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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】洗面器
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/14 20060101AFI20231128BHJP
   A47K 1/04 20060101ALI20231128BHJP
   E03C 1/24 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
E03C1/14 Z
A47K1/04 A
E03C1/24 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019208485
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021080722
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 励
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 浩一
(72)【発明者】
【氏名】堀ノ江 匠
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 幸博
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-68654(JP,U)
【文献】特開平9-215616(JP,A)
【文献】特開平10-179434(JP,A)
【文献】特開2019-52422(JP,A)
【文献】特開2007-255024(JP,A)
【文献】特開2005-87647(JP,A)
【文献】特開2016-23404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/14
A47K 1/04
E03C 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口が形成されたボウル部を備え、
前記ボウル部は、鉛直方向において前記排水口の高さを水位0%と定義し、端縁の最も低い位置における高さを水位100%と定義して、水位と、その水位における容量を算出し、水位と容量の関係を得たときに、最小二乗法によって求めた水位0%から100%までの線形近似曲線における水位の増加量に対する容量の増加量の比率としての傾きよりも、水位0%から30%までの線形近似曲線における水位の増加量に対する容量の増加量の比率としての傾きの方が小さい洗面器。
【請求項2】
前記ボウル部は、水位30%より高い位置にオーバーフロー孔が形成されており、水位と、その水位における容量を算出し、水位と容量の関係を得たときに、最小二乗法によって求めた水位0%から30%までの線形近似曲線における水位の増加量に対する容量の増加量の比率としての傾きよりも、水位30%から前記オーバーフロー孔までの線形近似曲線における水位の増加量に対する容量の増加量の比率としての傾きの方が大きい請求項1に記載の洗面器。
【請求項3】
排水口が形成されたボウル部を備え、
前記ボウル部は、鉛直方向において前記排水口の高さを水位0%と定義し、端縁の最も低い位置における高さを水位100%と定義すると水位30%より高い位置にオーバーフロー孔が形成されており、水位と、その水位における容量を算出し、水位と容量の関係を得たときに、最小二乗法によって求めた水位0%から30%までの線形近似曲線における水位の増加量に対する容量の増加量の比率としての傾きよりも、水位30%から前記オーバーフロー孔までの線形近似曲線における水位の増加量に対する容量の増加量の比率としての傾きの方が大きい洗面器。
【請求項4】
前記ボウル部は、水位と、その水位における容量を算出し、水位と容量の関係を得たときに、最小二乗法によって求めた水位0%から前記オーバーフロー孔までの線形近似曲線における水位の増加量に対する容量の増加量の比率としての傾きよりも、前記オーバーフロー孔から水位100%までの線形近似曲線における水位の増加量に対する容量の増加量の比率としての傾きの方が大きい請求項2及び請求項3のいずれか1項に記載の洗面器。
【請求項5】
前記ボウル部は、水位100%における容量を100%と定義して、水位と、その水位における容量を算出し、水位と容量の関係を得たときに、最小二乗法によって求めた容量0%から10%までの線形近似曲線における水位の増加量に対する容量の増加量の比率としての傾きが0.8以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の洗面器。
【請求項6】
前記ボウル部は、水位100%における容量を100%と定義して、水位と、その水位における容量を算出し、水位と容量の関係を得たときに、最小二乗法によって求めた容量0%から10%までの線形近似曲線における水位の増加量に対する容量の増加量の比率としての傾きが0.4以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の洗面器。
【請求項7】
前記ボウル部は、水位100%における容量を100%と定義したときに、水位50%における容量が30%以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の洗面器。
【請求項8】
前記ボウル部は、水位が増加するにつれて、その水位において内面に囲まれる領域の面積が増加する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の洗面器。
【請求項9】
前記ボウル部は、水位100%における内面に囲まれる領域の面積を100%と定義したときに、水位10%における面積が50%以下である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の洗面器。
【請求項10】
前記ボウル部は、水位100%における内面に囲まれる領域の面積を100%と定義したときに、水位40%における面積が50%以下である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の洗面器。
【請求項11】
前記ボウル部は、水位と、その水位において内面に囲まれる領域の面積を算出し、水位と面積の関係を得たときに、最小二乗法によって求めた水位0%から20%までの線形近似曲線における水位の増加量に対する面積の増加量の比率としての傾きと、水位20%から100%までの線形近似曲線における水位の増加量に対する面積の増加量の比率としての傾きの差分の絶対値が2以下である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の洗面器。
【請求項12】
前記ボウル部は、水位65%以上85%以下の位置にオーバーフロー孔が形成されている請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の洗面器。
【請求項13】
前記ボウル部は、所定の水位における内面の横寸法に対する内面の縦寸法の比である縦横比が、水位20%から80%までの間において縦横比の最小値をAとし、縦横比の最大値をBとした場合に、
B≧A×1.1
の関係式を満たす請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の洗面器。
【請求項14】
前記ボウル部は、水位0%から100%のうち第1の範囲において縦横比が1より大きく、前記第1の範囲よりも水位が高い第2の範囲において縦横比が1以下である請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の洗面器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は洗面器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には洗面器が開示されている。この洗面器は、略直方体の箱形をなすように見受けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-87647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直方体の箱形をなす洗面器に水を溜める場合、水位に比例して水を溜める容量が増加する。このため、衣類等を手洗いするために十分な水位に達するまでに大量の水が必要とされ、衣類等を洗いやすい構成でありかつ節水を実現するという観点において改善の余地がある。
