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特許7391618監視装置、表示装置、監視方法及び監視プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】監視装置、表示装置、監視方法及び監視プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
G05B23/02 302T
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019202300
(22)【出願日】2019-11-07
(65)【公開番号】P2021077013
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 翔大
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-227701(JP,A)
【文献】特開2011-253491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントの稼働状況を監視するための監視装置であって、
前記プラントに関するプロセスデータを取得する取得部と、
複数の時間範囲を用いて、前記プロセスデータに関する複数の移動平均を算出する第1算出部と、
少なくとも1つの期間における前記複数の移動平均の変化量を算出する第2算出部と、
前記変化量の平均及び標準偏差に基づいて、前記変化量の異常度を算出する第3算出部と、
を備える監視装置。
【請求項2】
前記第2算出部は、複数の期間における前記複数の移動平均の変化量を算出する、
請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
プラントの稼働状況を監視するための監視装置であって、
前記プラントに関するプロセスデータを取得する取得部と、
少なくとも1つの時間範囲を用いて、前記プロセスデータに関する移動平均を算出する第1算出部と、
複数の期間における前記移動平均の変化量を算出する第2算出部と、
を備える監視装置。
【請求項4】
前記第1算出部は、前記プロセスデータに関する複数の移動平均を算出し、
前記第2算出部は、前記複数の期間における前記複数の移動平均の変化量を算出する、
請求項3に記載の監視装置。
【請求項5】
少なくとも前記第1算出部及び前記第2算出部により算出される値に基づいて、前記プラントの稼働状況を表示する表示部をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項6】
プラントの稼働状況を監視するための表示装置であって、
前記プラントに関するプロセスデータを取得する取得部と、
複数の時間範囲を用いて、前記プロセスデータに関する複数の移動平均を算出する第1算出部と、
少なくとも1つの期間における前記複数の移動平均の変化量を算出する第2算出部と、
前記変化量の平均及び標準偏差に基づいて、前記変化量の異常度を算出する第3算出部と、
を備え、
前記第1算出部及び前記第2算出部により算出される値に基づいて、前記プラントの稼働状況を表示する、
表示装置。
【請求項7】
プラントの稼働状況を監視するための表示装置であって、
前記プラントに関するプロセスデータを取得する取得部と、
少なくとも1つの時間範囲を用いて、前記プロセスデータに関する移動平均を算出する第1算出部と、
複数の所定期間における前記移動平均の変化量を算出する第2算出部と、
前記変化量の平均及び標準偏差に基づいて、前記変化量の異常度を算出する第3算出部と、
を備え、
前記第1算出部及び前記第2算出部により算出される値に基づいて、前記プラントの稼働状況を表示する、
表示装置。
【請求項8】
プラントの稼働状況を監視するための監視方法であって、
監視装置によって、
前記プラントに関するプロセスデータを取得することと、
複数の時間範囲を用いて、前記プロセスデータに関する複数の移動平均を算出することと、
少なくとも1つの期間における前記複数の移動平均の変化量を算出することと、
前記変化量の平均及び標準偏差に基づいて、前記変化量の異常度を算出することと、
を含む監視方法。
【請求項9】
プラントの稼働状況を監視するための監視方法であって、
監視装置によって、
前記プラントに関するプロセスデータを取得することと、
少なくとも1つの時間範囲を用いて、前記プロセスデータに関する移動平均を算出することと、
複数の期間における前記移動平均の変化量を算出することと、
前記変化量の平均及び標準偏差に基づいて、前記変化量の異常度を算出することと、
を含む監視方法。
【請求項10】
プラントの稼働状況を監視するための監視プログラムであって、
監視装置が備える演算部を、
前記プラントに関するプロセスデータを取得する取得部、
