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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】分岐付きケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20231128BHJP
   H01R 4/00 20060101ALI20231128BHJP
   H01R 4/02 20060101ALI20231128BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20231128BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H01B7/00 305
H01R4/00 A
H01R4/02 C
H01R4/18 C
H02G15/08
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019195482
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021068680
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592189860
【氏名又は名称】住友電工産業電線株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213884
【氏名又は名称】住電機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】高橋 俊明
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 俊之
(72)【発明者】
【氏名】金子 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】藤井 常義
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥吾
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】実公昭50-005025(JP,Y1)
【文献】特公昭40-010105(JP,B1)
【文献】特開2000-004516(JP,A)
【文献】特開2008-021646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01R 4/00
H01R 4/02
H01R 4/18
H02G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線導体を有する幹線ケーブルと、
分岐線導体を有する少なくとも1つの分岐線ケーブルと、
前記幹線ケーブルと前記少なくとも1つの分岐線ケーブルとを電気的に接続する接続構造と、を備え、
前記分岐線導体と前記幹線導体とは異種金属からなり、
前記接続構造は、
前記幹線導体と前記分岐線導体とを電気的に接続する接続部材を有し、
前記接続部材は、
前記分岐線導体と電気的に接続される第一部材と、
前記幹線導体と前記第一部材とを電気的に接続する第二部材と、を含み、
前記第二部材は、前記幹線導体及び前記第一部材を把持し、
前記第一部材は、棒状体であり、前記分岐線導体が接触する第一領域と、前記第二部材に把持される第二領域と、を含み、
前記第一領域と前記第二領域とは、異種金属からなり、かつ、前記棒状体の軸方向に直列につながっており、前記第一領域と前記第二領域との境界に溶接部又は圧接部を有し、
前記分岐線導体は前記第一領域の外面に配置される、
分岐付きケーブル。
【請求項2】
幹線導体を有する幹線ケーブルと、
分岐線導体を有する少なくとも1つの分岐線ケーブルと、
前記幹線ケーブルと前記少なくとも1つの分岐線ケーブルとを電気的に接続する接続構造と、を備え、
前記接続構造は、
前記幹線導体と前記分岐線導体とを電気的に接続する接続部材を有し、
前記接続部材は、
前記分岐線導体と電気的に接続される第一部材と、
前記幹線導体と前記第一部材とを電気的に接続する第二部材と、を含み、
前記第二部材は、前記幹線導体を把持する第一把持部と、前記第一部材を把持する第二把持部とを有し、
前記第一把持部及び前記第二把持部のそれぞれの内周面に、砥粒を含むコンパウンドが設けられており、
前記第一部材は、棒状体であり、前記分岐線導体が接触する第一領域と、前記第二把持部に把持される第二領域と、を含み、
前記第一領域と前記第二領域とは、前記棒状体の軸方向に直列につながっており、
前記分岐線導体は前記第一領域の外面に配置される、
分岐付きケーブル。
【請求項3】
幹線導体を有する幹線ケーブルと、
分岐線導体を有する少なくとも1つの分岐線ケーブルと、
前記幹線ケーブルと前記少なくとも1つの分岐線ケーブルとを電気的に接続する接続構造と、を備え、
前記接続構造は、
前記幹線導体と前記分岐線導体とを電気的に接続する接続部材を有し、
前記接続部材は、
前記分岐線導体と電気的に接続される第一部材と、
前記幹線導体と前記第一部材とを電気的に接続する第二部材と、を含み、
前記第二部材は、前記幹線導体及び前記第一部材を把持し、
前記第一部材は、棒状体であり、前記分岐線導体が接触する第一領域と、前記第二部材に把持される第二領域と、を含み、
前記第一領域と前記第二領域とは、前記棒状体の軸方向に直列につながっており、
前記分岐線導体は前記第一領域の外面に配置され、
前記第一領域の外面は前記分岐線導体が配置される溝を有する、
分岐付きケーブル。
【請求項4】
幹線導体を有する幹線ケーブルと、
分岐線導体を有する少なくとも1つの分岐線ケーブルと、
前記幹線ケーブルと前記少なくとも1つの分岐線ケーブルとを電気的に接続する接続構造と、を備え、
前記接続構造は、
前記幹線導体と前記分岐線導体とを電気的に接続する接続部材を有し、
前記接続部材は、
前記分岐線導体と電気的に接続される第一部材と、
前記幹線導体と前記第一部材とを電気的に接続する第二部材と、
前記分岐線導体を前記第一部材に圧縮接続する圧縮部材と、を含み、
前記第二部材は、前記幹線導体及び前記第一部材を把持し、
前記第一部材は、棒状体であり、前記分岐線導体が接触する第一領域と、前記第二部材に把持される第二領域と、を含み、
前記第一領域と前記第二領域とは、前記棒状体の軸方向に直列につながっており、前記第一領域と前記第二領域との境界に溶接部又は圧接部を有し、
前記圧縮部材は、断面C字状の形状を有し、
前記分岐線導体は、前記第一領域の外面に配置された状態で、前記圧縮部材によって前記第一領域に圧縮接続されている、
分岐付きケーブル。
【請求項5】
前記第一領域と前記第二領域との境界に溶接部又は圧接部を有する請求項2または請求項3に記載の分岐付きケーブル。
【請求項6】
前記第一領域と前記第二領域とが金属結合するように接合されている請求項1または請求項4または請求項5に記載の分岐付きケーブル。
【請求項7】
更に、前記分岐線導体を前記第一領域に圧縮接続する圧縮部材を含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の分岐付きケーブル。
【請求項8】
前記分岐線導体は、その先端を除く部分が前記圧縮部材によって圧縮接続されている請求項4または請求項7に記載の分岐付きケーブル。
【請求項9】
複数の前記分岐線ケーブルを備え、
複数の前記分岐線導体が前記第一領域の外面に配置されている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の分岐付きケーブル。
【請求項10】
前記幹線導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の分岐付きケーブル。
【請求項11】
前記少なくとも1つの分岐線ケーブルの前記分岐線導体は、銅又は銅合金からなる請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の分岐付きケーブル。
【請求項12】
前記分岐線導体及び前記第一領域と、前記幹線導体及び前記第二領域とはそれぞれ同種金属からなる請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の分岐付きケーブル。
【請求項13】
前記第一領域は、少なくとも外面が銅又は銅合金からなる請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の分岐付きケーブル。
【請求項14】
前記第一領域の全域が銅又は銅合金からなる請求項13に記載の分岐付きケーブル。
【請求項15】
前記第二領域は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の分岐付きケーブル。
【請求項16】
前記少なくとも1つの分岐線ケーブルの前記分岐線導体は、前記第一領域の外面のうち、前記幹線ケーブルと対向する側とは反対側に配置されている請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の分岐付きケーブル。
【請求項17】
複数の前記分岐線導体は、互いに離間して配置されている請求項9に記載の分岐付きケーブル。
【請求項18】
前記第二部材は、前記幹線導体及び前記第二領域と同種金属からなる請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の分岐付きケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐付きケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、幹線ケーブルと、幹線ケーブルに一端側が電気的に接続される分岐線ケーブルとを備えるケーブルの分岐接続構造が開示されている。幹線ケーブルは、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる幹線導体を有する。分岐線ケーブルは、銅又は銅合金からなる分岐線導体を有する。上記接続構造は、幹線導体と分岐線導体との接続部材を備える。接続部材は、幹線導体及び分岐線導体をそれぞれ把持する幹線把持部及び分岐線把持部を有する。幹線把持部と分岐線把持部とは、一体に成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-4766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
幹線導体及び分岐線導体はそれぞれ、ケーブルの仕様に応じて種々のサイズ、即ち直径を有する。幹線把持部及び分岐線把持部が一体に成形された接続部材の場合、幹線導体及び分岐線導体の各々のサイズに対応した幹線把持部及び分岐線把持部を有する形状とする必要がある。そのため、上記接続部材を用いる場合、多種の幹線把持部と多種の分岐線把持部との組み合わせの数に対応した多種の接続部材を用意する必要がある。上記接続部材は、一般的に鋳造や押出によって製造される。多種の接続部材を製造するには、それぞれに対応した多種の金型が必要であるため、製造が煩雑となり易い。
【0005】
そこで、本開示は、多種のサイズを有する幹線導体と分岐線導体とを少ない種類の接続部材によって接続できる分岐付きケーブルを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の分岐付きケーブルは、
幹線導体を有する幹線ケーブルと、
分岐線導体を有する少なくとも1つの分岐線ケーブルと、
前記幹線ケーブルと前記少なくとも1つの分岐線ケーブルとを電気的に接続する接続構造と、を備え、
前記接続構造は、