【0005】
本開示は、ボウル部に水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすくかつ節水できる洗面器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る洗面器は、排水口が形成されたボウル部を備え、前記ボウル部は、鉛直方向において前記排水口の高さを水位0%と定義し、端縁の最も低い位置における高さを水位100%と定義して、水位と、その水位における容量とをプロットしたときに、最小二乗法によって求めた水位0%から100%までの線形近似曲線の傾きよりも、水位0%から30%までの線形近似曲線の傾きの方が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る洗面器を概略的に示す斜視図である。
図2】洗面器を概略的に示す正面図である。
図3】洗面器を概略的に示す平面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6図3のVI-VI線断面図である。
図7図3のVII-VII線断面図である。
図8図7の一部拡大図である。
図9図3のIX-IX線断面図である。
図10図7のX-X線断面図である。
図11図7のXI-XI線断面図である。
図12図7のXII-XII線断面図である。
図13図7のXIII-XIII線断面図である。
図14】ボウル部の内面に衝突した湯水の流れ方を説明するための斜視図である。
図15】ボウル部の内面に衝突した湯水の流れ方を説明するための断面図である。
図16】排水口に排水される湯水の流れ方を説明するための図である。
図17】実施形態2に係る洗面器の断面図である。
図18】実施形態3に係る洗面器の斜視図である。
図19図18のXIX-XIX線断面図である。
図20図18のXX-XX線断面図である。
図21】容量と水位の関係を表すプロット図である。
図22】面積と水位の関係を表すプロット図である。
図23】縦寸法と水位の関係を表すプロット図である。
図24】横寸法と水位の関係を表すプロット図である。
図25】面積と容量の関係を表すプロット図である。
図26】縦横比と水位の関係を表すプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
図1に示すように、洗面器1は、洗面化粧台100に備えられている取付け用洗面器である。洗面化粧台100は、洗面器1、洗面台101、バックパネル102、ミラーキャビネット103、及び水栓ユニット104を備えて構成されている。洗面化粧台100は、洗面台101の上方にバックパネル102が配置され、バックパネル102の上方にミラーキャビネット103が配置されている。洗面化粧台100は、洗面台101を床面上に載置し、釘やビス等の固定部材を用いて洗面台101、バックパネル102、ミラーキャビネット103のそれぞれを壁面に固定して設置される。このミラーキャビネット103は上側キャビネットの一例である。以下の説明において、前後の方向は、設置状態における洗面化粧台100の壁面側の方向を後方、その反対側の方向を前方として説明する。左右の方向については、洗面化粧台100を前方から見たときの左右方向をそのまま左方、右方として説明する。
【0009】
洗面台101は全体として箱状に形成されている。洗面台101の上部には板状のカウンター101Aが固定されている。カウンター101Aは支持部材の一例である。洗面器1はこのカウンター101A上に設置される。ミラーキャビネット103は、開閉自在に設けられた鏡扉103Aを有している。鏡扉103Aの後方には収納空間が形成されている。水栓ユニット104は、洗面器1の上方であってミラーキャビネット103の下部に配置されている。
【0010】
水栓ユニット104は、その大部分がミラーキャビネット103内に収納されている。水栓ユニット104は、湯水を吐出する吐出部104A、吐出部104Aからの吐水を操作する吐水操作部104B、及び洗面器1に取り付けられた排水栓105の開閉操作を行う排水操作部104Cを有している。吐出部104A、吐水操作部104B、及び排水操作部104Cは、それぞれミラーキャビネット103の下端部から下方に突出して設けられている。
【0011】
洗面器1は、図2に示すように、支持部材としてのカウンター101Aに周縁部が載置された状態で設置されている。具体的には、洗面器1は、周縁部がカウンター101Aの上面Mに載置され、中心部がカウンター101Aに形成された切り欠き101Bを貫通してカウンター101Aに嵌め込まれる(図5参照)。カウンター101Aの上面Mは支持部材の載置面の一例である。洗面器1は、鋳込み成形によって各部が一体に形成された陶器製である。洗面器1は、全体として左右方向にやや長い平面視略矩形状をなしている。洗面器1の後端部はバックパネル102の前面に当接している。
【0012】
図2から図13に示すように、洗面器1は、ボウル部10、台座部30、及びオーバーフロー部40を備えている。ボウル部10は平面視略矩形状をなしている。ボウル部10は、前鉢面部20、左右鉢面部12、後鉢面部13、及び底鉢面部14を有している。ボウル部10は、底鉢面部14の周囲を前鉢面部20、左右鉢面部12、及び後鉢面部13の各鉢面部が連続的に取り囲んで一体的に形成されている。ボウル部10は、底鉢面部14の左右方向の中央部の後部寄りの位置に排水口15が形成されている。排水口15は、底鉢面部14を上下方向に貫通して形成されている。排水口15は、底鉢面部14の最も低い位置に形成されている。排水口15にはオーバーフロー部40の後述するオーバーフロー孔41に連通するオーバーフロー流路42が連通している。ボウル部10は、各鉢面部20,12,13から底鉢面部14の排水口15に向かって低くなってゆくボウル形状をなしている。ボウル部10は、内面10Aにおいて排水口15の前方に吐水落下位置PFが配置されている。この吐水落下位置PFは、吐出部104Aから最大量の吐水を吐出した場合に吐水が落下する領域の中心として特定できる。吐水落下位置PFは、吐出部104Aから吐出される吐水の落下軌跡とボウル部10の内面10Aとの交点となる(図15参照)。図15では、吐水の落下軌跡が模式的に破線で描かれている。
【0013】
前鉢面部20は、図3に示すように、前側に位置する端縁20Aと排水口15の間の距離が排水口15から左右に離れると大きくなるように構成されている。前鉢面部20の端縁20Aは、図2に示すように、左右方向に略水平に延びて形成されている。前鉢面部20は、他の鉢面部12,13と比較して、平面視における排水口15の位置から最も遠い位置に設けられている。図7に示すように、ボウル部10の内面10Aは、底鉢面部14の排水口15から前鉢面部20に向かう傾斜が全体として最も緩くなっている。前鉢面部20は、他の鉢面部12,13と比較して、上端の位置が最も低くされている。
【0014】
前鉢面部20の下縁は、ボウル部10の内面10Aにおける排水口15に向かう傾斜角度が、所定の角度よりも大きい角度に変化する部位として特定できる。具体的には、図7に示す側断面において、前鉢面部20の下縁は、排水口15に向かう傾斜角度が底鉢面部14の傾斜角度よりも大きい角度に変化する部位である。前鉢面部20は、下縁の近傍に吐出部104Aから湯水が吐出される吐水落下位置PFが配置されている。
【0015】