複数の時間範囲を用いて、前記プロセスデータに関する複数の移動平均を算出する第1算出部
なくとも1つの期間における前記複数の移動平均の変化量を算出する第2算出部、及び
前記変化量の平均及び標準偏差に基づいて、前記変化量の異常度を算出する第3算出部、
として機能させる監視プログラム。
【請求項11】
プラントの稼働状況を監視するための監視プログラムであって、
監視装置が備える演算部を、
前記プラントに関するプロセスデータを取得する取得部、
少なくとも1つの時間範囲を用いて、前記プロセスデータに関する移動平均を算出する第1算出部
数の期間における前記移動平均の変化量を算出する第2算出部、及び
前記変化量の平均及び標準偏差に基づいて、前記変化量の異常度を算出する第3算出部、
として機能させる監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置、表示装置、監視方法及び監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントにセンサを設置して、センサの測定値を通じてプラントの稼働状況を監視することが行われている。例えば、下記特許文献1には、ボイラへの流入量とボイラからの流出量との差分流量を経過時間に沿って所定の演算周期毎に積算して差分流量の積算値を算出し、経過時間とともに所定の割合で増加する基準値を差分流量の積算値を算出するのと同期して設定し、積算値と基準値を所定の演算周期毎に比較して、積算値が基準値を越えたときに伝熱水管が破孔したと判断するボイラの伝熱水管の破孔検知方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4008348号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の破孔検知方法では、差分流量の積算値を算出することで、差分流量のノイズを低減し、伝熱水管の破孔を検知している。しかしながら、差分流量との比較対象となる基準値には複数のパラメータが含まれるため、プラントに応じてパラメータを細かく調整する必要がある。そのため、適切な監視が行えるようになるまでに時間とコストがかかる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、パラメータ調整の負担を低減させた監視装置、表示装置、監視方法及び監視プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る監視装置は、プラントの稼働状況を監視するための監視装置であって、プラントに関するプロセスデータを取得する取得部と、複数の時間範囲を用いて、プロセスデータに関する複数の移動平均を算出する第1算出部と、少なくとも1つの期間における複数の移動平均の変化量を算出する第2算出部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、複数の移動平均の変化量を算出することで、移動平均に関するパラメータを調整せずともプロセスデータを多角的に検証することができ、パラメータ調整の負担を低減させつつ、プラントの状態を適切に監視することができる。
【0008】
上記態様において、第2算出部は、複数の期間における複数の移動平均の変化量を算出してもよい。
【0009】
この態様によれば、複数の期間における複数の移動平均の変化量を算出することで、プロセスデータをさらに多角的に検証することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る監視装置は、プラントの稼働状況を監視するための監視装置であって、プラントに関するプロセスデータを取得する取得部と、少なくとも1つの時間範囲を用いて、プロセスデータに関する移動平均を算出する第1算出部と、複数の期間における移動平均の変化量を算出する第2算出部と、を備える。
【0011】
この態様によれば、複数の期間における移動平均の変化量を算出することで、移動平均に関するパラメータを調整せずともプロセスデータを多角的に検証することができ、パラメータ調整の負担を低減させつつ、プラントの状態を適切に監視することができる。
【0012】
上記態様において、第1算出部は、プロセスデータに関する複数の移動平均を算出し、第2算出部は、複数の期間における複数の移動平均の変化量を算出してもよい。
【0013】
この態様によれば、複数の期間における複数の移動平均の変化量を算出することで、プロセスデータをさらに多角的に検証することができる。
【0014】
上記態様において、変化量の平均及び標準偏差に基づいて、変化量の異常度を算出する第3算出部をさらに備えてもよい。
【0015】
この態様によれば、異常度によって、プラントが正常な状態であるか、異常な状態であるかをパラメータ調整の負担を低減して容易に判断できるようになる。