前記幹線導体と前記分岐線導体とを電気的に接続する接続部材を有し、
前記接続部材は、
前記分岐線導体と電気的に接続される第一部材と、
前記幹線導体と前記第一部材とを電気的に接続する第二部材と、を含み、
前記第二部材は、前記幹線導体及び前記第一部材を把持し、
前記第一部材は、前記分岐線導体が接触する第一領域と、前記第二部材に把持される第二領域と、を含み、
前記分岐線導体は前記第一領域の外面に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の分岐付きケーブルは、多種のサイズを有する幹線導体と分岐線導体とを少ない種類の接続部材によって接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係る分岐付きケーブルの一例を示す概略説明図である。
図2図2は、実施形態1に係る分岐付きケーブルの接続構造を示す概略構成図である。
図3図3は、実施形態1に係る分岐付きケーブルの接続構造の概略分解図である。
図4図4は、図2に示すIV-IV線概略断面図である。
図5図5は、実施形態1に係る分岐付きケーブルの分岐線導体と第一部材との接続箇所を拡大して示す概略図である。
図6図6は、第二部材を示す概略斜視図である。
図7図7は、圧縮部材を示す概略断面図である。
図8図8は、実施形態2に係る分岐付きケーブルの一例を示す概略説明図である。
図9図9は、実施形態2に係る分岐付きケーブルの接続構造を示す概略構成図である。
図10図10は、図9に示すX-X線概略断面図である。
図11図11は、実施形態2に係る分岐付きケーブルの分岐線導体と第一部材との接続箇所を拡大して示す概略図である。
図12図12は、変形例1の第一部材を示す概略側面図である。
図13図13は、変形例2の第一部材の一例を示す概略側面図である。
図14図14は、変形例2の第一部材の別の例を示す概略側面図である。
図15図15は、変形例3の第一部材を示す概略断面図である。
図16図16は、変形例4の第一部材を示す概略側面図である。
図17図17は、変形例5の第一部材を示す概略側面図である。
図18図18は、変形例6に係る分岐付きケーブルを示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の実施形態に係る分岐付きケーブルは、
幹線導体を有する幹線ケーブルと、
分岐線導体を有する少なくとも1つの分岐線ケーブルと、
前記幹線ケーブルと前記少なくとも1つの分岐線ケーブルとを電気的に接続する接続構造と、を備え、
前記接続構造は、
前記幹線導体と前記分岐線導体とを電気的に接続する接続部材を有し、
前記接続部材は、
前記分岐線導体と電気的に接続される第一部材と、
前記幹線導体と前記第一部材とを電気的に接続する第二部材と、を含み、
前記第二部材は、前記幹線導体及び前記第一部材を把持し、
前記第一部材は、前記分岐線導体が接触する第一領域と、前記第二部材に把持される第二領域と、を含み、
前記分岐線導体は前記第一領域の外面に配置される。
【0011】
上記分岐付きケーブルは、幹線導体と分岐線導体とを電気的に接続する接続部材を、互いに独立した第一部材と第二部材とを含む構成とすることで、次の効果を奏することができる。
【0012】
少ない種類の接続部材にて、多種のサイズを有する幹線導体と分岐線導体とを接続できる。分岐線導体と第二部材とが第一部材を介して接続される構成のため、分岐線導体のサイズの影響が第二部材に及ばない。また、第一部材において、第二部材に把持される第二領域の形状やサイズは、分岐線導体に接続される第一領域の形状やサイズに依存することなく任意の形状やサイズを選択できる。特に、第二領域の形状やサイズは、第一領域の形状やサイズに関係なく、一定にすることもできる。よって、個々の幹線導体と分岐線導体とのサイズに応じた種類の接続部材を用意する必要はなく、接続部材の種類数を削減することができる。
【0013】
また、上記分岐付きケーブルは、第一部材における第一領域の外面に分岐線導体が配置されることで、次の効果を奏することができる。
【0014】
(a)分岐線導体を高い自由度で第一領域に配置することができる。第一領域の外面に分岐線導体を配置するため、外面の面上であれば、どこにでも分岐線導体を配置することができることから、特定の位置に分岐線導体の配置箇所が制約されることがない。よって、上記外面の任意の位置に分岐線導体を配置できる。その結果、分岐線ケーブルと幹線ケーブルとの干渉や、複数の分岐線ケーブル同士の干渉を避け易い位置に分岐線導体を配置することが容易である。
【0015】
(b)複数の分岐線導体であっても容易に第一領域に配置することができる。第一領域の外面に対して分岐線導体を接触状態で配置できればよいため、個々の分岐線導体の配置の自由度が高く、複数の分岐線導体であっても容易に第一領域に配置することができる。よって、一本の幹線ケーブルに対して、一つの接続構造から複数の分岐線ケーブルが引き出される分岐構造を容易に構築できる。
【0016】
(2)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
複数の前記分岐線ケーブルを備え、
複数の前記分岐線導体が前記第一領域の外面に配置されていることが挙げられる。
【0017】
上記形態は、幹線ケーブルに設けた1つの接続構造から複数の分岐線ケーブルが引き出された分岐付きケーブルを構築できる。その理由は、複数の分岐線導体が第一領域の外面に配置されているからである。
【0018】
(3)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記幹線導体は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが挙げられる。
【0019】
上記形態は、分岐付きケーブルを軽量化できる。その理由は、幹線導体が軽金属のアルミニウム又はアルミニウム合金からなるからである。加えて、幹線ケーブルが軽量であることで、幹線ケーブルの配線が容易である。
【0020】
(4)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記少なくとも1つの分岐線ケーブルの前記分岐線導体は、銅又は銅合金からなることが挙げられる。
【0021】
上記形態は、分岐線ケーブルの端末処理が容易である。その理由は、分岐線導体が銅又は銅合金からなると、特殊な工具や熟練したスキルを必要とせず、既存の工具や端子などを用いて端末処理が容易に行えることから、作業性に優れる。
【0022】
(5)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記幹線導体、及び前記少なくとも1つの分岐線ケーブルの前記分岐線導体は、複数の素線が撚り合された撚線であることが挙げられる。
【0023】
上記形態は、分岐付きケーブルの配線が容易である。その理由は、幹線導体及び分岐線導体が撚線であることで、幹線ケーブル及び分岐線ケーブルを曲げられるからである。そのため、幹線ケーブル及び分岐線ケーブルの引き回しが容易である。
【0024】
(6)上記(5)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記分岐線導体の素線径は、前記幹線導体の素線径未満であることが挙げられる。
【0025】
上記形態は、分岐線ケーブルを曲げ易い。その理由は、分岐線導体を構成する撚線の素線が細いほど、分岐線導体を曲げ易いからである。分岐線ケーブルを曲げ易いため、分岐線ケーブルの引き回しが容易である。
【0026】
(7)上記(5)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記分岐線導体の素線径は、前記幹線導体の素線径以上であることが挙げられる。
【0027】
上記形態は、分岐線ケーブルが切れ難い。その理由は、分岐線導体を構成する撚線の素線が太いほど、分岐線導体が切れ難いからである。分岐線ケーブルが切れ難いため、分岐線ケーブルが断線し難い。
【0028】
(8)上記(5)から(7)のいずれか1つに記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記幹線導体、又は前記少なくとも1つの分岐線ケーブルの前記分岐線導体は、前記撚線が圧縮成形された圧縮導体であることが挙げられる。
【0029】
上記形態は、幹線ケーブル又は分岐線ケーブルを細径化できる。その理由は、幹線導体又は分岐線導体が圧縮導体であることで、幹線導体又は分岐線導体の外径を小さくできるからである。
【0030】
(9)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記分岐線導体及び前記第一領域と、前記幹線導体及び第二領域とはそれぞれ同種金属からなることが挙げられる。
【0031】
上記形態は、分岐線導体と第一部材との電気的接続、並びに、幹線導体と第一部材との電気的接続が容易である。これら接続対象の電気的接続が容易である理由は、接続対象同士が同種金属からなることで、接続箇所が同種金属同士の接続となるからである。同種金属同士の接続は、接続箇所に電食が生じることを抑制できるため、電気的接続が容易である。更に、同種金属同士の接続であれば、接続箇所に応力緩和が生じ難いため、機械的に強固に接続し易い。
【0032】
(10)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第一領域は、少なくとも外面が銅又は銅合金からなることが挙げられる。
【0033】
上記形態は、分岐線導体と第一部材との接続抵抗が小さい。その理由は、第一領域の少なくとも外面が導電率の高い銅又は銅合金からなることで、分岐線導体と第一領域との接触抵抗が小さくなるからである。
【0034】
(11)上記(10)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第一領域の全域が銅又は銅合金からなることが挙げられる。
【0035】
上記形態は、分岐線導体と第一部材との接続抵抗が小さい。その理由は、第一領域の全域が導電率の高い銅又は銅合金からなるからである。
【0036】
(12)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第二領域は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが挙げられる。
【0037】
上記形態は、第一部材を軽量化できる。その理由は、第二領域が軽金属のアルミニウム又はアルミニウム合金からなるからである。
【0038】
(13)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第一領域と前記第二領域とは、異種金属からなることが挙げられる。
【0039】
上記形態は、分岐線導体と幹線導体とが異種金属からなる場合、分岐線導体と第一部材との電気的接続、並びに、幹線導体と第一部材との電気的接続が容易である。その理由は、分岐線導体と幹線導体とが異種金属からなる場合であっても、分岐線導体及び第一領域と、幹線導体及び第二領域とをそれぞれ同種金属で構成することができるからである。
【0040】
(14)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第一部材は、棒状体であることが挙げられる。
【0041】
上記形態は、第一部材を第二部材に強固に接続し易い。その理由は、第一部材が棒状体であることで、第二部材が第一部材を把持し易いからである。
【0042】
(15)上記(14)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第一領域と前記第二領域とは、前記棒状体の軸方向に直列につながっていることが挙げられる。