左右鉢面部12は、底鉢面部14に対して左方及び右方に設けられ、略対称な形状をなしている。ボウル部10の内面10Aは、左右鉢面部12において、斜め下方に向かって凹となる緩やかな湾曲面で形成されている。左方及び右方の左右鉢面部12は、互いに対向して、上方に向かうにつれて左右の幅が大きくなる鉢面を構成する。各左右鉢面部12は、図7に示すように、上端12Aの位置が後端から前端に向かって緩やかに湾曲しつつ低くなるように形成されている。この左右鉢面部12の上端12Aは、側面視において上方に膨らんだ形状である。「上方に膨らんだ形状」とは、上端12Aの前端と後端を結んだ仮想的な直線より、上端12Aの中央が上方に膨出した形状である。左右鉢面部12の上端12Aは、後端が最も高く、前端が最も低い。左右鉢面部12の上端12Aは、左右鉢面部12の端縁を構成する部位であり、後端が後鉢面部13の端縁13Aに連続し、前端が前鉢面部20の端縁20Aに連続する。
【0016】
後鉢面部13は、前鉢面部20の上端よりも高い位置で、左右方向に略水平に延びる上端を有して形成されている。図3に示すように、後鉢面部13は、他の鉢面部20,12と比較して、平面視における排水口15の位置から最も近い位置に設けられている。このため、ボウル部10の内面10Aは、底鉢面部14の排水口15から後鉢面部13に向かう傾斜が全体として最も急峻になっている。具体的には、図7に示すように、後鉢面部13におけるボウル部10の内面10Aは、下端側の大部分において鉛直に近い傾斜で斜め上方に立ち上がる平面状をなしている。後鉢面部13の端縁13Aは、鉛直方向に延びる平坦面状をなしている。
【0017】
ボウル部10は、図3及び図7に示すように、凸部22、載置部23、凹部24を有している。凸部22は、前鉢面部20に設けられている。載置部23は、前鉢面部20における前端部に設けられている。凹部24は、凸部22に対して下方に設けられている。凹部24、凸部22、及び載置部23は、下方かつ後方から、この順に滑らかに連続するようにして形成されている。
【0018】
凸部22は、所定厚さを有する前鉢面部20全体が、排水口15に向かうにつれて下方に湾曲するようにして形成されている。凸部22は、前鉢面部20において、前端部、左端部、右端部、及び下側約1/3を除く領域に形成されている。凸部22は、図7及び図11に示すように、左右方向に延びた凸面22Aを有する。凸面22Aの下縁は、鉛直方向において、排水口15の高さを基準としてボウル部10の端縁の最も低い位置における高さを水位100%とした場合に、排水口15から水位50%の位置より上方に位置している。本実施形態において端縁の最も低い位置は、前鉢面部20の端縁20Aにおける左右方向中央部の位置である。この凸面22Aの下縁は、オーバーフロー孔41より下方に位置している。凸面22Aの下方に凹面24Aが連続する構成では、凸面22Aの下縁は変曲点として特定できる。例えば、図7に示す側断面において、凸面22Aと凹面24Aの間の変曲点は、排水口15から水位約65%の位置に存在する。凸面22Aの頂部は、上述と同様にして水位を定義した場合に、排水口15から水位80%の位置より上方に位置している。例えば、図7に示す側断面において、凸面22Aの頂部は、排水口15から水位約85%の位置に存在する。凸面22Aの頂部の裏側近傍には、カウンター101Aの上面Mが配置される。
【0019】
凸面22Aは、前後方向について、上方かつ後方に凸となるように滑らかな湾曲した形状である。凸面22Aは、水平面に対する傾斜角度が、上端部から下端部に向かって連続的に徐々に大きくなる凸状の湾曲面をなしている。凸面22Aの傾斜角度については後に具体的に説明する。凸面22Aは、図11に示すように、左右方向について、中央部から左右に向けて曲率半径が徐々に小さくなるように緩やかに湾曲した形状をなしている。この凸面22Aの左右方向中央部は、前鉢面部20の端縁20Aに沿って延びつつ緩やかに湾曲した湾曲面である。凸面22Aの左右両側の端部は、左右に向けて後方に湾曲した湾曲面である。凸面22Aは、その周囲の面に滑らかに連続する。
【0020】
載置部23は、所定厚さを有する前鉢面部20全体が、略水平に延びた構成である。載置部23は、前端部において、左端部、及び右端部を除く領域に形成されている。載置部23は、前方から吐出部104Aと吐水落下位置PFの間に手を入れた場合に、腕の下方に位置する部位となる。載置部23は、左右方向に延びた載置面23Aを有する。載置面23Aは、左右方向について略直線状に延びており、前後方向について後方に向かうにつれてわずかに下降している。載置面23Aは、上方を向く面であり、歯ブラシ、タオル等の洗面用具等の小物を置くことができるように形成されている。載置面23Aは、平坦面を含んでいる。載置部23は、平坦面を有する平坦部に対応する。
【0021】
図4に示すように、前鉢面部20の前端部は、前後方向と直交する平面で切断した断面形状において、左右方向における中央よりも両側が上方に位置している。前鉢面部20の前端部は、載置部23から左右に向かって徐々に上がる形状をなしている。具体的には、前鉢面部20の前端部には、載置部23の左右両側に、載置部23の載置面23Aから迫り上がった迫り上がり部が設けられている。
【0022】
図7に示すように、凹部24は、所定厚さを有する前鉢面部20全体が、下方に向かうにつれて排水口15に向けて湾曲するようにして形成されている。凹部24は、凹面24Aを有する。凹面24Aは、前鉢面部20において、凸部22の下方の領域に形成されている。凹面24Aは、底鉢面部14の上面から緩やかに立ち上がるようにして形成されている。凹面24Aの底部は、吐水落下位置PFの前方近傍に位置している。
【0023】
凹面24Aは、前後方向について、下方かつ前方に凸となるように滑らかに湾曲した形状である。凹面24Aは、水平面に対する傾斜角度が、上端部から下端部に向かって連続的に徐々に小さくなる凹状の湾曲面をなしている。凹面24Aの傾斜角度については後に具体的に説明する。凹面24Aは、図12及び図13に示すように、左右方向について、吐水落下位置PFを囲むようにして左右に向けて後方に湾曲した形状をなしている。
【0024】
図8に示す側断面において、載置面23A、凸面22A、及び凹面24Aの水平面に対する傾斜角度について説明する。ボウル部10の内面10Aを示す曲線において、前鉢面部20の上端の位置をP1、載置面23Aと凸面22Aの間の位置をP2、凸面22Aと凹面24Aとの変曲点の位置をP3、前鉢面部20の下端の位置をP4とする。ボウル部10の内面10Aを示す曲線の接線をT、この接線Tの水平面に対する傾斜角度をθと定義する。この傾斜角度θはいずれの位置においても0°以上90°以下となる。図8では、各点P1~P4において接線Tと傾斜角度θに、当該点Pに付した数字を付して表す。載置面23Aは、点P1から点P2の範囲において傾斜角度θが十分に小さく、上方に小物を載置しても滑り落ちにくい形態で形成されている(θ1<θ2)。傾斜角度θは、点P2の上側から下側に向かって連続的に徐々に大きくなる。換言すれば、点P2には、角部のような尖った形状が存在せず、載置面23Aと凸面22Aが滑らかに連続する。凸面22Aは、点P2から変曲点P3に向かって傾斜角度θが連続的に徐々に大きくなる形態で形成されている(θ2<θ3)。傾斜角度θは、変曲点P3を境にして、凸面22A側から凹面24A側に向かい減少に転じる。凹面24Aは、変曲点P3から点P4に向かって傾斜角度θが連続的に徐々に小さくなる形態で形成されている(θ3>θ4)。
【0025】
図9に示す側断面において、凹部24の左右に連なる領域について説明する。この側断面に表れる最も低位に位置する底面は、排水口15から水位約30%に位置する。ボウル部10の内面10Aのうち凹部24の左右に連なる領域は、上述の底面から前方に向かうにつれて徐々に上昇する緩やかな湾曲面である。この凹部24の左右に連なる領域の曲率半径は、前後方向において、凹面24Aの曲率半径よりも大きい。ボウル部10を前後方向に沿って切断した断面形状に現れる内面10Aにおいて、最も低い位置は左右に向かうにつれて前方に移動する。例えば、図7の側断面に表れる内面10Aの最も低い位置を排水口15の中心として特定した場合に、図9の側断面に表れる内面10Aの最も低い位置は排水口15の中心に対して前方に位置する。
【0026】
