を流し、所定量の金属を正極52又は負極54に導入(ドープ)することによって金属の減少を補うことができる。そして、当該電極50を、リチウムイオン二次電池100の補助電極56として使用すると、電極50の活物質2を有効に活用することができ、大容量のリチウムイオン二次電池用補助電極56を得ることができる。なお、上記補助電極56の詳細については、例えば、特開2018-22608号を参照することができる。
【0060】
本発明はまた、上記した本実施形態に係る電極を備える電池に関する。電池としては、リチウムイオン二次電池100が挙げられるが、これに限定されない。また、上記したようにリチウムイオン二次電池100の負極54や補助電極56として使用することができる。その際の正極としては、公知のものを使用することができる。
【0061】
なお、電池を構成する電解質の種類には制限はなく、公知の電解質を用いることができ、固体電解質でもよく、電解液であってもよい。また、セパレータなどの他の電池要素にも特に制限はない。
【0062】
(発明を実施するための形態)
以下に本発明の電極の特徴が明確になるように、実施例及び比較例を挙げて更に説明する。
【0063】
<実施例>
抄紙された金属繊維(材質:ステンレス、繊維径:8μm、空隙率:78%、縦:20mm×横:20mm×厚み:0.3mm)を支持体として用意し、活物質としてSi:黒鉛:ポリイミド=80:5:15(質量比)であるスラリー(固形分率:58%)を両面から塗工させることで、金属繊維内にSiと黒鉛とからなる活物質が含浸された試験片を作製した。その後、ホットプレートにより60℃/1hrで乾燥し、マッフル炉(通常大気)により100℃/1hr+350℃/1hrで熱硬化させることで、電極の評価サンプル1を得た。
【0064】
<比較例>
ステンレス箔(縦:25mm×横:25mm×厚み:50μm)からなる支持体上に、実施例で用いたスラリーを、縦:20mm×横:20mmで塗工を行って、乾燥・硬化を経て、支持体上に活物質層のある電極の評価サンプル2を得た。
【0065】
実施例及び比較例で作製した評価サンプルにコインセルを用いて、充電率63%までLiドープを行った。このとき、評価サンプル1の電極(活物質と支持体)の膨張率は、38%であった。それに対して、評価サンプル2の活物質層の膨張率は、46%であった。この結果から、実施例では、電極の膨張を抑制することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る電極は、電極の膨張が抑制されることで、大きな容量が得られ、繰り返し充放電しても活物質の剥離が生じにくく長寿命であり、特にリチウムイオン二次電池用として好適である。
【符号の説明】
【0067】
1 支持体
2 活物質
10 電極層
20 集電体
30 リード線
50 電極
52 正極
54 負極
56 補助電極
100 リチウムイオン二次電池