【0043】
上記形態は、分岐線導体を第一部材に接続し易く、かつ、第一部材を第二部材に強固に接続できる。その理由は、分岐線導体が接続される第一領域と、第二部材に把持される第二領域とが棒状体の軸方向に分かれているからである。
【0044】
(16)上記(15)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第一領域と前記第二領域との境界に溶接部又は圧接部を有することが挙げられる。
【0045】
上記形態は、第一領域と第二領域とを強固に接合できる。その理由は、第一領域と第二領域とが溶接又は圧接によって接合されているからである。
【0046】
(17)上記(15)又は(16)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第一領域における前記軸方向に直交する断面積は、前記第二領域における前記軸方向に直交する断面積よりも小さいことが挙げられる。
【0047】
上記形態は、分岐線導体と第一領域との接続箇所のサイズを小さくできる。その理由は、第一領域の上記断面積が第二領域の上記断面積よりも小さいことで、第一領域が第二領域よりも細いからである。そのため、第一領域の外面に分岐線導体を接続したとき、分岐線導体が第二領域の外面よりも外側にはみ出す量を小さくできるからである。
【0048】
(18)上記(15)又は(16)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第一領域における前記軸方向に直交する断面積は、前記第二領域における前記軸方向に直交する断面積よりも大きいことが挙げられる。
【0049】
上記形態は、分岐線導体と第一領域との接触面積を大きくできる。その理由は、第一領域の上記断面積が第二領域の上記断面積よりも大きいことで、第一領域が第二領域よりも太いからである。そのため、第一領域の外面に分岐線導体を接続したとき、分岐線導体と第一領域との接触面積を大きくできるからである。
【0050】
(19)上記(15)又は(16)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第一領域における前記軸方向に直交する断面積は、前記第二領域における前記軸方向に直交する断面積と等しいことが挙げられる。
【0051】
上記形態は、第一部材の生産性を高めることによりを低コスト化できる。その理由は、第一領域と第二領域とを異なる太さに加工する手間を省くことができるからである。
【0052】
(20)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
更に、前記分岐線導体を前記第一領域に圧縮接続する圧縮部材を含むことが挙げられる。
【0053】
上記形態は、分岐線導体と第一部材との接続状態を確保できる。その理由は、分岐線導体が第一領域に圧縮部材によって圧縮接続されていることで、分岐線導体が第一領域の外面に配置された状態が維持されるからである。
【0054】
(21)上記(20)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記圧縮部材は、断面C字状の形状を有することが挙げられる。
【0055】
上記形態は、分岐線導体と第一部材とを容易に圧縮接続できる。その理由は、圧縮部材が断面C字状の形状を有することで、分岐線導体が配置された第一領域の外側から圧縮部材を嵌め込むことができるからである。
【0056】
(22)上記(20)又は(21)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
前記分岐線導体は、その先端を除く部分が前記圧縮部材によって圧縮接続されていることが挙げられる。
【0057】
上記形態は、分岐線導体が第一部材から外れ難い。その理由は、分岐線導体の先端を除く部分が圧縮部材によって圧縮接続されることで、分岐線導体の先端が圧縮箇所よりも径方向の外方に突出するからである。そのため、分岐線導体に引張力が作用しても、分岐線導体の先端が圧縮部材に引っ掛かることによって、圧縮部材から分岐線導体が抜け難くなるからである。
【0058】
(23)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記少なくとも1つの分岐線ケーブルの前記分岐線導体は、前記第一領域の外面のうち、前記幹線ケーブルと対向する側とは反対側に配置されていることが挙げられる。
【0059】
上記形態は、分岐線ケーブルと幹線ケーブルとの干渉を回避できる。その理由は、分岐線導体が幹線ケーブルと対向する側とは反対側に配置されることで、分岐線ケーブルと幹線ケーブルとを離して配置できるからである。
【0060】
(24)上記(2)に記載の分岐付きケーブルの一形態として、
複数の前記分岐線導体は、互いに離間して配置されていることが挙げられる。
【0061】
上記形態は、分岐線ケーブル同士の干渉を回避できる。その理由は、分岐線導体同士が互いに離間して配置されていることで、分岐線ケーブル同士が互いに干渉し難くなるからである。
【0062】
(25)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第二部材は、前記幹線導体及び前記第二領域と同種金属からなることが挙げられる。
【0063】
上記形態は、幹線導体と第一部材との電気的接続が容易である。その理由は、第二部材が幹線導体及び第二領域と同種金属からなることで、幹線導体と第二部材との接続箇所、及び第二領域と第二部材との接続箇所が同種金属同士の接続となるからである。
【0064】
(26)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第二部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが挙げられる。
【0065】
上記形態は、第二部材を軽量化できる。そのため、接続部材全体の軽量化を図ることができる。
【0066】
(27)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
前記第二部材は、
前記幹線導体を把持する第一把持部と、
前記第一部材を把持する第二把持部と、を有することが挙げられる。
【0067】
上記形態は、第二部材が幹線導体及び第一部材を強固に把持できる。その理由は、第二部材が第一把持部と第二把持部とを有することで、幹線導体及び第一部材を個々に把持できるからである。
【0068】
(28)上記の分岐付きケーブルの一形態として、
更に、樹脂モールド部を有し、
前記樹脂モールド部は、前記接続部材、前記幹線導体、及び前記分岐線導体を覆うことが挙げられる。
【0069】
上記形態は、接続部材、幹線導体、及び分岐線導体の腐食を防止できる。その理由は、接続部材、幹線導体、及び分岐線導体が樹脂モールド部によって覆われることで、水分の浸入を防止できるからである。また、上記形態は、樹脂モールド部を有することで、接続部材、幹線導体、及び分岐線導体を電気的、機械的に保護することができる。
【0070】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る分岐付きケーブルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は、同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0071】
[実施形態1]
≪分岐付きケーブル≫
<概要>
実施形態1では、図1に示すように、ビルに配線される分岐付きケーブル3を例に説明する。分岐付きケーブル3は、幹線ケーブル4と、少なくとも1つの分岐線ケーブル5と、幹線ケーブル4と少なくとも1つの分岐線ケーブル5とを電気的に接続する接続構造2とを備える。実施形態1では、1つの接続構造2から1つの分岐線ケーブル5が引き出された形態を例示する。幹線ケーブル4は、図2図3に示すように、幹線導体4aと、幹線導体4aを被覆する被覆層4bとを有する。同様に、分岐線ケーブル5は、分岐線導体5aと、分岐線導体5aを被覆する被覆層5bとを有する。幹線ケーブル4は、長手方向の途中で被覆層4bが剥がされ、幹線導体4aが露出されている。この幹線導体4aが露出する箇所が分岐線ケーブル5との接続箇所となる。分岐線ケーブル5は、その一端側において、被覆層5bが剥がされ、分岐線導体5aが露出されている。接続構造2は、幹線ケーブル4の露出された幹線導体4aと、分岐線ケーブル5の露出された分岐線導体5aとを電気的に接続する接続部材1を有する。接続部材1は、分岐線導体5aと電気的に接続される第一部材10と、幹線導体4a及び第一部材10を把持する第二部材20とを含む点を特徴の1つとする。以下では、分岐付きケーブル3の各構成要素について詳細に説明する。
【0072】
〔幹線ケーブル〕
(幹線導体)
幹線ケーブル4は、図2図3に示すように、幹線導体4aと、幹線導体4aを被覆する被覆層4bとを有する。幹線導体4aは、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)又はそれらの合金などの導電性に優れる金属で構成される。特に、幹線導体4aの材質は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。幹線導体4aがアルミニウム又はアルミニウム合金からなることで、幹線ケーブル4を軽量化できる。アルミニウムとしては、純度が99質量%以上の純Alが利用できる。アルミニウム合金としては、添加元素を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる種々の組成のものが利用できる。添加元素は、例えば、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)などからなる群より選択される1種以上が挙げられる。添加元素の合計含有量は、例えば、0.005質量%以上3.0質量%以下、更に0.05質量%以上1.5質量%以下が挙げられる。例えば、Feの含有量は0.005質量%以上1.5質量%以下、Mgの含有量は0.005質量%以上1.0質量%以下が挙げられる。具体的なAl合金としては、例えば、Al-Fe合金、Al-Fe-Mg合金、Al-Fe-Si合金、Al-Fe-Mg-(Mn,Ni,Zr,Ag)合金、Al-Fe-Cu合金、Al-Fe-Cu-(Mg,Si)合金、Al-Mg-Si-Cu合金などが挙げられる。本例では、幹線導体4aが純Alからなる。
【0073】
幹線導体4aは、例えば、複数の素線が撚り合された撚線、撚線が圧縮成形された圧縮導体などを利用できる。幹線導体4aが撚線である場合、幹線ケーブル4を曲げ易い。幹線導体4aが圧縮導体である場合、幹線導体4aの外径を小さくできる。そのため、幹線ケーブル4の径が小さくなる。幹線導体4aの断面形状は、例えば、円形や楕円形、矩形や六角形といった多角形などが挙げられる。上記断面形状とは、幹線導体4aの長手方向に直交する横断面における形状のことである。本例では、幹線導体4aは、断面円形状の撚線で構成されている。
【0074】
幹線導体4aを構成する撚線の公称断面積は、例えば、100mm以上500mm以下が挙げられる。素線径は、例えば、1.0mm以上3.2mm以下が挙げられる。
【0075】
(被覆層)
被覆層4bは、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ノンハロゲン樹脂などの難燃性に優れる絶縁性材料で構成される。被覆層4bの材質や厚さは、所望の絶縁強度を考慮して適宜選択することができる。
【0076】
