(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20231128BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
G05B19/18 X
B23Q17/24 Z
(21)【出願番号】P 2019210495
(22)【出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】五十部 学
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-042857(JP,A)
【文献】特開2018-138327(JP,A)
【文献】特開2017-227947(JP,A)
【文献】特開2017-001172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/46
B23Q 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工負荷の異常に基づいてアラーム停止可能な工作機械を制御する制御装置であって、
ワークの加工の結果生成される切粉を撮像する撮像部と、
アラーム停止の発生に応じて、アラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、加工の異常と判定するための切粉
の大きさのばらつきの基準モデルを予め決定する基準モデル決定部と、
決定された切粉
の大きさのばらつきの基準モデルに対して、後の加工において所定タイミングで撮像される切粉
の大きさのばらつきの類似度が所定以上である場合に、加工の異常発生と判断する判断部と、
を備える。
【請求項2】
前記基準モデル決定部は、アラーム停止の新たな発生に応じて、新たなアラーム停止前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、決定されている基準モデルを補正する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記基準モデル決定部は、アラーム停止の新たな発生に応じて、新たなアラーム停止前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、新たな基準モデルを決定し、
前記判断部は、新たな基準モデルを含むように、加工の異常発生と判断する類似度を補正する請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記基準モデル決定部は、さらに他の工作機械のアラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、決定されている基準モデルを補正する請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
加工負荷の異常に基づいてアラーム停止可能な工作機械を制御する制御装置としてコンピュータを動作させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
ワークの加工の結果生成される切粉を撮像する撮像部、
アラーム停止の発生に応じて、アラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、加工の異常と判定するための切粉
の大きさのばらつきの基準モデルを予め決定する基準モデル決定部、
決定された切粉
の大きさのばらつきの基準モデルに対して、後の加工において所定タイミング撮像される切粉
の大きさのばらつきの類似度が所定以上である場合に、加工の異常発生と判断する判断部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工具を用いてワークを加工する工作機械が知られている。工作機械では、例えば、加工時における工具又は軸の負荷を加工負荷として監視することで、異常を検出することが実施されている。一方、加工負荷が許容内である場合であっても、加工時に異常が発生することがあり得る。そこで、加工時に発生するワークの切屑を撮像して、切屑の変化量を用いて砥石の摩耗状態を検出する研削盤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の研削盤では、クーラントによって切屑凝集装置に集められる切屑がカメラによって撮影される。また、特許文献1に記載の研削盤では、撮影画像データに含まれる切屑の一定時間ごとの変化量について、閾値以上であるか否かが判定される。そして、特許文献1に記載の研削盤では、変化量が閾値以下である場合に、研削砥石のドレッシング又は交換が促される。これにより、特許文献1によれば、砥石の摩耗状態を把握することができる。
【0005】