【0016】
上記態様において、少なくとも第1算出部及び第2算出部により算出される値に基づいて、プラントの稼働状況を表示する表示部をさらに備えてもよい。
【0017】
この態様によれば、プラントの稼働状況を視覚的に確認することができ、プラントが正常な状態であるか、異常な状態であるかを容易に判断できるようになる。
【0018】
本発明の他の態様に係る表示装置は、プラントの稼働状況を監視するための表示装置であって、プラントに関するプロセスデータを取得する取得部と、複数の時間範囲を用いて、プロセスデータに関する複数の移動平均を算出する第1算出部と、少なくとも1つの期間における複数の移動平均の変化量を算出する第2算出部と、を備え、第1算出部及び第2算出部により算出される値に基づいて、プラントの稼働状況を表示する。
【0019】
この態様によれば、複数の移動平均の変化量を算出することで、移動平均に関するパラメータを調整せずともプロセスデータを多角的に検証することができ、パラメータ調整の負担を低減させつつ、プラントの状態を適切に監視することができる。
【0020】
本発明の他の態様に係る表示装置は、プラントの稼働状況を監視するための表示装置であって、プラントに関するプロセスデータを取得する取得部と、少なくとも1つの時間範囲を用いて、プロセスデータに関する移動平均を算出する第1算出部と、複数の所定期間における移動平均の変化量を算出する第2算出部と、を備え、第1算出部及び第2算出部により算出される値に基づいて、プラントの稼働状況を表示する。
【0021】
この態様によれば、複数の期間における移動平均の変化量を算出することで、移動平均に関するパラメータを調整せずともプロセスデータを多角的に検証することができ、パラメータ調整の負担を低減させつつ、プラントの状態を適切に監視することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係る監視方法は、プラントの稼働状況を監視するための監視方法であって、監視装置によって、プラントに関するプロセスデータを取得することと、複数の時間範囲を用いて、プロセスデータに関する複数の移動平均を算出することと、少なくとも1つの期間における複数の移動平均の変化量を算出することと、を含む。
【0023】
この態様によれば、複数の移動平均の変化量を算出することで、移動平均に関するパラメータを調整せずともプロセスデータを多角的に検証することができ、パラメータ調整の負担を低減させつつ、プラントの状態を適切に監視することができる。
【0024】
本発明の他の態様に係る監視方法は、プラントの稼働状況を監視するための監視方法であって、監視装置によって、プラントに関するプロセスデータを取得することと、少なくとも1つの時間範囲を用いて、プロセスデータに関する移動平均を算出することと、複数の期間における移動平均の変化量を算出することと、を含む。
【0025】
この態様によれば、複数の期間における移動平均の変化量を算出することで、移動平均に関するパラメータを調整せずともプロセスデータを多角的に検証することができ、パラメータ調整の負担を低減させつつ、プラントの状態を適切に監視することができる。
【0026】
本発明の他の態様に係る監視プログラムは、プラントの稼働状況を監視するための監視プログラムであって、監視装置が備える演算部を、プラントに関するプロセスデータを取得する取得部、複数の時間範囲を用いて、プロセスデータに関する複数の移動平均を算出する第1算出部、及び少なくとも1つの期間における複数の移動平均の変化量を算出する第2算出部、として機能させる。
【0027】
この態様によれば、複数の期間における移動平均の変化量を算出することで、移動平均に関するパラメータを調整せずともプロセスデータを多角的に検証することができ、パラメータ調整の負担を低減させつつ、プラントの状態を適切に監視することができる。
【0028】
本発明の他の態様に係る監視プログラムは、プラントの稼働状況を監視するための監視プログラムであって、監視装置が備える演算部を、プラントに関するプロセスデータを取得する取得部、少なくとも1つの時間範囲を用いて、プロセスデータに関する移動平均を算出する第1算出部、及び複数の期間における移動平均の変化量を算出する第2算出部、として機能させる。
【0029】
この態様によれば、複数の期間における移動平均の変化量を算出することで、移動平均に関するパラメータを調整せずともプロセスデータを多角的に検証することができ、パラメータ調整の負担を低減させつつ、プラントの状態を適切に監視することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、パラメータ調整の負担を低減させた監視装置、表示装置、監視方法及び監視プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係るプラントの全体構成を示す概略図である。
