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特許7391603設定データ変更機能を有する制御装置及び制御装置の設定データ変更方法
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  • 特許-設定データ変更機能を有する制御装置及び制御装置の設定データ変更方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】設定データ変更機能を有する制御装置及び制御装置の設定データ変更方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/409 20060101AFI20231128BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G05B19/409 C
B23Q15/00 301H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019189602
(22)【出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021064271
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】崔 航
(72)【発明者】
【氏名】小谷中 洋介
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-131339(JP,A)
【文献】特開2013-059839(JP,A)
【文献】特開平03-043132(JP,A)
【文献】特開平06-320389(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0151989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18ー19/416
B23Q 15/00
B25J 9/16、13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象物の動作を制御する際の設定データを調整するための設定データ変更機能を有する制御装置であって、
制御プログラムに基づいて前記制御対象物への動作指令を行う主制御部と、
操作者が前記制御対象物の動作確認のための試し設定データを入力可能な入力部と、
前記試し設定データを記憶する第1記憶部及び前記動作指令を行う前記設定データを記憶する第2記憶部を含む設定データ記憶部と、
前記設定データ記憶部への入力及び記録を管理する設定データ管理部と、
を備え、
前記設定データ管理部は、前記設定データ記憶部の動作モードを切り替えるモード切替部と、前記第1記憶部及び前記第2記憶部を同期させて前記試し設定データを前記設定データに追加するメモリ同期部と、前記試しデータを破棄するメモリ破棄部と、を含み、
前記設定データ管理部は、前記メモリ破棄部が破棄指令信号を発した後、前記第1記憶部に保存された前記試し設定データを破棄し、前記第2記憶部に保存されていた前回の設定データを前記第1記憶部に戻す動作を実行する機能を有する
設定データ変更機能を有する制御装置。
【請求項2】
少なくとも入力した前記試し設定データを表示する表示部をさらに備え、
前記表示部に表示された前記試し設定データのうち、前記設定データとして前記第2記憶部に記録すべき項目を選択可能な項目選択機能をさらに有する
請求項1に記載の設定データ変更機能を有する制御装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記入力部を統合したタッチパネル方式の構造を有している
請求項2に記載の設定データ変更機能を有する制御装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記動作モードが試しモードであることを操作者に表示する機能をさらに有する
請求項2又は3に記載の設定データ変更機能を有する制御装置。
【請求項5】
前記制御対象物に設けられたセンサからの検出信号を受信して、前記検出信号に基づいて前記制御対象物の動作が正常であるかどうかを判別する状態判別部をさらに備え、
前記状態判別部の判別結果に基づいて、前記設定データ管理部が前記設定データ記憶部への記録を管理する
請求項1~4のいずれか1項に記載の設定データ変更機能を有する制御装置。
【請求項6】