ところで、工作機械においても、加工の異常は、ワークを加工することで発生する切粉の変化にも表れることが知られている。そこで、例えば、クーラントを用いてクーラントタンク等の切粉受けに流される切粉の変化により、より多くの要素から加工の異常を検出することができれば好適である。また、加工負荷の異常による工作機械のアラーム停止よりも早期に加工の異常を検出することで、加工の異常によって廃棄されるワークを削減することができればより好適である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示は、加工負荷の異常に基づいてアラーム停止可能な工作機械を制御する制御装置であって、ワークの加工の結果生成される切粉を撮像する撮像部と、アラーム停止の発生に応じて、アラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、加工の異常と判定するための切粉の基準モデルを予め決定する基準モデル決定部と、決定された切粉の基準モデルに対して、後の加工において所定タイミング撮像される切粉の類似度が所定以上である場合に、加工の異常発生と判断する判断部と、を備える制御装置に関する。
【0007】
(2)また、本開示は、加工負荷の異常に基づいてアラーム停止可能な工作機械を制御する制御装置としてコンピュータを動作させるプログラムであって、前記コンピュータを、ワークの加工の結果生成される切粉を撮像する撮像部、アラーム停止の発生に応じて、アラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、加工の異常と判定するための切粉の基準モデルを予め決定する基準モデル決定部、決定された切粉の基準モデルに対して、後の加工において所定タイミング撮像される切粉の類似度が所定以上である場合に、加工の異常発生と判断する判断部、として機能させるプログラムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、より多くの要素から加工の異常を検出することが可能な制御装置及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態の制御装置を含む工作システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態の制御装置の撮像部の配置位置を示す概略図である。
【
図3】第1実施形態の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の第2実施形態に係る制御装置の基準モデル決定部による基準モデル決定に用いられる切粉の形状を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の各実施形態に係る制御装置1及びプログラムについて、
図1から
図5を参照して説明する。
まず、各実施形態に係る制御装置1及び制御装置1によって制御される工作機械100の概要について説明する。
【0011】
工作機械100は、工具101(刃物)を用いてワークWを加工するシステムである。工作機械100では、例えば、加工の異常である工具101の劣化が発生することで、ワークWを加工する負荷(以下、加工負荷ともいう)が増大する。そこで、工作機械100では、加工負荷を監視することで、工具101の折損又は装置の破損を抑制することが実施されている。具体的には、所定以上の各負荷が検出された場合に、工作機械100は、アラーム停止される。
【0012】
制御装置1は、アラーム停止に加えて、ワークWの加工によって発生する切粉の変化を用いて、加工の異常を判断する。例えば、制御装置1は、クーラントによって、クーラントタンク102(
図2参照)に流れ込む切粉の変化を用いて、加工の異常を判断する。また、アラーム停止のタイミングにはブレがあるため、切粉の変化に起因する異常の判断よりも先にアラーム停止が起きることがあり得る。そこで、制御装置1は、加工の異常と判断する条件を最適化することで、アラーム停止よりも前に加工の異常を判断することを図るものである。なお、「切粉」は、広く解釈され、切削加工により生じる粉に制限されず、切削加工以外の除去加工(例えば、研削)により生じる粉を広く含む。
【0013】
[第1実施形態]
次に、本開示の第1実施形態に係る制御装置1及びプログラムについて、
図1から
図4を参照して説明する。
制御装置1は、工作機械100の加工動作を制御可能な装置である。制御装置1は、例えば、加工装置の加工負荷の異常に基づいて、アラーム停止可能な工作機械100を制御する装置である。制御装置1は、
図1に示すように、アラーム停止実行部11と、撮像部12と、画像格納部13と、基準モデル決定部14と、基準モデル格納部15と、判断部16と、信号出力部17と、を備える。
【0014】
アラーム停止実行部11は、例えば、CPUが動作することにより実現される。アラーム停止実行部11は、工作機械100の加工負荷に基づいて、工作機械100のアラーム停止を判定する。アラーム停止実行部11は、例えば、センサ(図示せず)を用いて、工具101又は軸(図示せず)の所定以上の負荷を検知する。アラーム停止実行部11は、工具101又は軸の所定以上の負荷を検知することで、工作機械100をアラーム停止状態にする。
【0015】