図2】本実施形態に係る監視装置の機能ブロックを示す図である。
図3】本実施形態に係る監視装置の物理的構成を示す図である。
図4】本実施形態に係る監視装置に表示される異常度を示す図である。
図5】本実施形態に係る監視装置に表示されるプロセスデータの第1変化量を示す図である。
図6】本実施形態に係る監視装置に表示されるプロセスデータの第2変化量を示す図である。
図7】本実施形態に係る監視装置に表示されるプロセスデータの第3変化量を示す図である。
図8】本実施形態に係る監視装置に表示されるプロセスデータの第4変化量を示す図である。
図9】本実施形態に係る監視装置により実行される監視処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0033】
まず、本発明の実施形態が対象とするプラントは、任意のプラントであってよいが、例えば、ボイラを含む発電プラントや焼却プラント、化学プラント、排水処理プラント等、プロセスデータが取得できるものを対象としている。図1は、本発明の実施形態に係るプラント1の全体構成を示す概略図である。本実施形態に係るプラント1は、循環流動層ボイラ(Circulating Fluidized Bed型)であって、高温で流動する珪砂等の循環材を循環させながら燃料を燃焼して、蒸気を発生させるものである。プラント1の燃料としては、例えば非化石燃料(木質バイオマス、廃タイヤ、廃プラスチック、スラッジ等)を使用することができる。プラント1で発生した蒸気は、タービン100の駆動に用いられる。
【0034】
プラント1は、火炉2内で燃料を燃焼させ、固気分離装置として機能するサイクロン3によって排ガスから循環材を分離し、分離された循環材を火炉2内に戻して循環させるように構成されている。分離された循環材は、サイクロン3の下方に接続された循環材回収管4を経由して火炉2の下部に返送される。なお、循環材回収管4の下部と火炉2の下部とは、流路が絞られたループシール部4aを介して接続されている。これにより、循環材回収管4の下部には所定量の循環材が貯められた状態となる。サイクロン3によって循環材が取り除かれた排ガスは、排ガス流路3aを経由して後部煙道5に供給される。
【0035】
火炉2は、燃料を燃焼させる燃焼炉である。火炉2の中間部には、燃料を供給する燃料供給口2aが設けられており、火炉2の上部には、燃焼ガスを排出するガス出口2bが設けられている。図示されていない燃料供給装置から火炉2に供給される燃料は、燃料供給口2aを介して火炉2の内部に供給される。また、火炉2の炉壁には、ボイラ給水を加熱するための炉壁管6が設けられている。炉壁管6を流れるボイラ給水は、火炉2での燃焼によって加熱される。
【0036】
火炉2内では、下部の給気ライン2cから導入される燃焼・流動用の空気により、燃料供給口2aから供給された燃料を含む固形物が流動し、燃料は流動しながら例えば約800~900℃で燃焼する。サイクロン3には、火炉2で発生した燃焼ガスが循環材を同伴しながら導入される。サイクロン3は、遠心分離作用により循環材と気体とを分離し、循環材回収管4を介して分離された循環材を火炉2に戻すとともに、循環材が除かれた燃焼ガスを排ガス流路3aから後部煙道5へと送出する。
【0037】
火炉2では、炉内ベット材と呼ばれる固形物が発生し底部に溜まるが、この炉内ベット材で不純物(低融点物質等)が濃縮されて起こるベット材の焼結及び溶融固化、或いは不燃夾雑物による動作不良を抑制することが必要である。このため、火炉2では、底部の排出口2dから炉内ベット材が連続的又は断続的に外部に排出されている。排出されたベット材は、図示されていない循環ライン上で金属や粗大粒径等の不適物を取り除いた後、再び火炉2に供給されるか、若しくはそのまま廃棄される。火炉2の循環材は、火炉2、サイクロン3及び循環材回収管4で構成される循環系内を循環する。
【0038】
後部煙道5は、サイクロン3から排出されたガスを後段へ流す流路を有している。後部煙道5は、排ガスの熱を回収する排熱回収部として、過熱蒸気を発生させる過熱器10と、ボイラ給水を予熱する節炭器12と、を有している。後部煙道5を流れる排ガスは、過熱器10及び節炭器12を流通する蒸気やボイラ給水と熱交換されて冷却される。また、後部煙道5は、ボイラ給水を節炭器12に供給するポンプ7と、節炭器12を通過したボイラ給水が貯留されるとともに、火炉2の炉壁管6に接続された蒸気ドラム8と、を有している。
【0039】
節炭器12は、排ガスの熱をボイラ給水に伝熱して、ボイラ給水を予熱するものである。節炭器12は、配管21によってポンプ7と接続される一方、配管22によって蒸気ドラム8と接続されている。ポンプ7から配管21を経由して節炭器12に供給され、節炭器12によって予熱されたボイラ給水は、配管22を経由して蒸気ドラム8に供給される。