制御対象物の動作を制御する際の設定データを調整するための制御装置の設定データ変更方法であって、
前記制御装置は、制御プログラムに基づいて前記制御対象物への動作指令を行う主制御部と、操作者が前記制御対象物の動作確認のための試し設定データを入力可能な入力部と、前記試し設定データを記憶する第1記憶部及び前記動作指令を行う前記設定データを記憶する第2記憶部を含む設定データ記憶部と、前記設定データ記憶部への入力及び記録を管理する設定データ管理部と、を備え、
前記設定データ記憶部の動作モードを試しモードに変更した後、前記試し設定データを前記第1記憶部に入力し、
前記試し設定データを破棄するかどうかの選択信号に基づいて、前記試し設定データを前記第1記憶部から破棄するか、あるいは前記試し設定データを前記第2記憶部に設定データとして記録し、
前記試し設定データを前記第1記憶部から破棄した場合、前記第2記憶部に保存されていた前回の設定データを前記第1記憶部に戻す動作を実行する
制御装置の設定データ変更方法。
【請求項7】
前記制御装置は、少なくとも入力した前記試し設定データを表示する表示部をさらに備え、
前記表示部に表示された前記試し設定データのうち、前記設定データとして前記第2記憶部に記録すべき項目を選択可能とした
請求項6に記載の制御装置の設定データ変更方法。
【請求項8】
前記表示部に前記動作モードが試しモードであることを操作者に表示する
請求項7に記載の制御装置の設定データ変更方法。
【請求項9】
前記制御対象物に設けられたセンサからの検出信号を受信した後、前記検出信号に基づいて前記制御対象物の動作が正常かどうかを判別し、その判別結果に基づいて前記設定データ記憶部への記録を管理する
請求項6~8のいずれか1項に記載の制御装置の設定データ変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設定データ変更機能を有する制御装置及び制御装置の設定データ変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械等の制御対象物に対して、位置や加工条件等の各種設定データ(パラメータ)による制御指令信号を発信して制御対象物の動作を制御する制御装置は、例えば、制御指令を行うための各種設定データに含まれる数値を指令値あるいは目標値として入力し、これらの設定データの現在値と目標値との間の差分に基づいて制御指令信号を発信する。このような制御装置は、通常、外部記憶装置から読み込んだ加工プログラムに上記設定データを組み合わせて制御指令信号を発信する。
【0003】
このような制御装置において、ワークの材質や形状、あるいは加工の種類等が変更されると、これらの加工に適した設定データに変更される必要がある。こうした場合、予め予備加工等の試験を行っておき、そこで得られたデータを設定データとして適用して制御指令信号を生成している。
【0004】
こうした制御装置の一例として、特許文献1には、試し曲げにより圧力と下部テーブルの速度または変位から外乱を推定し、ワークの曲げ加工時に曲げ力と下部テーブル変位との特性データを収集する試し曲げモードと、ワーク曲げ時に圧力と下部テーブル変位との特性データを収集し、試しモードで得た曲げ力と下部テーブル変位との特性データと比較して、板厚と材料特性による圧力補正値を算出し最終曲げ角度を得るための圧力指令とする圧力指令モードとからなる位置圧力指令部と;前記位置圧力指令部の圧力指令とフィードバックされる流量変化を生じた圧力との偏差を補償する補償器を経て圧力制御弁に与えて圧力制御をする圧力制御部と;を備えるワーク曲げ加工機の曲げ加工装置が開示されている。これにより、ワークの曲げ角度が油温、環境温度、ワークの板厚、材料特性に影響されることなく、その加工精度が向上するとされている。
【0005】
また、特許文献2には、変更するパラメータの加工種毎の値を予めNC装置内のメモリに設定記憶させておき、加工プログラム中に加工種を指定した設定変更指令をプログラムし、加工プログラム実行中、加工プログラムより設定変更指令が読み込まれると、メモリに変更すべきパラメータとして記憶されたパラメータの値を設定変更指令で設定された加工種に対応してメモリに記憶されたパラメータの値に変更して加工プログラムを実行する加工プログラム実行方法が開示されている。これにより、荒加工,中仕上げ加工,仕上げ加工等の加工工程をNC装置により連続して実行する場合であっても、加工所要時間の増大や加工精度の劣化を生じさせることなく、最適のパラメータによって工作機械の加工制御を行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-293550号公報