撮像部12は、例えば、カメラ等の撮像装置である。撮像部12は、ワークWの加工の結果生成される切粉を撮像する。撮像部12は、例えば、加工装置において、クーラントによってクーラントタンク102に流される切粉を撮像する。撮像部12は、例えば、
図2に示すように、クーラントタンク102に流れる流路の直上に配置される。
【0016】
画像格納部13は、例えば、ハードディスクなどの二次記憶媒体である。画像格納部13は、撮像部12によって撮像された画像(動画)を格納する。また、画像格納部13は、撮像された画像とともに、撮像された時刻を格納する。
【0017】
基準モデル決定部14は、例えば、CPUが動作することにより実現される。基準モデル決定部14は、アラーム停止の発生に応じて、アラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、加工の異常と判定するための切粉の基準モデルを予め決定する。基準モデル決定部14は、例えば、アラーム停止実行部11による工作機械100のアラーム停止の実行をトリガとして動作する。本実施形態において、基準モデル決定部14は、アラーム停止時刻の以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に含まれる切粉の大きさの平均値を基準モデルとして決定する。すなわち、基準モデル決定部14は、異常発生を判断するための基準モデルとして、アラーム停止する以前の所定期間内に発生した切粉の大きさを決定する。ここで、基準モデル決定部14は、例えば、切粉の大きさとして、切粉の画像に含まれる複数の切粉について、それぞれのピクセル量の平均値を切粉の大きさとして算出する。
【0018】
また、基準モデル決定部14は、アラーム停止の新たな発生に応じて、新たなアラーム停止前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、決定されている基準モデルを補正する。基準モデル決定部14は、例えば、既に一度以上発生しているアラーム停止について、新たなアラーム停止の発生をトリガとして、決定されている基準モデルを補正する。すなわち、基準モデル決定部14は、後述する判断部16によって既に決定された基準モデルを用いた加工の異常の検出で検出できなかった場合に、新たに発生したアラーム停止をトリガとして、既に決定された基準モデルを補正する。基準モデル決定部14は、例えば、新たなアラーム停止の発生において、新たなアラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像を用いて基準モデルを補正するための補正モデルを決定する。基準モデル決定部14は、例えば、既に決定されている基準モデルと、補正モデルとの大きさの平均値を新たな基準モデルとするように既に決定されている基準モデルを補正する。
【0019】
基準モデル格納部15は、例えば、ハードディスク等の二次記憶媒体である。基準モデル格納部15は、基準モデル決定部14によって決定された基準モデルを格納する。基準モデル格納部15は、例えば、決定された切粉の大きさの基準モデルを格納する。
【0020】
判断部16は、例えば、CPUが動作することにより実現される。判断部16は、決定された基準モデルに対して、後の加工において所定タイミングで撮像される切粉の類似度が所定以上である場合に、加工の異常発生と判断する。判断部16は、例えば、ワークWの加工中に、所定タイミングで繰り返し撮像部12によって撮像される画像のそれぞれに含まれる切粉の大きさの平均値を算出する。判断部16は、算出された切粉の大きさの平均値と、決定された基準モデルの切粉の大きさとを比較して、類似度を算出する。判断部16は、算出された類似度が所定値以上となった場合に、加工の異常発生と判断する。ここで、判断部16は、例えば、基準モデル決定部14と同様に、切粉の大きさとして、切粉の画像に含まれる複数の切粉について、それぞれのピクセル量の平均値を切粉の大きさとして算出する。
【0021】
信号出力部17は、例えば、CPUが動作することにより実現される。信号出力部17は、判断部16によって加工の異常有りと判断された場合に、加工の異常の発生を示す信号を出力する。信号出力部17は、例えば、ディスプレイ等の表示装置(図示せず)に加工の異常の発生を示す信号を表示画像として表示させる。
【0022】
次に、本実施形態に係る制御装置1の動作の流れについて、
図3のフローチャートを参照して説明する。
まず、撮像部12は、ワークWの加工によって発生する切粉の撮像を開始する(ステップS1)。撮像部12は、撮像した画像について、撮像時刻に紐づけて画像格納部13に格納する。次いで、工作機械100は、ワークWの加工を開始する(ステップS2)。
【0023】
次いで、判断部16は、基準モデル決定部14による基準モデルの決定が既に実行されているか否かを判断する(ステップS3)。判断部16は、例えば、基準モデル格納部15に基準モデルが格納されているか否かを判断する。基準モデルの決定が既に実行されている場合(ステップS3:YES)、処理は、ステップS4に進む。一方。基準モデルの決定が未だ実行されていない場合(ステップS3:NO)、すなわちアラーム停止が未だ一度も起こっていない場合、処理は、ステップS7に進む。