【0040】
蒸気ドラム8には、降水管8a及び炉壁管6が接続されている。蒸気ドラム8内のボイラ給水は、降水管8aを下降し、火炉2の下部側で炉壁管6に導入されて蒸気ドラム8へ向かって流通する。炉壁管6内のボイラ給水は、火炉2内で発生する燃焼熱によって加熱されて、蒸気ドラム8内で蒸発し蒸気となる。
【0041】
蒸気ドラム8には、内部の蒸気を排出する排気管8bが接続されている。排気管8bは、蒸気ドラム8と過熱器10とを接続している。蒸気ドラム8内の蒸気は、排気管8bを経由して過熱器10に供給される。過熱器10は、排ガスの熱を用いて蒸気を過熱して過熱蒸気を生成するものである。過熱蒸気は、配管10aを通り、プラント1外のタービン100に供給されて発電に利用される。
【0042】
タービン100から排出された蒸気の圧力と温度は、過熱器10から排出される蒸気の圧力と温度よりも低い。特に限定されるものではないが、タービン100へ供給される蒸気の圧力は、約10~17MPa程度であり、温度は約530~570℃程度となる。タービン100から排出される蒸気の圧力は、約3~5MPa程度であり、温度は約350~400℃程度となる。
【0043】
タービン100の下流には復水器102が設けられている。タービン100から排出された蒸気は復水器102に供給され、復水器102において凝縮して飽和水に戻された上でポンプ7へと供給される。
【0044】
ポンプ7aは、復水器102の水位を一定に保つように、補給水を供給する。図1では、ポンプ7aにより補給される補給水流量u1を示している。
【0045】
また、図1では、ポンプ7から節炭器12に供給されるボイラ給水流量u2を示している。さらに、図1では、過熱器10からタービン10に供給されるボイラ出口蒸気流量u3を示し、蒸気ドラム8から過熱器10に供給される連続ブロー排水流量u4を示している。なお、補給水流量u1は、連続ブロー排水流量u4に追従するように制御されてよい。また、ボイラ給水流量u2及びボイラ出口蒸気流量u3は、補給水流量u1及び連続ブロー排水流量u4に追従するように制御されてよい。
【0046】
プラント1に破孔が生じた場合、補給水流量u1が上昇したり、ボイラ給水流量u2とボイラ出口蒸気流量u3の流量差が増大したりする。監視装置20は、補給水流量u1、ボイラ給水流量u2、ボイラ出口蒸気流量u3及び連続ブロー排水流量u4等のプラント1のプロセスデータについて異常が生じていないか監視する。
【0047】
図2は、本実施形態に係る監視装置20の機能ブロックを示す図である。監視装置20は、取得部21、第1算出部22、第2算出部23、第3算出部24及び表示部20fを備える。
【0048】
取得部21は、プラント1に関するプロセスデータを取得する。プロセスデータは、プラント1に関する任意のデータであってよいが、例えば、プラント1の状態をセンサで測定したデータであってよく、より具体的には、プラント1の温度、圧力及び流量等の測定値を含んでよい。以下では、図1で示した、プラント1の補給水流量u1、ボイラ給水流量u2、ボイラ出口蒸気流量u3及び連続ブロー排水流量u4等を用いて説明する。
【0049】
第1算出部22は、複数の時間範囲を用いて、プロセスデータに関する複数の移動平均を算出する。複数の時間範囲をΔti(i=1~N)と表し、プロセスデータをu(t)と表すとき、プロセスデータに関する複数の移動平均xi(t)は、xi(t)=Σk=0Δti-1u(t-k)/Δti(i=1~N)により算出される。ここで、Δtiは、任意に設定されてよいが、例えば5分、30分、1時間、3時間、6時間、12時間、18時間、24時間、7日間又は1ヶ月等であってよい。
【0050】
第2算出部23は、少なくとも1つの期間における複数の移動平均の変化量を算出する。少なくとも1つの期間をαΔtと表すとき、複数の移動平均xi(t)の変化量Δxi(t)は、Δxi(t)=xi(t)-xi(t-αΔt)により算出される。ここで、Δtは、移動平均の算出に用いた時間範囲であってよく、αは、任意に設定されてよいが、例えば1、2、3、4、5、6、7、8又は9等であってよい。
【0051】
このように、複数の移動平均の変化量を算出することで、移動平均に関するパラメータを調整せずともプロセスデータを多角的に検証することができ、パラメータ調整の負担を低減させつつ、プラント1の状態を適切に監視することができる。
【0052】
第2算出部23は、複数の期間における複数の移動平均の変化量を算出してもよい。複数の期間をαjΔt(j=1~M)と表すとき、複数の移動平均xi(t)の複数の変化量Δji(t)は、Δji(t)=xi(t)-xi(t-αjΔt)により算出される。ここで、Δtは、移動平均の算出に用いた時間範囲であってよく、αjは、任意に設定されてよいが、例えば1、2、3、4、5、6、7、8又は9等であってよい。