【文献】特開平6-222819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、加工ごとに設定されるパラメータは、通常、試し加工を事前に行ってその試行錯誤の中で最適と思われるものが採用される。このとき、試し加工の過程で良好な加工結果となる場合もあれば、逆に失敗あるいは不良な加工結果となる場合もある。
【0008】
従来の制御装置の場合、試し加工を行ってフィードバック制御する際や予め加工に用いるパラメータを読み出す際に、当該パラメータを記録が消失しない不揮発性メモリに記憶しておくのが通常である。このような不揮発性メモリを用いれば、電源遮断時や制御対象となる機械の始動時等でもパラメータの情報が保持される。
【0009】
しかしながら、制御対象の機械を用いて試し加工を行うにあたり、パラメータを適宜調整しつつ機械の動作や加工品質等を確認する際に、機械の動作不良やワークの加工不良が発生した場合には、設定したデータ(パラメータ)が不適であるため、調整あるいは変更前のパラメータに戻す必要がある。このとき、パラメータを元に戻すには、そのバックアップを取っておいて再入力するか、あるいは不揮発性メモリに記録された履歴から遡ってデータを戻すこととなり、加工に適した設定データの設定に手間がかかることになる。
【0010】
このような経緯から、産業機械等の制御対象物の動作を制御する上で、その位置や加工条件等の調整における試し動作(試し運転)で実行した設定データを効率よく取捨選択できる機能を有する制御装置及び制御装置の設定データ変更方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による、制御対象物の動作を制御する際の設定データを調整するための設定データ変更機能を有する制御装置は、制御プログラムに基づいて制御対象物への動作指令を行う主制御部と、操作者が制御対象物の動作確認のための試し設定データを入力可能な入力部と、試し設定データを記憶する第1記憶部及び動作指令を行う設定データを記憶する第2記憶部を含む設定データ記憶部と、設定データ記憶部への入力及び記録を管理する設定データ管理部と、を備え、設定データ管理部は、設定データ記憶部の動作モードを切り替えるモード切替部と、第1記憶部及び第2記憶部を同期させて試し設定データを上記設定データに追加するメモリ同期部と、上記試しデータを破棄するメモリ破棄部と、を含む。
【0012】
また、本発明の一態様による、制御対象物の動作を制御する際の設定データを調整するための制御装置の設定データ変更方法は、上記制御装置が、制御プログラムに基づいて制御対象物への動作指令を行う主制御部と、操作者が制御対象物の動作確認のための試し設定データを入力可能な入力部と、試し設定データを記憶する第1記憶部及び動作指令を行う設定データを記憶する第2記憶部を含む設定データ記憶部と、設定データ記憶部への入力及び記録を管理する設定データ管理部と、を備え、設定データ記憶部の動作モードを試しモードに変更した後、試し設定データを第1記憶部に入力し、試し設定データを破棄するかどうかの選択信号に基づいて、試し設定データを第1記憶部から破棄するか、あるいは試し設定データを第2記憶部に設定データとして記録する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、制御プログラムに基づいて制御対象物への動作指令を行う主制御部と、操作者が制御対象物の動作確認のための試し設定データを入力可能な入力部と、試し設定データを記憶する第1記憶部及び動作指令を行う設定データを記憶する第2記憶部を含む設定データ記憶部と、設定データ記憶部への入力及び記録を管理する設定データ管理部と、を備える制御装置において、設定データ記憶部の動作モードを試しモードに変更した後、試し設定データを第1記憶部に入力し、試し設定データを破棄するかどうかの選択信号に基づいて、試し設定データを第1記憶部から破棄するか、あるいは試し設定データを第2記憶部に設定データとして記録するようにしたため、制御対象物の動作を制御する上で、その位置や加工条件等の調整における試し運転で実行した設定データを効率よく取捨選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態による設定データ変更機能を有する制御装置とその周辺装置との関連を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態による制御装置の設定データ変更方法の概要を示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態による制御装置の設定データ変更方法における設定データ記憶部の動作の概要を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態の変形例による制御装置の設定データ変更方法の概要を示すフローチャートである。