幹線ケーブル4は、長手方向の途中において被覆層4bが剥がされて、幹線導体4aが露出された部分を有する。この露出された幹線導体4aに、後述する分岐線ケーブル5の分岐線導体5aが接続部材1を用いて電気的に接続される。
【0077】
〔分岐線ケーブル〕
(分岐線導体)
分岐線ケーブル5は、図2図3に示すように、分岐線導体5aと、分岐線導体5aを被覆する被覆層5bとを有する。分岐線導体5aは、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)又はそれらの合金などの導電性に優れる金属で構成される。特に、分岐線導体5aの材質は、銅又は銅合金であることが好ましい。分岐線導体5aが銅又は銅合金からなることで、分岐線ケーブル5の端末処理が行い易く、作業性に優れる。銅としては、純度が99質量%以上、更に99.9質量%以上の純Cuが利用できる。代表的な純Cuには、タフピッチ銅などが挙げられる。タフピッチ銅は、酸素を0.02質量%以上0.05質量%以下含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる組成のものが挙げられる。銅合金としては、添加元素を含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる種々の組成のものが利用できる。添加元素は、例えば、スズ(Sn)、Ni、Si、Fe、リン(P)、Ag、Cr、Mg、チタン(Ti)、コバルト(Co)などからなる群より選択される1種以上が挙げられる。添加元素の合計含有量は、例えば、0.005質量%以上15質量%以下、更に0.05質量%以上10質量%以下が挙げられる。例えば、Snの含有量は0.005質量%以上10質量%以下、Niの含有量は0.005質量%以上10質量%以下が挙げられる。具体的なCu合金としては、例えば、Cu-Sn合金、Cu-Ni-Si合金、Cu-Mg合金、Cu-Fe合金、Cu-Ag合金、Cu-Co-P合金などが挙げられる。本例では、分岐線導体5aが純Cuからなる。つまり、本例では、分岐線導体5aと幹線導体4aとが異種金属からなる。
【0078】
分岐線導体5aは、上述した幹線導体4aと同様に、例えば、複数の素線が撚り合された撚線、撚線が圧縮成形された圧縮導体などを利用できる。分岐線導体5aが撚線である場合、分岐線ケーブル5を曲げ易い。分岐線導体5aが圧縮導体である場合、分岐線導体5aの外径を小さくできる。そのため、分岐線ケーブル5の径が小さくなる。分岐線導体5aの断面形状は、例えば、円形や楕円形、矩形や六角形といった多角形などが挙げられる。上記断面形状とは、分岐線導体5aの長手方向に直交する横断面における形状のことである。本例では、分岐線導体5aは、断面円形状の撚線で構成されている。
【0079】
分岐線導体5aを構成する撚線の公称断面積は、幹線導体4aの公称断面積よりも小さい。分岐線導体5aの公称断面積は、例えば、5.0mm以上100mm以下が挙げられる。素線径は、例えば、0.45mm以上2.6mm以下が挙げられる。分岐線導体5aの素線径は、幹線導体4aの素線径未満でもよいし、幹線導体4aの素線径以上でもよい。分岐線導体5aの素線径が幹線導体4aの素線径未満である場合、分岐線導体5aの素線が細いことから、分岐線導体5aを曲げ易い。そのため、分岐線ケーブル5を曲げ易い。分岐線導体5aの素線径が幹線導体4aの素線径以上である場合、分岐線導体5aの素線が太いことから、分岐線導体5aが切れ難い。そのため、分岐線ケーブル5が切れ難い。
【0080】
(被覆層)
被覆層5bは、例えば、PVC、PE、ノンハロゲン樹脂などの難燃性に優れる絶縁性材料で構成される。被覆層5bの材質や厚さは、所望の絶縁強度を考慮して適宜選択することができる。
【0081】
分岐線ケーブル5は、一端側において、被覆層5bが剥がされて、分岐線導体5aが露出された部分を有する。この露出された分岐線導体5aは、露出された幹線導体4aに後述の接続部材1を用いて接続される。
【0082】
〔接続部材〕
接続部材1は、図2図3に示すように、分岐線導体5aと電気的に接続される第一部材10と、幹線導体4a及び第一部材10を把持する第二部材20とを有する。第一部材10と第二部材20とは、独立した部材で構成される。第一部材10は、幹線導体4aの長手方向と平行になるように配置されている。図2では、幹線導体4aと分岐線導体5aとを接続部材1によって接続した後の状態を示す。図3では、接続部材1を組み付ける前の状態を示す。
【0083】
〔第一部材〕
第一部材10は、分岐線導体5aが接触する第一領域11と、第二部材20に把持される第二領域12とを含む。第一部材10は、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)又はそれらの合金などの導電性に優れる金属で構成される。本例では、第一部材10は、棒状体であり、第一領域11と第二領域12とが棒状体の軸方向に直列につながっている。第一領域11と第二領域12とは、第一部材10の一端側から順に並んでいる。第一部材10の断面形状は、例えば、円形や楕円形、矩形や六角形といった多角形などが挙げられる。上記断面形状とは、棒状体の軸方向に直交する横断面における形状のことである。本例では、第一部材10は、断面円形状の丸棒体で構成されている。
【0084】
(第一領域)
第一領域11は、その外面に分岐線導体5aが配置される。ここでいう第一領域11の外面とは、第一領域11の周方向に沿う面のことをいう。本例では、第一領域11が中実の丸棒状である。第一領域11の外径は、分岐線導体5aの外径に応じて適宜選択することができる。第一領域11の断面形状が非円形の場合、断面の包絡円の直径を外径とする。第一領域11の外径は、例えば、分岐線導体5aの電流容量以上となるように設定することが挙げられる。更に、第一領域11の外径は、例えば、分岐線導体5aの引張強度以上となるように設定することが好ましい。
【0085】
第一領域11の外面に分岐線導体5aの一端側が配置されることによって、分岐線導体5aと第一部材10とが接続される。本例では、後述する図4図5に示す圧縮部材30によって、分岐線導体5aが第一領域11に圧縮接続されている。これにより、分岐線導体5aが第一領域11の外面に配置された状態が維持されることで、分岐線導体5aと第一部材10との接続状態が確保されている。分岐線導体5aと第一部材10との接続は、例えば、分岐線導体5aを第一領域11の外面に溶接することでも可能である。
【0086】
〈分岐線導体の配置位置〉
分岐線導体5aは、第一領域11の外面に沿わせて配置される。分岐線導体5aは、第一領域11の外面の任意の位置に配置することができる。本例では、分岐線導体5aは、図4に示すように、幹線ケーブル4と対向する側とは反対側に配置されている。そうすることで、図2に示すように、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4とを離して配置できる。そのため、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4とが互いに干渉し難くなる。また、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4とを離して配置できることから、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との間に隙間を確保し易い。そのため、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との隙間に、後述する樹脂モールド部6の構成樹脂が充填され易い。
【0087】
(第二領域)
第二領域12は、後述する第二部材20に把持される。本例では、第二領域12が中実の丸棒状である。第二領域12の外径は、所望の引張強度を考慮して適宜選択することができる。
【0088】
〈第一領域と第二領域の材質の関係〉
第一領域11と第二領域12とは、同種金属であってもよいし、異種金属であってもよい。本例のように、分岐線導体5aと幹線導体4aとが異種金属からなる場合は、第一領域11と第二領域12とは異種金属からなることが好ましい。第一領域11と第二領域12とが異種金属からなることで、第一領域11を分岐線導体5aと同種金属で構成し、かつ、第二領域12を幹線導体4aと同種金属で構成できるからである。一方で、分岐線導体5aと幹線導体4aとが同種金属からなる場合は、第一領域11及び第二領域12は同種金属からなることが好ましい。そうすることで、第一領域11を分岐線導体5aと同種金属で構成し、かつ、第二領域12を幹線導体4aと同種金属で構成できるからである。ここで、同種金属とは、純金属の構成金属、又は合金のベース金属が共通することをいう。例えば、純銅同士、純アルミニウム同士は勿論のこと、純銅と銅合金、純アルミニウムとアルミニウム合金の各組み合わせも同種金属に含まれる。更に、組成の異なる銅合金同士、組成の異なるアルミニウム合金同士も同種金属に含まれる。
【0089】
第一領域11は、分岐線導体5aと上述した同種金属からなることが好ましい。例えば、分岐線導体5aが銅又は銅合金からなる場合、第一領域11は銅又は銅合金からなることが挙げられる。分岐線導体5a及び第一領域11が同種金属からなることで、分岐線導体5aと第一領域11との接続箇所が同種金属同士の接続となる。同種金属同士の接続であれば、接続箇所に電食が生じることを抑制できる。そのため、分岐線導体5aと第一部材10との電気的接続が容易である。更に、同種金属同士の接続であれば、接続箇所に応力緩和が生じ難いため、分岐線導体5aと第一部材10とを機械的に強固に接続し易い。本例では、第一領域11の全域が、分岐線導体5aと同様に、純Cuからなる。
【0090】
第二領域12は、幹線導体4aと上述した同種金属からなることが好ましい。例えば、幹線導体4aがアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合、第二領域12はアルミニウム又はアルミニウム合金からなることが挙げられる。幹線導体4a及び第二領域12が同種金属からなることで、第二部材20を幹線導体4a及び第二領域12と同種の金属で構成することができる。この場合、幹線導体4aと第二部材20との接続箇所、及び第二領域12と第二部材20との接続箇所が同種金属同士の接続となる。同種金属同士の接続であれば、接続箇所に電食が生じることを抑制できる。そのため、幹線導体4a及び第一部材10を第二部材20に電気的に接続することが容易である。つまり、幹線導体4aと第一部材10との電気的接続が容易である。更に、同種金属同士の接続であれば、接続箇所に応力緩和が生じ難いため、幹線導体4a及び第一部材10を第二部材20に機械的に強固に接続し易い。本例では、第二領域12が、幹線導体4aと同様に、純Alからなる。つまり、本例では、第一領域11と第二領域12とが異種金属からなる。
【0091】
〈第一領域と第二領域の形状の関係〉
第一領域11及び第二領域12の形状は、同じであってもよいし、異なってもよい。本例では、第一領域11及び第二領域12は、断面円形状の丸棒状である。第一領域11及び第二領域12が丸棒状であれば、加工し易く、第一部材10の製造コストを削減できる。第一領域11と第二領域12との形状を異ならせる場合、例えば、一方の形状を断面円形状の丸棒状とし、他方の形状を断面多角形状の角棒状とすることが挙げられる。第一領域11を角棒状とした場合、第一領域11の外面が平面で構成されることになるので、分岐線導体5aを第一領域11の外面に沿わせて配置し易い。
【0092】
〈第一領域と第二領域のサイズの関係〉