【0053】
このように、複数の期間における複数の移動平均の変化量を算出することで、プロセスデータをさらに多角的に検証することができる。
【0054】
第1算出部22は、少なくとも1つの時間範囲を用いて、プロセスデータに関する移動平均を算出してもよい。1つの時間範囲をΔtと表し、プロセスデータをu(t)と表すとき、プロセスデータに関する移動平均x(t)は、x(t)=Σk=0Δt-1u(t-k)/Δtにより算出される。ここで、Δtは、任意に設定されてよいが、例えば5分、30分、1時間、3時間、6時間、12時間、18時間、24時間、7日間又は1ヶ月等であってよい。
【0055】
第2算出部23は、複数の期間における移動平均の変化量を算出してもよい。複数の期間をαjΔt(j=1~M)と表すとき、移動平均x(t)の複数の変化量Δjx(t)は、Δjx(t)=x(t)-x(t-αjΔt)により算出される。ここで、Δtは、移動平均の算出に用いた時間範囲であってよく、αjは、任意に設定されてよいが、例えば1、2、3、4、5、6、7、8又は9等であってよい。
【0056】
このように、複数の期間における移動平均の変化量を算出することで、移動平均に関するパラメータを調整せずともプロセスデータを多角的に検証することができ、パラメータ調整の負担を低減させつつ、プラント1の状態を適切に監視することができる。
【0057】
第3算出部24は、変化量の平均及び標準偏差に基づいて、変化量の異常度を算出する。変化量をΔx(t)と表し、変化量の平均をμと表し、変化量の標準偏差をσと表すとき、異常度a(t)は、a(t)=((Δx(t)-μ)/σ)2により算出される。第3算出部24は、複数の変化量Δji(t)それぞれについて異常度を算出してよい。
【0058】
監視装置20は、a(t)が閾値以上である場合に、プラント1が異常な状態であると判定する。ここで、閾値は任意に設定できるが、例えば4であったり、9であったりしてよい。このように、異常度によって、プラント1が正常な状態であるか、異常な状態であるかをパラメータ調整の負担を低減して容易に判断できるようになる。
【0059】
表示部20fは、少なくとも第1算出部22及び第2算出部23により算出される値に基づいて、プラント1の稼働状況を表示する。表示部20fは、第1算出部22により算出されるプロセスデータに関する移動平均を表示したり、第2算出部23により算出される移動平均の変化量を表示したりしてよい。また、表示部20fは、第3算出部24により算出される異常度を表示してもよい。
【0060】
これにより、プラント1の稼働状況を視覚的に確認することができ、プラント1が正常な状態であるか、異常な状態であるかを容易に判断できるようになる。
【0061】
なお、本発明の表示装置は、監視装置20と同様の機能的構成を備えるものであってよい。
【0062】
図3は、本実施形態に係る監視装置20の物理的構成を示す図である。監視装置20は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)20aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)20bと、記憶部に相当するROM(Read only Memory)20cと、通信部20dと、入力部20eと、表示部20fと、を有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では監視装置20が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、監視装置20は、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、図3で示す構成は一例であり、監視装置20はこれら以外の構成を有してもよいし、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。
【0063】
CPU20aは、RAM20b又はROM20cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU20aは、プラント1のプロセスデータを解析し、プラントの稼働状況を監視するプログラム(監視プログラム)を実行する演算部である。CPU20aは、入力部20eや通信部20dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部20fに表示したり、RAM20bに格納したりする。
【0064】