図5】第1の実施形態の変形例を実行する際の表示部の一例を示す正面図である。
図6】本発明の第2の実施形態による設定データ変更機能を有する制御装置とその周辺装置との関連を示すブロック図である。
図7】第2の実施形態による制御装置の設定データ変更方法の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の代表的な一例による設定データ変更機能を有する制御装置及び制御装置の設定データ変更方法の実施形態を図面と共に説明する。
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の代表的な一例である第1の実施形態による設定データ変更機能を有する制御装置とその周辺装置との関連を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態による制御装置100は、制御プログラムに基づいて制御対象物(例えば産業機械)10への動作指令を行う主制御部110と、操作者が制御対象物10の動作確認のための試し設定データを入力可能な入力部120と、試し設定データを記憶する第1記憶部132及び動作指令を行う設定データを記憶する第2記憶部134を含む設定データ記憶部130と、設定データ記憶部130への入力及び記録を管理する設定データ管理部140と、主制御部110からの表示指令を受けて上記試し設定データや設定データ、あるいは制御対象物10の状態等を表示する表示部150と、を備える。
【0017】
制御装置100は、制御対象物10あるいは外部記憶装置20と有線又は通信回線等を介して相互に通信可能に接続され、制御対象物10に各種の制御指令を発するとともに、当該制御対象物10に取り付けられた各種センサ(図6の符号12参照)からの検出信号を受信する。また、制御装置100は、外部記憶装置20から制御対象物10の制御動作を記述した制御プログラムを取り込むとともに、必要に応じて上記加工プログラムの更新を行う。
【0018】
ここで、本願明細書において、「設定データ」とは、制御対象物10の動作を制御する上で必要となる設定項目及びそのための数値等を含むものであって、例えば、制御対象物10が備える構成要素の座標系及びその位置データや、当該構成要素の補正項目及びその補正量、あるいは制御対象物10がワークに加工を行う加工装置である場合に、その加工に際して設定される加工条件(パラメータ)等が含まれ得る。そして、「設定データ」は、設定データ記憶部130に常時記録あるいは上書保存されて、上記制御プログラムと組み合わせることにより制御対象物10の制御指令信号を生成する。
【0019】
一方、「試し設定データ」とは、制御対象物10の動作環境や動作条件等が変更されたときに、新たな動作環境や動作条件に合わせて変更される「設定データ」の一部を含むものとする。通常は、「試し設定データ」を用いて「試しモード」による制御対象物10の試し動作を実行し、その結果に基づいて、「試し設定データ」を「設定データ」として追加あるいは上書保存(更新)するかが決定される。
【0020】
主制御部110は、制御対象物10に対して動作指令信号を発する手段であって、外部記憶装置20から制御プログラムの一部を逐次読み込み、当該読み込んだ制御プログラムと設定データ記憶部130に記憶された設定データあるいは試し設定データとを組み合わせて制御指令信号を生成する機能や、制御対象物10に設けられた各種センサ(図示せず)からの検出信号を受信してその検出値に応じて制御指令信号を修正する機能等を含む。また、主制御部110は、必要に応じて外部記憶装置20に保存された制御プログラムを追加あるいは修正する機能を含んでもよい。
【0021】
入力部120は、制御装置100の操作者が動作のオンオフの切り替えや各種データ等を手動で入力可能とされたインターフェースであって、キーボードやペンダント、ジョイスティック等が例示できる。本発明において、操作者は当該入力部120から制御対象物10の動作確認のために行う試し動作に必要な試し設定データの入力を行うことができる。
【0022】