【0024】
ステップS4において、判断部16は、撮像部12によって撮像される画像に含まれる切粉について、大きさの平均値を算出する。判断部16は、例えば、複数の切粉のピクセル数の平均値を切粉の大きさの平均値として算出する。そして、判断部16は、算出された平均値と、決定されている基準モデルの大きさとの類似度を算出する。
【0025】
次いで、判断部16は、算出された大きさの平均値に異常があるか否かを判断する(ステップS5)。判断部16は、例えば、算出した類似度が所定値以上である場合に加工の異常であると判断する。判断部16が異常であると判断した場合(ステップS5:YES)、処理は、ステップS6に進む。一方、判断部16が異常でないと判断した場合(ステップS5:NO)、処理は、ステップS7に進む。
【0026】
ステップS6において、信号出力部17は、加工の異常の発生を示す信号を出力する。信号出力部17は、例えば、加工の異常の発生を示す表示を表示装置に表示させる。また、アラーム停止実行部11は、工作機械100の加工動作を停止させる。これにより、本フローによる処理は、終了する。
【0027】
ステップS7において、アラーム停止実行部11は、工作機械100におけるアラーム停止の発生の有無を判断する。アラーム停止が発生した場合(ステップS7:YES)、処理は、ステップS8に進む。一方、アラーム停止時が発生していない場合(ステップS7:NO)、処理は、ステップS10に戻る。
【0028】
ステップS8において、基準モデル決定部14は、アラーム停止の発生について、初回か否かを判断する。基準モデル決定部14は、例えば、基準モデル格納部15に基準モデルが格納されていない場合に、アラーム停止の発生を初回と判断する。アラーム停止の発生が初回である場合(ステップS8:YES)、処理は、ステップS9に進む。一方。アラーム停止の発生が初回ではない場合(ステップS8:NO)、処理は、ステップS10に進む。
【0029】
ステップS9において、基準モデル決定部14は、アラーム停止以前の所定期間内における、切粉の大きさの平均値を基準モデルに決定する。これにより、本フローは、終了する。
【0030】
ステップS10において、基準モデル決定部14は、アラーム停止以前の所定期間内における、切粉の大きさの平均値を用いて、既に決定されている基準モデルを補正する。基準モデル決定部14は、例えば、既存の基準モデルと、新たに算出された補正モデルとの平均値を新たな基準モデルとするように既存の基準モデルを補正する。これにより、本フローの処理は、終了する。
【0031】
次に、本実施形態のプログラムについて説明する。
制御装置1に含まれる各構成は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0032】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、表示プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0033】
以上、第1実施形態に係る制御装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(1)加工負荷の異常に基づいてアラーム停止可能な工作機械100を制御する制御装置1であって、ワークWの加工の結果生成される切粉を撮像する撮像部12と、アラーム停止の発生に応じて、アラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、加工の異常と判定するための切粉の基準モデルを予め決定する基準モデル決定部14と、決定された切粉の基準モデルに対して、後の加工において撮像される切粉の類似度が所定以上である場合に、加工の異常発生と判断する判断部16と、を備える。
また、加工負荷の異常に基づいてアラーム停止可能な工作機械100を制御する制御装置1としてコンピュータを動作させるプログラムであって、コンピュータを、ワークWの加工の結果生成される切粉を撮像する撮像部12、アラーム停止の発生に応じて、アラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、加工の異常と判定するための切粉の基準モデルを予め決定する基準モデル決定部14、決定された切粉の基準モデルに対して、後の加工において撮像される切粉の類似度が所定以上である場合に、加工の異常発生と判断する判断部16、として機能させる。
これにより、加工負荷に加えて、より多くの要素から加工の異常を検出することが可能となる。したがって、アラーム停止前に加工の異常を検出できる可能性が高まる。より早期に加工の異常を検出できれば、工具101又は工作機械100の損傷等を抑制できる点で好適である。例えば、加工負荷の異常に起因する工具101又はワークWの破片がクーラントタンク102に流れることを抑制することで、クーラントタンク102のポンプ又はチップコンベアの故障を未然に抑制することができる。また、早期に加工の異常を検出することで、廃棄されるワークWの量を減少させることができる。