図13に示す吐水落下位置PFを通る水平面で切断した水平断面形状について説明する。ボウル部10の内面10Aは、吐水落下位置PFを通る水平面で切断した水平断面形状において、左右に向けて後方に湾曲する湾曲部16を有している。この湾曲部16は、前端16Aよりも左右の曲率半径が大きい。湾曲部16の前端16Aは、前鉢面部20によって構成される。本実施形態では、湾曲部16の前端16Aは、凹部24の凹面24Aの一部を構成している。湾曲部16の左右に位置する部分16Bは、左右鉢面部12によって構成される。
【0027】
湾曲部16は、吐水落下位置PFを前端16Aとして、排水口15を囲んで排水口15より後方まで延びている。湾曲部16の前端16Aは、排水口15の前方において湾曲しつつ左右に延びている。湾曲部16の左右に位置する部分16Bは、排水口15の左方及び右方において緩やかに湾曲しつつ後方に向けて延びている。湾曲部16は、略U字状をなし、後端が後鉢面部13に連なる。この湾曲部16は、吐水落下位置PFに落下した湯水を後方に向けてガイドするガイド面を構成する。
【0028】
図12に示す吐水落下位置PFの上方位置を通る水平面で切断した水平断面形状について説明する。この水平面の位置は、排水口15から水位約30%の位置であり、オーバーフロー孔41より下方の位置である。ボウル部10は、排水口15の後方における左右両側にコーナー部17を有している。このコーナー部17は、左右鉢面部12と後鉢面部13との間に位置し、前側部分が左右鉢面部12で構成され、後側部分が後鉢面部13で構成されている。コーナー部17は、上下に延びる形で、底鉢面部14から左右鉢面部12の上端12Aまで形成されている。図13に示す吐水落下位置PFを通る水平面で切断した水平断面形状においては、左右のコーナー部17が互いに近接して連続した形状をなしている。換言すれば、図13に示す吐水落下位置PFを通る水平面で切断した水平断面形状においては、ボウル部10の内面10Aの後端が、左右に延びた直線状ではなく湾曲した形状である。
【0029】
図10から図13表れる水平断面形状を比較すると、ボウル部10の内面10Aの前端は、上方に向かうにつれて曲率半径が大きくなるように形成されている。ボウル部10の内面10Aは、低水位では水面の横寸法よりも縦寸法の方が大きく(図13参照)、水位が上がるにつれて水面の横寸法に対する縦寸法の比率が大きくなり、オーバーフロー孔41の下端位置では横寸法よりも縦寸法が小さくなる(図11参照)ように形成されている。この縦寸法は、図10から図13において、排水口15の中心位置の前後の幅であり、横寸法は、図10から図13において、排水口15の中心位置の左右の幅である。
【0030】
ボウル部10の内面10Aは、コーナー部17に向けて左右の幅が小さくなるように形成されている。換言すれば、左右鉢面部12は、後鉢面部13に向かう面が左右方向内側に向けて湾曲した湾曲面で形成されている。このコーナー部17に向けて左右の幅が小さくなるように形成された部分は、コーナー部17に向けて湯水を誘導しつつ、湯水の流れる方向を左右方向内側に向けて徐々に変更する誘導面を構成する。コーナー部17に向けて左右の幅が小さくなるように形成された部分は、コーナー部17の後側部分に衝突する湯水の衝撃を緩和する作用を奏し得る。
【0031】
コーナー部17は、湾曲部16における左右の曲率半径よりも曲率半径が小さい。コーナー部17は、前側部分が後方に向かって延びて、この前側部分の後端から後側部分が左右方向内側に向けて屈曲した形状をなす。このコーナー部17の後側部分は、コーナー部17の前側部分に沿って後方に流れる湯水が衝突する壁面を構成する。換言すれば、コーナー部17は、左右鉢面部12に沿って後方に流れる湯水の流れる方向を、左右方向内側に向かう方向に変更する第2のガイド面を構成する。
【0032】
図11に示すオーバーフロー孔41の下端位置を通る水平面で切断した水平断面形状について説明する。ボウル部10の内面10Aは、この水平断面形状において、排水口15からの距離が排水口15から左右に離れると大きくなる前縁部18と、前縁部18の左右両側において後方に湾曲する上方湾曲部19とを有する。
【0033】
前縁部18は、前鉢面部20によって構成される。本実施形態では、前縁部18は、凸部22の頂部よりも下方において凸面22Aの一部を構成している。上方湾曲部19は、前鉢面部20と左右鉢面部12の間に形成されている。上方湾曲部19の曲率半径は、湾曲部16のうち前端の曲率半径よりも大きい。上方湾曲部19の曲率半径は、同じ水平断面に表れるコーナー部17の曲率半径よりも大きい。上方湾曲部19は、洗面器1の満水状態において水面付近に位置し、前方に向かう水をオーバーフロー孔41に向けてガイドする第3のガイド面を構成する。
【0034】
台座部30は、図2から図6に示すように、前鉢面部20及び左右鉢面部12の下方に連なって設けられており、洗面器1の周縁部を構成している。台座部30は、カウンター101Aの上面Mに載置される。台座部30とカウンター101Aの間は、図示しないコーキング材によって止水される。
【0035】
台座部30の前面31は、図7に示すように、下端部よりも上端部が前方に位置するオーバーハング形状を有している。台座部30の前面31は、水平面に対する傾斜角度が上端部から下端部に向かって連続的に徐々に大きくなる凹状の湾曲面を含んでいる。台座部30の前面31は、端縁20Aから下方に延びた前面に対応する。前面31における湾曲面の曲率半径は略一定である。この湾曲面の曲率半径は、前鉢面部20の凸面22Aにおける最大の曲率半径よりも小さい。前面31における湾曲面は、前面31における左端から右端まで全域にわたって形成されている。
【0036】
台座部30は、前鉢面部20における凸面22Aの裏側において前鉢面部20に接続している。台座部30と前鉢面部20が接続する部分32は、上方に向けて凹んだ形状をなす。前鉢面部20における凸面22Aの裏側の面は、凸面22Aに沿って延びる凹状の湾曲面である。台座部30は、後方に向かうにつれて上方に向かう形状の壁部を有しており、この壁部が前鉢面部20に接続する。台座部30と前鉢面部20が接続する部分32は、カウンター101Aの上面Mから離れる形で凹んでいる。台座部30と前鉢面部20が接続する部分32は、左右方向に沿って延びる溝状をなす。洗面器1をカウンター101Aに設置した状態において、台座部30と前鉢面部20が接続する部分32の大部分は、カウンター101Aに形成された切り欠き101Bの前側縁部に沿って配置される。台座部30と左右鉢面部12が接続する部分は、前後方向に沿って延びる溝状をなしている。台座部30と鉢面部20,12とが接続する部分は、後述する固定部材52によってカウンター101Aに固定される平面視U字状の壁部と、鉢面部20,12との間に位置している。
【0037】
オーバーフロー部40は、後鉢面部13の後方及び底鉢面部14の下方にかけて側面視略L字状に延びる筒状に形成されている。オーバーフロー部40は、上部にボウル部10に開口するオーバーフロー孔41が形成されている。オーバーフロー部40は、オーバーフロー孔41から延びるオーバーフロー流路42が排水口15まで延びている。オーバーフロー孔41の下縁は、鉛直方向において、排水口15の高さを基準としてボウル部10の端縁の最も低い位置における高さを水位100%とした場合に、排水口15から水位60%以上80%以下に位置している。
【0038】
図10に示すように、洗面器1は一対の固定部50を有している。各固定部50は、底面視における排水口15の左方及び右方であって、左右の台座部30の位置のそれぞれに設けられている。各固定部50には、孔51Aが形成されている。孔51Aは、洗面器1の端縁20A,12Aに沿って延びた平面視U字状の壁部に形成されている。洗面器1は、これら孔51Aに固定部材52が挿通されてカウンター101Aに固定される。
【0039】
次に、このような構成を有する洗面器1に吐出部104Aから吐出された湯水の流れ方を図14から図16を参照しつつ説明する。
【0040】
この洗面化粧台100は、水栓ユニット104に設けられた吐水操作部104Bを操作すると、吐出部104Aから湯水が吐出される。
【0041】