第一領域11における断面積は、第二領域12における断面積と異なっていてもよいし、同じであってもよい。上記断面積とは、棒状体の軸方向に直交する横断面における面積のことである。本例では、第一領域11の断面積が第二領域12の断面積よりも小さい、即ち、第一領域11が第二領域12よりも細い。そのため、図4図5に示すように、第一領域11の外面に分岐線導体5aを接続したとき、分岐線導体5aが第二領域12の外面よりも外側にはみ出す量を小さくできる。よって、分岐線導体5aと第一領域11との接続箇所の外径を小さくできる。また、第一領域11が第二領域12よりも細い場合、図5に示すように、第一領域11と第二領域12との間に段差が形成される。第一領域11の外面に分岐線導体5aを配置するとき、この段差に分岐線導体5aの先端50aを当て止めすることができる。第一領域11の断面積が第二領域12の断面積よりも大きい、即ち、第一領域11が第二領域12よりも太くてもよい。この場合、第一領域11の外面に分岐線導体5aを接続したとき、分岐線導体5aと第一領域11との接触面積を大きくできる。第一領域11の断面積が第二領域12の断面積と等しい、即ち、第一領域11と第二領域12とが同じ太さでもよい。この場合、第一領域11を第二領域12の太さに合わせて加工する手間を省くことができるので、第一部材10の製造コストを削減できる。
【0093】
〈第一領域と第二領域との接合手段〉
第一領域11と第二領域12とは、例えば、溶接又は圧接によって接合されている。そうすることで、第一領域11と第二領域12とを強固に接合できる。第一領域11と第二領域12とは、端面間に隙間が生じないように接合されていることが好ましい。具体的には、第一領域11を構成する金属原子と第二領域12を構成する金属原子とが金属結合するように接合されていることが挙げられる。第一領域11と第二領域12の金属原子同士が金属結合するような接合としては、例えば圧接による接合が挙げられる。第一領域11と第二領域12とが金属結合して接合されていることで、第一領域11と第二領域12との間に隙間が存在せず、接合界面での接合抵抗の増加を抑制できる。また、第一領域11と第二領域12とが金属結合して接合されていると、第一領域11と第二領域12とを一体物とみなせるため、第一領域11と第二領域12との間に亀裂などの破損が生じることを抑制できる。更に、第一領域11と第二領域12とが金属結合して接合されていれば、第一領域11と第二領域12とが異種金属からなる場合であっても、第一領域11と第二領域12との間で電食が生じることを抑制できる。本例では、第一領域11と第二領域12とが圧接によって接合されており、第一領域11と第二領域12との境界に圧接部15を有する。
【0094】
第一領域11の断面積が第二領域12の断面積よりも小さい場合、第一領域11における第二領域12側の端面は、第二領域12の端面と同等以上の大きさを有することが好ましい。具体的には、第一領域11は、図5に示すように、分岐線導体5aが配置される細部11aと、第二領域12側の端部に設けられる太部11bとを有することが挙げられる。細部11aは、第二領域12よりも細い。即ち、細部11aの断面積は、第二領域12の断面積よりも小さい。太部11bは、第二領域12と同じ太さである。即ち、太部11bの断面積は、第二領域12の断面積と等しい。第一領域11が細部11aを有することで、上述したように、分岐線導体5aと第一領域11との接続箇所の外径を小さくできる。また、第一領域11が太部11bを有することで、第一領域11と第二領域12との接合面積を大きくできる。そのため、第一領域11と第二領域12との接合強度を十分に確保できる。
【0095】
第一領域11の断面積が第二領域12の断面積以上の場合、第一領域11における第二領域12側の端面は、第二領域12の端面と同等以上の大きさを有することになる。そのため、第一領域11と第二領域12との接合面積は確保されることから、本例のように、第一領域11における第二領域12側の端部のサイズを変更する必要はない。
【0096】
〔第二部材〕
第二部材20は、図2に示すように、幹線導体4a及び第一部材10を把持することで、幹線導体4aと第一部材10とを電気的に接続する。幹線導体4aと第一部材10とは、互いの軸方向が平行となるように並んで配置される。本例では、第二部材20は、幹線導体4aを把持する第一把持部21と、第一部材10を把持する第二把持部22とを有する。第二部材20の形状は、図6に示すように、並列に設けられた第一把持部21及び第二把持部22を有するブロック状である。図6に示す第二部材20は、第一把持部21及び第二把持部22となる一対のC字状の部分が連結して一体化されている。第一把持部21及び第二把持部22の各スリット21s、22sは開口方向が異なるように設けられている。
【0097】
(第一把持部)
第一把持部21は、幹線導体4aを把持する。第一把持部21は、第二部材20の一端側から他端側に貫通する第一開口部21oと、第一開口部21o内に幹線導体4aを収容可能な第一スリット21sとを含む。幹線導体4aは、幹線ケーブル4の長手方向の途中に露出される。そのため、第一把持部21に第一開口部21o及び第一スリット21sを有することで、第一スリット21sを介して第一開口部21o内に幹線導体4aを収容できる。第一開口部21o内に幹線導体4aを収容した状態で、第一把持部21を径方向に圧縮することで、幹線導体4aが第一把持部21に把持される。第一スリット21sは、第一開口部21oの軸方向に沿って形成されている。圧縮前における第一スリット21sの幅は、幹線導体4aを第一開口部21o内に収容できるように、適宜選択することができる。圧縮前における第一スリット21sの幅は、幹線導体4aの外径よりも大きいことが挙げられる。第一開口部21oは、幹線導体4aの外周長に対応する内周長を有する第一内周面21iを備える。幹線導体4aの外周長に対応する内周長とは、圧縮後の幹線導体4aの全周長の90%以上を覆う内周長のことである。
【0098】
(第二把持部)
第二把持部22は、第一部材10の第二領域12を把持する。第二把持部22は、第二部材20の一端側から他端側に貫通する第二開口部22oを含む。第二開口部22oは、第一開口部21oと並列して設けられている。第一部材10は、分岐線ケーブル5の一端側に設けられる。そのため、第二把持部22は、第二開口部22oの一端側から第一部材10を挿入することで、第二開口部22o内に第二領域12を収容できる。第二開口部22o内に第二領域12を収容した状態で、第二把持部22を径方向に圧縮することで、第二領域12が第二把持部22に把持される。第二開口部22oは、第二領域12の外周長に対応する内周長を有する第二内周面22iを備える。第一部材10の外周長に対応する内周長とは、圧縮後の第二領域12の全周長の90%以上を覆う内周長のことである。この例では、第二把持部22は、第二開口部22oの軸方向に沿って、第二開口部22oに連通する第二スリット22sを有する。しかし、第一部材10は、第二開口部22oの一端側から挿入することができるため、圧縮前における第二スリット22sの幅は、第二領域12の外径よりも小さくてもよい。また、第二把持部22は、第二スリット22sを設けなくてもよい。
【0099】
〈材質〉
第二部材20は、幹線導体4a及び第二領域12と同種金属からなることが好ましい。上述したように、同種金属とは、純金属の構成金属、又は合金のベース金属が共通することをいう。例えば、幹線導体4a及び第二領域12がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合、第二部材20はアルミニウム又はアルミニウム合金からなることが挙げられる。第二部材20が幹線導体4a及び第二領域12と同種金属からなることで、幹線導体4aと第二部材20との接続箇所、及び第二領域12と第二部材20との接続箇所が同種金属同士の接続となる。同種金属同士の接続であれば、接続箇所に電食が生じることを抑制できる。そのため、幹線導体4a及び第一部材10を第二部材20に電気的に接続することが容易である。つまり、幹線導体4aと第一部材10との電気的接続が容易である。更に、同種金属同士の接続であれば、接続箇所に応力緩和が生じ難いため、幹線導体4a及び第一部材10を第二部材20に機械的に強固に接続し易い。本例では、第二部材20が、幹線導体4a及び第二領域12と同様に、純Alからなる。
【0100】
その他、第一把持部21の第一内周面21i上、及び第二把持部22の第二内周面22i上に図示しないコンパウンドを設けてもよい。コンパウンド中には砥粒が含まれる。第二部材20がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合、第二部材20の表面には酸化物層が形成され得る。第一把持部21及び第二把持部22の各内周面21i,22iにコンパウンドを設けることで、幹線導体4aと第二部材20との接続箇所、及び第二領域12と第二部材20との接続箇所にコンパウンドが介在される。幹線導体4a及び第一部材10を把持した際、コンパウンド中の砥粒によって内周面21i、22iの表面に形成された酸化物層を壊して新生面を生成できる。よって、各部材同士を良好に電気的に接続できる。幹線導体4a及び第一部材10を把持した後は、コンパウンドの介在によって隙間が形成され難く、酸化物層が形成され難い。そのため、各部材同士の電気的接続が良好に維持され易い。コンパウンドは導電性を有する粒子を含有することが好ましい。砥粒は上記酸化物層を構成する酸化アルミニウムよりも高硬度であることが好ましい。
【0101】
〔圧縮部材〕
更に、本例では、図4図5に示すように、分岐線導体5aを第一領域11に圧縮接続する圧縮部材30を有する。分岐線導体5aが第一領域11に圧縮部材30によって圧縮接続されていることで、分岐線導体5aが第一領域の外面に配置された状態が維持される。本例では、圧縮部材30は、図4図7に示すように、断面C字状の形状を有する。図4では、分岐線導体5aを第一領域11に圧縮部材30によって圧縮接続した後の状態を示す。図7では、圧縮接続前の圧縮部材30の状態を示す。
【0102】
圧縮部材30は、第一領域11の外面に配置された分岐線導体5aを圧縮接続する。圧縮部材30は、図7に示すように、スリット30sを有する。圧縮部材30がスリット30sを有することで、分岐線導体5aが配置された第一領域11の外側から嵌め込むことができる。その状態で、圧縮部材30を径方向に圧縮することで、分岐線導体5aが第一領域11の外面に圧縮接続される。圧縮部材30を用いて圧縮接続することで、分岐線導体5aを第一領域11に容易に接続することができる。スリット30sの幅は、分岐線導体5aが配置された第一領域11の外側から嵌め込むことができるように、適宜選択することができる。スリット30sの幅は、第一領域11の外径よりも大きいことが挙げられる。但し、スリット30sの幅は、第一領域11の外径よりも大きい必要はない。第一領域11の外面に分岐線導体5aを配置する前に、第一部材10又は分岐線導体5aの端部から圧縮部材30を予め嵌め込んでおき、第一領域11の外面に分岐線導体5aを配置した後、分岐線導体5a上に圧縮部材30を配置することも可能である。そのため、圧縮部材30は、分岐線導体5aが配置された第一領域11の外側から必ずしも嵌め込む必要はない。よって、スリット30sの幅は、第一領域11の外径よりも小さくてもよい。また、圧縮部材30は、スリット30sを有していなくてもよく、筒状のものでもよい。
【0103】
〈材質〉
圧縮部材30は、分岐線導体5aと同種金属からなることが好ましい。圧縮部材30が分岐線導体5aと同種金属からなることで、圧縮部材30と分岐線導体5aとの間で電食が生じることを抑制できる。例えば、分岐線導体5aが銅又は銅合金からなる場合、圧縮部材30は銅又は銅合金からなる。本例では、圧縮部材30が、分岐線導体5aと同様に、純Cuからなる。
【0104】