設定データ記憶部130は、制御プログラムと組み合わせられる設定データを記憶保存する手段であって、図1に示すように、上記した試し設定データを記憶する第1記憶部132と設定データを記憶する第2記憶部134と、を含む。ここで、その一例として、第1記憶部132は揮発性メモリからなり、第2記憶部134は不揮発性メモリからなるとともに、第1記憶部132は主制御部110が制御指令信号を生成する際に制御プログラムと組み合わせるためのデータの参照先となるように構成されてもよい。そして、設定データ記憶部130は、設定データ管理部140からの信号に基づいて、第1記憶部132及び第2記憶部134の同期(同一データの保存)を行うか、あるいは第1記憶部132に一時的に保持した試し設定データの破棄を行う。
【0023】
設定データ記憶部130は、図3に示すように、「通常モード」と「試しモード」の2つの動作モードを有しており、これらの動作モードは後述する設定データ管理部140のモード切替部142からの指令信号に基づいて切り替えられる。ここで、「通常モード」では、入力部120から入力された設定データ(データA2、B2)が第1記憶部132に一時的に保持された後、第1記憶部132が第2記憶部134に自動的に同期されることにより、入力された設定データ(データA2、B2)が第2記憶部134に上書保存あるいは追加更新される。
【0024】
一方、「試しモード」では、入力部120からの設定データ(試し設定データ)の入力後において、第1記憶部132と第2記憶部134との自動的な同期が停止され、同期指令信号が入力されるまで両者の同期が待機される。そして、「通常モード」及び「試しモード」のいずれにおいても、上述した主制御部110で実行される制御プログラムとの組み合わせに用いられる設定データは、第1記憶部132に一時的に保持されたものが適用される。これにより、「試しモード」において試し設定データによる試し動作を実行することが可能となる。
【0025】
設定データ管理部140は、上記したとおり、設定データ記憶部130に記憶された設定データの変更動作のための指令信号を発する手段であって、設定データ記憶部130の動作モードを切り替えるモード切替指令信号を発するモード切替部142と、第1記憶部132及び第2記憶部134を同期させて試し設定データを上記設定データに追加する同期指令信号を発するメモリ同期部144と、第1記憶部132に一時保持された試しデータを破棄する破棄指令信号を発するメモリ破棄部146と、を含む。なお、第1の実施形態においては、図1に示すように、モード切替部142、メモリ同期部144及びメモリ破棄部146は、いずれも操作者による入力部120からの入力動作に基づいて指令信号を発するよう構成されている。
【0026】
表示部150は、主制御部110からの表示指令に基づいて操作者に対して各種の情報を表示する手段であって、例えば図5に示すように、表示画面152を備えた構造となっている。なお、図5に示すような表示部150としては、一般的なテレビモニタや液晶パネル等が例示できるが、上記した入力部120を統合したタッチパネル方式の表示画面152を備えた構造を採用してもよい。
【0027】
図2は、第1の実施形態による制御装置の設定データ変更方法の概要を示すフローチャートである。また、図3は、第1の実施形態による制御装置の設定データ変更方法における設定データ記憶部の動作の概要を示すブロック図である。
【0028】
第1の実施形態による制御装置100の設定データ変更方法では、図2に示すように、まず操作者が入力部120から設定データ記憶部130の動作モードを「試しモード」とする切替指令を入力する(ステップS1)。この切替指令はモード切替部142に送信され、これを受信したモード切替部142は、設定データ記憶部130に対して動作モードを「通常モード」から「試しモード」に切り替えるモード切替指令信号を発する。そして、設定データ記憶部130では、「試しモード」へのモード切替指令信号を受信して動作モードを「試しモード」に切り替える。
【0029】
続いて、操作者が入力部120から「試し設定データ」を入力する(ステップS2)。この入力された「試し設定データ」(データA2、B2)は、図3に示すように、直接設定データ記憶部130に送信され、第1記憶部132に一時的に保持される。
【0030】
次に、通常は入力された「試し設定データ」により、制御対象物10の試し動作が実行される。そして、当該試し動作の結果に応じて、操作者は入力した「試し設定データ」を「設定データ」として保存するか、あるいは破棄するかを決定する。なお、「試し設定データ」の保存あるいは破棄の決定は、試し動作を実行せずに行ってもよい。