吐出部104Aから吐出された湯水は、吐水落下位置PFに向かって落下する。この吐水落下位置PFに向かう湯水は、水平面に対して大きな角度、例えば45°よりも大きい角度で前方に向けて落下する。吐水落下位置PFよりも前側には、凹部24の凹面24Aが上方に向けて立ち上がる形で位置する。この凹部24よりも上側には、凸部22の凸面22Aが位置する。吐水落下位置PF及びその近傍においてボウル部10の内面10Aに衝突した湯水は、凹部24の凹面24Aに沿って前方かつ上方に向けて移動した後、重力によって吐水落下位置PF側に向かう流れを形成する。この際、吐水落下位置PF近傍には後に吐出された湯水が落下し続けており、これらの湯水が合流して吐水落下位置PFよりも前側に湯水が集中する。吐水落下位置PFよりも前側に集まった湯水は、凹部24の凹面24Aに沿って左右に分かれて、吐水落下位置PFの左側と右側を後方に向けて流れる。このようにして、吐水落下位置PFよりも前側に左右方向における中央よりも左右両側の方が薄い湯水の束が形成される。
【0042】
湯水の束となって、吐水落下位置PFの左側と右側を後方に向けて流れた湯水の一部は、底鉢面部14の上面に沿って流下して、前方及び左右両方から排水口15に至る。湯水の束となって、吐水落下位置PFの左側と右側を後方に向けて流れた湯水の他の一部は、左右鉢面部12と後鉢面部13との間のコーナー部17に達する。左右鉢面部12と後鉢面部13との間のコーナー部17に達した湯水は、流れる方向がコーナー部17に沿って左右方向内側に向かう方向に変化する。コーナー部17を通過した洗浄水は、左右方向内側に向かいつつ、底鉢面部14の上面に沿って流下して、後方から排水口15に至る。これらの排水口15に向かう流れは、排水栓105の上面を経ることなく、排水口15内に流れ込み、排水口15から排水される。換言すれば、本実施形態の洗面器1では、排水口15に向かう湯水の水膜が、排水栓105の下方において形成される。この洗面器1は、排水栓105の上面や排水栓105の近傍に吐出された湯水が落下する構成に比して、排水栓105と排水口15との間に水膜が生じ難く、スムーズな排水が実現される。
【0043】
次に、このような構成を有する洗面器1に水を溜めて利用した際の様子を図7及び図11を参照しつつ説明する。
【0044】
この洗面化粧台100は、図7では図示しない排水栓105で排水口15を閉じて、洗面器1に水を溜めると、オーバーフロー孔41の下端位置で満水となる。図7において、満水時の水位を一点鎖線で示す。満水時の水面の形状は、図11においてボウル部10で囲まれた部分の形状となる。水面の前方かつ上方には、凸部22の凸面22Aと載置部23の載置面23Aがこの順に配置されている。前鉢面部20は、上端の位置が他の鉢面部12,13より低く、ボウル部10の内側に手を入れやすくなっている。
【0045】
手洗いや衣類等を洗う際に、溜めた水に手を入れて手を動かすと水流が生じて、一部の水が前方に向けて流れる場合がある。前方に向かった水は、前鉢面部20の凸面22Aによって、それ以上前方に向かうことが制限され、図11の前縁部18に沿って左右に向けて流れる。前縁部18に沿って左右に向けて流れた水は、上方湾曲部19に沿って後方に向かう流れを形成し、オーバーフロー孔41側に向けて流れ、オーバーフロー孔41から排水される。このようにして、洗面器1に溜めた水が前方に向かった場合であっても、前方に水が飛び出すことが抑制される。上方湾曲部19が形成されず、前鉢面部20と左右鉢面部12の間に角部が形成される構成では、オーバーフロー孔41から最も離れて位置する角部に水や洗剤等の泡が滞留する虞がある。本実施形態では、そのような角部が形成されず、前鉢面部20と左右鉢面部12の間に上方湾曲部19が形成されるから、水や泡を前縁部18からオーバーフロー孔41にスムーズに向かわせることができる。前鉢面部20と左右鉢面部12の間に角部が形成される構成では、左右方向中央からの水の流れと後方からの水の流れが角部に局所的に集中して、水が外部に飛び出すことも懸念される。本実施形態では、そのような角部が形成されず、前鉢面部20と左右鉢面部12の間に上方湾曲部19が形成されるから、水が局所的に集中することに起因して水が外部に飛び出すことを抑制できる。
【0046】
続いて、洗面器1において、飛沫が飛んだ場合について説明する。前鉢面部20は、図7及び図11に示すように、水面よりも上方において外側に広がる部分の面積が左右鉢面部12及び後鉢面部13よりも広い。飛沫が前方に飛んだ場合には、前鉢面部20における凸面22A及び載置面23Aで飛沫を受けて、ボウル部10内に流下させることができる。左右鉢面部12の上端12Aの高さは、特に飛沫が飛びやすい中央部において前端より高い。飛沫が左右に飛んだ場合には、左右鉢面部12によって、上端12Aを超えて外部に向かうことが制限される。このように、洗面器1は飛沫が外部に飛び散ることが抑制される。
【0047】
<実施形態2>
実施形態2に係る洗面器201は、図17に示すように、オーバーフロー部の構成が実施形態1とは相違する。実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0048】
オーバーフロー部240は、前鉢面部20の前方及び底鉢面部14の下方にかけて側面視弧状に延びる筒状に形成されている。オーバーフロー部240は、上部にボウル部10に開口するオーバーフロー孔241が形成されている。オーバーフロー部240は、オーバーフロー孔241から延びるオーバーフロー流路242が排水口15まで延びている。オーバーフロー孔241の下縁は、ボウル部10の上下方向について、排水口15の位置を基準として前鉢面部20の上端の位置を水位100%とした場合に、排水口15から水位60%以上80%以下に位置している。
【0049】
前鉢面部20は、凸面22Aの頂部よりも下側にオーバーフロー孔241が形成されている。オーバーフロー孔241は、凹面24Aよりも上側に位置している。このオーバーフロー孔241は、凸面22Aの頂部と、凸面22Aと凹面24Aの間の変曲点との間に位置している。
【0050】
この洗面器201は、凸面22Aの頂部よりも下側にオーバーフロー孔241が形成されているから、前方に向かう水をオーバーフロー孔241から逃がすことができ、飛沫が凸部22を超えて前鉢面部前方に飛びにくい。
【0051】
<実施形態3>
実施形態3に係る洗面器301は、図18から図20に示すように、ボウル部の形状が実施形態1とは相違する。実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0052】
洗面器301は、ボウル部310、台座部30、オーバーフロー部40、取付部360を備えている。ボウル部310は平面視略角丸矩形状をなしている。ボウル部310は、前鉢面部320、左右鉢面部312、後鉢面部313、及び底鉢面部314を有している。ボウル部310は、底鉢面部314の周囲を前鉢面部320、左右鉢面部312、及び後鉢面部313の各鉢面部が連続的に取り囲んで一体的に形成されている。ボウル部310は、底鉢面部314の左右方向の中央部の後部寄りの位置に排水口15が形成されている。排水口15は、底鉢面部314を上下方向に貫通して形成されている。排水口15は、底鉢面部314の最も低い位置に形成されている。排水口15にはオーバーフロー部40の後述するオーバーフロー孔41に連通するオーバーフロー流路42が連通している。ボウル部310は、各鉢面部320,312,313から底鉢面部314の排水口15に向かって低くなってゆくボウル形状をなしている。
【0053】
ボウル部310の内面310Aは、鉢面部320,312,313において底鉢面部314に向けて傾斜する傾斜面を有している。前鉢面部320に形成された傾斜面と左右鉢面部312に形成された傾斜面は、水平面に対して傾斜する傾斜角度が略同じである。後鉢面部313に形成された傾斜面は、前鉢面部320に形成された傾斜面と左右鉢面部312に形成された傾斜面よりも水平面に対して傾斜する傾斜角度が大きい。前鉢面部320と左右鉢面部312は、上端の高さが略同じである。後鉢面部313は、上端の高さが前鉢面部320と左右鉢面部312の上端の高さよりも低い。洗面器301は、後鉢面部313の上端から後方に延びる形で取付部360が設けられている。
【0054】