RAM20bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM20bは、CPU20aが実行するプログラム、プラント1のプロセスデータといったデータを記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM20bには、これら以外のデータが記憶されていてもよいし、これらの一部が記憶されていなくてもよい。
【0065】
ROM20cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM20cは、例えば監視プログラムや、書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0066】
通信部20dは、監視装置20を他の機器に接続するインターフェースである。通信部20dは、インターネット等の通信ネットワークに接続されてよい。
【0067】
入力部20eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。
【0068】
表示部20fは、CPU20aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてよい。表示部20fは、プロセスデータの異常度や変化量を表示してよい。
【0069】
監視プログラムは、RAM20bやROM20c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部20dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。監視装置20では、CPU20aが監視プログラムを実行することにより、図2を用いて説明した様々な動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、監視装置20は、CPU20aとRAM20bやROM20cが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0070】
なお、本発明の表示装置は、監視装置20と同様の物理的構成を備えるものであってよい。
【0071】
図4は、本実施形態に係る監視装置20に表示される異常度を示す図である。同図では、横軸に時刻を示し、縦軸に異常度を示して、24時間の移動平均の変化量に関する異常度を示している。
【0072】
図4に示す例では、24時間の移動平均について、α=1の場合の変化量の異常度を破線で示し、α=3の場合の変化量の異常度を点線で示し、α=7の場合の変化量の異常度を実線で示している。監視装置20を用いるユーザは、1時間、3時間、6時間、9時間、12時間、18時間及び24時間の移動平均のうち1又は複数を選択し、α=1,2,3,4,5,6,7のうち1又は複数を選択して、1又は複数の移動平均の変化量の異常度を表示させることができる。
【0073】
また、図4では、α=1の場合の変化量の異常度に関する第1閾値を破線で示し、α=3の場合の変化量の異常度に関する第2閾値を一点鎖線で示し、α=7の場合の変化量の異常度に関する第3閾値を二点鎖線で示している。これらの閾値は、それぞれの変化量の標準偏差の所定数倍で設定されてよい。例えば、閾値は、変化量の標準偏差の3倍であってよい。このように、閾値を変化量の統計量に応じて設定することで、パラメータ設定の負担を低減させることができる。
【0074】
図4に示す例では、α=1,3,7の場合の変化量の異常度がそれぞれ第1閾値、第2閾値及び第3閾値を上回る期間が存在する。監視装置20は、このように、異常度が閾値異常となる場合、プラント1が異常な状態であると判定して、アラートを出力する。
【0075】
図5は、本実施形態に係る監視装置20に表示されるプロセスデータの第1変化量を示す図である。同図では、横軸に時刻を示し、縦軸に変化量を示して、プロセスデータの第1変化量の推移を示している。プロセスデータの第1変化量は、復水器102の補給水流量u1の9時間移動平均に関してα=3で算出した変化量である。すなわち、本例の変化量は、α=3として、Δx(t)=x(t)-x(t-αΔt)で算出される値であり、x(t)=Σk=0Δt-11(t-k)/Δt、Δt=9時間である。
【0076】
第1変化量は、領域A1において急激に上昇しており、プラント1が異常な状態となっていることを示唆している。一方、領域B1では大きな変化が見られず、第1変化量に基づく監視では、プラント1は正常な状態であると考えられる。
【0077】
図6は、本実施形態に係る監視装置20に表示されるプロセスデータの第2変化量を示す図である。同図では、横軸に時刻を示し、縦軸に変化量を示して、プロセスデータの第2変化量の推移を示している。プロセスデータの第2変化量は、復水器102の補給水流量u1の24時間移動平均に関してα=3で算出した変化量である。すなわち、本例の変化量は、α=3として、Δx(t)=x(t)-x(t-αΔt)で算出される値であり、x(t)=Σk=0Δt-11(t-k)/Δt、Δt=24時間である。