【0031】
続いて、操作者が入力部120から「試し設定データ」を保存するかあるいは破棄するかの選択指令を入力する(ステップS3)。そして、入力された選択指令は設定データ管理部140に送信され、当該選択指令が破棄かあるいは保存かを判別される(ステップS4)。
【0032】
ステップS4において、選択指令が「破棄」であると判別された場合、メモリ破棄部146が、設定データ記憶部130に対して第1記憶部132に保持されている「試し設定データ」を破棄する破棄指令信号を発する。そして、図3に示すように、第1記憶部132から「試し設定データ」(データA2、B2)が破棄されて第2記憶部134に保存されていた前回の「設定データ」(データA1、B1)に戻されて(ステップS5)、設定データの変更動作を終了する。
【0033】
一方、ステップS4において、選択指令が「保存」であると判別された場合、メモリ同期部144が、設定データ記憶部130に対して第1記憶部132に保持されている「試し設定データ」を第2記憶部134と同期して保存する同期指令信号を発する。そして、図3に示すように、第1記憶部132に保持されていた「試し設定データ」(データA2、B2)が第2記憶部134に「設定データ」(データA2、B2)として記憶されて(ステップS6)、設定データの変更動作を終了する。
【0034】
上記のような動作フローを実行することにより、第1の実施形態による制御装置の設定データ変更方法は、設定データ記憶部の動作モードを試しモードに変更した後、試し設定データを第1記憶部に入力し、試し設定データを破棄するかどうかの選択信号に基づいて、試し設定データを第1記憶部から破棄するか、あるいは試し設定データを第2記憶部に設定データとして記録するため、試し動作で実行した設定データを効率よく取捨選択できる機能を有する制御装置を実現できる。
【0035】
次に、図4及び図5を用いて、第1の実施形態の変形例を説明する。図4は、第1の実施形態の変形例による制御装置の設定データ変更方法の概要を示すフローチャートである。また、図5は、第1の実施形態の変形例を実行する際の表示部の一例を示す正面図である。
【0036】
第1の実施形態の変形例では、図5に示すように、表示画面152に複数の設定項目(例えば工程A~工程C)や設定値(設定データA1~設定データC4)等が表示された表示部150を用いる。ここで、表示画面152では、上記した設定項目や設定データが入力部120を用いた選択により、点滅あるいは反転表示された選択領域154と通常表示のままの未選択領域156とが表示されるように構成されている。
【0037】
第1の実施形態の変形例による制御装置100の設定データ変更方法では、図4に示すように、まず操作者が入力部120から設定データ記憶部130の動作モードを「試しモード」とする切替指令を入力する(ステップS1)。この動作は、図2に示したステップS1の動作と同様である。
【0038】
続いて、操作者が入力部120から「試し設定データ」を入力すると(ステップS2)、入力された「試し設定データ」は、直接設定データ記憶部130に送信され、第1記憶部132に一時的に保持されるとともに、主制御部110からの表示指令に基づいて、図5に示すように、表示部150の表示画面152に表示される(ステップS3a)。
【0039】
次に、図2に示した場合と同様に、通常は入力された「試し設定データ」により、制御対象物10の試し動作が実行される。そして、当該試し動作の結果に応じて、操作者は入力した「試し設定データ」を「設定データ」として保存するか、あるいは破棄するかを決定する。なお、「試し設定データ」の保存あるいは破棄の決定は、試し動作を実行せずに行ってもよい。
【0040】
続いて、操作者が表示画面152を見ながら入力部120を操作し、表示された「試し設定データ」のうちのどの設定項目あるいは設定データを保存するかの選択指令を入力する(ステップS3b)。このとき、図5に示すように、例えば保存したい設定項目あるいは設定データを、点滅あるいは反転表示させた選択領域154として表示することにより区別する。
【0041】
続いて、ステップS3bで行われた「試し設定データ」の選択において、図5に示した表示画面152に表示された設定データに未選択の設定データが存在するかどうか(未選択領域156が存在するかどうか)を判別する(ステップS4a)。すなわち、このステップS4aでは、破棄したい設定データが存在するかどうかが判別される。
【0042】