取付部360は、図示しない水栓を取り付けるための取付面361を有している。水栓は、湯水を吐出する吐出部、吐出部からの吐水を操作する吐水操作部、及び洗面器301に取り付けられた排水栓の開閉操作を行う排水操作部を有する水栓ユニットに設けられている。この水栓ユニットは、その大部分が取付部360の下方に配置されている。吐出部、吐水操作部、及び排水操作部は、それぞれ取付面361の開口362に挿通され、取付面361から上方に突出して設けられている。
【実施例
【0055】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0056】
本願において、各用語は次のように用いる。オーバーフロー孔を基準として水位を定めるときは、オーバーフロー孔の下端位置を基準とする。容量は、オーバーフロー孔を塞いで、所定の水位まで水を溜めた場合の溜水の量として定義する。面積は、所定の水位において内面に囲まれる領域の面積をその水位の面積として定義する。この面積は、洗面器に所定の水位まで水を溜めた場合の水面の面積に相当する。縦寸法は、排水口の中心を通り鉛直方向に沿って前後に延びた平面でボウル部を切断した断面において、内面における前後の幅を内面の縦寸法として定義する。横寸法は、排水口の中心を通り鉛直方向に沿って左右に延びた平面でボウル部を切断した断面において、内面における左右の幅を内面の横寸法として定義する。
【0057】
1.洗面器の作製
【0058】
実施例1として、実施形態1に対応するボウル部を備えた洗面器を作製した。この洗面器は、排水口の高さを0cmとした場合に、端縁の最も低い位置における高さである前鉢面部の左右方向中央部の高さが14cmである。以下、実施例1において水位0cmを水位0%、水位14cmを水位100%と定義する。オーバーフロー孔の位置は、水位10cm、つまり、水位70%である。実施例1は、上述した実施形態1の凸部と凹部との間の変曲点が水位9.15cm、つまり、水位65%に位置し、凸部の頂部が水位11.85cm、つまり、水位85%に位置する。実施例1は、水位100%まで水を溜めた場合の容量が15.6Lである。実施例1は、水位100%における面積が2253cmである。実施例1は、水位100%における内面の縦寸法が47cmであり、内面の横寸法が48cmである。
【0059】
実施例2として、実施形態3に対応するボウル部を備えた洗面器を作製した。この洗面器は、排水口の高さを0cmとした場合に、端縁の最も低い位置における高さである後鉢面部の高さが13cmである。以下、実施例2において水位0cmを水位0%、水位13cmを水位100%と定義する。オーバーフロー孔の位置は、水位7.5cm、つまり、水位58%である。実施例2は、水位100%まで水を溜めた場合の容量が23.4Lである。実施例2は、水位100%における面積が2322cmである。実施例2は、水位100%における縦寸法が37cmであり、横寸法が64cmである。
【0060】
実施例1及び実施例2と比較するために、直方体の箱形のボウル部を備えた洗面器を仮想的な比較例とした。この洗面器は、端縁の最も低い位置における高さが18cmであり、すべての水位において縦寸法が30cm、横寸法が45cmである。以下、比較例において水位0cmを水位0%、水位18cmを水位100%と定義する。比較例は、水位100%まで水を溜めた場合の容量が24.3Lである。
【0061】
2.容量と水位
【0062】
実施例1について、水位100%における容量を100%として、所定の水位における容量を算出した。その結果を、図21のプロット図においてダイヤ形の記号でプロットした。
【0063】
本願において、プロットの線形近似曲線は、最小二乗法によって求めた。この線形近似曲線は、「容量と水位」及び「面積と水位」において、水位0%を下限とする範囲と、容量0%を下限とする範囲では切片を0と定め、それ以外の範囲では切片を定めないで求めた。各プロット図において、横軸をx、縦軸をyとした場合に、線形近似曲線の傾きはx座標の増加量に対するy座標の増加量の比率とした。この傾きは、少数第2位で四捨五入して求めた。以下の説明では、線形近似曲線の傾きを単に「傾き」ともいう。
【0064】
実施例1は、水位0%から30%までの傾き(容量/水位)が0.4であり、水位30%から70%(オーバーフロー孔)の間の傾きが1.0であり、水位70%(オーバーフロー孔)から100%の間の傾きが1.6であった。つまり、実施例1は、水位0%から30%までの傾きが小さく、水位30%から70%の間の傾きが中程度であり、水位70%から100%の間の傾きが大きかった。実施例1は、水位0%から70%(オーバーフロー孔)の間の傾きが0.6であった。実施例1は、水位0%から50%までの傾きが0.5であり、水位50%から100%の間の傾きが1.4であった。つまり、実施例1は、水位が半分以下の傾きより水位が半分以上の傾きの方が大きかった。実施例1は、水位50%における容量が29.7%であった。実施例1は、容量10%のときに水位約30%であり、容量0%から10%までの傾き(容量/水位)は0.4であった。実施例1は、容量30%のときに水位約50%であり、容量0%から30%までの傾き(容量/水位)は0.5であった。実施例1は、水位0%から100%までの傾きが0.8であった。
【0065】
実施例1のプロットは、すべての水位において比較例のプロット及び実施例2より容量の割合が低く、各プロットを繋いだグラフが下に凸の形状となった。実施例1のプロットを以下の式(1)で表される二次関数で近似すると、係数aの値が約0.008であった。つまり、aが正の値であり、かつ、0.005より大きく(a>0.005)、さらに0.007より大きかった(a>0.007)。
【0066】
[容量(%)]=a[水位(%)]×b[水位(%)]+c ・・・(1)
【0067】
実施例2について、水位100%における容量を100%として、所定の水位における容量を算出した。その結果を、図21のプロット図において四角形の記号でプロットした。
【0068】
実施例2は、水位0%から30%までの傾きが0.6であり、水位30%から70%の間の傾きが1.1であり、水位70%から100%の間の傾きが1.2であった。つまり、実施例2は、水位0%から30%までの傾きが小さく、水位30%から70%の間の傾きが中程度であり、水位70%から100%の間の傾きが大きかった。実施例2は、水位0%から50%までの傾きが0.7であり、水位50%から100%の間の傾きが1.2であった。つまり、実施例2は、水位が半分以下の傾きより水位が半分以上の傾きの方が大きかった。実施例2は、容量10%における水位が約20%であり、容量0%から10%までの傾き(容量/水位)は0.5であった。実施例2は、容量30%における水位が約40%であり、容量0%から30%までの傾き(容量/水位)は0.7であった。実施例2は、水位0%から100%までの傾きが1.0であった。
【0069】
実施例2のプロットは、すべての水位において比較例のプロットより容量が低く、各プロットを繋いだグラフが下に凸の形状となった。実施例2のプロットを上記の式(1)で表される二次関数で近似すると、係数aの値が約0.005であった。つまり、aが正の値であり、かつ、0.004より大きかった(a>0.004)。
【0070】
比較例について、所定の水位における容量を算出した。その結果を、図21のプロット図において三角形の記号でプロットした。
【0071】
比較例は、いずれの水位の範囲においても傾きが1.0であり、水位に比例して容量が大きくなっていた。
【0072】
実施例1及び実施例2は、水位と、その水位における容量とをプロットしたときに、水位0%から100%までの傾きよりも、水位0%から30%までの傾きの方が小さい。実施例1及び実施例2は、水位30%までは水位の割に容量が少ないから、ボウル部に水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすくかつ節水できる。
【0073】
水位0%から100%までの傾きは、ボウル部全体の形状に応じて、例えば0.7以上1.0以下に設計でき、0.8以上1.0以下に設計することも可能である。水位0%から30%までの傾きは、ボウル部の下部とその上方に位置する部分の形状を適宜設計することによって変更できる。例えば、左右鉢面部に下部から上方に向けて緩やかに湾曲した湾曲面を形成することによって、水位0%から30%までの傾きを好適に小さくすることができる。