【0034】
(2)基準モデル決定部14は、アラーム停止の新たな発生に応じて、新たなアラーム停止前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、決定されている基準モデルを補正する。これにより、アラーム停止前に加工の異常を検出できる精度が高まる。したがって、制御装置1及び制御装置1によって制御される工作機械100の信頼度を向上することができる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態に係る制御装置1及びプログラムについて、
図5を参照して説明する。第2実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第2実施形態の制御装置1は、基準モデル決定部14が、アラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に含まれる切粉の形状の平均値を基準モデルとして決定する点で、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態の制御装置1は、基準モデル決定部14が、
図5に示すように、既に決定されている基準モデルに関する切粉の形状と、新たなアラーム停止の発生による補正モデルの切粉の形状との重複部分が基準モデルとなるように、既に決定されている基準モデルを補正する点で、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態の制御装置1は、判断部16が、ワークWの加工中に撮像部12によって撮像される画像から切粉の形状を取得する点で、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態の制御装置1は、判断部16が、取得された切粉の形状と、基準モデルによって示される切粉の形状の類似度が所定値以上である場合に、加工の異常発生と判断する点で、第1実施形態と異なる。
【0036】
以上、第2実施形態に係る制御装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
基準モデル決定部14は、切粉の形状を基準モデルとして決定する。また、判断部16は、取得された切粉の形状と、基準モデルによって示される切粉の形状の類似度が所定値以上である場合に、加工の異常発生と判断する。これにより、他の観点から加工の異常発生を判断することができる。加工の異常を判断する手法を増やすことができるので、より汎用的な制御装置1及びプログラムを提供することができる。
【0037】
[第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態に係る制御装置1及びプログラムについて説明する。第3実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第3実施形態に係る制御装置1は、基準モデル決定部14が、アラーム停止以前から遡る所定期間内に撮像された切粉の画像に含まれる切粉の大きさの変化量の推移(変化率)を基準モデルとして決定する点で、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態の制御装置1は、基準モデル決定部14が、既に決定されている基準モデルに関する切粉の大きさの変化量の推移と、新たなアラーム停止の発生による補正モデルの切粉の大きさの変化量の推移との平均値を新たな基準モデルとするように、既に決定されている基準モデルを補正する点で、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態の制御装置1は、判断部16が、ワークWの加工中に撮像部12によって撮像される画像から、所定期間内の切粉の大きさの変化量の推移を取得する点で、第1実施形態と異なる。また、第2実施形態の制御装置1は、判断部16が、取得された切粉の変化量の推移と、基準モデルによって示される切粉の変化量の推移の類似度が所定値以上である場合に、加工の異常発生と判断する点で、第1実施形態と異なる。
【0038】
以上、第3実施形態に係る制御装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
基準モデル決定部14は、切粉の大きさの変化量の推移を基準モデルとして決定する。また、判断部16は、取得された切粉の大きさの変化量の推移と、基準モデルによって示される切粉の大きさの変化量の推移との類似度が所定値以上である場合に、加工の異常発生と判断する。これにより、他の観点から加工の異常発生を判断することができる。加工の異常を判断する手法を増やすことができるので、より汎用的な制御装置1及びプログラムを提供することができる。
【0039】
[第4実施形態]