本例では、図5に示すように、分岐線導体5aの先端50aを除く部分が圧縮部材30によって圧縮接続されている。そうすることで、分岐線導体5aに引張力が作用しても、圧縮部材30から分岐線導体5aが抜け難くなる。その理由は、分岐線導体5aの先端50aを除く部分が圧縮部材によって圧縮接続されていると、先端50aが圧縮箇所よりも径方向の外方に突出するからである。そのため、分岐線導体5aの先端50aが圧縮部材30に引っ掛かるからである。
【0105】
〔樹脂モールド部〕
更に、本例では、図2に示すように、樹脂モールド部6を有する。樹脂モールド部6は、接続部材1、幹線導体4a、及び分岐線導体5aを覆うことによって、水分の浸入を防止する他、これら各部材を電気的、機械的に保護する。樹脂モールド部6は、射出成形により成形されている。樹脂モールド部6は、接続部材1、露出された幹線導体4a及び分岐線導体5aを覆うように成形されている。本例の樹脂モールド部6は、露出された幹線導体4a近傍の被覆層4bと、露出された分岐線導体5a近傍の被覆層5bとに跨るように成形されている。
【0106】
〈材質〉
樹脂モールド部6は、例えば、ポリ塩化ビニルやノンハロゲン樹脂などの難燃性に優れる絶縁性材料で構成される。樹脂モールド部6の材質や厚さは、所望の絶縁強度を考慮して適宜選択することができる。
【0107】
本例では、分岐線導体5aが、図4に示すように、幹線ケーブル4と対向する側とは反対側に配置されていることで、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との間に隙間を確保し易い。そのため、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との隙間に、樹脂モールド部6の構成樹脂が充填され易い。したがって、それぞれの被覆層4b、5bと樹脂モールド部6とが十分に密着し易い。
【0108】
分岐付きケーブル3は、図1に示すように、幹線ケーブル4の長手方向の途中に接続構造2が設けられている。この接続構造2によって幹線ケーブル4と分岐線ケーブル5とが電気的に接続されている。接続構造2は、図2に示すように、接続部材1によって幹線導体4aと分岐線導体5aとを電気的に接続する。分岐付きケーブル3は、電気配線図に基づき、工場内で予め接続部材1を用いて幹線ケーブル4と分岐線ケーブル5とを接続することで構成される。
【0109】
図1に示す分岐付きケーブル3は、ビルの電気室9aを有する階から各階にわたって延びる幹線ケーブル4と、幹線ケーブル4の途中で接続構造2によって電気的に接続された各階に必要な本数の分岐線ケーブル5とを備える。幹線ケーブル4は、ビルの電気室9aを有する階から各階にわたって延びる長さを有する。幹線ケーブル4の先端部には、分岐付きケーブル3をビルに吊り止めるためのケーブルグリップ8が取り付けられている。分岐線ケーブル5は、ビルの各階において必要な本数が幹線ケーブル4にそれぞれ接続され、幹線ケーブル4から各階に延びる長さを有する。接続構造2は、各階ごとに配置されている。
【0110】
この例では、幹線ケーブル4は、図1に示すように、電気室9aから各階にわたって配線されている。幹線ケーブル4の基端部は、電気室9aにおける電気機器に電気的に接続される。幹線ケーブル4は、電気室9a側において被覆層4bが剥がされて、幹線導体4aが露出される。この露出された幹線導体4aには、電気室9aにおける電気機器に接続される端部ケーブル7の導体が接続される。端部ケーブル7は、導体が銅又は銅合金から構成され、幹線ケーブル4と同じ電流容量を有する。幹線導体4aと端部ケーブル7の導体とは、上述した接続部材1と同様の接続部材を用いて電気的に接続できる。具体的には、端部ケーブル7の導体を第一部材10に接続すると共に、幹線導体4a及び第一部材10を第二部材20によって把持する。そうすることで、第二部材20及び第一部材10を介して、幹線導体4aと端部ケーブル7の導体とを電気的に接続することができる。これにより、幹線ケーブル4と端部ケーブル7とを電気的に接続することで、端部接続構造2eが構成される。幹線ケーブル4と電気室9aにおける電気機器との間に端部ケーブル7を介在させることで、電気室9a側におけるケーブルの端末処理が行い易く作業性を向上できる。
【0111】
この例では、分岐線ケーブル5は、図1に示すように、ビルの各階において必要な本数が幹線ケーブル4にそれぞれ接続され、幹線ケーブル4から各階に配線されている。分岐線ケーブル5の一端側は、幹線ケーブル4に接続される。また、分岐線ケーブル5の他端側は、端末処理が施されて、各階における各電気機器9bに接続される。電気機器9bとしては、一般コンセント、照明器具、分電盤などが挙げられる。
【0112】
≪効果≫
実施形態1に係る分岐付きケーブル3は、接続部材1を、互いに独立した第一部材10と第二部材20とを含む構成とすることで、次の効果を奏する
【0113】
(1)少ない種類の接続部材によって多種のサイズを有する幹線導体4aと分岐線導体5aとを接続できる。第一部材10において第二領域12の形状やサイズは、第一領域11の形状やサイズに依存することなく任意の形状やサイズを選択できる。例えば、幹線導体4aは100~500mmといった多種のサイズを有し、分岐線導体5aは5~100mmといった多種のサイズを有する。そこで、多種のサイズを有する幹線導体4a及び分岐線導体5aに対応して、幹線導体4aを把持する幹線把持部を10種類のサイズに展開すると共に、分岐線導体5aを把持する分岐線把持部を10種類のサイズに展開することを考える。幹線把持部と分岐線把持部とが一体に成形された接続部材の場合、10種類のサイズの幹線把持部と10種類のサイズの分岐線把持部との組み合わせの数に対応した100種類のサイズの接続部材を用意する必要がある。一方、幹線導体4aを把持する第二部材20が分岐線導体5aを直接把持せず、第二部材20が第一部材10を介して分岐線導体5aと接続される構成の上記接続部材1の場合、10種類のサイズの第二部材20と10種類のサイズの第一部材10とをそれぞれ用意すればよく、合計で20種類の部材を用意すればよい。つまり、接続部材1の種類を大幅に削減できる。また、幹線導体4a及び分岐線導体5aのサイズ展開も行い易い。
【0114】
(2)第一部材10と第二部材20を独立して製造できる。第一部材10と第二部材20とが独立した部材であるため、個々の部材に応じた材質・形状・サイズを選択でき、さらに個々の部材に応じた製法にて各部材を製造することができる。
【0115】
(3)分岐線導体5aと第一部材10との接続と、幹線導体4aと第一部材10との接続とを独立して行うことができる。幹線導体4aと第一部材10との接続は第二部材20にて接続し、分岐線導体5aと第一部材10とは、例えば、圧縮部材30や溶接など、第二部材20とは別の手法により接続できる。よって、個々の接続を簡易な作業にて確実に行うことができ
【0116】
また、実施形態1に係る分岐付きケーブル3は、第一部材10における第一領域11の外面に分岐線導体5aを配置することで、次の効果を奏することができる。
【0117】
(4)分岐線導体5aを高い自由度で第一領域11に配置することができる。第一領域11の外面に分岐線導体5aを配置するため、外面の面上であれば、任意の位置に分岐線導体5aを配置できる。よって、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との干渉や、複数の分岐線ケーブル5同士の干渉を避け易い位置に分岐線導体5aを配置することが容易である。
【0118】
(5)複数の分岐線導体5aであっても容易に第一領域11に配置することができる。第一領域11の外面に対して分岐線導体5aを接触状態で配置できればよいため、個々の分岐線導体5aの配置の自由度が高く、複数の分岐線導体5aであっても容易に第一領域11に配置することができる。
【0119】
(6)第一領域11と分岐線導体5aとの接続手法の選択肢が広い。第一領域11の外面は、特定寸法の孔の内周面などと異なり、形状やサイズの自由度が高い。よって、第一領域11の外面の形状やサイズの制約が少ないため、第一領域11と分岐線導体5aとの接続手法も特定の接続手法に限定され難く、選択の自由度が高い。
【0120】
更に、その他の効果として、次のものが挙げられる。
【0121】
(7)接続対象同士の電気的接続が容易である。その理由は、分岐線導体5a及び第一領域11と、幹線導体4a及び第二領域12とがそれぞれ同種金属であり、かつ、第二部材20が幹線導体4a及び第二領域12と同種金属で構成されているからである。そのため、分岐線導体5aと第一領域11との接続箇所、幹線導体4aと第二部材20との接続箇所、及び第二領域12と第二部材20との接続箇所の全てが同種金属同士の接続となるからである。よって、異種金属同士の接続により生じる電食が生じない。
【0122】
(8)分岐線導体5aと第一部材10との接続抵抗を低減できると共に、第一部材10を軽量化できる。第一領域11が導電率の高い銅又は銅合金からなると共に、第二領域12が軽金属のアルミニウム又はアルミニウム合金からなるからである。
【0123】
(9)分岐線導体5aを第一部材10に接続し易く、かつ、第一部材10を第二部材20に強固に接続できる。第一領域11と第二領域12とが軸方向に分かれているため、分岐線導体5aと第一部材10との接続と、第一部材10と第二部材20との接続とを別々に行えるからである。
【0124】
(10)幹線導体4a及び第一部材10を第二部材20によって強固に把持できる。第二部材20が、第一把持部21及び第二把持部22を有することで、幹線導体4a及び第二領域12を個々に把持できるからである。その他、第二部材20がアルミニウム又はアルミニウム合金からなることで、第二部材20を軽量化できる。
【0125】
(11)分岐付きケーブル3を軽量化できる。その理由は、幹線導体4aがアルミニウム又はアルミニウム合金からなることで、幹線ケーブル4を軽量化できるからである。幹線ケーブル4が軽量であることで、幹線ケーブル4の配線も容易である。
【0126】
(12)分岐線ケーブル5の端末処理が行い易く、作業性に優れる。分岐付きケーブル3の配線する際、分岐線導体5aの端末に端子などを取り付ける端末処理を行う。ビルなどの電気配線に利用されるケーブルの導体には、古くから銅又は銅合金が使用されているので、銅又は銅合金からなる導体の端末処理に必要な部品及び工具類が普及している。そのため、分岐線導体が銅又は銅合金からなることで、特殊な工具や熟練したスキルを必要とせず、既存の工具や端子などを用いて端末処理が容易に行えるからである。
【0127】
(13)分岐付きケーブル3の配線が容易である。幹線導体4a及び分岐線導体5aが撚線であることで、幹線ケーブル4及び分岐線ケーブル5を曲げられる。そのため、幹線ケーブル4及び分岐線ケーブル5の引き回しが容易である。
【0128】
≪用途≫
実施形態1に係る分岐付きケーブル3は、ビル、集合住宅、工場、トンネルなどの電気配線に利用することが可能できる。
【0129】
≪分岐付きケーブルの製造方法≫
実施形態1に係る分岐付きケーブル3は、例えば、以下の工程を備える製造方法によって製造できる。分岐付きケーブル3は、工場で製造される。
第一の工程:幹線ケーブル4及び分岐線ケーブル5を用意する工程
第二の工程:接続部材1を用意する工程
第三の工程:接続部材1を用いて幹線ケーブル4と分岐線ケーブル5とを電気的に接続する工程
第三の工程は、具体的には、次の工程を含む。
A工程:幹線導体4a及び分岐線導体5aをそれぞれ露出する工程
B工程:分岐線導体5aを第一部材10に接続する工程
C工程:幹線導体4a及び第一部材10を第二部材20によって把持する工程
【0130】
〔第一の工程:幹線ケーブル及び分岐線ケーブルを用意する工程〕
第一の工程は、幹線導体4aを有する幹線ケーブル4と、分岐線導体5aを有する分岐線ケーブル5とをそれぞれ用意する。幹線ケーブル4及び分岐線ケーブル5は、分岐付きケーブル3の電気配線図に基づき、所定の長さのものを用意する。また、分岐線ケーブル5は、必要な本数を用意する。