【0074】
実施例1は、水位0%から30%までの傾きよりも、水位30%からオーバーフロー孔までの傾きの方が大きい。この構成によれば、水位が低い領域よりも中間領域の容量を大きく確保することができ、洗面器内において手を動かしやすい。
【0075】
水位30%からオーバーフロー孔までの傾きは、ボウル部の形状を適宜設計することによって変更できる。例えば、水位30%からオーバーフロー孔までの間に凹部と凸部の変曲点を形成して、水位の上昇に伴って縦寸法が増加するように設計することによって、水位30%からオーバーフロー孔までの傾きを好適に大きくすることができる。
【0076】
実施例1は、水位0%からオーバーフロー孔までの傾きよりも、オーバーフロー孔から水位100%までの傾きの方が大きい。この構成によれば、オーバーフロー孔より上方に位置する領域の容量を大きく確保することができ、ボウル部内の水が外部に飛びにくい。
【0077】
オーバーフロー孔から水位100%までの傾きは、ボウル部の形状を適宜設計することによって変更できる。例えば、オーバーフロー孔から水位100%までの範囲では、前鉢面部が底鉢面部に向かう水平面に対する傾斜角度を小さくすることによって、この範囲の傾きを好適に大きくすることができる。前鉢面部が底鉢面部に向かう水平面に対する傾斜角度は、例えば、図8に示す傾斜角度θ1,θ2を例示できる。
【0078】
実施例1及び実施例2は、水位と、その水位における容量とをプロットしたときに、容量0%から10%までの傾きが0.8以下である。この構成によれば、容量10%までは水位の割に容量が少ないから、ボウル部に水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすくかつ節水できる。容量0%から10%までの傾きは、通常、0.2以上である。この線形近似曲線の傾きは、例えば、上述した水位0%から30%までの傾きと同様に変更できる。
【0079】
実施例1は、水位と、その水位における容量とをプロットしたときに、容量0%から10%までの傾きが0.4以下である。この構成によれば、容量10%までは水位の割に容量が少ないから、ボウル部に水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすくかつ節水できる。容量0%から10%までの傾きは、通常、0.2以上である。この線形近似曲線の傾きは、例えば、上述した水位0%から30%までの傾きと同様に変更できる。
【0080】
3.面積と水位
【0081】
実施例1について、水位100%における面積を100%として、所定の水位における面積を算出した。その結果を、図22のプロット図においてダイヤ形の記号でプロットした。
【0082】
実施例1は、水位0%から20%の傾き(面積/水位)が1.3であり、水位20%から80%の傾きが0.8であり、水位80%から100%の傾きが1.5であった。水位20%から100%の傾きは0.9であった。実施例1は、水位10%における面積が約16%であり、水位20%における面積が約27%であり、水位40%における面積が約42%である。実施例1は、各プロットを繋いだグラフが水位0%から20%までは上に凸であり、水位20%から80%までは線形的に推移し、水位80%から100%まで下に凸であった。
【0083】
実施例2について、水位100%における面積を100%として、所定の水位における面積を算出した。その結果を、図22のプロット図において四角形の記号でプロットした。
【0084】
実施例2は、水位0%から20%の傾き(面積/水位)が4.0であり、水位20%から100%の傾きが0.3であった。実施例2は、各プロットを繋いだグラフが水位0%から20%までは上に凸であり、水位20%から100%までは線形的に推移した。
【0085】
実施例1及び実施例2は、水位が増加するにつれて面積が増加する。この構成によれば、洗面器に水を溜めた場合に、水位に応じて内面に囲まれる領域の面積が大きくなるから、衣類等を手洗いする際に洗いやすい。
【0086】
実施例1は、水位10%における面積が50%以下である。この構成によれば、水位10%までは面積の割に水位が高いから、ボウル部に水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすくかつ手もみ洗い等をしてもこぼれにくい。水位10%における面積は、通常、5%以上である。水位10%における面積は、ボウル部の形状を適宜設計することによって変更できる。例えば、前鉢面部及び左右鉢面部が底鉢面部に向かう傾斜角度を緩やかにすることによって、相対的に水位10%における面積を小さくすることができる。
【0087】
実施例1は、水位40%における面積が50%以下である。この構成によれば、水位40%までは面積の割に水位が高いから、ボウル部に水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすくかつ手もみ洗い等をしてもこぼれにくい。水位40%における面積は、通常、20%以上である。水位40%における面積は、ボウル部の形状を適宜設計することによって変更できる。例えば、水位40%より高い位置に凸部や載置部を設けることによって、相対的に水位40%における面積を小さくすることができる。
【0088】
実施例1は、水位と面積とをプロットしたときに、水位0%から20%までの傾きと、水位20%から100%までの傾きの差分の絶対値が2以下である。この構成によれば、水位の上昇に応じて面積が徐々に大きくなるから、ボウル部に水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすい。この差分の絶対値は、1以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。この差分の絶対値の下限値は0である。水位0%から20%までの傾きと、水位20%から100%までの傾きの差分の絶対値は、ボウル部の形状を適宜設計することによって変更できる。例えば、左右鉢面部及び後鉢面部の上部と下部において、底鉢面部に向かう傾斜角度の変化を小さくすることによって、上記傾きの差分の絶対値を小さくすることができる。
【0089】
水位と面積とをプロットしたときに、水位0%から50%までのプロットの近似曲線を求めて、その近似曲線における接線の傾きの最大値をT1と定義し、水位50%から100%までのプロットの近似曲線を求めて、その近似曲線における接線の傾きの最大値をT2と定義する。この場合に、実施例1は、T1とT2の差分の絶対値が2以下である(|T1-T2|≦2)。この近似曲線は、例えば多項式近似曲線からプロットの散布に応じて選択してもよい。この構成によれば、水位の上昇に応じて面積が徐々に大きくなるから、ボウル部に水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすい。この差分の絶対値は、1以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。この差分の絶対値の下限値は0である。T1とT2の差分の絶対値は、水位0%から20%までの傾きと、水位20%から100%までの傾きの差分の絶対値と同様にして変更できる。
【0090】
実施例1は、水位65%以上85%以下の位置にオーバーフロー孔が形成されている。この構成によれば、水位65%以上であって面積が十分に広く、かつ、水位85%以下であって上方にある程度の高さが確保された位置にオーバーフロー孔が形成されるから、ボウル部から水がこぼれにくい。
【0091】
4.縦寸法と水位
【0092】
実施例1について、水位100%における縦寸法を100%として、所定の水位における縦寸法を算出した。その結果を、図23のプロット図においてダイヤ形の記号でプロットした。
【0093】
実施例1は、各プロットを繋いだグラフが水位0%から15%までは上に凸であり、水位15%から85%までは線形的に推移し、水位85%から100%まで下に凸であった。
【0094】
実施例2について、水位100%における縦寸法を100%として、所定の水位における縦寸法を算出した。その結果を、図23のプロット図において四角形の記号でプロットした。