次に、本開示の第4実施形態に係る制御装置1及びプログラムについて説明する。第4実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第4実施形態に係る制御装置1は、基準モデル決定部14が、さらに他の工作機械100のアラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、決定されている基準モデルを補正する点で第1から第3実施形態と異なる。すなわち、基準モデル決定部14は、複数の工作機械100のアラーム停止以前の基準モデルを用いて、複数の工作機械100に共通の基準モデルを決定する点で、第1から第3実施形態と異なる。基準モデル決定部14は、例えば、上記第1から第3実施形態に係る基準モデル決定部14のように、1つの工作機械100の基準モデルに対して他の工作機械100の基準モデルを用いて補正を繰り返すことで、共通の基準モデルを決定する。
【0040】
以上、第4実施形態に係る制御装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(3)基準モデル決定部14は、さらに他の工作機械100のアラーム停止以前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、決定されている基準モデルを補正する。これにより、1台でも基準モデルが決定されていれば、アラーム停止が発生していない工作機械100に対しても基準モデルを用いることができる。したがって、複数の工作機械100の動作をより安定させることができる。
【0041】
[第5実施形態]
次に、本開示の第5実施形態に係る制御装置1及びプログラムについて説明する。第5実施形態の説明にあたって、前述の実施形態と同一の構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
第5実施形態に係る制御装置1は、基準モデル決定部14が、アラーム停止の新たな発生に応じて、新たなアラーム停止前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、新たな基準モデルを決定する点で、第1から第4実施形態と異なる。また、第5実施形態に係る制御装置1は、判断部16が、新たな基準モデルを含むように、加工の異常発生と判断する類似度を補正する点で第1から第4実施形態と異なる。
【0042】
以上、第5実施形態に係る制御装置1及びプログラムによれば、以下の効果を奏する。
(4)基準モデル決定部14は、アラーム停止の新たな発生に応じて、新たなアラーム停止前の所定期間内に撮像された切粉の画像に基づいて、新たな基準モデルを決定し、判断部16は、新たな基準モデルを含むように、加工の異常発生と判断する類似度を補正する。これにより、加工の異常発生と判断する類似度を最適化することができる。したがって、アラーム停止前に加工の異常発生を検出する可能性を向上することができる。
【0043】
以上、本開示の制御装置及びプログラムの好ましい各実施形態につき説明したが、本開示は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0044】
例えば、上記実施形態において、撮像部12は、工作機械100内において、移動可能に構成されてもよい。撮像部12は、ロボットを含む自動搬送装置(図示せず)によって移動可能に構成されてもよい。撮像部12は、例えば、実行中の加工プログラムに応じて、解像度、撮像間隔、位置、姿勢等が調整されるように構成されてもよい。すなわち、撮像部12は、より多くの切粉を撮像できるように位置を最適化されてよい。また、撮像部12は、機械学習により撮像条件が最適化されてもよい。特に、撮像部12は、工作機械100又は周辺機器のアラーム発生のタイミングに関連付けて撮像条件が最適化されてもよい。
【0045】
また、上記実施形態において、判断部16が、類似度について異常と判断するよりは低いものの、所定の値よりも高くなったと判断した場合において、撮像部12は、より短いタイミングで切粉を撮像するようにしてもよい。これにより、加工の異常発生の検出精度を高めることができるので、制御装置1の信頼性を高めることができる。
【0046】
また、上記実施形態において、基準モデル決定部14は、撮像された画像に含まれる切粉の大きさのばらつきについて、基準モデルを決定してもよい。判断部16は、加工中に撮像される画像に含まれる切粉の大きさのばらつきが基準モデルに対して所定の類似度以上になった場合に、加工の異常発生と判断してもよい。
【0047】
また、上記各実施形態は、実現可能である限り、任意に組み合わされてもよい。例えば、判断部16は、2種類以上の基準モデルを用いて加工の異常発生を判断してもよい。これにより、異常を検出する精度を向上することができる。
また、上記各実施形態において、制御装置は、工作機械と一体又は別体のいずれで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 制御装置
11 アラーム停止実行部
12 撮像部
14 基準モデル決定部
16 判断部
100 工作機械
W ワーク