【0131】
〔第二の工程:接続部材を用意する工程〕
第二の工程は、接続部材1として、分岐線導体5aのサイズに対応した第一部材10と、幹線導体4aのサイズに対応した第二部材20とを独立して用意する。上述した第一の工程と第二の工程とは、順序を入れ替えることが可能である。
【0132】
第一部材10は、所定の外径を有する棒状素材を用意する。第一部材10において、第一領域11と第二領域12とが異種金属からなる場合、第一領域11の構成金属からなる第一棒状素材と、第二領域12の構成金属からなる第二棒状素材とをそれぞれ用意する。第一棒状素材と第二棒状素材とを接合する。本例では、第一棒状素材と第二棒状素材との接合は圧接によって行う。圧接は、摩擦圧接とも呼ばれ、第一棒状素材と第二棒状素材の端面同士を接触させ、その接触面に大きな圧力を加えて接合する。具体的には、第一棒状素材と第二棒状素材の各軸を回転軸として回転させながら、両棒状素材の端面同士を高速で擦り合わせる。そのときに生じる摩擦熱によって各棒状素材の接触界面を軟化させると同時に圧力を加えて接合する。第一棒状素材と第二棒状素材とを圧接した場合、第一棒状素材を構成する金属原子と第二棒状素材を構成する金属原子とが金属結合した状態となる。これにより、第一領域11と第二領域12との境界に圧接部15を有する第一部材10が得られる。本例では、第一領域11となる第一棒状素材には、上述した細部11aと太部11bとを有するものを用意する。第二領域12となる第二棒状素材には、所定の外径を有するものを用意する。第一棒状素材及び第二棒状素材として同じ外径のものを用意し、第一棒状素材と第二棒状素材とを接合した後、第一棒状素材の外周を切削してもよい。
【0133】
第二部材20は、幹線導体4aの外径に対応した部分と、第一部材10の第二領域12の外径に対応した部分とを有する鋳型を用いて鋳造、又は金型を用いて押出することで得られる。
【0134】
〔第三の工程:接続部材を用いて幹線ケーブルと分岐線ケーブルとを電気的に接続する工程〕
(A工程:幹線導体及び分岐線導体をそれぞれ露出する工程)
分岐付きケーブル3の電気配線図に基づき、幹線ケーブル4の長手方向の途中における分岐線ケーブル5との接続箇所において、被覆層4bを剥がし、幹線導体4aを露出する。また、必要な本数の分岐線ケーブル5の各端部において、被覆層5bを剥がし、分岐線導体5aを露出する。
【0135】
(B工程:分岐線導体を第一部材に接続する)
露出させた分岐線導体5aを第一領域11の外面に沿わせて配置し、分岐線導体5aと第一部材10とを接続する。本例では、分岐線導体5aを幹線ケーブル4と対向する側とは反対側に配置する(図4)。本例では、分岐線導体5aが配置された第一領域11の外側から圧縮部材30を嵌め込んで、圧縮部材30によって分岐線導体5aを第一領域11の外面に圧縮接続する。このとき、分岐線導体5aの先端50aを除く部分を圧縮部材30によって圧縮接続する。そうすることで、分岐線導体5aの先端50aが圧縮箇所よりも相対的に外方に突出する。
【0136】
(C工程:幹線導体及び第一部材を第二部材によって把持する工程)
露出させた幹線導体4aを第二部材20(図6)の第一スリット21sを介して第一開口部21o内に収納する。一方で、第一部材10を第二領域12側から第二部材20の第二開口部22o内に挿入し、第二開口部22o内に第二領域12を収納する。このとき、第一領域11は第二部材20から露出させる。
【0137】
幹線導体4a及び第二領域12をそれぞれ第一把持部21及び第二把持部22の所定位置に配置した状態で、第一把持部21及び第二把持部22を圧縮する。これにより、第二部材20が幹線導体4a及び第一部材10を把持することで、第二部材20を介して幹線導体4aと第一部材10とが電気的に接続される。
【0138】
上記A~C工程により、第二部材20及び第一部材10を介して、幹線導体4aと分岐線導体5aとを電気的に接続できる。なお、B工程とC工程とは、順序を入れ替えることが可能である。例えば、第一部材10を第二部材20で把持した後、第一領域11に分岐線導体5aを接続してもよい。
【0139】
最後に、図2に示すように、樹脂モールド部6を成形する。樹脂モールド部6は、接続部材1、露出された幹線導体4a及び分岐線導体5aを覆うように成形する。樹脂モールド部6の成形は射出成形によって行う。本例では、露出された幹線導体4a近傍の被覆層4bと、露出された分岐線導体5a近傍の被覆層5bとに跨るように樹脂モールド部6を成形する。
【0140】
幹線導体4a及び分岐線導体5aの露出、接続部材1による幹線ケーブルと分岐線ケーブルとの接続、及び樹脂モールド部6の成形は、幹線ケーブル4に対する分岐線ケーブル5の分岐毎に行えばよい。
【0141】
≪効果≫
上述した分岐付きケーブル3の製造方法は、次の効果を奏する。
【0142】
(1)分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との干渉を回避できる。その理由は、分岐線導体5aを第一部材10に接続する際、第一領域11の外面のうち、幹線ケーブル4と対向する側とは反対側に配置するからである。
【0143】
(2)第一領域11となる第一棒状素材と、第二領域12となる第二領域12とを圧接によって接合することで、第一領域11と第二領域12とを強固に接合できる。第一領域11と第二領域12とを圧接することで、第一領域11と第二領域12とが異種金属からなる場合であっても、第一領域11と第二領域12との間で電食や応力緩和が生じることを防止できる。
【0144】
(3)圧縮部材30によって分岐線導体5aを第一領域11の外面に圧縮接続することで、分岐線導体5aを第一部材10に容易に接続することができる。更に、分岐線導体5aの先端50aを除く部分を圧縮部材30によって圧縮接続することで、分岐線導体5aに引張力が作用しても、分岐線導体5aの先端50aが圧縮部材30に引っ掛かる。よって、圧縮部材30から分岐線導体5aが抜け難くなるため、分岐線導体5aが第一部材10から外れ難い。
【0145】
(4)幹線導体4a及び第二領域12をそれぞれ第一把持部21及び第二把持部22で個々に把持することで、幹線導体4a及び第一部材10を第二部材20によって強固に把持できる。
【0146】
[実施形態2]
図8図11を参照して、実施形態2に係る分岐付きケーブル3を説明する。上述した実施形態1では、図1に示すように、1つの接続構造2から1つの分岐線ケーブル5が引き出された形態を説明した。実施形態2では、図8に示すように、1つの接続構造2から複数の分岐線ケーブル5が引き出された形態を説明する。実施形態2の分岐付きケーブル3は、図10図11に示すように、複数の分岐線導体5aが第一部材10に接続されている点が、上述した実施形態1と異なる。以下の説明は、実施形態1との相違点を中心に行い、実施形態1と同一の構成要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0147】
実施形態2では、図8に示すように、幹線ケーブル4の長手方向の途中に設けられた接続構造2によって、幹線ケーブル4と2つの分岐線ケーブル5とが電気的に接続されている。接続構造2は、図9に示すように、接続部材1によって幹線導体4aと2つの分岐線導体5aとを電気的に接続する。なお、図9では、2つの分岐線ケーブル5が紙面奥行き方向に重なって配置されているため、一方の分岐線ケーブル5のみが図示され、他方の分岐線ケーブル5は紙面奥側に隠れている。
【0148】
2つの分岐線ケーブル5の各分岐線導体5aは、図10図11に示すように、第一部材10の第一領域11の外面に配置されている。2つの分岐線導体5aは、圧縮部材30によって第一領域11に一括して圧縮接続されている。
【0149】
2つの分岐線導体5aは、図10図11に示すように、互いに離間して配置されている。そうすることで、図11に示すように、分岐線ケーブル5同士が互いに干渉し難くなる。また、分岐線ケーブル5同士を離して配置できることから、分岐線ケーブル5間に隙間を確保し易い。そのため、分岐線ケーブル5同士の隙間に樹脂モールド部6(図9)の構成樹脂が充填され易い。したがって、それぞれの被覆層5bと樹脂モールド部6とが十分に密着し易い。本例では、図10図11に示すように、2つの分岐線導体5aが、第一領域11の外面のうち、互いに対向する側に配置されている。そのため、分岐線導体5a同士をより離間して配置できるので、図11に示すように、分岐線ケーブル5同士がより干渉し難くなる。また、分岐線ケーブル5間の隙間をより確保し易くなるので、分岐線ケーブル5同士の隙間に樹脂モールド部6の構成樹脂がより充填され易くなる。したがって、それぞれの被覆層5bと樹脂モールド部6とがより密着し易い。
【0150】
また、本例では、図10に示すように、幹線導体4aと第一部材10との並び方向に対して交差する方向に、2つの分岐線導体5aが並んで配置されている。本例の場合、幹線導体4aと第一部材10との並び方向に対して、2つの分岐線導体5aの並び方向が直交する方向である。幹線導体4aと第一部材10との並び方向とは、それぞれの中心を結ぶ方向のことである。2つの分岐線導体5aの並び方向とは、各導体5aのそれぞれの中心を結ぶ方向のことである。そのため、幹線導体4aと第一部材10との並び方向に沿って、2つの分岐線導体5aが並んで配置される場合に比較して、それぞれの分岐線導体5aを幹線ケーブル4とを離して配置できる。そのため、図9に示すように、各分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との干渉を回避し易い。また、各分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との間に隙間を確保し易いため、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との隙間に樹脂モールド部6の構成樹脂が充填され易い。したがって、被覆層4b、5bと樹脂モールド部6とが十分に密着し易い。
【0151】
実施形態2の分岐付きケーブル3は、実施形態1と同様の効果を奏する他、更に以下の効果を奏する。
【0152】
複数の分岐線導体5aが第一領域11の外面に配置される場合であっても、第一領域11の形状やサイズが、接続対象となる分岐線導体5aの本数に対する制約になり難い。
【0153】
各分岐線導体5aが圧縮部材30によって一括して圧縮接続されていることで、分岐線導体5aと第一部材10との接続が容易である。
【0154】
分岐線導体5aが第一領域11の外面のうち、互いに対向する側にそれぞれ配置されていることで、分岐線導体5a同士をより離間して配置できる。そのため、分岐線ケーブル5同士の干渉をより回避し易い。また、分岐線ケーブル5同士の隙間に樹脂モールド部6の構成樹脂がより充填され易くなるため、それぞれの被覆層5bと樹脂モールド部6とがより密着し易い。
【0155】
更に、幹線導体4aと第一部材10との並び方向に対して直交する方向に、分岐線導体5aが並んで配置されていることで、各分岐線導体5aと幹線ケーブル4とを離して配置できる。そのため、各分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との干渉も回避し易い。また、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4との隙間に樹脂モールド部6の構成樹脂が充填され易いため、被覆層4b、5bと樹脂モールド部6とが十分に密着し易い。
【0156】
[変形例1]