【0078】
第2変化量は、領域A2において急激に上昇しており、プラント1が異常な状態となっていることを示唆している。また、領域B2においても急激な上昇が確認でき、プラント1が異常な状態になりつつあると考えられる。このように、同じプロセスデータについて時間平均の時間範囲を変えて複数の変化量を算出することで、プラント1の状態を多角的に監視することができ、異常の兆候が捉えやすくなる。
【0079】
図7は、本実施形態に係る監視装置20に表示されるプロセスデータの第3変化量を示す図である。同図では、横軸に時刻を示し、縦軸に変化量を示して、プロセスデータの第3変化量の推移を示している。プロセスデータの第3変化量は、復水器102の補給水流量u1の24時間移動平均に関してα=7で算出した変化量である。すなわち、本例の変化量は、α=7として、Δx(t)=x(t)-x(t-αΔt)で算出される値であり、x(t)=Σk=0Δt-11(t-k)/Δt、Δt=24時間である。
【0080】
第3変化量は、領域A3において急激に上昇しており、プラント1が異常な状態となっていることを示唆している。また、領域B3においても急激な上昇が確認でき、プラント1が異常な状態となっていることを示唆している。このように、同じプロセスデータについて複数の期間について時間平均の変化量を算出することで、プラント1の状態を多角的に監視することができ、異常の兆候が捉えやすくなる。
【0081】
図8は、本実施形態に係る監視装置20に表示されるプロセスデータの第4変化量を示す図である。同図では、横軸に時刻を示し、縦軸に変化量を示して、プロセスデータの第4変化量の推移を示している。プロセスデータの第4変化量は、復水器102の補給水流量u1の24時間移動平均に関してα=11で算出した変化量である。すなわち、本例の変化量は、α=11として、Δx(t)=x(t)-x(t-αΔt)で算出される値であり、x(t)=Σk=0Δt-11(t-k)/Δt、Δt=24時間である。
【0082】
第4変化量は、領域A4において急激に上昇しており、プラント1が異常な状態となっていることを示唆している。また、領域B4においても急激な上昇が確認でき、プラント1が異常な状態となっていることを示唆している。このように、同じプロセスデータについて複数の期間について時間平均の変化量を算出することで、プラント1の状態を多角的に監視することができ、異常の兆候が捉えやすくなる。
【0083】
図9は、本実施形態に係る監視装置20により実行される監視処理のフローチャートである。はじめに、監視装置20は、プラント1に関するプロセスデータを取得する(S10)。
【0084】
監視装置20は、1又は複数の時間範囲を用いて、プロセスデータに関する1又は複数の移動平均を算出する(S11)。また、監視装置20は、1又は複数の期間における1又は複数の移動平均の変化量を算出する(S12)。
【0085】
その後、監視装置20は、変化量の平均及び標準偏差に基づいて、1又は複数の変化量の異常度を算出する(S13)。
【0086】
そして、監視装置20は、1又は複数の変化量と1又は複数の異常度を表示する(S14)。なお、監視装置20は、1又は複数の移動平均を表示してもよい。
【0087】
ここで、1又は複数の異常度のうちいずれかが閾値以上である場合(S15:YES)、監視装置20は、プラント1に異常が生じている蓋然性が高いことを表すアラートを出力する。1又は複数の異常度のうちいずれかが閾値以上である場合にアラートを出力することで、異常検知の漏れを減らすことができる。
【0088】
一方、1又は複数の異常度のいずれもが閾値未満である場合(S15:NO)、監視装置20は、処理S10~S14を再び実行する。
【0089】
以上の説明では、プロセスデータの一例として復水器102の補給水流量u1を用いて解析例を詳述したが、本実施形態はこれに限定されるわけではなく、ボイラ給水流量u2、ボイラ出口蒸気流量u3及び連続ブロー排水流量u4でも同様に解析でき、プラント1の異常な状態の判断容易性に資する。
【0090】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…プラント、2…火炉、3…サイクロン、3a…排ガス流路、4…循環材回収管、4a…ループシール部、5…後部煙道、6…炉壁管、7,7a…ポンプ、10…加熱器、12…節炭器、20…監視装置、20a…CPU、20b…RAM、20c…ROM、20d…通信部、20e…入力部、20f…表示部、21…取得部、22…第1算出部、23…第2算出部、24…第3算出部、100…タービン
図1
図2
図3
図4
図5
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