ステップS4aにおいて、表示画面152の中に表示されたすべての設定データが選択されている(すなわち、図5において未選択領域156が存在しない)と判別された場合、すべての「試し設定データ」が保存対象であるとして、メモリ同期部144が設定データ記憶部130に対して第1記憶部132に保持されているすべての「試し設定データ」を第2記憶部134と同期して保存する同期指令信号を発する。そして、第1記憶部132に保持されていたすべての「試し設定データ」(工程A~C、及びデータA1~C4)が第2記憶部134に「設定データ」として記憶されて(ステップS5a)、設定データの変更動作を終了する。
【0043】
一方、ステップS4aにおいて、表示画面152の中に未選択の設定データが存在する(すなわち、図5において選択領域154が少なくとも1つ存在する)と判別された場合、さらに表示画面152に表示されたすべての設定データが未選択であるかどうかを判別する(ステップS4b)。
【0044】
ステップS4bにおいて、すべての設定データが未選択でない(すなわち、選択領域154と未選択領域156とが混在している)と判別された場合、メモリ同期部144が設定データ記憶部130に対して、第1記憶部132の選択された「試し設定データ」のみを第2記憶部134に同期して保存する同期指令信号を発し(ステップS6a)、その後にメモリ破棄部146が設定データ記憶部130に対して、第1記憶部132の未選択の「試し設定データ」を破棄するとともに、第2記憶部134に保存されていた前回の「設定データ」に戻す破棄指令信号を発して(ステップS6b)、設定データの変更動作を終了する。
【0045】
一方、ステップS4bにおいて、すべての設定データが未選択である(すなわち、選択領域154が存在しない)と判別された場合、そのままステップS6bに移行し、メモリ破棄部146が設定データ記憶部130に対して、第1記憶部132の選択されていないすべての「試し設定データ」を破棄するとともに、第2記憶部134に保存されていた前回の「設定データ」に戻す破棄指令信号を発して(ステップS6b)、設定データの変更動作を終了する。
【0046】
上記のような動作フローを実行することにより、操作者は、表示部150の表示画面152に表示された「試し設定データ」を見ながら保存したいデータと破棄したいデータとを取捨選択することができる。すなわち、本発明による制御装置に「試し設定データ」の項目選択機能をさらに追加することが可能となる。
【0047】
なお、上記した項目選択機能において、図5に示すように、所定の設定項目(例えば工程A)における所定の設定データ(例えばA1、A4)を選択領域に設定することが可能であるのに加えて、設定項目の欄を選択した場合(例えば工程Cを選択した場合)には、自動的にその項目で設定されるべき設定データ(例えばC1~C4)のすべてが選択されるように構成してもよい。また、新規の項目及び設定データを入力部120から入力して表示画面152に表示するように構成してもよい。これにより、選択時の操作者の負担を軽減できる。
【0048】
さらに、図5に示すように、表示画面152において、現在「試しモード」を実行中である旨を表示するモード表示領域158をさらに有するように構成してもよい。これにより、操作者が「通常モード」で(すなわち「試しモード」を経由せずに)直接「設定データ」を変更して、過去に蓄積した重要なデータを上書消去してしまうことを避けることができる。
【0049】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態による設定データ変更機能を有する制御装置とその周辺装置との関連を示すブロック図である。なお、第2の実施形態においては、図1図5に示したブロック図やフローチャート等において、第1の実施形態と同一あるいは共通の構成を採用し得るものについては、同一の符号を付してこれらの繰り返しの説明は省略する。
【0050】
図6に示すように、第2の実施形態による制御装置100は、主制御部110、入力部120、設定データ記憶部130、設定データ管理部140、及び表示部150に加えて、制御対象物10に設けられたセンサ12から得られた検出信号に基づいて、制御対象物10の制御動作が正常になされているかどうかを判別する状態判別部160を備える。ここで、制御対象物10に設けられるセンサ12としては、制御動作中の制御対象物10の状態を把握できるものであればいずれのものを採用可能であり、温度センサや位置センサ、速度センサ、圧力センサ、回転計、電圧計、電流計等が例示できる。