図12を参照して、変形例1を説明する。変形例1は、第一部材10の第一領域11の構成が実施形態1、2と異なる。図12は第一部材10のみを図示し、その以外の部材については図2を参照する。上述した実施形態1、2では、幹線導体4aがアルミニウム又はアルミニウム合金からなり、分岐線導体5aが銅又は銅合金からなる場合、第一領域11の全域が銅又は銅合金からなり、第二領域12がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる形態を説明した。分岐線導体5aが銅又は銅合金からなる場合であっても、第一領域11の少なくとも外面が銅又は銅合金からなれば、第一領域11のその他の領域が第二領域12と同様にアルミニウム又はアルミニウム合金からなってもよい。例えば、図12に示すように、第一領域11の外面に、銅又は銅合金からなる銅系層111cを有することが挙げられる。この銅系層111cは、めっきや蒸着によって形成できる。その他、銅系層111cは、第一部材10の第一領域11の端部に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム系の芯材を設けて、その芯材の外周に銅系の筒状部材を焼き嵌めなどによって嵌め込んでもよい。第一領域11の外面が銅又は銅合金からなることで、分岐線導体5aと第一領域11との接続箇所が同種金属同士の接続となる。そのため、分岐線導体5aと第一領域11との間で電食が生じることを抑制できる。
【0157】
[変形例2]
図13図14を参照して、変形例2を説明する。変形例2は、第一部材10の構成が実施形態1、2と異なる。図13図14は第一部材10のみを図示し、その以外の部材については図2を参照する。
【0158】
図13に示す第一部材10は、第二領域12を挟んで第一領域11とは反対側に第三領域13を有する。第一領域11、第二領域12及び第三領域13は、第一部材10の軸方向に直列につながっており、第一部材10の一端側から順に並んでいる。つまり、第三領域13は、第一部材10の他端側に位置する。本例の第三領域13は、第二領域12と一体に構成されている。
【0159】
(第三領域)
第三領域13は、第一部材10の軸方向と交差する方向に突出する突出部131を有する。突出部131は、第二部材20に対して第一部材10が第一領域11側、即ち分岐線導体5aが接続される側に引っ張られた際に、第二部材20に引っ掛かる。この突出部131は、第一部材10が第二部材20から抜けることを抑制する抜け止め機能を有する。この例では、突出部131は、第一部材10の全周に亘って、第一部材10の軸方向と直交する方向に突出している。つまり、第三領域13は、第二領域12よりも外径が大きい円柱で構成される。また、この例では、突出部131は、第二部材20の端面に接触するように設けられている。つまり、第三領域13は、第二部材20から露出する。突出部131が第二部材20の端面に接触することで、第二領域12と第二部材20との接続箇所に大きな引張力が加わってとしても、第一部材10が第二部材20から抜けることを抑制し易い。第一部材10と第二部材20との接続強度は、分岐線導体5aの破断荷重に対する比率が80%以上、好ましくは90%以上を満たすことが好ましい。上記比率は、第一部材10と第二部材20との接続強度/分岐線導体5aの破断荷重として表すことができる。第三領域13に突出部131を有することで、上記比率を満たし易い。
【0160】
突出部131は、第一部材10が第二部材20から抜け落ちることを抑制できれば、その形状は特に問わない。例えば、第三領域13は、四角柱や六角柱といった多角柱で構成されていてもよい。また、突出部131は、第一部材10の端部から軸方向と交差する方向に突出する突片で構成されていてもよい。突出部131を片で構成する場合、第一部材10の周方向に沿って突片を等間隔に複数設けることが好ましい。突片の形状は、棒状や扇状など適宜な形状を選択できる。
【0161】
第一部材10が突出部131を有する第三領域13を備える場合、上述した第一部材10を第二部材20に把持する工程において、第一部材10を第三領域13側から第二部材20の第二開口部22o内に挿入できない場合がある。その場合、第一部材10を第一領域11側から第二部材20の第二開口部22o内に挿入する。そのため、上述した分岐線導体5aを第一部材10に接続する工程は、第一部材10を第二部材20で把持した後、第一領域11に分岐線導体5aを接続する。
【0162】
変形例2の別の例を図14に基づいて説明する。図13に示す変形例2の一例では、第一部材10が、突出部131を有する第三領域13を備え、突出部131が第一部材10に一体に設けられた形態を説明した。突出部131は、第一部材10とは別体で構成されていてもよい。例えば図14に示すように、第一部材10は、突出部131を有する第三領域13を備えず、第二領域12における第一領域11と反対側の端部に、貫通孔12hを有することが挙げられる。貫通孔12hは、第一部材10の軸方向と交差する方向に貫通する。この貫通孔12hには、ボルト12bが挿通され、ボルト12bの先端にナット12nが取り付けられる。貫通孔12hに挿通されたボルト12bにナット12nが取り付けられると、ボルト12bの頭部及びナット12nが第二領域12の外方に位置する。そのため、ボルト12b及びナット12nは、上述した図13に示す突出部131と同様に、抜け止め機能を有する。
【0163】
また、ボルト12b及びナット12nの代わりに、第二領域12の外径よりも長い長さを有するピンを用いることができる。ピンは、貫通孔12hに挿通された状態で固定されるような外径のものを用いる。例えば、貫通孔12hにピンが圧入されると、ピンの両端部が第二領域12の外方に位置することになり、上述した突出部131と同様の機能を有する。
【0164】
その他、図示しないが、第一部材10は、突出部131を有する第三領域13を備えず、第二領域12における第一領域11と反対側の端面に、ねじ切りされた止まり穴を有してもよい。止まり穴は、第一部材10と同心状に形成することが好ましい。この止まり穴には、第一部材10の外径よりも大きい外径の頭部を有するボルトが取り付けられる。止まり穴にボルトが取り付けられると、ボルトの頭部が第二領域12の外方に位置することになり、上述した突出部131と同様の機能を有する。
【0165】
突出部131を第一部材10と別体で構成することで、第一部材10の外形を単純形状とできるため、第一部材10を製造し易くなる。また、第一部材10自体に突出部131を備えないため、第一部材10を第二部材20の第二開口部22oに挿入可能である。そのため、第一領域11に分岐線導体5aを接続した後に、第一部材10を第二部材20で把持することができる。上述したボルト12bやナット12n、ピンは、第二部材20と接触することが多いため、第二領域12と同種金属からなることが好ましい。
【0166】
[変形例3]
図15を参照して、変形例3を説明する。変形例3は、第一領域11の外面に溝116を有する点が実施形態1、2と異なる。この溝116は、分岐線導体5aが配置される位置に設けられている。溝116は、第一部材10の軸方向に沿って形成されている。溝116は、第一領域11の外面に分岐線導体5aを配置するとき、分岐線導体5aの位置決めに利用する。溝116の大きさは、分岐線導体5aの外径に応じて適宜選択することができる。溝116の断面形状は、分岐線導体5aの位置決めに利用できれば、特に問わない。例えば、溝116の断面形状は、図15に示すように円弧状とすることが挙げられる。その他、溝116の断面形状は、V字状やスクウェアブラケット状でもよい。溝116は、少なくとも1つあればよく、複数あってもよい。溝116の数は、第一領域11の外面に配置される分岐線導体5aと同数でもよいし、それ以上あってもよい。複数の溝116を設ける場合、第一領域11の周方向に沿って等間隔に設けることが好ましい。複数の溝116が等間隔に設けられていることで、複数の分岐線導体5aを配置する場合、分岐線導体5a同士を互いに離間して配置できる。また、分岐線導体5aが溝116に配置されることで、分岐線導体5aと第一領域11との接触面積を大きくできる。
【0167】
[変形例4]
図16を参照して、変形例4を説明する。変形例4は、第一領域11と第二領域12との間に屈曲部16を有する点が実施形態1、2と異なる。図16は第一部材10のみを図示し、その以外の部材については図2を参照する。上述した実施形態1、2では、第一領域11と第二領域12の各軸が直列に並んだ形態を説明した。図16に示す第一部材10は、第二領域12における第一領域11側の端部に屈曲部16を有する。この屈曲部16によって、第二領域12の軸に対して第一領域の11の軸がずれている。第一部材10は、第二領域12が幹線導体4aに近接し、第一領域11が幹線導体4aから離反する向きに幹線ケーブル4対して配置される。第一部材10に屈曲部16が設けられていることで、分岐線導体5aを幹線ケーブル4からより離して配置できる。そのため、分岐線ケーブル5と幹線ケーブル4とがより干渉し難くなる。
【0168】
[変形例5]
図17を参照して、変形例5を説明する。変形例5は、第一部材10の両端に第一領域11を有する点が実施形態1、2と異なる。図17は第一部材10のみを図示し、その以外の部材については図2を参照する。上述した実施形態1、2では、第一部材10の一端側にのみ第一領域11を有する形態を説明した。図17に示す第一部材10は、第二領域12の両側に第一領域11を有する。各第一領域11の外面に分岐線導体5aを配置することで、複数の分岐線導体5aを第一部材10に接続することができる。そのため、一つの接続構造2から複数の分岐線ケーブル5を引き出すことが可能である。また、第一部材10の両端に第一領域11が設けられているため、分岐線ケーブル5の引き出し方向を幹線ケーブル4沿いの双方としたり、任意の一方向を選択したりできる。
【0169】
[変形例6]
図18を参照して、変形例6を説明する。変形例6は、幹線ケーブル4の基端部が電気室9aにおける電気機器に直接接続されている点が実施形態1、2と異なる。上述した実施形態1、2では、幹線ケーブル4の基端部に端部ケーブル7を電気的に接続し、幹線ケーブル4と電気室9aにおける電気機器とを端部ケーブルを介して電気的に接続する形態を説明した。その他、幹線ケーブル4の基端部において端末処理が施され、幹線ケーブル4を電気室9aにおける電気機器に直接接続してもよい。この場合、接続部材を用いて端部ケーブル7との端部接続構造2eを構成する必要がないため、部品コストを削減できる。
【0170】
[変形例7]
その他、幹線導体4a、分岐線導体5a、第一部材10、第二部材20、及び圧縮部材30のいずれの部材をも銅又は銅合金で構成したり、いずれの部材をもアルミニウム又はアルミニウム合金で構成することもできる。
【符号の説明】
【0171】
1 接続部材
10 第一部材
11 第一領域
11a 細部 11b 太部
111c 銅系層
116 溝
12 第二領域
12h 貫通孔 12b ボルト 12n ナット
13 第三領域
131 突出部
15 圧接部
16 屈曲部
20 第二部材
21 第一把持部
21o 第一開口部 21i 第一内周面 21s 第一スリット
22 第二把持部
22o 第二開口部 22i 第二内周面 22s 第二スリット
2 接続構造
2e 端部接続構造
30 圧縮部材
30s スリット
3 分岐付きケーブル
4 幹線ケーブル
4a 幹線導体 4b 被覆層
5 分岐線ケーブル
5a 分岐線導体 5b 被覆層
50a 先端
6 樹脂モールド部
7 端部ケーブル
8 ケーブルグリップ
9a 電気室 9b 電気機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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