【0095】
実施例2は、各プロットを繋いだグラフが水位0%から15%までは上に凸であり、水位15%から100%までは線形的に推移した。
【0096】
5.横寸法と水位
【0097】
実施例1について、水位100%における横寸法を100%として、所定の水位における横寸法を算出した。その結果を、図24のプロット図においてダイヤ形の記号でプロットした。
【0098】
実施例1は、各プロットを繋いだグラフが水位0%から20%までは上に凸であり、水位20%から100%までは線形的に推移した。実施例1は、水位0%から20%の傾き(横寸法/水位)が1.4であり、水位20%から100%の傾きが0.6であった。
【0099】
実施例2について、水位100%における横寸法を100%として、所定の水位における横寸法を算出した。その結果を、図24のプロット図において四角形の記号でプロットした。
【0100】
実施例2は、各プロットを繋いだグラフが水位0%から15%までは上に凸であり、水位15%から100%までは線形的に推移した。実施例2は、水位0%から15%の傾き(横寸法/水位)が4.5であり、水位15%から100%の傾きが0.2であった。
【0101】
実施例1は、水位と横寸法とをプロットしたときに、水位0%から20%までの傾きと、水位20%から100%までの傾きの差分の絶対値が1以下である。この構成によれば、水位の上昇に応じて内面の横寸法が徐々に大きくなるから、ボウル部に水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすい。この差分の絶対値は、0.9以下であることがより好ましい。この差分の絶対値の下限値は0である。水位0%から20%までの傾きと、水位20%から100%までの傾きの差分の絶対値は、ボウル部の形状を適宜設計することによって変更できる。例えば、左右鉢面部の上部と下部において、底鉢面部に向かう傾斜角度の変化を小さくすることによって、上記傾きの差分の絶対値を小さくすることができる。
【0102】
6.面積と容量
【0103】
実施例1について、容量0Lを0%、容量15.6Lを100%、容量100%における面積を100%として、所定の容量における面積を算出した。その結果を、図25のプロット図においてダイヤ形の記号でプロットした。
【0104】
実施例1は、容量10%において面積が約30%であった。実施例1は、容量0%から10%の傾き(面積/容量)が2.7であり、容量10%から100%の傾きが0.7であった。
【0105】
実施例2について、容量0Lを0%、容量23.4Lを100%、容量100%における面積を100%として、所定の容量における面積を算出した。その結果を、図25のプロット図において四角形の記号でプロットした。
【0106】
実施例2は、容量10%において面積が約70%であった。実施例2は、容量0%から10%の傾き(面積/容量)が5.5であり、容量10%から100%の傾きが0.3であった。
【0107】
7.縦横比と水位
【0108】
実施例1について、所定の水位における横寸法に対する縦寸法の比である縦横比(縦寸法/横寸法)を算出した。その結果を、図26のプロット図においてダイヤ形の記号でプロットした。
【0109】
実施例1は、水位約57%未満では縦横比が1.0超であり、水位約57%以上では縦横比が1.0以下である。詳細には、水位約11%まで縦横比が増加し、水位約11%では縦横比が約1.6であった。水位約11%から縦横比が減少に転じて、水位約57%から水位100%までは縦横比が0.9以上から1.0以下である。換言すれば、実施例1は、低水位の領域では横寸法より縦寸法の方が大きく、高水位の領域では横寸法より縦寸法の方が小さい。実施例1は、水位20%から80%までの間において、縦横比の最小値が約0.9(水位約80%)であり、縦横比の最大値が約1.3(水位約20%)である。
【0110】
実施例2について、所定の水位における横寸法に対する縦寸法の比である縦横比(縦寸法/横寸法)を算出した。その結果を、図26のプロット図において四角形の記号でプロットした。
【0111】
実施例2は、水位0%から14%まで縦横比が小さくなり、水位14%から100%まで縦横比が約0.6で一定となる。実施例2は、水位20%から80%までの間において、縦横比がほとんど変化しない。
【0112】
実施例1は、所定の水位における縦横比が、水位20%から80%までの間において縦横比の最小値をAとし、縦横比の最大値をBとした場合に、B≧A×1.1の関係式を満たす。換言すれば、実施例1は、水位20%から80%の間において最大と最小の縦横比が10%以上変化する。この構成によれば、水位に応じてボウル部の形状を変更し、水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすい形状を実現できる。洗いやすい形状を実現するという観点において、ボウル部はB≧A×1.2の関係式を満たすことがより好ましく、B≧A×1.4の関係式を満たすことが更に好ましい。この最大になる縦横比は、水栓を取り付けるための取付面を有する洗面器においては、取付面以下で測定するものとする。Aの値及びBの値は、ボウル部の形状を適宜設計することによって変更できる。例えば、左右鉢面部の上部と下部において底鉢面部に向かう傾斜角度の変化を小さくしつつ、前鉢面部の上部と下部において底鉢面部に向かう傾斜角度の変化を大きくすることによって、Aの値及びBの値を適宜設定できる。このBは、B≦A×3の関係式を満たすように設定してもよい。
【0113】
実施例1は、水位0%から57%に含まれる第1の範囲において縦横比が1より大きく、第1の範囲よりも水位が高い水位57%から100%に含まれる第2の範囲において縦横比が1以下である。この構成によれば、ボウル部の上部において横寸法が縦寸法よりも大きい構成であっても、ボウル部の下部において水を溜める部分の縦寸法を大きく確保することができ、水を溜めて衣類等を手洗いする際に洗いやすい。第1の範囲において縦横比は、通常、3以下である。第2の範囲において縦横比は、通常、0.3以上である。第1の範囲における縦横比及び第2の範囲における縦横比は、ボウル部の形状を適宜設計することによって変更できる。例えば、前鉢面部に凸部を設けて、凸部よりもの下側部分の縦寸法を小さくしつつ、凸部及び凸部よりも上側部分の縦寸法を相対的に大きくすることによって、第1の範囲における縦横比及び第2の範囲における縦横比を適宜設定できる。
【0114】
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態1,2,3及び実施例の開示に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も含まれる。
【0115】
(1)ボウル部の形状は、最小二乗法によって求めた水位0%から100%までの線形近似曲線の傾きよりも、水位0%から30%までの線形近似曲線の傾きの方が小さい構成であれば特に限定されない。例えば、ボウル部は平面視円形状、多角形形状をなしていてもよい。ボウル部は実施形態1に記載の凸部、載置部、及び凹部を有していなくてもよい。
【0116】
(2)実施形態1に記載の凸部、載置部、凹部、オーバーフロー孔の形状、形成される領域の大きさ、位置は適宜変更可能である。
【0117】
(3)上記した実施例1,2以外にも、プロット図において導き出される線形近似曲線の傾き、各水位における容量、面積、縦寸法、横寸法、縦横比は適宜設計可能である。
【0118】
(4)所定の水位における内面の横寸法に対する内面の縦寸法の比である縦横比について、縦横比が1より大きくなる第1範囲と、縦横比が1以下となる第2範囲は任意の範囲に設定できる。第1範囲より水位が低い位置において、縦横比が1以下となる範囲を有してもよい。第2範囲より水位が高い位置において、縦横比が1より大きい範囲を有していてもよい。
【符号の説明】
【0119】
1,201,301…洗面器、10…ボウル部、10A…内面、15…排水口、12A,13A,20A…端縁、41,241…オーバーフロー孔
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