【0051】
状態判別部160は、上記したセンサ12から制御対象物10の制御動作中の状態量を検出信号として受信し、その状態量に基づいて、例えば制御対象物10が正常に動作したかどうかを判別する。そして、状態判別部160は、制御対象物10に対する判別結果を主制御部110に送信する。
【0052】
第2の実施形態において、主制御部110は、第1の実施形態で説明した機能に加えて、状態判別部160からの判別結果に基づいて、「試し設定データ」を破棄するかあるいは保存するかの選択指令信号を発する機能をさらに有する。すなわち、図6に示すように、第2の実施形態による制御装置100では、設定データ管理部140のメモリ同期部144及びメモリ破棄部146が入力部120から指令によって動作するのではなく、主制御部110からの選択指令に基づいて動作する点で異なる。
【0053】
図7は、第2の実施形態による制御装置の設定データ変更方法の概要を示すフローチャートである。第2の実施形態による制御装置100の設定データ変更方法では、図7に示すように、まず操作者が入力部120から設定データ記憶部130の動作モードを「試しモード」とする切替指令を入力し(ステップS1)、「試し設定データ」を入力する(ステップS2)。この入力された「試し設定データ」直接設定データ記憶部130に送信され、第1記憶部132に一時的に保持される。
【0054】
次に、入力された「試し設定データ」を用いて、主制御部110からの制御指令に基づいて、制御対象物10の試し動作が実行される。このとき、状態判別部160は、制御対象物10のセンサ12から制御動作中の検出信号(制御対象物10の状態量)を受信する(ステップS3c)。
【0055】
続いて、状態判別部160が受信した検出信号に基づいて制御対象物10の試し動作が正常かどうかを判別する(ステップS3d)。このときの判別は、例えば検出した状態量が所定の正常範囲内にあるかどうか等の指標により行うことができる。
【0056】
ステップS3dにおいて、状態判別部160によって制御対象物10の試し動作が「異常」であると判別された場合、主制御部110は設定データ管理部140のメモリ破棄部146に「破棄」との選択指令信号を発する(ステップS4c)。続いて、選択指令信号を受けたメモリ破棄部146は、設定データ記憶部130に対して第1記憶部132に保持されている「試し設定データ」を破棄する破棄指令信号を発する。そして、第1記憶部132から「試し設定データ」が破棄されて第2記憶部134に保存されていた前回の「設定データ」に戻されて(ステップS5)、設定データの変更動作を終了する。
【0057】
一方、ステップS3dにおいて、状態判別部160によって制御対象物10の試し動作が「正常」であると判別された場合、主制御部110は設定データ管理部140のメモリ同期部144に「保存」との選択指令信号を発する(ステップS4d)。続いて、選択指令信号を受けたメモリ同期部144は、設定データ記憶部130に対して第1記憶部132に保持されている「試し設定データ」を第2記憶部134と同期して保存する同期指令信号を発する。そして、第1記憶部132に保持されていた「試し設定データ」が第2記憶部134に「設定データ」として記憶されて(ステップS6)、設定データの変更動作を終了する。
【0058】
上記のような動作フローを実行することにより、第2の実施形態による制御装置の設定データ変更方法は、第1実施形態で示した取捨選択機能を、入力部からの操作者の入力でなく、主制御部の制御により自動で行うことが可能となる。なお、第2の実施形態の変形例として、図5で示したような表示部150を用いることにより、図7で示したステップS2とステップS3cとの間に、図4で示したステップS3a~ステップS3bの動作を追加するように構成してもよい。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。本発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0060】
10 制御対象物
20 外部記憶装置
100 制御装置
110 主制御部
120 入力部
130 設定データ記憶部
132 第1記憶部
134 第2記憶部
140 設定データ管理部
142 モード切替部
144 メモリ同期部
146 メモリ破棄部
150 表示部
152 表示画面
154 選択領域
156 未選択領域
158 モード表示領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7